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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040675
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】高電圧貫通型コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/35 20060101AFI20240318BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20240318BHJP
   H01G 4/224 20060101ALI20240318BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H01G4/35 301
H01G2/10 M
H01G4/224
H01G4/30 550
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145167
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿
(72)【発明者】
【氏名】加茂 雄大
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB02
5E001AG01
5E082AB06
5E082BC38
5E082CC07
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG05
5E082GG08
5E082HH02
5E082HH25
5E082KK06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】樹脂封止材を使用しない高電圧貫通型コンデンサを提供する。
【解決手段】高電圧貫通型コンデンサは、第一方向D1に延びる貫通孔17が形成されている素体10と、互いに対向して素体に配置されている第一電極11及び第二電極12と、を有するコンデンサCと、貫通孔17に挿通されていると共に、第一電極に電気的に接続されている貫通導体と、第二電極12に電気的に接続されている接地金具と、筒状を呈し、貫通導体の周りを囲む第一ケース及び第二ケースと、を備える。素体は、第一方向で互いに対向している第一端面10a及び第二端面10bと、第一端面10aに設けられ、貫通孔17が開口する第一凸部15と、第二端面10bに設けられ、貫通孔17が開口する第二凸部16と、を有している。第一ケースは、第一凸部に取り付けられている。第二ケースは、第二凸部に取り付けられている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に延びる貫通孔が形成されている素体と、互いに対向して前記素体に配置されている第一電極及び第二電極と、を有するコンデンサと、
前記貫通孔に挿通されていると共に、前記第一電極に電気的に接続されている貫通導体と、
前記第二電極に電気的に接続されている接地金具と、
筒状を呈し、前記貫通導体の周りを囲む第一ケース及び第二ケースと、を備え、
前記素体は、
前記第一方向で互いに対向している第一端面及び第二端面と、
前記第一端面に設けられ、前記貫通孔が開口する第一凸部と、
前記第二端面に設けられ、前記貫通孔が開口する第二凸部と、を有し、
前記第一ケースは、前記第一凸部に取り付けられ、
前記第二ケースは、前記第二凸部に取り付けられている、
高電圧貫通型コンデンサ。
【請求項2】
前記素体は、
前記第一方向に延び、前記第一端面と前記第二端面とを連結している外側面と、
前記第一方向に直交する方向で前記外側面と対向し、前記貫通孔を画成する内側面と、を更に有し、
前記第一電極は、前記内側面に配置され、
前記第二電極は、前記外側面に配置されている、
請求項1に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
【請求項3】
前記内側面は、前記第一電極から露出した露出領域を前記第二凸部の頂面と隣り合う位置に有している、
請求項2に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
【請求項4】
前記第一電極は、
前記内側面に配置された第一電極部分と、
前記第一凸部の頂面に配置された第二電極部分と、を含み、
前記貫通導体は、前記第二電極部分と前記第一方向で対向し、前記第二電極部分に電気的及び物理的に接続されているフランジ部を含む、
請求項2に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
【請求項5】
前記第二電極は、
前記外側面に配置された第三電極部分と、
前記第二凸部を囲むように前記第二端面に配置された第四電極部分と、を含み、
前記接地金具には、前記第二凸部を挿通させる開口が設けられており、
前記第四電極部分は、前記接地金具の前記開口の周縁部に電気的及び物理的に接続されている、
請求項2に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
【請求項6】
前記貫通孔、前記第一ケース、及び前記第二ケースのそれぞれの内側には、樹脂封止材が充填されていない、
請求項1~5のいずれか一項に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
【請求項7】
前記素体の露出部を覆う被覆層を更に備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高電圧貫通型コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
知られている高電圧貫通型コンデンサは、素体と、第一電極と、第二電極と、貫通導体と、を備えている(たとえば、特許文献1参照)。素体には、貫通孔が形成されている。第一電極及び第二電極は、貫通孔が開口する素体の両面に設けられている。貫通導体は、貫通孔に挿通されていると共に、第一電極に電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-351830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような高電圧貫通型コンデンサは、絶縁性担保のために樹脂封止材により封止されている。しかしながら、樹脂封止材を使用すると、製造ラインにおいて製品の隙間から樹脂が漏れ出す等の不具合が生じるおそれがある。
【0005】
本開示の一つの態様は、樹脂封止材を使用しない高電圧貫通型コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つの態様に係る高電圧貫通型コンデンサは、第一方向に延びる貫通孔が形成されている素体と、互いに対向して素体に配置されている第一電極及び第二電極と、を有するコンデンサと、貫通孔に挿通されていると共に、第一電極に電気的に接続されている貫通導体と、第二電極に電気的に接続されている接地金具と、筒状を呈し、貫通導体の周りを囲む第一ケース及び第二ケースと、を備え、素体は、第一方向で互いに対向している第一端面及び第二端面と、第一端面に設けられ、貫通孔が開口する第一凸部と、第二端面に設けられ、貫通孔が開口する第二凸部と、を有し、第一ケースは、第一凸部に取り付けられ、第二ケースは、第二凸部に取り付けられている。
【0007】
上記高電圧貫通型コンデンサでは、第一ケース及び第二ケースが貫通導体の周りを囲んでいるので、樹脂封止材を使用しなくても、絶縁性を担保できる。第一ケースは素体の第一端面に設けられた第一凸部に取り付けられているので、第一ケースを確実に固定することができる。第二ケースは素体の第二端面に設けられた第二凸部に取り付けられているので、第二ケースを確実に固定することができる。
【0008】
上記一つの態様では、素体は、第一方向に延び、第一端面と第二端面とを連結している外側面と、第一方向に直交する方向で外側面と対向し、貫通孔を画成する内側面と、を更に有し、第一電極は、内側面に配置され、第二電極は、外側面に配置されていてもよい。この場合、外側面に配置された第二電極を接地電極とすれば、隣り合うコンデンサ間の距離を短くすることができる。
【0009】
上記一つの態様では、内側面は、第一電極から露出した露出領域を第二凸部の頂面と隣り合う位置に有していてもよい。この場合、第二端面に第二電極が配置されていたとしても、第一電極と第二電極とを十分に離間させ、電気的短絡の発生を抑制することができる。
【0010】
上記一つの態様では、第一電極は、内側面に配置された第一電極部分と、第一凸部の頂面に配置された第二電極部分と、を含み、貫通導体は、第二電極部分と第一方向で対向し、第二電極部分に電気的及び物理的に接続されているフランジ部を含んでもよい。この場合、フランジ部は、第二電極部分と電気的に接続されながら、素体の第一方向における位置を固定することができる。
【0011】
上記一つの態様では、第二電極は、外側面に配置された第三電極部分と、第二凸部を囲むように第二端面に配置された第四電極部分と、を含み、接地金具には、第二凸部を挿通させる開口が設けられており、第四電極部分は、接地金具の開口の周縁部に電気的及び物理的に接続されていてもよい。この場合、接地金具は、第四電極部分に電気的に接続されながら、素体の第一方向における位置を固定することができる。
【0012】
上記一つの態様では、貫通孔、第一ケース、及び第二ケースのそれぞれの内側には、樹脂封止材が充填されていなくてもよい。この場合であっても、絶縁性を担保することができる。
【0013】
上記一つの態様に係る高電圧貫通型コンデンサは、素体の露出部を覆う被覆層を更に備えてもよい。この場合、素体の耐湿性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一つの態様は、樹脂封止材を使用しない高電圧貫通型コンデンサを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態に係る高電圧貫通型コンデンサを示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る高電圧貫通型コンデンサを示す分解斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4図4は、コンデンサを示す斜視図である。
図5図5は、図1のV-V線に沿う断面図である。
図6図6は、変形例に係るコンデンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
図1から図5を参照して、本実施形態に係る高電圧貫通型コンデンサ1の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る高電圧貫通型コンデンサを示す斜視図である。図2は、図2は、本実施形態に係る高電圧貫通型コンデンサを示す分解斜視図である。図3は、図1のIII-III線に沿う断面図である。図4は、コンデンサを示す斜視図である。図5は、図1のV-V線に沿う断面図である。
【0018】
図1図3に示されるように、高電圧貫通型コンデンサ1は、複数のコンデンサCと、接地金具20と、複数の貫通導体30と、複数の第一ケース40と、複数の第二ケース50と、を備える。本実施形態では、高電圧貫通型コンデンサ1は、二つのコンデンサCと、二つの貫通導体30と、二つの第一ケース40と、二つの第二ケース50と、を備える。一対のコンデンサCは、互いに同じ構成を有している。
【0019】
図4及び図5に示されるように、各コンデンサCは、素体10と、第一電極11と、第二電極12と、第一被覆層13と、第二被覆層14と、を有する。素体10は、第一方向D1を軸方向とする柱形状を呈している。本実施形態では、素体10は、円柱形状を呈している。素体10は、第一方向D1で互いに対向している第一端面10a及び第二端面10bを有している。第一端面10a及び第二端面10bは、素体10の第一方向D1での両端面を規定している。本明細書では、第二端面10bから第一端面10aに向かう方向が上方向であり、第一端面10aは、第二端面10bより上方に位置している。
【0020】
素体10は、第一凸部15及び第二凸部16を有している。第一凸部15は、第一端面10aに設けられている。第一凸部15は、第一端面10aの中央部に設けられ、第一方向D1に突出している。第一凸部15は、頂面15aを有している。第二凸部16は、第二端面10bに設けられている。第二凸部16は、第二端面10bの中央部に設けられ、第一方向D1に突出している。第二凸部16は、頂面16aを有している。本実施形態では、頂面15a及び頂面16aは、円形状を呈している。頂面15a及び頂面16aは、互いに同形状を呈している。第一凸部15の第一端面10aからの突出高さは、第二凸部16の第二端面10bからの突出高さと同等であり、一例として、1mmである。
【0021】
素体10には、第一方向D1に延びる貫通孔17が形成されている。貫通孔17は、素体10を第一方向D1において貫通している。貫通孔17は、第一凸部15及び第二凸部16に開口している。貫通孔17は、頂面15aの中央部、及び、頂面16aの中央部に開口している。貫通孔17は、頂面15aから頂面16aまで素体10を貫通している。本実施形態では、貫通孔17は、断面円形状を呈している。
【0022】
素体10は、外側面10c及び内側面10dを有している。外側面10cは、第一方向D1に延び、第一端面10aと第二端面10bとを連結している。外側面10cは、第一方向D1から見て、素体10の外周を画成している。内側面10dは、第一方向D1に直交する方向で外側面10cと対向している。内側面10dは、貫通孔17を画成している。内側面10dは、第一方向D1に延び、頂面15aと頂面16aとを連結している。第一方向D1において、外側面10cの長さは、第一凸部15及び第二凸部16の長さの分だけ、内側面10dの長さh1よりも短い。
【0023】
素体10は、たとえば、絶縁材料からなる。素体10は、たとえば、セラミックを含む。セラミックは、たとえば、BaTiО3、BaZrO3、CaTiO3、又はMgTiOを含む。素体10は、セラミックに添加される添加物を含んでいてもよい。添加物は、たとえば、Si、Mg、Zr、Zn、Y、V、Al、又はMnを含む。
【0024】
第一電極11及び第二電極12は、互いに対向して素体10に配置されている。第一電極11は、電極部分11a及び電極部分11bを含んでいる。電極部分11aは、内側面10dに配置されている。電極部分11aは、内側面10dの全体を覆っている。電極部分11aの第一方向D1の長さは、内側面10dの第一方向D1の長さと同等である。電極部分11bは、頂面15aに配置されている。電極部分11bは、頂面15aの全体を覆っている。電極部分11aと電極部分11bとは、互いに連結されている。
【0025】
第二電極12は、電極部分12a及び電極部分12bを含んでいる。電極部分12aは、外側面10cに配置されている。電極部分12aは、外側面10cの全体を覆っている。電極部分11bは、第二凸部16を囲むように第二端面10bに配置されている。電極部分12bは、第二端面10bの全体を覆っている。電極部分12aと電極部分12bとは、互いに連結されている。
【0026】
第一電極11及び第二電極12は、導電性金属材料を含む。導電性金属材料は、たとえば、Agを含む。第一電極11及び第二電極12は、導電性金属材料と共に磁性材料を含んでいてもよい。磁性材料は、たとえば、Fe、Co、Ni、Cu、若しくはSr、又は、それらの組み合わせである。第一電極11及び第二電極12は、たとえば、素体10に付与された導電性ペーストを焼き付けることにより形成される。第一電極11及び第二電極12を形成するための導電性ペーストは、上記導電性金属材料を含む。
【0027】
第一被覆層13は、第一凸部15を囲むように第一端面10aに配置されている。第一被覆層13は、第一端面10aの全体を覆っている。第一被覆層13は、素体10を介して第一方向D1で電極部分12bと対向している。第二被覆層14は、頂面16aに配置されている。第二被覆層14は、頂面16aの全体を覆っている。第二被覆層14は、素体10を介して第一方向D1で電極部分11bと対向している。
第一被覆層13及び第二被覆層14は、たとえば、シリコーン樹脂又はエポキシ樹脂を含む。第一被覆層13及び第二被覆層14は、絶縁性を有する。第一被覆層13及び第二被覆層14は、素体10の露出部、すなわち、第一端面10a及び頂面16aを覆うことにより、素体10に耐湿性を付与する。
【0028】
素体10の高さ(素体10の第一方向D1の長さ)は、3mm以上であり、一例として7mmである。素体10の高さは、内側面10dの第一方向D1の長さh1、及び、電極部分11aの第一方向D1の長さh2と同等である。素体10の直径d1は、第一凸部15の直径d2の1.5倍以上である。直径d1は、貫通孔17の直径d3の2倍以上である。一例として、直径d1は、10.5mmであり、直径d2は、7.5mmであり、直径d3は、4.5mmである。
【0029】
図1図3に示されるように、接地金具20は、第一方向D1から見て、矩形状を呈している平板部材である。矩形状は、角が丸められている形状及び角が取られている形状を含む。接地金具20には、第二ケース50を挿通させる複数の開口21が設けられている。本実施形態では、接地金具20には、二つの開口21が第二方向D2に並んで設けられている。開口21は、円形状を呈し、第二ケース50の直径(外径)と同等の直径を有している。
【0030】
接地金具20は、第二電極12に電気的及び物理的に接続されている。接地金具20は、接地されている。接地金具20は、開口21の周縁部22を有している。周縁部22は、電極部分12aと第一方向D1で対向し、電極部分12aと電気的及び物理的に接続されている。周縁部22は、たとえば、はんだ又は導電性ペーストにより電極部分12bに接合されている。接地金具20は、周縁部22により素体10を支持している。接地金具20は、素体10の第一方向D1における位置を固定することができる。
【0031】
接地金具20の第二方向D2の長さは、20mm以上50mm以下であり、一例として、32mmである。接地金具20の第三方向D3の長さは、10mm以上30mm以下であり、一例として、20mmである。開口21の直径は、接地金具20の第二方向D2の長さの1/2未満である。
接地金具20は、導電性金属材料を含む。導電性金属材料は、たとえば、Fe、Cu、又はCu-Zn合金を含む。
【0032】
一対の貫通導体30は、それぞれ対応するコンデンサCの貫通孔17に挿通されている。貫通導体30は、第一電極11に電気的及び物理的に接続されている。貫通導体30は、本体部31と、タブ部32と、フランジ部33と、を含んでいる。本体部31は、第一方向D1に延在する棒状部材である。本実施形態では、本体部31は、断面円形状を呈している。本体部31の断面は、円形状以外の形状を呈していてもよい。
【0033】
本体部31は、貫通孔17に挿通されている部分31aと、頂面15aから突出している部分31bと、頂面16aから突出している部分31cと、を含んでいる。部分31a,31b,31cは、一体に形成されている。部分31aとコンデンサCとは、空間を介して対向している。部分31aとコンデンサCとの間の空間には、樹脂封止材が充填されていない。貫通孔17の内部空間には、樹脂封止材が充填されていない。
【0034】
タブ部32は、部分31bと接続されている。タブ部32は、タブ端子として機能する。本実施形態では、タブ部32は、第二方向D2を厚さ方向とする矩形平板状を呈している。一対のコンデンサCのタブ部32は、第二方向D2において主面同士を対向させるように配置されている。タブ部32には、タブ部32を厚さ方向(第二方向D2)に貫通する貫通孔32aが設けれている。
【0035】
フランジ部33は、本体部31の外周面にフランジ状に設けられている。フランジ部33は、部分31aと部分31bとの境界に配置されている。本実施形態では、フランジ部33は、円板状を呈している。フランジ部33の直径は、貫通孔17の直径よりも大きく、頂面15aの直径と同等である。フランジ部33は、電極部分11bと第一方向D1で対向し、電極部分11bと電気的及び物理的に接続されている。フランジ部33は、たとえば、はんだ又は導電性ペーストにより電極部分11bに接合されている。フランジ部33は、電極部分11bの全体を覆っている。
【0036】
貫通導体30の第一方向D1の長さは、30mm以上60mm以下であり、一例として、51.1mmである。本体部31の直径は、一例として、2mmである。タブ部32同士の第二方向D2における間隔(電極幅)は、5mm以上35mm以下であり、一例として、6.1mmである。
貫通導体30は、導電性金属材料を含む。導電性金属材料は、たとえば、Fe、Cu、又はCu-Zn合金を含む。
【0037】
第一ケース40及び第二ケース50は、中空の筒状を呈し、貫通導体30の周りを囲んでいる。本実施形態では、第一ケース40及び第二ケース50は、両端が開口された中空の円筒状を呈している。第一ケース40及び第二ケース50は、円筒状以外の形状を呈していてもよい。
【0038】
第一ケース40は、第一凸部15に取り付けられている。第一ケース40の内径は、第一凸部15の直径と同等に形成され、第一凸部15に嵌め込まれている。第一ケース40は、第一ケース40の内側面のうち下端部に位置する面が第一凸部15の外側面に接するように、第一凸部15に取り付けられている。第一ケース40の下端面は、第一端面10aに接している。第一ケース40は、たとえば、接着樹脂により第一凸部15に接着されている。
【0039】
第一ケース40は、貫通導体30のうち、部分31aの上端部、部分31b、タブ部32の一部、及びフランジ部33の周りを囲んでいる。タブ部32は、第一ケース40から突出している部分を含んでいる。貫通孔32aは、タブ部32の第一ケース40から突出している部分に設けられている。第一ケース40と部分31bとは、空間を介して対向している。第一ケース40と部分31bとの間の空間には、樹脂封止材が充填されていない。第一ケース40とタブ部32とは、空間を介して対向している。第一ケース40とタブ部32との間の空間には、樹脂封止材が充填されていない。第一ケース40の内部空間には、樹脂封止材が充填されていない。
【0040】
第二ケース50は、第二凸部16に取り付けられている。第二ケース50の内径は、第二凸部16の直径と同等に形成され、第二凸部16に嵌め込まれている。第二ケース50は、第二ケース50の内側面のうち下端部に位置する面が第二凸部16の外側面に接するように、第二凸部16に取り付けられている。第二ケース50の下端面は、第二端面10bに接している。第二ケース50は、たとえば接着樹脂により第二凸部16に接着されている。
【0041】
第二ケース50は、貫通導体30のうち、部分31aの下端部、及び部分31cの一部分の周りを囲んでいる。部分31cは、第二ケース50から突出している部分を含んでいる。第二凸部16は、第二ケース50の下端部と共に接地金具20の開口21に挿入されている。第二ケース50と部分31cとは、空間を介して対向している。第二ケース50と部分31cとの間の空間には、樹脂封止材が充填されていない。第二ケース50の内部空間には、樹脂封止材が充填されていない。
【0042】
第一ケース40の第一方向D1の長さは、貫通導体30の第一方向D1の長さの1/2以下であり、一例として、20.6mmである。第二ケース50の第一方向D1の長さは、貫通導体30の第一方向D1の長さの1/2以下であり、一例として、15mmである。第一ケース40及び第二ケース50の内径は、第一凸部15及び第二凸部16の直径と同等であり、一例として、7.5mmである。
【0043】
第一ケース40及び第二ケース50は、絶縁材料を含み、絶縁性を有している。絶縁材料は、たとえば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又は変性メラミンを含む。絶縁材料には、無機物が含まれていてもよい。無機物は、たとえば、ガラス粉及びセラミック粉を含む。ガラス粉は、たとえば、工業用ガラス粉を含む。セラミック粉は、たとえば、SiO粉、Al粉、タルク(MgSi10(OH))、窒化アルミニウム(AlN)、若しくは窒化ケイ素(Si)、又は、これらの混合物を含む。
【0044】
以上説明したように、高電圧貫通型コンデンサ1では、第一ケース40及び第二ケース50が貫通導体30の周りを囲んでいるので、貫通導体30と接地金具20との間で気中放電が生じることを抑制できる。よって、樹脂封止材を使用して貫通導体30を封止しなくても、絶縁性を担保できる。第一ケース40は素体10の第一端面10aに設けられた第一凸部15に嵌め込まれているので、第一ケース40を確実に固定することができる。第二ケース50は素体10の第二端面10bに設けられた第二凸部16に嵌め込まれているので、第二ケース50を確実に固定することができる。
【0045】
高電圧貫通型コンデンサ1では、樹脂封止材を使用しないので、製造ラインにおいて製品の隙間から樹脂が漏れ出す等の不具合が生じるおそれがない。樹脂自体の品質(たとえば増粘など)に起因する特性不良や信頼性不良の発生が抑制される。樹脂自体の品質が注型設備の異常を引き起こし、製造ラインが停止することも抑制される。高電圧貫通型コンデンサ1では、互いに別体の複数のコンデンサCを備えるので、複数のコンデンサが一体に設けられた構成と異なり、コンデンサ間に生じる電位差を絶縁するための樹脂封止材が不要となる。樹脂封止材を使用しないことで、樹脂とセラミックとの線膨張係数差に起因した不具合が生じるおそれがない。
【0046】
素体10は、第一方向に直交する方向で互いに対向している外側面10c及び内側面10dを有している。第一電極11は、内側面10dに配置され、第二電極12は、外側面10cに配置されている。よって、第一方向D1に直交する方向で第一電極11と第二電極12とを対向させ、電界を発生させることができる。外側面10cに配置された第二電極12は、接地された接地金具20に接続されている。これにより、隣り合うコンデンサCの第二電極12間で電位差がなくなるので、コンデンサC間の距離を短くすることができる。
【0047】
貫通導体30は、頂面15aに配置された電極部分11bと第一方向D1で対向し、電極部分11bと電気的及び物理的に接続されているフランジ部33を含んでいる。このため、フランジ部33は、電極部分11bと電気的に接続されながら、素体10の第一方向D1における位置を固定することができる。
【0048】
接地金具20は、第二端面10bに配置された電極部分12bと第一方向D1で対向し、電極部分12bと電気的及び物理的に接続されている周縁部22を含んでいる。このため、接地金具20は、電極部分12bに電気的に接続されながら、素体10の第一方向D1における位置を固定することができる。
【0049】
素体10の露出部となる第一端面10aには、第一被覆層13が設けられ、頂面16aには、第二被覆層14が設けられている。よって、素体10の耐湿性を向上させることができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0051】
図6は、変形例に係るコンデンサの断面構成を示す図である。図6に示されるように、変形例に係るコンデンサC1では、電極部分11aが内側面10dの全体を覆っていない点で、コンデンサC(図5参照)と相違している。内側面10dは、電極部分11aから露出した露出領域10eを有している。露出領域10eは、頂面16aと隣り合う位置に配置されている。露出領域10eには、耐湿性を向上させるために被覆層(不図示)が設けられていてもよい。本変形例では、電極部分11aの長さh2は、内側面10dの長さh1の1/2であり、一例として、3.5mmである。
【0052】
コンデンサC1では、内側面10dは、第一電極11から露出した露出領域10eを頂面16aと隣り合う位置に有している。このため、内側面10dに配置された電極部分11aと、第二端面10bに配置された電極部分12bとを十分に離間させ、電気的短絡の発生を抑制することができる。
【0053】
高電圧貫通型コンデンサ1は、二つのコンデンサC及び二つの貫通導体30を備えているが、三つ以上のコンデンサ及び三つ以上の貫通導体を備えていてもよいし、一つのコンデンサ及び一つの貫通導体30を備えていてもよい。
【0054】
上記実施形態及び変形例は、適宜組み合わされてもよい。
【0055】
上述した実施形態及び変形例の記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
第一方向に延びる貫通孔が形成されている素体と、互いに対向して前記素体に配置されている第一電極及び第二電極と、を有するコンデンサと、
前記貫通孔に挿通されていると共に、前記第一電極に電気的に接続されている貫通導体と、
前記第二電極に電気的に接続されている接地金具と、
筒状を呈し、前記貫通導体の周りを囲む第一ケース及び第二ケースと、を備え、
前記素体は、
前記第一方向で互いに対向している第一端面及び第二端面と、
前記第一端面に設けられ、前記貫通孔が開口する第一凸部と、
前記第二端面に設けられ、前記貫通孔が開口する第二凸部と、を有し、
前記第一ケースは、前記第一凸部に取り付けられ、
前記第二ケースは、前記第二凸部に取り付けられている、
高電圧貫通型コンデンサ。
(付記2)
前記素体は、
前記第一方向に延び、前記第一端面と前記第二端面とを連結している外側面と、
前記第一方向に直交する方向で前記外側面と対向し、前記貫通孔を画成する内側面と、を更に有し、
前記第一電極は、前記内側面に配置され、
前記第二電極は、前記外側面に配置されている、
付記1に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
(付記3)
前記内側面は、前記第一電極から露出した露出領域を前記第二凸部の頂面と隣り合う位置に有している
付記2に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
(付記4)
前記第一電極は、
前記内側面に配置された第一電極部分と、
前記第一凸部の頂面に配置された第二電極部分と、を含み、
前記貫通導体は、前記第二電極部分と前記第一方向で対向し、前記第二電極部分に電気的及び物理的に接続されているフランジ部を含む、
付記2又は3に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
(付記5)
前記第二電極は、
前記外側面に配置された第三電極部分と、
前記第二凸部を囲むように前記第二端面に配置された第四電極部分と、を含み、
前記接地金具には、前記第二凸部を挿通させる開口が設けられており、
前記第四電極部分は、前記接地金具の前記開口の周縁部に電気的及び物理的に接続されている、
付記2~4のいずれか一つに記載の高電圧貫通型コンデンサ。
(付記6)
前記貫通孔、前記第一ケース、及び前記第二ケースのそれぞれの内側には、樹脂封止材が充填されていない、
付記1~5のいずれか一つに記載の高電圧貫通型コンデンサ。
(付記7)
前記素体の露出部を覆う被覆層を更に備える、
付記1~6のいずれか一つに記載の高電圧貫通型コンデンサ。
【符号の説明】
【0056】
1…高電圧貫通型コンデンサ、10…素体、10a…第一端面、10b…第二端面、10c…外側面、10d…内側面、10e…露出領域、11…第一電極、11a…電極部分(第一電極部分)、11b…電極部分(第二電極部分)、12…第二電極、12a…電極部分(第三電極部分)、12b…電極部分(第四電極部分)、13…第一被覆層、14…第二被覆層、15…第一凸部、15a…頂面、16…第二凸部、16a…頂面、17…貫通孔、20…接地金具、21…開口、22…周縁部、30…貫通導体、33…フランジ部、40…第一ケース、50…第二ケース、C,C1…コンデンサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6