(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040660
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】キーマシン、カッターガイド及び合鍵製造方法
(51)【国際特許分類】
E05B 19/00 20060101AFI20240318BHJP
B23C 3/35 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
E05B19/00 B
B23C3/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145135
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】597064425
【氏名又は名称】株式会社 フキ
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】荒井 康彦
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022EE08
3C022EE17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】角推台形状の穴を有するオリジナルキーの合鍵を製造できるキーマシン、カッターガイド及び合鍵製造方法を提供する。
【解決手段】円板形状のカッター10と、ブランクキーK1を保持する第1の保持部20と、側面S2に角推台形状の穴Hが形成されたオリジナルキーK2を保持する第2の保持部30と、先端面が穴Hの底面に収まる大きさであり、先端面と側面とがなす角度が、穴Hの底面と内側面とがなす角度よりも大きく、先端面がオリジナルキーK2の側面S2に接離するカッターガイド40と、第1の保持部20及び第2の保持部30の相対位置を固定した状態で、オリジナルキーK2の長手方向に移動可能とするとともに、カッターガイド40の先端面がオリジナルキーK2の穴Hに接したときに、カッター10がブランクキーK1の側面S1に接して研削するように、第1の保持部20及び第2を同期して移動可能に支持する支持機構50と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板形状であり、ブランクキーの側面に接することにより、前記側面を回転により研削するカッターと、
前記ブランクキーを保持する第1の保持部と、
側面に角推台形状の穴が形成されたオリジナルキーを保持する第2の保持部と、
先端面が前記穴の底面に収まるサイズであり、前記先端面と側面とがなす角度が、前記穴の底面と内側面とがなす角度よりも大きく、前記先端面が前記オリジナルキーの側面及び前記穴に接離するカッターガイドと、
前記第1の保持部及び前記第2の保持部の相対位置を固定した状態で、前記オリジナルキーの長手方向に移動可能に支持するとともに、前記カッターガイドの先端面が前記オリジナルキーの前記穴に接したときに、前記カッターが前記ブランクキーの側面に接して研削するように、前記第1の保持部及び前記第2の保持部を同期して移動可能に支持する支持機構と、
を有することを特徴とするキーマシン。
【請求項2】
前記第1の保持部は前記ブランクキーを水平方向に保持し、
前記第2の保持部は前記ブランクキーを水平方向に保持し、
前記支持機構は、前記第1の保持部及び前記第2の保持部を、水平方向に同期して移動可能に支持することを特徴とする請求項1記載のキーマシン。
【請求項3】
側面に角推台形状の穴が形成されたオリジナルキーに切離する先端面を有し、
前記先端面が前記穴の底面に収まるサイズであり、前記先端面と側面とがなす角度が、前記穴の底面と内側面とがなす角度よりも大きい、
ことを特徴とするカッターガイド。
【請求項4】
円柱形状であり、その先端が円錐台形状である、
ことを特徴とする請求項3記載のカッターガイド。
【請求項5】
第1の保持部によってブランクキーを保持し、
第2の保持部によって、側面に角推台形状の穴が形成されたオリジナルキーを保持し、
先端面が前記穴の底面に収まるサイズであり、前記先端面と側面とがなす角度が、前記穴の底面と内側面とがなす角度よりも大きく、前記先端面が前記オリジナルキーの側面に接離するカッターガイドに対して、前記第1の保持部及び前記第2の保持部をその相対位置を固定した状態で、前記オリジナルキーの長手方向に移動させ、
前記カッターガイドの前記先端面が前記オリジナルキーの前記穴に接したときに、回転する円板形状のカッターが、前記ブランクキーの側面に接して研削するように、前記第1の保持部及び前記第2の保持部を同期して移動させる、
ことを特徴とする合鍵製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーマシン、カッターガイド及び合鍵製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的ピッキングに強いディンプルシリンダー錠のキーは、鍵穴内に挿入されるキーの胴部に、深さや大きさの異なる窪みである穴が形成されている。この胴部を鍵穴内に挿入すると、穴によって、複数のタンブラーが内筒の回動を許容する位置に移動するので、キーを回すことによる解錠が可能となる。つまり、穴の形状によって、ディンプルシリンダー錠を解錠することができる正しいキーか否かが決まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなキーのうち、さらにセキュリティを高めるため、キーの胴部の側面に、角推台形状の穴を形成したものも提供されている。しかしながら、角推台形状の穴は、合鍵を製造することが困難である。つまり、従来のキーマシンでは、円板形状のカッターでブランクキーの側面を、上下面が貫かれるように溝を形成するので、角推台形状の穴を形成することは不可能である。また、ドリルによって穴を形成する場合には、円形の穴しか形成することができない。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するために提案されたものであり、角推台形状の穴を有するオリジナルキーの合鍵を製造できるキーマシン、カッターガイド及び合鍵製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような目的を達成するために、本発明のキーマシンは、円板形状であり、ブランクキーの側面に接することにより、前記側面を回転により研削するカッターと、前記ブランクキーを保持する第1の保持部と、側面に角推台形状の穴が形成されたオリジナルキーを保持する第2の保持部と、先端面が前記穴の底面に収まるサイズであり、前記先端面と側面とがなす角度が、前記穴の底面と内側面とがなす角度よりも大きく、前記先端面が前記オリジナルキーの側面及び前記穴に接離するカッターガイドと、前記第1の保持部及び前記第2の保持部の相対位置を固定した状態で、前記オリジナルキーの長手方向に移動可能に支持するとともに、前記カッターガイドの先端面が前記オリジナルキーの前記穴に接したときに、前記カッターが前記ブランクキーの側面に接して研削するように、前記第1の保持部及び前記第2の保持部を同期して移動可能に支持する支持機構と、を有する。
【0007】
本発明のカッターガイドは、側面に角推台形状の穴が形成されたオリジナルキーに切離する先端面を有し、前記先端面が前記穴の底面に収まるサイズであり、前記先端面と側面とがなす角度が、前記穴の底面と内側面とがなす角度よりも大きい。
【0008】
本発明の合鍵製造方法は、第1の保持部によってブランクキーを保持し、第2の保持部によって、側面に角推台形状の穴が形成されたオリジナルキーを保持し、先端面が前記穴の底面に収まるサイズであり、前記先端面と側面とがなす角度が、前記穴の底面と内側面とがなす角度よりも大きく、前記先端面が前記オリジナルキーの側面に接離するカッターガイドを、前記オリジナルキーの長手方向に移動させ、前記カッターガイドの前記先端面が前記オリジナルキーの前記穴に接したときに、回転する円板形状のカッターが、前記ブランクキーの側面に接して研削するように、前記第1の保持部及び前記第2の保持部の相対位置を固定した状態で、同期して移動させる。
【発明の効果】
【0009】
以上のような本発明によれば、角推台形状の穴を有するオリジナルキーの合鍵を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】ブランクキーを示す側面図(A)、平面図(B)
【
図5】オリジナルキーを示す側面図(A)、平面図(B)、穴の拡大図(C)、(D)
【
図6】溝が形成されたブランクキーを示す側面図(A)、平面図(B)
【
図7】カッターガイドの先端面の大きさと角錐台形状の穴の大きさを示す平面図(B)、カッターガイドの先端面の形状と角推台形状の穴の形状を示す断面図(A)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(以下「本実施形態」と呼ぶ)について、図面を参照して説明する。なお、各図面に表された部材は、発明の理解をし易くするための形状やサイズとなっており、必ずしも実際の製品と一致するものではない。
【0012】
[概要]
本実施形態のキーマシン1は、
図1の平面図、
図2の左側面図、
図3の正面図に示すように、第1の保持部20によって保持されたブランクキーK1を、第2の保持部30によって保持されたオリジナルキーK2の穴Hを含む胴部M2の側面S2に沿って同期して移動させ、カッター10で研削することにより合鍵を製造する合鍵製造装置である。ブランクキーK1は、
図4(A)の側面図、
図4(B)の平面図に示すように、平面視で略長方形状の板状の胴部M1を有し、この胴部M1の側面S1には穴は形成されていない。
【0013】
オリジナルキーK2は、
図5(A)の側面図、
図5(B)の平面図に示すように、平面視で略長方形状の板状の胴部M2を有し、胴部M2の側面S2に、角推台形状の穴Hが形成されている。便宜上、穴Hは一つのみ表示しているが、実際には複数形成されている。なお、オリジナルキーK2は、複製元の鍵と同じ穴Hを有する合鍵として製造された鍵であってもよい。
【0014】
図5(C)の拡大図に示すように、穴Hは、四角錐台形状であり、その上縁A及び底面Bは、四角形(正方形、長方形を含む)である。但し、
図5(D)の拡大図に示すように、上縁A及び底面Bは必ずしも正確な四角形である必要はなく、角に丸みを帯びた形状、円形、楕円形、長円形に近似した形状であってもよい。また、底面Bは窪んだ曲面であってもよい。穴Hの傾斜した4つの内側面Cは、台形状である。但し、各内側面Cは曲面であってもよい。さらに、側面S2と穴Hの境界、底面Bと各内側面Cの境界、各内側面C同士の境界は、必ずしも明確な角を形成している必要はなく、丸みを帯びていたり、連続した曲面となっていてもよい。
【0015】
[構成]
本実施形態のキーマシン1は、
図1~
図3に示すように、基体1aに設けられたカッター10、第1の保持部20、第2の保持部30、カッターガイド40、支持機構50を有する。なお、
図1、
図2はブランクキーK1、オリジナルキーK2をセットした状態であるが、
図3は、奥側の構造を見やすくするために、ブランクキーK1、オリジナルキーK2の図示はしていない。
【0016】
(カッター)
カッター10は、円板形状であり、ブランクキーK1の側面S1に接することにより、側面S1を回転により研削する。カッター10は円板形状の外周に形成された研削刃によって胴部M1の側面S1を研削するため、
図6(A)、(B)に示すように、胴部M1の上下の面が貫通するように溝Gが形成される。カッター10は、基体1aに支持固定された駆動源であるモータ11によって回転可能に設けられている。カッター10の軸は、ブランクキーK1の長手方向(図中、第1の保持部20、第2の保持部30が並ぶX方向)に平行な方向となる。モータ11には、カッター10のブランクキーK1と接離する領域を露出させつつ、カッター10を覆うカバー12が設けられている。
【0017】
(第1の保持部)
第1の保持部20は、ブランクキーK1を保持する。第1の保持部20は、胴部M1を上下からバイス21によって挟んでネジ22により締め付け固定することにより、ブランクキーK1の側面S1がカッター10に対向するように、且つ胴部M1の平面が水平となるように保持する。これにより、側面S1は垂直となる。なお、ネジ22の頭部の外部に露出した部分は、作業者が把持して回転させやすいように径が拡大した摘み部となっている。
【0018】
(第2の保持部)
第2の保持部30は、オリジナルキーK2を保持する。第2の保持部30は、上下からバイス31によって挟んでネジ32により締め付け固定することにより、オリジナルキーK2の側面S2が、後述するカッターガイド40に対向するように、且つ胴部M1の平面が水平となるように保持する。これにより、側面S2は垂直となる。また、ブランクキーK1とオリジナルキーK2は高さ位置が一致する。なお、カッター10に対するブランクキーK1の位置、カッターガイド40に対するオリジナルキーK2の位置は、相対的に一致するように、図示しない治具によって位置決めされる。さらに、位置決めは、カッターガイド40の先端面40aの中心の高さ位置と、オリジナルキーK2の穴Hの中心を通る水平線の高さ位置とが一致するようになされる。なお、ネジ32の頭部の外部に露出した部分は、把持して回転させやすいように径が拡大した摘み部となっている。
【0019】
(カッターガイド)
カッターガイド40は、水平方向に固定された棒状の部材であり、先端面40aが、第2の保持部30に保持されたオリジナルキーK2の側面S2に対向する。基体1aに立ち上げられた支柱41の端部に、ガイド支持体42が設けられ、このガイド支持体42に、カッターガイド40が固定されている。本実施形態のカッターガイド40は、円柱形状の棒状であり、先端が先鋭化した円錐台形状となっている。
【0020】
図7(A)に示すように、カッターガイド40の先端面40aは、穴Hの底面Bに収まるサイズである。より具体的には、先端面40aの径dが、底面Bの横の長さW及び縦の長さTのいずれよりも小さい。また、
図7(B)に示すように、先端面40aと側面40bとがなす角度αが、穴Hの底面Bと内側面Cとがなす角度βよりも大きい。以上のサイズと角度設定により、底面Bの中心と先端面40aの中心の高さ位置が合った状態で、先端面40aが穴Hの底面Bに達して接することができる。なお、カッターガイド40の先端面40aと側面40bとの境界は、必ずしも明確な角をなしている必要はなく、丸みを帯びていてもよい。
【0021】
(支持機構)
支持機構50は、
図1~
図3に示すように、第1の保持部20及び第2の保持部30の相対位置を固定した状態で、同期して移動可能に支持する。支持機構50は、第1の保持部20及び第2の保持部30を、オリジナルキーK2の長手方向に移動可能とする。また、支持機構50は、カッターガイド40の先端面40aがオリジナルキーK2の穴Hに接したときに、カッター10がブランクキーK1の側面S1に接して研削するように、第1の保持部20及び第2の保持部30を同期して移動可能とする。
【0022】
より具体的には、支持機構50は、
図2及び
図3に示すように、移動体51、接離機構52、進行機構53を有する。移動体51は、上部に第1の保持部20及び第2の保持部30が固定された板体である。接離機構52は、
図2に示すように、移動体51が搭載され、移動体51のカッター10及びカッターガイド40に接離する水平方向(図中、Y方向)への移動をガイドする。接離機構52は、例えば、Y方向の円柱形状のシャフト52aをスライド移動するスリーブ(図示せず)によって構成される。
【0023】
進行機構53は、
図3に示すように、接離機構52が搭載され、移動体51のブランクキーK1及びオリジナルキーK2の長手方向(図中、X方向)への移動をガイドする。進行機構53は、例えば、X方向のシャフト53aをスライド移動するスリーブ53bによって構成される。また、進行機構53は、シャフト53aを軸として回動可能に設けられている。つまり、移動体51は、シャフト53aに沿って移動するとともに、シャフト53a周りに回動する。但し、移動体51の回動は、基体1aに設けられたストッパ53cによって、水平状態で停止する。
【0024】
(合鍵製造方法)
以上のような本実施形態のキーマシン1によって、合鍵を製造する方法を説明する。まず、作業者は、ネジ22、32の摘み部を持って、移動体51とともに第1の保持部20、第2の保持部30を手前に倒すように回動させる。そして、ネジ22により第1の保持部20にブランクキーK1を締め付け固定して、ネジ32により第2の保持部30にオリジナルキーK2を締め付け固定する。作業者は、移動体51を奥側に回動させ、ストッパ53cに当てて水平状態に戻す。
【0025】
そして、
図8(A)に示すように、ネジ22、32の摘み部を持って移動体51とともに、オリジナルキーK2をY方向の奥側に水平移動させて、側面S2をカッターガイド40の先端面40aに接触させる。このとき、ブランクキーK1も同期して水平方向に移動するが、側面S1は、カッター10には非接触である。
【0026】
次に、カッター10の回転を開始させるが、ブランクキーK1は、カッター10には非接触なので、切削はされない。この状態から、
図8(B)に示すように、作業者がネジ22、32の摘み部を持って、移動体51をY方向に付勢しながら、オリジナルキーK2をX方向に移動させると、側面S2がカッターガイド40に接触しながらX方向に移動する。この過程で、カッターガイド40が穴Hに沿って移動すると、オリジナルキーK2がY方向へ移動するとともに、ブランクキーK1もY方向に移動するので、ブランクキーK1の側面S1にカッター10が接触して切削される。この切削により形成される溝Gの形状は、穴Hの水平方向の断面と同一の形状となる。
【0027】
さらに、移動体51をX方向へ移動させると、カッターガイド40から穴Hが外れるので、ブランクキーK1の側面S1は、カッター10と非接触となる。その後、第1の保持部20からブランクキーK1を外し、第2の保持部30からオリジナルキーK2を外す。
【0028】
[作用効果]
(1)本実施形態のキーマシン1は、円板形状であり、ブランクキーK1の側面S1に接することにより、側面S1を回転により研削するカッター10と、ブランクキーK1を保持する第1の保持部20と、側面S2に角推台形状の穴Hが形成されたオリジナルキーK2を保持する第2の保持部30と、先端面40aが穴Hの底面Bに収まる大きさであり、先端面40aと側面40bとがなす角度αが、穴Hの底面Bと内側面Cとがなす角度βよりも大きく、先端面40aがオリジナルキーK2の側面S2に接離するカッターガイド40を有する。
【0029】
そして、キーマシン1は、第1の保持部20及び第2の保持部30の相対位置を固定した状態で、オリジナルキーK2の長手方向に移動可能とするとともに、カッターガイド40の先端面40aがオリジナルキーK2の穴Hに接したときに、カッター10がブランクキーK1の側面S1に接して研削するように、第1の保持部20及び第2を同期して移動可能に支持する支持機構50と、を有する。
【0030】
本実施形態のカッターガイド40は、側面S2に角推台形状の穴Hが形成されたオリジナルキーK2に切離する先端面40aを有し、先端面40aが穴Hの底面Bに収まるサイズであり、先端面40aと側面S2とがなす角度αが、穴Hの底面Bと内側面Cとがなす角度βよりも大きい。
【0031】
本実施形態の合鍵製造方法は、第1の保持部20によってブランクキーK1を保持し、第2の保持部30によって、側面S2に角推台形状の穴Hが形成されたオリジナルキーK2を保持し、先端面40aの面積が穴Hの底面Bに収まるサイズであり、先端面40aと側面40bとがなす角度αが、穴Hの底面Bと内側面Cとがなす角度βよりも大きく、先端面40aがオリジナルキーK2の側面S2に接離するカッターガイド40に対して、第1の保持部20及び第2の保持部30をその相対位置を固定した状態で、オリジナルキーK2の長手方向に移動させ、カッターガイド40の先端面40aがオリジナルキーK2の穴Hに接したときに、回転する円板形状のカッター10がブランクキーK1の側面S1に接して研削するように、第1の保持部20及び第2の保持部30を同期して移動させる。
【0032】
このため、円板形状のカッター10によって、ブランクキーK1の側面S1に、水平断面が、オリジナルキーK2の角推台形状の穴Hと同じ溝Gを形成できる。ここで、本発明の発明者は、穴Hと切削された溝Gのそれぞれの底面の深さと、底面のX方向の長さが一致しており、穴Hの内側面Cと溝Gの傾斜面の角度が一致していれば、ブランクキーK1の厚さ方向の壁が無くても、ディンプルシリンダー錠を解錠して、抜き出すことができることを見出した。本実施形態では、上記のように、このような溝Gを形成することができるので、穴Hと形状は異なるが、実質的に、オリジナルキーK2の合鍵を製造することができる。
【0033】
ここで、
図9(A)、(B)に示すように、一般的なカッターガイドQは、先端がオリジナルキーK2の厚さよりも幅広い矩形のヘラ状である。このため、穴Hに入ることができず、合鍵を作ることは不可能である。発明者は、鋭意検討した結果、カッターガイド40の先端面40aを穴Hの底面Bに収まるサイズとして、先端面40aと側面40bとがなす角度が、穴Hの底面Bと内側面Cとがなす角度よりも小さくすることによって、カッターガイド40の先端面40aを穴Hの底面Bに届かせることができ、溝Gを形成できることを見出した。本実施形態では、このようなカッターガイド40を用いることにより、角錐台形状の穴Hに倣って、つまり内側面C及び底面Bに沿ってオリジナルキーK2を移動させることができるので、ブランクキーK1に対して、穴Hと深さと幅が同じ溝Gを形成できる。なお、ドリルによって穴を形成した場合には、円形の穴となってしまうため、シリンダー錠を解錠できず、解錠できたとしても、抜き出すことができない状態が発生することが実証されている。
【0034】
さらに、本実施形態では、一般的なキーマシン1と同様の操作によって、穴Hを有するオリジナルキーK2の合鍵を、簡単に製造できる。このため、特殊な機械、熟練した技術者を不要とし、緊急を要する場合にも短時間で対応可能となる。
【0035】
(2)また、本実施形態は、第1の保持部20はブランクキーK1を水平方向に保持し、第2の保持部30はブランクキーK1を水平方向に保持し、支持機構50は、第1の保持部20及び第2の保持部30を、水平方向に同期して移動可能に支持する。このため、上下方向のずれを抑えて、カッターガイド40の先端面40aを、穴Hの底面Bに沿って確実に移動させることができ、正確に溝Gを形成できる。
【0036】
[変形例]
本発明は上記の態様に限定されるものではない。
(1)カッターガイド40は、角柱形状であっても良く、その先端が角錐台形状であってもよい。但し、上記の態様のように、円柱形状であって、その先端が円錐台形状の方が、加工が容易であり、製造がしやすい。
【0037】
(2)第1の保持部20及び第2の保持部30が、移動体51の回動によって、オリジナルキーK2がカッターガイド40に接離する構成であってもよい。但し、水平方向から接離する方が、穴Hに対するカッターガイド40の先端面40aを正確に位置決めすることができ、精度の高い切削が可能となる。
【0038】
(3)第1の保持部20及びカッター10と、第2の保持部30及びカッターガイド40とは、上記の実施形態では、ブランクキーK1、オリジナルキーK2の長手方向がX方向となり、X方向に並ぶように配置されていたが、ブランクキーK1、オリジナルキーK2の長手方向がY方向となり、X方向に並ぶように配置されていてもよい。
【0039】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 キーマシン
1a 基体
10 カッター
11 モータ
12 カバー
20 第1の保持部
21 バイス
22 ネジ
30 第2の保持部
31 バイス
32 ネジ
40 カッターガイド
40a 先端面
40b 側面
41 支柱
42 ガイド支持体
50 支持機構
51 移動体
52 接離機構
52a シャフト
53 進行機構
53a シャフト
53b スリーブ
53c ストッパ