(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040719
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】コントロール部が接続された車速連動型の散布機およびコントロール部
(51)【国際特許分類】
A01C 15/00 20060101AFI20240318BHJP
A01C 7/08 20060101ALI20240318BHJP
A01M 9/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A01C15/00 H
A01C15/00 G
A01C7/08 Z
A01M9/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145243
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 素広
【テーマコード(参考)】
2B052
2B054
2B121
【Fターム(参考)】
2B052BC05
2B052BC08
2B052DC02
2B052DC07
2B052DC09
2B052DC12
2B052DC18
2B052DD04
2B052EA02
2B052EB13
2B052EC13
2B054AA05
2B054BA01
2B054BB01
2B054CA04
2B054DD06
2B054DD19
2B054DD24
2B054EA04
2B054EA05
2B054EA08
2B054EA12
2B054EA25
2B054EA27
2B121CB09
2B121CB33
2B121CB46
2B121CB69
2B121DA62
2B121DA63
2B121EA26
2B121FA02
2B121FA11
(57)【要約】
【課題】定量散布の車速連動型散布機を可変量散布マップ利用可能散布機にする。
【解決手段】コントロール部は、非対応の車速連動型散布機の散布制御部に直接または間接的に接続するものであり、コントロール部は、記憶部と演算部を備え、記憶部は、可変散布量マップ情報を記憶でき、可変散布量マップ情報は、圃場を複数の領域に分け、領域ごとに面積当たりの予定散布量を情報として含むものであり、演算部は、GNSS受信部から得た情報から、現在の位置情報を取得し、GNSS受信部から散布機移動速度情報を取得し、位置情報と散布機移動速度情報と設定散布量から、散布部が可変散布量マップ情報どおりの予定散布量で散布するのに必要な疑似移動速度情報を生成し、これを偽散布機移動速度信号として散布機の散布制御部に送ることを特徴とするコントロール部とすることで課題を解決した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントロール部は、散布機に接続するものであって、
前記散布機は、速度測定部と散布制御部とを有し、前記散布機の移動速度にかかわらず散布部から予め設定された面積当たりの設定散布量で農業用資材を散布する車速連動型の散布機であり、
前記コントロール部は、
記憶部と演算部を備え、前記散布機の前記散布制御部に直接または間接的に接続するものであり、
前記記憶部は、可変散布量マップ情報を記憶でき、前記演算部に前記可変散布量マップ情報を送るものであり、
前記可変散布量マップ情報は、圃場を複数の領域に分け、領域ごとに面積当たりの予定散布量を情報として含むものであり、
前記演算部は、
GNSS受信部から得た情報から、
現在の位置情報を取得し、
そして、前記GNSS受信部または前記速度測定部から散布機移動速度情報を取得し、
前記現在の位置情報と前記散布機移動速度情報と前記設定散布量から、前記散布部が前記可変散布量マップ情報どおりの前記予定散布量で散布するのに必要な疑似移動速度情報を生成し、これを偽散布機移動速度信号として前記散布制御部に送ることを特徴とするコントロール部。
【請求項2】
車速連動型の散布機とコントロール部を備え、
前記散布機は、速度測定部と散布制御部とを有し、前記散布機の移動速度にかかわらず散布部から予め設定された面積当たりの設定散布量で農業用資材を散布するものであり、
前記速度測定部は、前記散布機の現在の移動速度を散布機移動速度情報として前記散布制御部へ送るものであり、
前記散布制御部は、前記散布機移動速度情報に比例した散布量とする連動散布量制御情報を前記散布部に送るものであり、
前記コントロール部は、記憶部と演算部を備え、前記散布機の前記散布制御部に直接または間接的に接続されており、
前記記憶部は、可変散布量マップ情報を記憶でき、前記演算部に前記可変散布量マップ情報を送るものであり、
前記可変散布量マップ情報は、圃場を複数の領域に分け、領域ごとに面積当たりの予定散布量を情報として含むものであり、
前記演算部は、
GNSS受信部から得た情報から、
現在の位置情報を取得し、そして、
前記GNSS受信部または前記速度測定部から前記散布機移動速度情報を取得し、
前記現在の位置情報と前記散布機移動速度情報と前記設定散布量から、前記散布部が前記可変散布量マップ情報どおりの前記予定散布量で散布するのに必要な疑似移動速度情報を生成し、これを偽散布機移動速度信号として前記散布制御部に送り、
前記散布制御部は、前記偽散布機移動速度信号に基づき、修正された連動散布量制御情報を前記散布部に送ることを特徴とする
前記コントロール部が接続された車速連動型の散布機。
【請求項3】
前記農業用資材が、肥料、土壌改良剤、種子、薬剤のいずれかである、請求項2記載の散布機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥料、薬剤、種子、石灰等などの土壌改良剤、農薬などの農業用資材を散布する散布機に関する。
【背景技術】
【0002】
(車速連動型散布機)
従来、特許文献1のような車速連動型散布機が知られていた。散布機は、枕地で回動するための減速や、圃場の状態の変化による減速や増速があるため、常に同じ速度で走行しておらず、仮に散布器から散布される農業用資材の時間当たりの散布量を一定にしたとしても、農業用資材を均等に散布することができない。そのため、面積当たり設定した散布量で散布することを可能とする車速連動型散布機が開発された。車速連動型散布機は、ゲージ輪の回転数などから車速を取得し、農業用資材を面積当たり常に同じ量散布できるよう車速に連動して散布量を変化させることができる制御部を備えている。
従来の車速連動型散布機は、1回の作業、すなわち、一つの圃場毎に、一つの散布量を設定し、圃場内を一律同じ面積当たりの散布量で散布できる散布機である。
【0003】
(可変散布量マップが利用できる散布機)
近年、作業者は、衛星写真、航空写真などから圃場の生育具合のデータを取得できるようになった。得られたデータを加工することで、一つの圃場内でも生育が良好な領域、生育が標準的な領域、生育が悪い領域は、緯度・経度情報と紐づけた生育マップを作ることができる。
また、圃場内の土壌を多数地点でサンプリングして、土壌の状態を調べた土壌成分マップをつくることも、特許文献2のように行われている。
生育マップや土壌成分マップは、肥料などの農業用資材を散布するのに利用でき、緯度・経度情報と紐づけた可変散布量マップを作ることができる。
可変散布量マップは、領域ごとに農業用資材の散布量が規定されており、肥料散布機は、GPSなどのGNSS測位装置を使用して、経度・緯度情報で規定された領域ごとに、異なる散布量で肥料を散布するのに使われている。
可変散布量マップを利用できる散布機は、肥料以外の農業用資材でも使われており、害虫の食害データマップからは、薬剤の可変散布量マップを作ることができるし、肥料でも、窒素、リン酸、カリウムごとに細かく可変散布量マップを作ることも可能である。
このような可変散布量マップは、緯度・経度と紐づけられており、圃場を複数の領域に分け、領域ごとに面積当たりの予定散布量を情報として含む。
【0004】
(GNSS測位情報)
GNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)は、GPS(Global Positioning System)や日本の準天頂衛星(QZSS)などの総称である。
GNSS受信部を備える可変散布対応型コントロール部を取り付けることができる仕様の散布機が開発されている。散布機は、コントロール部を取り付けることにより、GNSS測位情報から散布機の現在位置が緯度・経度で特定でき、可変散布量マップの緯度・経度にある領域に指定された面積当たりの散布量になるように制御することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-148439号公報
【特許文献2】特開2002-27号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の車速連動型散布機の中には、コントロール部が取り付け可能な仕様となっておらず、可変散布量マップが利用できないものがあった。つまり、車速連動型散布機がコントロール部を取り付けることを前提として作られていないため、コントロール部を取り付けても機能しない。コントロール部を取り付けられる散布機は、コントロール部の制御を受け付けるように通信や命令のフォーマット等が予め共通化されているなど対策が採られたもの(対応型の散布機)に限られている。
仮に、非対応の車速連動型散布機を所有する作業者が、コントロール部を購入し、農業用資材を圃場内の領域ごとに異なる最適な散布量で散布しようと思っても、使うことができなかった。作業者は、コントロール部に対して対応型の車速連動型散布機に買い替えるしかなかった。
【0007】
車速連動型散布機は、圃場毎に設定散布量を一つ決めてしまうため、どうしても、生育状況の悪い領域に合わせた散布量となりやすく、生育状況の良い領域にとっては最適量を超えた肥料などの農業用資材が散布されることとなる。
農業用資材価格の高騰、環境への配慮から、農業用資材を領域ごとに適切量散布できる可変散布量マップが利用できる散布機の需要が高まっている。
本発明は、コントロール部の取り付けに対応していない非対応型の車速連動型散布機であっても、可変量散布マップが利用できる散布機にすることができる手段の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一つの態様として、コントロール部は、散布機に接続するものであって、前記散布機は、速度測定部と散布制御部とを有し、前記散布機の移動速度にかかわらず散布部から予め設定された面積当たりの設定散布量で農業用資材を散布する車速連動型の散布機であり、前記コントロール部は、記憶部と演算部を備え、前記散布機の前記散布制御部に直接または間接的に接続するものであり、前記記憶部は、可変散布量マップ情報を記憶でき、前記演算部に前記可変散布量マップ情報を送るものであり、前記可変散布量マップ情報は、圃場を複数の領域に分け、領域ごとに面積当たりの予定散布量を情報として含むものであり、前記演算部は、GNSS受信部から得た情報から、現在の位置情報を取得し、そして、前記GNSS受信部または前記速度測定部から散布機移動速度情報を取得し、前記現在の位置情報と前記散布機移動速度情報と前記設定散布量から、前記散布部が前記可変散布量マップ情報どおりの前記予定散布量で散布するのに必要な疑似移動速度情報を生成し、これを偽散布機移動速度信号として前記散布制御部に送ることを特徴とするコントロール部とすることで課題を解決した。
【0009】
また、本発明は、他の態様として、車速連動型の散布機とコントロール部を備え、前記散布機は、速度測定部と散布制御部とを有し、前記散布機の移動速度にかかわらず散布部から予め設定された面積当たりの設定散布量で農業用資材を散布するものであり、前記速度測定部は、前記散布機の現在の移動速度を散布機移動速度情報として前記散布制御部へ送るものであり、前記散布制御部は、前記散布機移動速度情報に比例した散布量とする連動散布量制御情報を前記散布部に送るものであり、前記コントロール部は、記憶部と演算部を備え、前記散布機の前記散布制御部に直接または間接的に接続されており、前記記憶部は、可変散布量マップ情報を記憶でき、前記演算部に前記可変散布量マップ情報を送るものであり、前記可変散布量マップ情報は、圃場を複数の領域に分け、領域ごとに面積当たりの予定散布量を情報として含むものであり、前記演算部は、GNSS受信部から得た情報から、現在の位置情報を取得し、そして、前記GNSS受信部または前記速度測定部から前記散布機移動速度情報を取得し、前記現在の位置情報と前記散布機移動速度情報と前記設定散布量から、前記散布部が前記可変散布量マップ情報どおりの前記予定散布量で散布するのに必要な疑似移動速度情報を生成し、これを偽散布機移動速度信号として前記散布制御部に送り、
前記散布制御部は、前記偽散布機移動速度信号に基づき、修正された連動散布量制御情報を前記散布部に送ることを特徴とする前記コントロール部が接続された車速連動型の散布機とすることで課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、従来の車速連動型散布機を買い替えることなく、可変量散布マップが利用できる散布機にすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図2は対応型の散布機1の説明図である。
図2(A)は対応型の散布機に取り付けた外観図である。
図2(B)はコントロール部の記憶部に記憶される可変散布量マップ情報の説明図である。
【
図3】
図3はコントロール部を取付け非対応型の散布機に取り付けた場合の信号や情報の流れを説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施例)
実施例の散布機1は、ブロードキャスタである。前述したように、本発明の散布機1は、何らかの農業用資材を散布する散布機1であればよく、肥料の散布は一例にすぎない。農業用資材は、肥料の他に、薬剤(殺虫剤、抗菌剤、除草剤等)、石灰等の土壌改良剤、種子など、散布を要する農業用資材であれば何でもよい。
【0013】
実施例は、従来の車速連動型の散布機1を利用して「可変散布量マップが利用できる散布機」にするものである。
【0014】
(従来の車速連動型散布機)
まず、従来の車速連動型の散布機1について説明する。
図1は従来の車速連動型の散布機1の概念図である。車速連動型の散布機1は、トラクタなどの走行車体に取り付けられ、PTO軸14と動力連結される。PTO軸14の動力は、図示しない機枠に取り付けられた散布部13に送られる。散布部13は肥料を散布するのに必要な機械的構成を備えた部位であり、散布する肥料を溜めるホッパ134を有する。ホッパ134に蓄えられた肥料は、シャッタ131により散布羽根132に送られる量が調整される。シャッタ131を通過した肥料は、PTO軸14から送られた動力で回転する散布羽根132に当たり、圃場に広く散布される。回転軸133は、先端に取り付けられた散布羽根132を回転させるためのものである。
【0015】
散布作業に先立ち、作業者は、設定散布量を適宜な入力手段を用いて入力する。入力された設定散布量情報121は、散布制御部12に送られる。他方、散布機1の移動速度は、ゲージ輪111に設けられた速度測定部11で測定される。実施例の速度測定部11は、ゲージ輪111の回転に伴い信号を出力するエンコーダであり、ゲージ輪111が1回転することに伴い、所定の数のパルス信号を出すように設計されている。速度測定部11は所定時間内に何回パルス信号が出力されたのかを計測し、これを散布機移動速度情報112として信号化し散布制御部12に送る。
なお、実施例は、速度測定部11としてゲージ輪111を用いる手法を採用したが、これに限られない。たとえば、散布機移動速度情報112は、散布機1を牽引するトラクタで測定されるトラクタの走行速度を利用することも可能である。
【0016】
(散布制御部)
設定散布量情報121は、面積当たりの散布量を含む情報であり、リアルタイムで散布機1の移動速度に比例して散布量を増やさないと均一な散布量で散布することができない。
そこで、従来の車速連動型散布機1の散布制御部12は、散布機移動速度情報112を信号として受け取ると、設定散布量情報121に照らし、シャッタ131の開放量をどの程度にするかを計算する。散布制御部12は、計算した開放量にシャッタ131をするための連動散布量制御情報122を散布部13に向けて送信する。
散布機1の移動速度が変化したとしても、散布部13は、リアルタイムで入ってくる散布機移動速度情報112に連動して、圃場に対して同じ設定散布量で肥料を散布することが可能となる。
【0017】
以上の従来の車速連動型の散布機1の構成をまとめると次のようになる。
車速連動型の散布機1は、速度測定部11と散布制御部12とを有し、前記散布機1の移動速度にかかわらず散布部13から、予め設定された面積当たりの設定散布量で散布するものであり、前記速度測定部11は、前記散布機1の現在の移動速度を散布機移動速度情報112として出力するものであり、前記散布制御部12は、前記移動速度に比例した散布量とする連動散布量制御情報122を前記散布部13に送るものである。これにより、散布部13は、前記移動速度に連動した散布量で散布物(農業用資材)を散布するようになる。
【0018】
(対応型と非対応型)
以下の説明で、「対応型の散布機」や「非対応型の散布機」などという用語が使用される。
コントロール部2が接続先の散布機1が採用する通信や命令フォーマット等に合致した出力ができ、かつ、コントロール部2が接続先の散布機1を制御できるものを、コントロール部2に「対応型の散布機」という。できない散布機1は、コントロール部2に「非対応型の散布機」という。
対応と非対応の区別は、コントロール部2が散布機1に対応しているか否かと言い換えることもできる。
対応型の散布機1は、コントロール部2と決められたとおり接続するだけで、簡単にコントロール部2による制御が可能となる。
他方、非対応型の散布機1は、コントロール部2を取り付けることが想定されておらず、コントロール部2による制御を通常では受け付けない。
【0019】
(コントロール部)
コントロール部2は、散布機1とは別の装置であり、作業者の希望により散布機1に取り付けられる装置である。
図2は対応型の散布機1の説明図である。
図2(A)は対応型の散布機1に取り付けた外観図である。コントロール部2は、通信や命令のフォーマット等が、対応型の散布機1に合致するように設計されている。対応型の散布機1は、コントロール部2を取り付けるだけで直ちにコントロール部2の制御を受け付けるようになっている。
【0020】
コントロール部2は、取り付け取り外しが簡単なように持ち運び自在なコンパクトな筐体に収められている。コントロール部2は、散布機1に取り付けられることで、散布機1の機能が向上する。たとえば、コントロール部2を取り付けた散布機1は、コントロール部2が備えているGNSS受信部5と地図データを利用して、自律走行(無人を含む)が可能となるなどの機能が追加される。
【0021】
(コントロール部が備える外観まわりの部材)
コントロール部2は、中央に表示部21を備えている。実施例の表示部21は、可変散布量マップ情報31をはじめとする様々な情報を表示でき、また、アイコン等のシンボル化されたソフトキーが表示でき、様々な指令や数値を入力可能な仕様となっている。
コントロール部2の左右には、入出力端子22を有している。コントロール部2は、散布機1(ブロードキャスタ)の散布制御部12と、右の入出力端子22を介して、常時接続されている。
コントロール部2は、GNSS受信部5と図示されていない記憶部3と演算部4を備えている。右の入出力端子22は、コネクタ24を介してGNSS受信部5及び散布部13と接続されている。
【0022】
)
図2(B)はコントロール部2の記憶部3に記憶される可変散布量マップ情報31の説明図である。可変散布量マップ情報31は、作業前に、左の入出力端子22などを介して、記憶部3に格納される。
【0023】
(対応型の散布機の場合)
対応型の散布機1に接続されたコントロール部2は、可変散布量マップ情報31と現在の位置情報51を照らし合わせ、現在どの領域を走行中か特定する。そして、当該領域に割り当てられた面積当たりの散布量となるように、GNSS移動速度情報52を加味して散布部13を制御する。
散布部13の種類によって異なるが、実施例の散布部13は、シャッタ131の開度が制御される。コントロール部2は、シャッタ131の開度を散布機1の速度と連動するように制御する。
【0024】
図2(B)の可変散布量マップ情報31は、1つの圃場を領域a~領域eに分け、それぞれの領域に面積当たりの予定散布量を割り当てたものである。たとえば演算部4は、現在の散布機1の位置情報51が領域b内にあると判断した場合、粗いドットが示す散布量Akg/10aで散布すべく演算を開始する。位置情報51は、常時演算部4へと送られている。
【0025】
散布機1は、領域ごとに散布を行うのではなく、圃場を往復しながら散布する。
たとえば、散布機1が、
図2(B)で示す圃場を横方向(W-E方向)に散布する場合、往路(W→E)では、領域a・領域b・領域c・領域d及び領域eの順にすべての領域を通るルートを通ることがあり得る。
【0026】
コントロール部2は、GNSS受信部5からの位置情報51に照らして、散布機1が位置する領域の予定散布量となるように、散布部13のシャッタ131に向けて制御信号を送る。
コントロール部2は、散布機1を、位置情報51に照らして、瞬時に散布量が可変散布量マップ情報31どおりとなるようにリアルタイムで制御する。
【0027】
(非対応型の散布機の接続)
図3はコントロール部2を取付け非対応型の散布機1に取り付けた場合の信号や情報の流れを説明する概念図である。
コントロール部2は、非対応型の散布機1の散布制御部12等に間接的又は直接的に接続される。コントロール部2内の演算部4は、GNSS受信部5から送られた現在の位置情報51を受信し、記憶部3から送られた可変散布量マップ情報31を受信する。演算部4は、
図2(B)で示した可変散布量マップ情報31に含まれている経度・緯度情報と現在の位置情報51(経度・緯度)を照合する。これにより、散布機1は、可変散布量マップ情報31のどの領域を走行中か特定される。
図2(B)の可変散布量マップ情報31は、1つの圃場を領域a~領域eに分け、それぞれの領域に面積当たりの散布量を割り当てたものである。たとえば演算部4は、現在の位置情報51が領域dに入っていると判断した場合、密なドットが示す予定散布量Bkg/10aで散布すべく演算を開始する。位置情報51は、GNSS受信部5から常時演算部4へと送られてくる。演算部4は、時間当たりの位置情報51の変化から、コントロール部2を装着した散布機1の移動速度を、GNSS移動速度情報52として取得することもできる。
【0028】
なお、GNSS移動速度情報52とゲージ輪111の回転により速度を測定する速度測定部11で得られる散布機移動速度情報112は、共に同じ散布機1の速度情報であり、精度が全く変わらないのであれば両情報は完全に同じになる。両者は、どの測定手段に由来して得られた速度情報かという違いを説明のために示したものである。
また、本発明でいう「情報」とは、信号に含まれている実質的な「情報」を強調したい場合に使われる。また、本発明でいう「信号」とは、当該情報を含む具体的な信号(通信フォーマットと含む)を意味する。
【0029】
例えば、散布機移動速度情報112という場合は、移動速度という情報を強調したいときに使われるが、通信配線を伝わる時は、信号である。偽散布機移動速度信号41Bは、所定の通信フォーマットに変換された具体的な信号を意味する。
したがって、疑似移動速度情報41Aは、含まれている移動速度という情報に注目しており、情報は同じでも、所定の通信フォーマットで信号化されていないため直ちに通信に用いることができないものも含まれる。他方、「信号」という場合は、たとえば「疑似移動速度情報41A」が「偽散布機移動速度信号41B」となることで、そこに含まれる情報が、散布制御部12が受信できる形式の信号になっていることを意味する。
【0030】
非対応型の散布機1の速度測定部11が発する散布機移動速度情報112(速度情報)に着目する。
実施例の非対応型の散布機1は、速度測定部11としてゲージ輪111の回転軸に取り付けたエンコーダを備えており、そのエンコーダから発せられる生の信号をそのまま散布機移動速度情報112としている。
説明のため、ゲージ輪111が1回転するごとに1つのパルス信号を発する場合を考える。散布制御部12は、計時機能を備えており、1秒当たり何回パルス信号を受けたかを知ることで、散布機1の移動速度を知ることができる。パルスとパルスの間隔は、ゲージ輪111が1回転、すなわち、ゲージ輪111の円周の距離だけ散布機1が移動したことを意味し、一秒間に何回転するかを計測すれば、移動距離から秒速を測定できる。パルス間隔から移動速度を計算するのは散布制御部12であるが、散布機移動速度情報112が速度測定部11から送られているということができる。
【0031】
コントロール部2の演算部4は、可変散布量マップ情報31を繰り込んだ疑似移動速度情報41Aを作る。疑似移動速度情報41Aについての詳細は後述するが、疑似移動速度情報41Aは、可変散布量マップ情報31に含まれる領域ごとの散布量を反映した情報である。さらに演算部4は、疑似移動速度情報41Aを非対応型の散布機1の散布制御部12が受け取ることができる信号に書き換えた偽散布機移動速度信号41Bを生成する。
そして、非対応型の散布機1は、何らかの手段により速度測定部11が発する散布機移動速度情報112が無効化された状態にされる。
【0032】
無効化された散布機移動速度情報112に代わり、演算部4は、疑似移動速度情報41Aを偽散布機移動速度信号41Bとして散布機1の散布制御部12に送る。これにより、コントロール部2は、非対応型の散布機1の制御を奪うことができる。無効化は、速度測定部11と散布制御部12の接続を物理的に切断することでも可能である。また、散布機移動速度情報112は、コントロール部2の演算部4を経由して散布制御部12に信号が送られるようにし、コントロール部2で散布機移動速度情報112を無効にしたり有効にしたりするなど様々であり得る。また、散布機1が散布機移動速度情報112の信号に優先して偽散布機移動速度信号41Bによる制御を受けるようにすることも、無効化に含まれる。
【0033】
非対応型の散布機1の散布制御部12は、真の散布機1の移動速度と異なる偽散布機移動速度信号41Bの制御を受けることになる。コントロール部2の制御を受ける非対応型の散布機1は、偽散布機移動速度信号41Bを介して可変散布量マップ情報31に含まれる領域ごとに異なる予定散布量で肥料を散布するようになる。
【0034】
(疑似移動速度情報と偽速度信号の生成)
疑似移動速度情報41Aの生成は次のように行う。
演算部4は、
1)現在の位置情報51
2)GNSS移動速度情報52
3)設定散布量情報121
4)可変散布量マップ情報31
を取得する。
まず、演算部4は、可変散布量マップ情報31と現在の位置情報51を照らし合わせ、散布機1がどの領域を走行しているかを判別する。この判別により演算部4は、当該領域の予定散布量(たとえば、
図2(B)に示したように、位置情報51が領域bを走行中で、この領域の予定散布量がAkg/10a)を取得する。
【0035】
演算部4は、「予定散布量/設定散布量=散布量比」を計算する。
GNSS移動速度情報52に散布量比が乗算され疑似移動速度情報41Aが作られる。演算部4は、予め調べられた非対応型の散布機1の通信フォーマットどおりに、疑似移動速度情報41Aを書き換え、これを偽散布機移動速度信号41Bとして非対応型の散布機1の散布制御部12に送る。
偽散布機移動速度信号41Bを受け取った散布制御部12は、当該信号41Bに対応することで修正された連動散布量制御情報122を含む信号を散布部13に送る。この時、散布機1が散布する散布量は、可変散布量マップ情報31に基づく予定散布量となる。
このように、非対応型の散布機1であっても、実施例のコントロール部2を接続することで可変散布量マップ情報31が利用できるようになる。
【0036】
(変形例1) 速度に関する変形例
変形例1は、「2)GNSS移動速度信号」に代えて、非対応型の散布機1が有する速度測定部11で作られる散布機移動速度情報112を使う例である。前述したように散布機1の移動速度は、GNSS受信部5により測定されようが、ゲージ輪111で測定されようが、変わることはない(精度を除く)。
変形例1の演算部4は散布機1の速度測定部11が送る散布機移動速度情報112を受け取ると、散布機移動速度情報112に含まれる「速度情報」に「散布量比」を乗算する。すなわち、「速度情報×散布量比」の計算である。
【0037】
たとえば、作業中の散布機1があり、時速5kmで散布機1が走行するとき、速度測定部11のエンコーダが毎秒5回のパルスを、散布機移動速度情報112を含む信号として出力するとする。
この時の散布量比が2.0であるとすると、疑似移動速度情報41Aは、散布量比2.0×時速5km=時速10kmとなる。演算部4は、時速10kmという疑似移動速度情報41Aを、散布制御部12が受け取れるパルス信号に変えて、毎秒10回のパルスを偽散布機移動速度信号41Bとして散布制御部12へ送る。
非対応型の散布機1は、偽散布機移動速度信号41Bを介して、可変散布量マップ情報31を利用できるようになる。
【0038】
(変形例2) 可変散布量マップ情報に関する変形例
実施例は、可変散布量マップ情報31を衛星写真等から事前に作る態様であった。可変散布量マップ情報31はリアルタイムで作られてもよい。
例えば、走行車両の先頭や高所に様々なセンサを取り付け、リアルタイムで解析することで可変散布量マップ情報31を作ることができる。
【0039】
(変形例3) 農業用資材に関する変形例
肥料、薬剤、種子、石灰等などの土壌改良剤、農薬などの農業用資材の散布機1に適用できることは前述したとおりである。
薬剤には殺菌剤が含まれ、病気が発生した領域に対して多くの殺菌剤を散布するような可変散布量マップ情報31を作ることができる。
種子には、西洋芝などが含まれ、公園などで芝生の密度が薄くなったところに集中的に種子をばらまき散布するなどの可変散布量マップ情報31を作ることができる。
また、種子のすじまきの間隔を変更するなどの可変散布量マップ情報31を作ることができる。
肥料について、事前に多数ポイントで土壌を分析し、その結果得られた窒素、リン酸、カリごとの可変散布量マップ情報31を作ることができる。
農薬には殺虫剤が含まれ、害虫による食害が多い領域の散布量を多くするなどの可変散布量マップ情報31を作ることができる。
【0040】
(設計変更)
以上、本発明に係る実施例の散布機1を中心に、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構造や構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても本発明に含まれる。
また、前述の実施例や変形例は、その目的および構成などに特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【0041】
(持続可能な開発目標:SDGs)
また、本発明は、作業者が所有していた車速連動型の散布機1がコントロール部2に非対応であっても、低コストで可変散布量マップ情報31が利用できる散布機1にすることができる。農業用資材を必要以上に散布することが無くなり、農地を健全に維持できる。このように、本発明は、持続的な農作物の生産をとおして、「陸の豊かさを守ろう」という目標15に寄与できる。
【符号の説明】
【0042】
1 散布機(ブロードキャスタ)
11 速度測定部
111 ゲージ輪
112 散布機移動速度情報
12 散布制御部
121 設定散布量情報
122 連動散布量制御情報
13 散布部
131 シャッタ
132 散布羽根
133 回転軸
134 ホッパ
14 PTO軸
2 コントロール部
21 表示部
22 入出力端子
24 コネクタ
3 記憶部
31 可変散布量マップ情報
4 演算部
41A 疑似移動速度情報
41B 偽散布機移動速度信号
5 GNSS受信部
51 位置情報
52 GNSS移動速度情報