IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジタの特許一覧

<>
  • 特開-構造部材及び消火装置 図1
  • 特開-構造部材及び消火装置 図2
  • 特開-構造部材及び消火装置 図3
  • 特開-構造部材及び消火装置 図4
  • 特開-構造部材及び消火装置 図5
  • 特開-構造部材及び消火装置 図6
  • 特開-構造部材及び消火装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040679
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】構造部材及び消火装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20240318BHJP
   E04C 3/36 20060101ALI20240318BHJP
   E04C 3/29 20060101ALI20240318BHJP
   A62C 2/00 20060101ALI20240318BHJP
   A62C 37/40 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
E04B1/94 B
E04C3/36
E04C3/29
A62C2/00 X
A62C37/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145181
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シング ラヴィ
【テーマコード(参考)】
2E001
2E163
2E189
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE03
2E001EA01
2E001EA08
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA12
2E001GA66
2E001HC01
2E001KA01
2E001LA04
2E001LA12
2E163FA02
2E163FA12
2E163FF42
2E189CA04
2E189CA09
2E189MB05
(57)【要約】
【課題】木材を建築材料として使用するにあたり、燃え止まり層の設置に伴う重量や施工時の労力の増大を伴わなくとも、火災時に延焼しにくい建築用部材を提供する。
【解決手段】
本発明の実施形態の一態様の構造部材は、木材を含む荷重支持部材と、荷重支持部材の外周面の少なくとも一部を覆う被覆部材と、被覆部材の内壁面の少なくとも一部に水を供給して内壁面を濡らす水噴射部材と、水噴射部材に水を供給する水供給部材とを含み、水供給部材は荷重支持部材の外周面に設置された配管であり、水噴射部材は水供給部材の外周面に設置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を含む荷重支持部材と、
前記荷重支持部材の外周面の少なくとも一部を覆う被覆部材と、
前記被覆部材の内壁面の少なくとも一部に水を供給して前記内壁面を濡らす水噴射部材と、
前記水噴射部材に水を供給する水供給部材と、
を含む構造部材。
【請求項2】
前記水供給部材は前記荷重支持部材の外周面に設置された配管であり、前記水噴射部材は前記水供給部材の外周面に設置される、請求項1に記載の構造部材。
【請求項3】
前記水供給部材は前記荷重支持部材の内部に埋設された配管であり、前記水噴射部材は前記水供給部材の外周面に設置され、前記荷重支持部材の外周面に設けられた開口部から水を噴出する、請求項1に記載の構造部材。
【請求項4】
前記荷重支持部材が、鉄筋コンクリートに接合された木材であることを特徴とする、請求項1に記載の構造部材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の構造部材と、
前記水供給部材と水供給源とを接続する配水管と、
前記配水管から前記水供給部材への水流入量を調整する電磁弁と、
火災を感知し、火災が発生した旨の信号を出力する感知器と、
前記感知器からの信号を受け、前記電磁弁の開閉を指示する信号を出力する火災受信機と、
前記火災受信機からの信号を受け、前記電磁弁の開閉を制御する電磁弁制御装置と、
を含む消火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を利用した建築物における柱や梁などの建築部材に関する。特に本発明は耐火性能を向上させた前記建築部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築用の構造部材として鉄などの金属又は鉄筋コンクリートが使用されてきたが、かかる建築物において木材からなる構造部材の使用機会が増加している。木材を建築用部材として使用することで、二酸化炭素の排出量を削減できること、軽量であること、コストが安価であることなどに加え、木材の持つ質感、香り、雰囲気等によるリラックス効果が期待できるため、近年注目されている。特にオフィスや店舗に使用されるビルディングなどにおいて木質梁が使用されるなど、「木の現し」の施工が行われる機会が増加している。
【0003】
ところで、建築基準法では、建築物の階数に応じた耐火性能(耐火時間)が規定されている。建築基準法を遵守する大規模な木造建築物を構築する場合、構造耐力を確保する荷重支持部の焼損を遅らせるために、荷重支持部を被覆する燃え止まり層を厚くするなどの処置が施されている。
【0004】
特許文献1には、長尺かつ矩形横断面の木材からなる荷重支持部の外周に少なくとも2層の燃え止まり層を設け、さらに燃え止まり層の間に空気層が設けられた建築部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-105906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように燃え止まり層として石膏ボードなどの耐火材料を用いる場合、通常耐火材料を複数枚使用しなければならないため、構造断面が大きくなりやすく、重量も大きく増加する。また耐火材料としてモルタルを利用した場合、事前にモルタル施工する必要があり、現場合わせが難しく、施工時の労力の増大に繋がる。
【0007】
本発明の目的は、木材を建築材料として使用するにあたり、前述のような燃え止まり層の設置に伴う重量や施工時の労力の増大を伴わずに利用できるような建築用部材に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明一実施形態の態様の構造部材は、木材からなる荷重支持部材と、前記荷重支持部材の外周面の少なくとも一部を覆う被覆部材と、前記被覆部材の内壁面の少なくとも一部に水を供給して前記内壁面を濡らす水噴射部材と、前記水噴射部材に水を供給する水供給部材と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、燃え止まり層の設置に伴う重量や施工時の労力の増大を伴わず、木材を建築材料として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】建築構造物における木材の使用態様を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態における態様の構造部材の側面図である。
図3図2においてAA’面で切断した場合の構造部材の断面図である。
図4図3においてBB’面で切断した場合の、構造部材の断面図である。
図5】本発明の一実施形態における態様の構造部材の断面図である。
図6図5においてCC’面で切断した場合の、構造部材の断面図である。
図7】本発明の一実施形態における態様の構造部材が使用される消火装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の構造部材に係る一態様の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ要素には同じ符号を付して、説明が重複する場合にはその説明を省略する場合がある。また、図面においては、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
【0012】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0013】
本明細書中において、木材とは、無垢の木材の他、積層木材や合板を含むものとする。また、木材には、後述の鉄筋コンクリート材料とのハイブリッド材料において骨組みの一部として使用される木材をも含むものとする。
【0014】
本明細書において、建築構造物における鉛直上向方向又は鉛直上向きに近い方向を「上」又は「上方」とし、「下」又は「下方」とは、「上」又は「上方」の反対方向をいう。
【0015】
図1はビルディングなどの建築構造物100における木材の使用態様を示す模式的斜視図である。本発明の構造部材は、柱や梁の全体が木材のみにより構成されている構造部材のほか、鉄筋コンクリート部材により構成されてきた柱や梁などの骨組みの一部において、木材を代替させた所謂ハイブリッド梁などの構造部材を想定している。
【0016】
本発明の実施形態の一つである建築構造物100の構造について説明する。以下に示す図面においては、便宜上、水平な地表面に平行な面をxy平面とし、xy平面に垂直な鉛直方向がz軸であるとして説明を行う。
【0017】
<全体構造>
図1に示すように、建築構造物100は、鉛直方向(z方向)に延伸する複数の柱110、柱110に連結され、水平方向に延伸する複数の梁120、及び梁120の上に設けられる床スラブ150を基本的な構成として備える。
【0018】
柱110の数は4本以上であれば特に制約はなく建築構造物100の大きさや形状に応じ、その数や配置を適宜決定すればよい。柱110は図示されない杭の上に設けられ、基礎梁と接続される。柱110の形状(xy平面における断面形状)も任意であり、四角形、円形、楕円形などから適宜選択すればよい。柱110の長さも建築構造物100の大きさ、各階層の高さに応じて適宜設計される。
【0019】
各梁120は一対の柱110と接続される。図1においては、建築構造物100に設けられる梁120の少なくとも一つは、木材と他の材料とのハイブリッド梁を使用した例を示す。例えば、建築構造物100に設けられる梁120の少なくとも一つは木材であり、その両端部において木材は例えば鉄筋コンクリートによって覆われる。
【0020】
建築構造物100に設けられる梁120の全てがハイブリッド梁でもよく、或いは梁120の一部がハイブリッド梁であり、他の梁120は、全体が鉄筋コンクリートで形成された梁、又は鉄筋コンクリートを備えない木材で形成された梁でもよい。図1に示した例では、長い間隔(スパン)で設けられる一対の柱110に連結される梁120としてハイブリッド梁が用いられ、短い間隔で設けられる一対の柱110には鉄筋コンクリート梁が用いられている。ハイブリッド梁と鉄筋コンクリート梁の配置は任意に決定することができるが、図1に示した例のように、長い間隔で設けられる一対の柱110の間にハイブリッド梁を用いることが好ましい。これは、鉄筋コンクリート梁と比較するとハイブリッド梁は軽量であるため、スパンの大きい梁にハイブリッド梁を用いることで広い室内空間を確保しつつ、建築構造物100に十分な強度を付与することができるためである。
【0021】
床スラブ150は各層の床面を構成する鉄筋コンクリートなどの材料により構成され、梁120の上に設けられる。床スラブ150は各階層に設けられる。なお、図1では、見やすさを考慮し、床スラブ150は一部のみが示されている。詳細は後述するが、床スラブ150には、床面を形成するデッキプレートや、デッキプレート上に設けられる鉄筋トラス及びスラブ筋を有し、デッキプレート上に鉄筋トラス及びスラブ筋を埋め込むコンクリートによって形成することができる。なお、床スラブ150が設けられない階層があってもよい。以下、床スラブ150に含まれるコンクリートをスラブコンクリートと呼ぶ。
【0022】
スラブコンクリートと梁コンクリートの組成は、互いに同一でもよく、異なってもよい。また、スラブコンクリートと梁コンクリートの強度は互いに同一でもよく、異なってもよい。後者の場合、スラブコンクリートの強度は梁コンクリートの強度よりも低くてもよく、高くてもよい。一つの梁120の両端部に設けられる梁コンクリートの強度も互いに同一でもよく、異なってもよい。
【0023】
図2は、特に図1における鉄筋コンクリートと木材のハイブリッド材からなる梁120として本発明の構造部材200が使用された例を示す模式図である。
【0024】
図2において、梁120の木材部分は、両脇を鉄筋コンクリート製の柱110により固定されており、床スラブ150を支える荷重支持部材210として機能する。以下、本明細書中において、梁120の木材部分を荷重支持部材210と呼ぶこととする。
【0025】
荷重支持部材210はその外周を被覆部材220で覆われている。また荷重支持部材210の外周面上、又は荷重支持部材210の内部には、消火用の水を供給する水供給部材240の配管が設置されている。
【0026】
図3は、本発明の一実施形態における態様の構造部材200の断面図であり、図2におけるAA’面で切断した場合の断面図である。また図4は、図3においてBB’面で切断した場合の構造部材の断面図(側面図)であり、図2における被覆部材220を取り去った態様を示す。木材の軸が水平方向に延びる梁120を構成し、荷重を支持する荷重支持部材210、荷重支持部材210の外周をその全長に亘って被覆する被覆部材220を有する。
【0027】
図3において、荷重支持部材210は長尺かつ矩形横断面の木材からなり、木造建築物の規模などに応じて要求される強度を確保できる横断面積を有している。ここで、「矩形」とは、すべての角が直角である長方形であるが、見た目で長方形であると認識できる程度でよい。
【0028】
なお、荷重支持部材210の断面形状は矩形に限られるものではない。特に荷重支持部材210は平常時には被覆部材220に覆われてしまうため、強度を増強するための任意の形状であることができる。
【0029】
荷重支持部材210の周囲には被覆部材220が設けられる。被覆部材220は火災時に発生する熱や炎により、荷重支持部材210が延焼したり変質することにより強度が低下することを防ぐ防御板として機能する。一旦、火災が発生すると、被覆部材220が最初に熱や炎に晒される。しかし被覆部材220が燃えてしまわない限りは荷重支持部材210へ延焼することもないため、後述の手法により被覆部材220をできるだけ長時間残し、その内方に配置された荷重支持部材210が熱や炎に晒されるまでの時間を遅らせることができる。
【0030】
図3において被覆部材220は、荷重支持部材210がスラブ150と接する方向を除き荷重支持部材210の全ての周囲を覆い、断面視でコの字の形状を有する。ここで、被覆部材220の断面形状は限定されるものではなく、下方に広がる又は下方に狭まる台形枠形状などの多角形状又は円筒形状などのような周面が曲面形状を有するものであってもよい。
【0031】
被覆部材220は荷重支持部材210との間に一定の隙間を形成する。この隙間は、後述の水噴射により被覆部材220の内壁面を広範囲に濡らすために、広角で噴出された水が広がるための距離を稼ぎ、さらに被覆部材220と荷重支持部材210との間に空気層を設けることもできる。空気層は高い断熱効果を有するため、火災時に荷重支持部材210へ熱が伝導し、荷重支持部材210が炭化する等の変質を防止することができる。
【0032】
被覆部材220は荷重支持部材210の全周を覆わなくともよい。被覆部材220の設置方向は、火災時に熱や炎に晒される方向にあれば十分である。例えば、建築構造物100の壁面に近い梁として使用される場合は、部屋の内側に向けて被覆部材220がL字型に設置されていればよい。
【0033】
被覆部材220は、複数の部材を繋ぎ合わせて構成されてもよい。例えば、複数の板材を繋ぎ合わせて成形する場合には、略矩形形状を有する板材の端部を、例えば留つぎ、打ち付けつぎ、大入れつぎなどで直角に接合して形成することができる。ここで、「留つぎ」とは、2つの板材の木口を45°にカットして接合する接合方法、「打ち付けつぎ」とは、2つの板材の木口を直角に加工し、一方の板材の木口を他方の板材に突き合わせて接合する接合方法、「大入れつぎ」とは、一方の板材の側面に溝を掘り、他方の板材の木口を溝に差し込んで接合する接合方法である。なお、どの接合方法においても、釘や接着剤を用いて2つの板材を固定している。
【0034】
被覆部材220の材質は限定されるものではない。しかし、梁として木材を使用することによる軽量、低コストといった利益、或いは木材の質感等を生かすため、被覆部材220も木材を使用することが好ましい。被覆部材220として使用する部材は、火災時の燃え止まり効果を向上せるために、荷重支持部材210側から水の噴射を受けた際に内壁面付近に一定量の水を保持するため、表面の濡れ性が高いことが好ましい。被覆部材220として木材を使用する場合は、例えばヒノキ、スギ、ヒバ、ベイマツ、ケヤキといった材料を使用することができる。
【0035】
被覆部材220内壁面の濡れ性を向上させるために、内壁面に難燃性のクロスなどを張って、水を保持してもよい。難燃性クロスとしてはガラスクロスなどを使用することができる。
【0036】
被覆部材220の外壁面(部屋の内部側の面)の態様は特に限定されるものではない。例えば、木材を使用する際の質感等を失わせないために被覆部材220自体の木目調を露出したもの、或いは木目調が描かれたものを使用してもよい。被覆部材220の外壁面は、火災の際に天井などに設置されたスプリンクラーからの水の噴射に晒されることにより燃え止まり効果を期待されるため、水との濡れ性が高いことが好ましい。
【0037】
被覆部材220の固定は、荷重支持部材210又はスラブ150に固定することができる。被覆部材220の固定は、被覆部材220が重力、地震時の衝撃、火災時の周辺機械等の爆発などによる不測の衝撃で容易に脱落しないようにすべく、例えば、ボルト及びナットなどの公知の締結具を用いて、荷重支持部材210又はスラブ150と一体化されることが望ましい。
【0038】
<水噴射機構>
次に本発明の実施形態の一つである構造部材200における水噴射機構について説明する。
【0039】
図3において、荷重支持部材210の周囲には水供給部材240が設けられている。水供給部材240は図示しない水供給源と配水管620(図7参照)を介して接続されたパイプであり、図3ではその断面図が示されている。図3において水供給部材240は構造部材200の断面視において荷重支持部材210の左右側面及び下側面に1つずつ取り付けられている。水供給部材240の数、断面積及び断面形状は、荷重支持部材210の形状や強度、荷重支持部材210と被覆部材220との間隔、噴出された水の噴出形状などにより適宜変更することができる。ただし、被覆部材220の内壁面を十分に濡らすためには、被覆部材220の設置されている各方向に向けて少なくとも1つ以上の水供給部材240が設置されていることが好ましい。
【0040】
また、断面視で荷重支持部材210の左右側面に設置される水供給部材240は、被覆部材220に向けて噴射された水滴が被覆部材220の内壁面をつたって下方に流れ落ちることを考慮すると、被覆部材220の全体の高さの中間点よりも上に設置されることが好ましい。
【0041】
水供給部材240には水噴出部材250が複数設けられている。火災の際にはこの水噴出部材250から被覆部材220に向かって水を噴出させ、被覆部材220を内側から濡らすことができる。
【0042】
水噴出部材250の形態、数、間隔は、被覆部材220に十分な耐火性能を与えるに十分な水を提供するために適切に設定することができる。水噴出部材250の形態は水を広範囲に噴出するために、例えば、公知のスプレー式水噴出部材が使用できる。さらに、水供給部材240上に多数の穴を設けシャワー式にしたもの、細いスリットを設け面形状の水流を放出するものなども使用できる。
【0043】
水噴出部材250から噴射される水は、被覆部材220だけでなく、荷重支持部材210の温度上昇を防ぐために、荷重支持部材210の外周面の一部も濡らせる態様であることが好ましい。荷重支持部材210の外周面を濡らすことにより、仮に被覆部材220の一部が燃えて穴が開いてしまった場合でも、荷重支持部材210の過剰な温度上昇を防ぎ、延焼することを防止できる。
【0044】
荷重支持部材210は、前述のように噴出される水に晒されることがあるため、外周面を防水処理していることが好ましい。
【0045】
図5は、本発明の実施形態における別の態様の構造体を表す模式図であり、図6図5のCC’面で切断した場合の、断面図(側面図)となる。図5の態様では水供給部材240は予め荷重支持部材210の内部に埋め込まれている。水供給部材240を荷重支持部材210の内部に埋め込むことにより、水供給部材240と被覆部材220との間の距離を稼ぐことがでる。その結果として、荷重支持部材210と被覆部材220との間の隙間を狭めることができ、構造部材200の断面寸法を小さくすることができる。
【0046】
水供給部材240を荷重支持部材210の内部に埋め込む場合、水が噴出する水噴出部材250は荷重支持部材210の表面に設けられた開口部に設置される。その際、開口部の形状は水噴出部材250の形状に合わせ適宜設定することができる。
【0047】
図7は、本発明の実施形態の一態様である構造部材を使用した消火装置を表す模式図である。
図7に示すように、本実施形態の消火装置は、荷重支持部材210に設置される水噴出部材250、水噴出部材250へ水を供給する水供給部材240、貯水槽或いは水道などの水供給源と水供給部材240とを繋げる配水管620、建築物の屋内で居室の天井などに設置された感知器610、配水管620から水供給部材240へ送られる水量を調整する電磁弁640、感知器610から出力される火災信号を受信する火災受信器630、及び電磁弁640の駆動制御を行う電磁弁制御盤650、により構成される。
【0048】
感知器610は、熱及び煙の少なくとも一方を感知すると、その旨を示す火災信号を出力するセンサである。例えば、熱を感知するタイプでは、内部の感熱部が火災の熱により所定の温度以上又は温度上昇率以上になると作動するようになっている。また、煙を感知するタイプでは、火災の煙による空気の電離状態の変化を検出するものや、光の乱反射又は遮光を検出するものがある。
【0049】
火災受信器630は、感知器610に接続されており、感知器610から出力された火災信号を受信(入力)すると、図示しない火災灯を点灯したり、ブザーを鳴動させたりするとともに、電磁弁制御盤650に作動信号を出力する。また、火災受信器630には、ユーザが操作するための操作パネルやスイッチ類が設けられており、例えば火災が鎮まった場合等にこれらの操作によって、火災灯の消灯やブザーの停止を行うことが可能になっており、このとき電磁弁制御盤650に解除信号を出力できるように構成されている。
【0050】
電磁弁制御盤650は、火災受信器630に接続されており、火災受信器630から出力された作動信号を受信(入力)すると、電磁弁640を開くための開駆動信号を出力し、火災受信器630から出力された解除信号を受信(入力)すると、電磁弁640を閉じるための閉駆動信号を出力するように構成されている。
【0051】
電磁弁640は、電磁弁制御盤650に接続されており、電磁弁制御盤650から出力された駆動信号に応じて、ソレノイドの磁力を用いてプランジャと呼ばれる鉄片を動かすことでバルブを開閉するものである。具体的には、電磁弁640は配水管620と水供給部材4との間に設けられており、通常時には、配水管620から水供給部材240に連通する給水経路を遮蔽するようにバルブが全閉状態になっている。電磁弁制御盤650からの開駆動信号が入力される火災発生時には、その給水経路を開放するようにバルブが全開状態になる。なお、電磁弁640では、電磁弁制御盤650から閉駆動信号が入力されると、バルブが再び全閉状態になるように構成されている。
【0052】
配水管620は、図示しない水供給源から供給される水が充填されており、通常時には、水が電磁弁640の方向に加圧された状態で充水されており、火災発生時には、電磁弁640が駆動することで給水経路が開放されることにより、加圧された水(以下「圧力水」という)が水供給部材240内に供給されるようになっている。なお、配水管620は、圧力水を送水するための図示しない加圧送水装置に連結されていてもよい。
【0053】
水供給部材240は、配水管620から流入する圧力水を水噴出部材に供給することを目的に設置されており、先端には圧力水を止めるための止水弁660が設けられてもよい。
【0054】
水噴出部材250は、前述の通り荷重支持部材210の周囲に設置され、水供給部材240を通して供給された水流を散水する装置である。火災時には給水経路が開放されている間、水供給部材240を通して供給される水を散布し続け、電磁弁640が駆動することで給水経路が遮蔽されて、散水が終了するようになっている。
【0055】
<変形例>
本発明の構造部材は、前述の鉄筋コンクリート部材とのハイブリッド梁に限られず、例えば建築構造物の柱として利用されるものであってもよい。柱として利用される場合には、柱の長さ方向と重力の方向が一致するため、水供給部材の設置方向を、被覆部材を効率的に濡らすことができるよう変更してもよい。
【0056】
本発明の構造部材において、被覆部材に水道水以外の液体を噴射してもよい。例えば排水管から供給される水道水に添加剤を混合させ、被覆部材220の内壁面との濡れ性が高く粘度の高い水溶液とすることで、支持部材上に長く濡れた状態で留まれるようにしてもよい。
【0057】
本明細書に記載された一実施形態に基づき、当業者が適宜構成要素の追加、削除、又は設計変更を行ったもの、又は工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0058】
また、本明細書に記載された一実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0059】
100:建築構造物、110:柱、120:梁、150:床スラブ、200:構造部材、210:荷重支持部材、220:被覆部材、230:スラブ、240:水供給部材、250:水噴出部材、610:感知器、620:配水管、630:火災受信器、640:電磁弁、650:電磁弁制御盤、660:止水弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7