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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040657
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】保守システムおよび保守方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240318BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145132
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】韓 露
(72)【発明者】
【氏名】内田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】湯田 晋也
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】情報群を簡易に更新できる保守システムを提供する。
【解決手段】保守システム10は、保守対象機器60に対するチェック項目と、前記チェック項目で検知する故障の発生確率を記憶する記憶部1,3と、前記故障の前記発生確率に基づいて、前記チェック項目を表示する表示部22と、前記故障の前記発生確率を推定する発生確率推定部8と、前記チェック項目の追加依頼の入力を受け付ける入力部24と、を有し、前記発生確率推定部8は、追加依頼された前記チェック項目に対応する前記故障の前記発生確率を推定して、前記記憶部1,3に追加することを特徴とする。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守対象機器に対するチェック項目と、前記チェック項目で検知する故障の発生確率と、を記憶する記憶部と、
前記チェック項目の追加依頼の入力を受け付ける入力部と、
保守員に対し、故障原因として可能性が高いものを問い合わせるための設問を生成する設問生成部と、
前記設問に対する回答に基づき、追加する前記チェック項目に対応する故障の発生確率を推定する発生確率推定部と、を有する
ことを特徴とする保守システム。
【請求項2】
請求項1に記載の保守システムにおいて、
前記設問生成部は、保守作業報告データベースに蓄積された異常原因と、前記チェック項目と、チェック結果のデータと、を用いて、前記故障原因として可能性が高いものを問い合わせるための前記設問を生成する
ことを特徴とする保守システム。
【請求項3】
請求項1に記載の保守システムにおいて、
前記故障の前記発生確率の高い順に前記チェック項目を並べて表示する表示部をさらに備える
ことを特徴とする保守システム。
【請求項4】
請求項1に記載の保守システムにおいて、
前記記憶部は、前記チェック項目に対応する故障の発生確率に関するランキング情報を記憶しており、前記チェック項目の追加依頼の入力があると、追加依頼された前記チェック項目に対応する故障の発生確率を含めて前記ランキング情報を更新する
ことを特徴とする保守システム。
【請求項5】
請求項1に記載の保守システムにおいて、
前記発生確率推定部は、保守作業の実施後に、各々の前記チェック項目に対応する前記故障の前記発生確率を更新する
ことを特徴とする保守システム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の保守システムにおいて、
前記発生確率推定部は、過去に発生した原因と結果の積み重ねを統計的に処理して前記故障の前記発生確率を導き出す
ことを特徴とする保守システム。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかに記載の保守システムにおいて、
前記発生確率推定部は、ベイジアンネットワーク情報を利用して前記故障の前記発生確率を導き出す
ことを特徴とする保守システム。
【請求項8】
保守対象機器に対するチェック項目と、前記チェック項目で検知する故障の発生確率と、を記憶部に記憶する過程と、
前記故障の前記発生確率に基づいて、前記チェック項目を表示部に表示させる過程と、
前記故障の前記発生確率を推定する過程と、
前記チェック項目の追加依頼の入力を入力部を介して受け付ける過程と、を有し、
前記発生確率を推定する過程は、追加依頼された前記チェック項目に対応する前記故障の前記発生確率を推定して、前記記憶部に追加する過程である
ことを特徴とする保守方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守システムおよび保守方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野に関して、下記特許文献1の請求項3には、「…前記物理モデルは、前記機器故障確率データベースから機器の時間当たりの故障回数である事前確率を計算し、前記機器故障記録データベースから機器故障時にパラメータ異常が発生する確率である条件付確率を計算し、前記機器劣化モデルに事前確率と条件確率を設定することによってベイジアンネットワークとして構成したものであることを特徴とする機器状態監視システム」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-9080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した技術において、ベイジアンネットワークを更新すべき場合が生じることもある。しかし、特許文献1には、ベイジアンネットワーク等の情報群を簡易に更新することについては、特に記載されていない。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、各種情報を簡易に更新できる保守システムおよび保守方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の保守システムは、保守対象機器に対するチェック項目と、前記チェック項目で検知する故障の発生確率と、を記憶する記憶部と、前記故障の前記発生確率に基づいて、前記チェック項目を表示する表示部と、前記故障の前記発生確率を推定する発生確率推定部と、前記チェック項目の追加依頼の入力を受け付ける入力部と、を有し、前記発生確率推定部は、追加依頼された前記チェック項目に対応する前記故障の前記発生確率を推定して、前記記憶部に追加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、各種情報を簡易に更新できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に適用されるベイジアンネットワーク情報のデータ構成例を示す図である。
図2】ノード内容情報の例を示す図である。
図3】リンク情報の例を示す図である。
図4】保守知識データの一例を示す図である。
図5】案件データの一例を示す図である。
図6】故障モード発生確率表を示す図である。
図7】親ノードの異常発生時における子ノード異常発生確率表を示す図である。
図8】親ノードの正常時における子ノード異常発生確率表を示す図である。
図9】第1実施形態による設備異常原因推定システムのブロック図である。
図10】コンピュータのブロック図である。
図11】ネットワーク構造生成処理ルーチンのフローチャートである。
図12】ネットワーク確率設定ルーチンのフローチャートである。
図13】原因推定処理ルーチンのフローチャートである。
図14】故障モード発生確率表を示す図である。
図15】チェック項目入力結果表を示す図である。
図16】推定結果報知画面の一例を示す図である。
図17】保守作業報告データの一例を示す図である。
図18】追加内容データの一例を示す図である。
図19】設問画面の一例を示す図である。
図20】追加チェック項目・故障モード対応表の一例を示す図である。
図21】チェック項目組合せテーブルを作成する具体的処理の一例を示す図である。
図22】チェック項目テーブル生成処理ルーチンのフローチャートである。
図23】設問文回答処理ルーチンのフローチャートである。
図24】故障モード・ランキングテーブルの一例を示す図である。
図25】確率情報テーブルの一例を示す図である。
図26】第2実施形態による設備異常原因推定システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の前提]
上述した特許文献1には、故障原因の推定に用いられるベイジアンネットワーク情報の更新方法について特に記載されていない。そのため、ベイジアンネットワーク情報の因果関係に変更が必要な場合、適切な推定ができなくなる可能性が生じる。そこで、後述する実施形態においては、必要に応じて、簡単な操作によって新しいチェック項目を保守知識に追加することによって保守知識を更新し、この更新された保守知識に基づいて、ベイジアンネットワーク情報を再構築できるようにした。このようにネットワーク情報を随時再構築することにより、異常原因の推定精度を向上させることができる。
【0009】
[第1実施形態のデータ構造]
〈ベイジアンネットワーク情報80〉
図1は、第1実施形態に適用される、保守知識のベイジアンネットワーク情報80(情報群)のデータ構成例を示す図である。ベイジアンネットワーク情報80は、例えばガスエンジンである保守対象機器60(図9参照)に起こる異常事象と、この異常事象が起こった原因となる機器故障と、この機器故障の原因等である故障モードと、故障モード対応して確認すべきチェック項目と、の因果関係を規定したデータである。
【0010】
図1の例において、ベイジアンネットワーク情報80は、複数のノード811~844と、複数のリンク921~947と、を含んでいる。ノード811~844は、異常事象群の階層81、機能故障群の階層82、故障モード群の階層83、またはチェック項目群の階層84のうち何れかに属している。各ノードには、一意の識別番号であるノードID(図示せず)が付与され、各リンクにも、一意の識別番号であるリンクID(図示せず)が付与されている。
【0011】
リンク921~947は、これらノードの因果関係を表している。すなわち、図中の矢印の元が「原因」であり、矢印の先は「結果」である。以下、「原因」となったノードを当該リンクの「親ノード」と呼び、「結果」となったノードを「子ノード」と呼ぶことがある。リンク921~947には、親ノードの異常発生時に子ノードが異常になる確率、親ノードの異常発生時に子ノードが正常になる確率、親ノードの正常時に子ノードが異常になる確率、および親ノードの正常時に子ノードが正常になる確率を含んでいる。
【0012】
異常事象群の階層81は、保守対象機器60(図9参照)に生じる複数の「異常事象」に対するノードを含む。但し、図1の例では、説明の簡略化のため、1個のノード811のみを示している。このノード811は、「室温上昇」に係るノードであり、例えば、保守対象機器60が設置されている部屋の室温が異常上昇したことを表す。
【0013】
また、機能故障群の階層82は、異常事象の原因となり得る複数の「機能故障」に対するノードを含む。図示の例では、階層82は、熱交換器の能力不足に係るノード821と、冷却ポンプの能力不足に係るノード822と、冷却塔の能力不足に係るノード823と、を含んでいる。これらノード821~823には、ノード811に向かうリンク921~923が接続されている。これは、ノード821~823が、ノード811の原因になり得ることを表す。
【0014】
また、故障モード群の階層83は、「故障モード」すなわち詳細な故障原因の階層であり、ノード831~834(故障原因情報)を含む。より詳細には、階層83は、熱交換器の設計不良に係るノード831と、熱交換器の汚れ、つまりに係るノード832と、冷却ポンプの汚れ、つまりに係るノード833と、冷却塔の性能低下に係るノード834と、を含んでいる。
【0015】
ノード831,832には、ノード821に向かうリンク931,932が接続されている。これは、ノード831,832がノード821の原因になり得ることを表す。また、ノード833,834には、それぞれノード822,823に向かうリンク933,934が接続されている。これは、ノード833がノード822の原因になり得、ノード834がノード823の原因になり得ることを表す。
【0016】
また、チェック項目群の階層84は、「チェック項目」、すなわち保全員等のユーザがチェックすべき項目の階層であり、ノード841~844(チェック項目情報)を含む。より詳細には、チェック項目群の階層84は、保守対象機器60(図9参照)に装着されたセンサ61,62,63の計測値D61,D62,D63に係るノード841,842,843と、保守対象機器60の破損状況に係るノード844と、を含んでいる。そして、ノード831には、ノード841,842に向かうリンク941,942が接続されている。ノード832には、ノード842に向かうリンク943が接続されている。ノード833には、ノード842,843に向かうリンク944,945が接続されている。ノード834には、ノード842,844に向かうリンク946,947が接続されている。
【0017】
チェック項目群の階層84には、図示したもの以外に、保守対象機器60の環境や、付帯設備、保守対象機器60を構成するコンポーネント等において、保全員等のユーザがチェックすべき項目を含めるとよい。階層84のノードは、故障モード群の階層83の各ノードに対応して、その現象が発生したか否かをチェックするためのものである。図示の例のように、階層83における一つのノードに対応する階層84のノードは、複数になる場合がある。
【0018】
図1において、各ノード811~844の内部に示した「Yes/No」および「正常/異常」は、各ノードが取り得る状態を示している。「Yes」とは、当該ノードに関する異常が発生している状態を示し、「No」とは、当該ノードに関する異常が発生していない状態を示す。また、「正常」とは、計測値D61~D63が正常範囲であること、または保守対象機器60に破損が発生していないことを表す。また、「異常」とは、計測値D61~D63が正常範囲から外れていること、または保守対象機器60に破損が発生していることを表す。
【0019】
また、ネットワーク情報80は、ネットワーク構造情報80Aと、ネットワーク確率情報80Bと、を含むと考えることができる。ここで、ネットワーク構造情報80Aは、ベイジアンネットワーク情報80における各ノードおよび各リンクの結びつきを示す情報である。また、ネットワーク確率情報80Bは、ネットワーク情報80における各種確率を示す情報である。なお、ベイジアンネットワーク情報80の構成や各階層の意味は、図1に示したものに限定されない。
【0020】
〈アセット知識データベース1〉
(ノード内容情報140)
図2は、ノード内容情報140の例を示す図である。
なお、ノード内容情報140は、後述するアセット知識データベース1(図9参照)に含まれる情報である。
図1に示した保守知識のベイジアンネットワーク情報80は、アセット知識データベース1に含まれる各種情報に基づいて構築される。その一部であるノード内容情報140には、複数のレコード(行)が含まれており、各レコードは、何れか一つのノードと、当該ノードの状態(「Yes/No」または「正常/異常」)との組合せに対応する。
【0021】
図1に示した例では、ベイジアンネットワーク情報80は「12個」のノード811~844が含まれ、各ノードは、それぞれ「2個」の状態(「Yes/No」または「正常/異常」)を取り得るものであった。従って、このベイジアンネットワーク情報80を構築するために、ノード内容情報140には、「12×2=24個」のレコードが含まれる。但し、図2においては、このうち4個のレコードのみを表示する。
【0022】
ノード内容情報140の各レコードは、ノード情報141と、種類情報142と、状態情報143と、コンポーネント情報144と、を含んでいる。ノード情報141は、当該レコードに係る何れかのノード811~844の名称である。種類情報142は、当該ノードの種類、すなわち当該ノードが属する何れかの階層81~84(異常事象、機能故障、故障モードまたはチェック項目)を表す情報である。
【0023】
状態情報143は、当該ノードが取り得る「2個」の状態(「Yes/No」または「正常/異常」)のうち一方を表す情報である。コンポーネント情報144は、当該ノードが故障モード群の階層83または機能故障群の階層82に属する場合に、当該ノードに係る一または複数のコンポーネントの識別情報を列挙した情報である。例えば、熱交換器設計不良に係るノード831(図1参照)に関して、熱交換器(図示せず)の数が3台であったとすると、これら3台の熱交換器の識別情報がコンポーネント情報144に含まれることになる。
【0024】
図3は、リンク情報150の例を示す図である。
このリンク情報150も、アセット知識データベース1(図9参照)に含まれる情報である。リンク情報150には、複数のレコード(行)が含まれており、各レコードは、個々のリンク921~947に対応する。図1に示した例では、ベイジアンネットワーク情報80には「14個」のリンク921~947が含まれる。従って、このベイジアンネットワーク情報80を生成するためのリンク情報150には、「14個」のレコードが含まれる。但し、図3においては、このうち2個のレコード(リンク941,942のレコード)のみを表示する。
【0025】
リンク情報150の各レコードは、親ノード情報151と、子ノード情報152と、を含んでいる。親ノード情報151は、当該レコードに係るリンクの親ノード(図1における矢印の元)を示す情報であり、子ノード情報152は当該リンクの子ノード(図1における矢印の先)を示す情報である。
【0026】
図4は、保守知識データ710の一例を示す図である。
この保守知識データ710も、アセット知識データベース1(図9参照)に含まれる情報である。
保守知識データ710は、複数のレコード(行)を含んでおり、各レコードは、異常事象情報711と、機能故障情報712と、コンポーネント情報713と、故障モード情報714と、チェック項目情報715と、を含んでいる。
【0027】
図1において、リンクおよびノードを辿って階層81から階層84に至るまでの経路を「パス」と呼ぶ。例えば、リンク921,931,941を辿る経路は一つのパスである。また、リンク921,931,942を辿る経路は、別の一つのパスである。図4に示す保守知識データ710の各レコードは、各々のパスに対応し、保守知識データ710には、パスの数と同一数のレコードが含まれる。
【0028】
図4の保守知識データ710の各レコードにおける異常事象情報711は、当該パスにおける異常事象群の階層81のノードの名称、例えばノード811の「室温上昇」である。機能故障情報712は、当該パスにおける機能故障群の階層82のノードの名称、例えばノード821の「熱交換器能力不足」である。
【0029】
コンポーネント情報713は、故障モード群の階層83のノードに対応するコンポーネントの名称を示す情報であり、例えば「熱交換器」である。故障モード情報714は、当該パスにおける故障モード群の階層83のノードの名称、例えばノード831の「熱交換器設計不良」である。チェック項目情報715は、当該パスにおけるチェック項目群の階層84のノードの名称、例えばノード841の「計測値D61」である。
【0030】
図4における異常事象情報711と機能故障情報712は原因と結果の関係を有する。同様に、機能故障情報712と故障モード情報714も原因と結果の関係を有し、故障モード情報714とチェック項目情報715も原因と結果の関係を有する。
【0031】
図5は、案件データ720の一例を示す図である。
この案件データ720は、案件ID情報721と、異常事象情報722と、を含んでいる。案件データ720は、保守対象機器60において何らかの異常事象が生じた場合に診断用ネット生成部2(図9参照)によって生成されるデータである。案件ID情報721は、当該異常事象に対して付与される一意の識別番号である。また、異常事象情報722は、異常事象の名称(例えば「室温上昇」)を表す情報である。
【0032】
図6は、故障モード発生確率表110を示す図である。
この故障モード発生確率表110も、アセット知識データベース1(図9参照)に含まれる情報である。
故障モード発生確率表110は、複数のレコード(行)を含んでおり、各レコードは、故障モード情報111と、状態情報112と、確率情報113と、を含んでいる。
【0033】
故障モード発生確率表110のレコードは、故障モード群の階層83(図1参照)に属するノードと、当該ノードの状態との組合せに対応して設けられている。図1に示した例では、階層83には、「4個」のノード831~834が含まれていた。また、これらノードは、何れも「Yes」(異常が発生している)または「No」(異常が発生していない)の2つの状態のうち何れかを取るものであった。従って、このベイジアンネットワーク情報80を生成するための故障モード発生確率表110には、「4×2=8個」のレコードが含まれる。但し、図6においては、このうち4個のレコードのみを表示する。
【0034】
故障モード情報111は、当該レコードに対応するノードの名称である。また、状態情報112は、当該ノードが取り得る2つの状態(上述の例では「Yes」または「No」)のうち一方を示す情報である。なお、図6および他の図において、「Y」は「Yes」、「N」は「No」を表す。確率情報113は、当該ノードが、当該状態になる確率である。
【0035】
同一の故障モード情報111について、状態情報112が「Yes(Y)」であるレコードの確率情報133と、状態情報112が「No(N)」であるレコードの確率情報133と、の合計は1.0(100%)になるように設定されている。
【0036】
図示の例においては、全てのレコードにおいて、確率情報733は固定値である「50%」になっている。しかし、確率情報133の初期値は「50%」に限られず、過去の履歴などから計算してもよい。例えば、状態情報112が「Yes(Y)」であるレコードの確率情報133は、故障履歴の総件数をN_aとし、当該故障モード情報111に係る故障モードの発生件数をN_bとしたとき、「N_b/N_a」としてもよい。
【0037】
図7は、親ノードの異常発生時における子ノード異常発生確率表120(異常発生確率データ)を示す図である。
この子ノード異常発生確率表120も、アセット知識データベース1(図9参照)に含まれる情報である。
子ノード異常発生確率表120は、複数のレコード(行)を含んでおり、各レコードは、親ノード情報121と、状態情報122と、子ノード情報123と、子ノード状態情報124と、確率情報125と、を含んでいる。各レコードは、何れか一つのリンクと、当該リンクにおける子ノードの状態と、の組合せに対応する。
【0038】
図1に示した例では、ベイジアンネットワーク情報80には「14個」のリンク921~947が含まれる。また、これらリンクにおける子ノードは、何れも2つの状態(例えば「異常」または「正常」)のうち何れかを取る。従って、このベイジアンネットワーク情報80を生成するための子ノード異常発生確率表120には、「14×2=28個」のレコードが含まれる。但し、図7においては、このうち6個のレコードのみを表示する。
【0039】
親ノード情報121は、当該レコードに係るリンクの親ノード(図1における矢印の元)であり、状態情報122は親ノードの状態である。子ノード異常発生確率表120において、状態情報122は全て「Y(異常発生している)」である。子ノード情報123は当該リンクの子ノード(図1における矢印の先)を示す情報である。子ノード状態情報124は、当該子ノードが取り得る2つの状態(例えば「異常」または「正常」)のうち一方を示す情報である。また、確率情報125は、当該子ノードが当該状態を取る確率を示す情報である。
【0040】
親ノード情報121、状態情報122、子ノード情報123が同一であって子ノード状態情報124が異なる二つのレコード(例えば図7の1行目および2行目)の確率情報125の合計は「100%」になる。図示の例においては、何れも子ノード状態情報124が「異常」である場合に確率情報125は「100%」であり、「正常」である場合に確率情報125は「0%」である。しかし、確率情報125はこれらの値に限定されるものではなく、過去の故障履歴から計算してもよい。
【0041】
図8は、親ノードの正常時における子ノード異常発生確率表130(異常発生確率データ)を示す図である。
この子ノード異常発生確率表130も、アセット知識データベース1(図9参照)に含まれる情報である。
子ノード異常発生確率表130は、複数のレコード(行)を含んでおり、各レコードは、子ノード情報131と、子ノード状態情報132と、確率情報133と、を含んでいる。なお、図7における親ノード情報121および親ノードの状態情報122に対応するものは、図8の子ノード異常発生確率表130には含まれていない。各レコードは、チェック項目群の階層84におけるノードと、当該ノードの状態との組合せに対応する。
【0042】
従って、図1に示したベイジアンネットワーク情報80を生成するための子ノード異常発生確率表130には、「4×2=8個」のレコードが含まれる。但し、図8においては、このうち6個のレコードのみを表示する。子ノード情報131は、チェック項目に係る当該ノードを示す情報である。子ノード状態情報132は、当該子ノードが取り得る2つの状態(例えば「異常」または「正常」)のうち一方を示す情報である。また、確率情報133は、当該子ノードが当該状態を取る確率を示す情報である。
【0043】
子ノード情報131が同一であって子ノード状態情報132が異なる二つのレコード(例えば図8の1行目および2行目)の確率情報133の合計は「100%」になる。図示の例においては、何れも子ノード状態情報132が「異常」である場合に確率情報133は「0%」であり、「正常」である場合に確率情報133は「100%」である。しかし、確率情報133はこれらの値に限定されるものではなく、過去の故障履歴から計算してもよい。
【0044】
[第1実施形態]
〈第1実施形態の構成〉
図9は、第1実施形態による設備異常原因推定システム10(保守システム、コンピュータ)のブロック図である。
図9において、設備異常原因推定システム10は、アセット知識データベース1(記憶部)と、診断用ネット生成部2と、保守知識ベイジアンネットワークデータベース3(記憶部)(以下、データベース3と略すことがある)と、異常原因推定部4と、保守作業報告データベース5と、GUI設問文生成部6と、確率情報入力部7と、確率情報生成部8と、入出力部20と、を備える。
【0045】
また、入出力部20は、ディスプレイ22(表示部)と、入力装置24(入力部)と、を備える。保守対象機器60は、例えばガスエンジンであり、センサ61~63が装着されている。これらセンサ61~63は、計測値D61~D63を各々出力する。
【0046】
アセット知識データベース1は、保守知識が蓄積されたデータベースである。ここで、保守知識とは、例えば、保守マニュアルや、FT(Fault Tree)図などから抽出される情報である。上述したノード内容情報140(図2参照)、リンク情報150(図3参照)、保守知識データ710(図4参照)、故障モード発生確率表110(図6参照)、および子ノード異常発生確率表120,130(図7図8参照)もアセット知識データベース1に含まれる。
【0047】
保守対象機器60に異常が発生すると、保全員であるユーザ50は、入出力部20を介して、図5に示した案件データ720を入力する。この案件データ720が入力されると、診断用ネット生成部2は、アセット知識データベース1に基づいてベイジアンネットワーク情報80(図1参照)を生成する。
【0048】
データベース3は、診断用ネット生成部2が生成したベイジアンネットワーク情報80を保存する。ユーザ50は、保守対象機器60に異常が発生すると、各種チェック項目の保守作業報告データ520(図17参照)を、異常原因推定部4に入力する。上述したように、チェック項目とは、センサ61~63の計測値D61~D63や、保守対象機器60の破損状態等である。
【0049】
異常原因推定部4は、案件データ720(図5参照)と、保守作業報告データ520と、計測値D61~D63の「正常/異常」の判定結果と、に基づいて、異常原因を推定し、故障モード(図1におけるノード831~834に対応)の発生確率を計算する。そして、異常原因推定部4は、計算された故障モードの発生確率を、ディスプレイ22(図9参照)に表示する。
【0050】
保守作業報告データベース5は、保守作業報告データ520(図17参照)を保存するデータベースである。すなわち、保守作業報告データベース5は、異常原因推定部4が推定した異常原因と、案件データ720(図5参照)と、ユーザ50が入力したチェック項目の結果とを保存する。
【0051】
GUI設問文生成部6は、保守作業報告データベース5に更新対象とすべき異常原因が存在するか否かを判定する。そして、該異常原因が存在する場合は、アセット知識データベース1に更新指令を送信し、アセット知識データベース1を更新させる。また、GUI設問文生成部6は、保守作業報告データベース5に蓄積した異常原因とチェック項目結果のデータをクラスタリングすることにより、異常原因の詳細化対象と詳細化結果を出力する。
【0052】
図10は、コンピュータ980のブロック図である。図9に示した設備異常原因推定システム10は、図10に示すコンピュータ980を、1台または複数台備えている。
図10において、コンピュータ980は、CPU981と、記憶部982と、通信I/F(インタフェース)983と、入出力I/F984と、メディアI/F985と、を備える。ここで、記憶部982は、RAM982aと、ROM982bと、HDD982cと、を備える。通信I/F983は、通信回路986に接続される。入出力I/F984は、入出力装置987に接続される。メディアI/F985は、記録媒体988からデータを読み書きする。
【0053】
ROM982bには、CPUによって実行されるIPL(Initial Program Loader)等が格納されている。HDD982cには、アプリケーションプログラムや各種データ等が記憶されている。CPU981は、HDD982cからRAM982aに読み込んだアプリケーションプログラム等を実行することにより、各種機能を実現する。先に図9に示した、設備異常原因推定システム10の内部は、アプリケーションプログラム等によって実現される機能をブロックとして示したものである。
【0054】
〈第1実施形態の動作〉
(ネットワーク生成処理)
次に、第1実施形態の動作を説明する。
図11は、ネットワーク構造生成処理ルーチンのフローチャートである。
本ルーチンは、案件データ720(図5参照)、すなわち、案件ID情報721と異常事象情報722との組合せが診断用ネット生成部2に供給されると、診断用ネット生成部2において実行される。なお、案件データ720を診断用ネット生成部2に入力する作業は、例えばユーザ50が行うとよい。図11において処理がステップS10に進むと、診断用ネット生成部2は文字列等の形式でネットワークID情報を生成する。このネットワークID情報は、受信した案件データ720に対応する識別番号であるとともに、以降の処理で生成されるベイジアンネットワーク情報80に付与される識別番号でもある。
【0055】
次に、処理がステップS11に進むと、診断用ネット生成部2は、アセット知識データベース1の保守知識データ710(図4参照)の中から、異常事象情報722と同一の異常事象に係る異常事象情報711を検索する(保守知識データ取得)。
次に、処理がステップS12に進むと、診断用ネット生成部2は、アセット知識データベース1の内容に基づいて、ネットワーク構造情報80Aを生成する。
【0056】
より具体的には、診断用ネット生成部2は、取得したアセット知識データベース1の保守知識データ710(図4参照)に基づいて、ベイジアンネットワーク情報80(図1参照)におけるノード811~844およびリンク921~947を生成する。以上により、本ルーチンの処理が終了する。
【0057】
図12は、ネットワーク確率設定ルーチンのフローチャートである。
図12において処理がステップS40に進むと、診断用ネット生成部2は、故障モード発生確率表110(図6参照)における確率情報113を取得する。
【0058】
次に、処理がステップS41に進むと、診断用ネット生成部2は、リンク情報150(図3参照)における親ノード情報151と子ノード情報152とを用いて、アセット知識データベース1内の子ノード異常発生確率表120(図7参照)における確率情報125を検索し取得する。
【0059】
次に、処理がステップS42に進むと、診断用ネット生成部2は、リンク情報150(図3参照)における親ノード情報151と子ノード情報152とを用いて、アセット知識データベース1内の子ノード異常発生確率表130(図8参照)における確率情報133を検索し取得する。
【0060】
次に、処理がステップS43に進むと、診断用ネット生成部2は、取得した確率情報113,125,133(図6図8参照)を、保守知識ベイジアンネットワークデータベース3に出力する。これにより、診断用ネット生成部2は、ベイジアンネットワーク情報80における各部の確率を指定するネットワーク確率情報80Bをデータベース3に記憶させる。
【0061】
(原因推定処理)
図13は、原因推定処理ルーチンのフローチャートである。
本ルーチンは、ネットワーク構造生成処理ルーチン(図11)およびネットワーク確率設定ルーチン(図12)が実行された後、診断用ネット生成部2において起動される。
【0062】
図13において処理がステップS20に進むと、診断用ネット生成部2は、ネットワークID情報と、ネットワーク構造情報80Aと、ネットワーク確率情報80Bと、案件データ720と、を取得する。なお、ネットワークID情報、ネットワーク構造情報80Aおよびネットワーク確率情報80Bは、ネットワーク構造生成処理ルーチン(図11)およびネットワーク確率設定ルーチン(図12)において生成されたものである。
【0063】
次に、処理がステップS21に進むと、診断用ネット生成部2は、取得したベイジアンネットワーク情報80におけるチェック項目群のノード(例えば、図1におけるノード841~844)の内容を、ディスプレイ22に表示する。ユーザ50は、ディスプレイ22の表示画面を見ながら、表示されるチェック項目に従って、保守対象機器60をチェックし、そのチェック結果を診断用ネット生成部2に入力する。
【0064】
次に、処理がステップS22(情報群生成過程)に進むと、診断用ネット生成部2は、ネットワーク構造情報80Aと、ネットワーク確率情報80Bと、に基づいてベイジアンネットワーク情報80を生成する。
【0065】
次に、処理がステップS23に進むと、診断用ネット生成部2は、故障モードの発生確率を計算し、ディスプレイ22に表示させる。その手順は、次の通りである。すなわち、まず、診断用ネット生成部2は、生成されたベイジアンネットワーク情報80において、案件データ720(図5)に含まれる異常事象情報722と同一の内容である異常事象群の階層81のノード(例えば、図1におけるノード811)の状態を「Yes」(異常が発生している)に設定する。
【0066】
次に、診断用ネット生成部2は、上述のステップS21においてユーザ50によって入力されたチェック結果と、ベイジアンネットワーク情報80と、を用いて、故障モード群の階層83における各ノード(例えば、図1におけるノード831~834)の発生確率を計算する。そして、診断用ネット生成部2は、計算した発生確率をディスプレイ22に表示するとともに、推定結果データED(図14図15参照)を生成し、推定結果データEDに対して推定結果IDを付与する。
【0067】
ディスプレイ22に表示されるデータは、案件ID情報721と、チェック項目のチェック結果と、ベイジアンネットワーク情報80に属する全てのノードの各状態の確率と、ネットワークID情報と、ネットワーク構造情報80Aと、ネットワーク確率情報80Bと、を含むとよい。例えば、後述する故障モード発生確率表730(図14参照)や推定結果報知画面86(図16参照)を表示するとよい。
【0068】
図14は、故障モード発生確率表730を示す図である。
故障モード発生確率表730は、推定結果データEDの一部であり、故障モード発生確率表110(図6参照)と同様のデータ構成を有している。すなわち、故障モード発生確率表730は複数のレコード(行)を含んでおり、各レコードは、故障モード情報731と、状態情報732と、確率情報733と、を含んでいる。そして、故障モード発生確率表730のレコードは、故障モード群の階層83(図1参照)に属するノードと、当該ノードの状態との組合せに対応して設けられている。
【0069】
図14において、状態情報732は、「Yes(Y)」または「No(N)」であり、同一の故障モード情報731について、状態情報732が「Yes(Y)」のレコードの確率情報733と、状態情報732が「No(N)」のレコードの確率情報733と、の合計は1.0(100%)になる。但し、故障モード発生確率表730における確率情報733は、原因推定処理ルーチン(図13)において推定された値であるため、故障モード発生確率表110(図6参照)における確率情報113とは異なっている。
【0070】
なお、診断用ネット生成部2は、故障モード発生確率表730をディスプレイ22に表示する場合は、故障モード発生確率表730における故障モード情報731(図14参照)に係る故障モードの発生確率が高い順、すなわち状態情報732が「Yes(Y)」であって確率情報733の高い順に、故障モード発生確率表730をソートする。これにより、診断用ネット生成部2は、確率が高い方を強調するように、ディスプレイ22に、故障モード発生確率表730の内容を、発生確率(すなわち確率情報733)の高い順に表示することができる。
【0071】
ところで、故障モード情報731に係るノードは、図1に示したように故障モード群の階層83に属し、その子ノードは、機能故障群の階層82およびチェック項目群の階層84の双方に存在する。そこで、診断用ネット生成部2は、故障モード発生確率表730をディスプレイ22に表示する場合、故障モード情報731に係るノードの子ノードである機能故障群の階層82に属するノードについても、強調表示を行うとよい。また、診断用ネット生成部2は、状態が「異常」であるチェック項目群の階層84の子ノードについても強調表示を行うとよい。これにより、ユーザ50は、ディスプレイ22に表示された画面を見ながら、保守対象機器60の異常原因を判断し、異常原因であると原因と判断した故障モードのノードを選択することができる。
【0072】
図15は、チェック項目入力結果表740を示す図である。
このチェック項目入力結果表740も推定結果データEDの一部である。チェック項目入力結果表740は複数のレコード(行)を含んでおり、各レコードは、チェック項目情報741と、状態情報742と、を含んでいる。チェック項目入力結果表740の各レコードは、先にステップS23でユーザ50によって入力された各チェック項目に対応している。すなわち、チェック項目情報741は、当該チェック項目の内容を示し、状態情報742は当該チェック項目の状態、例えば「異常」または「正常」を示す。
【0073】
図16は、推定結果報知画面86の一例を示す図である。
推定結果報知画面86は、ディスプレイ22に表示される画面であり、ベイジアンネットワーク情報80の内容が表示されている。すなわち、推定結果報知画面86には、ノード811~844(図1参照)に対応するノード画像311~344と、リンク921~947に対応するリンク画像(符号なし)と、が表示されている。そして、故障モードの各ノード画像331~334には、選択ボタン871~874が表示されている。また、推定結果報知画面86の下部には、推定原因手入力ボタン88が表示されている。
【0074】
診断用ネット生成部2は、故障モードが発生する確率と、閾値との比較によって、故障モードが発生する確率を「高」、「中」、「低」の3つのランクに分類する。そして、診断用ネット生成部2は、推定結果報知画面86において、これらランクを区別できるように、ランクに応じて異なる表示態様で、各ノード画像を表示する。例えば、診断用ネット生成部2は、確率「高」を「赤」、確率「中」を「ピンク」、確率「低」を「白」で各ノードを色分けする。図16においては、「濃いハッチング」が「赤」を表し、「薄いハッチング」が「ピンク」を表し、「ハッチングなし」が「白」を表す。
【0075】
ここで、例を挙げて、診断用ネット生成部2が実行する診断処理の内容を説明する。ユーザ50は、図16の画面を見ながら、チェック項目群のノード画像341~344に従って、保守対象機器60をチェックする。例えば、センサ61の計測値D61が異常である場合、場合、ユーザ50は、ノード画像341に対応付けて、計測値D61が異常である旨を入力する。診断用ネット生成部2は、ユーザ50による入力結果に基づいて、各故障モードの発生確率を計算し、発生確率の大きさによって、発生可能性の「高」「中」「低」を分類し、図16に示したように、画面を表示する。
【0076】
図16において、ユーザ50が、故障モードのノード画像331~334における選択ボタン871~874のうち何れかをクリックすると、診断用ネット生成部2は、ユーザ50が異常原因であると判断した故障モード(推定故障モード)を選択するためのダイアログ(図示せず)をディスプレイ22に表示させる。これにより、ユーザ50は、ノード画像331~334に対応する何れかの故障モードが異常原因であると推定した旨を入力できる。
【0077】
また、ユーザ50が推定原因手入力ボタン88をクリックすると、異常原因推定部4は、異常原因と推定される一または複数の故障モードを選択する。この場合、診断用ネット生成部2は、推定結果である一または複数の故障モードの中から、何れかを手入力するダイアログをディスプレイ22に表示させる。このようにして、設備異常原因推定システム10は、入出力部20のGUI(Graphical User Interface)を通して、ユーザ50が異常原因と判定した推定故障モードの入力を受け付ける。ここで、ユーザ50は、保守対象機器60に対する保全業務を行い、「確定故障モード」、すなわち異常事象の真の原因となった故障モードを調査する。
【0078】
図13に戻り、処理がステップS24に進むと、ユーザ50は、入出力部20を介して保全業務の結果を入力する。すなわち、ユーザ50は、確定故障モードと、推定故障モードと確定故障モードとが一致したか否かを示す推定結果評価情報と、を入出力部20から入力する。
【0079】
そして、診断用ネット生成部2は、入出力部20のディスプレイ22に、入力結果を表示する。ディスプレイ22に表示される情報は、発生確率が最大である推定故障モード(後述する図17の推定故障モード情報524)、ユーザ50が入力した確定故障モード(後述する図17の確定故障モード情報525)、ネットワークID、選定結果ID、ネットワークID等を含めるとよい。
【0080】
次に、処理がステップS25に進むと、診断用ネット生成部2は、作業報告すなわち保守作業報告データ520(図17参照)を出力する。以上により、原因推定処理ルーチン(図13)の処理が終了する。
【0081】
図17は、保守作業報告データ520の一例を示す図である。
保守作業報告データ520には、複数のレコード(行)が含まれており、各レコードが、上述したステップS25(図13参照)で生成される作業報告データになる。図17において、各レコードは、報告ID情報521と、ネットワークID情報522と、推定結果ID情報523と、推定故障モード情報524と、確定故障モード情報525と、一致情報526と、を含んでいる。
【0082】
報告ID情報521は、作業報告データ(レコード)を一意に特定する識別情報である。ネットワークID情報522は、対応するベイジアンネットワーク情報80の識別情報である。推定結果ID情報523は、推定結果データED(図14図15参照)の識別情報である。推定故障モード情報524は、上述のステップS24(図13参照)において入力された推定異常原因である。確定故障モード情報525は、上述のステップS24(図13参照)において入力された確定故障モードである。一致情報526は、推定故障モード情報524と確定故障モード情報525とが一致しているか否かを示す情報である。
【0083】
(設問文生成処理)
図18は、追加内容データ530の一例を示す図である。
追加内容データ530は、ユーザ50が保守対象機器60に対して保守作業を行った結果、既存のチェック項目には無い、新たな症状である追加症状が現れた場合、その追加症状に対して、追加内容データ530のレコード(行)を追加する。そのレコードにおいて、追加症状が現れた原因は、原因判断結果情報535である。追加内容データ530は、例えば一定期間毎、あるいはレコード数が所定数以上蓄積した後、ユーザ50が手動でピックアップするとよい。
【0084】
追加内容データ530の各レコードは、報告ID情報531と、ネットワークID情報532と、推定結果ID情報533と、追加症状情報534と、原因判断結果情報535と、一致情報536と、を含んでいる。これらのうち、情報531,532,533の内容は、上述した保守作業報告データ520における情報521,522,523のものと同様である。
【0085】
また、追加症状情報534は、上述した追加症状を表す情報である。また、原因判断結果情報535は、この追加症状が現れた原因として、ユーザ50が調査した結果である。一致情報536は、推定結果ID情報533に係る推定結果データEDと、原因判断結果情報535とが一致しているか否かを示す情報である。
【0086】
図19は、ディスプレイ22に表示される設問画面610の一例を示す図である。
図19において、設問画面610は、質問表示部612(設問文)と、回答選択部614と、を含んでいる。質問表示部612には、新たに追加するチェック項目に関する異常発生時に、どこから調査すべきか(故障モードは何であるのか)の質問文が表示される。図示の例においては、「電源ランプが点灯せず、原動機が回らない」という異常が発生した場合に、どこから調査すべきかを質問する質問文が表示されている。
【0087】
回答選択部614には、質問表示部612に示された質問文に対する回答の選択肢が表示される。図示の例においては、「1.電源ケーブル」、「2.制御盤」、および「3.原動機のコネクタ」という、故障モードに対応する選択肢が表示されている。ユーザ50は、これら選択肢に対して、質問表示部612に示された異常の原因となる確率が高いと思われる順序である確率順序を付与しつつ、一または複数の選択肢を選択することができる。確率情報入力部7(図9参照)は、ユーザ50が選択した選択肢およびこれらの確率順序を受信する。
【0088】
図20は、追加チェック項目・故障モード対応表540の一例を示す図である。
上述したように、ベイジアンネットワーク情報80に適用されるチェック項目は、ノード内容情報140(図2参照)に含まれていた。これに対して、新チェック項目(新たなチェック項目)を追加する際に、GUI設問文生成部6(図9参照)は、図20に示す追加チェック項目・故障モード対応表540を生成する。
【0089】
図20において、追加チェック項目・故障モード対応表540には複数のレコード(行)が含まれており、各レコードは、追加しようとする新チェック項目に対応する。そして、各レコードは、チェック項目番号541と、追加チェック項目名称情報542と、追加チェック項目ID情報543と、リンク元故障モード情報544(リンクする故障モード)と、を含んでいる。
【0090】
チェック項目番号541は、新チェック項目に付与する昇順の番号である。追加チェック項目名称情報542は、新チェック項目の名称を示す情報である。追加チェック項目ID情報543は、新チェック項目のノードIDである。リンク元故障モード情報544は、新チェック項目にリンクする故障モードのノードID(例えば図中のFM1,FM2,FM3)を示す情報である。
【0091】
次に、GUI設問文生成部6は、以下のようなステップにて、チェック項目組合せテーブルを作成する。
・ステップSA1:
新チェック項目の件数がnであり、これら新チェック項目のノードID(追加チェック項目ID情報543)を「CK1~CKn」とし、2n-1行、n列のテーブルを作成する。
ここで、CK1の列のセルに対して、2n-2件の「N」と、2n-2件の「Y」とを交互に代入する。また、CK2の列のセルに対して、2n-3件の「N」と、2n-3件の「Y」とを交互に代入する。以下同様に、CK(n-1)の列まで、各セルに「N」と「Y」とを代入する。但し、CKnの列には、CK1の列を反転した値を代入する。
【0092】
・ステップSA2:
CK2の列を一番左側に移動し、CK2以外の列(CK1,CK3~CKn)における「N」および「Y」の組合せパターンが重複している行を検索する。重複している行が存在する場合、上側に位置する行のCKnの値を反転させる(すなわち「N」は「Y」に、「Y」は「N」にする)。
【0093】
・ステップSA3:
CK3の列を一番左側に移動し、CK3以外の列(CK1,CK2,CK4~CKn)における「N」および「Y」の組合せパターンが重複している行を検索する。重複している行が存在する場合、上側に位置する行のCKnの値を反転させる。
【0094】
・ステップSA4:
以下、Ck4~CKnの列を順次一番左側に移動し、ステップSA2、SA3と同様の処理を繰り返す。
【0095】
図21は、チェック項目組合せテーブルを作成する具体的処理の一例を示す図である。
図21におけるテーブル200は、番号欄205と、CK1欄201と、CK2欄202と、CK3欄203と、を有している。番号欄205は、昇順のパターン番号を示す。パターン番号#1,#2において、CK1欄201は「N(異常が発生していない)」であり、パターン番号#3,#4において、CK1欄201は「Y(異常が発生している)」である。すなわち、CK1欄201の内容は、上から順に「N,N,Y,Y」になっている。これらパターン番号#1~#4において、CK3欄203は、CK1欄201に対して反転した値、すなわち「Y,Y,N,N」になっている。また、パターン番号#1~#4において、CK2欄202は、上から順に「N,Y,N,Y」になっている。
【0096】
また、図21におけるテーブル210は、番号欄215と、CK1欄211と、CK2欄212と、CK3欄213と、を有している。このテーブル210は、テーブル200の行および列の位置を入れ替えたものである。すなわち、テーブル200における2行目と3行目を入れ替えているため、番号欄215は、上から「1,3,2,4」になっている。また、CK2欄212は、CK1欄211の左側に配置されている。テーブル210において、「CK1,CK3」のパターンは、上から順に「N,Y」「Y,N」「N,Y」「Y,N」である。つまり、「N,Y」のパターンが2回発生し、「Y,N」のパターンも2回発生している。
【0097】
そこで、同一のパターンが発生しないように、なるべく上側に属する欄、すなわち、CK3欄213の内容を変更し、図21におけるテーブル220を生成する。テーブル220は、番号欄225と、CK1欄221と、CK2欄222と、CK3欄223と、を有している。テーブル220において、「CK1,CK3」のパターンは、パターン番号#1において「N,N」であり、2行目のパターン番号#3において「Y,Y」である。それ以外のテーブル220の内容は、テーブル210と同様である。テーブル220において、「CK1,CK3」のパターンは、上から順に「N,N」「Y,Y」「N,Y」「Y,N」であり、重複は生じていない。
【0098】
このテーブル220において、列の位置を入れ替えて、テーブル230を作成する。テーブル230は、番号欄235と、CK1欄231と、CK2欄232と、CK3欄233と、を有している。これらCK1欄231、CK2欄232、CK3欄233の内容は、テーブル220のCK1欄221、CK2欄222、CK3欄223と同一である。
【0099】
テーブル230において、「CK1,CK2」のパターンは、上から順に「N,N」「Y,N」「N,Y」「Y,Y」であり、重複は生じていない。重複が生じていなければ、変更を加えることなく、次に進む。
【0100】
このテーブル230において、列の位置を入れ替えて、チェック項目テーブル240を作成する。チェック項目テーブル240は、番号欄245と、CK1欄241と、CK2欄242と、CK3欄243と、を有している。これらCK1欄241、CK2欄242、CK3欄243の内容は、テーブル230のCK1欄231、CK2欄232、CK3欄233と同一である。
【0101】
チェック項目テーブル240において、「CK2,CK3」のパターンは、上から順に「N,N」「N,Y」「Y,Y」「Y,N」であり、重複は生じていない。重複が生じていなければ、変更を加えることなく、次に進む。但し、このチェック項目テーブル240にて、列の入れ替えは終了しているため、チェック項目テーブル240が最終的なチェック項目テーブルになる。
【0102】
図22は、チェック項目テーブル生成処理ルーチンのフローチャートである。
図22において処理がステップS26に進むと、GUI設問文生成部6は、追加内容データ530(図18参照)を取得する。すなわち、所定の設問画面(図示せず)をディスプレイ22に表示させ、ユーザ50による入力結果に応じて、追加内容データ530を取得する。
【0103】
次に、処理がステップS27に進むと、GUI設問文生成部6は、各チェック項目について「N(異常発生していない)」および「Y(異常発生している)」を組み合わせたチェック項目テーブル(例えば図21におけるチェック項目テーブル240)を生成する。
【0104】
次に、処理がステップS28に進むと、GUI設問文生成部6は、追加する新チェック項目と、これらチェック項目にリンクする故障モードと、に基づいて、GUI設問文を生成する。このGUI設問文は、例えば、設問画面610(図19参照)における質問表示部612の文章である。ステップS28においては、チェック項目テーブル240における全ての組合せに従って、組合せ毎に設問文を生成する。
【0105】
チェック項目テーブル240において新チェック項目の状態が「Y(異常発生している)」である場合、設問文は、例えば「電源ランプが光らない」になる。また、新チェック項目の状態が「N(異常発生していない)」である場合、設問文は、例えば「電源ランプが光る」になる。
【0106】
(設問文回答処理)
図23は、設問文回答処理ルーチンのフローチャートである。
ユーザ50が回答選択部614(図19参照)に示された選択肢に対して、順序を付与しつつ、一または複数の選択肢を選択すると、GUI設問文生成部6にて本ルーチンが起動される。図23において処理がステップS29(情報取得過程)に進むと、GUI設問文生成部6は、ユーザ50からの回答に基づいて、例えば図24に示す故障モード・ランキングテーブル560を作成する。
【0107】
図24は、故障モード・ランキングテーブル560の一例を示す図である。
故障モード・ランキングテーブル560は、チェック項目組合せ情報561と、ランキング情報562(発生確率対応情報)と、を含む。チェック項目組合せ情報561の内容は、チェック項目テーブル240(図21参照)に等しい。
【0108】
また、ランキング情報562は、故障モードのノードID(例えば図中のFM1,FM2,FM3)に対して付与した、「1」、「2」、「3」等のランキング値を示す情報である。なお、ランキング値は、その値が大きいほど、当該故障モードが発生している可能性が高いことを意味する。例えば、ユーザ50が付与した順位の1位にランキング値「3」、2位に「2」、3位に「1」を付与するとよい。そして、チェック項目の追加依頼の入力があると、追加依頼されたチェック項目に対応する故障の発生確率を含めてランキング情報562を更新するとよい。
【0109】
図23に戻り、処理がステップS30(確率情報生成過程)に進むと、確率情報生成部8(図9参照)は、確率情報テーブル570(図25参照)を生成する。
図25は確率情報テーブル570の一例を示す図である。
確率情報テーブル570は、チェック項目CK1,CK2,CK3が「Y(異常発生している)」または「N(異常発生していない)」であるとき、故障モードFM1,FM2,FM3が「Y(異常発生している)」になる確率を示したものである。
【0110】
ここで、チェック項目CKp(但し、p=1,2,3,…)が「Y(異常発生している)」であるとき、故障モードFMq(但し、q=1,2,3,…)が「Y」になる確率を、「確率情報P(CKp=Y|FMq=Y)」のように表記する。
【0111】
確率情報テーブル570の内容は、故障モード・ランキングテーブル560におけるランキング値の平均値である。例えば、テーブル560においてチェック項目CK1は、1行目および2行目において「N」である。そして、これらの行において、故障モードFM1は「1」,「1」であり、両者の平均値は「1」である。従って、確率情報テーブル570に示された確率情報P(CK1=N|FM1=N)は「1」になっている。
【0112】
また、テーブル560においてチェック項目CK1は、3行目および4行目において「Y」である。そして、これらの行において、故障モードFM1は「2」,「3」であり、両者の平均値は「2.5」である。従って、確率情報テーブル570に示された確率情報P(CK1=Y|FM1=Y)は「2.5」になっている。
【0113】
各チェック項目CKpの状態が「Y」になる確率よりも「N」になる確率が高い場合には、使用する「確率情報P(CKp=Y|FMq=Y)」と、使用する「確率情報P(CKp=N|FMq=Y)」の値は、予め決定した所定値にしてもよい。このように、本実施形態によれば、追加依頼されたチェック項目に対応するランキング値の平均値に基づいて、確率情報Pを定める。換言すれば、この動作は、チェック項目の発生確率に関する情報(例えば、発生確率の高い順のランキング値)に基づいて、故障の発生確率を推定する動作である。
【0114】
図25に示すような確率情報テーブル570が完成した後、確率情報生成部8は、確率情報P(CKp=Y|FMq=Y)と、確率情報P(CKp=N|FMq=Y)とは、両者の和が「1」になるように、確率情報テーブル570を修正する。
例えば、図25において、確率情報P(CK1=Y|FM1=Y)は「2.5」であり、確率情報P(CK1=N|FM1=Y)は「1.0」であり、両者の割合は「5:2」である。そこで、確率情報生成部8は、確率情報P(CK1=Y|FM1=Y)を「5/7=0.714」、確率情報P(CK1=N|FM1=Y)を「2/7=0.286」のように修正する。
【0115】
図23に戻り、次に、処理がステップS31に進むと、確率情報生成部8は、確率情報テーブル570(図25参照)の内容に基づいて、アセット知識データベース1を更新する。すなわち、確率情報生成部8は、上述したノード内容情報140(図2参照)、リンク情報150(図3参照)、保守知識データ710(図4参照)、故障モード発生確率表110(図6参照)、および子ノード異常発生確率表120,130(図7図8参照)に対して、新チェック項目に対応する新たなレコードを追加する。以上により、本ルーチンの処理が終了する。
【0116】
このように、確率情報生成部8は、設問文回答処理ルーチン(図23)に基づいてアセット知識データベース1を更新する。すなわち、確率情報生成部8は、保守作業の実施後に、各々のチェック項目に対応する故障の確率情報を更新する。従って、その後に診断用ネット生成部2(図9参照)が実行された際に生成されるベイジアンネットワーク情報80は、従前のものと比較して、新たなチェック項目CK1,CK2,CK3と、これらに接続される新たなリンク情報と、を含むものになる。従って、確率情報生成部8は、チェック項目の追加依頼の入力があると、追加依頼されたチェック項目に対応する故障の発生確率を含めて、ランキング情報を更新することになる。
【0117】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
図26は、第2実施形態による設備異常原因推定システム10のブロック図である。なお、以下の説明において、上述した第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図26において、本実施形態の設備異常原因推定システム10は、第1実施形態のもの(図9参照)と比較して、更新効果評価部9を備えている点が異なる。
【0118】
更新効果評価部9は、保守作業報告データベース5から保守作業報告データ520(図17参照)を読み出す。そして、確率情報テーブル570(図25参照)を適用して更新された後のベイジアンネットワーク情報80による故障モードの正解率と、更新前のベイジアンネットワーク情報80による故障モードの正解率とを比較し、入出力部20を介して、その結果をユーザ50に提示する。
【0119】
更新効果評価部9は、更新後のベイジアンネットワーク情報80による正解率が更新前のベイジアンネットワーク情報80による正解率よりも低い場合は、アセット知識データベース1の内容を、確率情報テーブル570が適用される前の状態に戻す。これにより、以降は更新前のベイジアンネットワーク情報80が再び適用されるようになる。一方、更新効果評価部9は、更新後のベイジアンネットワーク情報80による正解率が更新前のベイジアンネットワーク情報80による正解率よりも高い場合は、アセット知識データベース1の内容をそのままの状態(確率情報テーブル570が適用された状態)で維持する。
【0120】
これにより、以降は、更新後のベイジアンネットワーク情報80が再び適用されるようになる。従って、本実施形態によれば、確率情報テーブル570が不適切である場合にベイジアンネットワーク情報80の性能が低下することを防止できる。
【0121】
[実施形態の効果]
以上のように上述した各実施形態によれば、保守システム(10)は、保守対象機器(60)に対するチェック項目と、チェック項目で検知する故障の発生確率(113,125,133)と、を記憶する記憶部(1,3,982)と、チェック項目の追加依頼の入力を受け付ける入力部(24)と、保守員に対し、故障原因として可能性が高いものを問い合わせるための設問を生成する設問生成部(6)と、設問に対する回答に基づき、追加するチェック項目に対応する故障の発生確率を推定する発生確率推定部(8)と、を有することを特徴とする。これにより、発生確率(P)等の各種情報を簡易に更新できる。
【0122】
また、設問生成部(6)は、保守作業報告データベース(5)に蓄積された異常原因と、チェック項目と、チェック結果のデータと、を用いて、故障原因として可能性が高いものを問い合わせるための設問を生成すると一層好ましい。これにより、異常原因と、チェック項目と、チェック結果のデータと、を用いて、発生確率(P)等の各種情報をより適切に更新できる。
【0123】
また、故障の発生確率の高い順にチェック項目を並べて表示する表示部(22)をさらに備えると一層好ましい。これにより、ユーザは、故障発生確率の高いチェック項目を容易に認識できる。
【0124】
また、記憶部(1,3,982)は、チェック項目に対応する故障の発生確率(P)に関するランキング情報(562)を記憶し、チェック項目の追加依頼の入力があると、追加依頼されたチェック項目に対応する故障の発生確率を含めてランキング情報(562)を更新すると一層好ましい。これにより、チェック項目の追加依頼の入力があると、追加依頼されたチェック項目に対応する故障の発生確率を含めてランキング情報(562)を更新することができる。
【0125】
また、発生確率推定部(8)は、保守作業の実施後に、各々のチェック項目に対応する故障の発生確率(P)を更新すると一層好ましい。これにより、保守作業の結果を発生確率(P)に反映させることができる。
【0126】
また、発生確率推定部(8)は、過去に発生した原因と結果の積み重ねを統計的に処理して故障の発生確率(P)を導き出すと一層好ましい。これにより、一層適切な発生確率(P)を導き出すことができる。
【0127】
また、発生確率推定部(8)は、ベイジアンネットワーク情報(80)を利用して故障の発生確率(P)を導き出すと一層好ましい。これにより、ベイジアンネットワーク情報(80)に含まれる各種データを有効利用できる。
【0128】
また、他の見地において、上述した各実施形態によれば、異常原因推定装置(10)は、保守対象機器60における複数の故障原因とチェックすべき項目である複数のチェック項目との各組合せにおいて、各々の故障原因が発生した場合に各々のチェック項目に異常が生じる確率情報Pを記述した異常発生確率データ(120)に基づいて、複数の故障原因に対応する複数の故障原因情報(831~834)と、複数のチェック項目に対応するチェック項目情報(841~844)と、を含む情報群(80)を生成する情報群生成部(2)と、入出力部20に対する操作に基づいて、追加する新たなチェック項目である新チェック項目を取得するとともに、入出力部20に対する操作に基づいて、新チェック項目に対して、複数の故障原因の各々の発生確率の大きさに対応する発生確率対応情報(562)を取得する情報取得部(6)と、発生確率対応情報(562)に基づいて、新チェック項目に対する確率情報Pを生成し、異常発生確率データ(120)に対して新チェック項目に係るチェック項目情報を追加する確率情報生成部8と、を備える。これにより、追加する新たなチェック項目である新チェック項目と、新チェック項目に対する複数の故障モードの発生確率対応情報(562)と、を指定するという簡単な操作によって確率情報生成部8は、異常発生確率データ(120)に新チェック項目を追加することができる。これにより、情報群(80)を簡易に更新できる。
【0129】
また、情報取得部(6)は、複数の新チェック項目の組合せの中の少なくとも一つのパターンを含むチェック項目テーブル240を生成し、生成したチェック項目テーブル240に基づいて設問文(612)を生成すると一層好ましい。これにより、ユーザは、設問文(612)に基づいて発生確率対応情報(562)を入力できるため、情報群(80)を一層簡易に更新できるようになる。
【0130】
また、異常原因推定装置(10)は、設問文(612)に対する回答として、入出力部20から複数の新チェック項目に対応する複数の故障原因の順序(確率順序)を受信する確率情報入力部7をさらに備えると一層好ましい。これにより、ユーザは、新チェック項目に対して順序を付与するという簡単な操作によって新チェック項目と故障原因との関係を入力できるため、情報群(80)を一層簡易に更新できるようになる。
【0131】
また、確率情報生成部8は、確率情報入力部7から入力された順序(確率順序)に対応する発生確率対応情報(562)に基づいて、新チェック項目が、異常発生状態になる場合の各々の故障原因の発生確率対応情報(562)の平均値と、新チェック項目が、正常状態になる場合の各々の故障原因の発生確率対応情報(562)の平均値と、に基づいて、新チェック項目が異常発生状態になる場合に各々の故障原因が発生する確率と、新チェック項目が正常状態になる場合に各々の故障原因が発生する確率と、を算出すると一層好ましい。これにより、ユーザは、新チェック項目に対応して故障原因に順序(確率順序)を付与するという簡単な操作によって各種確率情報を生成できるため、情報群(80)を一層簡易に更新できるようになる。
【0132】
また、第2実施形態のように、異常原因推定装置(10)は、保守作業報告データベース5に蓄積された保守対象機器60の保守作業履歴に基づいて、更新した後の情報群(80)の正解率を計算して入出力部20を介して提示し、更新後の情報群(80)の正解率の方が高い場合は更新後の情報群(80)を、今後適用する情報群(80)として採用する更新効果評価部9をさらに備えると一層好ましい。これにより、確率情報生成部8が新チェック項目に対応して決定した確率が不適切である場合に情報群(80)の性能が低下することを防止できる。
【0133】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0134】
(1)上記実施形態における設備異常原因推定システム10のハードウエアは一般的なコンピュータによって実現できるため、各図に示したフローチャート、その他上述した各種処理を実行するプログラム等を、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記憶媒体(プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
【0135】
(2)各フローチャートに示した処理、その他上述した各処理は、上記実施形態ではプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、その一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたハードウエア的な処理に置き換えてもよい。
【0136】
(3)上記実施形態において実行される各種処理は、図示せぬネットワーク経由でサーバコンピュータが実行してもよく、上記実施形態において記憶される各種データも該サーバコンピュータに記憶させるようにしてもよい。
【0137】
(4)上記実施形態における「チェック項目」は、ユーザ50がチェックする項目であったが、設備異常原因推定システム10がチェック項目を自動的に収集してもよい。
【符号の説明】
【0138】
1 アセット知識データベース(記憶部)
3 保守知識ベイジアンネットワークデータベース(記憶部)
5 保守作業報告データベース
6 GUI設問文生成部(設問生成部)
8 確率情報生成部(発生確率推定部)
10 設備異常原因推定システム(保守システム)
22 ディスプレイ(表示部)
24 入力装置(入力部)
60 保守対象機器
80 ベイジアンネットワーク情報(情報群)
113,125,133 確率情報(発生確率)
125,133 (発生確率)
P 確率情報(発生確率)
562 ランキング情報(発生確率対応情報)
612 質問表示部(設問)
P 確率情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図16
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図21
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図25
図26