(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040714
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】フツリン酸ガラス及び光学素子
(51)【国際特許分類】
C03C 3/247 20060101AFI20240318BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C03C3/247
G02B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145238
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】桑谷 俊伍
(72)【発明者】
【氏名】根岸 智明
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062BB17
4G062CC01
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(57)【要約】
【課題】
波長250nmの光の透過率が50%以上で、波長250nmの光の透過率が熔解条件による影響を受けにくいフツリン酸ガラスを提供することを目的とする。
【解決手段】
波長250nmにおける光の透過率が50%以上で、
Fe2O3に換算したFe成分の含有量が1質量ppm未満であり、
リンイオンに対する酸素イオンのモル比が3.50以上である、フツリン酸ガラス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長250nmにおける光の透過率が50%以上で、
Fe2O3に換算したFeの含有量が1質量ppm未満であり、
リンイオンに対する酸素イオンのモル比が3.50以上である、フツリン酸ガラス。
【請求項2】
必須カチオン成分として、リン成分、アルミニウム成分、およびアルカリ土類金属成分の少なくとも一種を、必須アニオン成分として、F-およびO2-を含み、Na成分の含有量が10カチオン%以下である、請求項1に記載のフツリン酸ガラス。
【請求項3】
CuOに換算したCuの含有量が3質量ppm未満である、請求項1または2に記載のフツリン酸ガラス。
【請求項4】
100cm3当たりに含まれる泡の断面積の総和が0.10mm2未満である、請求項1または2に記載のフツリン酸ガラス。
【請求項5】
請求項1または2に記載のフツリン酸ガラスからなる光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長250nmの光の透過率がガラスの熔解条件によって影響を受けにくいフツリン酸ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線撮影用レンズ、水殺菌装置、紫外線硬化型樹脂の硬化装置、磁気記録媒体への書き込み装置、紫外線センサー等の深紫外域(例えば、波長域200~350nm)において高い出力を有する光源を備える装置に用いられる光学ガラスにおいて、より短波長の光をより高効率に透過する紫外線透過ガラスが望まれている。
【0003】
このような紫外線透過ガラスとして、特許文献1にはフツリン酸ガラスが開示されている。しかしながら、フツリン酸ガラスは、製造中に多量の泡が発生し、製造したガラス中に泡が残存するという問題がある。
泡の問題を解決するため、特許文献2には、フツリン酸塩ガラスにFeまたはCuの少なくとも一方を若干量加えることで、ガラス中の気泡の発生が抑制されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-93647公報
【特許文献2】特開2012―91950公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、紫外線透過するフツリン酸ガラスについて詳細に検討した際に、熔解温度により、波長250nm付近の光の透過率が変動することがわかった。具体的には、
図1に示すように、従来のフツリン酸ガラスでは、熔解温度を900℃から950℃にすることにより、波長200~350nm付近の光(例えば、波長250nmの光)の透過率が大きく悪化することがわかった。
本発明者らはさらに検討した結果、リンイオンに対する酸素イオンのモル比(O/P)が3.50以上であって、かつ、波長250nmの光の透過率が50%以上であるフツリン酸ガラスにおいて、Fe
2O
3に換算したFe成分の含有量を1質量ppmに抑えることで、波長250nmの光の透過率が熔解条件によって影響を受けにくいことを見出し、本発明に到達した。すなわち、」本発明は、比較的高い温度の熔解温度でも波長250nmの光の透過率が変動しにくいフツリン酸ガラスおよび前記フツリン酸ガラスからなる光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下を包含する。
[1] 波長250nmにおける光の透過率が50%以上で、
Fe2O3に換算したFe成分の含有量が1質量ppm未満であり、
リンイオンに対する酸素イオンのモル比が3.50以上である、フツリン酸ガラス。
[2] 必須カチオン成分として、リン成分、アルミニウム成分、およびアルカリ土類金属成分の少なくとも一種を、必須アニオン成分として、F-およびO2-を含み、Na成分の含有量が10カチオン%以下である、[1]に記載のフツリン酸ガラス。
[3] CuOに換算したCuの含有量が3質量ppm未満である、[1]または[2]に記載のフツリン酸ガラス。
[4]100cm3当たりに含まれる泡の断面積の総和が0.10mm2未満である、[1]または[2]に記載のフツリン酸ガラス。
[5] [1]または[2]に記載のフツリン酸ガラスからなる光学素子。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフツリン酸ガラスは、波長250nmの光の透過率が50%以上であって、更に波長250nmの光の透過率が熔解条件による影響を受けにくい、という特徴を有する。したがって、製造条件の変動に対して、紫外線透過率への影響が極めて少ない紫外線透過ガラスを提供できるため、ロットに関わらず紫外線透過率を一定に保つことが出来る。さらには波長250nmの透過率の変動が小さければ、必要により熔解温度を高く設定することによりガラス中に泡を減少させ、ガラスを高品質にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】比較例2として用いられたガラス3を製造するための熔解温度を900℃にして得られたガラス3の透過率曲線と、熔解温度を950℃にして得られたガラス3の透過率曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(光の透過率)
本発明の波長250nmにおける光の透過率とは、ガラス厚さ10mmにおける波長250nmの光の透過率である(以下、本明細書では、T250と表す場合がある)。
【0010】
ここで、波長250nmにおける光の透過率(T250、単位%)が熔解条件によって影響を受けにくいとは、ある一つの熔解条件(温度、時間)に対して、その熔解温度をより高い温度に設定した場合、または熔解時間をより長く設定した場合であっても、T250の値が低下しにくいことを意味する。好ましくは、熔解時間を同一にした場合(例えば熔解時間を1時間に設定した場合)、熔解温度900℃のときのT250の値(%)と、熔解温度950℃のときのT250の値(%)との差(T250900―T250950)が、4.0%未満、より好ましくは3.0%未満である。
【0011】
本発明の、熔解条件によって影響を受けにくいフツリン酸ガラスは、T250が50%以上のフツリン酸ガラスである。T250が50%以上を有するフツリン酸ガラスであれば、波長250nmの光を通過させる用途に使用することができる。本発明のガラスのT250は、好ましくは53%以上、より好ましくは55%以上である。
【0012】
(ガラス成分)
本明細書において、ガラス成分におけるカチオン%は、カチオン成分総量に対する各カチオン成分のモル百分率であり、アニオン%は、アニオン成分総量に対する各アニオン成分のモル百分率である。
また、以下、ガラス中に含まれるFe成分の含有量は、Fe2O3に換算したFe成分の含有量を意味し、ガラス全体の質量に対するFeイオンの質量の割合として表される。本発明のフツリン酸ガラスのFe成分の含有量は1質量ppm未満である。リンイオンに対する酸素イオンのモル比(O/P)が3.50以上であり、かつ、Fe成分の含有量が1質量ppm未満であれば、熔解条件によってT250の変動が小さくなる傾向にある。Fe成分の含有量は、好ましくは0.5質量ppm未満であり、より好ましくは0.1質量ppm未満である。Fe成分の含有量の下限は特に限定されるものではないが、少なすぎると泡が発生しやすくなることから、Fe成分の含有量は、好ましくは0質量ppmを超えて、より好ましくは0.01質量ppm以上である。
【0013】
本発明のフツリン酸ガラスのリンイオンに対する酸素イオンのモル比(以下、本明細書では、O/P比と表す場合がある)は3.50以上である。O/P比が3.50未満であるフツリン酸ガラスは、Feの含有量が1質量ppm未満であっても熔解条件によってT250が低下する傾向にある。O/P比の下限は、好ましくは3.53、より好ましくは3.55である。O/P比の上限は特に限定されるものではないが、好ましくは4.20、より好ましくは4.00である。
【0014】
本発明のガラスはフツリン酸ガラスであるであるため、フッ素(F)成分、酸素(O)成分及びリン成分(P)は必須成分である。
フッ素成分の含有量(アニオン%)は特に限定されるものではないが、下限は、5%、10%、15%、20%の順でより好ましく、上限は、99%、95%、92%の順でより好ましい。なお、本明細書で上限、下限の数値は、その範囲に含まれるものとする。
リン成分の含有量(カチオン%)は特に限定されるもののではないが、下限は、1%、3%、5%の順でより好ましく、上限は、60%、50%、40%、35%の順でより好ましい。
【0015】
アルミニウム成分の含有量は特に限定されるもののではないが、下限は、0%、1%、5%、8%、10%の順でより好ましく、上限は、50%、45%、40%、35%の順でより好ましい。
【0016】
リチウム成分の含有量は特に限定されるもののではないが、下限は0%、1%、1.5%の順で好ましく、上限は、50%、40%、30%、25%の順でより好ましい。
ナトリウム成分の含有量は、下限は0%であり、ガラス熔融時の揮発を抑制する観点から、上限は、10%、8%、6%の順でより好ましい。
カリウム成分の含有量は特に限定されるもののではないが、下限は特になく、上限は、10%、8%、6%の順でより好ましい。
【0017】
、
マグネシウム成分の含有量は特に限定されるもののではないが、下限は、0%超、1%、2%、3%の順でより好ましく、上限は、30%、20%、10%、8%の順でより好ましい。
カルシウム成分の含有量は特に限定されるもののではないが、下限は、0%超、1%、3%、5%の順でより好ましく、上限は、50%、40%、35%、30%の順でより好ましい。
ストロンチウム成分の含有量は特に限定されるもののではないが、下限は、0%超、2%、4%、上限は、40%、30%,25%、20%の順でより好ましい。
バリウム成分の含有量は特に限定されるもののではないが、下限は、0%超、2%、4%の順でより好ましく、上限は、40%、30%、25%、20%の順でより好ましい。
【0018】
イットリウム成分の含有量は特に限定されるもののではないが、下限は特にないが、例えば、0%、0%超、1%超であることが挙げられ、上限は、10%、7%、5%、4%の順でより好ましい。
【0019】
リン成分とアルミニウム成分の合計量は、特に限定されるものではないが、上限は、70%、60%、50%の順でより好ましい。
【0020】
アルカリ金属(リチウム成分、ナトリウム成分およびカリウム成分)の合計含有量の上限は40%、30%、25%、22%の順でより好ましく、下限は0%でもよい。
【0021】
アルカリ土類金属(マグネシウム成分、カルシウム成分、ストロンチウム成分およびバリウム成分)の合計含有量の下限は0%超、10%、20%、25%、30%の順でより好ましく、上限は、80%、70%、60%、55%の順で好ましい。
【0022】
ホウ素成分の含有量は特に限定されるものではないが、上限は、10%、8%、6%の順でより好ましく、含まなくてもよい。
【0023】
塩素成分の含有量(アニオン%)は特に限定されるものではないが、下限は特になく、上限は、1%、0.5%、0.3%の順でより好ましい。
【0024】
ガラスに含まれるCu成分の含有量はCuOに換算して3質量ppm未満であることが好ましく、2質量ppm未満であることがより好ましく、1質量ppm未満であることがさらに好ましい。Cu成分の含有量を抑えることにより、紫外域から可視域の透過率を高く維持することができる。
【0025】
なお、フッ素(F)成分、酸素(O)成分、リン成分(P)、アルミニウム成分、リチウム成分、ナトリウム成分、カリウム成分、マグネシウム成分、ストロンチウム成分、バリウム成分、イットリウム成分、ホウ素成分、塩素成分は、慣習として、F―、O2-、P5+、Al3+、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Y3+、B3+、Cl―と表記することがある。同様にFeをFe3+を表記することがある。ガラス成分の含有量は、例えば誘導結合プラズマ発光分光分析法ICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)等の方法により求めることができる。また、微量含有物の定量には、例えば誘導結合プラズマ質量分析法ICP―MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)を用いることができる。
なお、本発明のフツリン酸ガラスのアッベ数νdの好ましい範囲は60.0~98.0、より好ましい範囲は67.0~97.0であり、屈折率ndの好ましい範囲は1.41~1.60、より好ましい範囲は1.42~1.56である。
【0026】
ガラスに含まれる泡については次のように評価することはできる。ガラスを拡大観察(例えば100倍)して100cm3当たりのガラス中に含まれる泡の断面積の総和を求める。光学ガラスなど高い均質性が求められるガラスでは、100cm3当たりのガラス中に含まれる泡の断面積の総和が0.10mm2未満であることが好ましく、0.03mm2未満であることがより好ましい。短波長光ほど小さな異物や泡により散乱される。波長250nmのおける高い透過率が得られることと、ガラス内部の光散乱源が極めて少ないことにより紫外線透過タイプの光学素子用に好適なガラス素材を提供することができる。
【0027】
本発明は、紫外線を透過し、製造条件の変動に対して、紫外線透過率への影響が極めて少ない紫外線透過ガラスを提供できるため、ロットに関わらず紫外線透過率を一定に保つことが出来る。
また、本発明のフツリン酸ガラスは、融液状態で大きな温度変化が伴う製造プロセスを有する場合に特に有効である。このような観点から、熔融ガラスを清澄領域において清澄した後、均質化領域へと流し、清澄領域における清澄工程と均質化領域における均質化工程を連続して行う方怯に、本発明は特に有効である。一例として、清澄領域を清澄槽とし、均質化領域を作業槽とし、清澄槽と作業槽をパイプで連結したガラス製造装置によって、上記好ましい態様を説明する。
【0028】
清澄槽、作業槽、両槽を連結するパイプは、それぞれ内部の熔融ガラスの温度をコントロールするための温調機能を備える。上記パイプのガラス流入口と流出口は、各槽内のガラス液位より下になるよう取り付けられており、両槽内のガラス液位は略同じ高さとなる。高温の清澄槽から低温の作業槽にパイプ内を通ってガラスが流れる間に、ガラスとパイプの熱交換によってガラスが降温される。パイプ中におけるガラスの滞在時間は短いため、短時間でガラスの温度は低下する。本発明の方法によれば、このような大きな温度変化に対しても作業槽中における発泡を有効に抑制することができる。
【0029】
なお、本発明は、上記好ましい態様に限定されるものではなく、一つの槽内で熔融ガラスを清澄、均質化する方法においても有効である。例えば、生産性を向上させるため、清澄工程終了後、速やかに熔融ガラスの温度を低下させて均質化工程を行う場合でも、降温によって発泡が生じることを防止することができる。
【0030】
また、本発明は、ガラス原料として未ガラス化原料(バッチ原料)のみを用いる方法、カレット原料のみを用いる方法、バッチ原料とカレット原料を併用する方法のいずれの方法にも適用することができる。
【0031】
清澄性を改善するためにガラスの熔融温度を上昇させても透過率の低下が生じにくいガラスを得ることができ、波長250nmにおける透過率が高く、均質で、製造条件が変動しても安定した特性を示すフツリン酸ガラスを提供することができる。
【実施例0032】
(実施例)
熔融槽、清澄槽、作業槽をこの順序にパイプで連結し、作業槽の底部にはガラスを流出するパイプを連結する。各槽、各パイプは白金合金で構成され、それぞれ独立して温度調整が可能なように温調機能を備えている。
このガラス製造装置を使用し、次のようにしてフツリン酸光学ガラスを製造した。
まず、2リン酸塩などのリン酸塩、フッ化物、酸化物などの化合物原料を不純物としてFeを含むものとし、各化合物原料のFe混入量に注意しながら、所望の光学特性が得られるようにバッチ原料の調合を行った。ガラス中に導入されるFeの量は、各化合物原料中のFe混入量とバッチ原料中の各化合物原料の割合によって決まる。バッチ原料中の各化合物の割合はガラス組成によって決まるため、Fe混入量が異なる化合物原料、すなわち、純度が異なる化合物原料を用意し、その中から所要量のFeを導入するために適切な純度レベルの化合物原料を選定した。選定した化合物原料を調合した後、十分混合してバッチ原料を用意した。各ガラスのガラス成分を表1に示す。なお、実施例のいずれのガラスともFe2O3に換算したFe成分の含有量は1.0質量ppm未満であり、CuOに換算したCu成分の含有量は1.0質量ppm未満である。実施例の各ガラスを光学顕微鏡により拡大観察(100倍)したが、泡は認められなかった。100cm3当たりに含まれる泡の断面積の総和は、いずれも0.03mm2未満であった。
【0033】
【0034】
これらバッチ原料を熔融槽内に投入し、900℃又は950℃で加熱、熔融して、熔融ガラス化した。熔融槽内でガラス化された熔融ガラスは、パイプ内を通って清澄槽中へと流入する。パイプ中を通る際、熔融ガラスはパイプとの熱交換によって昇温される。清澄槽の温度は熔融槽よりも高温に設定され、脱泡処理が促進するようになっている。清澄槽内で脱泡処理された熔融ガラスはパイプ中を通って降温され、清澄槽や熔融槽より低い温度に設定された作業槽中へと流入する。なお、熔融層及び清澄槽での滞在時間はすべての実施例で実質的に同じであった。
【0035】
作業槽内では攪拌具により熔融ガラスを攪拌し、均質化した後、底部に取り付けたパイプにより熔融ガラスを流出させ、パイプ流出口の下方に配置した鋳型に連続して流し込み、急冷する。鋳型内で板状に成形したガラスを水平方向に連続的に引き出し、そのままアニール炉内を通過させてアニールし、一定の幅と厚みをもつフツリン酸光学ガラスからなるガラス板を作製した。得られたガラス板を切断、研削、研磨してガラスサンプルを作製した。
【0036】
[T250の測定]
ガラスサンプルを、厚さ10mmで、互いに平行かつ光学研磨された平面を有するように加工し、波長200nmから700nmまでの波長域における分光透過率を測定し、T250の値を得た。なお、透過率は、光学研磨された一方の平面に垂直に入射する光線の強度を強度Aとし、他方の平面から出射する光線の強度を強度Bとして、分光透過率B/Aを算出した。分光透過率には試料表面における光線の反射損失も含まれる。
[屈折率、アッベ数の測定]
降温速度-30℃/時間で降温して得られたガラスについて、日本光学硝子工業会規格の屈折率測定法により、屈折率nd、ng、nF、nC、アッベ数νdを測定した。
【0037】
得られた結果を表2に示す。
【0038】
【0039】
次に上記実施例で得た各フツリン酸光学ガラスを用いて、高紫外光透過ガラスからなる光学素子を作製した。光学素子としては、紫外線撮影用レンズ、紫外光によるデータの読み取り及び/又は書き込み用ピックアップレンズ、紫外線用光学式エンコーダ搭載レンズ、ステッパ搭載レンズ、紫外線照射殺菌装置搭載レンズなどを例示することができる。
本発明のフツリン酸ガラスは、紫外線を透過し、製造条件の変動に対して、紫外線透過率への影響が極めて少ないため、ロットに関わらず紫外線透過率を一定に保つことが出来る。したがって、紫外線透過ガラスを使用した光学素子、窓材等の、短波長の光をより高効率に透過する紫外線透過ガラスが要求される分野において有用である。