(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004070
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】信号・ノイズ判定装置、方法、プログラム、記録媒体
(51)【国際特許分類】
G01D 3/00 20060101AFI20240109BHJP
G01H 3/00 20060101ALN20240109BHJP
【FI】
G01D3/00 Z
G01H3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103526
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100113354
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 総
(72)【発明者】
【氏名】緒方 祐史
(72)【発明者】
【氏名】柳田 朋則
【テーマコード(参考)】
2F075
2G064
【Fターム(参考)】
2F075AA05
2F075EE18
2G064CC13
2G064CC29
(57)【要約】
【課題】信号の測定結果の成分の各々が、信号源に由来するのか又はノイズ源に由来するのかを判定する際に機械学習を用いた場合、教師データを容易に取得する。
【解決手段】信号・ノイズ判定装置1が、信号およびノイズを測定する複数のセンサ12aと、信号情報およびノイズ情報を仮定したときに想定されるセンサ12aの測定結果と、仮定の信号情報(すなわち、信号源の位置および信号)と、仮定のノイズ情報(すなわち、ノイズ源の位置およびノイズ)とを教師データとして、機械学習により生成された、測定結果の成分の各々が信号源S1、S2に由来するのか又はノイズ源N1、N2に由来するのかを判定する判定モデルを記録する判定モデル記録部14と、測定結果および判定モデルに基づき、測定結果の成分の各々が信号源S1、S2に由来するのか又はノイズ源N1、N2に由来するのかを判定する信号・ノイズ判定部16とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号およびノイズを測定する複数のセンサと、
信号情報およびノイズ情報を仮定したときに想定される前記センサの測定結果と、仮定の前記信号情報と、仮定の前記ノイズ情報とを教師データとして、機械学習により生成された、前記測定結果の成分の各々が信号源に由来するのか又はノイズ源に由来するのかを判定する判定モデルを記録する判定モデル記録部と、
前記測定結果および前記判定モデルに基づき、前記測定結果の成分の各々が前記信号源に由来するのか又は前記ノイズ源に由来するのかを判定する信号・ノイズ判定部と、
を備え、
前記信号情報が、前記信号源の位置および前記信号であり、
前記ノイズ情報が、前記ノイズ源の位置および前記ノイズである、
信号・ノイズ判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の信号・ノイズ判定装置であって、
前記信号源が所定の単一の領域内に配置されていると仮定され、
前記ノイズ源が前記領域の周囲に配置されていると仮定される信号・ノイズ判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の信号・ノイズ判定装置であって、
前記信号源または前記ノイズ源がランダムに配置されていると仮定される信号・ノイズ判定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の信号・ノイズ判定装置であって、
前記成分が、前記測定結果に対して、独立成分分析を行うことにより得られたものである信号・ノイズ判定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の信号・ノイズ判定装置であって、
前記成分が、前記測定結果に対して、主成分分析を行うことにより得られたものである信号・ノイズ判定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の信号・ノイズ判定装置であって、
前記成分が、前記測定結果に対してFFTを行い、さらにFFTの結果に対してIFFTを行うことにより得られたものである信号・ノイズ判定装置。
【請求項7】
請求項1に記載の信号・ノイズ判定装置であって、
前記機械学習は、畳み込みニューラルネットワークによるものである信号・ノイズ判定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の信号・ノイズ判定装置であって、
前記畳み込みニューラルネットワークの出力層の活性化関数として、シグモイド関数を用いる信号・ノイズ判定装置。
【請求項9】
請求項7に記載の信号・ノイズ判定装置であって、
前記畳み込みニューラルネットワークの出力層の活性化関数として、Softmax関数を用いる信号・ノイズ判定装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の信号・ノイズ判定装置であって、
前記信号が、磁気双極子モーメントまたは電流双極子モーメントとして表される信号・ノイズ判定装置。
【請求項11】
信号およびノイズを測定する複数のセンサを有する信号・ノイズ判定装置を用いて、前記センサの測定結果の成分の由来を判定する信号・ノイズ判定方法であって、
信号情報およびノイズ情報を仮定したときに想定される前記センサの測定結果と、仮定の前記信号情報と、仮定の前記ノイズ情報とを教師データとして、機械学習により生成された、前記測定結果の成分の各々が信号源に由来するのか又はノイズ源に由来するのかを判定する判定モデルを記録する判定モデル記録工程と、
前記測定結果および前記判定モデルに基づき、前記測定結果の成分の各々が前記信号源に由来するのか又は前記ノイズ源に由来するのかを判定する信号・ノイズ判定工程と、
を備え、
前記信号情報が、前記信号源の位置および前記信号であり、
前記ノイズ情報が、前記ノイズ源の位置および前記ノイズである、
信号・ノイズ判定方法。
【請求項12】
信号およびノイズを測定する複数のセンサを有する信号・ノイズ判定装置を用いて、前記センサの測定結果の成分の由来を判定する信号・ノイズ判定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記信号・ノイズ判定処理が、
信号情報およびノイズ情報を仮定したときに想定される前記センサの測定結果と、仮定の前記信号情報と、仮定の前記ノイズ情報とを教師データとして、機械学習により生成された、前記測定結果の成分の各々が信号源に由来するのか又はノイズ源に由来するのかを判定する判定モデルを記録する判定モデル記録工程と、
前記測定結果および前記判定モデルに基づき、前記測定結果の成分の各々が前記信号源に由来するのか又は前記ノイズ源に由来するのかを判定する信号・ノイズ判定工程と、
を備え、
前記信号情報が、前記信号源の位置および前記信号であり、
前記ノイズ情報が、前記ノイズ源の位置および前記ノイズである、
プログラム。
【請求項13】
信号およびノイズを測定する複数のセンサを有する信号・ノイズ判定装置を用いて、前記センサの測定結果の成分の由来を判定する信号・ノイズ判定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、
前記信号・ノイズ判定処理が、
信号情報およびノイズ情報を仮定したときに想定される前記センサの測定結果と、仮定の前記信号情報と、仮定の前記ノイズ情報とを教師データとして、機械学習により生成された、前記測定結果の成分の各々が信号源に由来するのか又はノイズ源に由来するのかを判定する判定モデルを記録する判定モデル記録工程と、
前記測定結果および前記判定モデルに基づき、前記測定結果の成分の各々が前記信号源に由来するのか又は前記ノイズ源に由来するのかを判定する信号・ノイズ判定工程と、
を備え、
前記信号情報が、前記信号源の位置および前記信号であり、
前記ノイズ情報が、前記ノイズ源の位置および前記ノイズである、
記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号およびノイズの測定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、測定信号を、関心信号源による信号成分と、環境磁気ノイズ源による信号成分とに分離することが知られている(例えば、特許文献1~5および非特許文献1を参照)。そのなかでも、ニューラルネットワークを使用した手法が知られている(例えば、特許文献3~5および非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-123242号公報
【特許文献2】特開2009-257933号公報
【特許文献3】特開2009-113717号公報
【特許文献4】特開2001-120511号公報
【特許文献5】特開2012-179352号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Pierpaolo Croce,外5名,“Deep Convolutional Neural Networks for Feature-Less AutomaticClassification of Independent Components in Multi-Channel ElectrophysiologicalBrain Recordings”, IEEE Transactions on Biomedical Engineering, 2019年8月,Volume: 66, Issue:8,Page(s):2372 - 2380
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ニューラルネットワークを使用するためには、多くの教師データが必要であるところ、その取得が困難である。
【0006】
そこで、本発明は、信号の測定結果の成分の各々が、信号源に由来するのか又はノイズ源に由来するのかを判定する際に機械学習を用いた場合、教師データを容易に取得することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる信号・ノイズ判定装置は、信号およびノイズを測定する複数のセンサと、信号情報およびノイズ情報を仮定したときに想定される前記センサの測定結果と、仮定の前記信号情報と、仮定の前記ノイズ情報とを教師データとして、機械学習により生成された、前記測定結果の成分の各々が信号源に由来するのか又はノイズ源に由来するのかを判定する判定モデルを記録する判定モデル記録部と、前記測定結果および前記判定モデルに基づき、前記測定結果の成分の各々が前記信号源に由来するのか又は前記ノイズ源に由来するのかを判定する信号・ノイズ判定部とを備え、前記信号情報が、前記信号源の位置および前記信号であり、前記ノイズ情報が、前記ノイズ源の位置および前記ノイズであるように構成される。
【0008】
上記のように構成された信号・ノイズ判定装置によれば、複数のセンサが、信号およびノイズを測定する。判定モデル記録部が、信号情報およびノイズ情報を仮定したときに想定される前記センサの測定結果と、仮定の前記信号情報と、仮定の前記ノイズ情報とを教師データとして、機械学習により生成された、前記測定結果の成分の各々が信号源に由来するのか又はノイズ源に由来するのかを判定する判定モデルを記録する。信号・ノイズ判定部が、前記測定結果および前記判定モデルに基づき、前記測定結果の成分の各々が前記信号源に由来するのか又は前記ノイズ源に由来するのかを判定する。前記信号情報が、前記信号源の位置および前記信号である。前記ノイズ情報が、前記ノイズ源の位置および前記ノイズである。
【0009】
なお、本発明にかかる信号・ノイズ判定装置は、前記信号源が所定の単一の領域内に配置されていると仮定され、前記ノイズ源が前記領域の周囲に配置されていると仮定されるようにしてもよい。
【0010】
なお、本発明にかかる信号・ノイズ判定装置は、前記信号源または前記ノイズ源がランダムに配置されていると仮定されるようにしてもよい。
【0011】
なお、本発明にかかる信号・ノイズ判定装置は、前記成分が、前記測定結果に対して、独立成分分析を行うことにより得られたものであるようにしてもよい。
【0012】
なお、本発明にかかる信号・ノイズ判定装置は、前記成分が、前記測定結果に対して、主成分分析を行うことにより得られたものであるようにしてもよい。
【0013】
なお、本発明にかかる信号・ノイズ判定装置は、前記成分が、前記測定結果に対してFFTを行い、さらにFFTの結果に対してIFFTを行うことにより得られたものであるようにしてもよい。
【0014】
なお、本発明にかかる信号・ノイズ判定装置は、前記機械学習は、畳み込みニューラルネットワークによるものであるようにしてもよい。
【0015】
なお、本発明にかかる信号・ノイズ判定装置は、前記畳み込みニューラルネットワークの出力層の活性化関数として、シグモイド関数を用いるようにしてもよい。
【0016】
なお、本発明にかかる信号・ノイズ判定装置は、前記畳み込みニューラルネットワークの出力層の活性化関数として、Softmax関数を用いるようにしてもよい。
【0017】
なお、本発明にかかる信号・ノイズ判定装置は、前記信号が、磁気双極子モーメントまたは電流双極子モーメントとして表されるようにしてもよい。
【0018】
本発明は、信号およびノイズを測定する複数のセンサを有する信号・ノイズ判定装置を用いて、前記センサの測定結果の成分の由来を判定する信号・ノイズ判定方法であって、信号情報およびノイズ情報を仮定したときに想定される前記センサの測定結果と、仮定の前記信号情報と、仮定の前記ノイズ情報とを教師データとして、機械学習により生成された、前記測定結果の成分の各々が信号源に由来するのか又はノイズ源に由来するのかを判定する判定モデルを記録する判定モデル記録工程と、前記測定結果および前記判定モデルに基づき、前記測定結果の成分の各々が前記信号源に由来するのか又は前記ノイズ源に由来するのかを判定する信号・ノイズ判定工程とを備え、前記信号情報が、前記信号源の位置および前記信号であり、前記ノイズ情報が、前記ノイズ源の位置および前記ノイズである信号・ノイズ判定方法である。
【0019】
本発明は、信号およびノイズを測定する複数のセンサを有する信号・ノイズ判定装置を用いて、前記センサの測定結果の成分の由来を判定する信号・ノイズ判定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記信号・ノイズ判定処理が、信号情報およびノイズ情報を仮定したときに想定される前記センサの測定結果と、仮定の前記信号情報と、仮定の前記ノイズ情報とを教師データとして、機械学習により生成された、前記測定結果の成分の各々が信号源に由来するのか又はノイズ源に由来するのかを判定する判定モデルを記録する判定モデル記録工程と、前記測定結果および前記判定モデルに基づき、前記測定結果の成分の各々が前記信号源に由来するのか又は前記ノイズ源に由来するのかを判定する信号・ノイズ判定工程とを備え、前記信号情報が、前記信号源の位置および前記信号であり、前記ノイズ情報が、前記ノイズ源の位置および前記ノイズであるプログラムである。
【0020】
本発明は、信号およびノイズを測定する複数のセンサを有する信号・ノイズ判定装置を用いて、前記センサの測定結果の成分の由来を判定する信号・ノイズ判定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、前記信号・ノイズ判定処理が、信号情報およびノイズ情報を仮定したときに想定される前記センサの測定結果と、仮定の前記信号情報と、仮定の前記ノイズ情報とを教師データとして、機械学習により生成された、前記測定結果の成分の各々が信号源に由来するのか又はノイズ源に由来するのかを判定する判定モデルを記録する判定モデル記録工程と、前記測定結果および前記判定モデルに基づき、前記測定結果の成分の各々が前記信号源に由来するのか又は前記ノイズ源に由来するのかを判定する信号・ノイズ判定工程とを備え、前記信号情報が、前記信号源の位置および前記信号であり、前記ノイズ情報が、前記ノイズ源の位置および前記ノイズである記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態にかかる信号・ノイズ判定装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】センサ群12と信号源領域Sとノイズ源領域Nとの位置関係を示す図であり、センサ群12などの平面図(
図3(a))、正面図(
図3(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態にかかる信号・ノイズ判定装置1の構成を示す機能ブロック図である。
図2は、センサ群12の平面図である。本発明の実施形態にかかる信号・ノイズ判定装置1は、センサ群12、判定モデル記録部14、信号・ノイズ判定部16を備える。
【0024】
センサ群12は、複数のセンサ12aである。複数のセンサ12aは、信号およびノイズを測定する。信号およびノイズは、例えば、磁気双極子モーメントまたは電流双極子モーメントとして表される。
図2を参照して、複数のセンサ12aは、2次元的に、例えば、縦および横に等間隔に配置されている。
【0025】
図3は、センサ群12と信号源領域Sとノイズ源領域Nとの位置関係を示す図であり、センサ群12などの平面図(
図3(a))、正面図(
図3(b))である。
【0026】
信号源S1、S2は、信号を出力する。ノイズ源N1、N2は、ノイズを出力する。なお、
図3に示す例においては、信号源およびノイズ源が2個ずつあるが、信号源が3個以上あってもよいし、ノイズ源は1個以上あればよい。ただし、信号源およびノイズ源の個数の合計は、センサ12aの個数未満である必要がある。
【0027】
信号源領域Sは、センサ群12のほぼ真上に位置する所定の単一の領域である。信号源領域Sには、信号源S1、S2が存在している。ノイズ源領域Nは、信号源領域Sの周囲に位置している。ノイズ源領域Nには、ノイズ源N1、N2が存在している。
【0028】
判定モデル記録部14は、センサ群12(複数のセンサ12a)の測定結果の成分の各々が信号源S1、S2に由来するのか又はノイズ源N1、N2に由来するのかを判定する判定モデルを記録する。判定モデルの生成法は、後述する。
【0029】
信号・ノイズ判定部16は、センサ群12の測定結果および判定モデル記録部14に記録された判定モデルに基づき、測定結果の成分の各々が信号源S1、S2に由来するのか又はノイズ源N1、N2に由来するのかを判定する。
【0030】
なお、信号・ノイズ判定部16は、センサ群12から測定結果を受け、独立成分分析または主成分分析を行うことにより、測定結果の成分を得る。また、信号・ノイズ判定部16は、測定結果に対してFFTを行い、さらにFFTの結果に対してIFFTを行うことにより測定結果の成分を得るようにしてもよい。
【0031】
なお、独立成分分析を行うためには、測定結果の成分の個数(すなわち、信号源およびノイズ源の個数の合計)が既知である必要がある。もし、測定結果の成分の個数が未知の場合は、測定結果の成分の個数を推定する必要がある。ここで、測定結果の共分散行列から固有値(特異値)を計算し降順に並べると、測定結果の成分の個数だけ固有値が大きな値を持つ。よって、信号・ノイズ判定部16において、測定結果の共分散行列から固有値(特異値)を計算し、所定の閾値以上である固有値の個数を求めれば、測定結果の成分の個数を推定できる。
【0032】
判定モデルは、信号情報(すなわち、信号源の位置および信号)およびノイズ情報(すなわち、ノイズ源の位置およびノイズ)を仮定したときに想定されるセンサ12aの測定結果(いわゆる、シミュレーション)と、仮定の信号情報と、仮定のノイズ情報とを教師データとして、機械学習(例えば、畳み込みニューラルネットワークによるもの)により生成される。
【0033】
なお、判定モデルの生成にあたっては、信号源が信号源領域S内にランダムに配置されていると仮定し、ノイズ源がノイズ源領域N内にランダムに配置されていると仮定する。
【0034】
ここで、信号およびノイズが磁気双極子モーメント(ベクトルm)として表される場合、センサ12aにおいて生じる磁束密度B(ベクトルrの関数)は、ビオサバールの法則により、以下の式(1)にように表される。ただし、μ0は、磁気定数である。また、ベクトルrは、信号源およびノイズ源(磁気双極子)からセンサ12aまでの方向ベクトルである。
【0035】
【数1】
センサ12aが3軸センサである場合、磁束密度B(ベクトルrの関数)のX成分Bx、Y成分ByおよびZ成分Bzを測定することができ、それぞれ以下の式(2)、式(3)および式(4)のように表される。ただし、rx、ry、rzは、それぞれ、ベクトルrのX成分、Y成分、Z成分である。また、mx、my、mzは、それぞれ、ベクトルmのX成分、Y成分、Z成分である。
【0036】
【数2】
信号情報(すなわち、信号源の位置および信号)およびノイズ情報(すなわち、ノイズ源の位置およびノイズ)を仮定すると、仮定された信号源およびノイズ源の位置に基づき、ベクトルrが分かる。しかも、仮定された信号およびノイズが、ベクトルmとなる。そこで、これらのベクトルrおよびベクトルmを上記の式(2)、式(3)および式(4)に代入することにより、想定されるセンサ12aの測定結果を求めることができる。ただし、磁束密度Bの時間方向の平均を0に合わせておく。
【0037】
また、信号およびノイズが電流双極子モーメント(ベクトルp)として表される場合、センサ12aにおいて生じる磁束密度B(ベクトルrの関数)は、ビオサバールの法則により、以下の式(5)にように表される。
【0038】
【数3】
センサ12aが3軸センサである場合、磁束密度B(ベクトルrの関数)のX成分Bx、Y成分ByおよびZ成分Bzを測定することができ、それぞれ以下の式(6)、式(7)および式(8)のように表される。ただし、rx、ry、rzは、それぞれ、ベクトルrのX成分、Y成分、Z成分である。また、px、py、pzは、それぞれ、ベクトルpのX成分、Y成分、Z成分である。
【0039】
【数4】
信号情報(すなわち、信号源の位置および信号)およびノイズ情報(すなわち、ノイズ源の位置およびノイズ)を仮定すると、仮定された信号源およびノイズ源の位置に基づき、ベクトルrが分かる。しかも、仮定された信号およびノイズが、ベクトルpとなる。そこで、これらのベクトルrおよびベクトルpを上記の式(6)、式(7)および式(8)に代入することにより、想定されるセンサ12aの測定結果を求めることができる。ただし、磁束密度Bの時間方向の平均を0に合わせておく。
【0040】
また、半径a、巻き数n、電流Iのコイルにより生じる磁場を円筒座標系で表すと、以下の式(9)、式(10)および式(11)となる。
【0041】
【数5】
ただし、K(k)は第一種完全楕円積分、E(k)は第二種完全楕円積分であり、式(12)、式(13)および式(14)で表される。
【0042】
【数6】
信号情報(すなわち、信号源の位置および信号)およびノイズ情報(すなわち、ノイズ源の位置およびノイズ)を仮定すると、仮定された信号源およびノイズ源の位置に基づき、ベクトルrが分かる。しかも、仮定された信号およびノイズが、半径a、巻き数n、電流Iのコイルにより生じる磁場となる。そこで、これらベクトルrおよび半径a、巻き数n、電流Iを上記の式(9)、式(10)および式(11)に代入することにより、想定されるセンサ12aの測定結果を求めることができる。ただし、磁束密度Bの時間方向の平均を0に合わせておく。
【0043】
なお、これまでセンサ群12においては、3軸の成分を測定できるセンサ12aが2次元的に配置されているものとしてきた。しかし、センサ12aがライン状に1次元的に配置されている場合も考えられる。また、センサ12aが立体的に3次元的(センサアレイ)に配置されている場合も考えられる。さらに、センサ12aが1軸の成分のみを測定できるようなものであってもよいし、2軸の成分のみを測定できるようなものであってもよい。
【0044】
また、機械学習の方法として、畳み込みニューラルネットワークを用いた場合、判定モデルは、入力層、畳み込み層、プーリング層、全結合層および出力層を備える。入力層に、センサ12aの測定結果を与えると、入力層の出力は畳み込み層に与えられ、畳み込み層の出力はプーリング層に与えられ、プーリング層の出力は全結合層に与えられ、全結合層の出力は出力層に与えられる。出力層からは、測定結果の各成分が、信号源に由来するのか(出力1)又はノイズ源に由来するのか(出力0)が出力される。
【0045】
なお、上記のように畳み込み層およびプーリング層を1層ずつ設けてもよいが、センサ12aの個数によっては、畳み込み層およびプーリング層を2以上設けてもよい。
【0046】
また、出力層の活性化関数としては、シグモイド関数を用いる。ただし、出力層の活性化関数としてSoftmax関数を用いてもよく、この場合は、多値出力となるので、信号源およびノイズ源のセンサ12aからのおよその距離も分かる。これにより、センサ12aの測定結果を用いて信号源S1、S2の位置推定を行う際の精度も向上する。
【0047】
次に、本発明の実施形態の動作を説明する。
【0048】
まず、判定モデルを作成し、判定モデル記録部14に記録する。判定モデルは、畳み込みニューラルネットワークにより作成する。教師データとしては、信号情報(すなわち、信号源の位置および信号)およびノイズ情報(すなわち、ノイズ源の位置およびノイズ)を仮定したときに想定されるセンサ12aの測定結果(いわゆる、シミュレーション)と、仮定の信号情報と、仮定のノイズ情報とを用いる。
【0049】
その後、実際の信号源S1、S2および実際のノイズ源N1、N2(
図3参照)を、センサ群12により測定する。
【0050】
センサ群12のセンサ12aからの測定結果が、信号・ノイズ判定部16に与えられる。測定結果の成分が、独立成分分析などによって取得される。さらに、センサ群12の測定結果および判定モデル記録部14に記録された判定モデルに基づき、測定結果の成分の各々が信号源S1、S2に由来するのか又はノイズ源N1、N2に由来するのかが判定される。
【0051】
本発明の実施形態によれば、信号の測定結果の成分の各々が、信号源S1、S2に由来するのか又はノイズ源N1、N2に由来するのかを判定する際に機械学習を用いた場合、信号情報(すなわち、信号源の位置および信号)およびノイズ情報(すなわち、ノイズ源の位置およびノイズ)を仮定したときに想定されるセンサ12aの測定結果(いわゆる、シミュレーション)と、仮定の信号情報と、仮定のノイズ情報とを教師データとして用いる。よって、本発明の実施形態によれば、実際の測定結果を教師データとして用いる場合に比べて、教師データを容易に取得することができる。
【0052】
また、上記の実施形態は、以下のようにして実現できる。CPU、ハードディスク、メディア(USBメモリ、CD-ROMなど)読み取り装置を備えたコンピュータに、上記の各部分、例えば判定モデル記録部14および信号・ノイズ判定部16を実現するプログラムを記録したメディアを読み取らせて、ハードディスクにインストールする。このような方法でも、上記の機能を実現できる。
【符号の説明】
【0053】
1 信号・ノイズ判定装置
12 センサ群
12a センサ
14 判定モデル記録部
16 信号・ノイズ判定部
S1、S2 信号源
N1、N2 ノイズ源
S 信号源領域
N ノイズ源領域