(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040703
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】吊りカバー装置、および精密電子機器の据え付け工法
(51)【国際特許分類】
B66C 1/10 20060101AFI20240318BHJP
E04H 15/04 20060101ALI20240318BHJP
E04H 5/02 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B66C1/10 B
E04H15/04
E04H5/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145219
(22)【出願日】2022-09-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飛騨 隆道
(72)【発明者】
【氏名】猿田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 研也
(72)【発明者】
【氏名】川竹 裕顯
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一平
【テーマコード(参考)】
2E141
3F004
【Fターム(参考)】
2E141AA01
3F004EA40
3F004KA03
3F004ZZ00
(57)【要約】
【課題】吊りカバー装置が風に煽られることを抑制する。
【解決手段】実施形態に係る吊りカバー装置は、吊金具とエアービームと上部シートと、を備える。吊金具は、支柱部と、支柱部の上端に位置してクレーンへ掛止される掛止部と、支柱部の下端に位置する荷吊用の吊部と、を有する。エアービームは、吊金具に吊り下げられ、空気圧に応じて伸縮可能である。上部シートは、上端が支柱部の下端に止着され、内側がエアービームに支持され、下端がエアービームの下方に垂下し、エアービームの下方に垂下したときに下面が開口した筒状になる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱部と、前記支柱部の上端に位置してクレーンへ掛止される掛止部と、前記支柱部の下端に位置する荷吊用の吊部と、を有する吊金具と、
前記吊金具に吊り下げられ、空気圧に応じて伸縮可能であるエアービームと、
上端が前記支柱部の下端に止着され、内側が前記エアービームに支持され、下端が前記エアービームの下方に垂下し、前記エアービームの下方に垂下したときに下面が開口した筒状になる上部シートと、
を備える吊りカバー装置。
【請求項2】
前記エアービームは、
伸縮可能に形成された複数の蛇腹部と、
前記蛇腹部を接続する複数の接続部と、
を有し、
前記接続部は、前記接続部により接続された2つの蛇腹部のなす角度を変更可能な素材で形成されており、
前記蛇腹部は、伸縮することで前記蛇腹部の長さを変更可能である、
請求項1に記載の吊りカバー装置。
【請求項3】
前記エアービーム内に空気を送風する送風機を有し、
前記エアービームは、前記送風機から送風される空気の空気圧に応じて伸縮可能である、
請求項1または2に記載の吊りカバー装置。
【請求項4】
前記送風機は、空気の吸い込み口と空気の排出口との間にフィルタを有することで、空気の清浄機能を有する、
請求項3に記載の吊りカバー装置。
【請求項5】
前記エアービームに着脱自在に取り付けられ、前記エアービームの下方に、下面が開口した筒状の空間を形成する下部シートを有する、
請求項1に記載の吊りカバー装置。
【請求項6】
前記下部シートは、複数の切りかけ部を有することで、複数の切りかけ部に挟まれた領域を開閉可能である、
請求項5に記載の吊りカバー装置。
【請求項7】
前記下部シートは、メッシュ状の素材で形成されている、
請求項5または6に記載の吊りカバー装置。
【請求項8】
前記吊金具は、前記支柱部を覆う傘部を前記支柱部の上端に有する、
請求項1に記載の吊りカバー装置。
【請求項9】
支柱部と、前記支柱部の上端に位置してクレーンへ掛止される掛止部と、前記支柱部を覆う傘部と、前記支柱部の下端に位置する荷吊用の吊部と、を有する吊金具と、
前記吊金具に吊り下げられ、空気圧に応じて伸縮可能であるエアービームと、
上端が前記傘部の下側に止着され、内側が前記エアービームに支持され、下端が前記エアービームの下方に垂下し、前記エアービームの下方に垂下したときに下面が開口した筒状になる上部シートと、
を備える吊りカバー装置を使用して精密電子機器を吊り上げる工程を含む、
精密電子機器の据え付け工法。
【請求項10】
吊りカバー装置を使用して精密電子機器をクレーンへ取り付け時、もしくは、前記精密電子機器の接続作業時に、前記吊りカバー装置のエアービームを伸長して、前記吊りカバー装置で前記精密電子機器の作業場所を覆う工程と、
前記クレーンにより前記精密電子機器を吊り上げ時、もしくは、前記クレーンにより前記精密電子機器を運搬時に、前記吊りカバー装置の前記エアービームを萎縮して、前記吊りカバー装置で前記精密電子機器を包み込む工程と、
を含む、
請求項9に記載の精密電子機器の据え付け工法。
【請求項11】
前記エアービームは、伸縮可能に形成された複数の蛇腹部と、前記蛇腹部を接続する複数の接続部と、を有しており、
前記接続部により接続された2つの蛇腹部のなす角度を変更することで前記エアービームの形状を変更する工程と、
前記蛇腹部を伸縮することで前記蛇腹部の長さを変更することで前記エアービームの大きさを変更する工程と、
の少なくともいずれか一つの工程を含む、
請求項9または10に記載の精密電子機器の据え付け工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊りカバー装置、および精密電子機器の据え付け工法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い絶縁性が要求されるGIS(Gas Insulated Switchgear:ガス絶縁開閉装置)のような精密電子機器は、現地での据え付け工事において、防塵管理や湿度管理が必要である。特に、屋外での作業開始に当たっては、周囲のダストカウントや湿度を測定し、一定の基準値以内であることを確認したのちに、作業を開始するのが一般的である。変電所でのGISの据え付け作業や点検作業において行われる分解組み立て作業における基準値を例にすると、作業可能なダストカウントの基準値は20cpm以下、湿度の基準値は80%以下に設定されている。また、一般的に、雨天の場合、作業が中止となる。
【0003】
したがって、雨が降るか降らないかの判断が困難な場合には、工場から派遣された品質管理員が、現地で作業開始の可否を決定する。作業中に雨が降ることを避けるため、作業員やクレーン車等の据え付け用重機が作業することなく待機する時間が増え、工事の工程に支障をきたすこともある。無理に工事を開始して作業中に雨が降った場合、品質上の問題が発生し、場合によってはGISを出荷元の工場に持ち帰ることになり、さらに工事の工程遅延が大きくなることもある。
【0004】
工事の工程遅延を抑制するとともに、防塵・防湿・防水問題を回避するために、工事対象物であるGIS等の精密電子機器の吊り上げ装置に、傘となる吊りカバー装置を取り付ける提案もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の吊りカバー装置では、防塵・防湿・防水問題を回避するために、上部シートと下部シートを使用し、上部シートおよび下部シートで覆われた空間内でGISのクレーンへの取り付け作業等を行うことができるようにしている。これにより、仮に作業中に雨が降ってきたとしても、GISを出荷元の工場に持ち帰るような品質上の問題が発生することを抑制している。特許文献1に記載の吊りカバー装置では、リング状のフレームを使用して上部シートおよび下部シートを広げることで、上部シートと下部シートで覆われた空間内でGISのクレーンへの取り付け作業等を行うことができるようにしている。しかしながら、リング状のフレームは鋼鉄で作成されているので、フレームそのものが重量物となるため、重量物の下での作業は好ましくないとする安全上の問題が発生することもある。
【0007】
特許文献1に記載の吊りカバー装置では、リング状のフレームの大きさおよび形状に応じて上部シートと下部シートで覆われた空間の形状と大きさが決定される。したがって、リング状のフレームは、その作業に必要な空間に応じた形状と大きさで作られている。リング状のフレームは大きさおよび形状を変更できないので、GISのクレーンへの取り付け作業時とGISの吊り上げ時およびGISの運搬時で、上部シートと下部シートで覆われた空間の形状と大きさを変えることはできない。上部シートと下部シートで覆われた空間がGISのクレーンへの取り付け作業に必要な大きさのままでGISの吊り上げおよび運搬を行うと、上部シートと下部シートが風に煽られ、作業上の危険を招くことがある。
【0008】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、吊りカバー装置が風に煽られることを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための実施形態に係る吊りカバー装置は、吊金具とエアービームと上部シートとを備える。吊金具は、支柱部と、支柱部の上端に位置してクレーンへ掛止される掛止部と、支柱部の下端に位置する荷吊用の吊部と、を有する。エアービームは、吊金具に吊り下げられ、空気圧に応じて伸縮可能である。上部シートは、上端が支柱部の下端に止着され、内側がエアービームに支持され、下端がエアービームの下方に垂下し、エアービームの下方に垂下したときに下面が開口した筒状になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る吊りカバー装置の構成図である。
【
図3】実施形態に係るエアービームの平面図である。
【
図4】実施形態に係るエアービームの側面図である。
【
図5】実施形態に係るエアービームの蛇腹部について説明するための図である。
【
図6】実施形態に係るエアービームの蛇腹部について説明するための図である。
【
図7】実施形態に係るエアービームについて説明するための図である。
【
図8】実施形態に係る下部シートについて説明するための図である。
【
図9】実施形態に係る送風機について説明するための図である。
【
図10】実施形態に係る吊りカバー装置の使用例について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る吊りカバー装置について、図を参照して説明する。説明にあたっては、相互に直行するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を適宜用いる。ここでは、実施形態に係る吊りカバー装置を使用してクレーンで、高い絶縁性が要求される精密電子機器を運搬する場合を例にして説明する。また、精密電子機器がGIS(Gas Insulated Switchgear:ガス絶縁開閉装置)である場合を例にして説明する。
【0012】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る吊りカバー装置の構成図である。吊りカバー装置1は、吊金具10、エアービーム30、上部シート40、下部シート45、送風機50、蓄電池55を有する。送風機50と蓄電池55は、吊金具10に固定されている。
【0013】
図2は、吊金具10のイメージ図である。吊金具10は、支柱部11、掛止部12、傘部13、吊部14、フランジ部17、取り付け部18を有する。吊金具10は、軽くて丈夫であり安価な素材で形成されることが望ましい。吊金具10は、例えば、鉄、アルミニューム、チタン、マグネシウム等、もしくはこれらの合金で形成されている。
【0014】
支柱部11は、Z軸方向に縦長な形状をしている。掛止部12は、クレーンのフック100に掛止されるリング状の部材である。掛止部12は、支柱部11の上端に位置し、支柱部11に回動自在に取り付けられている。傘部13は、上面視が円形であり+Z方向に行くほど直径が狭くなる円錐台状の部材である。傘部13は、支柱部11および送風機50と蓄電池55とを覆うように支柱部の上端に設けられている。傘部13は、送風機50等が雨に濡れることを防止する。また、傘部13は、上部シート40で覆われた空間内に雨水が侵入することを防止する。また、傘部13は、重機の吊りワイヤからグリス等が落下した際に送風機50等が汚れることを防止する。また、傘部13は、落下したグリスが上部シート40に付着することを低減する。なお、傘部13は、上記の機能を有していればよく、その形状は限定されない。吊部14は、GIS等を吊り下げるための荷吊用の部材である。吊部14は、例えば、フックで構成されている。吊部14は、支柱部11の下部中央に回動自在に設けられている。
【0015】
フランジ部17は、
図1に示すように、支柱部11の下端に設けられている。フランジ部17は、上部円形部材171(
図2では記載を省略)と下部円形部材172が柱状部材173により接続された部材である。上部円形部材171および下部円形部材172の直径は、柱状部材173の直径よりも大きいので、上部円形部材171と下部円形部材172との間には、窪み部175がある。上部円形部材171および下部円形部材172の直径は、傘部13の直径よりも小さい。フランジ部17は、支柱部11の下端に設けられている。フランジ部17の下部円形部材172の下側には、取付穴19を有する複数の取り付け部18が設けられている。
図2に示す例では、取り付け部18は、フランジ部17の下面に放射状に配置されている。
【0016】
図1に戻り、エアービーム30は、中空でリング状の部材である。エアービーム30は、送風機50によって内部に送風される空気の空気圧に応じて伸縮可能な部材である。
図3は、エアービーム30の平面図である。
図4は、エアービーム30の側面図である。エアービーム30は、複数の蛇腹部31と、蛇腹部31を接続する複数の接続部32を有する。
【0017】
図5および
図6は、蛇腹部31について説明するための図である。
図5は、X軸方向に伸長した状態の蛇腹部31の断面図である。
図6は、X軸方向にある程度萎縮した状態の蛇腹部31の断面図である。
図5および
図6に示すように、蛇腹部31は、骨部311と幕部313を有している。
図5および
図6では、1つの蛇腹部31が5個の骨部311を有している場合を示しているが、1つの蛇腹部31が有する骨部311の数は制限されない。例えば、1つの蛇腹部31が50個乃至100個の骨部311を有していてもよい。
【0018】
骨部311は、リング状のワイヤで形成されている。ワイヤは、軽くて丈夫であり安価な素材で形成されることが望ましい。ワイヤは、例えば、鉄、アルミニューム、チタン、マグネシウム等、もしくはこれらの合金で形成されている。幕部313は、骨部311を覆うように、骨部311の周囲に固定されている。幕部313は、気密性が高いが空気が通過することができる素材(ある程度の通気性がある素材)で形成されている。幕部313は、例えば、ポリエチレンやナイロン等の素材で形成されている。幕部313の通気性の度合いは、送風機50の送風量と、送風機50の送風を止めた際の幕部313から空気が抜ける速さとを勘案して決められる。例えば、幕部313の通気性の度合いは、幕部313の材質、幕部313の厚さ、もしくは、幕部313を構成する所定の厚さの布を2重とか3重に重ねることで調整することができる。また、幕部313には、作業現場の周囲の機器やGISと接触した際に大きな破損が生じない程度の強度が要求される。
【0019】
上記の構成により、蛇腹部31は、伸縮可能な蛇腹構造となる。例えば、
図6に示すように、蛇腹部31をX軸方向に萎縮した際の長さの最小値は30cm程度である。また、
図5に示すように、蛇腹部31をX軸方向に伸長した際の長さの最大値は10m程度である。蛇腹部31は、送風機50でエアービーム30内に空気を送風することで、空気の圧力により
図5に示すようにX軸方向に伸長する。また、蛇腹部31の幕部313から空気が抜けるので、蛇腹部31は、送風機50からの送風を止めることで、作業者の操作により容易に
図6に示すようにX軸方向に萎縮される。蛇腹部31が萎縮した状態のとき、幕部313は隣り合う骨部311の間で-Z方向に垂れ下がった状態となる。
【0020】
接続部32は、複数の蛇腹部31を接続する部材である。接続部32は、接続部32により接続された2つの蛇腹部31のなす角度を変更可能な素材で形成されている。例えば、接続部32は、ワイヤで形成された骨部とポリエチレンやナイロン等の素材で形成された幕部で構成することができる。例えば、接続部32の骨部は、バネのように螺旋状に形成される。また、接続部32の骨部を構成するワイヤは、空気圧により変形しない程度の硬さを有する素材で形成される。
【0021】
また、エアービーム30は、
図4に示すように、接続部32の+Z側に固定部33を有し、接続部32の-Z側に固定部34を有する。固定部33は固定穴331を有し、固定部34は固定穴341を有する。固定部33および固定部34は、接続部32の骨部に設けられている。エアービーム30内に空気を送風した際の蛇腹部31の長さは、例えば、任意の固定部33もしくは固定部34間をロープで接続することで、そのロープの長さにより決められる。なお、ロープに変えて、細いワイヤやマジックテープ(登録商標)等を用いてもよい。
【0022】
図3に示すエアービーム30は、蛇腹部31が伸長することで、X軸方向およびY軸方向に伸長する。1つの蛇腹部31の長さの最大値が10m程度なので、
図3に示すエアービーム30のX軸方向およびY軸方向の長さの最大値は、20m程度である。エアービーム30のX軸方向およびY軸方向の長さは、複数の接続部32を接続するロープの長さにより決められる。したがって、
図3に示すエアービーム30は、ロープの長さを調整することにより、例えば、X軸方向の長さを5m、Y軸方向の長さを10mのように調整することができる。
【0023】
エアービーム30は、接続部32の角度を変えることで、エアービーム30の形状を自由に変えることができる。エアービーム30は、例えば、
図7に示すように、平面視(XY平面)の形状を6角形にすることもできる。また、8角形にすることもできる。また、エアービーム30は、蛇腹部31の長さを変えることで、エアービーム30で囲まれたXY平面の面積を変えることができる。つまり、エアービーム30は、運搬対象であるGISの形状と大きさに応じて、もしくは、運搬対象であるGISと既設のGISとの接続作業等に必要な空間の形状と大きさに応じて、形状と大きさを変更することができる。
【0024】
図1に示すように、エアービーム30は、固定部33の固定穴331と吊金具10の取り付け部18の取付穴19とをワイヤ70を介して接続することで、吊金具10に吊り下げられる。ワイヤ70は、軽くて丈夫であり安価な素材で形成されることが望ましい。ワイヤ70は、例えば、鉄、アルミニューム、チタン、マグネシウム等、もしくはこれらの合金、もしくはカーボンファイバー等で形成することができる。
【0025】
図1に示すように、上部シート40は、+Z方向の端部(上端)が吊金具10の支柱部11の下端に設けられたフランジ部17に止着され、エアービーム30を覆うようにして配置される。例えば、上部シート40の+Z方向の端部(上端部)は、ロープを挿通可能な筒状部が形成されるように縫い合わされている。この筒状部をフランジ部17の窪み部175の位置に配置して、筒状部に挿通したロープを締め付けることで、上部シート40は、吊金具10に止着される。上部シート40は、上部シート40の内側がエアービーム30の外周に支持されることで、吊金具10からエアービーム30に向かって錐形に広がって配置される。上部シート40は、その下端がエアービーム30の下方に垂下し、エアービーム30の下方に垂下したときに下面が開口した筒状になる。上部シート40は、軽量で防水性の高い素材で形成されている。上部シート40は、例えば、ポリエチレンやナイロン等の素材で形成されている。上部シート40の形状は、矩形もしくは扇型等である。
【0026】
下部シート45は、エアービーム30に着脱自在に取り付けられ、エアービーム30の下方に、下面が開口した筒状の空間を形成する。下部シート45は、軽量で防水性の高い素材で形成されている。下部シート45は、例えば、ポリエチレンやナイロン等の素材で形成されている。下部シート45の形状は、矩形等である。
図8に示すように、下部シート45は、+Z側の端部に複数の固定部46を有する。固定部46は、固定穴461を有する。下部シート45は、固定部46の固定穴461とエアービーム30の固定部34の固定穴341とを紐等で接続することで、エアービーム30の下方の空間を覆うようにしてエアービーム30に取付けられる。
図1に示すように、下部シート45は、エアービーム30の下方に垂下した上部シート40の内側に上部シート40と接するように配置される。
【0027】
下部シート45は、
図8に示すように、Z軸方向に複数(
図8では2本)の切りかけ部47を有する。切りかけ部47で挟まれた部分(領域)48は、+Z方向にまくり上げることができる。つまり、下部シート45は、複数の切りかけ部47を有することで、複数の切りかけ部47に挟まれた下部シート45の部分(領域)48を開閉可能である。切りかけ部47間の幅は、作業対象であるGISの寸法に応じて決められる。切りかけ部47は、ファスナーやマジックテープ(登録商標)等で固定することができる。
【0028】
図1に戻り、送風機50は、周囲の空気を吸い込んで、エアービーム30内に空気を送風する装置である。蓄電池55は、送風機50を駆動するための電源である。
図9に示すように、送風機50からエアービーム30に空気を送風するエアーホース51が設けられている。送風機50とエアーホース51、および、エアーホース51とエアービーム30は、カプラ(図示しない)で接続される。
【0029】
送風機50は、空気の吸い込み口と空気の排出口との間に、エアーフィルタを有する。エアーフィルタは、例えば、ナノフィルタや集塵フィルタを用いて構成することができる。エアーフィルタは、ダストカウントの基準値に基づいて構成される。送風機50の吸い込み口から吸い込まれた空気は、このエアーフィルタを通過することで浄化される。送風機50は、このエアーフィルタを有することで、空気の清浄機能を有する。
【0030】
次に、
図10を参照して、吊りカバー装置1を使用した精密電子機器の据え付け工法の例について説明する。ここでは、クレーンで新設のGISを運搬し、既設のGISに新設のGISを接続する場合を例にして説明する。
【0031】
最初に、運搬対象である新設のGISの上空にクレーンを移動させる(ステップS11)。そして、
図2に示すように、クレーンのフック100に吊金具10の掛止部12を取り付ける(ステップS12)。次に、エアービーム30をワイヤ70で吊金具10に取付ける(ステップS13)。
【0032】
次に、エアービーム30を伸長し、エアービーム30を運搬対象である新設のGISに応じた形状と大きさに変形する(ステップS14)。具体的には、運搬対象であるGISのクレーンへの取り付け作業に必要な空間に応じた形状になるようにエアービーム30の接続部32の角度を調整する。そして、送風機50によりエアービーム30内に空気を送風することで、運搬対象であるGISのクレーンへの取り付け作業に必要な空間に応じた大きさになるように蛇腹部31を伸長させる。蛇腹部31の長さは、複数の固定部33もしくは固定部34間を接続するロープの長さにより調整する。そして、GISを囲うようにエアービーム30を配置する。
【0033】
次に、上部シート40をエアービーム30を覆うようにして吊金具10に取付ける(ステップS15)。具体的には、クレーンで吊金具10とエアービーム30を所定の高さに持ち上げる。そして、上部シート40の上端を吊金具10のフランジ部17の窪み部175に巻き付けてロープを締め付けることで、上部シート40を吊金具10に止着する。そして、上部シート40の下端をエアービーム30の周囲に被せるように配置する。上部シート40は、エアービーム30に内側が支持されてエアービーム30の下方に垂下する。上部シート40の下端は、エアービーム30の下方に垂下し、下面が開口した筒状になる。次に、下部シート45をエアービーム30の固定部34に取付ける。下部シート45は、エアービーム30の下方に、下面が開口した筒状の空間を形成する。上部シート40の繋目および下部シート45の繋目は、必要に応じて隙間ができないようにマジックテープ(登録商標)等で塞がれる。以上の作業により、上部シート40および下部シート45で覆われた空間は、GISのクレーンへの取り付け作業に必要な空間に応じた形状と大きさになる。
【0034】
次に、上部シート40および下部シート45で覆われた空間内の湿度等の調整を行う(ステップS16)。具体的には、上部シート40および下部シート45で覆われた空間内のダストカウントおよび湿度の測定を行う。ダストカウントの計測値が基準値である20cpm以上である場合は、ダストカウントの計測値が基準値未満になるように、上部シート40および下部シート45で覆われた空間内の空気を空気清浄機を用いて浄化する。送風機50は空気の清浄機能を有しているので、上部シート40および下部シート45で覆われた空間内の空気がエアービーム30から漏れ出る浄化された空気と入れ替わることで、空気の浄化を図ることもできる。
【0035】
上部シート40および下部シート45で覆われた空間内の湿度の計測値が基準値である80%以上である場合には、除湿器を用いて上部シート40および下部シート45で覆われた空間内の湿度の計測値が基準値以下になるように調整する。ドライエアー発生装置を用いて、乾燥した空気を上部シート40および下部シート45で覆われた空間内に送り込むことで、上部シート40および下部シート45で覆われた空間内の湿度の計測値が基準値以下になるように調整してもよい。
【0036】
上部シート40および下部シート45で覆われた空間内のダストカウントおよび湿度等が基準値以内になったことを確認後、上部シート40および下部シート45で覆われた空間内で、ナイロンスリングやリング等用いて、運搬対象である新設のGISの運搬準備を行う(ステップS17)。次に、運搬対象である新設のGISを吊金具10の吊部14に取付ける(ステップS18)。ステップS17およびステップS18の作業は上部シート40と下部シート45で覆われた空間内で行われるので、仮に作業中に雨が降ってもGISが雨に濡れることはない。
【0037】
次に、吊りカバー装置1のエアービーム30を萎縮して、吊りカバー装置1でGIS(精密電子機器)を包み込む(ステップS19)。具体的には、送風機50の送風を止め、エアービーム30を萎縮させる。エアービーム30の幕部313は通気性があるので、エアービーム30内の空気は幕部313から抜ける。したがって、エアービーム30は、送風機50の送風を止めると、蛇腹部31の長さを維持する力を失う。作業者は、エアービーム30の蛇腹部31の長さが萎縮するようにエアービーム30を操作し、上部シート40および下部シート45を運搬対象のGISの周囲に巻き付ける。そして、上部シート40および下部シート45の周囲をロープ等で固定することで、上部シート40および下部シート45で覆われた空間を小さくする。
【0038】
次に、運搬対象のGISを吊りカバー装置1を介してクレーンで持ち上げる(ステップS20)。そして、クレーンでGISを目的地まで運搬する(ステップS21)。ここでは、既設のGIS(図示しない)が設置されている位置まで運搬対象の新設のGISを運搬する。GISの吊り上げ時および運搬時には、上部シート40および下部シート45を運搬対象のGISの周囲に巻き付けることで、上部シート40および下部シート45で覆われた空間が小さくなるので、吊りカバー装置1が風で煽られることを抑制することができる。
【0039】
運搬した新設のGISと既設のGISとの接続作業時には、エアービーム30を伸長して、新設のGISと既設のGISとの接続作業場所を吊りカバー装置1で覆う(ステップS22)。具体的には、上部シート40および下部シート45を縛っていたロープを外し、エアービーム30に送風機50から空気を送風することで、上部シート40および下部シート45で覆われる空間の形状と大きさが、運搬対象であるGISと既設のGISとの接続作業に必要な空間に応じた形状と大きさになるように、エアービーム30の蛇腹部31を伸長させる。新設のGISと既設のGISとの接続作業時に必要な空間が、ステップS18における作業に必要な空間と異なる形状と大きさである場合は、複数の固定部33もしくは固定部34間を接続するロープの長さを変えることで、蛇腹部31の長さを調整する。また、必要に応じて接続部32の角度を調整する。そして、
図8に示す下部シート45の切りかけ部47で挟まれた部分(領域)48を+Z方向にまくり上げ、既設のGISの接続面が下部シート45で覆われた空間内に入るように、新設のGISとともに吊りカバー装置1をクレーンで移動する。
【0040】
次に、既設のGISの接続面と運搬した新設のGISの接続面とが合うように、運搬した新設のGISの高さ・位置・角度を調整する(ステップS23)。そして、既設のGISの接続面と新設のGISの接続面とを接続し、両者をボルト等で固定する(ステップS24)。ステップS23およびステップS23の作業は、上部シート40および下部シート45で覆われた空間内で行われるので、仮に作業中に雨が降っても既設のGISの接続面および新設のGISが雨に濡れることはない。
【0041】
このように、吊りカバー装置1を使用してGISを運搬し、また、新設のGISと既設のGISとの接続作業を行うことで、仮に作業中に雨が降っても、確実に雨除けを行うことができる。したがって、GISを出荷元の工場に持ち帰るような品質上の問題が発生することを抑制することができる。これにより、作業の工程遅延を抑制することができる。また、吊りカバー装置1で覆われた空間内で作業を行うことで、防塵・防湿・防水問題を回避することができるので、防塵管理や湿度管理を容易化できる。
【0042】
以上に説明したように、本実施形態に係る吊りカバー装置1は、支柱部11と、支柱部11の上端に位置してクレーンへ掛止される掛止部12と、支柱部11を覆う傘部13と、支柱部11の下端に位置する荷吊用の吊部14と、を有する吊金具10と、吊金具10にワイヤ70を介して吊り下げられ、空気圧に応じて伸縮可能であるエアービーム30と、上端が傘部13の下側に止着され、内側がエアービーム30に支持され、下端がエアービーム30の下方に垂下し、下面が開口した筒状の上部シート40を有する。また、エアービーム30に着脱自在に取り付けられ、エアービーム30の下方に、下面が開口した筒状の空間を形成する下部シート45を有する。上部シート40および下部シート45は防水性の高い素材で形成されているので、上部シート40および下部シート45で覆われた空間内に、周囲の塵や雨などの水分が入り込むことはない。本実施形態に係る吊りカバー装置1は、このような構造を有することで、防塵・防湿・防水用の空間を任意の場所に容易に形成することができ、仮に作業中に雨が降っても、確実に雨除けを行うことができる。
【0043】
また、エアービーム30は軽量であるので、本実施形態に係る吊りカバー装置1は、吊りカバー装置1の装置重量を軽量化することができる。エアービーム30は軽量であるので、仮にエアービーム30が落下したとしても作業者が被災することはない。
【0044】
また、実施形態に係る吊りカバー装置1のエアービーム30は、空気圧に応じて伸縮可能である。実施形態に係る吊りカバー装置1は、GISのクレーンへの取り付け作業時、および、運搬対象であるGISと既設のGISとの接続作業時にはエアービーム30を伸長することで、それぞれの作業に必要な作業空間を確保することができる。また、実施形態に係る吊りカバー装置1は、GISの吊り上げ時および運搬時にはエアービーム30を萎縮して上部シート40および下部シート45をGISに巻き付けることで、吊りカバー装置1が風に煽られることを抑制することができる。これにより、作業の安全性を高めることができる。
【0045】
また、実施形態に係る吊りカバー装置1のエアービーム30は、蛇腹構造で伸縮可能に形成された複数の蛇腹部31と、蛇腹部31を接続する複数の接続部32と、を有する。接続部32は、接続部32により接続された2つの蛇腹部31のなす角度を変更可能な素材で形成されており、蛇腹部31は、伸縮することでその長さを変更可能である。よって、実施形態に係る吊りカバー装置1は、上部シート40および下部シート45で覆われる空間の形状と大きさを、運搬対象であるGISのクレーンへの取り付け作業に必要な空間に応じた形状と大きさに、また、運搬対象であるGISと既設のGISとの接続作業等に必要な空間に応じた形状と大きさに変更することができる。本実施形態に係る吊りカバー装置1は、このような構造を有することで、防塵・防湿・防水用の空間を任意の場所に任意の形状と大きさで容易に形成することができる。
【0046】
また、上部シート40と下部シート45とを分離した構造としたことで、下部シート45の重量に相当する上部シート40の重量を低減することができる。これにより、上部シート40を軽量化でき、上部シート40の強度を低減することができる。
【0047】
また、送風機に空気清浄機能を持たせることで、上部シート40および下部シート45で覆われた空間内の空気を浄化することができる。
【0048】
なお、上記の説明では、接続部32がバネのように螺旋状に形成された骨部と幕部で構成されている場合について説明したが、これに限定する必要はない。接続部32は、接続部32により接続された2つの蛇腹部31のなす角度を変更可能な構造であればよい。例えば、接続部32は、蛇腹構造のアルミニュームや変形可能な硬質樹脂等で形成されていてもよい。
【0049】
また、
図3等を用いた説明では、エアービーム30が8個の蛇腹部31と接続部32を有する場合について説明したが、蛇腹部31と接続部32の数を限定する必要はない。例えば、蛇腹部31と接続部32の数は、6個、12個、16個等であってもよい。
【0050】
また、上記の説明では、蛇腹部31が蛇腹構造である場合について説明した。しかし、蛇腹部31は伸縮可能に形成されていればよく、これに限定されない。例えば、蛇腹部31が骨部311を有することなく、幕部313がゴム等の伸縮自在な素材で形成されていてもよい。
【0051】
また、上記の
図4を用いた説明では、固定部33および固定部34を接続部32に設ける場合について説明した。しかし、固定部33および固定部34を蛇腹部31の骨部311に設けてもよい。また、固定部33を接続部32の+Z側に、固定部34を接続部32の-Z側に設ける場合について説明したが、固定部33および固定部34を蛇腹部31もしくは接続部32の側面に設けてもよい。
【0052】
また、上部シート40および下部シート45は、複数枚のシートにより構成されていてもよい。例えば、複数の上部シート40および複数の下部シート45を用いて、
図1に示すエアービーム30の周囲を覆うようにしてもよい。この場合、複数の上部シート40間に隙間ができないように、相互をマジックテープ(登録商標)等で固定する。また、複数の下部シート45間に隙間ができないように、相互をマジックテープ(登録商標)等で固定する。また、下部シート45の-Z側の端部にも複数の固定部を設け、複数の下部シート45をZ軸方向に接続することにより、吊り下げるGISの大きさに応じて下部シート45で覆われる空間のZ軸方向の長さを調整するようにしてもよい。この場合、複数の下部シート45間に隙間ができないように、相互をマジックテープ(登録商標)等で固定する。
【0053】
また、上記の説明では、下部シート45が切りかけ部47を有する場合について説明したが、これに限定する必要はない。下部シート45で覆われた空間内で運搬対象であるGISと既設のGISとの接続作業等を行うことができる構造であればよい。例えば、エアービーム30の下端にカーテンレールを設け、下部シート45をカーテンレールに吊るして下部シート45の一部を開閉可能とすることで、既設のGISの接続面を下部シート45で覆われた空間内に配置できるようにしてもよい。カーテンレールに吊るされた下部シート45を閉じた際の繋目をマジックテープ(登録商標)等で塞ぐことで、周囲の空気が下部シート45で覆われた空間内に入り込むことを防止できる。
【0054】
また、上記の
図2を用いた説明では、吊金具10の取り付け部18がフランジ部17の下面に放射状に配置されている場合について説明したが、これに限定されない。吊金具10は、エアービーム30を吊るためのワイヤを取り付けるための取り付け部を有していればよい。例えば、吊金具10の取り付け部18がフランジ部17の周囲に設けられていてもよい。
【0055】
また、上記の説明では、上部シート40を吊金具10のフランジ部17の窪み部175に固定する場合について説明した。窪み部175で上部シート40を固定することで、上部シート40で覆われた空間内に雨水が侵入することを防止できる。また、送風機50が上部シート40で覆われる空間の外に配置されることで、上部シート40で覆われる空間内の空気を外部の空気と入れ替えることができる。しかし、送風機50が上部シート40で覆われる空間内に配置されるように、上部シート40を吊金具10に固定してもよい。この場合、送風機50の空気の吸入口から上部シート40で覆われた空間の外に伸びるエアーホースを設ける。
【0056】
上記の説明では、エアービーム30をワイヤ70で吊金具10に取付ける場合について説明した。しかし、ワイヤ70に変えて、ポリプロピレンやナイロン等で形成された軽くて伸びにくいロープでエアービーム30を吊金具10に取付けてもよい。
【0057】
また、上記の説明では、送風機50と蓄電池55を吊金具10に取付ける場合について説明した。しかし、送風機50と蓄電池55の取り付け場所は、これに限定する必要はない。例えば、送風機50と蓄電池55をクレーン車に取付け、クレーン車に搭載した送風機50からエアービーム30までエアーホース51を伸ばしてもよい。送風機50と蓄電池55をクレーン車に取付けることで、吊りカバー装置1の重量を軽減することができる。また、吊りカバー装置1を小型化できるので、吊りカバー装置1が風で煽られることを低減することができる。また、送風機50専用の蓄電池55をなくして、クレーン車のバッテリーで送風機50を駆動することもできる。
【0058】
また、
図10は、吊りカバー装置1を使用した精密電子機器の据え付け工法の一例であり、吊りカバー装置1を使用した精密電子機器の据え付け工法は、これに限定されない。例えば、
図10のステップS11の作業をステップS15の作業のあとで行ってもよい。また、
図10のステップS13の作業をステップS14の作業のあとで行ってもよい。また、無風で吊りカバー装置1が風に煽られることがない場合には、ステップS19のエアービーム30を萎縮して上部シート40と下部シート45をGISに巻き付ける作業を省略してもよい。
【0059】
また、上記の説明では、除湿器やドライエアー発生装置を用いて上部シート40および下部シート45で覆われた空間内の湿度を調整する場合について説明したが、送風機50が空気の除湿・乾燥機能を有していてもよい。送風機50に除湿・乾燥機能を持たせると、吊りカバー装置1の重量が大きくなるという問題があるが、送風機50をクレーン車に搭載する場合や送風機50を地面に置く場合には大きな問題にはならない。送風機50に除湿・乾燥機能を持たせることで、送風機50からエアービーム30に送風される空気の湿度を下げることができる。エアービーム30から乾燥した空気が上部シート40と下部シート45で覆われた空間内に流れ込むので、上部シート40と下部シート45で覆われた空間内の湿度を低い状態に保つことができる。
【0060】
(変形例1)
実施形態1では、エアービーム30の幕部313が、気密性が高いが通気性のある素材で形成されている場合について説明した。ここでは、エアービーム30の幕部313が、気密性が高く通気性のない素材で形成されている場合について説明する。
【0061】
エアービーム30の幕部313の通気性が高いほど、エアービーム30を伸長するために必要な送風機50の送風量は大きくなる。したがって、送風機50の送風量を低減するためには、エアービーム30の幕部313の通気性を低くする(気密性を高くする)必要がある。一方、エアービーム30の幕部313の通気性が低い(気密性が高い)ほど、エアービーム30を萎縮する際の空気を抜く時間が長くなる。
【0062】
送風機50の送風量を低減する対策として、エアービーム30の幕部313を、例えば、ビニール、プラスチック、ゴム、薄いアルミニューム等の通気性のない素材で形成する。この場合、エアービーム30を萎縮する際、送風機50の送風方向を反対方向にすることで、送風機50を利用してエアービーム30内の空気を吸い出す。送風機50とエアーホース51との接続部には、電磁弁等で構成されるエアーダンパーを設ける。送風機50からエアービーム30内に空気を送風する際、もしくは、エアービーム30内の空気を吸い出す際には電磁弁を開状態とし、空気の出し入れを行わないときには電磁弁を閉じた状態とする。
【0063】
このような構成にすることで、送風機50の送風量を低減できる。また、エアービーム30を萎縮する際には送風機50で空気を吸い出すので、エアービーム30内の空気の吸出し時間を短縮できる。送風機50の送風量を低減できるので、送風機50を小型化でき、送風機50のコストを低減できる。また、作業中は送風機50を停止できるので、エネルギー効率を改善できる。
【0064】
なお、エアービーム30の蛇腹部31の幕部313を気密性が高く通気性のない素材で形成する場合においても、作業中の損傷によりエアービーム30の幕部313の気密性が低下することを考慮する場合は、エアービーム30を伸長している期間、送風量を減らしてエアービーム30内に空気を送風し続けてもよい。
【0065】
変形例1の説明では、エアービーム30の蛇腹部31の幕部313が気密性が高く通気性のない素材で形成されている場合について説明した。しかし、幕部313が気密性が高いが通気性のある素材(通気性の極めて小さい素材)で形成されている場合でも、エアービーム30の萎縮時間を短縮するために、エアービーム30の萎縮時に送風機50を利用してエアービーム30内の空気を吸い出してもよい。ただし、幕部313を少しでも通気性のある素材で形成する場合は、エアービーム30を伸長している期間、エアービーム30内に空気を送風し続ける必要がある。
【0066】
(変形例2)
実施形態1では、下部シート45がポリエチレンやナイロン等の軽量で防水性の高い素材で形成されている場合について説明した。この場合、真夏の高温時には、下部シート45で覆われた空間内の温度は高温になるので、下部シート45で覆われた空間内は作業環境として好ましくない状態となる。例えば、無風のため、上部シート40だけでも十分に雨を防ぐことができる場合、また、周囲の空気のダストカウントが基準値以下である場合、メッシュ状で通風性の高い素材で形成された下部シート45を使用してもよい。下部シート45は、エアービーム30と着脱自在であるので、天候および周囲の環境に応じて適宜交換すればよい。また、天候および周囲の環境によっては、下部シート45を取り付けないという選択肢もある。
【0067】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1…吊りカバー装置
10…吊金具
11…支柱部
12…掛止部
13…傘部
14…吊部
17…フランジ部
171…上部円形部材
172…下部円形部材
173…柱状部材
175…窪み部
18…取り付け部
19…取付穴
30…エアービーム
31…蛇腹部
311…骨部
313…幕部
32…接続部
33、34…固定部
331、341…固定穴
40…上部シート
45…下部シート
46…固定部
461…固定穴
47…切りかけ部
48…切りかけ部で挟まれた部分(領域)
50…送風機
51…エアーホース
55…蓄電池
70…ワイヤ
100…クレーンのフック
【手続補正書】
【提出日】2023-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱部と、前記支柱部の上端に位置してクレーンへ掛止される掛止部と、前記支柱部の下端に位置する荷吊用の吊部と、を有する吊金具と、
前記吊金具に吊り下げられ、空気圧に応じて伸縮可能であるエアービームと、
上端が前記支柱部の下端に止着され、内側が前記エアービームに支持され、下端が前記エアービームの下方に垂下し、前記エアービームの下方に垂下したときに下面が開口した筒状になる上部シートと、を備え、
前記エアービームは、
伸縮可能に形成された複数の蛇腹部と、
前記蛇腹部を接続する複数の接続部と、
を有し、
前記接続部は、前記接続部により接続された2つの蛇腹部のなす角度を変更可能な素材で形成されており、
前記蛇腹部は、伸縮することで前記蛇腹部の長さを変更可能である、
吊りカバー装置。
【請求項2】
支柱部と、前記支柱部の上端に位置してクレーンへ掛止される掛止部と、前記支柱部の下端に位置する荷吊用の吊部と、を有する吊金具と、
前記吊金具に吊り下げられ、空気圧に応じて伸縮可能であるエアービームと、
上端が前記支柱部の下端に止着され、内側が前記エアービームに支持され、下端が前記エアービームの下方に垂下し、前記エアービームの下方に垂下したときに下面が開口した筒状になる上部シートと、を備え、
前記エアービームは、
伸縮可能に形成された複数の蛇腹部と、
前記蛇腹部を接続する複数の接続部と、
前記接続部および前記蛇腹部の何れかに設けられた複数個の固定部と、
前記複数個の固定部における任意の固定部間に設けられこれら固定部間の伸長長さを決める部材と、を有し、
前記部材により前記任意の固定部間の伸長長さを調整することにより前記蛇腹部の長さを変更可能である、
吊りカバー装置。
【請求項3】
前記エアービーム内に空気を送風する送風機を有し、
前記エアービームは、前記送風機から送風される空気の空気圧に応じて伸縮可能である、
請求項1または2に記載の吊りカバー装置。
【請求項4】
前記送風機は、空気の吸い込み口と空気の排出口との間にフィルタを有することで、空気の清浄機能を有する、
請求項3に記載の吊りカバー装置。
【請求項5】
前記エアービームに着脱自在に取り付けられ、前記エアービームの下方に、下面が開口した筒状の空間を形成する下部シートを有する、
請求項1に記載の吊りカバー装置。
【請求項6】
前記下部シートは、複数の切りかけ部を有することで、複数の切りかけ部に挟まれた領域を開閉可能である、
請求項5に記載の吊りカバー装置。
【請求項7】
前記下部シートは、メッシュ状の素材で形成されている、
請求項5または6に記載の吊りカバー装置。
【請求項8】
前記吊金具は、前記支柱部を覆う傘部を前記支柱部の上端に有する、
請求項1に記載の吊りカバー装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8の何れか一項に記載の吊りカバー装置を使用して精密電子機器を吊り上げる工程を含む、
精密電子機器の据え付け工法。
【請求項10】
吊りカバー装置を使用して精密電子機器をクレーンへ取り付け時、もしくは、前記精密電子機器の接続作業時に、前記吊りカバー装置のエアービームを伸長して、前記吊りカバー装置で前記精密電子機器の作業場所を覆う工程と、
前記クレーンにより前記精密電子機器を吊り上げ時、もしくは、前記クレーンにより前記精密電子機器を運搬時に、前記吊りカバー装置の前記エアービームを萎縮して、前記吊りカバー装置で前記精密電子機器を包み込む工程と、
を含む、
請求項9に記載の精密電子機器の据え付け工法。
【請求項11】
前記エアービームは、伸縮可能に形成された複数の蛇腹部と、前記蛇腹部を接続する複数の接続部と、を有しており、
前記接続部により接続された2つの蛇腹部のなす角度を変更することで前記エアービームの形状を変更する工程と、
前記蛇腹部を伸縮することで前記蛇腹部の長さを変更することで前記エアービームの大きさを変更する工程と、
の少なくともいずれか一つの工程を含む、
請求項9または10に記載の精密電子機器の据え付け工法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記課題を解決するための実施形態に係る吊りカバー装置は、吊金具とエアービームと上部シートとを備える。吊金具は、支柱部と、支柱部の上端に位置してクレーンへ掛止される掛止部と、支柱部の下端に位置する荷吊用の吊部と、を有する。エアービームは、吊金具に吊り下げられ、空気圧に応じて伸縮可能である。上部シートは、上端が支柱部の下端に止着され、内側がエアービームに支持され、下端がエアービームの下方に垂下し、エアービームの下方に垂下したときに下面が開口した筒状になる。エアービームは、伸縮可能に形成された複数の蛇腹部と、蛇腹部を接続する複数の接続部とを有する。接続部は、接続部により接続された2つの蛇腹部のなす角度を変更可能な素材で形成されている。蛇腹部は、伸縮することで蛇腹部の長さを変更可能である。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱部と、前記支柱部の上端に位置してクレーンへ掛止される掛止部と、前記支柱部の下端に位置する荷吊用の吊部と、を有する吊金具と、
前記吊金具に吊り下げられ、空気圧に応じて伸縮可能であるエアービームと、
上端が前記支柱部の下端に止着され、内側が前記エアービームに支持され、下端が前記エアービームの下方に垂下し、前記エアービームの下方に垂下したときに下面が開口した筒状になる上部シートと、を備え、
前記エアービームは、
伸縮可能に形成された複数の蛇腹部と、
前記蛇腹部を接続する複数の接続部と、
を有し、
前記接続部は、前記接続部により接続された2つの蛇腹部のなす角度を変更可能な素材で形成されており、
前記蛇腹部は、伸縮することで前記蛇腹部の長さを変更可能である、
吊りカバー装置。
【請求項2】
支柱部と、前記支柱部の上端に位置してクレーンへ掛止される掛止部と、前記支柱部の下端に位置する荷吊用の吊部と、を有する吊金具と、
前記吊金具に吊り下げられ、空気圧に応じて伸縮可能であるエアービームと、
上端が前記支柱部の下端に止着され、内側が前記エアービームに支持され、下端が前記エアービームの下方に垂下し、前記エアービームの下方に垂下したときに下面が開口した筒状になる上部シートと、を備え、
前記エアービームは、
伸縮可能に形成された複数の蛇腹部と、
前記蛇腹部を接続する複数の接続部と、
前記接続部および前記蛇腹部の何れかに設けられた複数個の固定部と、
前記複数個の固定部における任意の固定部間に設けられこれら固定部間の伸長長さを決めるロープ、ワイヤもしくはマジックテープ(登録商標)の何れかからなる部材と、を有し、
前記部材により前記任意の固定部間の伸長長さを調整することにより前記蛇腹部の長さを変更可能である、
吊りカバー装置。
【請求項3】
前記エアービーム内に空気を送風する送風機を有し、
前記エアービームは、前記送風機から送風される空気の空気圧に応じて伸縮可能である、
請求項1または2に記載の吊りカバー装置。
【請求項4】
前記送風機は、空気の吸い込み口と空気の排出口との間にフィルタを有することで、空気の清浄機能を有する、
請求項3に記載の吊りカバー装置。
【請求項5】
前記エアービームに着脱自在に取り付けられ、前記エアービームの下方に、下面が開口した筒状の空間を形成する下部シートを有する、
請求項1に記載の吊りカバー装置。
【請求項6】
前記下部シートは、複数の切りかけ部を有することで、複数の切りかけ部に挟まれた領域を開閉可能である、
請求項5に記載の吊りカバー装置。
【請求項7】
前記下部シートは、メッシュ状の素材で形成されている、
請求項5または6に記載の吊りカバー装置。
【請求項8】
前記吊金具は、前記支柱部を覆う傘部を前記支柱部の上端に有する、
請求項1に記載の吊りカバー装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載の吊りカバー装置を使用して精密電子機器を吊り上げる工程を含む、
精密電子機器の据え付け工法。
【請求項10】
吊りカバー装置を使用して精密電子機器をクレーンへ取り付け時、もしくは、前記精密電子機器の接続作業時に、前記吊りカバー装置のエアービームを伸長して、前記吊りカバー装置で前記精密電子機器の作業場所を覆う工程と、
前記クレーンにより前記精密電子機器を吊り上げ時、もしくは、前記クレーンにより前記精密電子機器を運搬時に、前記吊りカバー装置の前記エアービームを萎縮して、前記吊りカバー装置で前記精密電子機器を包み込む工程と、
を含む、
請求項9に記載の精密電子機器の据え付け工法。