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特開2024-4069電磁駆動弁および当該電磁駆動弁を備えた冷凍サイクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004069
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】電磁駆動弁および当該電磁駆動弁を備えた冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20240109BHJP
   F25B 41/26 20210101ALI20240109BHJP
【FI】
F16K31/06 305G
F16K31/06 305E
F25B41/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103525
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100213757
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 詩人
(72)【発明者】
【氏名】濱田 正吾
(72)【発明者】
【氏名】村田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】剱持 大一郎
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA08
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC08
3H106DD05
3H106EE16
3H106EE35
3H106GA14
3H106GA25
3H106JJ08
3H106KK23
(57)【要約】
【課題】磁気効率を確保しつつ不具合を抑制することができる電磁駆動弁及び当該電磁駆動弁を備えた冷凍サイクルシステムを提供する。
【解決手段】吸引子52が圧入部522を有することで、吸引子52と筒部21とのX方向における位置ずれを抑制し、吸引子52とプランジャ51との距離の誤差を抑制し、吸引力の変動を抑制することができる。これにより、弁体4によって弁ポート32A~32Cを適切に開閉させ、不具合を抑制することができる。また、溶接部7Aが外周側に開放された開放部71を有することで、溶融によって突出が生じようとした場合に、外周側に向かって突出させる(突出を外周側に逃がす)ことができ、溶接部7AがX方向の一方側に突出することを抑制することができる。これにより、吸引子52の端面521と外函55の内面551Aとの間に隙間を生じにくくし、磁気効率を確保することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を形成する弁本体と、少なくとも1つの弁ポートが形成された弁座面を有するとともに前記弁室内に設けられる弁座部と、前記弁ポートを弁室に対して開閉する弁体と、前記弁体を所定の移動方向に沿って移動するように駆動する電磁駆動部と、を備えた電磁駆動弁あって、
前記電磁駆動部は、前記弁体とともに前記移動方向に移動するプランジャと、前記プランジャに対して前記移動方向の一方側に配置される吸引子と、前記吸引子を励磁するコイルと、を有し、
前記弁本体は、前記プランジャを収容するとともに前記一方側の端部に前記吸引子が固定される筒状のプランジャ収容部を有し、
前記吸引子は、前記プランジャ収容部内に配置されるとともに自然状態における外径が該プランジャ収容部の内径よりも大きい圧入部を有し、
前記プランジャ収容部と前記吸引子とは、前記一方側の端面に溶接部が形成されることで互いに固定され、
前記吸引子の前記一方側の端面を含む平面において、前記溶接部は、外周側に開放された開放部を有することを特徴とする電磁駆動弁。
【請求項2】
前記開放部は、前記プランジャ収容部に形成され、該プランジャ収容部は、前記一方側の端面に近づくにしたがって外径が小さくなる縮径部を有することを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動弁。
【請求項3】
前記プランジャ収容部と前記吸引子との間、又は、前記プランジャ収容部に、前記一方側が小径となった段差部が形成され、
前記開放部は、前記段差部における小径部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動弁。
【請求項4】
流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、四方切換弁と、を備え、請求項1~3のいずれか1項に記載の電磁駆動弁を、前記四方切換弁の流路を切換え制御するパイロット電磁弁として備えたことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁駆動弁および当該電磁駆動弁を備えた冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁駆動弁として、ソレノイドによってスライド弁を移動させることにより、弁座面に形成された弁ポートを開閉して流体の流路を切り換えるスライド弁が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたスライド弁では、吸引子が溶接によってプランジャチューブと一体化され、このプランジャチューブが外函の空間内に挿入され、取付ビスによって吸引子が外函に固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-166547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のスライド弁では、吸引子の端部がプランジャチューブの端部から外側に突出している。これにより、吸引子の端面が外函の内面に接触し、磁気効率を確保しやすい。このような構成では、吸引子とプランジャチューブとの境界部が外周面に位置し、この境界部の周囲が溶接される(以下、「外周面溶接」と呼ぶ)。外周面溶接の場合、プランジャチューブの端部が溶融されるため、軸方向(移動方向)における吸引子とプランジャチューブとの相対位置がずれてしまう場合があった。このような位置ずれが生じると、吸引子とプランジャとの距離が変化して吸引力の変動が生じてしまう。このとき、特に位置ずれによって吸引子とプランジャとの距離が大きくなる場合、吸引力が低下し、弁体を差圧に抗して移動させにくくなり、弁体によって弁ポートを適切に開閉できなくなる等の動作の不具合が生じる可能性があった。
【0005】
一方、吸引子の端面とプランジャチューブの端面とを同一平面上に配置し、これらの端面に形成される境界部の周囲を溶接する方法(以下、「端面溶接」と呼ぶ)も考えられる。端面溶接の場合、吸引子とプランジャチューブとの相対位置のずれは生じにくいものの、溶接部がこれらの端面から突出しやすい。突出した溶接部が外函の内面に接触すると、吸引子の端面と外函の内面との間に隙間が形成され、磁気抵抗が上昇して磁気効率が低下してしまう。このように、磁気効率の確保と不具合の抑制とを両立させることは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、磁気効率を確保しつつ不具合を抑制することができる電磁駆動弁及び当該電磁駆動弁を備えた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電磁駆動弁は、弁室を形成する弁本体と、少なくとも1つの弁ポートが形成された弁座面を有するとともに前記弁室内に設けられる弁座部と、前記弁ポートを弁室に対して開閉する弁体と、前記弁体を所定の移動方向に沿って移動するように駆動する電磁駆動部と、を備えた電磁駆動弁あって、前記電磁駆動部は、前記弁体とともに前記移動方向に移動するプランジャと、前記プランジャに対して前記移動方向の一方側に配置される吸引子と、前記吸引子を励磁するコイルと、を有し、前記弁本体は、前記プランジャを収容するとともに前記一方側の端部に前記吸引子が固定される筒状のプランジャ収容部を有し、前記吸引子は、前記プランジャ収容部内に配置されるとともに自然状態における外径が該プランジャ収容部の内径よりも大きい圧入部を有し、前記プランジャ収容部と前記吸引子とは、前記一方側の端面に溶接部が形成されることで互いに固定され、前記吸引子の前記一方側の端面を含む平面において、前記溶接部は、外周側に開放された開放部を有することを特徴とする電磁駆動弁である。
【0008】
以上のような本発明によれば、吸引子が圧入部を有することで、吸引子とプランジャ収容部との位置ずれを抑制して吸引力の変動を抑制することができ、弁体によって弁ポートを適切に開閉させ、不具合を抑制することができる。また、溶接部が外周側に開放された開放部を有することで、溶融によって突出が生じようとした場合に、外周側に向かって突出させる(突出を外周側に逃がす)ことができ、溶接部が移動方向の一方側に突出することを抑制することができる。これにより、吸引子の端面と外函の内面との間に隙間を生じにくくし、磁気効率を確保することができる。
【0009】
この際、本発明の電磁駆動弁では、前記開放部は、前記プランジャ収容部に形成され、該プランジャ収容部は、前記一方側の端面に近づくにしたがって外径が小さくなる縮径部を有することが好ましい。このような構成によれば、溶接部が外周側に向かって突出した場合に、溶接部の外径がプランジャ収容部全体の外径よりも大きくなりにくく、溶接部と他の部品との干渉を抑制することができる。
【0010】
また、縮径部は、移動方向を含む断面において、外周側に向かって凸状であってもよいし、凹状であってもよいし、直線状であってもよい。特に、縮径部が凹状である場合に、溶接部の突出を外周側に逃がしやすく、且つ、溶接部の外径がプランジャ収容部全体の外径よりも大きくなりにくい。
【0011】
また、本発明の電磁駆動弁では、前記プランジャ収容部と前記吸引子との間、又は、前記プランジャ収容部に、前記一方側が小径となった段差部が形成され、前記開放部は、前記段差部における小径部に形成されていてもよい。このような構成によれば、溶接部の突出を外周側に逃がしやすく、且つ、溶接部の外径がプランジャ収容部全体の外径よりも大きくなりにくい。また、段差部がプランジャ収容部と吸引子との間に形成される場合には、プランジャ収容部又は吸引子自体に段差を形成するための加工が必要なく、容易に製造することができる。また、段差部がプランジャ収容部に形成される場合には、段差を形成するために吸引子の端面とプランジャ収容部の端面との相対位置を管理する(即ち所定量ずらす)必要がなく、組立性を確保することができる。
【0012】
本発明の冷凍サイクルシステムは、流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、四方切換弁と、を備え、上記の電磁駆動弁を、前記四方切換弁の流路を切換え制御するパイロット電磁弁として備えたことを特徴とする。本発明の冷凍サイクルシステムによれば、上記のように電磁駆動弁の磁気効率を確保しつつ不具合を抑制することができ、サイクル全体の不具合を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電磁駆動弁及び冷凍サイクルシステムによれば、磁気効率を確保しつつ不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一例である実施形態にかかる電磁駆動弁が設けられた冷凍サイクルの概略構成図である。
図2】前記電磁駆動弁を示す断面図である。
図3】前記電磁駆動弁の吸引子の周囲を拡大して示す断面図である。
図4】前記電磁駆動弁における前記吸引子とプランジャ収容部との境界部を拡大して示す断面図である。
図5】本発明の変形例1の電磁駆動弁における前記吸引子とプランジャ収容部との境界部を拡大して示す断面図である。
図6】本発明の変形例2の電磁駆動弁における前記吸引子とプランジャ収容部との境界部を拡大して示す断面図である。
図7】本発明の変形例3の電磁駆動弁における前記吸引子とプランジャ収容部との境界部を拡大して示す断面図である。
図8】本発明の変形例4の電磁駆動弁における前記吸引子とプランジャ収容部との境界部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の電磁駆動弁としてのスライド式切換弁1は、例えば冷凍サイクル100に設けられるものである。冷凍サイクル100は、ルームエアコン、パッケージエアコン、マルチエアコン等の空気調和機に利用されるものであって、流体としての冷媒を圧縮する圧縮機102と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器としての室外熱交換器103と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器としての室内熱交換器104と、室外熱交換器103と室内熱交換器104との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段としての膨張弁105と、四方切換弁10と、四方切換弁10の流路を切換え制御するパイロット電磁弁であるスライド式切換弁1と、を備え、これらが冷媒配管によって連結されている。なお、膨張手段としては、膨張弁105に限らず、キャピラリでもよい。
【0016】
この冷凍サイクル100は、図1に実線矢印で示す冷却モード(冷房運転)において、圧縮機102、四方切換弁10、室外熱交換器103、膨張弁105、室内熱交換器104、四方切換弁10及び圧縮機102の順に冷媒が流れる冷房サイクルを構成する。一方、破線矢印で示す加温モード(暖房運転)において、圧縮機102、四方切換弁10、室内熱交換器104、膨張弁105、室外熱交換器103、四方切換弁10及び圧縮機102の順に冷媒が流れる暖房サイクルを構成する。この暖房サイクルと冷房サイクルとの切換えは、スライド式切換弁1による四方切換弁10の切換え動作によって行われる。
【0017】
四方切換弁10は、周知のものであり、円筒状の弁本体11と、弁本体の内部にスライド自在に設けられたスライド弁12と、圧縮機102の吐出口に連通する高圧側導管(D継手)13と、圧縮機102の吸込口に連通する低圧側導管(S継手)14と、室内熱交換器104に連通する室内側導管(E継手)15と、室外熱交換器103に連通する室外側導管(C継手)16と、を備えて構成されている。弁本体11は、その軸方向両端部を塞ぐ栓体17,18を有することにより、全体に密封されたシリンダーとして構成され、スライド弁12を移動させるピストン19を軸方向から挟む空間A11,A12が形成されている。
【0018】
本実施形態のスライド式切換弁1は、四方切換弁の構成を有するものであり、図2に示すように、弁本体2と、弁座部3と、弁体4と、電磁駆動部5と、継手部材61~64と、を有し、弁体4が所定のスライド方向(即ち移動方向)に沿って移動することで流体の流路が切り換えられるものである。以下では、弁体4のスライド方向をX方向とし、X方向に直交するとともに互いに直交する2方向をY方向及びZ方向とし、Z方向における上下は図2を基準とする。
【0019】
弁本体2は、例えばステンレス等により形成された金属製の弁ハウジングであって、その内側に弁室2Rを有している。弁本体2は、X方向に沿って延びる(X方向を軸方向とする)円筒状の筒部21と、筒部21を閉塞するように設けられる円板状の閉塞部22と、を有して有底筒状となっており、この内側の空間が弁室2Rとなる。筒部21と閉塞部22とは、例えば金属薄板の深絞り加工等によって、一体成形されたものであり、一部品として構成されている。弁本体2のうち筒部21と閉塞部22とが、弁室2Rを形成する弁室形成部となる。筒部21のうち開放された側(図2における右側)をX方向の一方側とし、閉塞部22によって閉塞された側(図2における左側)をX方向の他方側とし、以下ではこれらを単に一方側及び他方側と呼ぶことがある。
【0020】
筒部21(即ち弁本体2の側面部)には、Z方向の一方側(図2いおける下側)に取付開口部211が形成され、Z方向の他方側(図2における上側)には、継手部材61が接続される開口が形成されている。
【0021】
弁座部3は、弁本体2とは別体に構成されたものであって、ステンレス等の適宜な金属によってZ方向に延びる全体円柱状に形成されている。弁座部3は、取付開口部211に挿通されるとともにろう付けによって固定され、その上面である弁座面31が弁室2R内に配置される。弁座部3には、弁座面31において開口した3つの弁ポート32A~32Cと、弁ポート32A~32Cのそれぞれに連通する取付孔33A,33C(中央の取付孔は図2に不図示)と、が形成されている。弁座面31は、XY平面に沿って延びる平面状の摺接面である。
【0022】
取付孔33A,33Cは、それぞれZ方向に沿って延びる貫通孔であって、継手部材62~64のそれぞれが接続される。弁ポート32A~32CがX方向に沿って直線状に並んでいるのに対し、取付孔33A,33Cは、XY平面において三角形状に配置されている。従って、取付孔33A,33Cは、弁ポート32A~32Cに対してXY平面内で(特にY方向に)若干オフセットしつつ接続されている。
【0023】
弁座部3は、本体部36と、本体部36に対して下側(弁座面31とは反対側)に設けられるフランジ部37と、を有する。本体部36及びフランジ部37の外周面は、いずれも円筒状となっている。本体部36の外径は、取付開口部211の内径よりも小さく、フランジ部37の外径は、取付開口部211の内径よりも大きい。従って、弁座部3は、本体部36が取付開口部211に挿通され、フランジ部37の上面が取付開口部211周囲の下面に当接することによって挿通が規制される。
【0024】
弁体4は、例えば合成樹脂によって構成されたスライド弁であって、弁座面31側を向いて開口した椀状(ドーム状)に形成されている。弁体4の内部には連通空間4Rが形成されており、この連通空間4Rは、中央の弁ポート32Bと一方側の弁ポート32Aとを連通させて他方側の弁ポート32Cを連通させないか、又は、中央の弁ポート32Bと他方側の弁ポート32Cとを連通させて一方側の弁ポート32Aを連通させないようになっている。
【0025】
電磁駆動部5は、プランジャ51と、吸引子52と、コイル53と、コイルばね54と、外函55と、を有し、弁体4をX方向に沿ってスライド移動させるものである。
【0026】
プランジャ51は、磁性体によって全体としてX方向に沿って延びる柱状に形成され、円柱部511と、円柱部511から他方側に突出した突出部512と、を一体に有する。プランジャ51は、弁本体2の筒部21に収容されており、筒部21がプランジャ収容部として機能する。従って、弁本体2は、弁室形成部(筒部21及び閉塞部22)とプランジャ収容部(筒部21)とを一体に有する。円柱部511の外径は、筒部21の内径と同等又は若干小さく、プランジャ51が筒部21によってX方向に案内される。
【0027】
円柱部511の一方側の端部には、コイルばね54を収容するための凹部513が形成されている。また、円柱部511には、X方向の両端部に亘る均圧孔511Aが形成されており、プランジャ51のX方向の両側の空間に圧力差が生じないようになっている。
【0028】
突出部512は、円柱部511よりも外径が小さく、筒部21の内周面から離隔している。突出部512には、弁座面31側に開口した凹状の保持部514が形成され、弁体4が保持部514内に配置されることで直接的に保持されている。弁体4と保持部514との間には、弁体4を弁座面31に向けて付勢するコイルばね56が設けられている。突出部512は、X方向の他方側に、YZ平面に沿って延びる平坦な端面515を有する。
【0029】
吸引子52は、磁性体によって円柱状に形成され、弁本体2の筒部21におけるX方向の一方側の開口を塞ぐように設けられる。即ち、吸引子52は、プランジャ51に対してX方向の一方側に配置されている。吸引子52は、後述するように、一方側の端部が溶接によって筒部21に接合され、筒部21と吸引子52とが互いに固定される。
【0030】
コイル53は、X方向において吸引子52に対応するように筒部21の外側に設けられるソレノイドコイルであって、モールド成形によって外函55と一体的に形成されている。コイル53にはリード線531が接続され、このリード線531が外函55の外側に引き出されており、リード線531を介してコイル53に電力が供給されることで通電状態と非通電状態とが切り換えられる。これにより、コイル53が通電状態となると吸引子52が励磁され、磁性体であるプランジャ51が吸引子52に吸引され、コイルばね54の後述する付勢力に逆らって一方側に移動するようになっている。
【0031】
コイルばね54は、一端側が吸引子52に接触し、他端側が凹部513に収容されることで、プランジャ51と吸引子52との間に設けられる。これにより、コイルばね54はプランジャ51を他方側に付勢する。コイル53が非通電状態となると、吸引子52による吸引力が生じなくなり、プランジャ51はコイルばね54の付勢力によって他方側に移動する。このように、電磁駆動部5は、コイル53の通電状態と非通電状態との切り換えによってプランジャ51をX方向に移動させ、プランジャ51に接続された弁体4を移動させるように構成されている。
【0032】
外函55は、コイル53を収容するとともに、コイル53の内側に吸引子52が配置されるように筒部21を挿通可能に構成されている。また、外函55は、吸引子52をX方向一方側から覆う壁部551を有する。壁部551のうちX方向他方側を向いた面が、吸引子52と対向する内面551Aとなる。
【0033】
一方側の取付孔33Aに接続される継手部材64は、四方切換弁10の一方の空間A11に接続され、中央の取付孔に接続される継手部材63は、四方切換弁10の低圧側導管14に接続され、他方側の取付孔33Cに接続される継手部材62は、四方切換弁10の他方の空間A12に接続され、継手部材61は、四方切換弁10の高圧側導管13に接続される。
【0034】
図2に示すように弁体4がX方向他方側に位置して弁ポート32Bと弁ポート32Cとが連通している場合には、弁ポート32B及び弁ポート32Cが弁体4によって弁室2Rに対して閉塞され、弁ポート32Aが弁室2Rに対して開放されている。このとき、継手部材61が接続された高圧側のポートから弁室2Rに流入した高圧の流体は、弁ポート32Aを通過して四方切換弁10の空間A11に向かう。弁ポート32Bは低圧側導管14に接続されており、弁ポート32Cに接続された空間A12は低圧となる。従って、空間A11の方が空間A12よりも高圧となり、この差圧によって四方切換弁10のピストン19及びスライド弁12が空間A11側に向かって移動する。
【0035】
弁体4がX方向一方側に位置して弁ポート32Bと弁ポート32Aとが連通している場合には、弁ポート32B及び弁ポート32Aが弁体4によって弁室2Rに対して閉塞され、弁ポート32Cが弁室2Rに対して開放されている。このとき、高圧側のポートから弁室2Rに流入した高圧の流体は、弁ポート32Cを通過して四方切換弁10の空間A12に向かう。弁ポート32Bは低圧側導管14に接続されており、弁ポート32Aに接続された空間A11は低圧となる。従って、空間A12の方が空間A11よりも高圧となり、この差圧によって四方切換弁10のスライド弁12及びピストン19が空間A12側に向かって移動する。
【0036】
ここで、プランジャ収容部としての筒部21と吸引子52との接続構造(特に溶接構造)について、図3,4も参照しつつ説明する。以下では、溶接後における各部の形状について説明するが、特に説明がない限りは、溶接前においても同様の形状を有しているものとする。
【0037】
吸引子52のX方向一方側の端面521は、YZ平面に沿った平面であり、この端面521を含む平面を延長面S1とする。本実施形態では、筒部21のX方向一方側の端面21Aも、延長面S1上に位置する。
【0038】
吸引子52は、端面521から他方側に向かって所定の範囲において、他の部分よりも外径が大きい圧入部522を有する。自然状態(圧入前の状態)における吸引子52の外径は、圧入部522では筒部21の内径よりも大きく、且つ、圧入部522以外の部分では筒部21の内径よりも小さい。これにより、圧入部522は、圧入によって筒部21内に配置される。尚、圧入部522は、周方向の全体に亘って形成されていることが好ましいが、周方向において断続的に形成された突起部によって圧入部が構成されていてもよい。
【0039】
筒部21は、X方向一方側の端部に、一方側の端面21Aに近づくにしたがって外径が小さくなる縮径部212を有する。縮径部212は、図4に示すようにZX平面に沿った断面において、外周側に凸の形状を有している。
【0040】
吸引子52と筒部21との境界部は、延長面S1上に位置しており、この境界部の周囲が溶接されることにより、吸引子52と筒部21とに跨る溶接部7Aが形成される。即ち、一方側の端面521,21Aに溶接部7Aが形成され、端面溶接が施される。延長面S1において、溶接部7Aは、外周側に開放された開放部71を有する。即ち、溶接部7Aは、延長面S1において外周側が露出している。また、開放部71は筒部21に形成されている。
【0041】
吸引子52と筒部21との接続方法の具体例は以下の通りである。まず、筒部21に吸引子52を圧入する。このとき、治具等を用いて端面521,21Aを同一平面上に位置させる。次に、端面521,21Aを鉛直方向上側に向け(X方向を鉛直方向に一致させ且つ一方側を上側とし)、鉛直方向下向きにレーザを照射することで、吸引子52と筒部21との境界部の周囲を溶融させ、溶接部7Aを形成する。レーザを照射する際、レーザ照射部を走査してもよいし、吸引子52及び筒部21を移動させてもよい。
【0042】
以上の本実施形態によれば、吸引子52が圧入部522を有することで、吸引子52と筒部21とのX方向における位置ずれを抑制し、吸引子52とプランジャ51との距離の誤差を抑制し、吸引力の変動を抑制することができる。これにより、弁体4によって弁ポート32A~32Cを適切に開閉させ、不具合を抑制することができる。また、溶接部7Aが外周側に開放された開放部71を有することで、溶融によって突出が生じようとした場合に、外周側に向かって突出させる(突出を外周側に逃がす)ことができ、溶接部7AがX方向の一方側に突出することを抑制することができる。これにより、吸引子52の端面521と外函55の内面551Aとの間に隙間を生じにくくし、磁気効率を確保することができる。
【0043】
また、開放部71が筒部21に形成され、筒部21が縮径部212を有することで、溶接部7Aが外周側に向かって突出した場合に、溶接部7Aの外径が筒部21全体の外径よりも大きくなりにくく、溶接部7Aと他の部品との干渉を抑制することができる。
【0044】
また、弁本体2のうち筒部21が弁室形成部とプランジャ収容部とを構成することで、これらが別体の部材によって構成される場合に生じ得る相対位置の誤差を抑制することができるとともに、コイル53と各部(プランジャ51や吸引子52)との同軸性を確保しやすい。
【0045】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。前記実施形態では、図4に示すような溶接部7Aを例示したが、以下に説明するような変形例1~4のような形態としてもよい。
【0046】
図5に変形例1を示す。変形例1では、筒部21のX方向一方側の端部の形状が前記実施形態とは相違し、その他の部分は同様である。即ち、筒部21の端部には縮径部213が形成されている。縮径部213は、縮径部212同様に一方側の端面21Aに向かうにしたがって外径が小さくなるものである。縮径部213の断面形状は、直線状となっている。これにより、前記実施形態と比較して、溶接部7Bの突出を外周側に逃がしやすく、且つ、溶接部7Bの外径が筒部21全体の外径よりも大きくなりにくい。
【0047】
変形例1においても前記実施形態と同様に、一方側の端面521,21Aに溶接部7Bが形成され、延長面S1において、溶接部7Bが、外周側に開放された開放部72を有する。
【0048】
図6に変形例2を示す。変形例2では、筒部21に縮径部212が形成されず、これに代えて段差部8が形成されている点で前記実施形態と相違する。変形例2では、筒部21の端面21Bが延長面S1よりもX方向他方側に位置することにより、筒部21と吸引子52との間に段差部8が形成されている。このように端面521,21B同士をX方向においてずらすためには、例えば、端面521に当接する部分と端面21Bに当接する部分とを有する治具(即ち段差を有する治具)を用いればよい。段差部8においては、筒部21よりも、一方側に位置する吸引子52の端部の方が小径となっており、吸引子52が小径部となる。
【0049】
変形例2では、段差部8を形成する端面521,21Bに跨るように溶接部7Cが形成されている。溶接部7Cは、延長面S1において外周側に開放された開放部73を有し、開放部73は、段差部8における小径部である吸引子52に形成されている。変形例2によれば、溶接部7Cの突出を外周側に逃がしやすく、且つ、溶接部7Cの外径が筒部21全体の外径よりも大きくなりにくい。さらに、筒部21又は吸引子52自体に段差を形成するための加工が必要なく、後述する変形例3と比較して容易に製造することができる。
【0050】
図7に変形例3を示す。変形例3では、筒部21に段差部216が形成されている点で変形例2と相違する。即ち、筒部21は、X方向一方側の端部に形成された小径部215と、小径部215以外の部分であり小径部215よりも他方側に位置する大径部214と、を有することで、段差部216が形成されている。また、端面21Aは、延長面S1上に位置しており、端面521,21Aに跨るように溶接部7Dが形成されている。溶接部7Dは、延長面S1において外周側に開放された開放部74を有し、開放部74は、段差部216における小径部215に形成されている。変形例3によれば、溶接部7Dの突出を外周側に逃がしやすく、且つ、溶接部7Dの外径が筒部21全体の外径よりも大きくなりにくい。さらに、段差を形成するために端面521,21A同士を所定量ずらす必要がなく、変形例2と比較して組立性を確保することができる。
【0051】
図8に変形例4を示す。変形例4では、筒部21のX方向一方側の端部の形状が前記実施形態とは相違し、その他の部分は同様である。即ち、筒部21の端部には縮径部217が形成されている。縮径部217は、縮径部212同様にX方向一方側の端面21Aに向かうにしたがって外径が小さくなるものである。縮径部217の断面形状は、外周側から見て凹状となっている。これにより、前記実施形態及び変形例1と比較して、溶接部7Eの突出を外周側に逃がしやすく、且つ、溶接部7Eの外径が筒部21全体の外径よりも大きくなりにくい。
【0052】
変形例4においても前記実施形態と同様に、一方側の端面521,21Aに溶接部7Eが形成され、延長面S1において、溶接部7Eが、外周側に開放された開放部75を有する。
【0053】
また、前記実施形態では、筒部21がプランジャ収容部と弁室形成部との両方を形成するものとしたが、プランジャ収容部と弁室形成部とが別体となっていてもよい。このとき、プランジャ収容部の材質と弁室形成部の材質とが異なっていてもよく、例えば、弁室形成部を黄銅で形成し、このような黄銅製の弁室形成部にステンレス製の円筒部(プランジャ収容部)をろう付けすることにより金属製の弁本体を形成してもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、電磁駆動弁としてのスライド式切換弁1において、弁座面31に3つの弁ポート32A~32Cが形成され、これらのうち2つが弁体4によって連通し(弁室2Rに対して閉塞され)、残り1つが弁室2Rに対して開放されるものとしたが、弁ポートの数は3に限定されず、弁体による弁ポートの開閉態様もこれに限定されない。即ち、弁体は、複数の弁ポートを連通させる機能を有していなくてもよく、単に弁ポートを開閉するだけの機能を有していてもよい。また、電磁駆動弁は、弁体を弁座面上でスライド移動させるスライド式切換弁に限定されず、弁体の移動方式に応じた適宜な態様で弁ポートを開閉すればよい。例えば、電磁駆動部において通電と非通電とを切り換えることにより、弁座に対して接離する方向(軸線方向)を移動方向として弁体を移動させ、弁体を弁座に対して接離させるような電磁駆動弁であってもよい。
【0055】
また、前記実施形態では、電磁駆動弁としてのスライド式切換弁1が冷凍サイクル100における四方切換弁10の流路の切り換えに用いられるものとしたが、電磁駆動弁の用途はこれに限定されず、弁体の移動方式や弁ポートの開閉方式等の具体的な構成に応じて、適宜な装置やサイクルに組み込まれて使用されればよい。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…スライド式切換弁(電磁駆動弁)、2…弁本体、21…筒部(プランジャ収容部)、21A…端面、212,213,217…縮径部、215…小径部、216…段差部、2R…弁室、3…弁座部、31…弁座面、32A~32C…弁ポート、4…弁体、5…電磁駆動部、51…プランジャ、52…吸引子、521…端面、522…圧入部、53…コイル、7A~7E…溶接部、71~75…開放部、S1…延長面、100…冷凍サイクル、102…圧縮機、103…室外熱交換器(第一熱交換器)、104…室内熱交換器(第二熱交換器)、105…膨張弁(膨張手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8