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特開2024-40718風況観測期間決定支援装置および風況観測期間決定支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040718
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】風況観測期間決定支援装置および風況観測期間決定支援方法
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/02 20060101AFI20240318BHJP
   F03D 80/00 20160101ALI20240318BHJP
【FI】
G01W1/02 A
F03D80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145242
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラムダニ スフィアン
(72)【発明者】
【氏名】田中 和英
(72)【発明者】
【氏名】大竹 悠介
(72)【発明者】
【氏名】小村 昭義
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 怜央
(72)【発明者】
【氏名】岩永 泰弥
(72)【発明者】
【氏名】原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】工藤 佑希也
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA20
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB90
3H178DD67
3H178DD70
(57)【要約】
【課題】高精度に年間風況予測を可能にする風況観測期間を決定する。
【解決手段】風況観測期間決定支援装置100は、風況を予測する対象地における年間の風況予測データ(予測データ130)と、前記対象地における年間より短期の風況観測期間の風況予測データ(予測データ130)との類似度を算出する類似度算出部113と、前記類似度が最大となる風況観測期間を出力する風況観測期間決定部114を備える。
風況予測データは、例えば、風速の出現頻度分布、風速と風向双方の出現頻度分布、または、平均風速である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風況を予測する対象地における第1期間の風況予測データと、前記対象地における前記第1期間よりも短い第2期間の風況予測データとの類似度を算出する類似度算出部と、
前記類似度が最大となる前記第2期間を出力する風況観測期間決定部を備える
風況観測期間決定支援装置。
【請求項2】
前記第1期間の風況予測データ、および前記第2期間の風況予測データに基づいて、風速の出現頻度分布、風速の出現確率分布、風速と風向双方の出現頻度分布、または、風速と風向双方の出現確率分布を算出する分布算出部を備える
請求項1に記載の風況観測期間決定支援装置。
【請求項3】
前記第1期間の風況予測データ、および前記第2期間の風況予測データに基づいて、平均風速を算出する平均風速算出部を備える
請求項1に記載の風況観測期間決定支援装置。
【請求項4】
前記類似度算出部は、
前記第1期間の風況予測データ、および前記第2期間の風況予測データにおける風速の出現頻度分布、風速の出現確率分布、風速と風向双方の出現頻度分布、または、風速と風向双方の出現確率分布の差分を算出し、前記差分が最も小さくなった場合を前記類似度が最大と判断する
請求項2に記載の風況観測期間決定支援装置。
【請求項5】
前記類似度算出部は、
前記第1期間の風況予測データにおける平均風速、および前記第2期間の風況予測データにおける平均風速の差分が最も小さくなった場合を前記類似度が最大と判断する
請求項3に記載の風況観測期間決定支援装置。
【請求項6】
前記対象地の周辺地における前記第2期間の観測データを説明変数とし、前記対象地における当該第2期間の風況予測データを目的変数とする学習データを用いて生成された機械学習モデルである予測モデルを用いて、前記対象地の周辺地の第2期間の観測データを基に前記対象地における第2期間の風況予測データを算出する予測部、を備える
請求項1に記載の風況観測期間決定支援装置。
【請求項7】
前記第1期間の風況予測データに関し、第1期間を1年間とする
請求項1~6の何れか1項に記載の風況観測期間決定支援装置。
【請求項8】
前記第2期間の風況予測データに関し、第2期間を1年未満とする
請求項1~6の何れか1項に記載の風況観測期間決定支援装置。
【請求項9】
風況観測期間決定支援装置が、
風況を予測する対象地における第1期間の風況予測データと、前記対象地における前記第1期間よりも短い第2期間の風況予測データとの類似度を算出するステップと、
前記類似度が最大となる前記第2期間を出力するステップを実行する
風況観測期間決定支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風況を予測する対象地点において風況を観測する期間の決定を支援する風況観測期間決定支援装置および風況観測期間決定支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電所の建設地を決めるには、建設地における年間の風況(風車の高さにおける風向・風速の分布)を予測して、発電量を算出することが必要である。風況を予測するには、風向や風速を観測する必要がある。観測には、観測塔(マスト、風況観測タワー)を設置して観測するのが望ましいが、高い費用が掛かる。このため、設置が容易な気象観測用ドップラーライダーを用いた観測が試みられている。
一方、観測費用を抑えるためには、風況観測期間は短いことが望ましい。特許文献1に記載の風況予測システムは、特定地点(建設候補地)における、例えば1カ月の観測データを基に、特定地点における風況を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-159725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の風況予測システムによれば、1年間ではなく短期間の観測により風況を予測できるようになる。風況観測期間の時期(季節)に応じて予測の精度に差があると考えられるが、適切な時期を決定する手法についての記載は見当たらない。特に、日本付近では、季節風の影響で、冬期には北西の風、夏期には南東または南西の風が吹きやすい。季節変動を考慮するに際して、季節補正部によって補正する方法だけではなく、様々な風向を観測できる適切な時期に風況観測する方法も有用である。
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、高精度な風況予測を可能にする風況観測期間の決定を支援する風況観測期間決定支援装置および風況観測期間決定支援方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するため、本発明に係る風況観測期間決定支援装置は、風況を予測する対象地における第1期間の風況予測データと、前記対象地における前記第1期間よりも短い第2期間の風況予測データとの類似度を算出する類似度算出部と、前記類似度が最大となる前記第2期間を出力する風況観測期間決定部を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高精度な風況予測を可能にする風況観測期間の決定を支援する風況観測期間決定支援装置および風況観測期間決定支援方法を提供することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る風況観測期間決定支援装置の機能ブロック図である。
図2】第1実施形態に係る風速の分布の差分を説明するためのグラフである。
図3】第1実施形態に係る風況観測期間決定支援処理のフローチャートである。
図4】第1実施形態の変形例に係る風向・風速の分布を説明するための図である。
図5】第2実施形態に係る風況観測期間決定支援装置の機能ブロック図である。
図6】第2実施形態に係る風況観測期間決定支援処理のフローチャートである。
図7】第3実施形態に係る風況観測期間決定支援装置の機能ブロック図である。
図8】第3実施形態に係る予測モデルを説明するための図である。
図9】第3実施形態に係る風況観測期間決定支援処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
≪第1実施形態:風況観測期間決定支援装置の概要≫
次に、本発明を実施するための形態(実施形態)における風況観測期間決定支援装置を説明する。風況観測期間決定支援装置は、風力発電所の建設候補地であり、風況を予測する対象地である予測対象地における年間(第1期間)の風況(風速の出現頻度分布または出現確率分布)を予測するために風況を観測する1年より短い短期の期間(第2期間)、例えば1月間、を決定する。風況観測期間決定支援装置は、年間の風況(風況予測データ)と、短期の期間で当該期間の風況との類似度が高い期間(風況観測期間)を決定する。風況観測期間決定支援装置の利用者は、短期間の観測により、観測に掛かるコストを抑えながら、高い精度の年間風況を予測できるようになる。
【0009】
≪第1実施形態:風況観測期間決定支援装置の構成≫
図1は、第1実施形態に係る風況観測期間決定支援装置100の機能ブロック図である。風況観測期間決定支援装置100はコンピュータであり、制御部110、記憶部120、および入出力部180を備える。入出力部180には、ディスプレイやキーボード、マウスなどのユーザインターフェイス機器が接続される。入出力部180が通信デバイスを備え、他の装置とのデータ(例えば、気象の観測データや予測データ)の送受信が可能であってもよい。また入出力部180にメディアドライブが接続され、記録媒体を用いたデータのやり取りが可能であってもよい。
【0010】
≪第1実施形態:風況観測期間決定支援装置:記憶部≫
記憶部120は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)などの記憶機器を含んで構成される。記憶部120には、設定データ121、予測データ130、およびプログラム128が記憶される。
設定データ121には、風況観測期間決定支援装置100の利用者が設定したデータが記憶される。設定内容として、予測対象地(対象地)や風況観測期間の長さ(風況観測期間長)などがある。
【0011】
予測データ130には、予測対象地における年間の風況の予測データが記憶される。予測データの例として、数値予報モデル(例えばメソモデル)を用いて算出したデータがある。予測データは、例えば10分間隔の風向・風速のデータを含む。
プログラム128には、風況観測期間決定支援処理(後記する図3参照)の手順の記述を含む。
【0012】
≪第1実施形態:風況観測期間決定支援装置:制御部≫
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、設定部111、分布算出部112、類似度算出部113、および風況観測期間決定部114が備わる。
設定部111は、利用者からの予測対象地や風況観測期間長など指示を受け付けて、設定データ121に格納する。
分布算出部112は、予測データ130から風況のデータを取得して、風速の分布(風速分布、風速の出現頻度分布、風速の出現確率分布)を算出する。例えば分布算出部112は、年間の風速の出現頻度分布を算出する。
【0013】
類似度算出部113は、風速の出現頻度分布間の差分を算出することで類似度を算出する。図2は、第1実施形態に係る風速の出現頻度分布の差分を説明するためのグラフ411,412である。グラフ411,412の横軸は風速であり、縦軸は出現頻度である。実線のグラフ411は年間の風況(風速の出現頻度分布)を示し、破線のグラフ412は1月(第2期間としての睦月)の風況を示す。類似度算出部113は、年間の風況(第1期間の風況予測データ)と1月の風況(第2期間の風況予測データ)の差(差分)である、グラフ411,412に挟まれる領域413の面積を算出する。類似度算出部113は、差分が小さいほど、2つの風況の類似度が高いと判断する。なお類似度算出部113は、風速の出現確率分布間の差分を算出することで類似度を算出してもよい。
風況観測期間決定部114は、複数の風況観測期間候補のなかで年間の風況との類似度が最も大きい(差分が最も小さい)風況観測期間候補を風況観測期間と決定して出力する。
【0014】
以上に説明したように風況観測期間決定支援装置100は、風況を予測する対象地における第1期間の風況予測データ(年間の風況)と、対象地における第1期間よりも短い第2期間の風況予測データ(風況観測期間候補の風況)との類似度を算出する類似度算出部113を備える。
また風況観測期間決定支援装置100は、類似度が最大となる第2期間(風況観測期間として)を出力する風況観測期間決定部114を備える。
【0015】
また類似度算出部113は、第1期間の風況予測データ、および第2期間の風況予測データから第1実施形態に係る分布算出部112により算出された風速の出現頻度分布、または、風速の出現確率分布の差分を算出し、差分が最も小さくなった場合を前記類似度が最大と判断する。
第1期間の風況予測データに関し、第1期間を1年間とする。また第2期間の風況予測データに関し、第2期間を1年未満(例えば1月)とする。
【0016】
≪第1実施形態:風況観測期間決定支援処理≫
図3は、第1実施形態に係る風況観測期間決定支援処理のフローチャートである。図3を参照しながら風況観測期間決定支援処理を説明する。
ステップS11において分布算出部112は、予測対象地における年間の風速分布を算出する。
【0017】
ステップS12において風況観測期間決定部114は、風況観測期間の候補期間ごとにステップS13~S15を繰り返す処理を開始する。風況観測期間長(第2期間の長さ)が1カ月と設定されたとすると、候補期間は例えば、1月、2月、…、12月である。利用者の設定により、1月1日~1月31日、1月16日~2月15日、2月1日~2月28日など、開始日が15日間隔であってもよい。また、風況観測期間長が1カ月と1.5カ月など、複数であってもよい。
【0018】
ステップS13において分布算出部112は、予測対象地における候補期間の風速分布を算出する。
ステップS14において類似度算出部113は、ステップS11で算出した年間の風速分布と、ステップS13で算出した候補期間の風速分布の類似度を算出する。
ステップS15において風況観測期間決定部114は、全ての候補期間についてステップS13~S14を実行したならばステップS16に進み、未処理の候補期間があればステップS13に戻って次の候補期間についてステップS13~S14を実行する。
ステップS16において風況観測期間決定部114は、ステップS14で算出した類似度が最大(差分が最小)となる候補期間を決定して、この候補期間を風況観測期間として出力する。
【0019】
≪第1実施形態:風況観測期間決定支援装置の特徴≫
風況観測期間決定支援装置100は、年間の風況(風速の出現頻度分布)と候補期間の風況とを比較して、差分が小さい(類似度が高い)候補期間を風況観測期間とする。年間の風況に類似する風況観測期間に風況を観測することで、年間の風況を高精度に予測することができるようになる。
【0020】
≪第1実施形態の変形例:風向・風況の分布≫
上記した第1実施形態において風況観測期間決定支援装置100は、風速の分布を比較している(図3記載のステップS13,S14参照)。風向・風速の双方の分布(出現頻度分布、出現確率分布)を比較するようにしてもよい。
【0021】
図4は、第1実施形態の変形例に係る風向・風速の分布420を説明するための図である。分布420の横軸は風速であり、縦軸は北を0度とした時計回りの風向である。風速は毎秒2mごとに区切られ、風向は45度ごとに区切られる。分布420において、例えば風速が毎秒2m以下で、北~北東(0度~45度)向きの風の出現確率は、0.1である。
【0022】
変形例の分布算出部112は、風速の分布(図2参照)に替わり風向・風速の分布420を算出する。また変形例の類似度算出部113は、区切られた風向・風速の出現確率について、年間の出現確率と候補期間の出現確率との差の総和を差分として算出して類似度を算出する。風況観測期間決定支援装置100は、年間の風況(風向・風速の分布)と候補期間の風況とを比較して、差が小さい候補期間を風況観測期間とする。風向および風速の両方の観点から比較することで、第1実施形態より類似性の高い風況観測期間を決定することができ、より高精度な風況予測が期待できるようになる。
【0023】
例えば日本付近では、季節風の影響により冬期には北西の風が、夏期には南東または南西の風が吹きやすい。季節変動を考慮するに際して、特許文献1のように季節補正部によって補正する方法だけではなく、様々な風向を観測できて年間の風向の分布に類似する時期に風況観測する方法も有用である。
【0024】
以上に説明したように風況観測期間決定支援装置100は、第1期間の風況予測データ(年間の風況)、および第2期間の風況予測データ(風況観測期間候補の風況)に基づいて、風速の出現頻度分布、風速の出現確率分布、風速と風向双方の出現頻度分布、または、風速と風向双方の出現確率分布を算出する分布算出部112を備える。
類似度算出部113は、第1期間の風況予測データ、および第2期間の風況予測データにおける風速の出現頻度分布、風速の出現確率分布、風速と風向双方の出現頻度分布、または、風速と風向双方の出現確率分布の差分を算出し、差分が最も小さくなった場合を類似度が最大と判断する。
【0025】
≪第2実施形態≫
第1実施形態の風況観測期間決定支援装置100および変形例は、風況として風速の分布または風向・風速の分布について、年間と候補期間とを比較している。風況観測期間決定支援装置は、風速の分布の替わりに平均風速を比較してもよい。
【0026】
図5は、第2実施形態に係る風況観測期間決定支援装置100Aの機能ブロック図である。第1実施形態の風況観測期間決定支援装置100と比較とすると、制御部110に備わる分布算出部112および類似度算出部113が、平均風速算出部112Aおよび類似度算出部113Aに替わる。
【0027】
平均風速算出部112Aは、予測データ130から風況のデータを取得して、年間および候補期間における平均風速を算出する。類似度算出部113Aは、以下の式(1)を用いて差分を算出し、差分が小さいほど類似度が大きくなるように類似度を算出する。
差分=|年間の平均風速-候補期間の平均風速|÷年間の平均風速 (1)
【0028】
≪第2実施形態:風況観測期間決定支援処理≫
図6は、第2実施形態に係る風況観測期間決定支援処理のフローチャートである。図6を参照しながら風況観測期間決定支援処理を説明する。
ステップS21において平均風速算出部112Aは、予測対象地における年間の平均風速を算出する。
【0029】
ステップS22において風況観測期間決定部114は、風況観測期間の候補期間ごとにステップS23~S25を繰り返す処理を開始する。
ステップS23において平均風速算出部112Aは、予測対象地における候補期間の平均風速を算出する。
ステップS24において類似度算出部113Aは、ステップS21で算出した年間の平均風速と、ステップS23で算出した候補期間の平均風速の差分を算出(式(1)参照)して類似度を算出する。
【0030】
ステップS25において風況観測期間決定部114は、全ての候補期間についてステップS23~S24を実行したならばステップS26に進み、未処理の候補期間があればステップS23に戻って次の候補期間についてステップS23~S24を実行する。
ステップS26において風況観測期間決定部114は、ステップS24で算出した類似度が最大となる候補期間を決定して、この候補期間を風況観測期間として出力する。
【0031】
≪第2実施形態:風況観測期間決定支援装置の特徴≫
風況観測期間決定支援装置100Aは、年間の風況(平均風速)と候補期間の風況とを比較して、差が小さい候補期間を風況観測期間とする。年間の風況に類似する風況観測期間に風況を観測することで、年間の風況を高精度に予測することができるようになる。また、第1実施形態での風況観測期間決定支援装置100と比べて、高速に風況観測期間を決定することができる。
【0032】
以上に説明したように風況観測期間決定支援装置100Aは、第1期間の風況予測データ(年間の風況)、および第2期間の風況予測データ(風況観測期間候補の風況)に基づいて、平均風速を算出する平均風速算出部112Aを備える。
類似度算出部113Aは、第1期間の風況予測データにおける平均風速、および第2期間の風況予測データにおける平均風速の差分が最も小さくなった場合を類似度が最大と判断する。
【0033】
≪第3実施形態≫
第1実施形態の風況観測期間決定支援装置100は、予測データ130を基に年間と候補期間との予測対象地における風況の類似度を算出している。機械学習技術を用いて、例えばアメダスのような地表付近の観測データを基に風況を予測し、予測結果を基に年間と候補期間との予測対象地における風況の類似度を算出して風況観測期間を決定してもよい。
【0034】
図7は、第3実施形態に係る風況観測期間決定支援装置100Bの機能ブロック図である。第1実施形態の風況観測期間決定支援装置100と比較とすると、制御部110には分布算出部112がなく、記憶部120に備わる予測データ130Bが替わる。また制御部110は学習部115と予測部116とを備え、記憶部120は観測データ140と予測モデルデータベース150(図7では予測モデルDB(database)と記載)とを備える。
【0035】
予測データ130Bは、予測対象地およびその周辺地(単に周辺地とも記す)における風況の予測データが記憶される。観測データ140は、予測対象地の周辺地の観測データであり、例えばアメダス、既設の観測塔、ドップラーライダー、風力発電所で観測したデータである。予測モデルデータベース150は、候補期間別の予測モデル158(後記する図8参照)が記憶される。なお学習データの件数を増やすためには、周辺地は予測対象地に近く、周辺地の数や予測データ130Bおよび観測データ140のデータの件数(年数)は多いことが望ましい。
【0036】
図8は、第3実施形態に係る予測モデル158を説明するための図である。予測モデル158は、説明変数が観測データ421であり、目的変数が風況422(予測データ130B参照)である機械学習モデルである。候補期間が1月、2月、…、12月であるとする。すると1月の予測モデル158は、周辺地での1月の観測データ421と、周辺地での1月の風況422とを学習データとして生成(訓練)される。予測モデル158は、例えば指数関数カーネルを用いるガウス過程回帰モデルである。
【0037】
図7に戻って、制御部110を説明する。学習部115は、候補期間ごとに予測モデル158を生成して予測モデルデータベース150に格納する。
予測部116は、予測モデル158を用いて予測対象地の観測データを基に予測対象地の風況を予測する。
【0038】
以上に説明したように風況観測期間決定支援装置100Bは、対象地の周辺地における第2期間(候補期間)の観測データを説明変数とし、対象地における当該第2期間の風況予測データを目的変数とする学習データを用いて生成された機械学習モデルである予測モデル158を用いて、対象地の周辺地の第2期間の観測データを基に対象地における第2期間の風況予測データを算出する予測部116を備える。
【0039】
≪第3実施形態:風況観測期間決定支援処理≫
図9は、第3実施形態に係る風況観測期間決定支援処理のフローチャートである。図9を参照しながら風況観測期間決定支援処理を説明する。
ステップS31において風況観測期間決定部114は、候補期間ごとにステップS32~S41を繰り返す処理を開始する。以下、繰り返し処理における候補期間を処理対象候補期間と記す。
【0040】
ステップS32において学習部115は、予測データ130および観測データ140に格納されている(過去の)年ごとにステップS33~S37を繰り返す処理を開始する。以下、繰り返し処理における年を処理対象年と記す。
ステップS33において学習部115は、周辺地ごとにステップS34~S36を繰り返す処理を開始する。以下、繰り返し処理における周辺地を処理対象周辺地と記す。
【0041】
ステップS34において学習部115は、処理対象周辺地における処理対象年の処理対象候補期間の観測データを観測データ140から取得し、風況(風速の分布または風向・風速の分布)を予測データ130Bから取得する。
ステップS35において学習部115は、ステップS35で取得した観測データを説明変数、風況を目的変数(正解データ)とする学習データを生成する。
【0042】
ステップS36において学習部115は、全ての処理対象周辺地についてステップS34~S35を実行したならばステップS37に進み、未処理の処理対象周辺地があればステップS34に戻って次の処理対象周辺地についてステップS34~S35を実行する。
ステップS37において学習部115は、全ての処理対象年についてステップS33~S36を実行したならばステップS38に進み、未処理の処理対象年があればステップS33に戻って次の処理対象年についてステップS33~S36を実行する。
【0043】
ステップS38において学習部115は、ステップS35で生成した学習データを用いて、処理対象候補期間の予測モデル158を生成する。
ステップS39において予測部116は、予測対象地の周辺地の観測データを観測データ140から取得する。この観測データは、瞬時値観測データまたは観測データ140で処理される候補期間の観測データの平均値でもよいし、瞬間値観測データまたは過去数年における処理対象候補期間の観測データの平均値であってもよい。
ステップS40において予測部116は、ステップS38で生成した予測モデル158を用いて、ステップS39で取得した観測データを基に、風況を予測(算出)する。
【0044】
ステップS41において風況観測期間決定部114は、全ての処理対象候補期間についてステップS32~S40を実行したならばステップS42に進み、未処理の処理対象候補期間があればステップS32に戻って次の処理対象候補期間についてステップS32~S40を実行する。
ステップS42において風況観測期間決定部114は、予測データ130Bから年間の風況を取得する。
ステップS43において風況観測期間決定部114は、ステップS42で取得した年間の風況との類似度が最大(差分が最小)となる、ステップS40で予測した風況を決定し、当該風況の候補期間を風況観測期間(第2期間)として出力する。なお、類似度は類似度算出部113が算出する。
【0045】
≪第3実施形態:風況観測期間決定支援装置の特徴≫
風況観測期間決定支援装置100Bは、周辺地の観測データと対象地の予測データとを用いて生成された予測モデル158を用いて、周辺地の観測データを基に対象地の風況を予測(算出)する。風況観測期間決定支援装置100Bは、この風況を基に年間の風況との類似度が最大となる風況となる風況観測期間を決定する。観測データを基にした風況を用いているので、年間の風況との類似度の高い風況の風況観測期間が決定されることが期待される。
【0046】
≪変形例≫
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。また本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。例えば第3実施形態において風況観測期間決定支援装置100Bは、学習部115を備え、予測モデル158を生成して風況を予測しているが、他の装置が生成した予測モデル158を用いて予測してもよい。
【0047】
上記実施形態では第1期間の長さを1年としているが、第1期間、第2期間の長さをそれぞれ10年、1年としてもよい。また、利用者の設定により、風況観測期間を分割してもよい。例えば、風況観測期間長が30日である場合に、15日間の2つの風況観測期間に分割したり、10日間の3つの風況観測期間に分割したりしてもよい。
【0048】
上記した実施形態において出現頻度分布や出現確率分布の差分を基に類似度が算出されている。差分(L1ノルム)に替えてL2ノルムを用いてもよい。出現確率分布の類似度の算出について、KL(Kullback-Leibler)ダイバージェンスやJS(Jensen-Shannon)ダイバージェンスを用いてもよい。
【0049】
上記した実施形態においては、風速の出現頻度分布、風向風速の出現頻度分布、平均風速などの何れか1つの類似度に基づいて風況観測期間を決定している。これらを組み合わせて風況観測期間を決定してもよい。例えば、出現頻度分布、風向風速の出現頻度分布、平均風速の類似度に所定の重み付けを付与した類似度を用いて風況観測期間を決定してもよい。
【0050】
本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
100 風況観測期間決定支援装置
111 設定部
112 分布算出部
112A 平均風速算出部
113,113A 類似度算出部
114 風況観測期間決定部
115 学習部
116 予測部
121 設定データ
128 プログラム
130,130B 予測データ
140 観測データ
158 予測モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9