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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040670
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240318BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240318BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240318BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G03G9/097 365
G03G9/08 381
G03G9/087 331
G03G9/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145161
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 大輝
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA03
2H500AA06
2H500BA03
2H500CA06
2H500CA29
2H500EA13C
2H500EA32C
2H500EA33C
2H500EA39B
2H500EA39C
2H500EA41C
2H500EA42C
(57)【要約】
【課題】顔料の発色性が良好で、かつ画像の耐擦過性も良好な静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関すること。
【解決手段】結着樹脂、エステル組成物(E)、及び着色剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記エステル組成物(E)が、炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分(E1-ac)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族アルコールを含むアルコール成分(E1-al)との縮合物を含有するエステル組成物(E1)、及び炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコールを含むアルコール成分(E2-al)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族カルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分(E2-ac)との縮合物を含有するエステル組成物(E2)から選ばれる1種以上であり、前記エステル組成物(E)の酸価と水酸基価の和が70mgKOH/g以上400mgKOH以下である、静電荷像現像用トナー並びにその製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、エステル組成物(E)、及び着色剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記エステル組成物(E)が、
炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物を55モル%以上含むカルボン酸成分(E1-ac)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族アルコールを80モル%以上含むアルコール成分(E1-al)との縮合物を含有するエステル組成物(E1)、及び
炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコールを55モル%以上含むアルコール成分(E2-al)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族カルボン酸系化合物を80モル%以上含むカルボン酸成分(E2-ac)との縮合物を含有するエステル組成物(E2)
から選ばれる1種以上であり、
前記エステル組成物(E)の酸価と水酸基価の和が70mgKOH/g以上400mgKOH以下である、静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
エステル組成物(E)が、エステル組成物(E1)である、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
エステル組成物(E)が、エステル組成物(E2)である、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
エステル組成物(E1)の水酸基価が、70mgKOH/g以上400mgKOH以下である、請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
エステル組成物(E)の重量平均分子量が、2,000以下である、請求項1~4いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
エステル組成物(E)が、融点を有する結晶性エステル組成物であり、その融点が30℃以上90℃以下である、請求項1~5いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
結着樹脂が、非晶質ポリエステル系樹脂を含有する、請求項1~6いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
エステル化合物(E)の含有量が、結着樹脂とエステル化合物(E)の合計量中、0.5質量%以上15質量%以下である、請求項1~7いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
着色剤が、顔料である、請求項1~8いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
顔料が、アゾ顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ナフトール系顔料、アントラキノン系顔料、及びレーキ顔料からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項9記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項11】
結着樹脂、エステル組成物(E)、及び着色剤を含有する混合物を溶融混練して溶融混練物を得る工程、及び該溶融混練物を粉砕、分級してトナー粒子を得る工程を含む、請求項1~10いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィス印刷から商業印刷へと市場が変化しているため、これまで以上に印刷物の高精細さと高信頼性が要求されるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、着色剤と、酸基を有する非晶性ポリエステル系樹脂(A)とアミン化合物とを縮合させてなる樹脂組成物と、炭素数10~30の脂肪族モノカルボン酸化合物を20モル%以上含むカルボン酸成分(CI-ac)と、炭素数2~14の2価以上の脂肪族アルコールを90モル%以上含むアルコール成分(CI-al)との縮合物を含有するエステル組成物、又は、炭素数10~30の脂肪族モノアルコールを20モル%以上含むアルコール成分(CII-al)と、炭素数2~14の2価以上の脂肪族カルボン酸化合物を90モル%以上含むカルボン酸成分(CII-ac)との縮合物を含有するエステル組成物のいずれか、又はその両方から成る静電荷像現像用トナーについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-47403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のエステル組成物を用いたトナーでは、印刷物の画像濃度は向上する一方で、該エステル組成物のSP値が低く、また分子量も低いことから、印刷された画像の表面に局在化し、画像の強度を著しく低下させることが判明した。さらに、該エステル組成物のSP値が低いことから、イエロー顔料やマゼンタ顔料等の親水性基を多く含有する顔料の分散は不十分であり、結果的に十分な画像濃度が得られないことが判明した。
【0006】
本発明は、顔料の発色性が良好で、かつ画像の耐擦過性も良好な静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
〔1〕 結着樹脂、エステル組成物(E)、及び着色剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記エステル組成物(E)が、
炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物を55モル%以上含むカルボン酸成分(E1-ac)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族アルコールを80モル%以上含むアルコール成分(E1-al)との縮合物を含有するエステル組成物(E1)、及び
炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコールを55モル%以上含むアルコール成分(E2-al)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族カルボン酸系化合物を80モル%以上含むカルボン酸成分(E2-ac)との縮合物を含有するエステル組成物(E2)
から選ばれる1種以上であり、
前記エステル組成物(E)の酸価と水酸基価の和が70mgKOH/g以上400mgKOH以下である、静電荷像現像用トナー、並びに
〔2〕 結着樹脂、エステル組成物(E)、及び着色剤を含有する混合物を溶融混練して溶融混練物を得る工程、及び該溶融混練物を粉砕、分級してトナー粒子を得る工程を含む、前記〔1〕記載の静電荷像現像用トナーの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、顔料の発色性が良好で、かつ画像の耐擦過性も良好な静電荷像現像用トナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「本発明のトナー」ともいう)は、結着樹脂、エステル組成物(E)、及び着色剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、該エステル組成物(E)が、所定の炭素数の脂肪族モノカルボン酸系化合物を主成分とするカルボン酸成分と所定の炭素数の2価以上の脂肪族アルコールを主成分とするアルコール成分との縮合物を含有するエステル組成物(E1)及び/又は所定の炭素数の脂肪族モノアルコールを主成分とするアルコール成分と所定の炭素数の2価以上の脂肪族カルボン酸系化合物を主成分とするカルボン酸成分との縮合物を含有するエステル組成物(E2)から選ばれる1種以上であり、酸価と水酸基価の和が所定の範囲にあることに大きな特徴を有する。
本発明のトナーによれば、イエロー顔料やマゼンタ顔料の発色性も良好で、かつ画像擦過性も良好な印刷物が得られる。
【0010】
本発明の効果が得られる理由の詳細は定かではないが、次のように考えられる。
本発明のトナーは、長鎖のモノアルコール又はモノカルボン酸を分子鎖中に含有するエステル組成物(E)を含有している。このエステル組成物(E)は、着色剤の有する疎水面との親和性が高く、着色剤への湿潤剤として着色剤の分散に寄与する。また、該エステル組成物(E)は、カルボン酸末端もしくは水酸基末端、又はその両方を所定の量有することで、顔料の有する親水面との親和性も良好で、従来のエステル組成物に比べ、非常に高い顔料分散性を示す。また、カルボン酸末端もしくは水酸基末端、又はその両方を所定の量有することが、結着樹脂中での分散安定化にも寄与し、加熱時の画像表面への局在化が抑制され、画像擦過性の悪化を抑制できるものと推察される。
【0011】
本発明において、結着樹脂は、トナーの結着樹脂として用いられている樹脂であれば特に限定されず、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、これらの樹脂を2種以上含む複合樹脂等が挙げられるが、本発明では、定着性の観点から、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂を有する複合樹脂等のポリエステル系樹脂を含むことが好ましい。ポリエステル系樹脂は非晶質であることが好ましく、非晶質ポリエステル系樹脂としては、非晶質ポリエステル樹脂が好ましい。
【0012】
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最大ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最大ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。
結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下の樹脂である。
一方、非晶質樹脂は、吸熱ピークが観測されないか、観測される場合は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。
樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最大ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0013】
非晶質ポリエステル樹脂は、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であることが好ましい。
【0014】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、式(I):
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表される化合物が好ましく、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0017】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、特に好ましくは100モル%である。
【0018】
他のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、グリセリン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
【0019】
カルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0020】
芳香族ジカルボン酸系化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられ、これらの中では、テレフタル酸が好ましい。
【0021】
脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、炭素数1~20の炭化水素基で置換されていてもよいコハク酸、アジピン酸、これらの酸の無水物、これらの酸のアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0022】
3価以上のカルボン酸系化合物としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の3価以上のカルボン酸系化合物、これらの酸の無水物、これらの酸のアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0023】
なお、本明細書において、マクロモノマーやヒドロキシカルボン酸は、アルコール成分及びカルボン酸成分には含めない。
【0024】
また、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、適宜含まれていてもよい。
【0025】
カルボン酸成分のカルボキシ基のアルコール成分の水酸基に対する当量比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.15以下である。
【0026】
非晶質ポリエステル樹脂は、例えば、原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは160℃以上、より好ましくは200℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
【0027】
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、錫化合物が好ましい。エステル化触媒の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0028】
なお、本発明において、非晶質ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性された非晶質ポリエステル樹脂であってもよい。変性された非晶質ポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化した非晶質ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0029】
非晶質ポリエステル系樹脂の軟化点は、耐久性の観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
【0030】
なお、非晶質ポリエステル系樹脂は、低温定着性及び定着幅の観点から、軟化点の異なる樹脂からなるものであってもよい。2種の樹脂の軟化点の差は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
【0031】
軟化点が高い方の非晶質樹脂(樹脂AH)の軟化点は、定着幅の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。
【0032】
また、軟化点が低い方の非晶質樹脂(樹脂AL)の軟化点は、耐久性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは125℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
【0033】
樹脂AHの樹脂ALに対する質量比(樹脂AH/樹脂AL)は、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、さらに好ましくは30/70以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、さらに好ましくは70/30以下である。
【0034】
非晶質ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、耐久性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは65℃以下である。非晶質ポリエステル系樹脂が2種以上の樹脂からなる場合は、加重平均値が上記範囲内であることが好ましい。
【0035】
非晶質ポリエステル系樹脂の酸価は、低温定着性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上であり、そして、耐久性の観点から、好ましくは20mgKOH/g以下、より好ましくは15mgKOH/g以下である。非晶質ポリエステル系樹脂が2種以上の樹脂からなる場合は、加重平均値が上記範囲内であることが好ましい。
【0036】
非晶質ポリエステル系樹脂の含有量は、結着樹脂中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、特に好ましくは100質量%である。
【0037】
エステル組成物(E)は、エステル組成物(E1)及びエステル組成物(E2)から選ばれる1種以上であり、エステル組成物(E1)は、炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物を55モル%以上含むカルボン酸成分(E1-ac)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族アルコールを80モル%以上含むアルコール成分(E1-al)との縮合物を含有する。本発明においては、保存性の観点からは、エステル組成物(E1)が好ましく、定着性の観点からは、エステル組成物(E2)が好ましい。
【0038】
脂肪族モノカルボン酸系化合物の炭素数は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、10以上であり、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、さらに好ましくは16以上であり、そして、低温定着性の観点から、30以下であり、好ましくは28以下、より好ましくは26以下、さらに好ましくは24以下、さらに好ましくは22以下、さらに好ましくは20以下である。脂肪族モノカルボン酸系化合物が脂肪族モノカルボン酸のアルキルエステルである場合のアルキルエステル部の炭素数は、上記炭素数に含めない。
【0039】
脂肪族モノカルボン酸系化合物は、飽和脂肪族モノカルボン酸系化合物及び不飽和脂肪族モノカルボン酸系化合物のいずれであってもよいが、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、飽和脂肪族モノカルボン酸系化合物が好ましい。
【0040】
飽和脂肪族モノカルボン酸系化合物としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられ、これらのなかでは、低温定着性の観点、並びに画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、ステアリン酸又はパルミチン酸が好ましい。
【0041】
カルボン酸成分(E1-ac)は、脂肪族モノカルボン酸系化合物以外の他のカルボン酸系化合物を含んでもよい。他のカルボン酸系化合物としては、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸系化合物、芳香族ジカルボン酸系化合物、脂環式ジカルボン酸系化合物、3価以上のカルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0042】
脂肪族モノカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分(E1-ac)中、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、55モル%以上であり、好ましくは60モル%以上、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、特に好ましくは100モル%である。
【0043】
2価以上の脂肪族アルコールの炭素数は、画像濃度及び光沢の観点から、2以上であり、好ましくは3以上であり、そして、低温定着性の観点から、14以下であり、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
【0044】
2価以上の脂肪族アルコールとしては、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、3価以上の脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0045】
直鎖又は分岐の脂肪族ジオールは、飽和脂肪族ジオール及び不飽和脂肪族ジオールのいずれであってもよいが、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、飽和脂肪族ジオールが好ましい。
【0046】
飽和脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール等が挙げられる。
【0047】
3価以上の脂肪族アルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられ、これらのなかでは、グリセリンが好ましい。
【0048】
2価以上の脂肪族アルコールは、顔料分散性の観点から、3価以上の脂肪族アルコールが好ましい。
【0049】
アルコール成分(E1-al)は、2価以上の脂肪族アルコール以外の他のアルコールを含んでもよい。他のアルコールとしては、モノアルコール、芳香族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の芳香族アルコール等が挙げられる。
【0050】
2価以上の脂肪族アルコールの含有量は、アルコール成分(E1-al)中、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、そして、100モル%以下であり、特に好ましくは100モル%である。
【0051】
カルボン酸成分(E1-ac)のカルボキシ基のアルコール成分(E1-al)の水酸基に対する当量比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上であり、そして、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.7以下である。
【0052】
エステル組成物(E1)は、炭素数10以上30以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物と炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族アルコールの縮合物を含有するものが好ましく、炭素数12以上26以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物と炭素数2以上10以下の2価以上の脂肪族アルコールの縮合物を含有するものがより好ましく、炭素数14以上22以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物と炭素数2以上4以下の2価以上の脂肪族アルコールの縮合物を含有するものがさらに好ましい。
【0053】
エステル組成物(E2)は、炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコールを55モル%以上含むアルコール成分(E2-al)と、炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族カルボン酸系化合物を80モル%以上含むカルボン酸成分(E2-ac)との縮合物を含有する。
【0054】
脂肪族モノアルコールの炭素数は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、10以上であり、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、さらに好ましくは16以上、さらに好ましくは18以上であり、そして、低温定着性の観点から、30以下であり、好ましくは28以下、より好ましくは26以下、さらに好ましくは24以下、さらに好ましくは22以下である。
【0055】
脂肪族モノアルコールは、飽和脂肪族モノアルコール及び不飽和脂肪族モノアルコールのいずれであってもよい。画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、飽和脂肪族モノアルコールが好ましい。
【0056】
脂肪族モノアルコールとしては、カプリンアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。これらのなかでは、ステアリルアルコール又はべへニルアルコールが好ましく、ステアリルアルコールがより好ましい。
【0057】
アルコール成分(E2-al)は、脂肪族モノアルコール以外の他のアルコールを含んでもよい。他のアルコールとしては、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上のアルコール等が挙げられる。
【0058】
脂肪族モノアルコールの含有量は、アルコール成分(E2-al)中、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、55モル%以上であり、好ましくは60モル%以上、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、特に好ましくは100モル%である。
【0059】
2価以上の脂肪族カルボン酸系化合物としては、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸系化合物、3価以上の脂肪族カルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0060】
2価以上の脂肪族カルボン酸系化合物の炭素数は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、2以上であり、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、そして、低温定着性の観点から、14以下であり、好ましくは12以下である。なお、2価以上の脂肪族カルボン酸系化合物が脂肪族カルボン酸のアルキルエステルである場合のアルキルエステル部の炭素数は、上記炭素数に含めない。
【0061】
脂肪族ジカルボン酸系化合物は、飽和脂肪族ジカルボン酸系化合物及び不飽和脂肪族ジカルボン酸系化合物のいずれであってもよい。
【0062】
脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、これらの酸の無水物、これらの酸のアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられ、これらのなかでは、セバシン酸が好ましい。
【0063】
3価以上の脂肪族カルボン酸系化合物としては、アコニット酸、これらの酸の無水物、これらの酸のアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0064】
2価以上の脂肪族カルボン酸系化合物は、低温定着性の観点、並びに画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、飽和脂肪族ジカルボン酸系化合物が好ましく、セバシン酸がより好ましい。
【0065】
カルボン酸成分(E2-ac)は、2価以上の脂肪族カルボン酸系化合物以外の他のカルボン酸系化合物を含んでもよい。他のカルボン酸系化合物としては、モノカルボン酸系化合物、芳香族ジカルボン酸系化合物、脂環式ジカルボン酸系化合物、3価以上の芳香族カルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0066】
2価以上の脂肪族カルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分(E2-ac)中、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、そして、100モル%以下であり、特に好ましくは100モル%である。
【0067】
カルボン酸成分(E2-ac)のカルボキシ基のアルコール成分(E2-al)の水酸基に対する当量比(COOH基/OH基)は、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.4以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3.3以下である。
【0068】
エステル組成物(E2)は、炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコールと炭素数2以上14以下の2価以上の脂肪族カルボン酸系化合物との縮合物を含有するものが好ましく、炭素数12以上26以下の脂肪族モノアルコールと炭素数2以上12以下の2価以上の脂肪族カルボン酸系化合物との縮合物を含有するものがより好ましく、炭素数18以上22以下の脂肪族モノアルコールと炭素数2以上10以下の2価以上の脂肪族カルボン酸系化合物との縮合物を含有するものがさらに好ましい。
【0069】
エステル組成物(E)は、アルコール成分とカルボン酸成分を含む原料モノマーを縮合させて製造することができる。
例えば、エステル組成物(E1)は、アルコール成分(E1-al)とカルボン酸成分(E1-ac)を含む原料モノマーを、不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で縮合させて製造することができる。エステル組成物(E2)は、エステル組成物(E1)と同様に、アルコール成分(E2-al)及びカルボン酸成分(E2-ac)を含む原料モノマーを用いて製造することができる。
【0070】
エステル組成物(E1)及びエステル組成物(E2)の製造におけるエステル化触媒、エステル化助触媒、及び重合禁止剤は、非晶質ポリエステル系樹脂の製造に用いられるものと同様である。エステル組成物(E1)及びエステル組成物(E2)の製造において、エステル化触媒の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。エステル化助触媒の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。重合禁止剤の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0071】
エステル組成物(E)の酸価と水酸基価の和は、顔料分散性の観点から、70mgKOH/g以上であり、好ましくは80mgKOH/g以上、より好ましく90mgKOH/g以上、さらに好ましくは95mgKOH/g以上であり、そして、保存性の観点から、400mgKOH以下であり、好ましくは380mgKOH/g以下、より好ましくは350mgKOH/g以下、さらに好ましくは320mgKOH/g以下である。
【0072】
エステル組成物(E1)の酸価は、保存性の観点から、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは0.5mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以下、さらに好ましくは5mgKOH/g以下である。
【0073】
エステル組成物(E1)の水酸基価は、顔料分散性の観点から、好ましくは30mgKOH/g以上、より好ましくは70mgKOH/g以上、さらに好ましくは80mgKOH/g以上、さらに好ましくは90mgKOH/g以上であり、そして、保存性の観点から、好ましくは400mgKOH以下、より好ましくは360mgKOH/g以下、さらに好ましくは320mgKOH/g以下である。
【0074】
エステル組成物(E2)の酸価は、顔料分散性の観点から、好ましくは80mgKOH/g以上、より好ましくは90mgKOH/g以上、さらに好ましくは100mgKOH/g以上であり、そして、保存性の観点から、好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは180mgKOH/g以下、さらに好ましくは160mgKOH/g以下である。
【0075】
エステル組成物(E2)の水酸基価は、保存性の観点から、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは0.5mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは20mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以下、さらに好ましくは5mgKOH/g以下である。
【0076】
エステル組成物(E)の重量平均分子量は、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは100以上、より好ましくは150以上、さらに好ましくは200以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは2,000以下、より好ましくは1,500以下、さらに好ましくは1,000以下である。
【0077】
エステル組成物(E)の軟化点は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。
【0078】
エステル組成物(E)は、融点を有する結晶性の組成物であることが好ましく、[軟化点/吸熱の最大ピーク温度]の値で定義される前記結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下の組成物であることがより好ましい。
【0079】
エステル組成物(E)の融点は、保存性の観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、そして、定着性の観点から、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。
【0080】
エステル組成物(E)の酸価、水酸基価、重量平均分子量、軟化点、及び融点は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。なお、エステル組成物(E)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた物性の値がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
【0081】
本発明のトナーにおいて、エステル化合物(E)の含有量は、結着樹脂とエステル化合物(E)の合計量中、着色剤の分散性を向上させ、画像濃度及び光沢をより向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、そして、保存性の観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。
【0082】
結着樹脂及びエステル組成物(E)の合計含有量は、トナー中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%未満、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0083】
着色剤は、顔料又は染料のいずれであってもよいが、着色剤の分散性向上の効果が顕著である観点から、顔料が好ましい。
顔料としては、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、レーキ顔料等が挙げられる。
アゾ顔料としては、C.I.ピグメントレッド3等の不溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド48:1等の溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド144等の縮合アゾ顔料等が挙げられる。
フタロシアニン顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3等の銅フタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン58等のポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料等が挙げられる。
縮合多環顔料としては、C.I.ピグメントレッド177等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド123等のペリレン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ43等のペリノン系顔料、C.I.ピグメントレッド122等のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントレッド269等のナフトール系顔料、C.I.ピグメントバイオレット23等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメントイエロー139、185等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ66等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントイエロー138等のキノフタロン系顔料、C.I.ピグメントイエロー150等のニッケルアゾ錯体系顔料、C.I.ピグメントレッド88等のインジゴ系顔料、C.I.ピグメントグリーン8等の金属錯体顔料、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントオレンジ71等のジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。
レーキ顔料としては、C.I.ピグメントレッド57:1等が挙げられる。
これらの中では、発色性及び画像の耐擦過性の観点から、アゾ顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ナフトール系顔料、アントラキノン系顔料、又はレーキ顔料が好ましく、ナフトール系顔料、キナクリドン系顔料、又はイソインドリノン系顔料がより好ましく、ナフトール系顔料又はイソインドリノン系顔料がさらに好ましい。これらの顔料は2種以上を併用してもよい。
【0084】
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂とエステル組成物(E)の合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。
【0085】
本発明のトナーは、結着樹脂、エステル組成物(E)及び着色剤以外に、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0086】
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。
【0087】
離型剤の融点は、耐久性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
【0088】
離型剤の含有量は、トナーの低温定着性と耐久性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂とエステル組成物(E)の合計100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
【0089】
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
【0090】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業(株)製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料;4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業(株)製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」、「FCA-201-PS」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
【0091】
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業(株)製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
【0092】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂とエステル組成物(E)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
【0093】
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、着色剤の分散性向上の効果がより顕著に発揮されることから、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。
【0094】
従って、本発明のトナーは、結着樹脂、エステル組成物(E)、及び着色剤、さらに必要に応じて、離型剤、荷電制御剤等の添加剤を含有する混合物を溶融混練して溶融混練物を得る工程(溶融混練工程)、及び該溶融混練物を粉砕、分級してトナー粒子を得る工程(粉砕・分級工程)を含む方法により製造することが好ましい。
【0095】
溶融混練に供する混合物は、一度に混練に供しても、分割して混練に供してもよいが、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。
【0096】
溶融混練には、密閉式ニーダー、一軸もしくは二軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。
【0097】
溶融混練の温度は、樹脂成分が溶融し、混ざり合う温度であれば特に限定されない。
【0098】
溶融混練工程の後、混練物を粉砕可能な硬度に達するまで適宜冷却し、必要に応じて、粉砕工程及び分級工程を行ってトナー粒子を得ることが好ましい。ここで、冷却とは、混練物を0℃以上50℃以下まで冷却すること、または、混練物中の結着樹脂のガラス転移温度以下まで冷却することを言う。
【0099】
粉砕・分級工程は、常法により適宜行うことができる。粉砕工程においては、混練物を、所望の粒径まで一度に粉砕しても、段階的に粉砕してもよい。また、分級工程においては、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程を繰り返してもよい。
【0100】
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましい。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
【0101】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0102】
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
【0103】
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0104】
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
【0105】
本発明のトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
【実施例0106】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定することができる。
【0107】
〔樹脂及びエステル組成物の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0108】
〔樹脂の吸熱の最大ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した試料をそのままの温度で1分間維持し、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温しながら熱量を測定する。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最も大きいピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とする。
【0109】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0110】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K0070:1992に規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0111】
〔エステル組成物の吸熱の最大ピーク温度(融点)〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した試料をそのままの温度で1分間維持し、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温しながら、熱量を測定する。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最も大きいピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とし、融点とする。
【0112】
〔エステル組成物の酸価及び水酸基価〕
JIS K0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K0070:1992に規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、クロロホルムに変更する。
【0113】
〔エステル組成物の重量平均分子量〕
以下の方法により得られる、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、重量平均分子量を求める。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料を、クロロホルムに、25℃で溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解分を除き、試料溶液とする。
(2)分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてクロロホルムを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに、試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン「A-500」(5.0×102)、「A-1000」(1.01×103)、「A-2500」(2.63×103)、「A-5000」(5.97×103)、「F-1」(1.02×104)、「F-2」(1.81×104)、「F-4」(3.97×104)、「F-10」(9.64×104)、「F-20」(1.90×105)、「F-40」(4.27×105)、「F-80」(7.06×105)、「F-128」(1.09×106)(以上、東ソー(株)製)を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:「CO-8010」(東ソー(株)製)
分析カラム:「GMHXL」+「G3000HXL」(東ソー(株)製)
【0114】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最大ピーク温度をワックスの融点とする。
【0115】
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
【0116】
〔トナーの体積中位粒径〕
・測定機:コールターマルチサイザーIII(ベックマン・コールター(株)製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:マルチサイザーIII バージョン3.51(ベックマン・コールター(株)製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマン・コールター(株)製)
・分散液:電解液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」〔花王(株)製、HLB(グリフィン)=13.6〕を溶解して5質量%に調整したもの
・分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0117】
樹脂製造例1
表1に示す原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した20リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで2時間かけて昇温を行った。その後、235℃にて反応率が90%以上に到達したのを確認し、235℃、40kPaの減圧下で所望の軟化点に達するまで反応を行い、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A1)を得た。得られた樹脂の物性を表1に示す。
【0118】
樹脂製造例2
表1に示す原料モノマーのうち、無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した20リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで2時間かけて昇温を行った。その後、235℃にて反応率が90%以上に到達したのを確認し、190℃まで冷却し、表1に示す無水トリメリット酸を加え、2時間かけて210℃まで昇温した。その後、210℃にて1時間反応後、40kPaの減圧下で所望の軟化点に達するまで反応を行い、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂B1)を得た。得られた樹脂の物性を表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
エステル組成物の製造例
表2~4に示すアルコール成分及びカルボン酸成分を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、130℃から200℃まで8時間かけて昇温した後、200℃にて2時間反応させ、さらにエステル化触媒を投入し、8kPaの減圧下で所望の軟化点に達するまで反応を行い、エステル組成物(エステル組成物E1-1~E1-10、E2-1、E2-2)を得た。得られた組成物の物性を表2~4に示す。
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
【表4】
【0124】
実施例1~12及び比較例1、2
表5に示す配合比の樹脂成分を合計100質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロンE-81」(オリエント化学工業(株)製)1質量部、表5に示す着色剤(マゼンタ顔料「Permanent Carmine3810」(山陽色素(株)製、ピグメントレッド269)又はイエロー顔料「パリオトールイエローD1155」(BASF社製、ピグメントイエロー185)10質量部、及び離型剤「HNP-9」(日本精蝋(株)製、パラフィンワックス、融点:80℃)2質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用い、スクリュー回転速度200r/min、バレル設定温度100℃で溶融混練した。混合物の供給速度は20kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が8μmのトナー粒子を得た。
【0125】
得られたトナー粒子100質量部に、外添剤として疎水性シリカ「AEROSIL NAX 50」(日本アエロジル(株)製、疎水化処理剤:HMDS、平均粒子径:約30nm)1質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、外添剤処理を行い、トナーを得た。
【0126】
試験例1〔画像濃度〕
上質紙「J紙A4サイズ」(富士ゼロックス(株)製)に市販のプリンタ「Microline(登録商標)5400」((株)沖データ製)を用いて、トナーの紙上の付着量が0.25~0.30mg/cm2となるベタ画像を出力し、印刷物を得た。
次に、定着器の温度を150℃に設定し、A4縦方向に1枚あたり1.5秒の速度でトナーを定着させて、印刷物を得た。
出力した印刷物の定着画像部分の反射画像濃度を、測色計「SpectroEye」(GretagMacbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて測定した。反射画像濃度の値が大きいほど、画像濃度に優れる。結果を表5に示す。
【0127】
試験例2〔耐擦過性〕
評価紙として「Business4200」(秤量105g/m2、Xerox社製)を用い、トナーの載り量を0.50mg/cm2としたベタ画像を180℃に温調した定着機に通して定着させた。得られた定着画像を、40℃、相対湿度80%の環境下にて1か月放置した後、500gの荷重をかけた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴムで、放置後の定着画像を5往復擦過した。擦過前後の光学反射濃度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、下記式より光学反射濃度の低下率(%)を算出し、以下の評価基準に従って、定着画像の耐擦過性を評価した。結果を表5に示す。
【0128】
光学反射濃度の低下率(%)
=〔1-(擦過後の光学反射濃度/擦擦前の光学反射濃度)〕×100
【0129】
〔評価基準〕
A:光学反射濃度の低下率が15%未満であり、擦過による画像の変化が見られない。
B:光学反射濃度の低下率が15%以上、20%未満であり、擦過によって画像にカスレ等が若干みられる。
C:光学反射濃度の低下率が20%以上、25%未満であり、擦過によって画像にカスレ等がみられる。
D:光学反射濃度の低下率が25%以上であり、擦過によって明らかな画像不良がみられる。
【0130】
【表5】
【0131】
以上の結果より、実施例1~12のトナーは、比較例1、2と対比して、画像濃度が高く、耐擦過性も良好であることが分かる。
これに対して、エステル組成物の酸価と水酸基価の和が小さい比較例1では、画像濃度が低く、耐擦過性も不十分であり、1価のモノマーを使用していないエステル組成物を用いた比較例2では、画像濃度の低下が顕著である。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の静電荷像現像用トナーは、静電荷像現像法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。