(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000407
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】回転型操作装置
(51)【国際特許分類】
G05G 5/03 20080401AFI20231225BHJP
G05G 1/08 20060101ALI20231225BHJP
H01H 19/56 20060101ALN20231225BHJP
【FI】
G05G5/03 B
G05G1/08 B
H01H19/56 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099167
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大薮 高詩
【テーマコード(参考)】
3J070
5G219
【Fターム(参考)】
3J070AA14
3J070BA05
3J070BA12
3J070BA17
3J070BA71
3J070CD01
3J070CD31
3J070DA01
5G219HT02
5G219MS00
(57)【要約】
【課題】クリック感を創出する回転角度幅や強さの自由度を高めた回転型操作装置を提供する。
【解決手段】ダイヤル装置22は、回転操作部材31、ハウジング34、クリックボール36、揺動体38及び電磁ソレノイド40を備えている。回転操作部材31は、回転軸Axの回りに回転自在にハウジング34に支持されている。電磁ソレノイド40は、通電流の増大に連れて、プランジャ402をケース401に引き込む。揺動体38は、両端部においてクリックボール36とプランジャ402とに連結している。クリックボール36は、回転操作部材31の平滑面の円周面部324に押圧されて、回転操作部材31の回転操作力を増減する。
【選択図】
図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、
周方向に延在する平滑な被押圧面を有し、前記支持部材に回転自在に支持されている回転操作部材と、
前記回転操作部材の回転を検出する検出部と、
前記被押圧面を押圧する押圧体を有し、前記検出部が検出した前記回転操作部材の回転に応じて前記押圧体の押圧力を変化させる押圧装置と、
を備えていることを特徴とする回転型操作装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転型操作装置において、
前記被押圧面は、前記回転操作部材において回転軸に対して垂直に張り出した壁面又は前記回転操作部材の外周面に形成されていることを特徴とする回転型操作装置。
【請求項3】
請求項2記載の回転型操作装置において、
前記押圧装置は、
前記回転軸に対して平行な方向に変位するプランジャを有する電磁ソレノイドと、
前記プランジャの変位に連動させて前記押圧体を変位させ、前記支持部材における前記被押圧面に対する前記押圧体の押圧力を増減する連動部材と、
前記検出部が検出した前記回転操作部材の回転に応じて前記電磁ソレノイドの通電流を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする回転型操作装置。
【請求項4】
請求項3の回転型操作装置において、
前記連動部材は、前記押圧体の変位方向を前記プランジャの変位方向に対して逆転させる双腕揺動部材であることを特徴とする回転型操作装置。
【請求項5】
請求項4記載の回転型操作装置において、
前記電磁ソレノイドは、通電流の増大に連れて前記回転操作部材からの前記プランジャの離反量を増大させることを特徴とする回転型操作装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の回転型操作装置において、
前記検出部は、前記回転操作部材の回転角度を検出し、
前記押圧装置は、前記押圧体の押圧力を、前記検出部が検出した前記回転角度の増大又は減少に応じて増減サイクルを繰り返しながら変化させることを特徴とする回転型操作装置。
【請求項7】
請求項6記載の回転型操作装置において、
前記増減サイクルは、前記回転操作部材の回転角度の増大量又は減少量が一定量、変化するごとに、繰り返されるサイクルであることを特徴とする回転型操作装置。
【請求項8】
請求項7記載の回転型操作装置において、
前記一定量は、前記回転角度の範囲に応じて設定されていることを特徴とする回転型操作装置。
【請求項9】
請求項6記載の回転型操作装置において、
前記押圧装置は、前記増減サイクルにおいて増減する前記押圧力の増減幅又は前記増減サイクルの回転角度幅が調整可能になっていることを特徴とする回転型操作装置。
【請求項10】
請求項6記載の回転型操作装置において、
前記押圧装置は、
非押圧時、前記押圧体を前記回転操作部材の前記被押圧面から離して保持し、
各増減サイクルの所定の位相角で前記押圧体を前記被押圧面を所定値以上の押圧力で打撃することを特徴とする回転型操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザがクリック感を持ちつつ回転操作できるようにした回転型操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の機器では、ユーザにクリック感を付与しつつユーザが回転操作できるようにした回転型操作装置が装備されている。
【0003】
特許文献1は、回転操作部材としてのハンドルと一体回転する歯車に対し、径方向に玉を押圧する回転型操作装置を開示する。この回転型操作装置は、歯車の周部が回転方向へ交互に山部と谷部とを繰り返す湾曲面で形成された歯車と、当該歯車の湾曲面に押圧される玉と、歯車の径方向に進退するプランジャと、玉とプランジャとの間に介在するばねと、を備えている。そして、ユーザがハンドルの回転量に対する被駆動物の駆動量としての倍率を選択できるようにし、選択された倍率が大きいときほど、プランジャを歯車の方へ接近させて、歯車の湾曲面に対する玉の押圧力が大きくなるように、すなわちユーザが感じるクリック感が強くなるようにされている。
【0004】
特許文献2は、周部に湾曲溝を備えノブと一体回転する回転板と、先端に球状の突起体が形成されスプリングにより回転板の方に付勢されるプランジャと、スプリングの付勢力に抗してプランジャを磁気吸引するソレノイドとを備えている回転型操作装置を開示する。この回転型操作装置は、クリック感付きとクリック感無しの2種類のノブ回転操作を可能にしている。クリック感付きのノブ回転操作では、ソレノイドは非励磁状態に切り替えられ、突起体がスプリングの付勢力により回転板の湾曲溝に押圧され、ノブの回転に対して突起体が山部を超える時の回転操作力の増加を利用して、ユーザにクリック感を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-062309号公報
【特許文献2】実公平6-35325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2の回転型操作装置のクリック感は、玉や突起体等の押圧体が歯車の回転に伴ってばね力に抗して歯車の湾曲面の山部や谷部を通過することに伴って生じる回転操作力の変化を利用するものである。したがって、クリック感を発生するために、山と谷とを交互に有する歯車等の回転部が必要になる。また、回転部の山と谷とは、回転部における位置が固定されているので、ユーザがノブ等の回転操作部材を回転操作する時に生じるクリック感のサイクルは、回転部において周方向に隣り合う山と山との間の回転角度間隔に固定されている。
【0007】
本発明の目的は、回転操作部材の回転に対するクリック感を創出する自由度を高めた回転型操作装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の回転型操作装置は、
支持部材と、
周方向に延在する平滑な被押圧面を有し、前記支持部材に回転自在に支持されている回転操作部材と、
前記回転操作部材の回転を検出する検出部と、
前記被押圧面を押圧する押圧体を有し、前記検出部が検出した前記回転操作部材の回転に応じて前記押圧体の押圧力を変化させる押圧装置と、
を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クリック感を発生させる回転操作部材の回転操作力の変化を、回転操作部材の平滑な被押圧面に対する押圧体の押圧力を変化させることにより可能にすることができる。回転操作部材の平滑な被押圧面に対する押圧体の押圧力は、回転に対して任意に設定できるので、回転操作部材の回転に対するクリック感を創出する自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】回転型操作装置の実施形態が配備されている車室の斜視図である。
【
図4】ダイヤル装置を中心軸方向に分解して前方斜め上から見た分解図である。
【
図5】ダイヤル装置を中心軸方向に分解して後方斜め上から見た分解図である。
【
図9】比較例の波形面部と実施形態の円周面部との構成比較図である。
【
図10】印加電圧Vaの種々の実施例を示す図である。
【
図11A】クリック感をアンサーバック式にするときの構造図である。
【
図11B】アンサーバック式のクリック感にしたときの回転角度Kaと印加電圧Va及びトルクTaとの関係を示すグラフである。
【
図12】回転操作部材の回転操作力を増減する押圧力を回転操作部材の径方向に付与するダイヤル装置の主要部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の複数の実施形態について説明する。本発明は、これら実施形態に限定されないことは言うまでもない。なお、複数の実施形態間で共通する構成要素については、同一の符号を使用する。
【0012】
(車室における回転型操作装置)
図1は、回転型操作装置の実施形態が配備されている車室10の斜視図である。車室10において、フロントウィンドウ12は、車室10の前方を覆っている。ダッシュボード14は、フロントウィンドウ12の下端から車両の前後方向にステリングホィール16の前の位置まで後方に張り出している。
【0013】
ダッシュボード14には、ステリングホィール16の後ろの運手座席の運転者から手の届く範囲にタッチパネル18及び空調パネル20が上及び下の関係で配設されている。タッチパネル18は、カーナビゲーションの入出力インターフェースとしての役割の他に、バックカメラの撮影映像等、車両搭載の種々の機器からの運転支援情報が表示されるようになっている。
【0014】
図2は、空調パネル20の正面図である。空調パネル20には、本発明の回転型操作装置の実施形態であるダイヤル装置22a,22b,22cが水平方向に一列に配備されている。空調パネル20には、さらに、温度表示器24a及び風量表示器24cが、それぞれに対応する操作器である空調温度設定用のダイヤル装置22a及び空調風量設定用のダイヤル装置22cに十分に寄せて配備されている。
【0015】
(ダイヤル装置の本体部)
図3A及び
図3Bは、それぞれダイヤル装置22の本体部の正面図及び側面図である。なお、ダイヤル装置22は、ダイヤル装置22a~22cの総称とし、ダイヤル装置22a~22cは、共通の構成及び作用を有している。
【0016】
ダイヤル装置22は、本体部と、
図7等で後述する回転角度検出器44及び制御器46を備えている。ダイヤル30及びロータ32は、回転操作部材31を構成する。ダイヤル30及びロータ32は、回転軸Axの回りに一体的に回転するように、相互に結合され、回転操作部材31として支持部材としてのハウジング34に支持されている。ハウジング34は、さらに、空調パネル20内の所定の部材に固定されている。なお、回転軸Axは、ダイヤル装置22の中心軸に重なっている。
【0017】
図4及び
図5は、ダイヤル装置22を、中心軸方向に分解して、それぞれ前方斜め上及び後方斜め上から見た分解図である。なお、ダイヤル装置22の前側及び後ろ側は、それぞれ
図2において見えている側及び後ろに隠れている側であると定義する。
【0018】
ダイヤル30は、円筒部301を備えている。複数の縦溝302は、円筒部301の後端部において周方向に間隔を空けて、かつ中心軸方向に延在して、形成されている。なお、周方向とは、中心軸に対して垂直な平面を中心軸を中心とする円周に沿って延在する方向と定義している。円筒座標系 ( r , θ , z ) におけるθに相当する方向である。
【0019】
ロータ32は、同軸関係にある内筒部321と外筒部322とを備えている。平滑面の、すなわち凹凸のない平坦面の円周面部324(
図5)は、内筒部321と外筒部322とを径方向に結合している結合板の後面に形成されている。突条323は、内筒部321の外周面に形成されている。ダイヤル30とロータ32とは、ダイヤル30の各縦溝302にロータ32の突条323が嵌入するように、中心軸方向に相互に押し込まれて、組付けられている。これにより、ダイヤル30とロータ32とは、回転操作部材31として回転方向へ一体となっている。
【0020】
ハウジング34は、円筒部342と、円筒部342の後端から径方向に張り出しているフランジ部343と、フランジ部343の外周に結合して中心軸方向に延在している嵌合部341及び張出し部344とを有している。ハウジング34の円筒部342は、ロータ32の内筒部321の内周に嵌合し、内筒部321は、円筒部342の外周に嵌合するとともに、不図示の爪を介して円筒部342の環状段部(図示せず)に係止されている。これにより、内筒部321は、円筒部342に対して中心軸方向の変位を阻止されつつ、相対回転可能に支持されている。
【0021】
クリックボール36は、先端部が弾丸形状となっており、嵌合部341の内周側に中心軸に対して平行な方向に変位自在に嵌合している。電磁ソレノイド40は、ハウジング34の後端の張出し部344を介してハウジング34の後ろ側に取り付けられている。
【0022】
図6Aは、
図3Bの6A-6A断面図、
図6Bは、
図6Aにおいて6Cで示す矩形領域の拡大図である。揺動体38は、支点382の回りに揺動可能である双腕レバー381を有している。支点382は、中心軸に対して垂直な平面上でかつダイヤル装置22の径方向に垂直方向に延在し、ハウジング34に回転自在に支持されている。揺動体38は、クリックボール36の軸方向変位を後述のプランジャ402の軸方向変位に連動させる連動部材である。
【0023】
電磁ソレノイド40は、ケース401と、ケース401から中心軸に沿ってハウジング34の方へ突出するプランジャ402と、プランジャ402をハウジング34の方へ付勢する圧縮ばね403とを有している。双腕レバー381は、中心軸側においてプランジャ402の先端部に連結し、嵌合部341側においてクリックボール36の後端部に連結している。
【0024】
ダイヤル装置22の本体部単独の作用について説明する。
【0025】
電磁ソレノイド40は、通電流の増大に応じて、圧縮ばね403の付勢力に抗してプランジャ402をケース401内へ引き込んでいく。換言すると、ケース401からのプランジャ402の突出量は、通電流の増大に応じて、減少するようになっている(プル式)。
【0026】
双腕レバー381は、プランジャ402がケース401の方へ変位するほど、中心軸側の端部においてハウジング34から離反していくように支点382の回りを揺動する。これより、双腕レバー381の嵌合部341側の端部は、中心軸方向へハウジング34に接近していき、クリックボール36を円周面部324の方へ変位させる。クリックボール36は、円周面部324の方へ変位するほど、平滑な円周面部324の押圧力を増大する。ユーザによる回転操作部材31の回転操作力は、円周面部324のへのクリックボール36の押圧力が増大するほど、増大する。
【0027】
ダイヤル装置22の電磁ソレノイド40は、通電流の増大に応じて、ケース401からのプランジャ402の突出量を増大させるプッシュ式を採用してもよい。しかしながら、前述のプル式の方がクリック感の発生について有利である。なぜなら、クリックボール36が円周面部324に当接開始してからの押圧力の調整範囲を広くして制御できるからである。すなわち、ブル式の電磁ソレノイド40はでは、クリックボール36が円周面部324に当接開始した後、クリックボール36をさらに円周面部324に変位させて、押圧力を強めていくことができる。これに対し、プッシュ式の電磁ソレノイド40では、クリックボール36が円周面部324に接触維持しているプランジャ402の変位量を長くとれず、押圧力の調整範囲が狭まるからである。
【0028】
(全体構成)
図7は、ダイヤル装置22aの全体構成の模式図である。ダイヤル装置22b,22cの模式図は、省略しているが、回転操作により調整する対象(例:設定温度や風量)が異なるだけで、構成は同一である。
【0029】
回転操作部材31は、ハウジング34(
図6A)に対して時計方向Da及び反時計方向Dbの双方向にユーザにより回転操作可能に支持されている。ダイヤル装置22aは、さらに、回転操作部材31の回転角度Kaを検出する回転角度検出器44と、回転角度検出器44が検出した回転角度Kaに基づいて電磁ソレノイド40の印加電圧Vaを制御する制御器46とを備えている。制御器46は、ICから構成されている。本発明の押圧装置は、例えば、クリックボール36、揺動体38、電磁ソレノイド40及び制御器46を備える。
【0030】
回転角度検出器44は、具体的には、例えば、光源と受光器とから構成されている。回転操作部材31がハウジング34に対して相対回転する際、回転操作部材31が等回転角度回転するごとに、回転操作部材31の所定部分が光源-受光器間の光路を横切って遮断する。これにより、受光器は、回転操作部材31が等回転角度回転するごとに、光のパルスを検出する。こうして、パルス数に基づいて回転操作部材31の回転角度が検出される。
【0031】
図7内のグラフは、ユーザが回転操作部材31を時計方向Daに一定の回転速度で回転操作したときに回転操作部材31に生じるトルクTaの変化を示している。当該グラフの詳細は、
図9において後述する。
【0032】
(作用)
図8は、ダイヤル装置22の作用説明図である。
図8では、ユーザが回転操作部材31を時計方向Daに回転操作したときの作用について説明するが、ユーザが回転操作部材31を反時計方向Dbに回転操作したときの作用も同様である。
【0033】
最初に
図8内の2つのグラフについて説明する。これらのグラフは、ユーザが回転操作部材31を支持部材としてのハウジング34に対して所定の等回転速度で時計方向Daに回転操作したときに、制御器46が回転角度検出器44からの入力に基づいて認識した回転操作部材31の回転角度Kaと電磁ソレノイド40の印加電圧Va及び回転操作部材31の回転操作力としてのトルクTaとの関係を示したものである。横軸は、回転角度Kaで定義されているが、時間軸でもある。2つのグラフにおいて、縦軸に平行に引いた直線が2つの横軸とそれぞ交差する箇所の回転角度Ka同士は、同一の値又は同一時刻となるように、横軸が揃えられている。
【0034】
制御器46は、回転角度Kaと印加電圧Vaとの関係が
図8内の下のグラフで規定する特性となるように、回転角度検出器44から検出した回転角度Kaに対応する印加電圧Vaを電磁ソレノイド40に出力する。
【0035】
一方、回転操作部材31のトルクTa、すなわち回転操作力の変化は、印加電圧Vaの変化に対して時間遅れがある。なぜなら、電磁ソレノイド40が制御器46からの印加電圧Vaを入力してから、プランジャ402が変位し、これに伴って、揺動体38が揺動し、次に、クリックボール36が、変位して、円周面部324に対する押圧力が変化するまでに、時間がかかるからである。
【0036】
図8では、印加電圧Vaは、回転角度Kaの増大に対して等脚台形状の変化を繰り返す特性を有している。すなわち、印加電圧Vaの各増減サイクルの印加電圧Vaは、印加電圧Va=V1(例えば0V(ボルト))であるフラット領域と、印加電圧Va=V2(ただし、V2>V1)のフラット領域と、それらの間のリニアに増大又は減少する傾斜領域とから構成されている。各等脚台形の立ち上がりをトリガーとすると、横軸の方向に隣接するトリガー同士の回転角度間隔が印加電圧Vaの増減サイクルの単位となる。
【0037】
一方、トルクTaは、V1,V2にそれぞれ対応するT1とT2との間を山と谷とを交互に繰り返す増減サイクル特性で変化する。回転角度Kaに対するトルクTaの変化を示した上のグラフにおいて1クリックの両端は、回転操作部材31の回転方向に等回転角度間隔で設定されている上昇又は下降時の特定のトルクTaに設定されている。トルクTaの1クリックは、トルクTaの増減サイクルの単位に相当し、回転操作部材31を回転操作するユーザが感じるクリック感の単位でもある。
【0038】
制御器46は、回転角度検出器44からの入力信号に基づいて回転操作部材31の回転角度Kaを認識する。次に、制御器46は、認識した回転角度Kaに応じた印加電圧Vaを、
図8の印加電圧Vaの特性設定グラフで規定されている特性で変化させる。制御器46のICは、この特性に係る情報を不揮発性メモリに記憶しており、制御器46は、この情報を参照して、印加電圧Vaを決めている。
【0039】
電磁ソレノイド40(詳細には電磁ソレノイド40に内蔵されているコイル)の通電流は、回転角度検出器44が電磁ソレノイド40に供給する印加電圧Vaに比例する。電磁ソレノイド40において、ケース401からのプランジャ402の突出量は、通電流の増大に連れて、減少し、すなわち、プランジャ402は、中心軸上において円周面部324から離れた変位位置になる。
【0040】
双腕レバー381の両端は、支点382の回りの双腕レバー381の揺動に伴い、ダイヤル装置22の軸方向に逆向きに変位する。したがって、プランジャ402がケース401の方へ引き込まれるほど、クリックボール36は、円周面部324に接近し、円周面部324に対する押圧力を増大させる。回転操作部材31の回転操作力は、円周面部324に対するクリックボール36の押圧力が大きいほど、増大し、ユーザには、回転操作が重いと感じさせる。こうして、ユーザには、回転操作部材31の回転操作中、トルクTaの各増減サイクルにおいて1クリックを感じ取ることができる。
【0041】
図9は、波形面部325(比較例)と円周面部324(実施形態)との構成比較図である。ダイヤル装置22では、電磁ソレノイド40がプランジャ402を変位させることによる円周面部324に対するクリックボール36の押圧力の変化でクリック感を創出している。これに対して、プランジャ402の軸方向位置が固定されているときは、クリック感を創出するために、円周面部324に代えて波形面部325とクリックボール36を波形面部325に付勢するばねとが必要になる。そして、ユーザに抱かせるクリック感を増大させる場合は、波形面部325の山と谷との高低差を増大させるか、ばね力を増大させるかする必要がある。
【0042】
これに対し、ダイヤル装置22では、回転操作部材31の回転に伴って電磁ソレノイド40の印加電圧Va又は通電流の増減サイクルを繰り返して、円周面部324に対するクリックボール36の押圧力の増減サイクルを繰り返すことによりクリック感を創出するので、多様なクリック感を生成することができる。
【0043】
換言すると、クリック感を発生させる回転操作部材31の回転操作力の増減を、円周面部324に対するクリックボール36の押圧力を増減させることにより可能にすることができる。円周面部324に対するクリックボール36の押圧力は、回転角度Kaに対して自由に設定できるので、クリック感を創出するサイクル振幅Wa、サイクル角度幅Ga、傾斜度Ba又はサイクル通電幅Eaの自由度を高めることができる。
【0044】
(印加電圧の実施例)
図10は、印加電圧Vaの種々の実施例を示している。印加電圧Vaは、パラメータとしてサイクル振幅Wa、サイクル角度幅Ga、傾斜度Ba及びサイクル通電幅Eaを有している。したがって、これらパラメータの設定値を変更することにより異なるクリック感を創出することができる。
【0045】
図10では、これらパラメータの設定値が相違する3つの例をcase1~3として例示している。各パラメータについてcase1の値を標準値とする。なお、このダイヤル装置22では、V1は、0V(無電圧又は無通電)に固定して、消費電力を節約しているが、V1を≠0Vとしたり、状況に応じて変化させることもできる。
【0046】
case2では。サイクル角度幅Gaの値が標準値に対して増大している。case3では、サイクル振幅Waが標準値に対して増大している。サイクル振幅Waが大きいときほど、ユーザは、クリック感を強く感じる。サイクル角度幅Gaが長くなるほど、1クリックの回転角度Kaの幅が増大するので、ユーザが1クリックを感じる回転操作部材31の回転角度範囲が増大する。傾斜度Baが急峻になるほど、ユーザがダイヤル装置22を回転操作するときに必要となる回転操作力の増加率が高まる。
【0047】
サイクル通電幅Eaの変更例は、次の
図11Bで後述する。サイクル通電幅Eaが小さいほど、最大回転操作力の回転角範囲が短くなって、回転操作力のかかる回転角度Kaの集中性が高まる。
【0048】
図11Aは、クリック感をアンサーバック式にするときの構造図である。
図11Bは、アンサーバック式のクリック感にしたときの回転角度Kaと印加電圧Va及びトルクTaとの関係を示すグラフである。
【0049】
図11Aにおけるクリックボール36の位置は、電磁ソレノイド40の無通電状態における位置であり、クリアランスCaが、ダイヤル装置22の中心軸方向にクリックボール36と円周面部324との間に保持されている。電磁ソレノイド40のプランジャ402(
図6A)は、電磁ソレノイド40の無通電時は圧縮ばね403の付勢力によりケース401からの最大突出量の位置にある。
図11Aの構造では、プランジャ402が最大突出量の位置にあるときに、すなわち、円周面部324に対するクリックボール36の非押圧時に、クリアランスCaが生じるように、ハウジング34、揺動体38又は電磁ソレノイド40の中心軸方向位置や、クリックボール36の長さが設定されている。
【0050】
制御器46は、
図11Bに示すように、印加電圧Vaが所定値以上になる通電期間を印加電圧Vaの各増減サイクルの所定の位相角に集中させる。すなわち、サイクル通電幅Eaを狭くした印加電圧Vaを電磁ソレノイド40に供給する。
【0051】
こうして、ユーザは、回転操作部材31の回転操作中、1クリックに相当するクリック周期の所定の位相角以外では回転操作力無しの回転操作となるとともに、所定の位相角では大きな回転操作力を感じる、すなわち、ユーザは、把持している回転操作部材31からリズム的な振動感(アンサーバック)を受けることができる。
【0052】
(別の実施形態)
図12は、回転操作部材31の回転操作力を増減する押圧力を回転操作部材31の径方向に付与するダイヤル装置62の主要部の構成図である。ダイヤル装置62についてダイヤル装置22との相違点について説明する。
【0053】
ダイヤル装置62の中心軸方向の所定位置には、回転操作部材31の周部に沿って平滑な面、すなわち凹凸のない面である円柱側面円柱側面)306が形成されている。クリックボール64は、回転操作部材31の径方向に変位可能にガイド(図示せず)に案内されつつ、当該ガイドに支持されている。電磁ソレノイド40は、通電流に応じてプランジャ402をクリックボール64に対して平行な方向に変位させる。ケース401からのプランジャ402の突出量は、通電流が増大するに連れて減少する。
【0054】
揺動体38の双腕レバー381は、支点382の回りの揺動によりプランジャ402の変位を、逆向きにしてクリックボール64に伝達する。これにより、クリックボール64は、先端の半球部において円柱側面306に対する押圧力が変化可能になっている。
【0055】
揺動体38は、支点382において回転操作部材31に回転軸Axに対して平行な軸の回りに回転可能に支持されている。双腕レバー381は、両端部においてそれぞれクリックボール64及びプランジャ402に連結している。これにより、電磁ソレノイド40の通電流が増大するほど、プランジャ402がケース401内に引き込まれる一方、クリックボール64は、径方向に回転軸Axの方へ接近して、ユーザによる回転操作中の回転操作部材31の円柱側面306に対する押圧力を強める。すなわち、回転操作部材31の回転操作力を増大させる。こうして、ダイヤル装置62においても、ダイヤル装置22と同様なクリック感をユーザに付与することができる。
【0056】
(回転検出器)
ダイヤル装置22において本発明の検出部として装備している回転角度検出器44は、回転操作部材31の回転角度Kaを検出するものとなっている。回転角度検出器44に代えて、単に、回転操作部材31の回転の検出だけ、又は回転操作部材31の回転と回転方向との検出だけを行う回転検出器を用いることもできる。
【0057】
ダイヤル装置22がそのような回転検出器を装備するときは、円周面部324及び平坦円柱側面のそれぞれに対するクリックボール36,64の押圧力は、回転操作部材31の回転角度との一義的な関係に固定されず、運転状況や運転手の好み等の状況に応じて柔軟に変更することが可能となる。すなわち、回転操作部材31のどの回転角度でどちらの回転方向へ回転開始しても、押圧力の増減サイクルを開始させて、かつクリックボール36,64の押圧力の1増減サイクルに対して回転中に割り当てられる回転角度の増減量、及び各回転角度において割り当てられる押圧力の値を自由に調整することができる。
【0058】
(変形例)
ダイヤル装置22の回転操作部材31は、時計方向Da及び反時計方向Dbの双方向に回転操作可能になっているが、本発明の回転型操作装置は、一方向のみしか回転しないものであってもよい。
【0059】
ダイヤル装置22では、時計方向Da及び反時計方向Dbのいずれの回転操作であっても、ダイヤル装置22のクリック感の1サイクルに対応付けられている回転操作部材31の回転角度幅は、等しく設定されている。本発明の回転型操作装置は、一方向と他方向との回転操作で、ダイヤル装置22のクリック感の1サイクルに対応付けられている回転操作部材31の回転角度幅に差を付けることもできる。例えば、空調の温度調整において、設定温度を高温の方へ回転操作するときは、低温の方へ回転操作するときより、1サイクルに割り当てられる回転角度幅を小さく(細かく調整)するようにしてもよい。
【0060】
ダイヤル装置22のクリック感の1サイクルに対応付けられている回転操作部材31の回転角度幅は、回転操作部材31の回転操作範囲全体にわたり等しく設定されている。本発明の回転型操作装置では、回転操作部材の回転操作範囲全体を複数の区分に分割し、区分ごとに回転操作部材のクリック感の1サイクルに対応付けられている回転操作部材の回転角度幅を相違させてもよい。例えば、空調の温度調整において、低温域の温度調整範囲に割り当てられる1サイクル回転角度幅は小さく(細かく調整)、高温域の温度調整範囲に割り当てられる1サイクル回転角度幅は大きく(荒く調整)するようになっていてもよい。
【0061】
ダイヤル装置62(
図12)は、揺動体38を備えているが、揺動体38を省略して、プランジャ402がクリックボール64を兼ねるようにすることもできる。その場合、ダイヤル装置62は通電流が増大するほど、プランジャ402が円柱側面306の方へ突出して、円柱側面306に対するプランジャ402の先端部による押圧力が増大する方が、ダイヤル装置22において電磁ソレノイド40はプル式の方が有利であるのと同じ理由により有利である。
【符号の説明】
【0062】
22,62・・・ダイヤル装置、31・・・回転操作部材、36,64・・・クリックボール(押圧体)、38・・・揺動体(連動部材)、40・・・電磁ソレノイド、44・・・回転角度検出器、46・・・制御器、306・・・平坦円柱側面、324・・・円周面部、401・・・ケース、402・・・プランジャ、403・・・圧縮ばね。