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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040702
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】制御装置および制御システム
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
B62D6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145218
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 裕子
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC08
3D232DA03
3D232DA04
3D232DD15
3D232DE05
3D232EB04
3D232EC22
3D232EC37
3D232GG01
(57)【要約】
【課題】操作部の操作に対して、運転者が覚える違和感を低減することが可能な移動体の転舵輪の制御装置および制御システムを提供する。
【解決手段】実施形態の一態様に係る制御装置においては、操作部に対する操作量に応じて移動体の転舵輪を制御するコントローラを備える。コントローラは、操作量に基づき、転舵輪の実舵角が操作量に応じて設定された目標舵角になるように転舵輪を制御する。そして、コントローラは、実舵角が目標舵角に対して予め設定された基準値に到達する前に、操作部に対し追加操作が行われた場合、当該追加操作に応じた目標舵角の変更を制限する。
【選択図】図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部に対する操作量に応じて移動体の転舵輪を制御するコントローラを備えた制御装置であって、
前記コントローラは、
前記操作量に基づき、前記転舵輪の実舵角が前記操作量に応じて設定された目標舵角になるように前記転舵輪を制御し、
前記実舵角が前記目標舵角に対して予め設定された基準値に到達する前に、前記操作部に対し追加操作が行われた場合、当該追加操作に応じた前記目標舵角の変更を制限する、
制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記実舵角が前記基準値に到達する前に前記追加操作が行われた場合、当該追加操作に応じた前記目標舵角の変更を行わない、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記基準値は、
前記目標舵角より小さい値である、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記実舵角が前記目標舵角に到達する前に前記追加操作が行われた場合、前記転舵輪の舵角変化量を学習し、
前記操作部が操作されて前記転舵輪を制御する際、学習した前記舵角変化量で前記転舵輪の舵角を変化させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記実舵角が前記基準値に到達する前に前記追加操作が行われた場合、前記転舵輪の舵角変化量を学習し、
前記操作部が操作されて前記転舵輪を制御する際、学習した前記舵角変化量で前記転舵輪の舵角を変化させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記舵角変化量を制限する上限ガード値を学習する、
請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記操作部の操作方向と、前記追加操作における前記操作部の操作方向とが同じ方向である場合、前記操作部が操作されて前記転舵輪を制御するとき、元の前記舵角変化量より増加させた前記舵角変化量で前記転舵輪の舵角を変化させる、
請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項8】
前記コントローラは、
前記操作部の操作方向と、前記追加操作における前記操作部の操作方向とが反対方向である場合、前記操作部が操作されて前記転舵輪を制御するとき、元の前記舵角変化量より減少させた前記舵角変化量で前記転舵輪の舵角を変化させる、
請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記舵角変化量を学習した後に、予め設定されるリセット条件が満たされた場合、変更した前記舵角変化量を元の前記舵角変化量に戻す、
請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項10】
前記コントローラは、
前記追加操作が行われた場合、前記実舵角が前記目標舵角に到達してから、前記追加操作が行われた前記操作部の操作量に応じて新たに設定された新目標舵角に到達するまでの前記転舵輪の舵角変化量を、前記目標舵角に到達するまでの前記舵角変化量に比べて減少させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項11】
前記コントローラは、
前記目標舵角と、現在の前記実舵角までの舵角の軌跡と、現在の前記実舵角から前記目標舵角に到達するまでの舵角の予定軌跡とを含む舵角情報を表示部に表示させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項12】
操作部と、
前記操作部に対する操作量に応じて移動体の転舵輪を制御するコントローラを備えた制御装置と
を含む制御システムであって、
前記コントローラは、
前記操作量に基づき、前記転舵輪の実舵角が前記操作量に応じて設定された目標舵角になるように前記転舵輪を制御し、
前記実舵角が前記目標舵角に対して予め設定された基準値に到達する前に、前記操作部に対し追加操作が行われた場合、当該追加操作に応じた前記目標舵角の変更を制限する、
制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両などの移動体において、移動体の運転状態に応じて移動体を制御する制御装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2000/046063号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、操作部に対する操作量を検出し、検出した操作量に応じて移動体の転舵輪を転舵用アクチュエータで制御する、いわゆるステアバイワイヤ方式を用いた制御装置も知られている。
【0005】
ステアバイワイヤ方式を用いた制御装置の操作部は、一般にハンドルのような転舵輪を機械的に操作する制御に比べて操作がしやすいため、急操作が行われることがある。急操作に応じた制御量で転舵しようとすると急な転舵が行われ、危険であることから、制御量に上限を設けることで、急操作が行われても、急な転舵が行われないようにしている。そのため、操作部の急操作に対して、実際の転舵が低速で行われることになり、運転者は操作部の操作に対して転舵輪の転舵が遅いと感じ、操作部の操作を追加してしまうことがある。しかし、その追加操作によって、運転者が意図した以上に車両が曲がり過ぎてしまい、運転者が違和感を覚えてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、操作部の操作に対して、運転者が覚える違和感を低減することが可能な移動体の転舵輪の制御装置および制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、制御装置において、操作部に対する操作量に応じて移動体の転舵輪を制御するコントローラを備える。前記コントローラは、前記操作量に基づき、前記転舵輪の実舵角が前記操作量に応じて設定された目標舵角になるように前記転舵輪を制御する。そして、前記コントローラは、前記実舵角が前記目標舵角に対して予め設定された基準値に到達する前に、前記操作部に対し追加操作が行われた場合、当該追加操作に応じた前記目標舵角の変更を制限する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操作部の操作に対して、運転者が覚える違和感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、実施形態に係る制御方法の概要を説明するための図である。
図1B図1Bは、実施形態に係る制御方法の概要を説明するための図である。
図1C図1Cは、実施形態に係る制御方法の概要を説明するための図である。
図2図2は、比較例における転舵輪の舵角量の変化などを示すタイムチャートである。
図3図3は、制御装置を備えた制御システムの構成例を示すブロック図である。
図4図4は、本実施形態における転舵輪の舵角量の変化などを示すタイムチャートである。
図5図5は、本実施形態における転舵輪の舵角量の変化などを示すタイムチャートである。
図6図6は、本実施形態における転舵輪の舵角量の変化などを示すタイムチャートである。
図7図7は、舵角情報の表示を説明するための図である。
図8図8は、制御装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
図9図9は、変形例における転舵輪の舵角量の変化などを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する制御装置および制御システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
<制御方法の概要>
以下では先ず、実施形態に係る制御方法の概要について図1A図1Cを参照して説明する。図1A図1Cは、実施形態に係る制御方法の概要を説明するための図である。
【0012】
なお、図1Aおよび図1Bには、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする3次元の直交座標系が示される。かかる直交座標系においては、X軸正方向が車両Aの右側、X軸負方向が車両Aの左側、Y軸正方向が車両Aの前側、Y軸負方向が車両Aの後側とされる。
【0013】
図1Aに示すように、実施形態に係る制御方法は、制御装置10によって実行される。制御装置10は、車両Aに関する各種の制御を実行する。例えば、制御装置10は、車両Aの舵角量などの制御を実行する。かかる制御装置10を含む制御システム100は、車両Aに搭載される。なお、車両Aは、移動体の一例である。
【0014】
車両Aは、例えば4つのタイヤ1を備えた四輪自動車である。以下では、車両Aにおいて左前方のタイヤ1を「左前輪1FL」、右前方のタイヤ1を「右前輪1FR」、左後方のタイヤ1を「左後輪1RL」、右後方のタイヤ1を「右後輪1RR」と記載する場合がある。左前輪1FLおよび右前輪1FRは、車軸1Fを回転軸として回転し、左後輪1RLおよび右後輪1RRは、車軸1Rを回転軸として回転する。
【0015】
なお、車両Aにあっては、例えば左前輪1FLおよび右前輪1FRが、図示しない運転者による操作部41(後述)の操作に応じて転舵する転舵輪であるが、これに限られず、左後輪1RLおよび右後輪1RRが転舵輪であってもよい。また、車両Aにあっては、例えば左前輪1FLおよび右前輪1FRが、エンジンや電動モータなどの駆動源によって回転する駆動輪であり、左後輪1RLおよび右後輪1RRが従動輪であるが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば左前輪1FLおよび右前輪1FRが従動輪、左後輪1RLおよび右後輪1RRが駆動輪であってもよいし、4つのタイヤ1全てが駆動輪であってもよい。
【0016】
なお、上記では、移動体が車両A(四輪自動車)である例を示したが、これに限定されるものではない。すなわち、移動体は、例えば三輪型や二輪型、カート型、車椅子型、立ち乗り型など様々なタイプの車両など、移動可能なものであればよい。
【0017】
制御システム100は、制御装置10と、操作装置40と、転舵装置60とを含む。制御装置10は、操作装置40(正確には操作部41(後述))と、転舵輪(ここでは左前輪1FLおよび右前輪1FR)とが機械的に分離されるステアバイワイヤ方式を用いた制御装置である。具体的には、制御装置10は、運転者による操作部41に対する操作量に応じて転舵輪の目標舵角を設定し、転舵輪の実舵角が目標舵角になるように転舵装置60を動作させて転舵輪を制御する、詳しくは転舵輪を転舵させる。
【0018】
操作装置40は、運転者の操作によって運転者が所望する車両Aの操舵方向が入力される装置であり、操作部41と、操作量センサ42とを備える。ここで、操作装置40について図1Bを参照しつつ説明する。
【0019】
図1Bに示すように、操作部41は、例えばジョイスティック(操作レバー)であり、運転者の操作によって左右方向に傾倒可能に構成される。例えば操作部41は、運転者が車両Aを右側に操舵することを所望した場合、一点鎖線で示すように、運転者によって右側に傾倒される。また、操作部41は、運転者が車両Aを左側に操舵することを所望した場合、二点鎖線で示すように、運転者によって左側に傾倒される。
【0020】
このように、本実施形態に係る操作部41は、上記したようなジョイスティックであるため、運転者は、操作部41がステアリングホイールなどである場合に比べて、操作部41を傾倒させるだけで容易に操作することが可能となり、操作性を向上させることができる。また、操作部41は、転舵輪と機械的に分離されているため、操作部41を操作する力は、操作部41が転舵輪と機械的に接続されている場合に比べて少ない力で足り、よって操作部41を容易に操作することが可能となり、操作性を向上させることができる。
【0021】
操作量センサ42は、操作部41の操作量を検出する。例えば、操作量センサ42は、操作部41の傾倒角を操作量として検出し、検出した操作量を示す信号を制御装置10へ出力する。
【0022】
図1Aの説明に戻ると、転舵装置60は、転舵輪である左前輪1FLおよび右前輪1FRの車軸1Fに設けられる。転舵装置60は、転舵輪を転舵させるための転舵用アクチュエータ61を備える。転舵用アクチュエータ61としては、電動モータを用いることができるが、これに限られず、転舵輪を転舵させることができれば油圧式などその他の動作形式のアクチュエータであってもよい。
【0023】
ところで、上記した操作部41においては、操作が容易であることから、操作部41が急に倒されるなどの急操作が行われることがある。そのため、本実施形態に係る制御装置10は、転舵輪の舵角の変化量(以下「舵角変化量」と記載)を、操作部41の操作される速度に応じた舵角変化量より少ない舵角変化量にする制御、言い換えると、舵角変化量を抑制する変化量抑制制御を実行することがある。
【0024】
より具体的には、舵角変化量を制限する上限ガード値が設けられ、操作部41の操作される速度に応じた舵角変化量(以下「操作舵角変化量」という場合がある)が上限ガード値を超えない場合、制御装置10は、操作舵角変化量に応じた舵角変化量で舵角を制御する。一方、操作舵角変化量が上限ガード値を超える場合、制御装置10は、上限ガード値で舵角を制御する。
【0025】
これにより、例えば操作部41に対して急操作がなされた場合であっても、舵角変化量が抑制されるため、転舵輪が急に転舵することを抑制することができる。なお、舵角アクチュエータをモータとした場合、舵角変化量はモータの回転速度で決まる。よって、舵角変化量を抑制することはモータの回転速度を抑制することと同義である。制御装置10は、モータの回転速度を電圧で制御する場合、モータの回転速度を制御する電圧値に上限ガード値を設ければよい。
【0026】
しかしながら、上記した変化量抑制制御によって舵角変化量が抑制されると、操作部41の操作に対して転舵輪の転舵が遅れる、すなわち車両Aの曲がりが遅れる。この車両Aの曲がりの遅れにより、運転者は操作部41をさらに操作する(傾倒させる)必要があると勘違いし、操作部41の操作を追加する追加操作が行われることがある。従来技術にあっては、かかる追加操作が行われると、目標舵角は、追加操作が行われた操作部41の操作量に応じて新たに設定された新目標舵角になるため、転舵輪は当初の目標舵角(言い換えると追加操作前の目標舵角)を超えて転舵され、結果として運転者が意図した以上に車両Aが曲がり過ぎてしまい、運転者が違和感を覚えてしまう可能性がある。
【0027】
この追加操作によって車両Aが曲がり過ぎる事象について、図2を参照しつつ詳説する。図2は、比較例における転舵輪の舵角量の変化などを示すタイムチャートである。なお、図2等のタイムチャートでは、転舵輪の実舵角を実線で示し、目標舵角を一点鎖線で示している。
【0028】
図2に示すように、時刻T0~時刻Taにおいて操作部が操作されると、比較例に係る制御装置は、操作部の操作量に応じて目標舵角B1を設定し、実舵角が目標舵角B1になるように転舵輪を制御する。なお、このときの制御装置は、変化量抑制制御によって舵角変化量を上限ガード値に抑制しているため、転舵輪の実舵角は目標舵角に徐々に近づくこととなり、操作部の操作に対して転舵輪の転舵が遅れる。
【0029】
そして、時刻Tbにおいて、運転者によって操作部の追加操作が行われると、比較例に係る制御装置は、追加操作が行われた操作部の操作量に応じた新目標舵角B2を設定する。そのため、転舵輪の実舵角は、時刻Tcにおいて当初の目標舵角B1を超えて、新目標舵角B2に近づくように制御される。すなわち、実舵角が当初の目標舵角B1(言い換えると、運転者が所望していた目標舵角B1)より大きくなり、車両Aが曲がり過ぎてしまう。そして、車両Aの曲がり過ぎに気付いた運転者は、時刻Tdにおいて操作部を戻す方向に操作することとなり、結果として車両の挙動が不安定になるおそれがある。なお、追加操作によって車両Aが曲がり過ぎる事象は、変化量抑制制御が実行されない場合、すなわち操作舵角変化量が上限ガード値を超えない場合であっても起こり得る。
【0030】
そこで、本実施形態に係る制御装置10にあっては、操作部41に対する追加操作が行われた場合であっても、操作部41の操作に対して、運転者が覚える違和感を低減することができるようにした。
【0031】
具体的には、図1Aに示すように、制御装置10は、操作部41に対する操作量を、操作量センサ42からの信号に基づいて検出する(ステップS1)。次いで、制御装置10は、検出した操作量に基づき、転舵輪の実舵角が操作量に応じて設定された目標舵角B1になるように転舵輪を制御する(ステップS2)。次いで、制御装置10は、実舵角が目標舵角B1に対して予め設定された基準値C(図1C参照)に到達する前に、運転者によって操作部41の追加操作が行われた場合、当該追加操作に応じた目標舵角の変更を制限する(ステップS3)。
【0032】
ここで、上記したステップS2,S3などの処理について、図1Cを参照しつつ詳説する。図1Cは、本実施形態における転舵輪の舵角量の変化などを示すタイムチャートである。
【0033】
図1Cに示すように、時刻T0~時刻T1において操作部41が操作されると、制御装置10は、検出した操作部41の操作量に応じて目標舵角B1を設定する。そして、制御装置10は、実舵角が目標舵角B1になるように転舵輪を制御する。ただし、操作舵角変化量が舵角変化量の上限ガード値を超えているため、制御装置10は、上限ガード値で緩やかに転舵輪を制御する。
【0034】
そして、ここでは、実舵角が目標舵角B1に対して予め設定された基準値Cに到達する前に(時刻T2)、運転者によって操作部41の追加操作が行われるものとする。上記した基準値Cは、実舵角が目標舵角B1付近まで近づいたか否かを判定する際に基準となる値である。詳しくは、制御装置10は、実舵角が基準値Cに到達している場合(実舵角が基準値C以上である場合)、実舵角が目標舵角B1付近まで近づいていると判定し、実舵角が基準値Cに到達していない場合(実舵角が基準値C未満である場合)、実舵角が目標舵角B1付近まで近づいていないと判定することができる。
【0035】
上記した基準値Cは、例えば目標舵角B1に対する、予め設定された実舵角の割合を示す値に設定される。一例として、基準値Cは、目標舵角B1に対して80%を示す値などに設定されるが、これは例示であって限定されるものではなく、任意の値に設定可能である。
【0036】
図1Cの例では、実舵角が基準値Cに到達する前に(言い換えると、実舵角が目標舵角B1付近まで近づいていない状態のときに)、操作部41の追加操作が行われことを示している。このような追加操作は、車両Aの曲がりの遅れにより、運転者が操作部41を追加で操作する必要があると勘違いしたことに起因する行動であると推定されることから、本実施形態に係る制御装置10は、追加操作に応じた目標舵角の変更を制限するようにした、言い換えると、追加操作に応じた転舵輪の制御を制限するようにした。
【0037】
具体的には、制御装置10は、追加操作が行われた操作部41の操作量に応じた新目標舵角B2を設定するが、時刻T3において、実舵角が当初の目標舵角B1に到達した後、実舵角が新目標舵角B2になるように転舵輪を制御しない(すなわち、目標舵角の変更を制限する)。言い換えると、制御装置10は、実舵角が追加操作前の目標舵角B1に到達した後、実舵角が当該目標舵角B1を維持するように、転舵輪を制御する。すなわち、制御装置10は、追加操作に応じた転舵輪の制御を禁止する。なお、実舵角が基準値Cに到達する前に追加操作が行われた場合、制御装置10は、追加操作に応じた新目標舵角B2を設定しない(すなわち、目標舵角の変更を行わない)ようにしてもよい。
【0038】
なお、追加操作に応じた転舵輪の制御を抑制した後(詳しくは禁止した後)の時刻T4において、操作部41が戻す方向に操作されると、制御装置10は、かかる操作部41の操作に応じて転舵輪を制御する。具体的には、制御装置10は、操作部41の操作量に応じて設定された目標舵角が実舵角を下回ると(時刻T5参照)、実舵角が目標舵角となるように転舵輪を制御する、別言すれば、転舵輪の制御の抑制(詳しくは禁止)を解除する。
【0039】
このように、本実施形態に係る制御装置10にあっては、実舵角が基準値Cに到達する前に、操作部41の追加操作が行われた場合、追加操作に応じた目標舵角の変更を制限するようにした。言い換えると、制御装置10にあっては、実舵角が基準値Cに到達する前に、操作部41の追加操作が行われた場合、追加操作に応じた転舵輪の制御を行わない、別言すれば禁止するようにした。
【0040】
これにより、本実施形態にあっては、操作部41に対する追加操作が行われた場合であっても、操作部41の操作に対して、運転者が覚える違和感を低減することができる。すなわち、本実施形態においては、操作部41に対する追加操作が行われた場合であっても、転舵輪は当初の目標舵角B1(言い換えると追加操作前の目標舵角B1)を超えて転舵されることがないため、運転者が意図した以上に車両Aが曲がり過ぎてしまうことを抑制することができ、よって運転者が覚える違和感を低減することができる。
【0041】
<制御システムの構成>
次に、実施形態に係る制御装置10を備えた制御システム100の構成について、図3を用いて説明する。
【0042】
図3は、制御装置10を備えた制御システム100の構成例を示すブロック図である。なお、図3のブロック図では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0043】
換言すれば、図3のブロック図に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0044】
図3に示すように、制御システム100は、制御装置10と、操作量センサ42と、転舵角センサ50と、転舵装置60と、表示部70とを備える。
【0045】
操作量センサ42は、上記したように、操作部41の操作量を検出し、検出した操作量を示す信号を制御装置10へ出力する。転舵角センサ50は、転舵輪の転舵角(すなわち実舵角)を検出する。転舵角センサ50は、検出した実舵角を示す信号を制御装置10へ出力する。
【0046】
転舵装置60は、上記したように転舵用アクチュエータ61(図1A参照)などを含み、制御装置10からの指示に応じて転舵輪を転舵させる。
【0047】
表示部70は、例えば車両Aに搭載された液晶ディスプレイなどの表示装置である。表示部70は、目標舵角や現在の実舵角までの舵角の軌跡などを含む舵角情報を表示するが、これについては図7を参照して後述する。
【0048】
制御装置10は、コントローラ(制御部)20と、記憶部30とを備える。記憶部30は、例えば、不揮発性メモリやデータフラッシュ、ハードディスクドライブといった記憶デバイスで構成される記憶部である。かかる記憶部30には、学習情報31および各種プログラムなどが記憶される。
【0049】
学習情報31は、後述するように、追加操作が行われたときの転舵輪の舵角変化量等が学習され、かかる学習の学習結果を示す情報である。学習情報31には、舵角変化量の上限ガード値に対する学習値、モータの制御量に対する学習値や、追加操作が行われたタイミングなどを示す情報が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0050】
コントローラ20は、検出部21と、転舵制御部22と、学習部23と、表示制御部24とを備え、転舵輪の制御や表示部70の制御などを行う。コントローラ20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0051】
コンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、コントローラ20の検出部21、転舵制御部22、学習部23および表示制御部24として機能する。また、コントローラ20の検出部21、転舵制御部22、学習部23および表示制御部24の少なくともいずれか一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0052】
コントローラ20の検出部21は、操作部41に対する操作量を、操作量センサ42からの信号に基づいて検出する。また、検出部21は、転舵輪の実舵角を、転舵角センサ50からの信号に基づいて検出する。そして、検出部21は、検出された操作部41の操作量および転舵輪の実舵角を示す情報を転舵制御部22へ出力する。
【0053】
転舵制御部22は、操作部41の操作量および転舵輪の実舵角に基づいて、転舵輪を制御する。具体的には、転舵制御部22は、転舵輪の実舵角が操作量に応じて設定された目標舵角B1(図1C参照)になるように転舵輪を制御する。
【0054】
このとき、転舵制御部22は、上記した変化量抑制制御を実行する。具体的には、転舵制御部22は、舵角変化量を上限ガード値以下に抑えることで、舵角変化量を、操作部41の操作される速度に応じた舵角変化量より少ない舵角変化量にする制御を実行する。
【0055】
そして、転舵制御部22は、実舵角が基準値C(図1C参照)に到達する前に(言い換えると、実舵角が目標舵角B1付近まで近づいていない状態のときに)、運転者によって操作部41の追加操作が行われたか否かを判定する。
【0056】
また、転舵制御部22は、実舵角が基準値Cに到達する前に、操作部41の追加操作が行われたと判定された場合、追加操作に応じた目標舵角の変更を制限する。例えば、転舵制御部22は、追加操作に応じた目標舵角の変更を行わないようにするなどして、追加操作に応じた転舵輪の制御を行わない(別言すれば禁止する)。言い換えると、転舵制御部22は、当該追加操作を受け付けないようにする。
【0057】
これにより、本実施形態にあっては、操作部41に対する追加操作が行われた場合であっても、操作部41の操作に対して、転舵輪を適切に制御することができる。詳しくは、本実施形態においては、操作部41に対する追加操作が行われた場合であっても、転舵輪は当初の目標舵角B1(図1C参照)を超えて転舵されることがなく、結果として車両Aが曲がり過ぎてしまうことを抑制することができ、運転者が覚える違和感を低減することができる。
【0058】
また、基準値Cは、上記したように、実舵角が当初の目標舵角B1付近まで近づいたか否かを判定する際に基準となる値に設定される。具体的には、基準値Cは、目標舵角B1に対する、予め設定された実舵角の割合(例えば80%)を示す値に設定される。
【0059】
これにより、本実施形態にあっては、基準値Cを簡易に設定することが可能となり、また、かかる基準値Cを用いることで、実舵角が目標舵角B1付近まで近づいたか否かを容易に判定することが可能になる。
【0060】
なお、基準値Cは、上記した割合を示す値に限られず、例えば目標舵角B1より小さい値に設定されてもよい。一例としては、基準値Cは、目標舵角B1から所定舵角(例えば10度)減算した値に設定されてもよい。なお、所定舵角は、例えば目標舵角B1から減算したときの値(基準値C)が目標舵角B1付近に近づいたと推定できるような値に設定されるが、これに限定されるものではなく、任意の値に設定可能である。
【0061】
このように、本実施形態にあっては、基準値Cを目標舵角B1より小さい値とすることで、基準値Cを簡易に設定することが可能となり、また、かかる基準値Cを用いることで、実舵角が目標舵角B1付近まで近づいたか否かを容易に判定することが可能になる。
【0062】
一方、転舵制御部22は、実舵角が基準値Cに到達した後に、操作部41の追加操作が行われたと判定された場合、当該追加操作に応じた転舵輪の制御を実行する。これについて、図4を参照して詳説する。図4は、本実施形態における転舵輪の舵角量の変化などを示すタイムチャートである。
【0063】
図4に示すように、時刻T0~時刻T11において操作部41が操作されると、転舵制御部22は、操作部41の操作量に応じて目標舵角B1を設定する。そして、転舵制御部22は、実舵角が目標舵角B1になるように転舵輪を制御する。
【0064】
次いで、時刻T12において実舵角が基準値Cに到達し、その後、運転者によって操作部41の追加操作が行われるものとする(時刻T13参照)。すなわち、実舵角が目標舵角B1付近まで近づいた状態で追加操作が行われていることから、かかる追加操作は、運転者が車両Aを目標舵角B1よりさらに転舵させることを所望したことに起因する行動であると推定される。言い換えると、このときの追加操作は、車両Aの曲がりの遅れなどで運転者が操作部41を追加で操作する必要があると勘違いしたことに起因する行動ではないと推定される。
【0065】
従って、転舵制御部22は、実舵角が目標舵角B1に到達した後(時刻T14参照)、追加操作によって新たに設定された新目標舵角B2になるまで転舵輪を制御する(時刻T15参照)。
【0066】
このように、本実施形態に係る制御装置10にあっては、実舵角が基準値Cに到達した後に、操作部41の追加操作が行われた場合、追加操作に応じた転舵輪の制御を実行するようにした。
【0067】
これにより、本実施形態にあっては、操作部41に対する追加操作が行われた場合であっても、操作部41の操作に対して、転舵輪を適切に制御することができる。すなわち、本実施形態においては、運転者が車両Aをさらに転舵させることを所望していると推定された場合に、追加操作に応じた転舵輪の制御を実行することで、転舵輪を運転者の意図に即して適切に制御することができる。
【0068】
なお、転舵制御部22は、上記した追加操作が所定の操作量範囲内で微小な操作である場合、当該追加操作に応じた転舵輪の制御を禁止する、言い換えると、当該追加操作を受け付けないようにしてもよい。すなわち、追加操作が微小な操作である場合、追加操作は、例えば運転者の手が操作部41に当たったことなどに起因すると推定される、言い換えると、運転者が車両Aをさらに転舵させることを所望した操作ではないと推定される。
【0069】
従って、転舵制御部22は、追加操作が所定の操作量範囲内で微小な操作である場合、当該追加操作に応じた転舵輪の制御を禁止することで、転舵輪が運転者の意図に反して制御されることを防止することができる。なお、所定の操作量範囲は、例えば追加操作が、運転者の意図しない微小な操作であると推定できる範囲に設定されるが、これに限られず、任意の範囲に設定可能である。
【0070】
学習部23は、追加操作が行われた場合に転舵輪の舵角変化量等を学習する。例えば、学習部23は、実舵角が目標舵角B1に到達する前に追加操作が行われた場合、運転者にとって実舵角の変化量が小さいと感じていると判断し、当該追加操作が行われたときの転舵輪の舵角変化量を増大するよう学習する。すなわち、学習部23は、追加操作が行われた場合、追加操作に応じた転舵輪の制御を実行するか否かに関わらず、転舵輪の舵角変化量を学習する。具体的には、学習部23は、舵角変化量の学習値として、上限ガード値に加算または乗算する値を記憶している。学習値を加算値とする場合、初期値は0である。学習値を乗算値とする場合、初期値は1.0である。実舵角が目標舵角B1に到達する前に追加操作が行われた場合、学習部23は、学習値を所定量増大して新たな学習値として更新する。
【0071】
そして、学習部23は、更新した学習値を、記憶部30に学習情報31として記憶する。そして、転舵制御部22は、次回以降に転舵輪を制御するとき、かかる学習情報31を用いて転舵輪の制御を実行する。具体的には、転舵制御部22は、上限ガード値に学習値を加算または乗算した値を上限ガード値として転舵輪の制御を実行する。
【0072】
なお、学習部23は、転舵用のモータの回転速度を制御する制御量を学習してもよい。その場合、学習部23は、学習値として、当該制御量に加算または乗算する値を採用すればよい。学習方法は、上限ガード値の学習と同様である。学習部23は、上限ガード値およびモータの制御量のいずれか一方を学習してもよく、両方を学習してもよい。学習部23は、実舵角が目標舵角B1に到達する前に追加操作が行われた場合、実舵角の変化量が上限ガード値に達していなければ、すなわち変化量抑制制御が行われていなければ、モータの制御量を学習し、実舵角の変化量が上限ガード値に達していれば、すなわち変化量抑制制御が行われていれば、上限ガード値を学習するようにしてもよい。
【0073】
この学習情報31を用いた転舵輪の制御について、図5および図6を参照して詳説する。図5および図6は、本実施形態における転舵輪の舵角量の変化などを示すタイムチャートである。なお、図5および図6では、次回以降の転舵輪の実舵角を二点鎖線で示している。
【0074】
先ず図5について説明すると、学習部23は、実舵角が目標舵角B1に到達する前に追加操作が行われた場合(時刻T22参照)、当該追加操作が行われたときの転舵輪の舵角変化量Daを学習し、前述の通り、学習値を増大して更新記憶する、すなわち学習値を記憶部30に学習情報31として記憶する。
【0075】
そして、転舵制御部22は、次回以降に操作部41が操作されて転舵輪を制御する際、学習情報31を読み出し、二点鎖線で示す実舵角のように、学習した舵角変化量D1で転舵輪の舵角を変化させる。
【0076】
具体的には、転舵制御部22は、操作部の操作方向と、追加操作における操作部41の操作方向とが同じ方向である場合(時刻T22参照)、次回以降に操作部41が操作されて転舵輪を制御するとき、元の舵角変化量Daより増加させた舵角変化量D1で転舵輪の舵角を変化させる。すなわち、上限ガード値を学習する場合、上限ガード値が増大補正されることにより、舵角変化量はDaからD1に増大する。
【0077】
これにより、本実施形態にあっては、次回以降の操作部41の操作に対して、転舵輪を適切に制御することができる。すなわち、本実施形態においては、実舵角が目標舵角B1に到達する前に追加操作が行われた場合(ここでは、追加操作の操作方向が当初の操作部41の操作方向と同じである場合)、運転者は、車両Aの転舵が遅いと感じていると推定される。そこで、本実施形態に係る転舵制御部22は、次回以降、舵角変化量Daとは異なる舵角変化量D1、詳しくは、元の舵角変化量Daより増加させた舵角変化量D1で転舵輪の舵角を変化させるようにした。これにより、車両Aを、当初の舵角変化量Daを用いた場合に比べて早期に転舵させることが可能となり、よって転舵輪を運転者の感覚に即して適切に制御することができる。
【0078】
なお、以上の説明では、学習値の反映を次回の転舵時としたが、追加操作が行われた直後から学習値を反映してもよい。その場合、図5で追加操作が行われた時刻T22以降に舵角変化量がDaからD1に変化することになる。
【0079】
他方、図6に示すように、転舵制御部22は、操作部の操作方向と、追加操作における操作部41の操作方向とが反対方向である場合(時刻T32参照)、次回以降に操作部41が操作されて転舵輪を制御するとき、元の舵角変化量Daより減少させた舵角変化量D2で転舵輪の舵角を変化させる。すなわち、上限ガード値を学習する場合、上限ガード値が減少補正されることにより、舵角変化量はDaからD2に減少する。
【0080】
これにより、本実施形態にあっては、次回以降の操作部41の操作に対して、転舵輪を適切に制御することができる。すなわち、本実施形態においては、実舵角が目標舵角B1に到達する前に追加操作が行われた場合(ここでは、追加操作の操作方向が当初の操作部41の操作方向と反対である場合)、運転者は、車両Aの転舵が早いと感じていると推定される。そこで、本実施形態に係る転舵制御部22は、次回以降、舵角変化量Daとは異なる舵角変化量D2、詳しくは、元の舵角変化量Daより減少させた舵角変化量D2で転舵輪の舵角を変化させるようにした。これにより、車両Aを、当初の舵角変化量Daを用いた場合に比べてゆっくり転舵させることが可能となり、よって転舵輪を運転者の感覚に即して適切に制御することができる。
【0081】
なお、ここでも、追加操作が行われた直後から学習値を反映してもよい。その場合、図6で追加操作が行われた時刻T32以降に舵角変化量がDaからD2に変化することになる。また、学習部23は、舵角変化量Daよりも大きい舵角変化量D1と、舵角変化量Daより小さい舵角変化量D2を個別に記憶してもよい。
【0082】
なお、上記では、学習部23は、実舵角が目標舵角B1に到達する前に追加操作が行われた場合に転舵輪の舵角変化量を学習するようにしたが、これに限定されるものではない。
【0083】
具体的には、学習部23は、実舵角が基準値Cに到達する前に追加操作が行われた場合、転舵輪の舵角変化量を学習する。すなわち、学習部23は、追加操作が行われ、追加操作に応じた目標舵角の変更を制限した場合、転舵輪の舵角変化量を学習する。
【0084】
そして、転舵制御部22は、次回以降に操作部41が操作されて転舵輪を制御するとき、舵角変化量Daとは異なる、学習した舵角変化量(図5の舵角変化量D1あるいは図6の舵角変化量D2)で転舵輪の舵角を変化させる。
【0085】
これにより、本実施形態にあっては、次回以降の操作部41の操作に対して、転舵輪を適切に制御することができることは、既に述べた通りである。
【0086】
また、上記したように、次回以降の転舵輪の制御において、舵角変化量Daとは異なる舵角変化量D1,D2に変更した場合、かかる変更した舵角変化量が運転者の感覚に即さない(合致しない)ことも考えられる。
【0087】
そこで、本実施形態にあっては、変更した舵角変化量D1,D2を、例えば運転者の要求などに応じて元の舵角変化量Daに戻すことができるようにした。
【0088】
具体的には、図3に破線で示すように、制御装置10には、リセットスイッチ80が通信可能に接続される。リセットスイッチ80は、変更した舵角変化量D1,D2を元の舵角変化量Daに戻すことを運転者が要求する場合に、運転者によって操作される。
【0089】
そして、転舵制御部22は、舵角変化量を学習した後に(ここでは、舵角変化量Daとは異なる舵角変化量D1,D2に変更した後に)、予め設定されるリセット条件が満たされた場合(ここでは、リセットスイッチ80が操作された場合)、変更した舵角変化量D1,D2を元の舵角変化量Daに戻すようにした。具体的には、転舵制御部22は、リセット条件が満たされた場合、記憶部30に記憶された上限ガード値やモータの制御量に対する学習値を初期値に戻す。
【0090】
このように、本実施形態にあっては、変更した舵角変化量D1,D2を、例えば運転者の要求などに応じて元の舵角変化量Daに戻すことができるようにし、よって舵角変化量を運転者の感覚に即した値(ここでは舵角変化量Da)にすることが可能になる。
【0091】
なお、上記では、リセット条件が、リセットスイッチ80が操作された場合に設定されるが、これに限定されるものではない。
【0092】
表示制御部24は、舵角情報を表示部70に表示させる制御を行う。この舵角情報の表示について、図7を参照して説明する。図7は、舵角情報の表示を説明するための図である。
【0093】
図7に示すように、表示制御部24は、舵角情報を表示部70に表示させる。舵角情報には、目標舵角Eと、現在の実舵角までの舵角の軌跡Fと、現在の実舵角から目標舵角に到達するまでの舵角の予定軌跡Gとが含まれる。なお、舵角情報には、現在の実舵角を示すマーク71やメッセージ72が含まれてもよい。
【0094】
このように、本実施形態においては、舵角情報を表示部70に表示させることで、運転者に対して、例えば現在の実舵角が目標舵角に対してどの程度近づいているのか、舵角が将来どのように変化するのかなど、転舵輪の操舵の状況を把握させることが可能となる。また、転舵輪の操舵の状況を把握させることで、車両Aの曲がりの遅れなどで運転者が操作部41を追加で操作する必要があると勘違いすることを抑制することも可能となる。
【0095】
<実施形態に係る制御装置の制御処理>
次に、制御装置10における具体的な処理手順について図8を用いて説明する。図8は、制御装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0096】
図8に示すように、制御装置10のコントローラ20は、操作部41に対する操作量を検出する(ステップS10)。次いで、コントローラ20は、検出した操作量に基づき、転舵輪の実舵角が目標舵角になるように転舵輪を制御する(ステップS11)。
【0097】
次いで、コントローラ20は、操作部41に対して追加操作が行われたか否かを判定する(ステップS12)。コントローラ20は、操作部41に対して追加操作が行われていないと判定された場合(ステップS12,No)、そのまま処理を終了する。
【0098】
コントローラ20は、操作部41に対して追加操作が行われたと判定された場合(ステップS12,Yes)、実舵角が基準値C以上であるか否かを判定する(ステップS13)、すなわち、実舵角が基準値Cに到達しているか否かを判定する。
【0099】
コントローラ20は、実舵角が基準値C以上ではないと判定された場合(ステップS13,No)、すなわち、実舵角が基準値C未満で基準値Cに到達していないと判定された場合、追加操作に応じた目標舵角の変更を制限する(ステップS14)、言い換えると追加操作に応じた転舵輪の制御を制限する。
【0100】
他方、コントローラ20は、実舵角が基準値C以上であると判定された場合(ステップS13,Yes)、すなわち、実舵角が基準値Cに到達していると判定された場合、追加操作に応じた転舵輪の制御を実行する(ステップS15)。
【0101】
上述してきたように、実施形態に係る制御装置10は、操作部41に対する操作量に応じて車両A(移動体の一例)の転舵輪を制御するコントローラ20を備える。コントローラ20は、操作量に基づき、転舵輪の実舵角が操作量に応じて設定された目標舵角B1になるように転舵輪を制御する。そして、コントローラ20は、実舵角が目標舵角B1に対して予め設定された基準値Cに到達する前に、操作部41に対し追加操作が行われた場合、当該追加操作に応じた目標舵角の変更を制限する。これにより、操作部41の操作に対して、運転者が覚える違和感を低減することができる。
【0102】
<変形例>
次いで、上記した実施形態に係る制御装置10の変形例について説明する。図9は、制御装置10の変形例を説明するための図であり、変形例における転舵輪の舵角量の変化などを示すタイムチャートである。なお、以下においては、実施形態と共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0103】
上記した実施形態では、転舵制御部22は、追加操作が行われた場合における転舵輪の制御の制限として、当該追加操作に応じた転舵輪の制御を禁止するようにしたが、変形例では、転舵輪の制御の制限として、追加操作に応じた転舵輪の制御の際の舵角変化量を減少させるようにした。
【0104】
具体的には、図9に示すように、転舵制御部22は、追加操作が行われた場合(時刻T42参照)、実舵角が目標舵角B1に到達してから、追加操作が行われた操作部41の操作量に応じて新たに設定された新目標舵角B2に到達するまで(時刻T43~T44)の転舵輪の舵角変化量J2を、目標舵角B1に到達するまでの舵角変化量J1に比べて減少させる。
【0105】
すなわち、転舵制御部22は、実舵角が目標舵角B1から新目標舵角B2になるまでの間、転舵輪を目標舵角B1に到達するまでに比べて遅く(ゆっくり)転舵されるようにした。
【0106】
これにより、変形例にあっては、操作部41に対する追加操作が行われた場合であっても、操作部41の操作に対して、転舵輪を適切に制御することができる。すなわち、変形例においては、例えば車両Aの曲がりの遅れなどで運転者が操作部41を追加で操作する必要があると勘違いしたことによって追加操作が行われた場合であっても、転舵輪の実舵角は新目標舵角B2に到達するまでゆっくり変化するため、運転者が操作部41を慌てて戻すなどの操作が行われることを抑制することが可能になる。
【0107】
なお、上記では、操作部41がジョイスティックである例を示したが、これに限定されるものではなく、例えばステアリングホイールなどその他の種類の操作部であってもよい。また、上記では、操作部41が車両Aに搭載される例を示したが、これに限定されるものではない。すなわち、操作部41が車両Aに搭載されないリモートコントローラであり、車両Aを遠隔で操作する構成であってもよい。
【0108】
また、上記の構成は、転舵の制御について説明したものであったが、速度の制御に用いられてもよい。例えば、ジョイスティックを前後に倒して前進および後退の制御を行う車両において、コントローラ20は、操作部41に対する操作量を検出し、検出した操作量に基づき、車両Aの速度が操作量に応じて設定された目標速度になるように駆動用モータを制御する。そして、コントローラ20は、車両Aの速度が目標速度に対して予め設定された基準値に到達する前に、運転者によって操作部41の操作を追加する追加操作が行われた場合、目標速度を変更しないことで、車両Aの速度を適切に制御する構成であってもよい。
【0109】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0110】
10 制御装置
20 コントローラ
41 操作部
100 制御システム
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9