(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040720
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】状態測定装置及び状態測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20240318BHJP
G01D 5/353 20060101ALI20240318BHJP
G01K 11/322 20210101ALI20240318BHJP
【FI】
G01B11/16 Z
G01D5/353 B
G01K11/322
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145245
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 紗季
(72)【発明者】
【氏名】岡本 圭司
(72)【発明者】
【氏名】野中 隼人
【テーマコード(参考)】
2F056
2F065
2F103
【Fターム(参考)】
2F056AE03
2F056AE05
2F056AE07
2F056CA02
2F056CA18
2F065AA02
2F065AA65
2F065BB08
2F065BB12
2F065CC14
2F065CC40
2F065DD03
2F065FF41
2F065FF69
2F065JJ01
2F065LL02
2F065MM16
2F065QQ03
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065UU07
2F103BA01
2F103CA06
2F103CA07
2F103EB01
2F103EB11
2F103EB18
2F103EC09
2F103FA02
2F103GA01
2F103GA11
2F103GA14
2F103GA15
(57)【要約】
【課題】光ファイバケーブルによる被測定対象物の状態測定の測定精度を向上させる。
【解決手段】状態測定装置100は、ボーリング孔2内に折り返して埋設された光ファイバケーブル50と、光ファイバケーブル50の折返部50aを覆うカバー部材60と、を備え、光ファイバケーブル50は、往路に埋設される第1光ファイバケーブル51と、復路に埋設されカバー部材60内において第1光ファイバケーブル51に接続される第2光ファイバケーブル52と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルにより被測定対象物の状態を測定する状態測定装置であって、
前記被測定対象物内を往復するように前記被測定対象物内に折り返して埋設された前記光ファイバケーブルと、
前記光ファイバケーブルの折返部を覆うカバー部材と、を備え、
前記光ファイバケーブルは、往路に埋設される第1光ファイバケーブルと、復路に埋設され前記カバー部材内において前記第1光ファイバケーブルに接続される第2光ファイバケーブルと、を有する、
状態測定装置。
【請求項2】
前記第1光ファイバケーブル及び前記第2光ファイバケーブルは、コアと、前記コアの外周を取り囲むクラッドと、前記クラッドの外周を取り囲む被覆と、をそれぞれ有し、
前記第1光ファイバケーブルの前記被覆に対する前記クラッドの追従性は、前記第2光ファイバケーブルの前記被覆に対する前記クラッドの追従性よりも高い、
請求項1に記載の状態測定装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記光ファイバケーブルの前記折返部を所定の曲率で保持可能な曲率保持部を有する、
請求項1に記載の状態測定装置。
【請求項4】
前記第1光ファイバケーブル及び前記第2光ファイバケーブルは、コアと、前記コアの外周を取り囲むクラッドと、前記クラッドの外周を取り囲む被覆と、をそれぞれ有し、
前記曲率保持部には、前記第1光ファイバケーブルと前記第2光ファイバケーブルとを接続するために前記被覆が除去された前記第1光ファイバケーブル及び前記第2光ファイバケーブルの何れかが保持される、
請求項3に記載の状態測定装置。
【請求項5】
前記第1光ファイバケーブルと前記第2光ファイバケーブルとは、前記第1光ファイバケーブル及び前記第2光ファイバケーブルよりも許容曲げ半径が小さい第3光ファイバケーブルを介して接続され、
前記曲率保持部には、前記第3光ファイバケーブルが保持される、
請求項3に記載の状態測定装置。
【請求項6】
前記光ファイバケーブルは、前記被測定対象物に設けられた挿入孔内に挿入され、
前記光ファイバケーブルと前記挿入孔との間隙には、充填材が充填される、
請求項1から5の何れか1つに記載の状態測定装置。
【請求項7】
前記第1光ファイバケーブル及び前記第2光ファイバケーブルは、コアと、前記コアの外周を取り囲むクラッドと、前記クラッドの外周を取り囲む被覆と、をそれぞれ有し、
前記充填材に対する前記第1光ファイバケーブルの前記クラッドの追従性は、前記充填材に対する前記第2光ファイバケーブルの前記クラッドの追従性よりも高い、
請求項6に記載の状態測定装置。
【請求項8】
請求項1から5の何れか1つに記載の状態測定装置によって前記被測定対象物の状態を測定する状態測定方法であって、
前記光ファイバケーブルに光を入射する工程と、
前記光ファイバケーブルのうち、前記第1光ファイバケーブルから戻る散乱光に基づいて前記被測定対象物の歪みを計測する工程と、
前記光ファイバケーブルのうち、前記第2光ファイバケーブルから戻る散乱光に基づいて前記被測定対象物の温度を計測する工程と
計測された前記歪みを計測された前記温度を用いて補正する工程と、を含む、
状態測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態測定装置及び状態測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地盤内に埋設された光ファイバケーブルを用いて地盤の状態を測定する状態測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された状態測定装置では、地盤内に埋設された光ファイバケーブルとして、歪み計測用の光ファイバケーブルが設けられるとともに、歪み計測用の光ファイバケーブルにおいて計測された計測値を補正するために温度補償用の光ファイバケーブルが設けられている。これらの光ファイバケーブルは、散乱光計測装置に別々に接続されていることから、それぞれ異なるタイミングで計測が行われることになる。このように計測が行われるタイミングが異なると、例えば、歪み計測用の光ファイバケーブルによる計測が行われてから温度補償用の光ファイバケーブルによる計測が完了するまでの間に温度が変化した場合には、歪み計測用の光ファイバケーブルによる計測が行われたときの温度とは異なる温度で歪み量が補正されることになる。このため、歪み量の測定精度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、光ファイバケーブルによる被測定対象物の状態測定の測定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光ファイバケーブルにより被測定対象物の状態を測定する状態測定装置であって、被測定対象物内を往復するように被測定対象物内に折り返して埋設された光ファイバケーブルと、光ファイバケーブルの折返部を覆うカバー部材と、を備え、光ファイバケーブルは、往路に埋設される第1光ファイバケーブルと、復路に埋設されカバー部材内において第1光ファイバケーブルに接続される第2光ファイバケーブルと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光ファイバケーブルによる被測定対象物の状態測定の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る状態測定装置を示す図である。
【
図2】第1光ファイバケーブルの構成を説明するための断面図である。
【
図3】第2光ファイバケーブルの構成を説明するための断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る状態測定装置のカバー部材を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る状態測定装置のカバー部材の変形例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る状態測定装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る状態測定装置について説明する。
【0010】
まず、
図1から
図4を参照して、本発明の実施形態に係る状態測定装置100の構成について説明する。状態測定装置100は、被測定対象物である地盤1に埋設された光ファイバケーブル50によって地盤1の状態を測定する装置である。なお、被測定対象物は、地盤1に限定されず、光ファイバケーブル50を埋設することが可能なものであればどのようなものであってもよく、例えば、ダム等のコンクリート構造物であってもよい。
【0011】
土木構造物の構築において、地滑り等の地盤の状態を把握することは重要であり、また、トンネル等の地下空洞の掘削に伴って地盤に生じる緩み域の進展を把握することは、安定した状態で掘削を進めるためには重要であることから、地中の歪みや緩み域を検出するために、例えば、
図1に示すように、地盤1に鉛直方向上方に向けて掘削されたボーリング孔2(挿入孔)内に光ファイバケーブル50が埋設される。なお、ボーリング孔2は、一端が被測定対象物である地盤や構造物の内部において閉口し、他端が被測定対象物である地盤や構造物に対して開口する有底孔である。
【0012】
ボーリング孔2内に埋設された光ファイバケーブル50は、地中の歪みや地盤1の緩みに応じて歪みを生じることから、後述のように、光ファイバケーブル50の歪みを計測することにより地中の歪みや地盤1の緩みを計測することができる。
【0013】
図1に示される状態測定装置100は、ボーリング孔2の軸方向に沿って往復するように折り返して埋設される光ファイバケーブル50と、光ファイバケーブル50が取り付けられたパイプ材10と、パイプ材10の先端側に取り付けられ光ファイバケーブル50の折返部50aを覆うカバー部材60と、カバー部材60に取り付けられボーリング孔2の径方向外側に拡径可能な拡径体20と、パイプ材10に沿って設けられた充填ホース30と、を主に備える。
【0014】
パイプ材10は、ポリ塩化ビニル等の樹脂で形成され、ボーリング孔2の内径よりも十分に小さい外径を有する中空の長尺部材であり、軸方向に貫通して形成された内部通路11と、内部通路11の内周面において一端が開口しパイプ材10の内側と外側とを連通する連通孔12と、を有する。
【0015】
連通孔12は、状態測定装置100がボーリング孔2内に挿入された状態において、パイプ材10の先端側に形成されており、充填ホース30を通じてボーリング孔2内にグラウト40(充填材)を充填する際に、ボーリング孔2内の空気をボーリング孔2外へ排出する排出口として機能する。
【0016】
拡径体20は、供給される流体の圧力に応じて径方向外側に向かって膨張する膨張部22と、膨張部22を径方向内側において支持する支持部21と、加圧された流体を供給する供給パイプ24と、を有する。
図1には、膨張部22がボーリング孔2の径方向外側に向かって膨張し、ボーリング孔2の内壁面を膨張部22が押圧している状態が示されている。
【0017】
膨張部22は、外形が樽状または筒状に形成されたゴム製または金属製の部材であって、支持部21と膨張部22との間に形成される図示しない空間へと供給される流体の圧力に応じて径方向外側へと膨張するよう支持部21によって支持されている。
【0018】
支持部21は、カバー部材60の外面に対して図示しない固定具を介して固定されている。
【0019】
供給パイプ24は、パイプ材10に軸方向に沿って取り付けられており、その一端24aは、支持部21と膨張部22との間に形成される空間に開口している。供給パイプ24の他端24bは、加圧された流体が供給パイプ24を通じて膨張部22に供給される前の段階では、ボーリング孔2の外において、図示しないポンプ等の流体供給源に接続され、膨張部22への流体の供給が完了した段階では、
図1に示されるように、ボーリング孔2内に収容される。なお、一旦膨張した膨張部22の膨張状態を保持するために、供給された流体の逆流を防止する逆流防止弁が供給パイプ24上に設けられてもよい。
【0020】
供給パイプ24を通じて拡径体20に供給される流体は、例えば、加圧された水であり、膨張部22は、水圧に応じた荷重でボーリング孔2の内壁面を押圧する。なお、拡径体20に供給される流体は、水に限定されず、圧縮空気や加圧された作動油であってもよい。
【0021】
充填ホース30は、ボーリング孔2内に充填されるグラウト40が流通するホースであり、グラウト40を放出する放出口30aが、ボーリング孔2内において開口するようにパイプ材10に沿って取り付けられている。放出口30aの位置は、
図1に示すように、パイプ材10に形成された連通孔12よりも鉛直方向下方に設定されている。なお、放出口30aは、連通孔12よりも鉛直方向下方に配置されていればよく、例えば、ボーリング孔2の開口端2b付近に配置されていてもよい。充填ホース30の他端は、ボーリング孔2の外において、図示しないグラウト送出ポンプに接続される。
【0022】
光ファイバケーブル50は、
図1に示されるように、ボーリング孔2の底面2a付近の折返部50aにおいて折り返され、ボーリング孔2内を往復するようにして地盤1内に設けられている。
【0023】
光ファイバケーブル50の先端部50bは、ボーリング孔2の開口端2b付近に配置され、先端面において反射が生じないように油脂、シリコン等のシール材によって閉塞処理されている。一方、光ファイバケーブル50の基端部50cは、ボーリング孔2の外側において、計測装置70に接続されている。
【0024】
光ファイバケーブル50は、ボーリング孔2の開口端2b側から底面2aに向かう往路に埋設される第1光ファイバケーブル51と、底面2a側から開口端2bに向かう復路に埋設される第2光ファイバケーブル52と、の2つの異なる光ファイバケーブルによって主に構成されている。なお、往路や復路という表現は光ファイバケーブルが敷設される経路を区別するためのものであって、往路に埋設されるものを第2光ファイバケーブルとし、復路に埋設されるものを第1光ファイバケーブルとしてもよい。
【0025】
第1光ファイバケーブル51は、地盤1に生じる歪みを計測するために用いられる光ファイバセンサであり、
図2に示されるように、第1光ファイバ素線51aと、鋼製の線材であるテンションメンバ51eと、これらを覆う樹脂製の被覆51dと、を有する。第1光ファイバ素線51aは、コア51b、コア51bの外周を取り囲むクラッド51c、及び、クラッド51cの周囲を被覆する図示しない紫外線硬化樹脂により構成される。なお、
図2は、第1光ファイバケーブル51の断面図である。
【0026】
被覆51dの表面には、ボーリング孔2内に充填されるグラウト40との密着性を高めるために、エンボス加工が施されている。これにより、グラウト40を介して地盤1において生じた歪みが、第1光ファイバ素線51aへと伝達されやすくなる。
【0027】
第2光ファイバケーブル52は、地盤1内の温度を計測するために用いられる光ファイバセンサであり、
図3に示されるように、第2光ファイバ素線52aと、第2光ファイバ素線52aを覆うように設けられる金属管52d(被覆)と、を有する。
【0028】
第2光ファイバ素線52aは、第1光ファイバ素線51aと同様に、コア52b、コア52bの外周を取り囲むクラッド52c、及び、クラッド52cの周囲を被覆する図示しない紫外線硬化樹脂により構成される。
【0029】
金属管52dは、耐食性が高いステンレスやニッケル合金により形成された鋼管であり、第2光ファイバ素線52aの外径よりも大きな内径を有している。つまり、第2光ファイバ素線52aと金属管52dとの間には僅かな隙間が形成されており、第2光ファイバ素線52aは金属管52dに拘束されることなく自由に伸縮できるようになっている。なお、
図3は、第2光ファイバケーブル52の断面図である。
【0030】
歪み計測用の第1光ファイバケーブル51の被覆51dに対するクラッド51c(第1光ファイバ素線51a)の追従性と、温度計測用の第2光ファイバケーブル52の金属管52d(被覆)に対するクラッド52c(第2光ファイバ素線52a)の追従性とを比較すると、前者の方が高く、後者の方が低くなっている。換言すると、第1光ファイバケーブル51の被覆51dとクラッド51cとの間の摩擦係数と第2光ファイバケーブル52の被覆(金属管52d)とクラッド52cとの間の摩擦係数とを比較すると、前者の方が後者よりも大きくなっている。つまり、それぞれの被覆が埋設されるグラウト40(充填材)に対する第1光ファイバ素線51a(クラッド51c)の追従性と第2光ファイバ素線52a(クラッド52c)の追従性とを比較すると、前者の方が高く、後者の方が低くなっている。
【0031】
特に、第1光ファイバケーブル51の被覆51dの表面には、上述のようにエンボス加工が施されており、被覆51dがグラウト40に密着しやすくなっていることから、グラウト40に対する第1光ファイバ素線51a(クラッド51c)の追従性は、より高められているといえる。また、第2光ファイバケーブル52の第2光ファイバ素線52aと金属管52d(被覆)との間には、上述のように僅かな隙間が設けられ、第2光ファイバ素線52aが金属管52d(被覆)に追従しにくくなっていることから、グラウト40に対する第2光ファイバ素線52a(クラッド52c)の追従性は、より低められているといえる。
【0032】
つまり、地盤1に歪みが生じた場合、第1光ファイバケーブル51では、その歪みが被覆51dを介して第1光ファイバ素線51aに伝達されやすくなっている一方で、第2光ファイバケーブル52では、その歪みが金属管52dを介して第2光ファイバ素線52aに伝達されにくくなっている。
【0033】
また、温度計測用の第2光ファイバケーブル52では、熱伝導性が高い金属管52dが第2光ファイバ素線52aを覆う被覆となっているため、地盤1の温度が第2光ファイバ素線52aへと伝達されやすくなっている。
【0034】
これら第1光ファイバケーブル51と第2光ファイバケーブル52とは、光ファイバケーブル50の折返部50aを覆うカバー部材60内において、第1光ファイバ素線51aと第2光ファイバ素線52aとが融着されることによって接続される。具体的には、第1光ファイバ素線51aと第2光ファイバ素線52aとは、コア51b,52b同士が融着され、クラッド51c,52c同士が融着されることによって接続される。第1光ファイバ素線51aと第2光ファイバ素線52aとを融着する際に支障となる第1光ファイバケーブル51の被覆51dと第2光ファイバケーブル52の金属管52d(被覆)とは、端部から所定の長さにわたってそれぞれ予め除去される。第1光ファイバ素線51aと第2光ファイバ素線52aとが融着された部分は、後述の保護スリーブ54によって保護される。なお、第1光ファイバケーブル51と第2光ファイバケーブル52との接続方法は、融着接続に限定されず、メカニカルスプライス接続やコネクタ接続であってもよい。但し、接続部における接続損失を低減させるためには、融着接続とすることが好ましい。
【0035】
また、パイプ材10の外周面に軸方向に沿って設けられる第1光ファイバケーブル51及び第2光ファイバケーブル52は、供給パイプ24及び充填ホース30と共に固定テープ14によってパイプ材10に敷設され一体化するように固定される。なお、パイプ材10と第1光ファイバケーブル及び第2光ファイバケーブルとは、ボーリング孔2内にパイプ材10と第1光ファイバケーブル及び第2光ファイバケーブルが挿入される際に一体化されていればよい。固定テープ14は、軸方向において所定の間隔で複数設けられる。
【0036】
カバー部材60は、射出成形によって形成された樹脂製の筐体であり、
図4に示されるように、光ファイバケーブル50の折返部50aを収容可能な形状に形成された収容部61と、収容部61内に取り回された光ファイバケーブル50が外部に露出しないように収容部61に取り付けられる図示しない蓋部材と、を有する。なお、
図4には、収容部61から蓋部材が取り外された状態における収容部61の内部の形状が示されている。
【0037】
収容部61は、板状の底壁61aと、底壁61aの外縁に沿って形成された側壁61bと、を有し、収容部61内には、光ファイバケーブル50の折返部50aを所定の曲率で保持可能な曲率保持部63が設けられるとともに、第1光ファイバケーブル51を保持可能な第1保持部64と、第2光ファイバケーブル52を保持可能な第2保持部65と、第1光ファイバ素線51aと第2光ファイバ素線52aとの融着部分を保護する保護スリーブ54を保持可能なスリーブ保持部66と、余長部を保持可能な余長保持部67と、が設けられる。
【0038】
曲率保持部63は、底壁61aから円形状に膨出した膨出部63aと、膨出部63aと側壁61bとの間に形成される溝部63bと、を有する。膨出部63aの外周面は、所定の曲率の円弧面63cとなっており、溝部63bに挿入された光ファイバケーブル50は、円弧面63cに沿って保持される。このように曲率保持部63によって保持されることで、光ファイバケーブル50は、その延在方向が転換される。つまり、曲率保持部63によって保持される部分が光ファイバケーブル50の折返部50aとなる。
【0039】
円弧面63cの曲率の大きさは、光ファイバケーブル50の曲げ損失が増大することを避けるために、光ファイバケーブル50の最小曲げ半径に応じて設定される。例えば、
図4に示すように、第2光ファイバ素線52aが折返部50aに設けられる場合、円弧面63cの曲率の大きさは、第2光ファイバ素線52aの最小曲げ半径に応じて、曲げ損失が増大しないように設定される。
【0040】
なお、折返部50aでの曲げ損失を低減させるには、円弧面63cの曲率を小さくした方がよいが、円弧面63cの曲率を小さくすると、カバー部材60の幅が大きくなるため、カバー部材60が挿入されるボーリング孔2の内径を大きくしなければならない。一方で、ボーリング孔2の掘削に要する費用や時間は、ボーリング孔2の内径が大きくなるほど増大することから、ボーリング孔2の内径はできるだけ小さくすることが好ましい。
【0041】
また、一般的に、第1光ファイバケーブル51や第2光ファイバケーブル52のようなケーブルと、第1光ファイバ素線51aや第2光ファイバ素線52aのような素線と、を比較した場合、光ファイバ素線の方が曲がりやすく、その最小曲げ半径も小さい。
【0042】
このため、本実施形態では、第2光ファイバ素線52aのような素線が折返部50aに配置されるようにすることによって、円弧面63cの曲率を大きくし、カバー部材60の幅をできるだけ小さくしている。これにより、ボーリング孔2の内径が小さい場合であってもカバー部材60を挿入することが可能となる。
【0043】
円弧面63cが設けられる膨出部63aの形状は、円形状に限定されず、ボーリング孔2内に挿入される際にボーリング孔2の底面2aに当接するカバー部材60の先端部側に向かって凸状に形成された円弧面63cを有していればどのような形状であってもよく、例えば、半円形状や三日月形状であってもよい。
【0044】
第1保持部64は、被覆51dが除去されていない第1光ファイバケーブル51が嵌め込まれることによって第1光ファイバケーブル51を保持可能な形状に形成された溝部64aであり、第2保持部65は、金属管52dが除去されていない第2光ファイバケーブル52が嵌め込まれることによって第2光ファイバケーブル52を保持可能な形状に形成された溝部65aである。各溝部64a,65aは、収容部61の内側と外側とを連通するように側壁61bの一部分を切り欠くことによって形成される。
【0045】
スリーブ保持部66は、直線状に延びる側壁61bとこれと平行に延びる内部壁66aとの間に形成された溝部66bであって、溝部66bの幅の大きさは、保護スリーブ54の外径よりも僅かに小さく設定される。保護スリーブ54が溝部66bに嵌め込まれることによって、第1光ファイバ素線51aと第2光ファイバ素線52aとの融着部分は保護スリーブ54を介してカバー部材60に固定される。
【0046】
なお、保護スリーブ54は、脆弱部である第1光ファイバ素線51aと第2光ファイバ素線52aとの融着部分を保護するために設けられる管状部材であり、内部には、第1光ファイバ素線51aと第2光ファイバ素線52aとに跨って設けられる棒状の硬質部材が設けられている。
【0047】
余長保持部67は、第1光ファイバケーブル51と第2光ファイバケーブル52とを接続する際に、余裕を持って被覆51dが除去された第1光ファイバ素線51aの余長部分や余裕を持って金属管52dが除去された第2光ファイバ素線52aの余長部分が取り回される部分であり、底壁61aから半円形状に膨出した膨出部67aを有する。膨出部67aの外周面の一部は、所定の曲率の円弧面67bとなっており、光ファイバケーブル50は、円弧面67bに沿って保持される。
【0048】
円弧面67bが設けられる膨出部67aの形状は、半円形状に限定されず、円弧面67bを有していればどのような形状であってもよく、例えば、曲率保持部63の膨出部63aと同様に円形状であってもよい。なお、余長部分が短い場合には、光ファイバケーブル50は、破線で示されるように、膨出部67aと側壁61bとの間に形成される溝部67cに沿って保持されてもよい。また、余長部分が長い場合には、光ファイバケーブル50は、曲率保持部63の膨出部63aを周回することにより保持されてもよい。
【0049】
また、余長保持部67は、
図4に示されるように、第2光ファイバ素線52aの余長部分を保持するものに限定されず、これに代えて、または、これに加えて、第1光ファイバ素線51aの余長部分を保持可能な位置に形成されていてもよい。
【0050】
このように内部に光ファイバケーブル50が取り回されたカバー部材60は、折返部50aを保持する曲率保持部63が設けられた部分側がボーリング孔2の底面2aに対向するようにパイプ材10の先端側に取り付けられる。つまり、ボーリング孔2内にパイプ材10等を挿入する際、まず、カバー部材60がボーリング孔2内に挿入され、カバー部材60の先端部がボーリング孔2の底面2aに当接するまで挿入される。
【0051】
また、状態測定装置100は、ボーリング孔2の開口端2bにおいて、パイプ材10の基端部をボーリング孔2に対して固定するためのフランジ16をさらに有する。
【0052】
フランジ16は、ボーリング孔2の外側に突出するパイプ材10の基端部を支持するために設けられた板状部材であり、パイプ材10とパイプ材10の周りに設けられる光ファイバケーブル50及び充填ホース30とが挿通可能な挿通孔16aと、ボーリング孔2の開口部を取り囲むように地盤1に埋め込まれたアンカーボルト4が挿通する複数のボルト孔16bと、を有する。フランジ16は、アンカーボルト4に螺合されたナット5が締め付けられることによって、ボーリング孔2に対して固定された状態となる。
【0053】
また、フランジ16には、一端がボーリング孔2内において開口する図示しない封止材注入孔が形成されており、この封止材注入孔を通じてボーリング孔2内のフランジ16近傍にウレタン材等の封止材18が注入されることによって、ボーリング孔2の開口端2bが閉塞され、ボーリング孔2内の空間は外部に対して遮断された状態となる。
【0054】
封止材18が開口端2bに注入されることによって遮断されたボーリング孔2内の空間に、充填ホース30を通じてセメントベントナイト等のグラウト40(充填材)が充填されることにより、光ファイバケーブル50は、パイプ材10とともにボーリング孔2内に埋設され、地盤1とほぼ一体化された状態となる。なお、グラウト40が充填される際、ボーリング孔2内の空気は、パイプ材10の連通孔12及び内部通路11を通じてボーリング孔2の外へと排出される。
【0055】
次に、上記構成の状態測定装置100によって、被測定対象物である地盤1の状態を測定する方法について説明する。
【0056】
一般的に、光ファイバケーブルには入射されたパルス光を僅かに後方に散乱させる性質があり、この性質を利用することにより、光ファイバケーブルにおける複数位置での歪みを計測することが可能である。散乱光の周波数は光ファイバケーブルの歪みに依存するため、パルス光を光ファイバケーブルに入射し、散乱光の周波数を計測することにより光ファイバケーブルの歪みを計測することができる。また、光ファイバケーブルにパルス光を入射してから光ファイバケーブル内で発生した散乱光が入射位置に戻るまでの時間を測定することにより、散乱光が発生した位置、すなわち光ファイバケーブルに歪みが生じた位置を計測することができる。
【0057】
一方で、散乱光の周波数は、歪みだけではなく、周囲温度の変化によっても変わることから、散乱光の周波数から単に歪みを求めた場合、演算された歪みには、温度変化による周波数の変化分も含まれてしまうことになる。つまり、歪みを正確に測定するためには、温度変化に相当する周波数の変化量を補償する必要がある。
【0058】
温度に応じた周波数の変化を補償するために、温度補償用の光ファイバケーブルを別途設けることも考えられるが、歪みを計測するための光ファイバケーブルと温度補償用の光ファイバケーブルとで計測が行われるタイミングが異なると、例えば、歪み計測用の光ファイバケーブルによる計測が行われてから温度補償用の光ファイバケーブルによる計測が完了するまでの間に温度が変化した場合には、歪み計測用の光ファイバケーブルによる計測が行われたときの温度とは異なる温度で歪み量が補正されることになる。
【0059】
このため、単に温度補償用の光ファイバケーブルを設けただけでは、温度変化の影響を確実に除去することができず、結果として歪み量の測定精度が低下してしまうおそれがある。
【0060】
そこで本実施形態では、上述のように、地盤1に生じる歪みを計測するために用いられる第1光ファイバケーブル51と、地盤1内の温度を計測するために用いられる第2光ファイバケーブル52と、を接続することによって形成された単一の光ファイバケーブル50をボーリング孔2内に折り返して埋設し、地盤1の歪みの計測と地盤1の温度の計測とを同時に行うことを可能とし、歪み量の測定に及ぼされる温度変化の影響を確実に除去している。
【0061】
具体的には、まず、計測装置70内の図示しない光源から光ファイバケーブル50へと所定のパルス光が入射される(光入射工程)。
【0062】
続いて、光ファイバケーブル50のうち、第1光ファイバケーブル51から戻る散乱光(反射光)に基づいて地盤1の歪みがボーリング孔2に沿って計測される(歪み計測工程)。歪みの計測は、例えば、ブリルアン散乱を利用した公知のBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometry)方式によって行われる。
【0063】
これとほぼ同時に、光ファイバケーブル50のうち、第2光ファイバケーブル52から戻る散乱光(反射光)に基づいて地盤1の温度がボーリング孔2に沿って計測される(温度計測工程)。温度の計測は、歪みの計測と同様に、公知のBOTDR方式によって行われる。
【0064】
このようにしてボーリング孔2内の軸方向における歪み分布及び温度分布が同時に計測されると、第2光ファイバケーブル52において計測された温度を用いて第1光ファイバケーブル51において計測された歪みが補正される(補正工程)。
【0065】
ここで、歪みを算出するために第1光ファイバケーブル51で取得された周波数差(周波数シフト)には、上述のように、温度に応じた差分も含まれている。一方、第2光ファイバケーブル52で取得された周波数差(周波数シフト)は、温度に応じた差分のみであり、歪みに応じた差分は含まれていない。
【0066】
したがって、第1光ファイバケーブル51で取得された周波数差から第2光ファイバケーブル52で取得された周波数差を差し引くことにより、歪みのみに起因する周波数差が求められる。このようにして求められた歪みのみに起因する周波数差に基づいて、ボーリング孔2の所定位置において生じた歪みを精度よく計測することができる。
【0067】
なお、歪み及び温度の計測は、上記方式に限定されず、光ファイバケーブル50の後方散乱光に基づいて計測することができれば他の方式により行われてもよく、例えば、公知のOFDR(Optical Frequency Domain Reflectometry)方式で行われてもよいし、上述の方式とOFDR方式とを組み合わせて行われてもよい。
【0068】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0069】
本実施形態に係る状態測定装置100によれば、ボーリング孔2内に埋設された光ファイバケーブル50は、往路に埋設される第1光ファイバケーブル51と復路に埋設される第2光ファイバケーブル52とが接続されることによって一体化されている。
【0070】
このため、第1光ファイバケーブル51での計測と第2光ファイバケーブル52での計測とは同じタイミングで行われることになる。これにより第1光ファイバケーブル51により測定された計測値を、同じタイミングで第2光ファイバケーブル52により測定された計測値によって補正することが可能となり、結果として、地盤1の歪み(被測定対象物の状態)の測定精度を向上させることができる。また、第1光ファイバケーブル51での計測と第2光ファイバケーブル52での計測とが同時に行われるため、地盤1の歪みの測定に要する時間を短縮することができる。
【0071】
また、折返部50aにおいて光ファイバケーブル50は、カバー部材60により所定の曲率で保持される。このため、折返部50aにおいて曲げ損失が生じることが抑制され、結果として、折返部50aを有する場合であっても光ファイバケーブル50の全域における計測精度を維持することが可能である。
【0072】
また、第1光ファイバケーブル51と第2光ファイバケーブル52との接続部は、カバー部材60内に配置される。このため、脆弱部となる接続部を外部から保護することができる。
【0073】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0074】
上記実施形態では、折返部50aには第2光ファイバ素線52aが配置されている。これに代えて、
図5に示す変形例のように、第1光ファイバ素線51a及び第2光ファイバ素線52aとは別の第3光ファイバ素線53(第3光ファイバケーブル)が折返部50aに配置され、この第3光ファイバ素線53が曲率保持部63により保持されていてもよい。なお、
図5は、
図4に相当する図である。
【0075】
図5に示される変形例において、第1光ファイバケーブル51と第2光ファイバケーブル52とは、第3光ファイバ素線53を介して接続されている。具体的には、第3光ファイバ素線53の一端53aが第1光ファイバ素線51aに融着され、第3光ファイバ素線53の他端53bが第2光ファイバ素線52aに融着され、各融着部は、第1保護スリーブ154及び第2保護スリーブ155によってそれぞれ保護されている。
【0076】
第3光ファイバ素線53は、例えばホーリーファイバのような曲げ耐性に特化した光ファイバであり、最小曲げ半径が第1光ファイバ素線51a及び第2光ファイバ素線52aよりも小さいものが用いられる。
【0077】
この変形例では、
図5に示されるように、カバー部材160の収容部161には、上記実施形態と同様の曲率保持部63が設けられる他に、第1保護スリーブ154を保持可能な第1スリーブ保持部166と、第2保護スリーブ155を保持可能な第2スリーブ保持部167と、が設けられる。
【0078】
第1スリーブ保持部166は、直線状に延びる側壁61bとこれと平行に延びる内部壁166aとの間に形成された溝部166bであって、溝部166bの幅の大きさは、第1保護スリーブ154の外径よりも僅かに小さく設定される。第1保護スリーブ154が溝部166bに嵌め込まれることによって、第1光ファイバ素線51aと第3光ファイバ素線53との融着部分は第1保護スリーブ154を介してカバー部材160に固定される。
【0079】
第2スリーブ保持部167は、第1スリーブ保持部166と同様に、直線状に延びる側壁61bとこれと平行に延びる内部壁167aとの間に形成された溝部167bであって、溝部167bの幅の大きさは、第2保護スリーブ155の外径よりも僅かに小さく設定される。第2保護スリーブ155が溝部167bに嵌め込まれることによって、第2光ファイバ素線52aと第3光ファイバ素線53との融着部分は第2保護スリーブ155を介してカバー部材160に固定される。
【0080】
折返部50aに配置される第3光ファイバ素線53は、第1光ファイバ素線51a及び第2光ファイバ素線52aよりも最小曲げ半径が小さいことから、この変形例では、上記実施形態よりも曲率保持部63の円弧面63cの曲率を大きくし、カバー部材160の幅をさらに小さくすることが可能となる。これにより内径がさらに小さいボーリング孔2内に光ファイバケーブル50を埋設することができる。
【0081】
なお、第3光ファイバ素線53のうち、曲率保持部63によって保持される部分は、第1光ファイバケーブル51と同様に、樹脂製の被覆で覆われた光ファイバケーブル状となっていてもよい。また、カバー部材160の収容部161には、上記実施形態と同様に、余長部を保持可能な余長保持部67が設けられていてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、光ファイバケーブル50は、地盤1に鉛直方向上方に向けて掘削されたボーリング孔2内に埋設されている。これに代えて、光ファイバケーブル50は、水平方向に掘削されたボーリング孔2内に埋設されてもよいし、
図6に示す変形例のように、鉛直方向下方に向けて掘削されたボーリング孔2内に埋設されてもよい。
【0083】
図6に示される変形例では、光ファイバケーブル50は、パイプ材10ではなく、鋼製のロープ264とともにボーリング孔2内へと挿入される。
【0084】
具体的には、
図6に示される状態測定装置200は、ボーリング孔2の軸方向に沿って往復するように折り返して埋設される光ファイバケーブル50と、光ファイバケーブル50の折返部50aを覆うカバー部材260と、カバー部材260に取り付けられた錘262と、カバー部材260に一端が接続されたロープ264と、を有する。
【0085】
カバー部材260は、上記実施形態のカバー部材60と同様に、光ファイバケーブル50の折返部50aを所定の曲率で保持可能な構成を有するとともに、第1光ファイバケーブル51と第2光ファイバケーブル52との接続部分を保持可能な構成を有する。
【0086】
錘262は、カバー部材260の側面に取り付けられた金属製部材であり、カバー部材260をボーリング孔2内へと挿入する際にカバー部材260の位置を安定させる重量物として機能するものである。なお、錘262は、カバー部材260を収納可能な空間が内部に形成された筒状の金属製部材であってもよい。また、錘262は、カバー部材260の先端側にワイヤ等を介して連結され、カバー部材260よりも先にボーリング孔2内へと挿入されるものであってもよい。
【0087】
ロープ264は、カバー部材260を錘262とともにボーリング孔2内へと挿入する際に、これらを吊り下げ支持する鋼製のワイヤロープであり、他端は図示しないウインチ等の巻取装置に取り付けられている。なお、ロープ264は、鋼製のワイヤロープに限定されず、ポリエチレン等により形成される樹脂製のロープであってもよい。また、ロープ264は、非自転性ロープであることが好ましい。また、ロープ264の一端は、カバー部材260に代えて、錘262に接続されていてもよい。
【0088】
ボーリング孔2内に折り返して設けられる光ファイバケーブル50は、軸方向において所定の間隔で設けられた複数の固定テープ14によってロープ264に固定されており、この状態でボーリング孔2内へと挿入される。
【0089】
そして、
図6に示されるように、カバー部材260の先端部がボーリング孔2の底面2aに当接し、光ファイバケーブル50の先端部50bが、ボーリング孔2の開口端2b付近に位置した状態において、ボーリング孔2内にはグラウト40が充填される。
【0090】
このように光ファイバケーブル50が鉛直方向下方に向けて掘削されたボーリング孔2内に埋設される場合も、上記実施形態と同様に、地盤1の歪み(被測定対象物の状態)の測定精度を向上させることができる。
【0091】
また、上記実施形態では、折返部50aには第2光ファイバ素線52aが配置されている。これに代えて、折返部50aには被覆51dが除去されていない第1光ファイバケーブル51または金属管52dが除去されていない第2光ファイバケーブル52が配置されていてもよい。但し、上述のように、折返部50aが保持される曲率保持部63の円弧面63cの曲率を大きくするためには、光ファイバ素線51a,52aを折返部50aに配置することが好ましい。
【0092】
また、上記実施形態では、ボーリング孔2の開口端2b側から底面2aに向かう往路に第1光ファイバケーブル51が埋設されており、底面2a側から開口端2bに向かう復路に第2光ファイバケーブル52が埋設されている。これに変えて、往路に第2光ファイバケーブル52が埋設され、復路に第1光ファイバケーブル51が埋設されていてもよい。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0094】
100,200・・・状態測定装置
1・・・地盤(被測定対象物)
2・・・ボーリング孔(挿入孔)
40・・・グラウト(充填材)
50・・・光ファイバケーブル
50a・・・折返部
51・・・第1光ファイバケーブル
51a・・・第1光ファイバ素線
51b・・・コア
51c・・・クラッド
51d・・・被覆
52・・・第2光ファイバケーブル
52a・・・第2光ファイバ素線
52b・・・コア
52c・・・クラッド
52d・・・金属管(被覆)
53・・・第3光ファイバ素線(第3光ファイバケーブル)
60,160,260・・・カバー部材
63・・・曲率保持部