(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040683
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】防水装置及びサッシ
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20240318BHJP
E06B 7/23 20060101ALI20240318BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/23 Z
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145186
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】加納 直人
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 誠
(72)【発明者】
【氏名】中島 厚二
(72)【発明者】
【氏名】水原 一也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正博
【テーマコード(参考)】
2E036
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA01
2E036CA03
2E036DA02
2E036EA03
2E139AA08
2E139AC02
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】開口の下端が地面より高い位置にある開口部に対して設置することができる防水装置の提供。
【解決手段】開口の下端が地面より高い位置にある開口部に対して設置される防水装置であって、開口部に障子SD1、SD2を設置するための枠体に対して、障子SD1、SD2より室内側となる位置に、防水装置を取り付けるための取り付け部11と、開口部の少なくとも下部側を覆うことで、開口部の少なくとも下部側の防水性を向上する止水板と、を備える、防水装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口の下端が地面より高い位置にある開口部に対して設置される防水装置であって、
前記開口部にパネル体を設置するための枠体に対して、前記パネル体より室内側となる位置に、前記防水装置を取り付けるための取り付け部と、
前記開口部の少なくとも下部側を覆うことで、前記開口部の少なくとも下部側の防水性を向上する止水板と、
を備える、防水装置。
【請求項2】
前記枠体と対向する位置にシール部材が設けられており、
前記取り付け部が、前記枠体における額縁若しくは床材と係合する立ち上がり面に対して、室外側から直接若しくは他の部材を介して接するように構成されている、請求項1に記載の防水装置。
【請求項3】
前記止水板の下端部に、前記枠体の下枠に接する下端止水部であって、室外側に屈曲して水圧を下方側に受ける屈曲面を有する下端止水部を備える、請求項2に記載の防水装置。
【請求項4】
前記屈曲面が、前記枠体の下枠と前記パネル体の下端との間に挿入される、請求項3に記載の防水装置。
【請求項5】
前記パネル体の下端若しくは前記枠体の下枠と係合する係合部を備える、請求項2に記載の防水装置。
【請求項6】
前記係合部が、前記止水板の起立状態を維持するように機能する、請求項5に記載の防水装置。
【請求項7】
前記止水板が、展開可能な折り畳み構造を有し、折り畳みによって減少する幅寸法が、展開によって増大することに伴い、前記枠体への取り付けが行われるように構成されている、請求項2に記載の防水装置。
【請求項8】
前記取り付け部に、前記パネル体の戸先と前記枠体の間に挟まれて保持される、戸先挟持部を備える、請求項1に記載の防水装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載の防水装置を備えたサッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口の下端が地面より高い位置にある開口部に対して設置される防水装置及び当該防水装置を備えたサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水害時における、建物等の開口部からの浸水を抑止若しくは低減させるための、開口部に設置する防水装置若しくは止水装置(以下「防水装置」という)が用いられている。
特許文献1には、このような防水装置として、止水シートを用いるものに関する技術が開示されており、特許文献2には、防水板若しくは止水板(以下「止水板」という)を用いるものに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-140563号公報
【特許文献2】特開2017-061793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の防水装置は、建物等の開口部のうち、特に入口(即ち、基本的に開口の下端が地面と略同一レベルである箇所)に設けられるものであり、建物等の窓(開口の下端が地面よりも高い位置に形成されている開口部)に対して設けられる防水装置はなかった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、開口の下端が地面より高い位置にある開口部に対して設置することができる防水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
開口の下端が地面より高い位置にある開口部に対して設置される防水装置であって、前記開口部にパネル体を設置するための枠体に対して、前記パネル体より室内側となる位置に、前記防水装置を取り付けるための取り付け部と、前記開口部の少なくとも下部側を覆うことで、前記開口部の少なくとも下部側の防水性を向上する止水板と、を備える、防水装置。
【0007】
(構成2)
前記枠体と対向する位置にシール部材が設けられており、前記取り付け部が、前記枠体における額縁若しくは床材と係合する立ち上がり面に対して、室外側から直接若しくは他の部材を介して接するように構成されている、構成1に記載の防水装置。
【0008】
(構成3)
前記止水板の下端部に、前記枠体の下枠に接する下端止水部であって、室外側に屈曲して水圧を下方側に受ける屈曲面を有する下端止水部を備える、構成1又は2に記載の防水装置。
【0009】
(構成4)
前記屈曲面が、前記枠体の下枠と前記パネル体の下端との間に挿入される、構成3に記載の防水装置。
【0010】
(構成5)
前記パネル体の下端若しくは前記枠体の下枠と係合する係合部を備える、構成1から4の何れかに記載の防水装置。
【0011】
(構成6)
前記係合部が、前記止水板の起立状態を維持するように機能する、構成5に記載の防水装置。
【0012】
(構成7)
前記止水板が、展開可能な折り畳み構造を有し、折り畳みによって減少する幅寸法が、展開によって増大することに伴い、前記枠体への取り付けが行われるように構成されている、構成1から6の何れかに記載の防水装置。
【0013】
(構成8)
前記取り付け部に、前記パネル体の戸先と前記枠体の間に挟まれて保持される、戸先挟持部を備える、構成1から7の何れかに記載の防水装置。
【0014】
(構成9)
構成1から8の何れかに記載の防水装置を備えたサッシ。
【発明の効果】
【0015】
本発明の防水装置若しくはこれを備えたサッシによれば、開口の下端が地面より高い位置にある開口部に対して防水装置を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る実施形態の防水装置の取り付け状態を示す概略垂直断面図
【
図2】
図1の一部(サッシ窓下部付近)を拡大した図
【
図3】実施形態の防水装置の取り付け状態を示す概略水平断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0018】
図1~3は、本発明に係る実施形態の防水装置をサッシ窓に取り付けた状態を示す概略図であり、
図1:概略垂直断面図、
図2:
図1の下部側を拡大した拡大図、
図3:概略水平断面図である。
本実施形態の防水装置1は、サッシ窓に対して設置される防水装置であって、サッシ窓は「開口の下端が地面より高い位置にある開口部」である。
本実施形態の防水装置1は、開口部にガラス窓等のパネル体(外障子SD1、内障子SD2)を設置するための枠体であるサッシ枠に対して、パネル体より室内側となる位置に、防水装置を取り付けるための取り付け部11、13と、サッシ窓(開口部)の少なくとも下部側を覆うことで、前記開口部の少なくとも下部側の防水性を向上する止水板と、を備えている。
なお、以下の説明における「幅方向」とは、窓の開閉方向(障子のスライド方向)に沿った方向であり、「幅寸法」とは幅方向にそった長さである。
【0019】
サッシ窓は、家屋の壁(外壁OWが取り付けられている壁面W)に形成された開口部に取り付けられた、上枠21、下枠22、及び左右一対の竪枠23によって構成されるサッシ枠に対して、ガラス窓等の外障子SD1と内障子SD2が設置されている、引き違い窓である。また、本実施形態におけるサッシ窓は、下枠22が、家屋の土台Bに対して設置され、窓の内側の額縁(化粧窓枠)Fの下側の額縁が、床面と同一レベル(或いは、下側の額縁Fがフローリング材等の床面そのもの)となる掃き出し窓である。
下枠22には、それぞれ下端に戸車を有する外障子SD1、内障子SD2、網戸(特に図示せず)の走行をそれぞれガイドするレール部材222、レール部材223、レール部材221が形成されている。また、下枠22の室内側には、額縁(若しくは床材)Fと係合する立ち上がり面224が形成され(
図2参照)、立ち上がり面224の上部は室内側に向かって屈曲し、額縁(若しくは床材)Fの上部に係合する。
竪枠23の室内側においても、額縁Fと係合する立ち上がり面231が形成され(
図3参照)、立ち上がり面231の内側は室内側に向かって屈曲し、額縁(若しくは床材)Fの内側に係合する。
なお、サッシ窓自体は、額縁(若しくは床材)と係合する立ち上がり面を有する任意のサッシ窓であってよく、立ち上がり面を有する従来の任意のサッシ窓に対して、本実施形態の防水装置の概念を適用できるものであるため、サッシ窓自体に関するこれ以上の詳しい説明を省略する。
【0020】
本実施形態の防水装置1は、止水板として、サッシ窓(開口部)の下部側を覆うものである。防水装置1の基本的な態様は、正面視で(
図1の左側からみた場合、
図2では上側から見た場合に)略矩形の部材であり、水圧に抗する強度を備えさせると共に軽量化のため、アルミ、スチール、鋼材、ステンレス等の金属、若しくはPVC(板、又は押出材を連結して板状にしたもの)、アクリル板、ポリカーボネート板などの樹脂部材、によって形成された中空のパネル体(又は中空の内部に発泡ウレタンなどの充填剤を充填したもの)の構成を有している。
防水装置1の、枠体(サッシ枠)と対向する位置には、シール部材が設けられている。より具体的には、
図2に示されるように、防水装置1の下部の下枠22と対向する位置にシール部材112が設けられており、
図3に示されるように、防水装置1の両サイドの竪枠23と対向する位置にシール部材132が設けられている。シール部材112とシール部材132は、防水装置1の両サイドと下部にわたって連続して設けられている(三方に設けられている)。これらの構成によって“開口部の少なくとも下部側の防水性を向上する止水板”が構成される。シール部材は遮水性を有しており、また、弾性を有していることが好ましく、軟質ゴム、発泡ゴムやウレタンなどの樹脂を用いて形成される。また、水膨張材(水を吸うことで膨張して隙間をふさぎ、止水する部材)を用いてもよい。
【0021】
本実施形態の防水装置1は、サッシ枠のリブ状部材を利用して、サッシ枠に対して取り付けられる。防水装置1の下部に形成されている取り付け部11は、サッシ枠のリブ状部材(下枠22に形成されている、額縁Fと係合する立ち上がり面224)に係合する係合部であり、
図2に示されるように、外側側壁111と、シール部材112とによって構成されている。また、防水装置1の両サイドに形成されている取り付け部13は、サッシ枠のリブ状部材(竪枠23に形成されている、額縁Fと係合する立ち上がり面231)に係合する係合部であり、
図3に示されるように、外側側壁131と、シール部材132とによって構成されている。
図2,3からも理解されるように、取り付け部11,13は、「枠体(サッシ枠)における額縁と係合する立ち上がり面に対して、室外側から直接若しくは他の部材を介して接するように構成されている」ものである。
なお、本実施形態の外側側壁131は、防水装置1の上下方向に防水装置1の上下端まで延びる部材であるが、必ずしも連続的に形成されている必要は無く、例えば、防水装置1の上下方向に数か所形成された突起であってもよい。
一方、防水装置1の下部に形成されている外側側壁111は、防水装置1の幅方向に防水装置1の両端まで延びる部材であり、以下で説明する下端止水部12との関係上、基本的には連続的に形成されている必要がある。
【0022】
図2に示されるように、防水装置1の下端部には、防水装置1の幅方向に防水装置1の両端まで延びる部材であり、室外側(
図2における左側)へと屈曲した屈曲面12が形成されている。屈曲面12の下部側にはシール部材121が設けられており、下枠22に接するように、且つ、屈曲面12が下枠22と内障子SD2(パネル体)の下端との間に挿入されるように配置される。
屈曲面12は、水害時において、水圧を受けて、下方向に押し付けられる作用を生じさせ、これによって下枠22との間の止水機能をより高める作用(中空状の部材である止水板の浮き上がりを防止する作用)を得ることができるものであり、下端止水部として機能する。即ち、防水装置1は、「枠体の下枠に接する下端止水部であって、室外側に屈曲して水圧を下方側に受ける屈曲面を有する下端止水部」を備えるものである。
また、屈曲面12が、下枠22と内障子SD2(パネル体)の下端との間に挿入されるように配置されていることによっても、止水板の浮き上がりを防止する作用を得ることができる。
なお、ここでは屈曲面12の下部側にシール部材121が設けられているものを例としているが、別途のシール部材121は必須のものでは無い。例えば、屈曲面12自体を弾性を有するシール部材で形成するもの等であってよい。
【0023】
防水装置1の取り付けは、やりおくり(いってこい)方式にて、防水装置1の一方の側部を先に竪枠23の溝部に挿入し、その後他方の側部をはめ込むようにして
図3の状態とする。両端部のシール部材132が弾性部材で形成されていることにより、この作業の作業性が向上される。また、両端部のシール部材132の外側までの幅寸法が、両端部の竪枠23の立ち上がり面231の内側の間隔より僅かに大きく形成されていることにより(即ち、防水装置1が竪枠23の間に圧入される構成により)、はめ込んだ際に生じるシール部材132の弾性力が、防水装置1の取り付け状態を保持する係止力としても作用し、且つ止水機能を向上するように作用する。なお、このように変形を前提としたシール部材には、その止水機能の向上のために、発泡シール材を用いるようにするとよい。
上記のやりおくり(いってこい)方式のはめ込み作業は、防水装置1の下端が下枠22と干渉しない位置(高さ)で行われ、やりおくり(いってこい)方式のはめ込み作業の後で、防水装置1を下方に押し込むようにすることで、
図1の取り付け状態となる。外側側壁111や屈曲面12は弾性変形が可能な部材で形成されており、防水装置1が下方に押し込まれることで、屈曲面12が下枠22と内障子SD2(パネル体)の下端との間に挿入されるように配置される。
【0024】
以上のごとく、本実施形態の防水装置1によれば、既存のサッシ窓に対して、専用の取り付け部材などの設置等を要することなく、安価かつ手軽に止水対策を行うことができる。
近年の水害による被害の甚大化に伴い、床上浸水の被害も増大しており、床上浸水の被害を防止若しくは低減することのニーズが高まっている。床上浸水の被害を防止若しくは低減するためには、掃き出し窓における止水が不可欠であるが、引き違い窓等の引き戸式の窓においては、その構造上、止水をすることが容易でない面がある。これに対して、本実施形態の防水装置1によれば、既存のサッシ窓に対して、安価かつ手軽に止水対策を行うことができるため、非常に有用である。
【0025】
なお、本実施形態では、防水装置1のシール部材が、サッシ枠の内側と接するように防水装置1の外周部分に設けられているものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、シール部材は、サッシ枠を構成する部材に対して対向する位置に設けられるものであればよい。
図4には、シール部材の取り付け位置を別の位置にした一例を示した。
図4(a)は、防水装置をサッシ窓に取り付けた状態を示す概略水平断面図の一方側端部を示した図であり、
図4(b)は、概略垂直断面図の下方側を示した図である。
図4(a)に示されるように、この例では、外側側壁131の室内側にシール部材132-1が設けられており、これにより、外側側壁131が、竪枠23の立ち上がり面231に対して、室外側からシール部材132-1を介して接するように構成される。
なお、
図4(a)では、実施形態におけるシール部材132が無いものとしているが、シール部材132を併用するものであってもよい。
また、
図4(b)に示されるように、この例では、外側側壁111の室内側にシール部材112-1が設けられており、これにより、外側側壁111が、竪枠23の立ち上がり面224に対して、室外側からシール部材112-1を介して接するように構成される。
なお、
図4(b)では、実施形態におけるシール部材112を併用するものとしているが、シール部材112を設けないものであってもよい。
【0026】
図4の例によれば、
図4(a)、(b)からも理解され得るように、水害時において水圧が外部からかかると、当該水圧によって防水装置1をサッシ枠に押し付ける力(即ち、シール部材132-1、シール部材112-1をサッシ枠に密着させる力)が生じるため、防水性を向上することができる。
【0027】
また、障子を利用して、防水装置を固定するようにしてもよい。
図5にはそのようなものの例を示した。
図5は、防水装置をサッシ窓に取り付けた状態を示す概略水平断面図の一方側端部を示した図である。
図5の例では、取り付け部13の外側側壁131の先端部に、障子(パネル体)SDの戸先と枠体(竪枠23)の間に挟まれて保持される、戸先挟持部1311を備えている。
当該構成により、障子を閉めることで防水装置の固定が行われる。
【0028】
本実施形態では、防水装置1が一枚の止水板として形成されるものを例としたが、本発明をこれに限るものではなく、防水装置が複数の止水板を用いて構成されるものであってよい。
図6にはこのようなものの一例を示した。
図6の防水装置1-1は、2枚の止水板がヒンジHで接合されることにより、上下方向の軸に沿って左右に折り畳み及び展開可能な折り畳み構造を有している。2枚の止水板の接合部においては適宜止水構造(シール部材を備えさせること等による密着構造)が設けられる。
防水装置1-1の両サイドの構成は、実施形態の防水装置1と同様の構成である。また、防水装置1-1の下端側の構成についても、実施形態1の防水装置1と同様の概念となるものが形成されている。即ち、防水装置1-1は、実施形態1の防水装置1を2分割にして、ヒンジHで折り畳み可能に接合したものと同様の概念である。
防水装置1-1の取り付けは、
図6(a)、(b)に示されるように、防水装置1-1を少し折り畳んだ状態として左右一対の竪枠23の間に配し、折り畳みを展開することによって、左右の取り付け部13を竪枠23の立ち上がり面231に嵌合させる。即ち、防水装置1-1は、「折り畳みによって減少する幅寸法が、展開によって増大することに伴い、枠体への嵌合が行われるように構成されている」ものである。
図6(a)、(b)の作業は、防水装置1-1の下端が下枠22と干渉しない位置(高さ)で行われ、
図6(a)、(b)の作業の後に、
図6(c)に示されるように、防水装置1-1を下方にスライドさせることで、取り付け部11の嵌合が行われ、これによって、防水装置1-1の取り付けが行われる。
なお、実施形態での説明と同様に、両端部のシール部材の外側までの幅寸法が、両端部の竪枠23の立ち上がり面231の内側の間隔より僅かに大きく形成されていることにより(即ち、防水装置1-1が竪枠23の間に圧入される構成により)、はめ込んだ際に生じるシール部材の弾性力が、防水装置1-1の取り付け状態を保持する係止力としても作用し、且つ止水機能を向上するように作用する。
図6の防水装置1-1によれば、実施形態と同様の作用効果が得られると共に、防水装置の収納時において折り畳みによってコンパクト化ができるという優れた作用効果を得ることができる。
なお、ここでは折り畳み箇所が1か所であるものを例としているが、
図7にその一例を示したように、折り畳み箇所を複数とする(例えばアコーディオン状に折り畳めるようにする)ことで、収納時によりコンパクトにすることができるようにしてもよい。
【0029】
図6や7の折り畳み方式とする場合に、展開状態を保持するための補強部材を設けるようにしてもよい。
図8にはこのようなものの一例を示した。
図8の防水装置1-2では、かんぬきとして機能するバー部材15と、かすがい部材16によって補強部材が構成されている。
図8(a)に示されるように、防水装置1-2の折り畳み状態において、その折り畳みの内側となる面に、バー部材15と各かすがい部材16が設けられている。
図8(b)~(d)に示されるように、防水装置1-2の展開後に、バー部材15をスライドさせて各かすがい部材16に通し、折り畳み箇所の両サイドにわたってバー部材15を位置させることで(
図8(d))、かんぬきがかかり、防水装置1-2の展開状態を維持するように補強される。
図8(a)に示されるように、折り畳みの内側となる面にバー部材15と各かすがい部材16が設けられていることにより、収納状態(折り畳み状態)におけるコンパクト化が図られている。なお、当該構成は、
図7の止水板1-1´のように複数の折り畳み箇所を有する物にも適用することができる。複数の折り畳み箇所がある場合においても、隣り合う板の関係において、
図8と同様の構成を適用すればよいものであり、これによって、
図8と同様に、収納状態(折り畳み状態)におけるコンパクト化を図ることができる。
【0030】
止水板は、前述のごとく、水圧に抗する強度を備えさせると共に軽量化のために中空のパネル体の構成を有しているため、水害時の水位の上昇に伴って浮力を受けることになる。これに対し、実施形態では、上述のように、下端止水部である屈曲面12を備えさせることにより、水害時の水圧を利用して、止水板の浮き上がりを防止しているものであるが、止水板が浮いてしまうことを防止するための固定部材や係合部を設けるようにしてもよい。
図9には、このような止水板が浮いてしまうことを防止するための係合部として、下枠22と係合する係合部14を備えるものの例としての防水装置1-3を示した。実施形態における屈曲面12に替えて係合部14を備える点以外は、実施形態の防水装置1と基本的に同様の構成である。
係合部14は、取り付け部11の外側側壁111の下端部から、室外側へと向かって延びる突起部であり、下枠22のレール部材223に形成されている水抜き穴と係合する。
これにより、止水板が水位上昇時の浮力によって浮いてしまうことが防止され、また、止水板の起立状態を維持するようにも機能する。
また、
図10には、止水板が浮いてしまうことを防止するための係合部として、パネル体(障子)の下端と係合する係合部14-1を備えるものの例を示した。
図10の防水装置1-3´は、内障子SD2の下端側に係合する係合部14-1を備え、屈曲面12を有していない以外は、実施形態の防水装置1と基本的に同様の構成である。
係合部14-1は、内障子SD2の下端側に係合するフック形状を有していると共に、内障子SD2の框部分に接する接触面を有している。
図10に示されるように、内障子SD2の下端側にフックが係合し、且つ、框部分に面接触する取り付け状態となることで、係合部14-1は、止水板の浮き上がりを防止する機能に加え、止水板の起立状態を維持するように機能する。係合部14-1は、サッシ枠の構成の相違などに応じて、取り付け部111の部分に形成されるもの等であってもよい。
なお、
図9や
図10で例示した係合部に替えて、例えば、別途の固定金具等の固定部材を用いて防水装置をサッシ窓や額縁などの建材に固定するものや、接着テープ等を用いて防水装置をサッシ窓や建材に固定するもの等であってもよい。
【0031】
実施形態においては、引き違いのサッシ窓について説明したが、本発明をこれに限るものでは無い。例えば、片開きのサッシ窓の他、任意の引き戸式の窓に対して、上記説明した概念を適用することができる。
また、掃き出し窓を例として説明したが、本発明をこれに限るものではなく、腰高窓等に対しても、上記説明した概念を適用することができる。
【0032】
また、実施形態では、防水装置として、サッシ窓(開口部)の下部側(サッシ窓の一部)を覆うものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、サッシ窓(開口部)の全体を覆うようにするもの(止水部材を、サッシ窓の全体を覆う大きさで形成するもの)であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1...防水装置(止水板)
11...取り付け部
112...シール部材
12...屈曲面(下端止水部)
13...取り付け部
1311...戸先挟持部
14...係合部
21...上枠(枠体)
22...下枠(枠体)
224...立ち上がり面
23...竪枠(枠体)
231...立ち上がり面
SD1、SD2...障子(パネル体)