(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040727
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】コーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置
(51)【国際特許分類】
B29B 17/00 20060101AFI20240318BHJP
B32B 38/18 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B29B17/00
B32B38/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145265
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 太寿
(72)【発明者】
【氏名】深谷 知巳
(72)【発明者】
【氏名】大西 郷
(72)【発明者】
【氏名】長澤 俊明
【テーマコード(参考)】
4F100
4F401
【Fターム(参考)】
4F100AK03A
4F100AK41A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CC00B
4F100EH46B
4F100EJ37
4F100EJ42
4F100EJ94
4F100JL14B
4F401AA02
4F401AA09
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4F401AA17
4F401AA22
4F401AA23
4F401AA24
4F401AA26
4F401AD01
4F401AD07
4F401CA35
4F401CA38
4F401CA39
4F401CA48
4F401CA49
4F401CA91
4F401CB01
4F401CB34
4F401CB35
(57)【要約】
【課題】ロールツーロールで搬送される積層フィルムからコーティング層を容易に除去できるコーティング層の除去方法を提供すること。
【解決手段】第1の基材フィルムと第1のコーティング層とを有する第1の積層フィルム50を第1のロール1から繰り出す工程と、第2のロール1Aから第2のフィルム(例えば第2の積層フィルム50A)を繰り出す工程と、第1の積層フィルム50の第1のコーティング層の側の面と、第2のフィルムの一方の面とを対向させて接触させる工程と、第1の積層フィルム50及び第2のフィルムを延伸する工程と、第1の積層フィルムと第2のフィルムとの接触を解除する工程と、接触が解除された第1の積層フィルム500から第1のコーティング層520を除去する第1の除去工程と、第1の基材フィルム51をロール状に巻き取る第1の巻取工程とを有する、コーティング層の除去方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材フィルムと、第1のコーティング層とを有する第1の積層フィルムが巻回された第1のロールと、第2のフィルムが巻回された第2のロールとを準備する工程と、
前記第1のロールから前記第1の積層フィルムを繰り出す工程と、
前記第2のロールから前記第2のフィルムを繰り出す工程と、
繰り出された前記第1の積層フィルムの前記第1のコーティング層の側の面と、繰り出された前記第2のフィルムの一方の面とを対向させて接触させる工程と、
前記第1の積層フィルムと前記第2のフィルムとが接触した状態で、前記第1の積層フィルム及び前記第2のフィルムを延伸する工程と、
前記第1の積層フィルムと前記第2のフィルムとの接触を解除する工程と、
接触が解除された前記第1の積層フィルムから前記第1のコーティング層を除去する第1の除去工程と、
前記第1のコーティング層が除去された前記第1の基材フィルムをロール状に巻き取る第1の巻取工程と、を有する、
コーティング層の除去方法。
【請求項2】
前記第1の除去工程は、前記第1のコーティング層を前記第1の基材フィルムから第1の粘着ロールに転着させる工程である、
請求項1に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項3】
前記第1の除去工程は、前記第1のコーティング層を第1のブレード又は第1のワイヤブラシを用いて前記第1の基材フィルムから掻き落す工程である、
請求項1に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項4】
前記第1の除去工程は、前記第1のコーティング層を前記第1の基材フィルムから第1のブラスト材で削り取る工程である、
請求項1に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項5】
前記延伸する工程は、前記第1の積層フィルム及び前記第2のフィルムを加熱しながら行う、
請求項1に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項6】
前記接触を解除する工程の後、かつ前記第1の除去工程の前に、接触が解除された前記第1の積層フィルムの前記第1のコーティング層に向けて過熱水蒸気を吹き付ける工程を有する、
請求項1に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項7】
前記第2のフィルムは、第2の積層フィルムであり、
前記第2の積層フィルムは、第2の基材フィルムと、第2のコーティング層とを有し、
前記接触させる工程は、前記第1の積層フィルムの前記第1のコーティング層の側の面と、前記第2の積層フィルムの前記第2のコーティング層の側の面とを対向させて接触させる工程であり、
前記接触を解除する工程の後、接触が解除された前記第2の積層フィルムから前記第2のコーティング層を除去する第2の除去工程と、
前記第2のコーティング層が除去された前記第2の基材フィルムをロール状に巻き取る第2の巻取工程と、をさらに有する、
請求項1に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項8】
第3の基材フィルムと第3のコーティング層とを有する1枚以上の第3の積層フィルムをさらに繰り出す工程と、
前記第3の積層フィルムの前記第3のコーティング層の面が外側に配置されないように、1以枚上の前記第3の積層フィルムと、前記第1の積層フィルムと、前記第2のフィルムとを重ねて接触させる工程と、
前記第1の積層フィルムと、前記第2のフィルムと、1枚以上の前記第3の積層フィルムとが接触した状態で、前記第1の積層フィルム、前記第2のフィルム及び1枚以上の前記第3の積層フィルムを延伸する工程と、
延伸後に前記第1の積層フィルムと、前記第2のフィルムと、1枚以上の前記第3の積層フィルムとの接触を解除する工程と、
接触が解除された1枚以上の前記第3の積層フィルムから前記第3のコーティング層を除去する第3の除去工程と、
前記第3のコーティング層が除去された前記第3の基材フィルムをロール状に巻き取る第3の巻取工程と、を有する
請求項1に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項9】
前記第1の積層フィルムは、セラミックグリーンシート付き積層フィルムであり、
前記第1のコーティング層の前記第1の基材フィルムとは反対側には、セラミックグリーンシートが付着している、
請求項1に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項10】
第1の基材フィルムと、第1のコーティング層とを有する第1の積層フィルムが巻回された第1のロールから前記第1の積層フィルムを繰り出す第1の繰出手段と、
第2のフィルムが巻回された第2のロールから前記第2のフィルムを繰り出す第2の繰出手段と、
繰り出された前記第1の積層フィルムの前記第1のコーティング層の側の面と、繰り出された前記第2のフィルムの一方の面とを対向させて接触させる接触手段と、
前記第1の積層フィルムと前記第2のフィルムとが接触した状態で、前記第1の積層フィルム及び前記第2のフィルムを延伸させる延伸手段と、
前記第1の積層フィルムと前記第2のフィルムとの接触を解除する接触解除手段と、
接触が解除された前記第1の積層フィルムから前記第1のコーティング層を除去する第1の除去手段と、
前記第1の基材フィルムをロール状に巻き取る第1の巻取手段と、を備える、
コーティング層の除去装置。
【請求項11】
前記第1の除去手段は、第1の粘着ロールを備え、前記第1の除去手段は、前記第1のコーティング層を前記第1の基材フィルムから前記第1の粘着ロールに転着させる手段である、
請求項10に記載のコーティング層の除去装置。
【請求項12】
前記第1の除去手段は、前記第1のコーティング層を前記第1の基材フィルムから掻き落すことができる第1のブレード又は第1のワイヤブラシを備える、
請求項10に記載のコーティング層の除去装置。
【請求項13】
前記第1の除去手段は、前記第1のコーティング層を前記第1の基材フィルムから第1のブラスト材で削り取ることができる第1のブラスト処理装置を備える、
請求項10に記載のコーティング層の除去装置。
【請求項14】
水蒸気吹付手段をさらに備え、
前記水蒸気吹付手段は、接触が解除された前記第1の積層フィルムの前記第1のコーティング層に向けて過熱水蒸気を吹き付ける手段である、
請求項10に記載のコーティング層の除去装置。
【請求項15】
前記延伸手段は、前記第1の積層フィルム及び前記第2のフィルムを加熱する加熱手段を備える、
請求項10に記載のコーティング層の除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球資源保護や環境保護等の観点から、各種分野で、廃棄物の発生抑制、再使用、及び再生利用等の取組みを通じて、循環型社会の構築を目指す動きが活発化している。
例えば、特許文献1には、プラスチック部品の表面に塗装膜が形成された塗膜付きプラスチック部品を400℃以上1000℃以下の高温雰囲気に曝して、前記塗装膜を脆化処理して除去することを特徴とする塗膜付きプラスチック部品の処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の処理方法は、様々なサイズのプラスチック部品を直接高温雰囲気に曝して表面の塗装膜を脆化させるため、脆化が不十分な箇所が生じ、塗装膜を容易に除去できない可能性がある。
プラスチックフィルム(基材フィルム)を再生する技術においては、積層フィルムからコーティング層を容易に除去できる技術が求められている。
【0005】
本発明の目的は、基材フィルムとコーティング層とを有する積層フィルムにおいて、ロールツーロールで搬送される積層フィルムからコーティング層を容易に除去できるコーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]第1の基材フィルムと、第1のコーティング層とを有する第1の積層フィルムが巻回された第1のロールと、第2のフィルムが巻回された第2のロールとを準備する工程と、前記第1のロールから前記第1の積層フィルムを繰り出す工程と、前記第2のロールから前記第2のフィルムを繰り出す工程と、繰り出された前記第1の積層フィルムの前記第1のコーティング層の側の面と、繰り出された前記第2のフィルムの一方の面とを対向させて接触させる工程と、前記第1の積層フィルムと前記第2のフィルムとが接触した状態で、前記第1の積層フィルム及び前記第2のフィルムを延伸する工程と、前記第1の積層フィルムと前記第2のフィルムとの接触を解除する工程と、接触が解除された前記第1の積層フィルムから前記第1のコーティング層を除去する第1の除去工程と、前記第1のコーティング層が除去された前記第1の基材フィルムをロール状に巻き取る第1の巻取工程と、を有する、コーティング層の除去方法。
【0007】
[2]前記第1の除去工程は、前記第1のコーティング層を前記第1の基材フィルムから第1の粘着ロールに転着させる工程である、前記[1]に記載のコーティング層の除去方法。
【0008】
[3]前記第1の除去工程は、前記第1のコーティング層を第1のブレード又は第1のワイヤブラシを用いて前記第1の基材フィルムから掻き落す工程である、前記[1]に記載のコーティング層の除去方法。
【0009】
[4]前記第1の除去工程は、前記第1のコーティング層を前記第1の基材フィルムから第1のブラスト材で削り取る工程である、前記[1]に記載のコーティング層の除去方法。
【0010】
[5]前記延伸する工程は、前記第1の積層フィルム及び前記第2のフィルムを加熱しながら行う、前記[1]から[4]のいずれか一項に記載のコーティング層の除去方法。
【0011】
[6]前記接触を解除する工程の後、かつ前記第1の除去工程の前に、接触が解除された前記第1の積層フィルムの前記第1のコーティング層に向けて過熱水蒸気を吹き付ける工程を有する、前記[1]から[5]のいずれか一項に記載のコーティング層の除去方法。
【0012】
[7]前記第2のフィルムは、第2の積層フィルムであり、前記第2の積層フィルムは、第2の基材フィルムと、第2のコーティング層とを有し、前記接触させる工程は、前記第1の積層フィルムの前記第1のコーティング層の側の面と、前記第2の積層フィルムの前記第2のコーティング層の側の面とを対向させて接触させる工程であり、前記接触を解除する工程の後、接触が解除された前記第2の積層フィルムから前記第2のコーティング層を除去する第2の除去工程と、前記第2のコーティング層が除去された前記第2の基材フィルムをロール状に巻き取る第2の巻取工程と、をさらに有する、前記[1]から[6]のいずれか一項に記載のコーティング層の除去方法。
【0013】
[8]第3の基材フィルムと第3のコーティング層とを有する1枚以上の第3の積層フィルムをさらに繰り出す工程と、前記第3の積層フィルムの前記第3のコーティング層の面が外側に配置されないように、1以枚上の前記第3の積層フィルムと、前記第1の積層フィルムと、前記第2のフィルムとを重ねて接触させる工程と、前記第1の積層フィルムと、前記第2のフィルムと、1枚以上の前記第3の積層フィルムとが接触した状態で、前記第1の積層フィルム、前記第2のフィルム及び1枚以上の前記第3の積層フィルムを延伸する工程と、延伸後に前記第1の積層フィルムと、前記第2のフィルムと、1枚以上の前記第3の積層フィルムとの接触を解除する工程と、接触が解除された1枚以上の前記第3の積層フィルムから前記第3のコーティング層を除去する第3の除去工程と、前記第3のコーティング層が除去された前記第3の基材フィルムをロール状に巻き取る第3の巻取工程と、を有する、前記[1]から[7]のいずれか一項に記載のコーティング層の除去方法。
【0014】
[9]前記第1の積層フィルムは、セラミックグリーンシート付き積層フィルムであり、前記第1のコーティング層の前記第1の基材フィルムとは反対側には、セラミックグリーンシートが付着している、前記[1]から[8]のいずれか一項に記載のコーティング層の除去方法。
【0015】
[10]第1の基材フィルムと、第1のコーティング層とを有する第1の積層フィルムが巻回された第1のロールから前記第1の積層フィルムを繰り出す第1の繰出手段と、第2のフィルムが巻回された第2のロールから前記第2のフィルムを繰り出す第2の繰出手段と、繰り出された前記第1の積層フィルムの前記第1のコーティング層の側の面と、繰り出された前記第2のフィルムの一方の面とを対向させて接触させる接触手段と、前記第1の積層フィルムと前記第2のフィルムとが接触した状態で、前記第1の積層フィルム及び前記第2のフィルムを延伸させる延伸手段と、前記第1の積層フィルムと前記第2のフィルムとの接触を解除する接触解除手段と、接触が解除された前記第1の積層フィルムから前記第1のコーティング層を除去する第1の除去手段と、前記第1の基材フィルムをロール状に巻き取る第1の巻取手段と、を備える、コーティング層の除去装置。
【0016】
[11]前記第1の除去手段は、第1の粘着ロールを備え、前記第1の除去手段は、前記第1のコーティング層を前記第1の基材フィルムから前記第1の粘着ロールに転着させる手段である、前記[10]に記載のコーティング層の除去装置。
【0017】
[12]前記第1の除去手段は、前記第1のコーティング層を前記第1の基材フィルムから掻き落すことができる第1のブレード又は第1のワイヤブラシを備える、前記[10]に記載のコーティング層の除去装置。
【0018】
[13]前記第1の除去手段は、前記第1のコーティング層を前記第1の基材フィルムから第1のブラスト材で削り取ることができる第1のブラスト処理装置を備える、前記[10]に記載のコーティング層の除去装置。
【0019】
[14]水蒸気吹付手段をさらに備え、
前記水蒸気吹付手段は、接触が解除された前記第1の積層フィルムの前記第1のコーティング層に向けて過熱水蒸気を吹き付ける手段である、前記[10]から[13]のいずれか一項に記載のコーティング層の除去装置。
【0020】
[15]前記延伸手段は、前記第1の積層フィルム及び前記第2のフィルムを加熱する加熱手段を備える、前記[10]から[14]のいずれか一項に記載のコーティング層の除去装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、基材フィルムとコーティング層とを有する積層フィルムにおいて、ロールツーロールで搬送される積層フィルムからコーティング層を容易に除去できるコーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】第1実施形態に係る除去方法で用いられる第1の積層フィルムの断面図である。
【
図1B】セラミックグリーンシート付き積層フィルムの斜視図である。
【
図2A】第1実施形態に係る接触工程後の2枚の積層フィルムの断面図である。
【
図2B】第1実施形態に係る延伸工程後の2枚の積層フィルムの断面図である。
【
図3】第2実施形態に係る除去装置の概略図である。
【
図5】変形例5に係る第2の接触工程後の3枚の積層フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において、「第1」、「第2」及び「第3」等の序数による表現は、構成を区別することを目的としており、順序を意味するものではない。
本明細書において、序数を付していない表現、例えば、「積層フィルム」という表現は、積層フィルムの総称であり、「第1」、「第2」及び「第3」等の序数を付した積層フィルムに共通する説明をするときに使用する。
例えば、「第1の積層フィルム」及び「第2の積層フィルム」のように序数を付して表記した複数の構成に共通して適用される説明がなされる場合に、序数を除いた「積層フィルム」と表記することにより、「第1の積層フィルム」及び「第2の積層フィルム」をまとめて表現する。
【0024】
〔第1実施形態〕
〔コーティング層の除去方法〕
本実施形態に係るコーティング層の除去方法(以下、本実施形態に係る除去方法とも称する)は、第1の基材フィルムと、第1のコーティング層とを有する第1の積層フィルムが巻回された第1のロールと、第2のフィルムが巻回された第2のロールとを準備する工程(以下、準備工程とも称する)と、前記第1のロールから前記第1の積層フィルムを繰り出す工程(以下、第1の繰り出し工程とも称する)と、前記第2のロールから前記第2のフィルムを繰り出す工程(以下、第2の繰り出し工程とも称する)と、繰り出された前記第1の積層フィルムの前記第1のコーティング層の側の面と、繰り出された前記第2のフィルムの一方の面とを対向させて接触させる工程(以下、接触工程とも称する)と、前記第1の積層フィルムと前記第2のフィルムとが接触した状態で、前記第1の積層フィルム及び前記第2のフィルムを延伸する工程(以下、延伸工程とも称する)と、前記第1の積層フィルムと前記第2のフィルムとの接触を解除する工程(以下、接触解除工程とも称する)と、接触が解除された前記第1の積層フィルムから前記第1のコーティング層を除去する第1の除去工程と、前記第1のコーティング層が除去された前記第1の基材フィルムをロール状に巻き取る第1の巻取工程と、を有する。
【0025】
図1Aは、本実施形態に係る除去方法で用いられる第1の積層フィルム50の断面図である。
第1の積層フィルム50は、第1の基材フィルム51と、第1のコーティング層52とを有する。第1の積層フィルム50は、第1の基材フィルム51と第1のコーティング層52とが直接接している。
【0026】
本実施形態に係る除去方法で用いられる第2のフィルムは、基材フィルムを有していれば特に限定されない。
第2のフィルムは、例えば、基材フィルムのみからなるフィルムであってもよいし、基材フィルム上にコーティング層が積層された積層フィルムであってもよいし、コーティング層にセラミックグリーンシートが付着したセラミックグリーンシート付き積層フィルムであってもよい(後述の
図1B参照)。
【0027】
以降の説明では、第2のフィルムが第2の積層フィルムである場合を中心に説明する。
【0028】
本実施形態に係る除去方法では、第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50Aのコーティング層同士を対向させて接触させ(接触工程)、その状態で、延伸工程を実施する。
図2Aには、接触工程後の2枚の積層フィルムの断面図が示されており、第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50Aのコーティング層同士が対向して接触した状態の構造体が示されている。
図2Aに示す構造体を「積層構造体600」と称することがある。
図2Aに示すように、第2の積層フィルム50Aは、第2の基材フィルム51Aと、第2のコーティング層52Aとを有する。第2の積層フィルム50Aは、第1の積層フィルム50と同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
図2Bには、延伸工程後の2枚の積層フィルムの断面図が示されており、積層構造体600のコーティング層にクラック602が生じた状態が示されている。具体的には、延伸工程後の第1の積層フィルム500には、第1のコーティング層520にクラック602が生じ、延伸工程後の第2の積層フィルム500Aには、第2のコーティング層520Aにクラック602が生じている。
図2Bに示す構造体を「延伸後構造体600A」と称することがある。
【0029】
延伸工程とは、例えば、
図2Aに示す積層構造体600を長手方向(搬送方向)に延伸させることで、コーティング層にクラックを生じさせる工程である。
コーティング層にクラックを生じさせるとは、コーティング層の厚さ方向にひび割れ(亀裂)が生じることを意味し、
図2Bのように、基材フィルムとの界面にまで到達するクラックが生じることが好ましい。
コーティング層に生じるクラックは、初め延伸方向に対して略直交する方向に沿って形成され、さらに延伸することにより延伸方向に沿ってクラックが生じる。
また、コーティング層にクラックが生じるときの衝撃で、コーティング層が基材フィルムの表面から部分的に剥離することがある。
延伸工程でコーティング層にクラックを生じさせることで、次の工程で行われるコーティング層の除去が容易に行えるようになる。
【0030】
また、本実施形態に係る除去方法によれば、2枚の積層フィルム50,50Aのコーティング層同士を対向させて接触させた状態で延伸工程を実施するので、延伸時にコーティング層が基材フィルムの表面から剥離しても、コーティング層の破片を2枚の基材フィルム51,51Aの内側に留めることができる。これにより、コーティング層の破片を飛散させずに搬送することができる。
また、積層フィルムとして、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の製造に用いられた後の、セラミックグリーンシート付き積層フィルムを用いる場合(後述の
図1B参照)、搬送時及び延伸時にハーフカット部分(セラミックグリーンシートへの打ち抜きでコーティング層面に生じる刃跡)を起点として積層フィルムが破断され易くなるところ、本実施形態に係る除去方法によれば、2枚の積層フィルム50,50Aを接触させて搬送し延伸するので、ハーフカット部分に加わる張力を分散させることができ、搬送時及び延伸時の積層フィルムの破断を抑制できる。
【0031】
また、本実施形態に係る除去方法によれば、ロールツーロール方式で、2つのロールからそれぞれ積層フィルム50,50Aを繰り出し、連続して各工程を実施するため、コーティング層の除去及び基材フィルムの巻き取りを効率よく行うことができ、基材フィルムの回収量を増加でき、その結果、基材フィルムの再生効率が向上する。
【0032】
本実施形態に係る除去方法は、例えば、第2実施形態に係るコーティング層の除去装置(以下、第2実施形態に係る除去装置100とも称する)を用いて実施できる。
第2実施形態においては、第2のフィルムが第2の積層フィルム50Aであり、第1の除去手段30が第1の粘着ロール5である場合について説明する。
【0033】
〔第2実施形態〕
〔コーティング層の除去装置100〕
図3は、第2実施形態に係る除去装置100の概略図である。
【0034】
第2実施形態に係る除去装置100は、第1の基材フィルム51と、第1のコーティング層52とを有する第1の積層フィルム50が巻回された第1のロール1と、第2の積層フィルム50A(第2のフィルムの一例)が巻回された第2のロール1Aとを準備する工程と、第1のロール1から第1の積層フィルム50を繰り出す工程と、第2のロール1Aから第2の積層フィルム50Aを繰り出す工程と、繰り出された第1の積層フィルム50の第1のコーティング層52の側の面と、繰り出された第2の積層フィルム50Aの一方の面とを対向させて接触させる工程と、第1の積層フィルム50と第2の積層フィルム50Aとが接触した状態で、第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50Aを延伸する工程と、第1の積層フィルム50と第2の積層フィルム50Aとの接触を解除する工程と、接触が解除された第1の積層フィルム50から第1のコーティング層52を除去する第1の除去工程と、第1のコーティング層52が除去された第1の基材フィルム51をロール状に巻き取る第1の巻取工程と、を有する。
【0035】
以下の説明において、第1の繰出手段10、第1の除去手段30、及び第1の巻取手段40は、それぞれ、第2の繰出手段10A、第2の除去手段30A、及び第2の巻取手段40Aと同様の構成を有するとともに、同様に動作するため、第1の繰出手段10、第1の除去手段30、及び第1の巻取手段40を説明する箇所の「第1の」を、それぞれ「第2の」に読み替えて援用できる。
【0036】
<第1の繰出手段10、第2の繰出手段10A>
第1の繰出手段10は、第1の積層フィルム50が巻回された第1のロール1と、第1のロール1を回転自在に指示する支持部材(不図示)と、駆動ローラ(不図示)とを備えている。第2の繰出手段10Aの構成及び動作も同様である。
【0037】
<接触手段15>
接触手段15は、繰り出された第1の積層フィルム50の第1のコーティング層52の側の面と、繰り出された第2の積層フィルム50Aの第2のコーティング層52Aの側の面とを対向させて接触させる。
接触手段としては、公知の押圧手段(例えば各種ロール等)が挙げられる。
図3の場合、接触手段15は、第1のニップロールNR1、及び第1のニップロールNR1に対向して設けられた第1のガイドロールGR1である。
【0038】
<延伸手段20>
延伸手段20は、第1の延伸ロール21と、第1の延伸ロール21よりも下流側に設けられた第2の延伸ロール22と、第1の延伸ロール21及び第2の延伸ロール22の周速を制御する周速制御手段23と、第1の延伸ロール21及び第2の延伸ロール22にそれぞれ対向して設けられた上流側ニップロールNR21及び下流側ニップロールNR22と、を備える。
第1の延伸ロール21及び第2の延伸ロール22のそれぞれの軸部には、駆動モータM1,M2が接続されている。周速制御手段23はこれらの駆動モータM1,M2を制御することで、第1の延伸ロール21及び第2の延伸ロール22の周速を制御する。周速制御手段23は、例えばコンピュータ等である。
【0039】
延伸手段20は、第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50Aを加熱する加熱手段を備えることが好ましい。加熱手段としては特に限定されないが、例えば、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、UVランプ、及び熱風発生装置等が挙げられる。加熱手段の配置は特に限定されない。
図3の場合、第1の延伸ロール21及び第2の延伸ロール22との間の領域R2に加熱手段24が設けられている。加熱手段24は、第1のニップロールNR1又は第1のガイドロールGR1と、上流側ニップロールNR21との間の領域R1に設けられてもよい。
【0040】
<接触解除手段25>
接触解除手段25は、延伸後の第1の積層フィルム500と第2の積層フィルム500Aとの接触を解除する手段である。
接触解除手段25としては、例えば、第1の積層フィルム500及び第2の積層フィルム500Aを互いに異なる経路に誘導する部材が挙げられる。
図3の場合、接触解除手段25は、第1の積層フィルム500を誘導するガイドロールGR31と、第2の積層フィルム500Aを誘導するガイドロールGR32である。
【0041】
<第1の除去手段30、第2の除去手段30A>
第1の除去手段30は、第1の粘着ロール5を備え、第1のコーティング層520(延伸後の第1のコーティング層520)を第1の基材フィルム51から第1の粘着ロール5に転着させる手段である。
第1の粘着ロール5は、例えば、基材シートと粘着剤層とを有する第1の粘着シート60が巻回されたロールである。基材シートとしては特に限定されず、例えば、紙及び樹脂シート等が挙げられる。粘着剤層は特に限定されず、公知の粘着剤層を用いることができる。
第1の除去手段30は、第1の粘着ロール5と、第1の粘着紙巻き取りロール6とを備えている。
図3の場合、第1の粘着シート60の粘着剤層に第1のコーティング層520が転着される。第1の粘着紙巻き取りロール6は、第1のコーティング層520が転着した粘着シート(以下、第1のコーティング層付き粘着シート61とも称する)を巻き取る。
第2の除去手段30Aの構成及び動作も同様である。第1の除去手段30及び第2の除去手段30Aは、互いに同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
<第1の巻取手段40、第2の巻取手段40A>
第1の巻取手段40は、第1の基材フィルム51をロール状に巻き取るための第1の巻き取りロール4と、第1の巻き取りロール4を回転自在に支持する支持部材(不図示)と、駆動ローラ(不図示)とを備えている。
第2の巻取手段40Aの構成及び動作も同様である。
【0043】
第2実施形態に係るコーティング層の除去装置100を用いた場合、第1実施形態に係るコーティング層の除去方法は、例えば、以下の工程を経て実施される。
【0044】
以下の説明において、第1の繰り出し工程、第1の除去工程、及び第1の巻き取り工程は、それぞれ、第2の繰り出し工程、第2の除去工程、及び第2の巻き取り工程と同様の構成を有するとともに、同様に動作するため、第1の繰り出し工程、第1の除去工程、及び第1の巻き取り工程を説明する箇所の「第1の」を、それぞれ「第2の」に読み替えて援用できる。
【0045】
<準備工程>
準備工程は、第1の基材フィルム51と第1のコーティング層52とを有する第1の積層フィルム50が巻回された第1のロール1と、第2の基材フィルム51Aと第2のコーティング層52Aとを有する第2の積層フィルム50Aが巻回された第2のロール1Aとを準備する工程である。
準備工程においては、例えば、幅及び長さの揃った第1のロール1及び第2のロール1Aの組み合わせを選択すること、並びに、延伸工程におけるコーティング層52,52Aの破断のしやすさ(コーティング層52,52Aへのクラック602の生じやすさ)を揃えた第1のロール1及び第2のロール1Aの組み合わせを選択することが好ましい。
コーティング層52,52Aの破断のしやすさを揃える観点から、第1のコーティング層52及び第2のコーティング層52Aは、互いに同一の材料もしくは類似の材料で構成されていることが好ましい。
【0046】
第1の積層フィルム50は、セラミックグリーンシート付き積層フィルムであり、第1のコーティング層52の第1の基材フィルム51とは反対側には、セラミックグリーンシートが付着していることが好ましい。第2の積層フィルム50Aがセラミックグリーンシート付き積層フィルムである場合も同様である。
図1Bは、第1の積層フィルム50がセラミックグリーンシート付き積層フィルム50Gである場合の当該積層フィルム50Gの斜視図である。
図1Bには、ロール1Gからセラミックグリーンシート付き積層フィルム50Gが繰り出された状態が示されている。
セラミックグリーンシートの残渣920は、第1のコーティング層52の表面に付着している。セラミックグリーンシートが剥離された後は、凹部910となっており、凹部910から第1のコーティング層52が露出している。
【0047】
<第1の繰り出し工程、第2の繰り出し工程>
第1の繰り出し工程は、第1のロール1から、第1の積層フィルム50を繰り出す工程である。第2の繰り出し工程の構成及び動作も同様である。
【0048】
<接触工程>
接触工程は、繰り出された第1の積層フィルムの第1のコーティング層の側の面と、繰り出された第2の積層フィルムの第2のコーティング層の側の面とを対向させて接触させる工程である。
図3の場合、第1のロール1から繰り出された第1の積層フィルム50、及び第2のロール1Aから繰り出された第2の積層フィルム50Aは、第1のニップロールNR1と、第1のガイドロールGR1との間を通過する際に、2枚の積層フィルム50,50Aのコーティング層同士が対向して接触した構造体(積層構造体600)となる。
【0049】
<延伸工程>
延伸工程は、第1の積層フィルムと第2の積層フィルムとが接触した状態で、第1の積層フィルム及び第2の積層フィルムを延伸する工程である。
図3の場合、接触工程後の積層構造体600は、上流側ニップロールNR21及び第1の延伸ロール21に順に巻き掛けられて搬送され、第1の延伸ロール21及び第2の延伸ロール22の間を通過する際に延伸される(延伸工程)。この延伸工程により、積層構造体600のコーティング層にクラック602が生じ、延伸後構造体600Aとなる(
図2B)。
接触工程後の積層構造体600を延伸する方法としては、例えば、搬送経路の下流側に設けられた第2の延伸ロール22の周速を、搬送経路の上流側に設けられた第1の延伸ロール21の周速よりも速くなるように制御する方法、及び第1の延伸ロール21から第2の延伸ロール22までの間に他の延伸ロールを1以上設け、積層構造体600を第1の延伸ロール21、他の延伸ロール及び第2の延伸ロール22に巻き掛けながら搬送する方法等が挙げられる。
【0050】
延伸工程は、接触工程後の積層構造体600(第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50A)を加熱しながら行うことが好ましい。これにより、延伸工程を常温で実施する場合に比べ、コーティング層にクラックが生じ易くなる。
図3の場合、積層構造体600は、加熱手段24を用いて加熱される。
延伸工程における加熱は、第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50Aの少なくとも一方が、セラミックグリーンシート付き積層フィルムを用いる場合に、より効果を発現する。
セラミックグリーンシート付き積層フィルムは、前述の通り、セラミックグリーンシートの打ち抜き後に生じるハーフカット部分を起点として搬送時に破断が生じ易い。
これに対し本実施形態の延伸工程では、2枚の積層フィルム50,50Aを接触させた構造体(積層構造体600)とし、この積層構造体600を加熱しながら延伸させることで、搬送時に加え、延伸時におけるセラミックグリーンシート付き積層フィルムの破断を抑制できる。その結果、積層フィルムとして、セラミックグリーンシート付き積層フィルムを用いた場合でも、ロールツーロール方式でコーティング層の除去及び基材フィルムの巻き取りを問題なく完遂し得る。
【0051】
延伸工程において、積層構造体600を加熱する際の加熱温度及び加熱時間は、基材フィルム及びコーティング層の材質により決定される。
なお、接触工程の後、かつ延伸工程の前に、積層構造体600を加熱する工程をさらに有してもよい。延伸工程を実施する前に積層構造体600を加熱することで、積層構造体600の内側に配置されたコーティング層にクラックが生じ易くなる。
【0052】
積層構造体600の加熱は、以下の理由により、基材フィルムのガラス転移温度Tg1以上の温度で行うことが好ましい。
基材フィルムのガラス転移温度Tg1、およびコーティング層のガラス転移温度Tg2は、JIS K7121(2012)に定められている方法に準拠して求められ、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。尚、延伸時の温度は、基材フィルムを破断せずに延伸し易くさせ、一方でコーティング層を破断し易くさせるため、基材フィルムのガラス転移温度Tg1以上が好ましく、基材フィルムのガラス転移温度Tg1以上かつコーティング層のガラス転移温度Tg2以下がより好ましい。
【0053】
<接触解除工程>
接触解除工程は、第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50Aの接触を解除する工程である。
図3の場合、延伸工程後、延伸後構造体600AがガイドロールGR2を通過し、ガイドロールGR31及びガイドロールGR32の間を通過すると、第1の積層フィルム500は、ガイドロールGR31及びニップロールNR31に巻き掛けられ、第2の積層フィルム500Aは、ガイドロールGR32及びニップロールNR32に巻き掛けられて、互いに異なる経路に誘導される。これにより、第1の積層フィルム500及び第2の積層フィルム500Aの接触が解除される。
【0054】
<第1の除去工程、第2の除去工程>
第1の除去工程は、接触が解除された第1の積層フィルム500から第1のコーティング層520を除去する工程である。
図3の場合、第1の除去工程は、第1の積層フィルム500の第1のコーティング層520を第1の基材フィルム51から第1の粘着ロール5に転着させる工程である。
接触が解除された第1の積層フィルム500は、ガイドロールGR31及びガイドロールGR32の間を通過した後、第1のコーティング層520が、第1の基材フィルム51から第1の粘着シート60の粘着剤層に転着される。第1のコーティング層520が転着した粘着シート(第1のコーティング層付き粘着シート61)は、第1の粘着紙巻き取りロール6で巻き取られる。
第2の除去工程の構成及び動作も同様である。
【0055】
<第1の巻き取り工程、第2の巻き取り工程>
第1の巻き取り工程は、第1のコーティング層520が除去された第1の基材フィルム51をロール状に巻き取る工程である。
図3の場合、第1の基材フィルム51は、第1の巻き取りロール4によってロール状に巻き取られる。
第2の巻き取り工程の構成及び動作も同様である。
【0056】
〔実施形態の変形例〕
〔変形例1〕
第2実施形態に係る除去装置100において、領域R3中の第1の除去手段30を
図4Aに示す除去手段30Bに変更してもよいし、領域R3中の第2の除去手段30Aを
図4Aに示す除去手段30Cに変更してもよい。
以下では、第1の除去手段30を、
図4Aに示す除去手段30Bに変更した場合について説明する。
除去手段30Bは、第1のブレード35を備え、接触が解除された第1のコーティング層520を第1の基材フィルム51から掻き落す手段である。
図4Aの場合、第1のブレード35は、ガイドロールGR31及びガイドロールGR32(接触解除手段25)の対向面よりも下流側に、第1の積層フィルム500の第1のコーティング層520の側の面に当接するように設けられている。除去手段30Bは、第1のコーティング層520を掻き落す第1のブレード35と、掻き落とされた第1のコーティング層520を回収する受け皿71と、を備えている。
第1のブレード35の材質は特に限定されない。
【0057】
〔変形例2〕
第2実施形態に係る除去装置100において、領域R3中の第1の除去手段30を
図4Bに示す除去手段30Dに変更してもよいし、領域R3中の第2の除去手段30Aを
図4Bに示す除去手段30Eに変更してもよい。
以下では、第1の除去手段30を、
図4Bに示す除去手段30Dに変更した場合について説明する。
除去手段30Dは、第1のワイヤブラシ36を備え、接触が解除された第1のコーティング層520を第1の基材フィルム51から掻き落す手段である。
図4Bの場合、第1のワイヤブラシ36は、ガイドロールGR31(接触解除手段25)に対向して設けられている。除去手段30Dは、第1のコーティング層520を掻き落す第1のワイヤブラシ36と、掻き落とされた第1のコーティング層520を回収する受け皿71と、を備えている。
第1のワイヤブラシ36の材質は特に限定されない。
図4Bに示すように、第1のワイヤブラシ36及びガイドロールGR31を水平方向に対向して配置し、第1のコーティング層520を下方向に掻き落とすことにより、第1のコーティング層520を効率よく回収できる。
【0058】
〔変形例3〕
第2実施形態に係る除去装置100において、領域R3中の第1の除去手段30を
図4Cに示す除去手段30Fに変更してもよいし、領域R3中の第2の除去手段30Aを
図4Cに示す除去手段30Gに変更してもよい。
以下では、第1の除去手段30を、
図4Cに示す除去手段30Fに変更した場合について説明する。
除去手段30Fは、第1のブラスト処理装置37を備え、接触が解除された第1のコーティング層520を第1の基材フィルム51からブラスト材で削り取る手段である。
図4Cの場合、第1のブラスト処理装置37は、ガイドロールGR31及びガイドロールGR32(接触解除手段25)の対向面よりも下流側の任意の位置に設けられ、ブラスト材を第1のコーティング層520に吹き付けることにより、第1のコーティング層520を第1の基材フィルム51から削り取る。
除去手段30Fは、第1のブラスト処理装置37と、削り取られた第1のコーティング層520をブラスト材(不図示)と共に回収する受け皿71と、を備えている。
第1のブラスト処理装置37は、公知のブラスト処理装置を用いることができる。
ブラスト材としては、例えば、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、炭化ケイ素粒子、アルミナ粒子、ドライアイス粒子、及びメラミン樹脂粒子等が挙げられる。ブラスト材としてドライアイス粒子を用いた場合、ドライアイス粒子はブラスト処理後に消失するので、粒子の除去作業が不要となることで好ましい。ブラスト材の粒径は、好適には5μm以上40μm以下である。
ブラスト材の吹き付け条件は、コーティング層の材質により決定される。
【0059】
〔変形例4〕
第2実施形態に係る除去装置100において、領域R3中の第1の除去手段30及び第2の除去手段30Aは、さらに
図4Dに示す水蒸気吹付手段70を有することが好ましい。
水蒸気吹付手段70は、接触が解除された第1のコーティング層520及び第2のコーティング層520Aに向けて過熱水蒸気を吹き付ける手段である。
水蒸気吹付手段70は水蒸気を加熱するためのヒーターと、過熱水蒸気を吹き付けるための水蒸気吹付ノズルとを備えていればよい。
水蒸気吹付手段70は、過熱器72とボイラー74とを備える。過熱器72はボイラー74に接続されており、ボイラー74で発生した水蒸気を加熱して過熱水蒸気を発生させ、水蒸気吹付ノズル(不図示)から、第1のコーティング層520及び第2のコーティング層520Aに向けて過熱水蒸気を吹き付ける。
第1のコーティング層520及び第2のコーティング層520Aは、水蒸気吹付ノズル(不図示)から過熱水蒸気が吹き付けられた後、急冷される。この急冷により、第1のコーティング層520と第1の基材フィルム51との熱膨張率の差から第1のコーティング層520に歪みが生じ易くなり、第1のコーティング層520の界面剥離が助長される。その結果、続く第1の除去工程で、第1のコーティング層520が第1の基材フィルム51からより除去され易くなる。第2のコーティング層520Aの場合も同様である。
過熱水蒸気の温度は、100℃以上450℃以下が好ましく、150℃以上400℃以下がより好ましく、200℃以上350℃以下がさらに好ましい。
過熱水蒸気の吹付時間は、コーティング層の材質、及び積層フィルムの搬送速度等により決定される。
【0060】
〔変形例5〕
第1実施形態に係る除去方法は、さらに、第3の基材フィルムと第3のコーティング層とを有する1枚以上の第3の積層フィルムを用いて実施することもできる。
この態様の場合、第1実施形態に係る除去方法は、第3の基材フィルムと第3のコーティング層とを有する1枚以上の第3の積層フィルムをさらに繰り出す工程(以下、第3の繰り出し工程とも称する)と、第3の積層フィルムの第3のコーティング層の面が外側に配置されないように、1以枚上の第3の積層フィルムと、第1の積層フィルムと、第2のフィルムとを重ねて接触させる工程(以下、第2の接触工程とも称する)と、第1の積層フィルムと、第2のフィルムと、1枚以上の第3の積層フィルムとが接触した状態で、第1の積層フィルム、第2のフィルム及び1枚以上の第3の積層フィルムを延伸する工程(以下、第2の延伸工程とも称する)と、延伸後に第1の積層フィルムと、第2のフィルムと、1枚以上の第3の積層フィルムとの接触を解除する工程(以下、第2の接触解除工程とも称する)と、接触が解除された1枚以上の第3の積層フィルムから第3のコーティング層を除去する第3の除去工程と、第3のコーティング層が除去された第3の基材フィルムをロール状に巻き取る第3の巻取工程と、を有する。
【0061】
第1実施形態で説明した第1の繰り出し工程、接触工程、延伸工程、接触解除工程、第1の除去工程、及び第1の巻取工程は、それぞれ、変形例3に係る第3の繰り出し工程、第2の接触工程、第2の延伸工程、第2の接触解除工程、第3の除去工程、及び第3の巻取工程と同様の構成を有するとともに、同様に動作するため、第1の繰り出し工程、第1の除去工程、及び第1の巻取工程を説明する箇所の「第1の」を、それぞれ「第2の」に読み替えて援用できる。接触工程、延伸工程、及び接触解除工程を説明する箇所については、各工程をそれぞれ、第2の接触工程、第2の延伸工程、及び第2の接触解除工程に読み替えて援用できる。
【0062】
図5には、第2の接触工程後の3枚の積層フィルムの断面図が示されており、3枚の積層フィルム50,50A,50Bの全てのコーティング層52,52A,52Bの面が外側に配置されないように(つまりコーティング層52,52A,52Bの面が内側に配置されるように)、3枚の積層フィルム50,50A,50Bが重ねられて接触した状態が示されている。
図5に示す構造体を「積層構造体600B」と称することがある。
第3の積層フィルム50Bは、第3の基材フィルム51Bと、第3のコーティング層52Bとを有する。第3の積層フィルム50B、第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50Aは、互いに同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
【0063】
以下では、積層フィルムとして、3枚の積層フィルム50,50A,50Bを用いて第1実施形態の除去方法を実施する場合について説明する。第1実施形態と異なる点について説明する。
変形例5に係る第2の延伸工程では、第2の接触工程で得られた積層構造体600B(
図5)を長手方向(搬送方向)に延伸させることで、積層構造体600Bの内側に配置された3つのコーティング層52,52A,52Bにクラックを生じさせる。
変形例5に係る除去方法によれば、3枚の積層フィルム50,50A,50Bの全てのコーティング層52,52A,52Bの面が外側に配置されていない状態で第2の延伸工程を実施するので、延伸時にコーティング層が基材フィルムの表面から剥離しても、コーティング層の破片を積層構造体600Bの内側に留めることができる。これにより、コーティング層の破片を飛散させずに搬送することができる。
【0064】
第2の接触解除工程は、延伸後の第1の積層フィルム、第2の積層フィルム及び第3の積層フィルムの接触をそれぞれ解除する工程である。
第1の積層フィルム、第2の積層フィルム、及び第3の積層フィルムは、例えば、互いに異なる経路に誘導されるガイドロールに巻き掛けられることで接触が解除される。
その後、第3の積層フィルムについては、第1実施形態に係る第1の除去工程及び第1の巻取工程と同様の方法で、第3の積層フィルムから第3のコーティング層が除去され(第3の除去工程)、第3の基材フィルムがロール状に巻き取られる(第3の巻取工程)。
【0065】
本発明は、前記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の目的を達成できる範囲での変形及び改良等を含むことができる。
【0066】
前述の実施形態で用いる積層フィルムの構成について説明する。
【0067】
〔積層フィルム〕
前述の実施形態で用いる積層フィルムは、基材フィルムと、コーティング層とを有する。コーティング層は単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上のコーティング層からなる複層であってもよい。また、基材フィルムの両面にコーティング層が形成されていてもよい。
積層フィルムは、当該積層フィルムからコーティング層を除去し、残存する基材フィルムを回収し易くする観点から、基材フィルムとコーティング層とが、直接積層している構成であることが好ましい。ここで、「直接積層」とは、例えば、基材フィルムと、コーティング層との間に、他の層を有さずに、基材フィルム及びコーティング層が互いに直接接触している構成を指す。
【0068】
<基材フィルム>
基材フィルムは、回収を予定している樹脂成分が製膜された樹脂フィルムが使用される。
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリアセテートフィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム;シクロオレフィンポリマーフィルム;ポリウレタンフィルム;ポリフェニレンスルフィドフィルム;セロハン;等を用いることができる。
これらの中でも、耐熱性及び強度の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、樹脂の回収及び再生がし易い観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレートのいずれかを主たる構成成分とするポリエステルフィルムが好ましい。
また、樹脂フィルムは、公知のフィラー、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、及び触媒等を含有してもよい。また、樹脂フィルムは、透明なものであっても、所望により着色等されていてもよい。また、基材フィルムの少なくとも1つの表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、及び酸化等のエッチング処理等の表面処理を必要に応じて施してもよい。
【0069】
基材フィルムの厚さは、特に制限はないが、強度、剛性等の観点から、好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは15μm以上300μm以下、更に好ましくは20μm以上200μm以下である。
【0070】
<コーティング層>
前記コーティング層は、機能層であることが好ましい。機能層としては、例えば、剥離剤層、印刷層、ハードコート層、易接着層及び粘着剤層が挙げられる。これらの中でも、コーティング層は、剥離剤層であることが好ましい。
コーティング層が剥離剤層である場合、前記剥離剤層は、剥離剤組成物から形成された層であることが好ましい。
前記剥離剤層の形成に用いられる剥離剤組成物としては、剥離性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、シリコーン系化合物;フッ素化合物;長鎖アルキル基含有化合物;オレフィン系樹脂、ジエン系樹脂などの熱可塑性樹脂材料;などを主成分とする剥離剤組成物を用いることができる。また、エネルギー線硬化型又は熱硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物を使用することが好ましい。これらの剥離剤組成物は、1種を単独で用いてもよく、又は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
シリコーン系化合物を主成分とする剥離剤組成物において、前記シリコーン系化合物としては、基本骨格としてオルガノポリシロキサンを有するシリコーン系化合物が挙げられる。また、前記シリコーン系化合物としては、付加反応型及び縮合反応型などの熱硬化型シリコーン系化合物;紫外線硬化型、及び電子線硬化型などのエネルギー線硬化型シリコーン系化合物;などが挙げられる。
【0072】
フッ素化合物を主成分とする剥離剤組成物において、前記フッ素化合物としては、フッ素シリコーン化合物、フッ素ボロン化合物、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有化合物などが挙げられる。
【0073】
長鎖アルキル基含有化合物を主成分とする剥離剤組成物において、前記長鎖アルキル基含有化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール系重合体に、長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたポリビニルカーバメートや、ポリエチレンイミンに、長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたアルキル尿素誘導体、あるいは長鎖アルキル(メタ)アクリレートの共重合体などが挙げられる。さらに、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応によって得られるアルキド樹脂に、長鎖脂肪酸を変性剤として用いた長鎖アルキル変性アルキッド樹脂が用いられてもよい。
【0074】
エネルギー線硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基及びマレイミド基から選択される反応性官能基を有するエネルギー線硬化性化合物と、ポリオルガノシロキサンとを含むものが好ましい。この剥離剤組成物により形成された剥離剤層においては、相互に分子構造、極性、分子量が異なるエネルギー線硬化性化合物及びポリオルガノシロキサンを用いているので、硬化前にポリオルガノシロキサンに由来する成分が剥離剤層の外表面付近に偏析した状態となり、その後エネルギー線により硬化し偏析が固定化する。これにより、剥離剤層の剥離性を向上することができる。エネルギー線硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、更に、光重合開始剤を含んでいてもよい。
【0075】
熱硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、例えば、メラミン樹脂を主成分とする剥離剤組成物やエポキシ樹脂を主成分とする剥離剤組成物が挙げられる。メラミン樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、主剤であるメラミン樹脂、メラミン樹脂を熱硬化させる酸触媒、及び剥離剤層に剥離性を付与するポリオルガノシロキサンを含む組成物が挙げられる。また、エポキシ樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、主剤であるエポキシ樹脂、エポキシ樹脂を熱硬化させる酸又は塩基性の熱硬化触媒、及び剥離剤層に剥離性を付与するポリオルガノシロキサンを含む組成物が挙げられる。硬化前にポリオルガノシロキサンに由来する成分が剥離剤層の外表面付近に偏析した状態となり、その後硬化して偏析が固定化する。これにより、剥離剤層の剥離性を向上することができる。
【0076】
また、前記コーティング層には、前述の樹脂成分以外に、その他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤としては、例えば、老化防止剤、光安定剤、難燃剤、導電剤、帯電防止剤、可塑剤等が挙げられる。
【0077】
コーティング層の厚さは、適宜、選択することが可能であり、特に制限はないが、例えば、好ましくは0.02μm以上5μm以下、より好ましくは0.03μm以上2μm以下、更に好ましくは0.05μm以上1.5μm以下である。
【0078】
各実施形態で用いられる積層フィルムは、一般に、特定の用途に用いられる他の機能性シートや各種部品の製造、運搬、保管時等に、これらの機能性シートや部品の表面を保護する目的等で用いられる。実際にこれらの部品等の保護の役目を果たした後は、表面から剥離され、廃棄されることも多い。そのため、前記積層フィルムを用いることで、積層フィルムからコーティング層と基材フィルムとを容易に分離することができるため、資源保護、環境保護の観点からも、貢献度の高い用途である。
【符号の説明】
【0079】
1…第1のロール、4…第1の巻き取りロール、5…第1の粘着ロール、10…第1の繰出手段、15…接触手段、20…延伸手段、21…第1の延伸ロール、22…第2の延伸ロール、23…周速制御手段、24…加熱手段、25…接触解除手段、30…第1の除去手段、35…第1のブレード、36…第1のワイヤブラシ、37…第1のブラスト処理装置、40…第1の巻取手段、50,500…第1の積層フィルム、51…第1の基材フィルム、52,520…第1のコーティング層、60…第1の粘着シート60、70…水蒸気吹付手段、72…過熱器、74…ボイラー、100…除去装置、600,600B…積層構造体、600A…延伸後構造体、602…クラック。