(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040700
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】触覚感度向上装置及び触覚感度向上方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/01 514
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145215
(22)【出願日】2022-09-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔1〕 公開日:令和04年2月4日 集会名、開催場所:筑波大学大学院博士課程システム情報工学研究群修士論文発表会(オンラインによる実施) 〔2〕 発行日:令和04年3月1日 刊行物:筑波大学大学院博士課程システム情報工学研究群修士論文(2022年3月) 国立大学法人筑波大学 発行 *学内保管場所において請求者のみ閲覧可能 <資 料>筑波大学大学院博士課程システム情報工学研究群修士論文 抜粋
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、「意識下で運動を誘発するインプリシット感覚提示技術の確立」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】橋本 悠希
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555AA71
5E555BA08
5E555BB08
5E555DA24
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】好適に触覚感度を向上させる。
【解決手段】触覚感度向上装置は、人体の表面に刺激を与える刺激付与部と、前記刺激付与部により刺激が与えられた結果として、刺激が与えられた人物に刺激が知覚されたか否かについての情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された結果に応じて、前記刺激付与部が与える刺激の強さを制御する制御部とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の表面に刺激を与える刺激付与部と、
前記刺激付与部により刺激が与えられた結果として、刺激が与えられた人物に刺激が知覚されたか否かについての情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された結果に応じて、前記刺激付与部が与える刺激の強さを制御する制御部と
を備える触覚感度向上装置。
【請求項2】
前記刺激付与部は、振動により人体の表面に刺激を与える
請求項1に記載の触覚感度向上装置。
【請求項3】
前記制御部は、一定の周波数を有する信号を前記刺激付与部に出力する
請求項2に記載の触覚感度向上装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記刺激付与部に印加する電圧の大きさを制御することにより、前記刺激付与部が与える振動の強さを制御する
請求項3に記載の触覚感度向上装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記人物により操作される検出ボタンが押下されたか否かの情報を取得し、
前記制御部は、前記検出ボタンが押下された時点と、当該時点において前記刺激付与部が与えていた振動の強さとに応じて、前記刺激付与部が与える振動の強さを制御する
請求項1に記載の触覚感度向上装置。
【請求項6】
前記刺激付与部は、人体の手の爪に配置され、
前記取得部は、前記刺激付与部により刺激が与えられた結果として、刺激が与えられた人物の指の腹に振動が知覚されたか否かについての情報を取得する
請求項1に記載の触覚感度向上装置。
【請求項7】
前記取得部は、指の腹に伝搬する振動の大きさに基づいて、刺激が与えられた人物の指の腹に振動が知覚されたか否かについての情報を取得する
請求項6に記載の触覚感度向上装置。
【請求項8】
前記刺激付与部は、触覚感度を向上させたい複数の場所に通じる神経が交差する点に最も近い皮膚に刺激を付与する
請求項1に記載の触覚感度向上装置。
【請求項9】
人体の表面に刺激を与える刺激付与工程と、
前記刺激付与工程により刺激が与えられた結果として、刺激が与えられた人物に刺激が知覚されたか否かについての情報を取得する取得工程と、
前記取得工程により取得された結果に応じて、前記刺激付与工程により与えられる刺激の強さを制御する制御工程と
を有する触覚感度向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚感度向上装置及び触覚感度向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指先(例えば指の腹)に振動刺激を与えることにより指先の触覚感度を向上することのできる技術が知られている。このような技術を用いて指先の触覚感度を向上させることにより、手を使った精密な作業を行うことが可能となる。しかしながら振動刺激を与えるための振動装置の存在が作業の障壁となってしまっていた。そこで、指先とは離れた場所に振動装置を配置することにより、手をできるだけ自由に動かせるようにする技術があった(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述したような従来技術を用いた場合、指先から離れた位置に振動刺激を与えるため、皮膚伸張の影響により効果が安定しないといった問題があった。また、指先から離れた位置に振動刺激を与える場合は、指先に振動を与える場合と比較して、与える振動を大きくしなければならない。したがって、指先から離れた位置に振動刺激を与える場合は、装置の大型化が問題となっていた。
【0005】
そこで本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、好適に触覚感度を向上させることができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、人体の表面に刺激を与える刺激付与部と、前記刺激付与部により刺激が与えられた結果として、刺激が与えられた人物に刺激が知覚されたか否かについての情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された結果に応じて、前記刺激付与部が与える刺激の強さを制御する制御部とを備える触覚感度向上装置である。
【0007】
(2)本発明の一態様は、上記(1)に記載の触覚感度向上装置において、前記刺激付与部は、振動により人体の表面に刺激を与えるものである。
【0008】
(3)本発明の一態様は、上記(1)又は(2)に記載の触覚感度向上装置において、前記制御部は、一定の周波数を有する信号を前記刺激付与部に出力するものである。
【0009】
(4)本発明の一態様は、上記(3)に記載の触覚感度向上装置において、前記制御部は、前記刺激付与部に印加する電圧の大きさを制御することにより、前記刺激付与部が与える振動の強さを制御するものである。
【0010】
(5)本発明の一態様は、上記(1)から(4)のいずれかに記載の触覚感度向上装置において、前記取得部は、前記人物により操作される検出ボタンが押下されたか否かの情報を取得し、前記制御部は、前記検出ボタンが押下された時点と、当該時点において前記刺激付与部が与えていた振動の強さとに応じて、前記刺激付与部が与える振動の強さを制御するものである。
【0011】
(6)本発明の一態様は、上記(1)から(5)のいずれかに記載の触覚感度向上装置において、前記刺激付与部は、人体の手の爪に配置され、前記取得部は、前記刺激付与部により刺激が与えられた結果として、刺激が与えられた人物の指の腹に振動が知覚されたか否かについての情報を取得するものである。
【0012】
(7)本発明の一態様は、上記(1)から(6)のいずれかに記載の触覚感度向上装置において、前記取得部は、指の腹に伝搬する振動の大きさに基づいて、刺激が与えられた人物の指の腹に振動が知覚されたか否かについての情報を取得するものである。
【0013】
(8)本発明の一態様は、上記(1)から(7)のいずれかに記載の触覚感度向上装置において、前記刺激付与部は、触覚感度を向上させたい複数の場所に通じる神経が交差する点に最も近い皮膚に刺激を付与するものである。
【0014】
(9)本発明の一態様は、人体の表面に刺激を与える刺激付与工程と、前記刺激付与工程により刺激が与えられた結果として、刺激が与えられた人物に刺激が知覚されたか否かについての情報を取得する取得工程と、前記取得工程により取得された結果に応じて、前記刺激付与工程により与えられる刺激の強さを制御する制御工程とを有する触覚感度向上方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、好適に触覚感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る確率共鳴現象による感覚器の感度向上原理について説明するための図である。
【
図2】本実施形態に係る感覚神経活動電位の波及による触覚感度向上手法について説明するためのである。
【
図3】本実施形態に係る触覚感度向上システムの概要について説明するための図である。
【
図4】本実施形態に係る触覚感度向上システムの機能構成の一例を示す機能構成図である。
【
図5】本実施形態に係る触覚感度向上装置の一連の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係る触覚感度向上システムの変形例について説明するための第1の図である。
【
図7】本実施形態に係る触覚感度向上システムの変形例について説明するための第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態に係る触覚感度向上システム1について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
【0018】
まず、以下に説明する実施形態の前提となる事項について説明する。本実施形態に係る触覚感度向上システム1は、人体が物体に触れたときの感覚(すなわち触覚)の感度を向上させる。触覚感度向上システム1は、例えば人体の表面(例えば皮膚)が物体に触れたときの感覚を向上させる。人体の表面とは、上肢や下肢の全体又は一部の皮膚等であってもよい。以下の説明では、一例として、触覚感度向上システム1が手の指の触覚感度を向上させる場合について説明する。なお、触覚感度を向上させるための部分は、手の指のような皮膚の一例に限定されず、毛や粘膜等を広く含んでいてもよい。
【0019】
触覚感度向上システム1は、例えば高齢者や認知症患者等に適用されてもよい。例えば、加齢とともには感覚神経終末の数は減少し、感覚神経終末の減少に伴い触覚機能が低下する(感覚が鈍くなる)ことが知られている。触覚機能が低下すると、手術手技や芸術(陶芸、絵画、楽器の演奏等)における作業効率や完成精度が低下し、食事や行為動作などの生活の質、認知機能等に悪影響を与える場合がある。そこで触覚感度向上システム1は、このように触覚機能が低下した者に対して適用されることにより、日常生活をサポートすることを目的とする。
【0020】
また、触覚感度向上システム1は、リハビリテーション用途に用いられてもよい。例えば触覚機能が正常な健常者であっても、ある日突然の事故や病気等により、触覚機能が一時的に低下する場合がある。そこで触覚感度向上システム1は、このように触覚機能が一時的に低下した者に対して適用されることにより、リハビリテーションの一環として用いられてもよい。
【0021】
また、触覚感度向上システム1は、発達教育のために用いられてもよい。例えば幼少期には物を手で触ることにより触覚機能を向上させることが重要であることが知られている。しかしながら、そのような機会が十分に与えられない場合がある。したがって、触覚感度向上システム1は、幼少期に触覚機能を向上させることができなかった者に適用されることにより、発達教育の一環として用いられてもよい。また、触覚感度向上システム1は、触覚機能が十分に発達していない子供に適用されることにより、触覚機能を向上させる用途で用いられてもよい。
【0022】
図1は、本実施形態に係る確率共鳴現象による感覚器の感度向上原理について説明するための図である。同図を参照しながら、確率共鳴現象又は確率共振(Stochastic Resonance;SR)による感覚器の感度向上原理について説明する。
図1(A)及び
図1(B)は、いずれも横軸に時間を示し、縦軸に感度を示す。
図1(A)に示すグラフは、触覚機能が衰えた者の感度を示す。図示する一例では、例えば指の腹における感度を示す。図示するように触覚機能が衰えた者の感度は、非線形な曲線で変化し、いずれの時間においても閾値(Threshold)を下回っている。
【0023】
しかしながら確率共鳴現象によれば、感度が閾値を超えない場合であっても、微弱なノイズを印加することにより、感度が閾値を超える場合がある。確率共鳴現象を起こすための微弱なノイズは、例えば指の腹に近い位置に印加される。微弱なノイズの一例としては、振動刺激を例示することができる。また、微弱なノイズのその他の一例として、電気刺激を例示することができる。触覚機能が衰えた者に微弱なノイズを印加した場合における感度を
図2(A)に示す。図示するように触覚機能が衰えた者に微弱なノイズを印加した場合、非線形な曲線にノイズが印加されたことにより、特定の瞬間において感度が閾値を上回ることとなる。図示する一例では、感度が閾値を上回った時点を丸で囲んでいる。このように、確率共鳴現象によれば、感度がノイズによって増強される。触覚感度向上システム1は、好適な強度のノイズを印加することにより、感度を向上させる。以下の説明において、与えるノイズを刺激と記載する場合もある。また、刺激を与える一例として振動を与えると記載する場合もある。
【0024】
なお、図示した一例は、確率共鳴現象を模式的に説明するための模式図である。確率共鳴現象を用いた場合、上肢や下肢において触覚感度の向上が報告されている。また、触覚感度が向上することにより、触覚フィードバックが改善され、運動機能の改善として手指の巧緻動作や立位持のバランス感覚の向上が報告されている。
【0025】
図2は、本実施形態に係る感覚神経活動電位の波及による触覚感度向上手法について説明するためのである。同図を参照しながら、感覚神経活動電位の波及による触覚感度向上手法について説明する。まず、確率共鳴現象を単純に用いた場合の課題について説明する。
図1を参照しながら説明した確率共鳴現象では、指先(例えば指の腹)に近い位置に微弱なノイズを印加した。このような手法によれば、触覚感度を向上させたい部分と、微弱なノイズを印加する部分とが物理的に近いため、微弱なノイズ(例えば振動刺激)の減衰によるロスが少なく、効率よく微弱なノイズを印加することができる。しかしながら微弱なノイズを印加するためには、所定の振動付与部を配置する必要があるため、当該振動付与部の存在自体が手作業を阻害する可能性が考えられる。当該振動付与部の存在は、存在する位置によっては直接的に手作業を阻害する場合もあるし、その重さにより間接的に手作業を阻害する場合もある。
【0026】
また、他の手法として手首や指の付け根に振動付与部を配置することが考えられる。手首や指の付け根に振動付与部を配置する場合、1つの振動付与部により複数の指の触覚感度を向上させることができるかもしれない。しかしながら、手首や指の付け根に振動付与部を配置する場合、把持動作等の動作に伴う皮嗜の伸長により、振動に対する知覚が変化し、触覚感度の向上効果が安定して得られない可能性が考えられる。また、触覚感度を向上させたい箇所と、振動付与部を配置した箇所との間で、振動の減衰によるロスが生じ、振動付与部の大型化を招く場合がある。振動付与部の大型化は、手首等の配置箇所への負担も増加することから、長時間の手作業には向かないといった問題を引き起こす場合があった。
【0027】
また、他の手法として手首や指の付け根に振動付与部を配置することに代えて、指の爪に振動付与部を配置することが考えられる。振動刺激を爪に印加することにより、能動的触覚や把持動作の阻害をせずに触覚感度及び巧緻性を向上させることができる。また、爪は手首や指の付け根と比べて触覚感度が高いため、必要な振動強度が低く、振動子の小型化、軽量化かつ低消費電力化をすることが容易である。実際に手首に振動を与える場合の振動子の重さは7.2[g(グラム)]であるのに対し、爪に振動を与える場合の振動子の重さは0.14[g]である。すなわち、手首に振動刺激を与える場合と爪に振動刺激を与える場合とでは、振動子の大きさに50倍以上の大きな差があることがわかる。このように爪に振動刺激を与えることによる利点は様々考えられる。一方、五指全てに振動子を配置する場合、振動子と接続される配線の数が増えることにより、手作業を行うことが煩わしくなる。手作業を行うことが煩わしくなる結果、作業性が低下するという問題が生じる場合がある。
【0028】
そこで本実施形態においては、感覚神経活動電位の波及現象を用いることにより、ノイズを印加する箇所の数を、五指全てにノイズを印加する場合と比べて、より少ない数とする。感覚神経活動電位の波及現象とは、手に刺激を与えた際、刺激を与えた部位の対象となる神経から別の神経に感覚神経活動電位が波及する現象である。具体的には、感覚神経活動電位の波及現象として、正中神経と尺骨神経間、正中神経と撓骨神経間での波及が報告されている。また、感覚神経に微弱なノイズを提示した場合も体性感覚系と運動系の間の感覚運動連関に影響を与えることが報告されている。
【0029】
以下の説明において、刺激が与えられることにより触覚感度を向上させる対象となる人物を被験者と記載する場合がある。
図2(A)は被験者の右手小指の爪上に刺激を与えた場合において、中指の腹における感度が向上したことを示す図である。
図2(B)は被験者の右手薬指の爪上に刺激を与えた場合において、中指の腹における感度が向上したことを示す図である。同図には、正中神経(Median nerve)、尺骨神経(Ulnar nerve)、撓骨神経(Radial nerve)がそれぞれ司る範囲を異なる色により示す。
【0030】
本実施形態では、感覚神経活動電位の波及現象を用いることにより、確率共嗚現象の効果を複数の指に反映させる。したがって、本実施形態によれば、必要な振動子の数を大幅に削減できる。特に、本実施形態によれば、手作業をする際に重要な親指、示指及び中指の振動子を取り除くことができるため、作業性の大幅な向上を期待できる。
【0031】
図3は、本実施形態に係る触覚感度向上システムの概要について説明するための図である。同図を参照しながら、触覚感度向上システム1の概要について説明する。触覚感度向上システム1は、刺激付与部20と、駆動部30と、検出ボタン40とを備える。触覚感度向上システム1では、触覚感度を向上させるための好適な刺激を与えるため、刺激の強度を調整する。触覚感度向上システム1において、被験者はまず、刺激の強度の調整を行う。次に、調整された強度の刺激が被験者に与えられることにより、被験者は触覚感度が向上した状態における作業が可能となる。以下、同図を参照しながら、刺激の強度の調整の一例について説明する。以下の説明においては、触覚感度向上システム1が与える刺激の一例として、振動刺激を与える場合について説明する。しかしながら本実施形態の態様は振動刺激の一例に限定されず、例えば電気刺激等を用いてもよい。
【0032】
刺激付与部20は、被験者の人体の表面に刺激を与える。以下の説明においては、刺激付与部20は、人体の表面の一部として、手の指、特に爪に刺激を与える場合の一例について説明する。なお、刺激付与部20により刺激を与える場所は、この一例に限定されない、刺激付与部20により刺激を与える場所は、例えば複数の指に繋がる神経(正中神経、尺骨神経又は撓骨神経)が交差する点に最も近い皮膚であることが好適である。例えば小指に繋がる撓骨神経と、薬指に繋がる撓骨神経とが交差する点に最も近い皮膚の部分に刺激付与部20が配置され、配置された点に刺激を与えることにより、小指と薬指の触覚感度を同時に向上させることができる。換言すれば、刺激付与部20は、触覚感度を向上させたい複数の場所に通じる神経が交差する点に最も近い皮膚に刺激を付与することで、複数の場所における触覚感度を同時に向上させる。なお、触覚感度を向上させたい複数の場所に通じる神経が交差する点に最も近い点とは、実質的に最も近い点を含む。実質的に最も近い点とは、実際の刺激付与部20の配置の容易さや作業性等を総合的に勘案して好適な点を含む。刺激付与部20は駆動部30により駆動される。
【0033】
検出ボタン40は、被験者により操作されるスイッチである。検出ボタン40は、一例として、押しボタン式のスイッチである。被験者は、刺激付与部20により与えられた刺激を感じた場合、検出ボタン40を操作する。被験者は、例えば右手に刺激が与えられる場合、左手で検出ボタン40を操作する。逆に、被験者は、例えば左手に刺激が与えられる場合、右手で検出ボタン40を操作する。検出ボタン40は、被験者による操作を検出すると、検出した結果を駆動部30に出力する。
【0034】
駆動部30は、刺激付与部20に対して駆動信号を出力することにより被験者に刺激を与える。刺激付与部20は、例えば圧電素子を含み、駆動部30は、圧電素子に対して所定の信号を出力することにより被験者に刺激を与える。所定の信号とは、ホワイトノイズのような複数周波数の正弦波を合成及び変調したものであってもよい。圧電素子は、例えば粘着部を有し、被験者の爪に配置されてもよい。また、圧電素子は、爪に配置された後上部から粘着部により覆われることにより被験者の爪に配置されてもよい。
【0035】
駆動部30は、検出ボタン40から被験者の操作を取得する。駆動部30は、刺激付与部20への出力を徐々に上げていき、検出ボタン40が操作されたタイミングにおける出力値を記憶する。検出ボタン40が操作されたタイミングにおける出力値とは、すなわち、被験者の触覚感度が向上するために必要最小となる出力値である。駆動部30は、記憶した出力値を出力し続けることにより、被験者の触覚感度が向上した状態を維持し、巧緻動作等の作業を行うことが可能となる。
【0036】
図4は、本実施形態に係る触覚感度向上システムの機能構成の一例を示す機能構成図である。同図を参照しながら、駆動部30及び刺激付与部20の機能構成の一例について説明する。以下の説明において、駆動部30及び刺激付与部20を含む構成を触覚感度向上装置10と記載する場合がある。
【0037】
駆動部30は、調整開始情報取得部31と、知覚情報取得部32と、制御部33とを含んで構成される。これらの各機能部は、例えば、電子回路を用いて実現される。駆動部30は、バスで接続された不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read only memory)又はRAM(Random access memory)等の記憶装置等を備える。駆動部30は、駆動プログラムを実行することによって各機能部を備える装置として機能する。また、各機能部を、コンピュータおよびソフトウェアによって実現するようにしてもよい。
【0038】
なお、駆動部30の各機能の全てまたは一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。駆動プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。駆動プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0039】
調整開始情報取得部31は、調整開始情報SIを取得する。調整開始情報SIは、所定の調整開始ボタン(不図示)を被験者等が操作したことに基づき取得されてもよいし、触覚感度向上システム1の起動に伴い取得されてもよい。また、調整開始情報SIは、出力の調整が必要になるタイミングや、定期的な調整等の所定のタイミングで取得されてもよい。調整開始情報取得部31は、取得した調整開始情報SIに基づいた情報を制御部33に出力する。取得した調整開始情報SIに基づいた情報とは、例えば調整開始情報SIそのものであってもよい。
【0040】
知覚情報取得部32は、知覚情報PIを取得する。図示する一例では、知覚情報取得部32は、検出ボタン40から知覚情報PIを取得する。被験者は、刺激付与部20により刺激が与えられた結果として、刺激を知覚した場合に検出ボタン40を押す。すなわち、知覚情報取得部32は、刺激付与部20により刺激が与えられた結果として、刺激が与えられた人物に振動が知覚されたか否かについての情報を取得する。具体的には、知覚情報取得部32は、人物により操作される検出ボタン40が押下されたか否かの情報を取得する。知覚情報取得部32は、取得した知覚情報PIを制御部33に出力する。以下の説明において、知覚情報取得部32を単に取得部と記載する場合がある。
【0041】
制御部33は、調整開始情報取得部31から調整開始情報SIを取得し、知覚情報取得部32から知覚情報PIを取得する。制御部33は、調整開始情報取得部31により取得された調整開始情報SIと、知覚情報取得部32により取得された結果である知覚情報PIとに応じて、刺激付与部20が与える刺激の強さを制御する。具体的には、制御部33は、出力調整部331と出力部332とを含んで構成される。出力調整部331は、調整開始情報SIに基づき被験者に与える刺激の強さを徐々に変化させる。出力部332は、出力調整部331により調整された刺激を制御情報CIとして刺激付与部20に出力する。出力調整部331は、知覚情報PIに基づき、被験者の触覚を向上させるのに好適な刺激の強さを決定する。出力部332は、出力調整部331により決定された刺激を制御情報CIとして刺激付与部20に出力する。
【0042】
出力調整部331の具体的な構成の一例について説明する。出力調整部331は、例えばホワイトノイズ出力部を備える。ホワイトノイズ出力部はホワイトノイズを出力する。出力されたホワイトノイズは、ローパスフィルタを通り、低周波が除去される。ローパスフィルタは、例えば、300[Hz(ヘルツ)]以下の低周波を除去する。制御情報CIは、低周波が除去されたホワイトノイズに基づいて生成される。制御情報CIは、例えば低周波が除去されたホワイトノイズを既知の圧電素子ドライバIC等に入力された結果として生成されてもよい。
【0043】
刺激付与部20は、制御情報取得部21と、圧電素子22とを含む。制御情報取得部21は、駆動部30から制御情報CIを取得し、取得した制御情報CIを圧電素子22に出力する。圧電素子22は、制御情報CIに基づき人体の表面に刺激を与える。すなわち、刺激付与部20は、圧電素子22による機械振動により人体の表面に振動刺激を与える。この場合、制御部33は、圧電素子22に所定の電圧を与えることにより圧電素子22を振動させる。圧電素子22を、ピエゾ素子と記載する場合もある。
【0044】
制御部33により出力される制御情報CIとは、一定の周波数を有する信号であってもよい。当該周波数は、圧電素子22の特性に応じて設定される。また、制御部33は、与える周波数を一定とし、圧電素子22に印加する電圧の大きさを制御することにより、刺激付与部20が与える刺激の強さ(すなわち、振動の大きさ)を制御してもよい。
【0045】
図5は、本実施形態に係る触覚感度向上装置の一連の動作の一例を示すフローチャートである。同図を参照しながら、触覚感度向上装置10が、人体に与える刺激の強さを調整する場合における一連の動作の一例について説明する。当該一連の動作を用いて触覚感度を向上させる手法を、触覚感度向上方法と記載する場合がある。
【0046】
(ステップS110)まず、調整開始情報取得部31が調整開始情報SIを取得すると、制御部33が刺激付与部20に対する制御情報CIの調整を開始することにより、触覚感度向上装置10は人体に与える刺激の強さの調整を開始する。以下の説明において、刺激付与部20により人体の表面に刺激を付与する工程を刺激付与工程又は刺激付与ステップと記載する場合がある。
【0047】
(ステップS130)次に、制御部33は、制御情報CIを調整することにより、徐々に刺激の強さを大きくしていく。触覚感度向上システム1が圧電素子を用いて機械振動を与える場合、制御部33は、圧電素子22に与える信号の周波数を一定としたまま電圧値を徐々に大きくしていくことにより、刺激の強さを大きくしていく。
【0048】
(ステップS150)次に、知覚情報取得部32は、知覚情報PIを取得したか否かを判定する。知覚情報PIは、例えば被験者が検出ボタン40を押下することにより得られてもよい。知覚情報取得部32は、知覚情報PIを取得した場合(すなわちステップS150;YES)、処理をステップS170に進める。知覚情報取得部32は、知覚情報PIを取得していない場合(すなわちステップS150;NO)、処理をステップS130に戻す。すなわち、触覚感度向上装置10は、徐々に出力を上げていき、被験者が刺激を知覚することができる最低限の出力値を特定する。以下の説明において、知覚情報PIを取得する工程を取得工程又は取得ステップと記載する場合がある。
【0049】
(ステップS170)次に、制御部33は、刺激付与部20に対する出力値を、知覚情報PIを取得した時点における出力値に固定する。知覚情報PIを取得した時点とは、被験者により刺激が知覚された時点である。被験者により刺激が知覚された時点は、例えば被験者が検出ボタン40を押下することにより得られる。すなわち制御部33は、検出ボタンが押下された時点と、当該時点において刺激付与部20が被験者に与えていた振動の強さとに応じて、刺激付与部20が与える振動の強さを固定する。触覚感度向上装置10は、刺激の強さを調整する処理を終了する。以下の説明において、検出ボタンが押下された時点と、当該時点において刺激付与部20が被験者に与えていた振動の強さとに応じて、刺激付与部20が与える振動の強さを決定する工程を、制御工程又は制御ステップと記載する場合がある。
【0050】
[変形例]
次に、
図6及び
図7を参照しながら、本実施形態に係る触覚感度向上システム1の変形例である触覚感度向上システム1Aについて説明する。触覚感度向上システム1Aは、検出ボタン40を用いない点において触覚感度向上システム1とは異なる。触覚感度向上システム1Aの説明において、触覚感度向上システム1と同様の構成については、同様の符号を付すことにより説明を省略する場合がある。触覚感度向上システム1Aは、駆動部30Aと、刺激付与部20Aとを備える。駆動部30Aと、刺激付与部20Aとを含んだ構成を触覚感度向上装置10Aと記載する場合がある。触覚感度向上装置10Aは、人体に装着することのできるウェアラブルデバイスであってもよい。
【0051】
図6は、本実施形態に係る触覚感度向上システムの変形例について説明するための第1の図である。同図を参照しながら、触覚感度向上システム1Aの概要について説明する。本実施形態に係る刺激付与部20Aは、ネイルチップNC上に構成される。なお、図示する一例では、ネイルチップNCが爪の上に取り付ける爪型のチップであるとして説明するが、その他の態様で実現される場合も広く含む。
【0052】
刺激付与部20Aは、ネイルチップNCの爪側に配置され、人体の手の爪に直接刺激を与えることを可能とする。ネイルチップNCは粘着部を有し、粘着部を介して人体の手の爪に取り付けられてもよい。当該粘着部は、例えばネイルチップNCに付され、人体への刺激が減衰することを防ぐため、刺激付与部20Aには触れないよう構成されていてもよい。ここで、刺激付与部20Aの具体的な構成について図を参照しながら説明する。
【0053】
図7は、本実施形態に係る触覚感度向上システムの変形例について説明するための第2の図である。同図を参照しながら、刺激付与部20Aの具体的な構成について説明する。刺激付与部20Aは、制御情報取得部21Aと、圧電素子22Aと、バッテリ23とを備える。制御情報取得部21Aは、無線通信機能部を備え、駆動部30Aと無線通信を行う。制御情報取得部21Aは、無線通信により駆動部30Aから制御情報CIを取得する。制御情報取得部21Aと圧電素子22Aとは、所定の方法により物理的に接続される。制御情報取得部21Aは、駆動部30Aから取得した制御情報CIに基づき圧電素子22Aの駆動を制御する。圧電素子22Aは、制御情報取得部21Aからの制御に基づき、ネイルチップNCが取り付けられた爪に対して振動を与える。バッテリ23は、制御情報取得部21A及び圧電素子22Aに電力を供給する。
【0054】
なお、制御情報取得部21Aが駆動部30Aから電力の供給を受けることが可能な場合、刺激付与部20Aはバッテリ23を備えていなくてもよい。駆動部30Aからの電力の供給は、例えば既知のワイヤレス電力伝送技術が用いられてもよい。また、駆動部30Aと刺激付与部20Aとが有線接続されることにより、電力及び制御情報CIを有線で伝送可能なよう構成されていてもよい。
【0055】
図6に戻り、駆動部30Aについて説明する。駆動部30Aは、筐体としてのスマートウォッチ11の内部に格納される。または、駆動部30Aは、スマートウォッチが有するハードウェア資源を用いて実現される。スマートウォッチ11は、ベルト12により手首に装着される。駆動部30Aは、無線通信により制御情報CIを刺激付与部20Aに出力する。なお、駆動部30Aと刺激付与部20Aとが有線接続される場合は、制御情報CIを有線通信により伝送してもよい。
【0056】
駆動部30Aは、知覚情報取得部32に代えて知覚情報取得部32Aを備える。本実施形態においては、検出ボタン40を用いない代わりに、知覚情報取得部32Aが人体から直接知覚情報を取得する。すなわち、知覚情報取得部32Aは、刺激付与部20Aにより刺激が与えられた結果として、刺激が与えられた人物の指の腹に振動が知覚されたか否かについての情報を、人体から直接取得する。具体的態様としては、知覚情報取得部32Aは、指の腹に伝搬する振動の大きさに基づいて、刺激が与えられた人物の指の腹に振動が知覚されたか否かについての情報を取得してもよい。なお、以下の説明において、知覚情報取得部32Aを単に取得部と記載する場合がある。
【0057】
なお、上述した実施形態では、ウェアラブルデバイスとして、スマートウォッチとネイルチップを用いて実現する場合の一例について説明した。しかしながら本実施形態の態様はこの一例に限定されない、例えば、スマートウォッチとネイルチップを用いる態様に代えて、手袋や、サポーターのような態様により触覚感度向上装置10Aを構成してもよい。手袋のような態様を採用する場合、手のひら側(少なくとも指の腹)は物体に直接触れることのできるような構造になっていてもよい。
【0058】
[実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、触覚感度向上装置10は、刺激付与部20を備えることにより人体の表面に刺激を与え、触覚感度を向上させる。また、触覚感度向上装置10は、知覚情報取得部32を備えることにより刺激付与部20により刺激が与えられた結果として、刺激が与えられた人物に刺激が知覚されたか否かについての情報を取得する。また、触覚感度向上装置10は、制御部33を備えることにより知覚情報取得部32により取得された結果に応じて、刺激付与部20が与える刺激の強さを制御する。すなわち、刺激付与部20によれば、触覚感度が向上する好適な刺激を与えることができる。したがって本実施形態によれば、好適に触覚感度を向上させることができる。
【0059】
また、以上説明した実施形態によれば、刺激付与部20は、圧電素子22を含み、制御部33は圧電素子22に電圧を与えることにより圧電素子22を振動させ、人体の表面に刺激を与える。すなわち本実施形態によれば、圧電素子22Aの振動により、人体の表面に振動刺激を与える。圧電素子22Aは非常に小さいため、例えば爪の上に乗せた場合であっても、手作業を邪魔することがない。したがって、本実施形態によれば、手作業の邪魔をすることなく、好適に触覚感度を向上させることができる。
【0060】
また、以上説明した実施形態によれば、制御部33は、一定の周波数を有する信号を圧電素子22に出力する。すなわち制御部33は、周波数を制御することがないため、制御が容易である。したがって、本実施形態によれば、容易に触覚感度を向上させることができる。
【0061】
また、以上説明した実施形態によれば、制御部33は、圧電素子22に印加する電圧の大きさを制御することにより、刺激付与部20が与える振動の強さを制御する。すなわち制御部33は、電圧の大きさを制御することにより振動の強さを制御することができるため、制御が容易である。したがって、本実施形態によれば、容易に触覚感度を向上させることができる。
【0062】
また、以上説明した実施形態によれば、知覚情報取得部32は、人物により操作される検出ボタン40が押下されたか否かの情報を取得する。また、制御部33は、検出ボタン40が押下された時点と、当該時点において刺激付与部20が与えていた振動の強さとに応じて、刺激付与部20が与える振動の強さを制御する。すなわち、本実施形態に係る触覚感度向上装置10は、一方的に刺激の強さを調整するオープン制御ではなく、出力を変化させた結果として触覚感度が向上したか否かのフィードバックに基づいた制御を行う。したがって、本実施形態によれば、好適に触覚感度を向上させることができる。
【0063】
また、以上説明した実施形態によれば、刺激付与部20Aは、人体の手の爪に配置され、知覚情報取得部32は、刺激付与部20により刺激が与えられた結果として、刺激が与えられた人物の指の腹に振動が知覚されたか否かについての情報を取得する。すなわち本実施形態によれば、触覚感度向上装置10は、対象となる人物が手作業を行う際の触覚感度を向上させる。したがって、本実施形態によれば、手の指の触覚感度を向上させることができる。
【0064】
また、以上説明した実施形態によれば、知覚情報取得部32Aは、指の腹に伝搬する振動の大きさに基づいて、刺激が与えられた人物の指の腹に振動が知覚されたか否かについての情報を取得する。すなわち本実施形態によれば、検出ボタン40を用いることなく、知覚情報PIを取得することができる。したがって、本実施形態によれば、検出ボタン40を押すという手を煩わせることなく、出力を調整することができる。また、本実施形態によれば、リアルタイムで出力値の調整を行うことができる。
【0065】
また、以上説明した実施形態によれば、刺激付与部20は、触覚を敏感にさせたい複数の場所に通じる神経が交差する位置に刺激を付与する。したがって、本実施形態によれば、触覚感度を向上させたい箇所が複数ある場合であっても、当該箇所の個数より少ない箇所に刺激を与えればよい。したがって、本実施形態によれば、装置の装着箇所が少なくてすむため、作業に与える影響が少なく、好適に触覚感度を向上させることができる。
【0066】
なお、上述した実施形態における触覚感度向上システム1が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0067】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0068】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0069】
1…触覚感度向上システム、10…触覚感度向上装置、11…スマートウォッチ、12…ベルト、20…刺激付与部、21…制御情報取得部、22…圧電素子、30…駆動部、31…調整開始情報取得部、32…知覚情報取得部、33…制御部、331…出力調整部、332…出力部、40…検出ボタン