(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040658
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】スポーツ用衣類
(51)【国際特許分類】
A41C 3/08 20060101AFI20240318BHJP
A41B 9/02 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A41C3/08
A41B9/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145133
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】518408073
【氏名又は名称】株式会社ウェアラブル
(74)【代理人】
【識別番号】110002642
【氏名又は名称】東京共同弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】永田 浩一
【テーマコード(参考)】
3B128
3B131
【Fターム(参考)】
3B128EA02
3B128EC12
3B131AB04
3B131BA13
3B131BA21
3B131BA41
3B131BB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スポーツ用衣類の装着及び装着者のバスト、ヒップの位置の調整を容易にし、運動時におけるバスト・ヒップの造形維持とバスト・ヒップのサポートを可能とするスポーツ用衣類を提供する。
【解決手段】装着者のバストを収容するカップ部と、装着者の背中を覆う背面部と、肩部と、胴回りを覆う胴部とを備えるスポーツ用衣類で、カップ部は、カップ表布部とサポート部とを有し、サポート部は、所定の方向に伸縮性を有し、カップ部の周縁部に固定され、カップ部表布部は、サポート部の全体を覆うように設けられ、サポート部は、それぞれの端部が重なり合うように取り付けられ、三角形のバスト収容口を形成する。バスト収容口は、サポート部の伸縮に伴って伸縮し、カップ部内にバストが収容するものを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者のバストを収容する1対のカップ部と、
前記装着者の背中を覆う背面部と、
前記装着者の肩に掛けられる1対の肩部と、
前記装着者の胴回りを覆う胴部とを備えるスポーツ用衣類であって、
前記1対のカップ部の各々は、カップ表布部とサポート部とを有し、
前記サポート部は、内側サポート部材、外側サポート部材、及び下側サポート部材から構成され、
前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材は、所定の方向に伸縮性を有し、前記カップ部の周縁部に固定され、
前記カップ部表布部は、前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材の全体を覆うように設けられ、
前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材は、それぞれの端部が重なり合うように取り付けられて、三辺からなる三角形のバスト収容口を形成し、
前記バスト収容口は、前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材の伸縮に伴って伸縮し、前記カップ部内に前記バストが収容されることを特徴とするスポーツ用衣類。
【請求項2】
前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び下側サポート部材は、それぞれ、前記カップ部に固定されず、遊離した状態の直線部を有し、
前記直線部が、前記バスト収容口の前記三角形の前記三辺を構成する、請求項1記載のスポーツ用衣類。
【請求項3】
前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び下側サポート部材のうち、少なくとも1つの部材は、短手方向に伸び難く、長手方向に伸び易い素材から構成される、請求項1記載のスポーツ用衣類。
【請求項4】
前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び下側サポート部材は、同一の素材から構成される、請求項1記載のスポーツ用衣類。
【請求項5】
前記バスト収容口の前記三角形の前記三辺の長さの比率が、前記三角形の前記三辺の合計に対し、0.39:0.26:0.35の関係を満たす、請求項1記載のスポーツ用衣類。
【請求項6】
装着者の臀部を収容する1対のカップ部と、
前記装着者の胴回りを覆う胴部とを備えるスポーツ用衣類であって、
前記1対のカップ部の各々は、カップ表布部とサポート部とを有し、
前記サポート部は、内側サポート部材、外側サポート部材、及び下側サポート部材から構成され、
前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材は、所定の方向に伸縮性を有し、前記カップ部の周縁部に固定され、
前記カップ部表布部は、前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材の全体を覆うように設けられ、
前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材は、それぞれの端部が重なり合うように取り付けられて、三辺からなる三角形のヒップ収容口を形成し、
前記ヒップ収容口は、前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材の伸縮に伴って伸縮し、前記カップ部内に前記臀部が収容されることを特徴とするスポーツ用衣類。
【請求項7】
前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び下側サポート部材は、それぞれ、前記カップ部に固定されず、遊離した状態の直線部を有し、
前記直線部が、前記バスト収容口の前記三角形の前記三辺を構成する、請求項6記載のスポーツ用衣類。
【請求項8】
前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び下側サポート部材のうち、少なくとも1つの部材は、短手方向に伸び難く、長手方向に伸び易い素材から構成される、請求項6記載のスポーツ用衣類。
【請求項9】
前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び下側サポート部材は、同一の素材から構成される、請求項6記載のスポーツ用衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ用衣類に関し、特に、スポーツ用衣類の装着及び装着者の脂肪部分(バスト、ヒップなど)の位置の調整を容易にし、運動時におけるバスト・ヒップの造形維持とバスト・ヒップのサポートを可能とするスポーツ用衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
女性のバストは、主に、脂肪からなり、バストに負荷がかかるとバストの繊維等が切れることがある。とりわけ、ジョギング等のスポーツを行う際に、バストが揺れることで、バストに大きな負荷が掛かり、バストの垂れにつながるおそれもある。よって、バストの揺れによるバストの垂れを防止すべく、従来、運動時におけるバストの揺れを軽減するために、スポーツブラなどのスポーツ用衣類が製造販売されている。
【0003】
多くのスポーツ用衣類は、脂肪部分(例えば、バスト)を正しくホールドするために、カップ部を有している。バスト等の脂肪部分の造形を保つためには、着用時には、脇からバスト全体を下から斜め上にすくい上げるようにして、カップ部に収めて、バストの位置を調整する作業が必要になる。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のスポーツ用衣類では、運動時における脂肪部分(例えば、バスト(乳房))の揺れの防止を重視する構造を採用するが故に脂肪部分が過剰に圧迫されたり、着用する際の脂肪部分の位置の調整が必ずしも容易でないという問題があった。
本発明は、スポーツ用衣類の装着及び装着者の脂肪部分(バスト、ヒップなど)の位置の調整を容易にし、運動時におけるバスト・ヒップの造形維持とバスト・ヒップのサポートを可能とするスポーツ用衣類を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスポーツ用衣類は、装着者のバストを収容する1対のカップ部と、前記装着者の背中を覆う背面部と、前記装着者の肩に掛けられる1対の肩部と、前記装着者の胴回りを覆う胴部とを備え、前記1対のカップ部の各々は、カップ表布部とサポート部とを有し、前記サポート部は、内側サポート部材、外側サポート部材、及び下側サポート部材から構成され、前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材は、所定の方向に伸縮性を有し、前記カップ部の周縁部に固定され、前記カップ部表布部は、前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材の全体を覆うように設けられ、前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材は、それぞれの端部が重なり合うように取り付けられて、三辺からなる三角形のバスト収容口を形成し、前記バスト収容口は、前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材の伸縮に伴って伸縮し、前記カップ部内に前記バストが収容されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のスポーツ用衣類は、装着者の臀部を収容する1対のカップ部と、前記装着者の胴回りを覆う胴部とを備えるスポーツ用衣類であって、前記1対のカップ部の各々は、カップ表布部とサポート部とを有し、前記サポート部は、内側サポート部材、外側サポート部材、及び下側サポート部材から構成され、前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材は、所定の方向に伸縮性を有し、前記カップ部の周縁部に固定され、前記カップ部表布部は、前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材の全体を覆うように設けられ、前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材は、それぞれの端部が重なり合うように取り付けられて、三辺からなる三角形のヒップ収容口を形成し、前記ヒップ収容口は、前記内側サポート部材、前記外側サポート部材、及び前記下側サポート部材の伸縮に伴って伸縮し、前記カップ部内に前記臀部が収容されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスポーツ用衣類は、着用時のバストやヒップ等の脂肪部分を圧迫することなく、運動時のバスト等の脂肪部分の揺れを軽減し、着用の際のバスト等の脂肪部分の位置の調整を容易することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のスポーツ用衣類の一例である、第一の実施形態に係るスポーツ用ブラジャーを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明のスポーツ用衣類の一例である、第一の実施形態に係るスポーツ用ブラジャーを示す正面図である。
【
図3】
図3は、本発明のスポーツ用衣類を構成するサポート部の形状の一例を示す図である。(a)は、内側サポート部材、(b)は、下側サポート部材材、(c)は、外側サポート部材、(d)は、下側サポート部材、内側サポート部材および外側サポート部材を組み合わせた状態を示す。
【
図4】
図4は、本発明のスポーツ用衣類の一例である、第一の実施形態に係るスポーツ用ブラジャーを示す背面図である。
【
図5】
図5は、本発明のスポーツ用衣類の一例である、第二の実施形態に係るスポーツ用ショーツを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のスポーツ用衣類の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下に説明する構成は、本発明の一実施態様であり、本発明はこれに限定されない。
【0012】
尚、以下の説明において、上とは図面中の方向Y1をいい、下とは図面中の方向Y2をいう。また右とは図面中の方向X1をいい、左とは図面中の方向X2をいう。装着者の前側(正面)とは図面中の方向Z1をいい、装着者の後ろ側(背面)とは図面中の方向Z2をいう。装着者の左脇側とは図面中の方向X1をいい、装着者の右脇側とは図面中の方向X2をいう。
また、本発明の実施例で用いる「取付」や「固定」という用語は、「縫製」に限らず、接着剤を用いて生地同士を接着する概念をも含む意味で用いている。
【0013】
本実施の形態に係るスポーツ用衣類は、典型的には、装着者の乳房(バスト)を受け入れるカップ部を有するスポーツ用ブラジャーであるが、当該衣類は、例えば、カップ付きのタンクトップ、スリップ、キャミソール、ドレスの他、ボディスーツ、レオタード、水着等やその他の脂肪部分に当接する衣類にも適用可能である。
【0014】
以下では、本発明に基づく実施例1及び実施例2について、
図1から
図5を用いて説明する。
【0015】
(実施例1)
図1は、本発明のスポーツ用衣類の一例である、実施例1に係るスポーツ用ブラジャーを示す斜視図である。
図1に示すように、本実施例のスポーツ用ブラジャー1は、装着者のバスト(乳房)を収容する1対のカップ部10、装着者の背中を覆う背面部20、装着者の肩に掛けられる1対の肩部30、および、装着者のバスト下の胴回りを覆う胴部40を主要構成要素とする。本実施例のスポーツ用ブラジャー1は、被って着用するタイプの運動時に装着するためのブラジャーであり、装着者の正面や背面にホック等の連結係止部を有する日常的に装着するブラジャーとは構造的に異なる。カップ部10は、装着者のバストを覆い、その内部にバストを収容する。背面部20は、カップ部10の左右両脇から装着者の背面へ延びて装着者の背中を覆う。肩部30は、カップ部10と背面部20とを連結し、装着者の左右の肩に掛けられる。
【0016】
スポーツ用ブラジャー1は、襟ぐり及び袖ぐりを有する前身頃101と後身頃102とを、それぞれの肩と脇を連結することで形成できる。
【0017】
前身頃101は、後述するカップ表布部10Dを含む表地と裏地とを備え、表地と裏地は、略同じ形状であり、襟ぐり、袖ぐり、脇及び下端が縫い合わされる。裏地は、装着者と接する内側に位置し、表地は装着者と反対の外側に位置する。
【0018】
前身頃101及び後身頃102の素材は、柔軟性及び伸縮性を有することが好ましい。これにより、装着者が動作しやすく、快適性が向上する。また吸汗性を有する素材も、着用時の快適性が向上し、好ましい。そのような素材としては、例えば、綿、アクリル、ナイロン、ポリウレタン等が挙げられる。
【0019】
スポーツ用ブラジャー1は、前身頃101及び後身頃102の下端に設けられた胴部40を備える。胴部40は、ゴム等の伸縮性のある素材で形成され、胴部40の伸縮性により、スポーツ用ブラジャー1が装着者のバスト下の胴回りにフィットしやすくなる。
【0020】
図1は、左側のバストを収容するカップ部10の構造をわかりやすくするために、装着者のバストトップを含むバスト表面全体を覆うカップ表布部10Dを外した状態を図示した斜視図であり、
図2は、その正面図である。装着者のバスト(乳房)を収容する1対のカップ部10は、それぞれ、カップ表布部10Dとサポート部100とを有する。各サポート部100は、内側サポート部材10A、外側サポート部材10B、及び下側サポート部材10Cを備える。内側サポート部材10A、外側サポート部材10B、及び下側サポート部材10Cは、カップ部10の周縁部に設けられ、カップ部表布部10Dは、内側サポート部材10A、外側サポート部材10B、及び下側サポート部材10Cを含むカップ部10の前側(Z1側)の全体を覆うように設けられている。1対のカップ部10は、前中心部分M(
図2ご参照)で連結され、一体となっている。カップ部10の両脇部において、背面部20が連結されている。
【0021】
カップ部10の肌側(Z2側)には、カップ部10の下側に位置し、バストを下方向から保持する下側サポート部材10Cと、カップ部10の内側上方(X2-Z1側)に位置し、バストを内側上方から保持する内側サポート部材10Aと、カップ部10の外側上方(X1-Z1側)に位置し、バストを外側上方から保持する外側サポート部材10Bとが設けられている。
【0022】
下側サポート部材10Cにおいて、脇側(X1側)は、背面部20もしくはカップ部10と背面部20との固着位置に取り付けられ、前中心側(X2側)は、カップ部10の前中心側(X2側)に取り付けられ、下縁側(Y2側)は、カップ部10の下縁側(Y2側)に取り付けられている。一方、下側サポート部材10Cの上縁側に位置する直線部は、カップ部10に固定されず、遊離した状態となっている。
【0023】
内側サポート部材10Aにおいて、下側(Y2側)は、カップ部10の下側に取り付けられ、前中心側(X2側)は、カップ部10の前中心側(X2側)に取り付けられ、上側(Y1側)は、肩部30に取り付けられている。一方、内側サポート部材10Aの右縁側(X1側)に位置する直線部は、カップ部10に固定されず、遊離した状態となっている。
【0024】
外側サポート部材10Bにおいて、下側(Y2側)は、カップ部10の下側に取り付けられ、脇側(X1側)は、背面部20に取り付けられ、上側(Y1側)は、肩部30に取り付けられている。一方、外側サポート部材10Bの左縁側(X2側)に位置する直線部は、カップ部10に固定されず、遊離した状態になっている。
【0025】
また、下側サポート部材10Cの左端部は、内側サポート部材10Aの下端部に取り付けられ、下側サポート部材10Cの右端部は、外側サポート部材10Bの下端部に取り付けられている。更に、内側サポート部材10Aの上端部は、外側サポート部材10Bの上端部に取り付けられている。このように、内側サポート部材10A、外側サポート部材10B、及び下側サポート部材10Cをカップ部10の周縁部に固定しつつ、内側サポート部材10A、外側サポート部材10B、及び下側サポート部材10Cのそれぞれに遊離した状態の直線部を設けることで、従来のスポーツバラが装着者のバストに与えるような締め付け感を軽減しつつ、3方向よりバストを保持(ホールド)し、バストの造形を保つことを可能とする。
【0026】
図3は、本発明のスポーツ用衣類を構成するサポート部100の形状の一例を示す図である。(a)は、下側サポート部材10C、(b)は、内側サポート部材材10A、(c)は、外側サポート部材10B、(d)は、下側サポート部材10C、内側サポート部材10Aおよび外側サポート部材10Bを組み合わせた状態を示す。
【0027】
図3に示されているように、サポート部100を構成する内側サポート部材10A、外側サポート部材10B、及び下側サポート部材10Cのそれぞれの端部が重なり合うように取り付けることで、辺t1~辺t3からなる三角形のバスト収容口10Eが形成される。別言すると、三角形のバスト収容口10Eは、内側サポート部材10Aの脇側(X1側)の直線部T1と、外側サポート部材10Bの前中心側の直線部T2と、下側サポート部材10Cの上側の直線部T3とが交差するように内側サポート部材10A、外側サポート10B、及び下側サポート部材10Cをそれぞれの端部で取り付けることで、辺t1~辺t3からなる三角形のバスト収容口10Eが形成される。
【0028】
本実施例では、内側サポート部材10A、外側サポート部材10B、及び下側サポート部材10Cは、製造プロセスの簡素化のため、同一の繊維素材で構成されているが、その繊維素材は特に限定されず、天然繊維、合成繊維、またはそれらの組み合わせでも良い(例えば、トリコット、ワンウェイトリコネット等)。
それぞれの部材の短手方向(図中の矢印方向)に伸び難く、長手方向に(図中の矢印方向に直行する方向)に伸び易い素材からなる。この素材の伸縮により、内側サポート部材10Aの直線部T1、外側サポート部材10Bの直線部T2、及び下側サポート部材10Cの直線部T3が伸縮し、これに伴い、バスト収容口10Eも伸縮することが可能になる。これにより、バストをカップ部10に収容し、バスト位置の調整がし易くなる一方で、運動時におけるバストの揺れを抑えることができる。
【0029】
本実施例では、内側サポート部材10Aと外側サポート部材10Bとが、それぞれの短手方向に伸び難いため、バストの左右方向(X方向)の揺れを抑えることができる。また、下側サポート部材10Cは、その短手方向が伸び難いため、バストの上下方向(Y方向)の揺れを抑えることができる。
【0030】
ただし、スポーツにおいても、ランニング等のようにバストの上下方向の揺れが顕著な運動もあれば、ヨガ等のようにバストが揺れる度合いの少ない運動もあるので、運動の種類に合わせて、内側サポート部材10A、外側サポート部材10B、及び下側サポート部材10Cの長方向だけでなく短手方向も伸びやすい素材を採用し、揺れや衝撃を抑える力を少なくし、締め付けをより緩和することも可能である。
【0031】
また、本実施例では、製造プロセスの簡素化のために、内側サポート部材10A、外側サポート部材10B、及び下側サポート部材10Cは、同一素材で構成されているが、異なる素材で構成することも可能である。例えば、下側サポート部材10Cには、長手方向だけでなく短手方向に伸びやすい素材を使用し、内側サポート部材10Aと外側サポート部材10Bには、長手方向に伸び難い素材を使用することも可能である。或いは、下側サポート部材10Cには、長手方向に伸び難い素材を使用し、内側サポート部材10Aと外側サポート部材10Bには、長手方向だけでなく短手方向に伸び易い素材を使用することも可能である。このように、素材の伸び易さの方向が異なる素材を内側サポート部材10A、外側サポート部材10B、及び下側サポート部材10Cに使用することで、装着者のスポーツの種類や締め付け感の好み、バストの造形を保つことへの意識等に応じて、スポーツ用ブラジャー1の装着時におけるバストの位置の調整をし易くしつつバストの締め付けを緩和しながら揺れを抑えることができる。
【0032】
本実施例では、バスト収容口10Eは三辺t1、t2、t3を構成されるところ、辺t1の長さは、60mmであり、辺t2の長さは、40mmであり、辺t3の長さは、55mmであり、三辺の合計の長さは、155mmである。しかしながら、三辺t1、t2、t3の長さをこれら以外の長さにすることも可能である。例えば、装着者のバストのサイズ(ブラジャー1のサイズ)や装着時のバスト位置の調整作業をし易くする観点等より、バスト収容口10Eの三辺t1、t2、t3の長さの比率が、三角形の三辺の長さの合計に対し、0.39:0.26:0.35の関係を満たすように、三辺t1、t2、t3を長くすることもできる。
【0033】
また、サポート部100におけるバスト収容口10Eの広げやすさやカップ部10のホールド力を確保できる範囲内において、バスト収容口10Eの三角形状は、正三角形や二等辺三角形など他の三角形形状にすることも可能である。
【0034】
図4は、本発明のスポーツ用衣類の一例である、第一の実施形態に係るスポーツ用ブラジャーを示す背面図である。
図4を参照するに、スポーツ用ブラジャー1を装着する場面において、装着者は、スポーツ用ブラジャー1を被り、バストが、カップ部10に位置するようにし、バスト収容口10Eからカップ部10内に収容されるようにし、バストがカップ部10内で適切な位置で収容されるように調整する。さらに、装着者は、必要に応じて、胴部40を下方向(Y方向)に引っ張る等して、スポーツ用ブラジャー1が体にフィットするように調整する。
【0035】
尚、装着者のバストトップを覆うためや左右のバストの大きさが異なる装着者のために、パッド(図示せず)をカップ表布部10Eとサポート部10A、10B、10Cとの間に挟まれるように一対のカップ部10の両方又はいずれかに設けることもできる。パッドの形状は、装着者のバストを被服するものであれば、特に限定されず、例えば、円形状、楕円形状、四角形状等であってもよいし、不規則な形状であってもよい。
【0036】
パッドは、Z1方向に凸形状となるように設置することで、バストの形状にフィットし、バストの見栄えをよくすることができる。
【0037】
また、パッドの素材としては、例えばウレタン、シリコン、綿等の柔軟性及び弾力性を有する材料を使用できる。
【0038】
(装着時)
スポーツ用以外の一般的なブラジャーを装着する場合において、ブラジャーを装着後、脇の肉等の余った脂肪をかき集める等のブラジャーに正しく収まるようバストの位置を調整することが、バストの造形を保つために推奨されている。このバスト位置の調整作業は、一方の手でブラジャーの下部を保持しながら、他方の手でバスト(脂肪部分)がカップ部に正しく収容されるように持ち上げたり、寄せたりすることである。しかし、従来のスポーツ用ブラにおいては、そのようなバスト位置の調整作業を行うことを意図した構造を有しておらず、運動時におけるバストの揺れ防止に主眼を置き、バストを覆うカップ部は、締め付けの強い素材で形成されている。よって、スポーツ用ブラジャーでは、そのようなカップ部の強い伸縮力や構造によって、バスト位置の調整作業は、必ずしも容易ではない。とりわけ、バストが大きい(脂肪部分の多い)女性やバストの造形を保つことを強く意識している装着者にとって、締め付けの強い従来のスポーツ用ブラジャーを装着する場合におけるバスト位置の調整作業は、時間及び労力が掛かって、煩わしいことがある。
【0039】
本実施例のスポーツ用ブラジャー1を装着する場合においては、まず、装着者は、スポーツ用ブラジャー1を被り、装着者のバストが、バスト収容口10Eに入り、バストがカップ部10内に収容される。そして、装着者の左側(X1側)のバスト位置の調整を行う際は、一方の手(この場合は、右手)でカップ表布部10Dをつまみ上げ(Z1方向)、他方の手(この場合は、左手又は左手の指先)を三角形のバスト収容口10Eに入れて、バストの位置の調整を行うことができる。この場合において、バスト収容口10Eを形成する内側サポート部10A、外側サポート部10B、及び下側サポート部10Cが有する各々の伸縮性によって、装着者は、バスト収容口10Eを3つ方向に容易に広げることができ、バスト位置の調整を三方向から容易に行うことができる。これにより、装着者は、バストを適切で心地の良い位置にカップ部10に収容した状態を保って運動を行うができる。
【0040】
(第二の実施形態)
図5は、本発明のスポーツ用衣類の一例である、第二の実施形態に係るスポーツ用ショーツを示す背面図である。
【0041】
(実施例2)
図5を参照して、ショーツ200は、装着者の臀部(ヒップ)を受けるカップ部210を有する。カップ部210には、第一の実施形態に係るブラジャー1のカップ部10の内側サポート部10A、外側サポート部10B及び下側サポート部10Cとサポート部100と同様の構成を有する内側サポート部210A、外側サポート部210B及び下側サポート部210Cが設けられ、これら内側サポート部210A、外側サポート部210B及び下側サポート部210C全体をカップ表布部210Dで覆っている。
【0042】
本実施例においても、実施例1と同様に、内側サポート部材210A、外側サポート部材210B及び下側サポート部材210は、それぞれの端部で重なり合うように取り付けられることで、三辺t1、t2、t3から構成される三角形のヒップ収容口210Eを形成する。
【0043】
本実施例では、内側サポート部材210Aの直線部によって形成される辺t1の長さは、69mmであり、外側サポート部材210Bの直線部によって形成される辺t2の長さは、68mmであり、下側サポート部材の直線部によって形成される辺t3の長さは、81mmであり、三辺の合計の長さは、218mmである。しかしながら、三辺t1、t2、t3の長さをこれら以外の長さにすることも可能である。例えば、装着者の臀部のサイズ(ショーツ200のサイズ)や装着時のヒップの脂肪部分の位置の調整作業をし易くする観点等より、ヒップ収容口210Eの三辺t1、t2、t3の長さの比率が、三角形の三辺の合計に対し、所定の関係を満たすように、三辺t1、t2、t3を長くすることもできる。
【0044】
上記構成によれば、第一の実施形態のスポーツ用ブラジャー1と同様に、運動時における装着者の臀部に作用する揺れや衝撃を和らげる効果が得られるだけでなく、臀部の造形を保つことができる。
【0045】
以上、実施の形態の具体例として、ブラジャーおよびショーツをあげて本発明を説明したが、本発明のスポーツ用衣類は、これらの具体例で記載されたもののみに限定されるものではなく、種々の態様が可能である。
【0046】
例えば、ブラジャーやショーツに限らず、カップ付きのタンクトップ、スリップ、キャミソール、ドレスの他、ボディスーツ、レオタード、水着等のバストやヒップをサポートするカップ部を有し、カップ部によってバストやヒップの造形を保つことが可能な衣類であれば、いずれにも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 スポーツ用ブラジャー
200 スポーツ用ショーツ
10、210 カップ部
10E バスト収容口
210E ヒップ収容口
100 サポート部
10A、210A 内側サポート部材
10B、210B 外側サポート部材
10C、210C 下側サポート部材
10D、210D カップ表布部10D
20 背面部
30 肩部
40、240 胴部
101 前身頃
102、202 後身頃