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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040688
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20240318BHJP
   C08J 7/06 20060101ALI20240318BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20240318BHJP
【FI】
B32B15/08 N
C08J7/06 A CER
C08J7/06 CEZ
B32B7/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145194
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】山中 宗一郎
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
【Fターム(参考)】
4F006AA12
4F006AB73
4F006BA07
4F006DA01
4F006EA02
4F100AA37A
4F100AB01B
4F100AB16C
4F100AB17B
4F100AK01A
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100EH66B
4F100JG01A
4F100JK02
4F100JK20
4F100JL04
(57)【要約】
【課題】所定の熱衝撃試験を経てその後導電性フィルムがさらに冷却されることによる亀裂の発生を抑制可能な導電性フィルムを提供する。
【解決手段】導電性フィルムは、導電性フィルム本体と、金属層とを備える。導電性フィルム本体は、樹脂と導電材料とを含む。金属層は、導電性フィルム本体に積層されている。TMA(Thermomechanical Analyzer)を用いた試験において、導電性フィルムを20℃から80℃まで加熱し、その後、導電性フィルムを80℃から20℃まで冷却した場合に、導電性フィルムのMD(Machine Direction)における寸法の変化率が-0.10%以上である。上記試験において、導電性フィルムを引っ張る荷重が0.0035Nであり、加熱時の温度変化の速度が5.0℃/分であり、冷却時の温度変化の速度が-5.0℃/分である。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性フィルムであって、
樹脂と導電材料とを含む導電性フィルム本体と、
前記導電性フィルム本体に積層された金属層とを備え、
TMA(Thermomechanical Analyzer)を用いた試験において、前記導電性フィルムを20℃から80℃まで加熱し、その後、前記導電性フィルムを80℃から20℃まで冷却した場合に、前記導電性フィルムのMD(Machine Direction)における寸法の変化率が-0.10%以上であり、
前記試験においては、前記導電性フィルムを引っ張る荷重が0.0035Nであり、加熱時の温度変化の速度が5.0℃/分であり、冷却時の温度変化の速度が-5.0℃/分である、導電性フィルム。
【請求項2】
前記導電性フィルム本体における残留応力の緩和温度が80℃よりも高い、請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
MDにおける破断強度とTD(Traverse Direction)における破断強度との積が710以上である、請求項1又は請求項2に記載の導電性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-97142号公報(特許文献1)は、導電性フィルムを開示する。この導電性フィルムは、樹脂フィルムと、樹脂フィルム上に積層された金属層とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-97142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂を含む層と金属層とを含む導電性フィルムに関して、所定の熱衝撃試験が行なわれる場合を考える。例えば、導電性フィルムを20℃から80℃まで加熱し、その後、導電性フィルムを80℃から20℃まで冷却する所定の熱衝撃試験を経た場合に、導電性フィルムは収縮する。導電性フィルムがさらに冷却され(例えば、-20℃まで冷却され)、金属層に固定された樹脂を含む層がさらに収縮することによって、樹脂を含む層において亀裂が生じる場合がある。上記特許文献1においては、このような問題の解決手段が開示されていない。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、所定の熱衝撃試験を経てその後導電性フィルムがさらに冷却されることによる亀裂の発生を抑制可能な導電性フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従う導電性フィルムは、導電性フィルム本体と、金属層とを備える。導電性フィルム本体は、樹脂と導電材料とを含む。金属層は、導電性フィルム本体に積層されている。TMA(Thermomechanical Analyzer)を用いた試験において、導電性フィルムを20℃から80℃まで加熱し、その後、導電性フィルムを80℃から20℃まで冷却した場合に、導電性フィルムのMD(Machine Direction)における寸法の変化率が-0.10%以上である。上記試験において、導電性フィルムを引っ張る荷重が0.0035Nであり、加熱時の温度変化の速度が5.0℃/分であり、冷却時の温度変化の速度が-5.0℃/分である。
【0007】
この導電性フィルムにおいては、TMAを用いた試験において、導電性フィルムを20℃から80℃まで加熱し、その後、導電性フィルムを80℃から20℃まで冷却した場合に、MDにおける寸法の変化率が-0.10%以上である。すなわち、この導電性フィルムにおいては、所定の熱衝撃試験を経た場合の収縮率が比較的小さい。したがって、この導電性フィルムによれば、所定の熱衝撃試験を経た場合の収縮率が比較的小さいため、所定の熱衝撃試験を経てその後導電性フィルムがさらに冷却されたとしても亀裂の発生を抑制することができる。
【0008】
上記導電性フィルムにおいて、導電性フィルム本体における残留応力の緩和温度が80℃よりも高くてもよい。
【0009】
この導電性フィルムにおいては、導電性フィルム本体における残留応力の緩和温度が80℃よりも高いため、導電性フィルムを20℃から80℃まで加熱し、その後、導電性フィルムを80℃から20℃まで冷却する所定の熱衝撃試験を経ても、導電性フィルム本体において大きい収縮が生じない。したがって、この導電性フィルムによれば、所定の熱衝撃試験を経た場合の収縮率が比較的小さいため、所定の熱衝撃試験を経てその後導電性フィルムがさらに冷却されたとしても亀裂の発生を抑制することができる。
【0010】
また、上記導電性フィルムにおいて、導電性フィルム本体は、第1導電性フィラーを含む第1導電性樹脂層と、第2導電性フィラーを含む第2導電性樹脂層とを備え、第1導電性フィラーは、導電性カーボンであり、第2導電性フィラーは、白金、金、銀、銅、SUS(Stainless Used Steel)、ニッケル及びチタンが含まれる群から選択される少なくとも1種類の金属を含んでいてもよい。
【0011】
また、上記導電性フィルムにおいて、MDにおける破断強度とTD(Traverse Direction)における破断強度との積が710以上であってもよい。
【0012】
この導電性フィルムによれば、MDにおける破断強度とTDにおける破断強度との積が比較的大きいため、所定の熱衝撃試験を経てその後導電性フィルムがさらに冷却されたとしても亀裂の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定の熱衝撃試験を経てその後導電性フィルムがさらに冷却されることによる亀裂の発生を抑制可能な導電性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】導電性フィルムの断面を示す図である。
図2】所定の熱衝撃試験を経ることによる寸法変化のイメージを説明するための図である。
図3】製造装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施の形態」とも称する。)について、図面を用いて詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図面は、理解の容易のために、適宜対象を省略又は誇張して模式的に描かれている。
【0016】
[1.導電性フィルムの構成]
図1は、本実施の形態に従う導電性フィルム10の断面を示す図である。導電性フィルム10は、例えば、複写機やプリンタ等の帯電フィルムや除電フィルム、その他電気・電子機器や部品用の各種機能性フィルムとして用いられる。図1に示されるように、導電性フィルム10は、導電性フィルム本体15と、金属被膜層300とを含んでいる。導電性フィルム本体15は、第1導電性樹脂層100と、第2導電性樹脂層200とを含んでいる。第1導電性樹脂層100の厚みT1は、例えば、第2導電性樹脂層200の厚みT2の0.5倍以上、5倍以下である。以下、各層について説明する。
【0017】
<1-1.第1導電性樹脂層>
第1導電性樹脂層100は、ポリオレフィンと、導電性フィラーとを含んでいる。すなわち、第1導電性樹脂層100は、ポリオレフィンと導電性フィラーとを混合することによって形成されている。
【0018】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)が挙げられる。また、炭素数4~30のα-オレフィン(1-ブテン、イソブテン、1-ヘキセン、1-デセン又は1-ドデセン等)を必須構成単量体とする重合体等がポリオレフィンとして用いられてもよい。これらのポリオレフィンは、1種単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0019】
ポリオレフィンの中でも、防湿特性及び機械的強度の観点で、ポリプロピレンが好ましい。ポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0020】
第1導電性樹脂層100に含まれる導電性フィラーとしては、導電性カーボンが挙げられる。導電性カーボンとしては、例えば、黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)、カーボンナノチューブ及びこれらの混合物が挙げられる。導電性カーボンの中では、カーボンブラックが好ましく、アセチレンブラック、ファーネスブラック、又は、それらの混合物がより好ましい。
【0021】
<1-2.第2導電性樹脂層>
第2導電性樹脂層200は、第1導電性樹脂層100上に形成されており、第1面側層210と、第2面側層220とを含んでいる。なお、第1面240は、第1導電性樹脂層100の第2導電性樹脂層200と反対側の面である。第2面230は、第2導電性樹脂層200の第1導電性樹脂層100と反対側の面である。
【0022】
第1面側層210及び第2面側層220の各々は、ポリオレフィンと、導電性フィラーとを含んでいる。すなわち、第1面側層210及び第2面側層220の各々は、ポリオレフィンと導電性フィラーとを混合することによって形成されている。ポリオレフィンとしては、例えば、第1導電性樹脂層100の説明において例示したものを用いることができる。
【0023】
第2導電性樹脂層200に含まれる導電性フィラーとしては、白金、金、銀、銅、ニッケル、チタン及びこれらの混合物が挙げられる。すなわち、第2導電性樹脂層200に含まれる導電性フィラーは、白金、金、銀、銅、ニッケル及びチタンが含まれる群から選択される少なくとも1種類の金属元素を含む。なお、これらの中では、ニッケル粒子が導電性フィラーとしてより好ましい。例えば、第2導電性樹脂層200においては、導電性フィラーが、第1面側層210よりも第2面側層220の方に多く含まれている。
【0024】
<1-3.金属被膜層>
金属被膜層300は、第2導電性樹脂層200の第2面230上に形成されている。金属被膜層300は、例えば、ニッケル、銅、銀及びアルミニウムの少なくともいずれかによって構成されてもよい。また、金属被膜層300は、それらの酸化物又は合金によって構成されてもよい。金属被膜層300は、例えば、蒸着法、スパッタリング法、メッキ法又はコーティング法等の公知の技術によって形成される。金属被膜層300の厚さは、特に限定されないが、10~100nmであることが好ましい。
【0025】
[2.各種パラメータ]
<2-1.熱衝撃試験を経た寸法変化>
導電性フィルム10は、所定の熱衝撃試験を経ることによるMD(Machine Direction)における寸法の変化率が「-(マイナス)0.10%」以上という特性を有している。所定の熱衝撃試験は、TMA(Thermomechanical Analyzer)を用いた試験である。この試験においては、導電性フィルム10が20℃から80℃まで加熱され、その後、導電性フィルム10が80℃から20℃まで冷却される。導電性フィルム10は、この加熱及び冷却を経た後におけるMDの寸法変化率が-0.10%以上という特性を有している。
【0026】
図2は、所定の熱衝撃試験を経ることによる寸法変化のイメージを説明するための図である。図2を参照して、横軸は温度を示し、縦軸はMDにおける寸法の変化率を示す。上述のように、導電性フィルム10は、20℃から80℃まで加熱される。加熱されることによって導電性フィルム10の寸法は徐々に大きくなる。その後、導電性フィルム10は、80℃から20℃まで冷却される。冷却されることによって導電性フィルム10の寸法は徐々に小さくなる。この例においては、加熱及び冷却を経て、導電性フィルム10のMDにおける寸法は加熱前よりも小さくなっている。この寸法変化率が-0.10%以上であるという特性を導電性フィルム10は有している。
【0027】
このように、導電性フィルム10においては、所定の熱衝撃試験を経た場合の収縮率が比較的小さい。したがって、導電性フィルム10によれば、所定の熱衝撃試験を経た場合の収縮率が比較的小さいため、所定の熱衝撃試験を経た後に導電性フィルム10がさらに冷却されたとしても(例えば、-20℃まで冷却されたとしても)亀裂の発生を抑制することができる。
【0028】
<2-2.残留応力の緩和温度>
導電性フィルム10は、導電性フィルム本体15における残留応力の緩和温度が80℃よりも高いという特性を有している。詳細については後述するが、導電性フィルム本体15の製造工程においては、温度が比較的高い状態で溶融材料が固まり始める工夫が施されている。温度が比較的高い状態で溶融材料が固まり始めることによって、導電性フィルム本体15における残留応力の緩和温度が高くなる。
【0029】
導電性フィルム本体15においては、残留応力の緩和温度が80℃よりも高いため、導電性フィルム10を20℃から80℃まで加熱し、その後、導電性フィルム10を80℃から20℃まで冷却する所定の熱衝撃試験を経ても、導電性フィルム本体15において大きい収縮が生じない。したがって、導電性フィルム10によれば、所定の熱衝撃試験を経た場合の収縮率が比較的小さいため、所定の熱衝撃試験を経た後に導電性フィルム10がさらに冷却されたとしても亀裂の発生を抑制することができる。
【0030】
<2-3.破断強度及び破断伸度>
導電性フィルム10は、MDにおける破断強度とTDにおける破断強度との積(破断強度積)が710以上という特性を有している。また、導電性フィルム10は、MDにおける破断伸度とTDにおける破断伸度との積(破断伸度積)が7以上という特性を有している。
【0031】
[3.導電性フィルムの製造方法]
図3は、製造装置40の構成を模式的に示す図である。製造装置40によって、導電性フィルム本体15が製造される。図3に示されるように、製造装置40は、Tダイ400と、キャストロール410,420と、巻取りロール430とを含んでいる。
【0032】
Tダイ400は、Tダイ本体401と、原料投入部440,450,460とを含んでいる。原料投入部440には、第2面側層220を形成するための原料が投入される。原料投入部440には、例えば、ポリプロピレンとニッケルとが投入される。原料投入部450には、第1面側層210を形成するための原料が投入される。原料投入部450には、例えば、ポリプロピレンとニッケルとが投入される。原料投入部450に投入される原料におけるニッケルの重量パーセント濃度は、原料投入部440投入される原料におけるニッケルの重量パーセント濃度よりも低い。原料投入部460には、第1導電性樹脂層100を形成するための原料が投入される。原料投入部460には、例えば、ポリプロピレンとカーボンブラックとが投入される。
【0033】
Tダイ本体401は、原料投入部440,450,460を介して投入された原料を共押出しすることによって、各原料投入部に投入された原料の溶融物同士を融着させて1枚の一体化したフィルム(溶融材料)とするように構成されている。キャストロール410,420は、押し出された溶融材料を冷却するとともに、下流へ送るように構成されている。巻取りロール430は、キャストロール410,420によって冷却された溶融材料を所定速度で引いて巻き取るように構成されている。製造装置40における製造工程を経て導電性フィルム本体15の巻取体が製造される。製造装置40で製造された導電性フィルム本体15に蒸着法、スパッタリング法、メッキ法又はコーティング法等の公知の技術により金属被膜層300を形成することによって、導電性フィルム10が製造される。
【0034】
製造装置40において、例えば、キャストロール410の温度は、40℃以上、120℃以下、好ましくは80℃以上、120℃以下である。また、キャストロール420の温度は、80℃以上、120℃以下、好ましくは90℃以上、120℃以下である。
【0035】
製造装置40においては、キャストロール420の温度がある程度高い。その結果、製造装置40によれば、Tダイ400から吐出された溶融材料が比較的温度が高い段階で固まり始めるため、残留応力の緩和温度が比較的高い導電性フィルム本体15を製造することができる。例えば、製造装置40によって製造される導電性フィルム本体15の残留応力の緩和温度は80℃よりも高い。
【0036】
製造装置40によって製造された導電性フィルム本体15においては、残留応力の緩和温度が80℃よりも高いため、上述の所定の熱衝撃試験を経ても、導電性フィルム本体15において大きい収縮が生じない。したがって、導電性フィルム10によれば、所定の熱衝撃試験を経た場合の収縮率が比較的小さいため、所定の熱衝撃試験を経て導電性フィルム10がさらに冷却されたとしても(例えば、-20℃まで冷却されたとしても)亀裂の発生を抑制することができる。
【0037】
[4.特徴]
以上のように、本実施の形態に従う導電性フィルム10においては、TMAを用いた試験において、導電性フィルム10を20℃から80℃まで加熱し、その後、導電性フィルム10を80℃から20℃まで冷却した場合に、MDにおける寸法の変化率が-0.10%以上である。すなわち、導電性フィルム10においては、所定の熱衝撃試験を経た場合の収縮率が比較的小さい。したがって、導電性フィルム10によれば、所定の熱衝撃試験を経た場合の収縮率が比較的小さいため、所定の熱衝撃試験を経てその後導電性フィルム10がさらに冷却されたとしても亀裂の発生を抑制することができる。
【0038】
[5.他の実施の形態]
上記実施の形態の思想は、以上で説明された実施の形態に限定されない。以下、上記実施の形態の思想を適用できる他の実施の形態の一例について説明する。
【0039】
<5-1>
上記実施の形態に従う導電性フィルム10において、第1導電性樹脂層100に含まれる導電性フィラーは、白金、金、銀、銅、ニッケル及びチタンが含まれる群から選択される少なくとも1種類の金属元素をさらに含んでいてもよい。
【0040】
<5-2>
上記実施の形態に従う導電性フィルム10は、多層構成のフィルムであった。しかしながら、導電性フィルム10は、必ずしも多層構成である必要はなく、単層構成であってもよい。単層構成の導電性フィルムは、例えば、ポリオレフィンと、導電性フィラーとを含んでいてもよい。ポリオレフィンとしては、例えば、第1導電性樹脂層100の説明において例示したものが用いられてもよい。導電性フィラーとしては、白金、金、銀、銅、ニッケル及びチタンが含まれる群から選択される少なくとも1種類の金属元素が含まれていてもよい。
【0041】
<5-3>
上記実施の形態に従う導電性フィルム10において、導電性フィルム本体15は、第1導電性樹脂層100と第2導電性樹脂層200とを含んでいた。しかしながら、導電性フィルム本体15は、必ずしも第1導電性樹脂層100及び第2導電性樹脂層200の両方を含んでいなくてもよい。導電性フィルム本体15は、例えば、第2導電性樹脂層200を含む一方、第1導電性樹脂層100を含まなくてもよい。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について例示的に説明した。すなわち、例示的な説明のために、詳細な説明及び添付の図面が開示された。よって、詳細な説明及び添付の図面に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須でない構成要素が含まれることがある。したがって、それらの必須でない構成要素が詳細な説明及び添付の図面に記載されているからといって、それらの必須でない構成要素が必須であると直ちに認定されるべきではない。
【0043】
また、上記実施の形態は、あらゆる点において本発明の例示にすぎない。上記実施の形態は、本発明の範囲内において、種々の改良や変更が可能である。すなわち、本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じて具体的構成を適宜採用することができる。
【実施例0044】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0045】
[1.実施例]
図3に示される製造装置40を用いて実施例1,2の各導電性フィルムを製造した。具体的には、共押出しによって導電性フィルム本体を製造し、導電性フィルム本体に銅を蒸着することによって実施例1,2の各導電性フィルムを製造した。実施例1,2の各導電性フィルムにおいては、ポリプロピレン及びニッケルによって第2導電性樹脂層200が形成され、ポリプロピレン及びカーボンブラックによって第1導電性樹脂層100が形成された。
【0046】
実施例1,2の各導電性フィルムにおいて、第1導電性樹脂層100及び第2導電性樹脂層200の厚みの合計は50μmであった。第1導電性樹脂層100の厚みと第2導電性樹脂層200の厚みとの比は3:1であった。
【0047】
実施例1,2の各導電性フィルムにおいて、第2導電性樹脂層200のうち第2面側層220におけるニッケルの重量パーセント濃度は75wt%であり、第2導電性樹脂層200のうち第1面側層210におけるニッケルの重量パーセント濃度は70wt%であった。第1導電性樹脂層100におけるカーボンブラックの重量パーセント濃度は30wt%であった。
【0048】
実施例1の導電性フィルムの製造過程において、キャストロール410の温度は90℃であり、キャストロール420の温度は100℃であった。実施例2の導電性フィルムの製造過程において、キャストロール410の温度は110℃であり、キャストロール420の温度は70℃であった。
【0049】
単層フィルムの製造装置を用いて実施例3の導電性フィルムを製造した。この製造装置は、図3に示される製造装置40においてTダイ400が別のTダイに取り替えられたものであった。このTダイは、単層の溶融材料を吐出するように構成されていた。
【0050】
ポリプロピレン及びニッケルを加熱溶融し押出成形を行なうことによって導電性フィルム本体を製造し、導電性フィルム本体に銅を蒸着することによって実施例3の導電性フィルムを製造した。実施例3の導電性フィルムにおけるニッケルの重量パーセント濃度は、50wt%であった。実施例3の導電性フィルムの厚みは、50μmであった。実施例3の導電性フィルムの製造過程において、キャストロール410の温度は100℃であり、キャストロール420の温度は90℃であった。
【0051】
[2.比較例]
図3に示される製造装置40を用いて比較例の導電性フィルムを製造した。具体的には、共押出しによって導電性フィルム本体を製造し、導電性フィルム本体に銅を蒸着することによって比較例の導電性フィルムを製造した。比較例の導電性フィルムにおいては、ポリプロピレン及びニッケルによって第2導電性樹脂層200が形成され、ポリプロピレン及びカーボンブラックによって第1導電性樹脂層100が形成された。
【0052】
第1導電性樹脂層100及び第2導電性樹脂層200の厚みの合計は50μmであった。第1導電性樹脂層100の厚みと第2導電性樹脂層200の厚みとの比は3:1であった。
【0053】
比較例の導電性フィルムにおいて、第2導電性樹脂層200のうち第2面側層220におけるニッケルの重量パーセント濃度は75wt%であり、第2導電性樹脂層200のうち第1面側層210におけるニッケルの重量パーセント濃度は70wt%であった。第1導電性樹脂層100におけるカーボンブラックの重量パーセント濃度は30wt%であった。
【0054】
比較例の導電性フィルムの製造過程において、キャストロール410の温度は90℃であり、キャストロール420の温度は70℃であった。
【0055】
[3.各種試験及び測定]
<3-1.熱衝撃試験を通じた寸法変化率の測定>
TAインスツルメンツ・ジャパン社製のTMA Q400を用いて各導電性フィルムのMDにおける寸法変化率を測定した。各導電性フィルムのサンプルサイズに関しては、幅が4.9mmであり、チャック間距離が16mmであった。この試験においては、各導電性フィルムの温度が、20℃から80℃まで加熱され、その後、80℃から20℃まで冷却された。なお、各温度でホールドはされなかった。この試験においては、導電性フィルムを引っ張る荷重が0.0035Nであり、加熱時の温度変化の速度が5.0℃/分であり、冷却時の温度変化の速度が-5.0℃/分であった。
【0056】
<3-2.残留応力緩和温度の測定>
TAインスツルメンツ・ジャパン社製のTMA Q400を用いて各導電性フィルムの残留応力緩和温度を測定した。各導電性フィルムのサンプルサイズに関しては、幅が4.9mmであり、チャック間距離が16mmであった。この試験においては、導電性フィルムの温度が20℃から130℃まで上げられ、この等速昇温過程において、導電性フィルムの熱膨張が熱収縮に転じた温度が残留応力緩和温度とされた。この試験においては、導電性フィルムを引っ張る荷重が0.0035Nであり、加熱時の温度変化の速度が10℃/分であった。
【0057】
<3-3.破断強度の測定>
MD及びTDの各々における引張破断強度の測定は、JIS-K-6732に準拠した方法によって行なわれた。引張破断強度(MPa)の測定に用いられるサンプルのサイズは、幅が10mmであり、長さが110mm以上(試料における標線の長さは40mm±0-2)であった。サンプルの厚みは長さ方向において等間隔離れた5点で測定され、測定された5点の厚みに基づいて平均厚みが算出された。具体的な測定は、オートグラフ(島津精密万能試験機 オートグラフ AG-X 500N)を用いて行なわれた。その際の引張スピードは200mm/分、チャートスピードは200mm/分、つかみ間隔は40mmであった。サンプルの破断時の強度が引張破断強度とされた。
【0058】
<3-4.破断伸度の測定>
MD及びTDの各々における引張破断伸度の測定は、JIS-K-6732に準拠した方法によって行なわれた。引張破断伸度(%)の測定に用いられるサンプルのサイズは、幅が10mmであり、長さが110mm以上(試料における標線の長さは40mm±0-2)であった。サンプルの厚みは長さ方向において等間隔離れた5点で測定され、測定された5点の厚みに基づいて平均厚みが算出された。具体的な測定は、オートグラフ(島津精密万能試験機 オートグラフ AG-X 500N)を用いて行なわれた。その際の引張スピードは200mm/分、チャートスピードは200mm/分、つかみ間隔は40mmであった。サンプルの破断時の伸度が引張破断伸度とされた。
<3-5.割れ試験>
導電性フィルムを300×300mmに切り出し、切り出されたサンプルの4辺を固定した。4辺が固定されたサンプルをESPEC株式会社製の恒温恒湿器(LHU-113)に入れ、恒温恒湿器内の温度を20℃から80℃まで加熱し、その後、高温恒湿器内の温度を80℃から-20℃まで冷却した。なお、温度変化の速度は、5.0℃/分であった。これを経たサンプルにおける割れを観察した。
【0059】
[4.試験及び測定結果]
試験及び測定結果は以下の表1に示す通りである。
【表1】
【0060】
なお、MD及びTDの各々の破断強度をMPa単位の値として測定し、MDにおける破断強度の数値とTDにおける破断強度の数値との積を破断強度積とした。また、MD及びTDの各々の破断伸度を%値として測定し、MDにおける破断伸度の数値とTDにおける破断伸度の数値との積を破断伸度積とした。なお、破断強度積及び破断伸度積の各々は、単位なしの指標値とした。また、実施例1の残留応力緩和温度は96℃であり、実施例2の残留応力緩和温度は83℃であり、実施例3の残留応力緩和温度は86℃であった。比較例の残留応力緩和温度は65℃であった。表1に示されるように、実施例1-3の各々においては割れが生じず、比較例においては割れが生じた。
【符号の説明】
【0061】
10 導電性フィルム、15 導電性フィルム本体、40 製造装置、100 第1導電性樹脂層、200 第2導電性樹脂層、210 第1面側層、220 第2面側層、230 第2面、240 第1面、300 金属被膜層、400 Tダイ、401 Tダイ本体、410,420 キャストロール、430 巻取りロール、440,450,460 原料投入部。

図1
図2
図3