(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040753
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】プレス用金型
(51)【国際特許分類】
B21D 37/00 20060101AFI20240318BHJP
B21D 5/01 20060101ALI20240318BHJP
B21D 51/18 20060101ALI20240318BHJP
B21D 22/18 20060101ALI20240318BHJP
B21D 22/26 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
B21D37/00 Z
B21D5/01 H
B21D51/18 A
B21D22/18
B21D22/26 C
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145310
(22)【出願日】2022-09-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】田島 宏隆
(72)【発明者】
【氏名】木村 剛
(72)【発明者】
【氏名】平野 直哉
【テーマコード(参考)】
4E050
4E063
4E137
【Fターム(参考)】
4E050AA10
4E063AA01
4E063BA01
4E063CA12
4E063MA30
4E137AA07
4E137BB01
4E137CA05
4E137CA09
4E137CA24
4E137EA01
4E137EA16
4E137GA01
4E137GB20
(57)【要約】
【課題】プレートにおいて過剰な曲げが発生することを抑制できるプレス用金型を提供する。
【解決手段】プレス用金型は、プレートに対して第1方向に相対移動しながらプレスを繰り返す逐次プレスによって曲面プレートを成形するプレス用金型であって、第1方向に直交する第2方向においてプレートより広く且つ凹状に湾曲する第1成形面を含む第1型と、第1成形面に突き合わされる第2成形面であって第2方向においてプレートより広く且つ凸状に湾曲する第2成形面を含む第2型とを備え、第1成形面及び第2成形面の一方の成形面には、凹部が形成され、凹部は、第1成形面及び第2成形面を突き合せた状態で第2成形面の最も突き出ている突出部分の少なくとも第2方向一方側に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートに対して第1方向に相対移動しながらプレスを繰り返す逐次プレスによって曲面プレートを成形するプレス用金型であって、
第1方向に直交する第2方向において前記プレートより広く且つ凹状に湾曲する第1成形面を含む第1型と、
前記第1成形面に突き合わされる第2成形面であって第2方向において前記プレートより広く且つ凸状に湾曲する前記第2成形面を含む第2型とを備え、
前記第1成形面及び前記第2成形面の一方の成形面には、凹部が形成され、
前記凹部は、前記第1成形面及び前記第2成形面を突き合せた状態で前記第2成形面の最も突き出ている突出部分の少なくとも第2方向一方側に形成されている、プレス用金型。
【請求項2】
前記一方の成形面には、2つの前記凹部が形成され、
前記凹部は、前記第1成形面及び前記第2成形面を突き合せた状態で前記第2成形面の前記突出部分の第2方向両側に夫々形成されている、請求項1に記載のプレス用金型。
【請求項3】
前記凹部は、前記第2成形面に形成されている、請求項1に記載のプレス用金型。
【請求項4】
前記凹部は、第2方向において、前記一方の成形面の一端部と前記突出部分との間に位置している、請求項1に記載のプレス用金型。
【請求項5】
前記凹部の肩部分は、R状に形成されている、請求項1に記載のプレス用金型。
【請求項6】
前記凹部の各々の深さは、前記一方の成形面の第3方向の高さの1%以上10%以下である、請求項5に記載のプレス用金型。
【請求項7】
前記第1成形面と前記第2成形面との間であって、前記第1成形面と前記第2成形面のうち一方において、前記突出部分に対応する位置に配置される板状の中間形状調整治具と、
前記第1成形面と前記第2成形面との間であって、前記第1成形面と前記第2成形面のうち他方において、第2方向一方側にある端部に配置される板状の端側形状調整治具と、を更に備え、
前記中間形状調整治具の第2方向一方側にある端部は、前記凹部に対応する位置に配置され、
前記端側形状調整治具の第2方向他方側の端部は、前記凹部に対応する位置に配置される、請求項1に記載のプレス用金型。
【請求項8】
前記第1成形面は、前記第2成形面に突き合わされる成形部と、第1方向両端部の各々にある角部と、を有しており、
前記成形部は、第1方向において凹状に湾曲しており、
前記角部は、第1方向において、前記成形部に連なり且つ凸状に湾曲する第1部分を有し、
前記第1部分は、第1方向において前記成形部の長さの1%以上20%以下の長さであって、前記プレートの厚みの3倍以上50倍以下の曲率半径で湾曲している、請求項1に記載のプレス用金型。
【請求項9】
前記角部は、前記第1部分より第1方向外側に位置し、凸状に湾曲する第2部分を有し、
前記第2部分は、前記第1部分の曲率半径より小さい曲率半径で湾曲している、請求項8に記載のプレス用金型。
【請求項10】
前記第1部分及び前記第2部分は、前記角部において最も突出している部分において互いに繋がっている、請求項9に記載のプレス用金型。
【請求項11】
プレートに対して第1方向に移動しながら逐次プレスすることによって曲面プレートを成形するプレス用金型であって、
第1方向に直交する第2方向において前記プレートより広く且つ凹状に湾曲する第1成形面を含む第1型と、
前記第1成形面に突き合わされる第2成形面であって第2方向において前記プレートより広く且つ凸状に湾曲する前記第2成形面を含む第2型とを備え、
前記第1成形面は、前記第2成形面に突き合わされる成形部と、第1方向両端部の各々にある角部と、を有しており、
前記成形部は、第1方向において凹状に湾曲しており、
前記角部は、第1方向において前記成形部に連なり且つ凸状に湾曲する第1部分を有し、
前記第1部分は、第1方向において前記成形部の長さの1%以上20%以下の長さであって、前記プレートの厚みの3倍以上50倍以下の曲率半径で湾曲している、プレス用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プレートに対して第1方向に相対移動しながら逐次プレスすることによって曲面プレートを成形するプレス用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
液化水素などの液化ガスを貯留するタンクには、球形及び円筒形等、様々な形状がある。これらの形状のタンクでは、複数の曲面プレートを組み合わせることによって製造される。曲面プレートは、例えばタンクの高さ方向に長尺なプレートをプレス機でプレスすることによって成形される。プレス機は、特許文献1に記載される金型を長手方向に移動させながらプレスする逐次プレスによって曲面プレートを成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される金型は、凹状の成形面を有する下型と、凸状の成形面を有する上型とを備えている。金型では、下型及び上型の各々の成形面を突き合わせることによってプレートがプレスされる。プレスする際、成形面の中央にある凹部及び凸部付近においてプレートに大きな曲げモーメントが作用する。それ故、プレス時においてプレートの中央付近に過剰な曲げが発生する。そうすると、曲面プレートを所望の形状にするために、曲げ戻しを行う必要がある。そこで、プレートの中央付近における過剰な曲げを抑えることが求められている。
【0005】
また、特許文献1に記載される金型は、長尺のプレートを長手方向に移動させながら繰り返しプレスする。長尺のプレートは、金型から第1方向にはみ出しており、はみ出した部分が金型の角部に当たることになる。このような状態でプレートがプレスされると、プレートが角部から大きな接触面圧を受ける。これにより、プレートに圧痕が生じたりプレートが傷ついたりする。
【0006】
そこで第1の開示は、プレートにおいて過剰な曲げが発生することを抑制できるプレス用金型を提供することを目的としている。
【0007】
また、第2の開示の目的は、プレートが角部から受ける接触面圧を低減できるプレス用金型を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の開示のプレス用金型は、プレートに対して第1方向に相対移動しながらプレスを繰り返す逐次プレスによって曲面プレートを成形するプレス用金型であって、第1方向に直交する第2方向において前記プレートより広く且つ凹状に湾曲する第1成形面を含む第1型と、前記第1成形面に突き合わされる第2成形面であって第2方向において前記プレートより広く且つ凸状に湾曲する前記第2成形面を含む第2型とを備え、前記第1成形面及び前記第2成形面の一方の成形面には、凹部が形成され、前記凹部は、前記第1成形面及び前記第2成形面を突き合せた状態で前記第2成形面の最も突き出ている突出部分の少なくとも第2方向一方側に形成されているものである。
【0009】
本開示に従えば、第1成形面及び第2成形面を突き合せた状態で第2成形面の最も突き出ている突出部分の少なくとも第2方向一方側に凹部が形成されている。それ故、第2成形面の突出部分の少なくとも第2方向一方側において、過剰な曲げモーメントが発生することを抑制することができる。これにより、プレートに関して、突出部分付近において過剰に曲げられることが抑制される。他方、凹部付近においては、プレートが4点で曲げられる。それ故、プレートの凹部に対応する部分において、均一な曲げモーメントを作用させることができる。それ故、プレートに関して、突出部分付近において曲げが不足することが抑制される。
【0010】
第2の開示のプレス用金型は、プレートに対して第1方向に移動しながら逐次プレスすることによって曲面プレートを成形するプレス用金型であって、第1方向に直交する第2方向において前記プレートより広く且つ凹状に湾曲する第1成形面を含む第1型と、前記第1成形面に突き合わされる第2成形面であって第2方向において前記プレートより広く且つ凸状に湾曲する前記第2成形面を含む第2型とを備え、前記第1成形面は、前記第2成形面に突き合わされる成形部と、第1方向両端部の各々にある角部と、を有しており、前記成形部は、第1方向において凹状に湾曲しており、前記角部は、第1方向において前記成形部に連なり且つ凸状に湾曲する第1部分を有し、前記第1部分は、第1方向において前記成形部の長さの1%以上20%以下の長さであって、前記プレートの厚みの3倍以上50倍以下の曲率半径で湾曲しているものである。
【0011】
上記構成に従えば、角部の第1部分が第1方向において前記成形部の長さの1%以上20%以下の長さであって、プレートの厚みtの3倍以上50倍以下の曲率半径rd1で湾曲している。それ故、第1方向に長尺なプレートが角部に接触する際、プレートと角部との接触面積を大きくすることができる。従って、プレートが角部から受ける接触面圧を低減することができる。これにより、プレートに圧痕及び傷が生じることが抑制される。
【発明の効果】
【0012】
第1の開示によれば、プレートにおいて過剰な曲げが発生することを抑制することができる。
【0013】
第2の開示によれば、プレートが角部から受ける接触面圧を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示のプレス用金型を備えるプレス機を示す斜視図である。
【
図2】本開示のプレス用金型を用いて成形された曲面プレートによって構成されるタンクを示す正面図である。
【
図3】
図1のプレス機を第1方向一方から見た正面図である。
【
図4】
図1のプレス用金型を分解して示す分解斜視図である。
【
図5】
図4のプレス用金型の第1型を第2方向に垂直な仮想平面で切断して示す正面断面図である。
【
図6】
図4のプレス用金型の第2型を第1方向に垂直な仮想平面で切断して示す側方断面図である。
【
図7】
図3のプレス機において、形状調整治具を用いて第1型と第2型とを突き合せた状態の一例を示す断面図である。
【
図8】
図3のプレス機において、形状調整治具を用いて第1型と第2型とを突き合せた状態の他の例を示す断面図である。
【
図9】
図1のプレス機において実施される逐次プレスを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示に係る実施形態のプレス用金型1について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明するプレス用金型1は、本開示の一実施形態に過ぎない。従って、本開示は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0016】
図1に示すプレス用金型1を備えるプレス機2は、
図2に示すようなタンク3を構成する曲面プレート4を製造する際に用いられる。タンク3は、その中にLNG及び水素等の液化ガスを貯留する。タンク3は、例えば真球形状に形成されている。なお、タンク3は、真球形状に限定されず、非真球形状であってもよい。タンク3は、複数の曲面プレート4によって構成されている。複数の曲面プレート4は、例えば高さ方向に長尺で且つ周方向に湾曲している。タンク3は、複数の曲面プレート4を高さ方向及び周方向に夫々繋ぎ合わせることによって真球形状に形成されている。曲面プレート4の各々は、例えば平板であるプレート5をプレス加工することによって形成される。例えば、タンク3の高さ方向中間部分の曲面プレート4(
図2の網掛部分)は、
図1に示すプレス機2を用いたプレス加工によって形成される。以下では、プレス機2が説明される。
【0017】
<プレス機>
プレス機2は、プレート5に対して第1方向に相対移動しながらプレスを繰り返す逐次プレスをすることによって曲面プレート4を成形する。本実施形態において、プレート5は、曲面プレート4を成形すべく長尺に形成されており、第1方向は、プレート5の長手方向に対応している。プレス機2は、プレス用金型1と、駆動機構6とを備えている。更に、プレス機2は、プレート5の成形状況(曲げ不足及び過剰曲げ等)に応じて複数の形状調整治具7,8が用いられる。
【0018】
<プレス用金型>
プレス用金型1は、
図3にも示すようにプレス機2においてプレート5をプレスする部分であって、プレート5を逐次プレスすることによって曲面プレート4を成形する。プレス用金型1は、第1型11と、第2型12とを備えている。第1型11及び第2型12は、共に平面視で(即ち、後述する第3方向他方に見て)第1方向に直交する第2方向に長尺な短冊状に形成されている。本実施形態において、第1型11及び第2型12は、共に直方体状に形成されている。また、プレス用金型1では、例えば、第3方向一方に第1型11が配置され、第3方向他方に第2型12が配置される。そして、第1型11と第2型12とを第3方向に突き合わせることによって、プレート5がプレスされる。なお、第3方向は、第1方向及び第2方向に直交する方向であって、本実施形態において上下方向である。そして、第1型11は、下方に配置され、第2型12は、上方に配置されている。但し、第2型12は、下方に配置され、第1型11は、上方に配置されていてもよい。
図4に示すように、第1型11は、例えばキャビティ型であって、第1成形面11aを有している。他方、第2型12は、例えばコア型であって、第2成形面12aを有している。そして、2つの型11,12は、2つの成形面11a,12aを互いに突き合わせるようになっている。
【0019】
第1成形面11aは、凹状に湾曲している。また、第1成形面11aは、第1方向に直交する第2方向(本実施形態において、プレート5の幅方向に相当)においてプレート5より広く形成されている。即ち、第1成形面11aは、プレート5より幅広く形成されている。なお、第1成形面11aは、本実施形態において平面視で第2方向に長尺な短冊状に形成されている。また、第1成形面11aは、例えば非球面状に形成されている。なお、第1成形面11aは、部分球面状に形成されてもよい。第1成形面11aは、
図5に示すように成形部11bと、角部11cとを有している。なお、
図5では、第1型11を第2方向中央において第2方向に垂直な仮想平面で切断して見た断面図が示されている。より詳細に説明すると、
図5では、
図3の切断線V-Vで第1型11を切断して見た断面図が示されている。
【0020】
成形部11bは、凹状に湾曲している。成形部11bは、例えば第1成形面11aの殆どの領域を占めており、非球面状に形成されている。本実施形態において、成形部11bは、
図4に示すように第2方向に関して曲率半径r1で形成されている。即ち、成形部11bは、第1方向に直交する仮想平面で切断した第1断面において曲率半径r1で形成されている。また、成形部11bは、第1方向に関して、第2方向の両端及び最も凹んでいる部分(本実施形態において中央)である凹み部分11fの各々において異なる曲率半径r2,r3,r4で形成されている。即ち、成形部11bの両端は、第2方向一方及び他方から夫々見て曲率半径r2,r3で形成されている。また、成形部11bの中央は、第2方向に直交する仮想平面で切断した断面において曲率半径r4で形成されている。
【0021】
角部11cは、
図5にも示すように第1成形面11aにおいて第1方向両端部の各々に形成されている。角部11cは、第1部分11dと、第2部分11eとを有している。第1部分11dは、第1方向において成形部11bに連なっている。即ち、第1部分11dは、第1方向において成形部11bの両端に隣接している。また、第1部分11dの長さL1は、第1方向において成形部11bの長さLのα%となっている。なお、α%は、例えば1%以上20%以下である。なお、α%は、好ましくは5%以上20%以下であって、本実施形態において、αは10%となっている。更に、第1部分11dは、凸状に湾曲している。より詳細に説明すると、第1部分11dは、R状に形成されており、曲率半径r
d1で湾曲している。曲率半径r
d1は、プレート5の厚みtのβ倍となっている。ここで、β倍は、例えば3倍以上50倍以下となっている。本実施形態において、β倍は、30倍である。第2部分11eは、第1部分11dより第1方向外側に位置している。そして、第2部分11eもまた、凸状に湾曲している。より詳細に説明すると、第2部分11eもまた、R状に形成されており、曲率半径r
d2で湾曲している。曲率半径r
d2は、曲率半径r
d1より小さい曲率半径となっている。更に、第2部分11eと第1部分11dとは、角部11cが最も突出している部分にて互いに繋がっている。
【0022】
第2成形面12aは、凸状に湾曲している。また、第2成形面12aは、第2方向においてプレート5より広く形成されている。即ち、第2成形面12aもまたプレート5より幅広く形成されている。更に、第2成形面12aは、第2方向において第1成形面11aより短く形成されている。なお、第2成形面12aもまた、本実施形態において平面視で第2方向に長尺な短冊状に形成されている。そして、第2成形面12aの幅W2は、第1成形面11aの幅W1より広く形成されている。本実施形態において、第2成形面12aの幅W2は、第1成形面11aの幅W1のγ倍(<1)となっている。ここで、各成形面11a,12a,の幅W1,W2は、第1成形面11a及び第2成形面12aにおいて第1方向の長さである。
【0023】
また、第2成形面12aは、第1成形面11aに突き合わされる(後述する
図5を参照)。より詳細に説明すると、第2成形面12aは、第1成形面11aと同じような形状にて形成されている。即ち、第2成形面12aもまた、
図4に示すように部分非球面状に形成されている。本実施形態において、第2成形面12aは、
図6に示すように第2方向に関して曲率半径r1で形成されている。なお、
図6では、第2型12を第2方向中央部において第2方向に垂直な仮想平面で切断して見た断面が示されている。また、第2成形面12aは、第1方向に関して、第2方向の両端及び最も突出する部分である突出部分12c(本実施形態において中央)の各々において異なる曲率半径r2,r3,r4で形成されている。なお、第2成形面12aは、必ずしも第1成形面11aと完全同一形状である必要はない。第2成形面12aの形状は、曲面プレート4の目標形状に応じて第1成形面成形の形状と部分的に異なっていてもよい。例えば、曲率半径r1~r4の少なくとも1つが異なっていてもよい。このような形状を有する第2成形面12aと第1成形面11aと突き合わせることによってプレート5が逐次プレスされ、曲面プレート4が成形される。
【0024】
また、第1成形面11a及び第2成形面12aの一方には、凹溝12bが形成されている。凹部の一例である凹溝12bは、第1成形面11aと第2成形面12aとを突き合せた状態で第2成形面12aの突出部分12cの少なくとも第2方向一方側に形成されている。本実施形態において、第2成形面12aには、
図6に示すように2つの凹溝12bが形成されている。また、2つの凹溝12bは、第2成形面12aの突出部分12cの第2方向両側に夫々形成されている。より詳細に説明すると、2つの凹溝12bは、第2方向において、第2成形面12aの両端部の各々と突出部分12cとの間に夫々位置している。本実施形態において、2つの凹溝12bは、第2方向において第2成形面12aの両端部の各々と突出部分12cとの中間部分に夫々位置している。
【0025】
2つの凹溝12bは、第1方向に延在している。本実施形態では、2つの凹溝12bは、第2成形面12aに沿って湾曲凸状に湾曲するように第1方向に延在している。また、2つの凹溝12bは、第1方向に直交する仮想平面で切断した第1断面において、例えば弓形形状になっている。そして、2つの凹溝12bの肩部分12dは、R状に形成されている。即ち、凹溝12bは、第2方向両端にR面12eを夫々有している。R面12eは、2つの凹溝12bの肩部分12dを丸めるように形成されている。これにより、凹溝12bの両端が第2成形面12aに滑らかに繋がっている。このような形状を有する凹溝12bは、スプライン曲線で表される形状になっている。なお、2つの凹溝12bは、B―スプライン形状及びベジェ曲線のように他のパラメトリック曲線で表される形状であってもよく、その形状は問わない。更に、凹溝12bの深さdは、第1断面において第2成形面12aの第3方向の高さhの1%以上10%以下となっている。ここで、深さdは、第2成形面12aと同じ曲率半径を有する仮想平面から凹溝12bにおいて最も深い位置までの距離である。また、第3方向は、第1方向及び第2方向に直交する方向であって、本実施形態において上下方向である。第2成形面12aの第3方向の高さhは、突出部分12cから第2成形面12aの第2方向両端の各々までの距離のうちより大きい方である。
【0026】
<駆動機構>
駆動機構6は、第1型11及び第2型12のうち一方を他方に向かって相対変位させることによって、2つの成形面11a,12aを突き合わせる。これにより、駆動機構6は、2つの成形面11a,12aの間に配置されるプレート5をプレス用金型1によってプレスさせる。本実施形態において、駆動機構6は、油圧シリンダである。また、駆動機構6は、第2型12に設けられる。そして、駆動機構6は、第2型12を第1型11に向かって降ろすことによって、2つの成形面11a,12aを突き合わせる。第1型11には、プレート5が載置されている。駆動機構6が2つの成形面11a、12aを突き合わせることによって、プレート5がプレスされる。
【0027】
<形状調整治具>
図7及び
図8に示す複数の形状調整治具7,8は、プレス後のプレート5の形状を調整するために用いられる。例えば、第1型11及び第2型12だけでプレート5をプレスすると、目標形状に対して曲げ量が不足する(曲げ不足)場合がある。この場合、複数の形状調整治具7,8を
図7に示すように各成形面11a,12aに配置することによってプレス後のプレート5の形状を調整することができる。また、第1型11及び第2型12だけでプレート5をプレスすると目標形状に対して曲げ量が過剰である(即ち、過剰曲げ)場合がある。この場合、複数の形状調整治具7,8を
図8に示すように各成形面11a,12aに配置することによってプレス後のプレート5の形状を調整することができる。本実施形態において、中間形状調整治具7及び端側形状調整治具8の2種類の形状調整治具7,8が用いられる。以下では、中間形状調整治具7及び端側形状調整治具8が更に詳しく説明される。
【0028】
中間形状調整治具7は、不足する曲げ量又は過剰な曲げ量に応じた厚みを有する板状部材である。本実施形態において、中間形状調整治具7は、ウレタンから成る板状部材である。但し、中間形状調整治具7は、複数の金属板を積層してなる板状部材であってもよい。また、中間形状調整治具7は、第1成形面11aと第2成形面12aとの間であって、第1成形面11aと第2成形面12aのうち一方において、突出部分12cに対応する位置に配置される。更に、中間形状調整治具7は、第1方向に延在している。
【0029】
例えば、曲げ不足の場合、中間形状調整治具7は、
図7に示すように第2成形面12aの突出部分12cに配置されている。中間形状調整治具7は、一方の凹溝12bから他方の凹溝12bまで延在している。そして、中間形状調整治具7の第2方向一方側にある端部7aは、一方の凹溝12bに対応する位置に配置される。また、中間形状調整治具7の第2方向他方側にある端部7aは、他方の凹溝12bに対応する位置に配置される。本実施形態において、中間形状調整治具7の両端部7aは、2つの凹溝12b内に収められている。これにより、中間形状調整治具7の両端部7aがプレート5に当たりにくくなっている。
【0030】
他方、過剰曲げの場合、中間形状調整治具7は、
図8に示すように第1成形面11aにおいて突出部分12cに対応する位置、即ち凹み部分11fに配置されている。中間形状調整治具7は、2つの成形面11a,12aが突き合わされる状態において、一方の凹溝12bに対応する位置から他方の凹溝12bに対応する位置まで延在している。そして、中間形状調整治具7の第2方向一方側にある端部7aは、一方の凹溝12bに対応する位置に配置される。また、中間形状調整治具7の第2方向他方側にある端部7aは、他方の凹溝12bに対応する位置に配置される。本実施形態において、中間形状調整治具7の両端部7aは、2つの成形面11a,12aを突き合せた状態で、プレート5を挟んで2つの凹溝12bの反対側に配置されている。これにより、中間形状調整治具7の両端部7aがプレート5に押え付けられることが抑制される。
【0031】
端側形状調整治具8は、不足する曲げ量又は過剰な曲げ量に応じた厚みを有する板状部材である。本実施形態において、端側形状調整治具8もまた、中間形状調整治具7と同様にウレタンから成る板状部材である。但し、端側形状調整治具8は、複数の金属板を積層してなる板状部材であってもよい。また、端側形状調整治具8は、第1成形面11aと第2成形面12aとの間であって、第1成形面11aと第2成形面12aのうち中間形状調整治具7と異なる方である他方において、第2方向一方側の端部に配置される。本実施形態において、端側形状調整治具8は、第1成形面11aと第2成形面12aとの間であって、第1成形面11aと第2成形面12aのうち他方において、第2方向両端部に配置されている。更に、端側形状調整治具8は、第1方向に延在している。
【0032】
例えば、曲げ不足の場合、端側形状調整治具8は、
図7に示すように第1成形面11aの第2方向両端部に夫々配置されている。一方の端側形状調整治具8は、第1成形面11aにおいて第2方向一端から一方の凹溝12bに対応する位置まで延在し、他方の端側形状調整治具8は、第1成形面11aにおいて第2方向他端から他方の凹溝12bに対応する位置まで延在している。そして、一方の端側形状調整治具8の第2方向他方側にある端部8aは、一方の凹溝12bに対応する位置に配置される。また、他方の端側形状調整治具8の第2方向一方側にある端部8bは、他方の凹溝12bに対応する位置に配置される。より詳細に説明すると、端側形状調整治具8の各々の端部8a,8bは、プレート5を挟んで2つの凹溝12bの反対側に配置されている。これにより、端側形状調整治具8の両端部8a,8bがプレート5に押え付けられることが抑制される。
【0033】
他方、過剰曲げの場合、端側形状調整治具8は、
図8に示すように第2成形面12aの第2方向両端部に夫々配置されている。また、一方の端側形状調整治具8は、第2成形面12aにおいて第2方向一端から一方の凹溝12bにまで延在し、他方の端側形状調整治具8は、第1成形面11aの第2方向他端から他方の凹溝12bまで延在している。そして、一方の端側形状調整治具8の第2方向他方側にある端部8aは、一方の凹溝12bに対応する位置に配置される。また、他方の端側形状調整治具8の第2方向一方側にある端部8bは、他方の凹溝12bに対応する位置に配置される。より詳細に説明すると、端側形状調整治具8の両端部8a,8bは、各凹溝12b内に収められている。これにより、端側形状調整治具8の両端部8a,8bがプレート5に当たりにくくなっている。
【0034】
<プレス作業について>
プレス機2では、
図1に示すように第1型11の第1成形面11a上にプレート5が載せられる。より詳細に説明すると、プレート5は、その幅方向を第2方向に合わせるように第1成形面11a上に載せられる。この際、プレート5は、第1成形面11aに突き合わされる第2成形面12aの第2方向両端の間に位置するように第1成形面11a上に載せられる。本実施形態では、
図9に示すようにプレート5の第1方向一端部から他端部に向かって順次プレスする逐次プレスが行われる。それ故、初めに、第1成形面11a上には、プレート5の第1方向一端部が載せられる。なお、逐次プレスでは、プレート5の第1方向中間部分から一端部及び他端部の各々に向かって順次プレスされてもよく、この場合、初めにプレート5の第1方向中間部分が第1成形面11a上に載せられる。
【0035】
プレス機2では、載せた後、プレート5に対して逐次プレスが行われる。より詳細に説明すると、プレス機2は、プレート5の第1方向一端部から第1方向他端部に向かって所定の間隔Iをあけながらプレート5を順次プレスする。例えば、プレート5の第1方向一端部が第1成形面11aに載せられた後、駆動機構6によって第2型12が第1型11に向かって降ろされる。これにより、プレート5の第1方向一端部がプレスされる。プレスした後、駆動機構6によって第2型12が上昇される。そして、プレート5は、図示しない搬送機構又は作業者によって間隔Iだけ第1方向一方に搬送される。なお、
図9では、図面の説明の便宜上、プレス機2が移動しているように示している。搬送後、駆動機構6が再び第2型12が第1型11に向かって降すことによって、プレート5が第1方向一端部から間隔Iだけ移動した位置でプレスされる。このように、搬送及びプレスを繰り返すことによってプレート5に対して逐次プレスが行われる。そして、逐次プレスによってプレート5から曲面プレート4が成形される。なお、必ずしも逐次プレスによってプレート5から曲面プレート4が一機に成形される必要はなく、プレート5に対して逐次プレスをした後、プレート5が目標形状となるように別途加工等してもよい。
【0036】
このように行われる逐次プレスでは、凹溝12b付近において、プレスする際にプレス用金型1からプレート5に作用する荷重が以下のようになっている。即ち、第2成形面12aに凹溝12bが形成されることによって、プレート5において、凹溝12b付近に第2型12から受ける荷重が抑制される。他方、プレート5は、例えば
図7に示すように凹溝12bの付近で4点支持される。より詳細に説明すると、プレート5は、凹溝12bの第2方向両側において、第2型12から第1型11に向かう荷重P1を受け、更に各荷重P1の第2方向外側において、第1型11から第2型12に向かう荷重P2を受けている。それ故、プレート5の凹溝12bに面している部分において均一な曲げモーメントを与えることができる。これにより、プレート5において突出部分12c付近に生じる過剰曲げを抑制しつつ、凹溝12bに面している部分において均一に曲げることができる。
【0037】
また、逐次プレスにおいて、プレート5が長尺であるが故に、
図5の二点鎖線で示すように第1方向両端部にある角部11cにプレート5の一部が当たる。このままの状態でプレート5がプレスされると、角部11cからプレート5に荷重P3が作用する。これに関して、第1型11では、角部11cに第1部分11dが形成されている。そして、角部11cにおいて第1部分11dにプレート5が当たるようになっている。第1部分11dはR状に形成されており、曲率半径r
d1で湾曲している。更に、第1部分11dの長さは、第1方向において成形部11bの長さのα%となっている。それ故、第1部分11dが滑らかな曲線で且つ広い面積にてプレート5を支えることになる。それ故、プレス時において、角部11cからプレート5に大きな圧力が作用することを抑制できる。これにより、角部11cによってプレート5に圧痕が生じ得ることが抑制される。
【0038】
また、角部11cにおいて、第1部分11dより第1方向外側にある第2部分11eが第1部分11dより曲率半径rd2が曲率半径rd1より小さい曲率半径となっている。それ故、第2部分11eにプレート5が当たることを抑制できる。これにより、角部11cによってプレート5に圧痕が生じ得ることが抑制される。更に、角部11cにおいて、第1部分11dと第2部分11eとが角部11cが最も突出している部分にて互いに繋がっている。角部11cにおいて、第1部分11dの第1方向長さを長くとることができる。それ故、第1方向に長尺なプレート5が角部11cに接触する際、プレート5と角部11cとの接触面積を大きくすることができる。従って、プレート5が角部11cから受ける接触面圧を低減することができる。これにより、プレート5に圧痕及び傷が生じることが更に抑制される。
【0039】
更に、プレス機2では、逐次プレスする際に、プレート5において曲げ不足又は過剰曲げが生じ得る場合、前述する形状調整治具7,8が用いられる。即ち、曲げ不足が生じ得る場合、中間形状調整治具7は、第2成形面12aの突出部分12cに取り付けられる。端側形状調整治具8は、第1成形面11aの第2方向両端部に配置される。これにより、プレート5をプレスする際、曲げ不足を解消することができる。他方、過剰曲げが生じ得る場合、中間形状調整治具7は、第1成形面11aにおいて、突出部分12cに対応する位置に取り付けられる。端側形状調整治具8は、第2成形面12aの第2方向両端部に配置される。これにより、プレート5をプレスする際、過剰曲げを解消することができる。
【0040】
本実施形態のプレス用金型1では、第1成形面11a及び第2成形面12aを突き合せた状態で第2成形面12aの最も突き出ている突出部分12cの第2方向一方側に凹溝12bが形成されている。それ故、第2成形面12aの突出部分12cの第2方向一方側において、プレート5に過剰な曲げモーメントが発生することを抑制することができる。これにより、プレート5に関して、突出部分12c付近において過剰に曲げられることが抑制される。他方、凹溝12b付近においては、プレート5が4点で曲げられる。それ故、プレート5の凹溝12bに対応する部分において、均一な曲げモーメントを作用させることができる。それ故、プレート5に関して、突出部分12c付近において曲げが不足することが抑制される。
【0041】
また、本実施形態のプレス用金型1では、第1成形面11a及び第2成形面12aを突き合せた状態で第2成形面12aの突出部分12cの第2方向両側に凹溝12bが夫々形成されている。それ故、プレート5に関して、突出部分12cの両側において曲げが過剰であったり不足したりすることが抑制される。
【0042】
更に、本実施形態のプレス用金型1では、凹溝12bが第2成形面12aに形成されている。それ故、プレート5をプレスした際の凹溝12bに起因するプレート5の形状異常が発生することを抑制できる。
【0043】
更に、本実施形態のプレス用金型1では、第2方向において、第2成形面12aの一端部と突出部分12cとの間に凹溝12bが位置している。それ故、凹溝12bを形成しても、プレート5の第2方向一端部をプレスすることができる。これにより、プレート5において第2方向一端部も曲げることができる。
【0044】
更に、本実施形態のプレス用金型1では、凹溝12bの肩部分12dは、R状に形成されている。それ故、肩部分12dがプレート5に当たってプレート5に圧痕が発生することを抑制できる。
【0045】
更に、本実施形態のプレス用金型1では、凹溝12bの深さdが第2成形面12aの第3方向の高さhの %以上 %以下である。それ故、肩部分12dの曲率半径を大きくとれるので、肩部分12dがプレート5に当たってプレート5に圧痕が発生することを更に抑制できる。
【0046】
更に、本実施形態のプレス用金型1では、中間形状調整治具7の第2方向一方側にある端部7aが凹溝12bに対応する位置に配置され、端側形状調整治具8の第2方向内側の端部8a,8bが凹溝12bに対応する位置に配置される。それ故、プレス時において、各形状調整治具7,8の端部7a,8a,8bがプレート5に強く当たることが抑制される。これにより、各形状調整治具7,8の端部7a,8a,8bに起因して圧痕が発生することが抑制される。
【0047】
更に、本実施形態のプレス用金型1では、角部11cの第1部分11dが第1方向において成形部11bの長さの1%以上20%以下の長さであって、プレート5の厚みtの3倍以上50倍以下の曲率半径rd1で湾曲している。それ故、第1方向に長尺なプレート5が角部11cに接触する際、プレート5と角部11cとの接触面積を大きくすることができる。従って、プレート5が角部11cから受ける接触面圧を低減することができる。これにより、プレート5に圧痕及び傷が生じることが抑制される。
【0048】
更に、本実施形態のプレス用金型1では、第2部分11eが第1部分11dの曲率半径rd1より小さい曲率半径rd2で湾曲している。それ故、プレート5の第1型11から第1方向にはみ出している部分において、第2部分11eが当たってプレート5に圧痕及び傷が生じることが抑制される。
【0049】
更に、本実施形態のプレス用金型1では、第1部分11d及び第2部分11eが角部11cにおいて最も突出している部分において互いに繋がっている。それ故、第1部分11dの第1方向の長さを長くとることができる。そうすると、第1方向に長尺のプレート5と角部11cとの接触面積をより大きくすることができる。従って、プレート5に作用する角部11cの接触面圧を低減することができる。これにより、プレート5に圧痕及び傷が生じることが更に抑制される。
【0050】
<その他の実施形態>
本実施形態のプレス用金型1では、第1型11が下型であって、第2型12が上型であるが、逆であってもよい。また、駆動機構6によって昇降される型は、第2型12に限定されず、第1型11であってもよい。更に、第1成形面11a及び第2成形面12aの形状は、前述するような非球面形状に限定されない。第1成形面11a及び第2成形面12aの形状は、部分球面状であってもよい。換言すると、第1成形面11aの形状が凹状に湾曲し且つ第2成形面12aが凸状に湾曲し、2つの成形面11a,12aが互いに突き合わせることができればよい。更に、第2成形面12aに形成される凹溝12bの数は、2つに限定されず1つであってもよく、3つ以上であってもよい。更に、凹溝12bは、第1成形面11aにおいて突出部分12cに対応する位置、即ち凹み部分11fの第2方向両側に形成されてもよい。
【0051】
更に、本実施形態のプレス用金型1において、凹溝12b及び角部11cは必ずしも両方が必要ではなく、一方を有していればよい。更に、プレス用金型1よって成形される曲面プレート4が適用される製品は、タンク3のような陸用タンクに限定されず舶用タンクであってもよい。また、製品は、タンク3に限定されず航空機の胴体等であってもよい。
【0052】
<例示的な実施形態>
第1の局面におけるプレス用金型は、プレートに対して第1方向に相対移動しながらプレスを繰り返す逐次プレスによって曲面プレートを成形するプレス用金型であって、第1方向に直交する第2方向において前記プレートより広く且つ凹状に湾曲する第1成形面を含む第1型と、前記第1成形面に突き合わされる第2成形面であって第2方向において前記プレートより広く且つ凸状に湾曲する前記第2成形面を含む第2型とを備え、前記第1成形面及び前記第2成形面の一方の成形面には、凹部が形成され、前記凹部は、前記第1成形面及び前記第2成形面を突き合せた状態で前記第2成形面の最も突き出ている突出部分の少なくとも第2方向一方側に形成されているものである。
【0053】
上記局面に従えば、第1成形面及び第2成形面を突き合せた状態で第2成形面の最も突き出ている突出部分の少なくとも第2方向一方側に凹部が形成されている。それ故、第2成形面の突出部分の少なくとも第2方向一方側において、過剰な曲げモーメントが発生することを抑制することができる。これにより、プレートに関して、突出部分付近において過剰に曲げられることが抑制される。他方、凹部付近においては、プレートが4点で曲げられる。それ故、プレートの凹部に対応する部分において、均一な曲げモーメントを作用させることができる。それ故、プレートに関して、突出部分付近において曲げが不足することが抑制される。
【0054】
第2の局面におけるプレス用金型は、第1の局面におけるプレス用金型において、前記一方の成形面には、2つの前記凹部が形成され、前記凹部は、前記第1成形面及び前記第2成形面を突き合せた状態で前記第2成形面の前記突出部分の第2方向両側に夫々形成されていてもよい。
【0055】
上記局面に従えば、第1成形面及び第2成形面を突き合せた状態で第2成形面の突出部分の第2方向両側に凹部が夫々形成されている。それ故、プレートに関して、突出部分の両側において過剰に曲げられたり、曲げが不足したりすることが抑制される。
【0056】
第3の局面におけるプレス用金型は、第1又は2の局面におけるプレス用金型において、前記凹部は、前記第2成形面に形成されていてもよい。
【0057】
上記局面に従えば、凹部が第2成形面に形成されている。それ故、プレートをプレスした際の凹部に起因するプレートの形状異常が発生することを抑制できる。
【0058】
第4の局面におけるプレス用金型は、第1乃至3の何れか1つの局面におけるプレス用金型において、前記凹部は、第2方向において、前記一方の成形面の一端部と前記突出部分との間に位置していてもよい。
【0059】
上記局面に従えば、第2方向において、一方の成形面の一端部と突出部分との間に凹部が位置している。それ故、凹部を形成しても、プレート5の第2方向一端部をプレスすることができる。これにより、プレートにおいて第2方向一端部も曲げることができる。
【0060】
第5の局面におけるプレス用金型は、第1乃至4の何れか1つの局面におけるプレス用金型において、前記凹部の肩部分は、R状に形成されていてもよい。
【0061】
上記局面に従えば、凹部の肩部分は、R状に形成されている。それ故、肩部分がプレートに当たってプレートに圧痕が発生することを抑制できる。
【0062】
第6の局面におけるプレス用金型は、第5の局面におけるプレス用金型において、前記凹部の各々の深さは、前記一方の成形面の第3方向の高さの1%以上10%以下であってもよい。
【0063】
上記局面に従えば、凹部の深さが一方の成形面の第3方向の高さの1%以上10%以下である。それ故、肩部分の曲率半径を大きくとれるので、肩部分がプレートに当たってプレートに圧痕が発生することを更に抑制できる。
【0064】
第7の局面におけるプレス用金型は、第1乃至6の何れか1つの局面におけるプレス用金型において、前記第1成形面と前記第2成形面との間であって、前記第1成形面と前記第2成形面のうち一方において、前記突出部分に対応する位置に配置される板状の中間形状調整治具と、前記第1成形面と前記第2成形面との間であって、前記第1成形面と前記第2成形面のうち他方において、第2方向一方側にある端部に配置される板状の端側形状調整治具と、を更に備え、前記中間形状調整治具の第2方向一方側にある端部は、前記凹部に対応する位置に配置され、前記端側形状調整治具の第2方向他方側の端部は、前記凹部に対応する位置に配置されていてもよい。
【0065】
上記局面に従えば、中間形状調整治具の第2方向一方側にある端部が凹部に対応する位置に配置され、端側形状調整治具の第2方向他方側の端部が凹部に対応する位置に配置される。それ故、プレス時において、各形状調整治具の端部がプレートに強く当たることが抑制される。これにより、各形状調整治具の端部に起因して圧痕が発生することが抑制される。
【0066】
第8の局面におけるプレス用金型は、第1乃至7の何れか1つの局面におけるプレス用金型において、前記第1成形面は、前記第2成形面に突き合わされる成形部と、第1方向両端部の各々にある角部と、を有しており、前記成形部は、第1方向において凹状に湾曲しており、前記角部は、第1方向において、前記成形部に連なり且つ凸状に湾曲する第1部分を有し、前記第1部分は、第1方向において前記成形部の長さの1%以上20%以下の長さであって、前記プレートの厚みの3倍以上50倍以下の曲率半径で湾曲していてもよい。
【0067】
上記局面に従えば、角部の第1部分が第1方向において成形部の長さの1%以上20%以下の長さであって、プレートの厚みtの3倍以上50倍以下の曲率半径rd1で湾曲している。それ故、第1方向に長尺なプレートが角部に接触する際、プレートと角部との接触面積を大きくすることができる。従って、プレートが角部から受ける接触面圧を低減することができる。これにより、プレートに圧痕及び傷が生じることが抑制される。
【0068】
第9の局面におけるプレス用金型は、第8の局面におけるプレス用金型において、前記角部は、前記第1部分より第1方向外側に位置し、凸状に湾曲する第2部分を有し、前記第2部分は、前記第1部分の曲率半径より小さい曲率半径で湾曲していてもよい。
【0069】
上記局面に従えば、第2部分が第1部分の曲率半径rd1より小さい曲率半径rd2で湾曲している。それ故、プレートの第1型から第1方向にはみ出している部分において、第2部分が当たってプレートに圧痕及び傷が生じることが抑制される。
【0070】
第10の局面におけるプレス用金型は、第9の局面におけるプレス用金型において、前記第1部分及び前記第2部分は、前記角部において最も突出している部分において互いに繋がっていてもよい。
【0071】
上記局面に従えば、第1部分及び第2部分が角部において最も突出している部分において互いに繋がっている。それ故、第1部分の第1方向の長さを長くとることができる。そうすると、第1方向に長尺のプレートと角部との接触面積をより大きくすることができる。従って、プレートに作用する角部の接触面圧を低減することができる。これにより、プレートに圧痕及び傷が生じることが更に抑制される。
【0072】
第11の局面におけるプレス用金型は、プレートに対して第1方向に移動しながら逐次プレスすることによって曲面プレートを成形するプレス用金型であって、第1方向に直交する第2方向において前記プレートより広く且つ凹状に湾曲する第1成形面を含む第1型と、前記第1成形面に突き合わされる第2成形面であって第2方向において前記プレートより広く且つ凸状に湾曲する前記第2成形面を含む第2型とを備え、前記第1成形面は、前記第2成形面に突き合わされる成形部と、第1方向両端部の各々にある角部と、を有しており、前記成形部は、第1方向において凹状に湾曲しており、前記角部は、第1方向において前記成形部に連なり且つ凸状に湾曲する第1部分を有し、前記第1部分は、第1方向において前記成形部の長さの1%以上20%以下の長さであって、前記プレートの厚みの3倍以上50倍以下の曲率半径で湾曲しているものである。
【0073】
上記局面に従えば、角部の第1部分が第1方向において前記成形部の長さの1%以上20%以下の長さであって、プレートの厚みtの3倍以上50倍以下の曲率半径rd1で湾曲している。それ故、第1方向に長尺なプレートが角部に接触する際、プレートと角部との接触面積を大きくすることができる。従って、プレートが角部から受ける接触面圧を低減することができる。これにより、プレートに圧痕及び傷が生じることが抑制される。
【符号の説明】
【0074】
1 プレス用金型
4 曲面プレート
5 プレート
7 中間形状調整治具
7a 端部
8 端側形状調整治具
8a 端部
8b 端部
11 第1型
11a 第1成形面
11b 成形部
11c 角部
11d 第1部分
11e 第2部分
12 第2型
12a 第2成形面
12b 凹溝(凹部)
12c 突出部分
12d 肩部分
d 深さ
h 高さ
rd1 曲率半径
rd2 曲率半径
t 厚み