IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-金型形状の選定方法 図1
  • 特開-金型形状の選定方法 図2
  • 特開-金型形状の選定方法 図3
  • 特開-金型形状の選定方法 図4
  • 特開-金型形状の選定方法 図5
  • 特開-金型形状の選定方法 図6
  • 特開-金型形状の選定方法 図7
  • 特開-金型形状の選定方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040754
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】金型形状の選定方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/00 20060101AFI20240318BHJP
   B21D 22/18 20060101ALI20240318BHJP
   B21D 5/01 20060101ALI20240318BHJP
   B21D 51/18 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
B21D22/00
B21D22/18
B21D5/01 H
B21D51/18 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145311
(22)【出願日】2022-09-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】田島 宏隆
(72)【発明者】
【氏名】木村 剛
(72)【発明者】
【氏名】平野 直哉
【テーマコード(参考)】
4E063
4E137
【Fターム(参考)】
4E063AA01
4E063BA01
4E063CA12
4E063LA09
4E063MA30
4E137AA10
4E137AA21
4E137BB01
4E137CA05
4E137CA09
4E137CA24
4E137CB01
4E137EA01
4E137GA01
4E137GB20
(57)【要約】
【課題】曲面プレートへの成形性を向上させることができる金型を選定し得る金型形状の選定方法を提供する。
【解決手段】プレス機の金型の形状を選定する金型形状の選定方法は、複数のパラメータを含むパラメータ群を作成するパラメータ作成工程と、パラメータ群に基づいてプレート形状をシミュレーションするシミュレーション工程と、シミュレーション工程を複数回行うことによって得られる複数のプレート形状に基づいて金型形状を選定する選定工程とを、備え、金型は、第1成形面を含む第1型と、第2成形面を含む第2型とを、備え、第1成形面は、各寸法が第1乃至第4曲率半径で形成され、第2成形面は、プレス時に第1成形面に突き合わされ、且つ関して第1成形面の幅の1/α倍で形成され、複数のパラメータ群は、第1乃至第4曲率半径、及び比率αを含んでいる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートに対して第1方向に相対移動しながら逐次プレスすることによって曲面プレートを成形するプレス機の金型の形状を選定する金型形状の選定方法であって、
金型形状に関する複数のパラメータを含むパラメータ群を作成するパラメータ作成工程と、
前記パラメータ作成工程で作成される前記パラメータ群に基づいて成型される前記金型によって成形されるプレート形状をシミュレーションするシミュレーション工程と、
前記パラメータ作成工程で作成される互いに異なる前記パラメータ群に基づいて前記シミュレーション工程を複数回行うことによって得られる複数の前記プレート形状に基づいて金型形状を選定する選定工程とを、備え、
前記金型は、第1方向に直交する第2方向において前記プレートより幅広く且つ凹状に湾曲する第1成形面を含む第1型と、第2方向において前記プレートより幅広く且つ凸状に湾曲する第2成形面を含む第2型とを、備え、
前記第1成形面は、第2方向に関して第1曲率半径で形成され、第1方向に関して第2方向両端の各々を第2及び第3曲率半径で夫々形成され且つ第2方向において最も凹んでいる部分を第4曲率半径で形成され、
前記第2成形面は、プレス時に前記第1成形面に突き合わされ、且つ第1方向の長さである幅に関して前記第1成形面の幅の1/α倍で形成され、
前記複数のパラメータ群は、前記第1乃至第4曲率半径、及び比率αを含んでいる、金型形状の選定方法。
【請求項2】
前記選定工程では、複数の前記プレート形状と目標形状とを比較することによって前記金型形状が選定される、請求項1に記載の金型形状の選定方法。
【請求項3】
前記パラメータ作成工程、及び前記シミュレーション工程、及び前記選定工程に関して、最適化計算が用いられる、請求項1に記載の金型形状の選定方法。
【請求項4】
前記シミュレーション工程では、前記金型によって前記プレートを逐次プレスすることによって成形された際の前記プレート形状をシミュレーションする、請求項1に記載の金型形状の選定方法。
【請求項5】
前記第1成形面及び前記第2成形面の少なくとも一方の成形面には、凹部が形成され、
前記凹部は、前記第1成形面及び前記第2成形面を突き合せた状態で前記第2成形面の最も突き出ている突出部分の少なくとも第2方向一方側に形成され、
前記凹部の断面形状は、パラメトリック曲線で形成され、
前記パラメータ群は、前記凹部のパラメトリック曲線の変数を含む、請求項1に記載の金型形状の選定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プレートに対して第1方向に相対移動しながら逐次プレスすることによって曲面プレートを成形するプレス機の金型の形状を選定する金型形状の選定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化水素等の液化ガスを貯留するタンクを構成する曲面プレートは、プレス機によってプレス成形される。プレス機は、金型でプレートをプレスすることによってプレートを目標形状(即ち、曲面プレートの形状)へと近づけていく。しかし、金型の形状次第では、目標形状に近づけることができず、金型の形状の選定が重要である。金型の形状の選定する方法として、例えば特許文献1に記載される金型決定方法が知られている。特許文献1に記載される金型決定方法では、形状の異なる複数種類の金型でテストプレスすることによって、好適な金型を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6568380号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の金型決定方法では、成形面の各所の曲率半径を変えた複数種類の金型をテストプレスすることによって、好適な金型を決定している。しかし、特許文献1の金型決定方法で決められる金型形状よりも更にプレートを目標形状に近づけることができる、即ち、曲面プレートへの成形性を向上させることができる金型形状の選定方法が開発されることが望まれている。
【0005】
そこで本開示は、曲面プレートへの成形性を向上させることができる金型を選定し得る金型形状の選定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の金型形状の選定方法は、プレートに対して第1方向に相対移動しながら逐次プレスすることによって曲面プレートを成形するプレス機の金型の形状を選定する金型形状の選定方法であって、金型形状に関する複数のパラメータを含むパラメータ群を作成するパラメータ作成工程と、前記パラメータ作成で作成される前記パラメータ群に基づいて成型される前記金型によって成形されるプレート形状をシミュレーションするシミュレーション工程と、前記パラメータ作成工程で作成される互いに異なる前記パラメータ群に基づいて前記シミュレーション工程を複数回行うことによって得られる複数の前記プレート形状に基づいて金型形状を選定する選定工程とを、備え、前記金型は、第1方向に直交する第2方向において前記プレートより幅広く且つ凹状に湾曲する第1成形面を含む第1型と、第2方向において前記プレートより幅広く且つ凸状に湾曲する第2成形面を含む第2型とを、備え、前記第1成形面は、第2方向に関して第1曲率半径で形成され、第1方向に関して第2方向両端の各々を第2及び第3曲率半径で夫々形成され且つ第2方向において最も凹んでいる部分を第4曲率半径で形成され、前記第2成形面は、プレス時に前記第1成形面に突き合わされ、且つ第1方向の長さである幅に関して前記第1成形面の幅の1/α倍で形成され、前記複数のパラメータ群は、前記第1乃至第4曲率半径、及び比率αを含んでいる方法である。
【0007】
本開示に従えば、パラメータに2つの成形面の幅の比率αが含まれている。それ故、プレス後のプレートをより目標形状に近づけることができる、即ち曲面プレートへの成形性を向上させることができる金型を選定することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、曲面プレートへの成形性を向上させることができる金型を選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の金型形状の選定方法で選定されるプレス用金型を備えるプレス機を示す斜視図である。
図2図1のプレス用金型を用いて成形された曲面プレートによって構成されるタンクを示す正面図である。
図3図1のプレス機を第1方向一方から見た正面図である。
図4図1のプレス用金型を分解して示す分解斜視図である。
図5図4のプレス用金型を第1方向に垂直な仮想平面で切断して示す側方断面図である。
図6図1のプレス機において実施される逐次プレスを示す平面図である。
図7】プレス後のプレート形状をシミュレーションする際のFEM解析の金型モデルを示す斜視図である。
図8】本開示の金型形状の選定方法でプレス用金型を選定する際の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態の金型形状の選定方法について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する金型形状の選定方法は、本開示の一実施形態に過ぎない。従って、本開示は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0011】
本開示の金型形状の選定方法は、図1に示すプレス機1のプレス用金型2を選定するための方法である。プレス機1は、例えば図2に示すようなタンク3を構成する曲面プレート4を製造する際に用いられる。タンク3は、その中にLNG及び水素等の液化ガスを貯留する。タンク3は、例えば真球形状に形成されている。なお、タンク3は、真球形状に限定されず、非真球形状であってもよい。タンク3は、複数の曲面プレート4によって構成されている。複数の曲面プレート4は、例えば高さ方向に長尺で且つ周方向に湾曲している。タンク3は、複数の曲面プレート4を高さ方向及び周方向に夫々繋ぎ合わせることによって真球形状に形成されている。曲面プレート4の各々は、例えば平板であるプレート5をプレス加工することによって形成される。例えば、タンク3の高さ方向中間部分の曲面プレート4(図2の網掛部分)は、図1に示すプレス機1を用いたプレス加工によって形成される。以下では、プレス機1が説明される。
【0012】
<プレス機>
プレス機1は、プレート5に対して第1方向に相対移動しながらプレスを繰り返す逐次プレスをすることによって曲面プレート4を成形する。本実施形態において、プレート5は、曲面プレート4を成形すべく長尺に形成されており、第1方向は、プレート5の長手方向に対応している。プレス機1は、プレス用金型2と、駆動機構6とを備えている。
【0013】
<プレス用金型>
プレス用金型2は、図3にも示すようにプレス機1においてプレート5をプレスする部分であって、プレート5を逐次プレスすることによって曲面プレート4を成形する。プレス用金型2は、第1型11と、第2型12とを備えている。第1型11及び第2型12は、共に平面視で(即ち、後述する第3方向に見て)第1方向に直交する第2方向に長尺な短冊状に形成されている。本実施形態において、第1型11及び第2型12は、共に直方体状に形成されている。また、プレス用金型2では、例えば、第3方向一方に第1型11が配置され、第3方向他方に第2型12が配置される。そして、第1型11と第2型12とを第3方向に突き合わせることによって、プレート5がプレスされる。なお、第3方向は、第1方向及び第2方向に直交する方向であって、本実施形態において上下方向である。そして、第1型11は、下方に配置され、第2型12は、上方に配置されている。但し、第2型12は、下方に配置され、第1型11は、上方に配置されていてもよい。図4に示すように、第1型11は、例えばキャビティ型であって、第1成形面11aを有している。他方、第2型12は、例えばコア型であって、第2成形面12aを有している。そして、2つの型11,12は、2つの成形面11a,12aを互いに突き合わせるようになっている。
【0014】
第1成形面11aは、凹状に湾曲している。また、第1成形面11aは、第1方向に直交する第2方向(本実施形態において、プレート5の幅方向に相当)においてプレート5より広く形成されている。即ち、第1成形面11aは、プレート5より幅広く形成されている。なお、第1成形面11aは、本実施形態において平面視で第2方向に長尺な短冊状に形成されている。また、第1成形面11aは、例えば非球面状に形成されている。なお、第1成形面11aは、部分球面状に形成されてもよい。本実施形態において、第1成形面11aは、第2方向に関して第1曲率半径r1で形成されている。即ち、第1成形面11aは、第1方向に直交する仮想平面で切断した第1断面において第1曲率半径r1で形成されている。また、第1成形面11aは、第1方向に関して、第2方向の両端及び最も凹んでいる部分(本実施形態において中央)である凹み部分11bの各々において異なる第2乃至第4曲率半径r2,r3,r4で形成されている。即ち、第1成形面11aの両端は、第2方向一方及び他方から夫々見て第2及び第3曲率半径r2,r3で形成されている。また、第1成形面11aの中央は、第2方向に直交する仮想平面で切断した断面において第4曲率半径r4で形成されている。なお、第1成形面11aの両端の第2及び第3曲率半径r2,r3は、同一であってもよい。
【0015】
第2成形面12aは、凸状に湾曲している。また、第2成形面12aは、第2方向においてプレート5より広く形成されている。即ち、第2成形面12aもまたプレート5より幅広く形成されている。更に、第2成形面12aは、第2方向において第1成形面11aより短く形成されている。なお、第2成形面12aもまた、本実施形態において平面視で第2方向に長尺な短冊状に形成されている。そして、第2成形面12aの幅W2は、第1成形面11aの幅W1より広く形成されている。本実施形態において、第2成形面12aの幅W2は、第1成形面11aの幅W1の1/α倍(比率α=W2/W1>1)となっている。ここで、各成形面11a,12aの幅は、第1成形面11a及び第2成形面12aにおいて第1方向の長さである。
【0016】
また、第2成形面12aは、第1成形面11aに突き合わされる(後述する図5を参照)。より詳細に説明すると、第2成形面12aは、第1成形面11aと同じような形状にて形成されている。即ち、第2成形面12aもまた、図4に示すように部分非球面状に形成されている。本実施形態において、第2成形面12aは、第2方向に関して第1曲率半径r1で形成されている。なお、図5では、第2型12を第1方向中央部において第1方向に垂直な仮想平面で切断して見た断面が示されている。また、第2成形面12aは、第1方向に関して、第2方向の両端及び最も突出する部分である突出部分12c(本実施形態において中央)の各々において異なる第2乃至第4曲率半径r2,r3,r4で形成されている。なお、第2成形面12aは、必ずしも第1成形面11aと完全同一形状である必要はない。第2成形面12aの形状は、プレート5の目標形状に応じて第1成形面成形の形状と部分的に異なっていてもよい。例えば、第1乃至第4曲率半径r1~r4の少なくとも1つが異なっていてもよい。本実施形態において、目標形状は、例えば曲面プレート4の形状である。このような形状を有する第2成形面12aと第1成形面11aと突き合わせることによってプレート5が逐次プレスされ、曲面プレート4が成形される。
【0017】
また、第1成形面11a及び第2成形面12aの一方には、凹溝12bが形成されている。凹部の一例である凹溝12bは、第1成形面11aと第2成形面12aとを突き合せた状態で第2成形面12aの突出部分12cの少なくとも第2方向一方側に形成されている。本実施形態において、第2成形面12aには、図5に示すように2つの凹溝12bが形成されている。そして、2つの凹溝12bは、第2成形面12aの突出部分12cの第2方向両側に夫々形成されている。より詳細に説明すると、2つの凹溝12bは、第2方向において、第2成形面12aの両端部の各々と突出部分12cとの間に夫々位置している。本実施形態において、2つの凹溝12bは、第2方向において第2成形面12aの両端部の各々と突出部分12cとの中間部分に夫々位置している。
【0018】
2つの凹溝12bは、第1方向に延在している。本実施形態では、2つの凹溝12bは、第2成形面12aに沿って湾曲凸状に湾曲するように第1方向に延在している。また、2つの凹溝12bの各々において、第1方向に直交する仮想平面で切断した第1断面形状がパラメトリック曲線f(x)で形成されている。パラメトリック曲線f(x)は、例えばスプライン曲線、B-スプライン曲線、及びNUNRBS曲線等である。本実施形態において、凹溝12bの第1断面形状は、B-スプライン曲線で形成されている。そして、凹溝12bの第1断面形状は、例えば弓形形状になっている。
【0019】
<駆動機構>
駆動機構6は、第1型11及び第2型12のうち一方を他方に向かって相対変位させることによって、2つの成形面11a,12aを突き合わせる。これにより、駆動機構6は、2つの成形面11a,12aの間に配置されるプレート5をプレス用金型2によってプレスさせる。本実施形態において、駆動機構6は、油圧シリンダである。また、駆動機構6は、第2型12に設けられる。そして、駆動機構6は、第2型12を第1型11に向かって降ろすことによって、2つの成形面11a,12aを突き合わせる。第1型11には、プレート5が載置されている。駆動機構6が2つの成形面11a、12aを突き合わせることによって、プレート5がプレスされる。
【0020】
<プレス作業について>
プレス機1では、図1に示すように第1型11の第1成形面11a上にプレート5が載せられる。より詳細に説明すると、プレート5は、その幅方向を第2方向に合わせるように第1成形面11a上に載せられる。この際、プレート5は、第1成形面11aに突き合わされる第2成形面12aの第2方向両端の間に位置するように第1成形面11a上に載せられる。本実施形態では、図6に示すようにプレート5の第1方向一端部から他端部に向かって順次プレスする逐次プレスが行われる。それ故、初めに、第1成形面11a上には、プレート5の第1方向一端部が載せられる。なお、逐次プレスでは、プレート5の第1方向中間部分から一端部及び他端部の各々に向かって順次プレスされてもよく、この場合、初めにプレート5の第1方向中間部分が第1成形面11a上に載せられる。
【0021】
プレス機1では、載せた後、プレート5に対して逐次プレスが行われる。より詳細に説明すると、プレス機1は、プレート5の第1方向一端部から第1方向他端部に向かって所定の間隔Iをあけながらプレート5を順次プレスする。例えば、プレート5の第1方向一端部が第1成形面11aに載せられた後、駆動機構6によって第2型12が第1型11に向かって降ろされる。これにより、プレート5の第1方向一端部がプレスされる。プレスした後、駆動機構6によって第2型12が上昇される。そして、プレート5は、図示しない搬送機構又は作業者によって間隔Iだけ第1方向一方に搬送される。なお、図6では、図面の説明の便宜上、プレス機1が移動しているように示している。搬送後、駆動機構6が再び第2型12が第1型11に向かって降すことによって、プレート5の第1方向一端部がプレスされる。このように、搬送及びプレスを繰り返すことによってプレート5に対して逐次プレスが行われる。そして、逐次プレスによってプレート5から曲面プレート4が成形される。なお、必ずしも逐次プレスによってプレート5から曲面プレート4が一機に成形される必要はなく、プレート5に対して逐次プレスをした後、プレート5が目標形状となるように別途加工等してもよい。
【0022】
このように行われる逐次プレスでは、凹溝12b付近において、プレスする際にプレス用金型2からプレート5に作用する荷重が以下のようになっている。即ち、プレート5において、凹溝12b付近に第2型12から受ける荷重が抑制される。他方、プレート5は、例えば図5の拡大図に示すように凹溝12bの付近で4点支持される。より詳細に説明すると、プレート5は、凹溝12bの第2方向両側において、第2型12から第1型11に向かう荷重P1を受け、更に各荷重P1の第2方向外側において、第1型11から第2型12に向かう荷重P2を受けている。それ故、プレート5の凹溝12bに面している部分において均一な曲げモーメントを与えることができる。これにより、プレート5において突出部分12c付近に生じる過剰曲げを抑制しつつ、凹溝12bに面している部分において均一に曲げることができる。
【0023】
<金型形状の選定方法>
前述のようにプレスされたプレート5の形状は、曲げ戻し、曲げ不足、及び過剰曲げ等の様々な理由により、必ずしもプレス用金型2の形状、即ち各成形面11a,12aと同じ形状にならない。そこで、成形後のプレート5の形状、即ちプレート形状が目標形状に近づくように最適化計算を用いて、様々な形状のプレス用金型2から好適な形状のプレス用金型2が選定される。本実施形態では、最適化計算として滑降シンプレックス法が用いられる。但し、最適化計算は、モンテカルロ法、遺伝的アルゴリズム、焼き鈍し法、及びベイズ最適化法であってもよい。
【0024】
簡単に説明すると、プレス用金型2を選定する金型形状の選定方法は、例えば以下のようにして行われる。プレート5をプレス成形した際のプレート形状に関するシミュレーションが様々な形状のプレス用金型2に対して行われる。そして、各シミュレーションで得られたプレート形状を比較し、目標形状に近いプレート形状を成形したプレス用金型2が選択される。即ち、最も好適な形状のプレス用金型2が選定される。
【0025】
シミュレーションは、コンピュータにおいて例えば以下のように行われる。即ち、シミュレーションでは、図7に示すようなプレス用金型2のモデルが作成される。本実施形態では、金型形状に関する複数のパラメータを含むパラメータ群が設定される。そして、設定されたパラメータ群に基づいてプレス用金型2のモデルが作成される。ここで、複数のパラメータは、主に第1成形面11a及び第2成形面12aの各種寸法である。本実施形態において、複数のパラメータには、第1成形面11aにおける第1乃至第4曲率半径r1~r4、及び幅の比率αが含まれている。更に、複数のパラメータには、凹溝12bのパラメトリック曲線f(x)の変数も含まれている。それ故、パラメータ群に基づいて成型されるプレス用金型2によって成形されたプレート5のプレート形状をシミュレーションすることができる。ここでは、パラメータ群に基づいて成型されるプレス用金型2によってプレート5を前述する逐次プレスし、その際に成形されるプレート形状がシミュレーションされる。なお、本実施形態において、シミュレーションにはFEM解析が用いられる。
【0026】
以下では、好適なプレス用金型2を選定する金型形状の選定方法の手順が図8を参照しながら更に詳細に説明される。金型形状の選定方法では、コンピュータにおいて金型形状選定処理が実行されると、ステップS1に移行する。パラメータ作成工程であるステップS1では、パラメータ群が作成される。パラメータ群には、前述の通り、第1乃至第4曲率半径r1~r4、幅の比率α、及びパラメトリック曲線f(x)の変数が含まれている。本実施形態において、パラメトリック曲線f(x)は、前述の通りB-スプライン曲線である。コンピュータでは、最適化計算(本実施形態では、滑降シンプレックス)のルールに従って6つのパラメータが設定されることによってパラメータ群が作成される。パラメータ群が作成されると、ステップS2に移行する。
【0027】
シミュレーション工程であるステップS2では、パラメータ作成工程で作成されるパラメータ群に基づいてコンピュータ上で金型が成形される。そして、成型された金型によって成形されるプレート形状がシミュレーションされる。より詳細に説明すると、コンピュータでは、前述の通りパラメータ群に基づいてプレス用金型2のモデルが作成される。そして、モデル化されたプレス用金型2によって成形されるプレート5のプレート形状がシミュレーションされる。前述の通り、本実施形態では、FEM解析によってプレート形状がシミュレーションされる。そして、シミュレーションによってプレート形状が得られると、ステップS3に移行する。
【0028】
プレート形状比較工程であるステップS3では、シミュレーション工程で得られたプレート形状が比較される。より詳細に説明すると、コンピュータは、シミュレーション工程で得られたプレート形状をそれまでに得られたプレート形状と比較する。そして、コンピュータは、目標形状に近いプレート形状を選択する。そして、目標形状に近いプレート形状が最適プレート形状として記憶される。本実施形態では、シミュレーション工程で得られたプレート形状が最適プレート形状と比較され、それらのうち目標形状に近いプレート形状が最適プレート形状として記憶される。更に、それを成形する金型形状も最適金型形状として記憶される。最適プレート形状及び最適金型形状が記憶されると、ステップS5に移行する。
【0029】
シミュレーション回数加算工程であるステップS5では、シミュレーション回数nに1が加算される。加算すると、ステップS6に移行する。シミュレーション回数判定工程であるステップS6では、シミュレーション回数nが予め設定された規定回数mに達しているか否かを判定する。シミュレーション回数nが規定回数mに達していないと、ステップS1に戻る。
【0030】
ステップS1であるパラメータ作成工程に戻ると、前回作成されたパラメータ群と異なるパラメータ群が、最適化計算(本実施形態では、滑降シンプレックス)のルールに従って作成される。即ち、前回作成されたパラメータ群と異なる組み合わせの複数のパラメータを含むパラメータ群が作成される。その後、ステップS2のシミュレーション工程において、2つ目のパラメータ群に基づいてプレート形状がシミュレーションされる。そして、ステップS3のプレート形状比較工程において、2回目のシミュレーションで得られたプレート形状を最適プレート形状と比較し、最適プレート形状が決められる。そのあと、ステップS4及びステップS5を経て再びステップS1に戻る。そして、シミュレーション回数nが規定回数mに達するまで、パラメータ群の作成(ステップS1)、シミュレーション(ステップS2)、及びプレート形状の比較(ステップS3)が繰り返される。
【0031】
このように金型形状の選定方法では、パラメータ作成工程で作成される互いに異なるパラメータ群に基づいてシミュレーション工程が複数回行われるd。そして、ステップS3のプレート形状比較工程では、シミュレーション工程が複数回行われることによって得られる複数のプレート形状同士が比較される。これにより、複数のプレート形状から最適プレート形状が選択され、最適プレート形状を成形し得る最適金型形状が決められる。このようにして、シミュレーション工程が複数回行われることによって得られる複数のプレート形状に基づいて金型が選定される(選定工程)。そして、シミュレーション回数nが規定回数mに達すると、ステップS6に移行する。
【0032】
選定金型形状出力工程であるステップS6では、記憶される最適金型形状が選定されたプレス用金型2の形状として出力される。より詳細に説明すると、コンピュータのディスプレイ等に最適金型形状が出力される。このように、プレス用金型2の形状が選定されて出力されると、金型形状選定処理が終了する。
【0033】
本実施形態の金型形状の選定方法では、パラメータに2つの成形面11a,12aの幅の比率α(=W2/W1)が含まれている。それ故、プレス後のプレート形状をより目標形状に近づけることができる、即ち曲面プレート4への成形性を向上させることができる金型を選定することができる。
【0034】
また、本実施形態の金型形状の選定方法では、評価工程において、複数のプレート形状に関して目標形状と比較することによって金型形状が選定される。それ故、目標形状に近いプレート形状を得ることができる金型形状を選定することができる。
【0035】
更に、本実施形態の金型形状の選定方法では、パラメータ作成工程、及びシミュレーション工程、及び評価工程に関して、最適化計算が用いられる。それ故、金型形状の選定に要する時間を低減することができる。
【0036】
更に、本実施形態の金型形状の選定方法では、シミュレーション工程において、プレス用金型2によってプレート5を逐次プレスすることによって成形された際のプレート形状がシミュレーションされる。それ故、実際にプレスされたプレート5に応じたシミュレーション結果が得られるので、より好ましい金型形状を選定することができる。
【0037】
更に、本実施形態の金型形状の選定方法では、凹溝12bを形成することによって、プレス時に発生する過剰曲げが抑制される。このような凹溝12bの形状もパラメータに含めることによって、より好ましい金型形状を選定することができる。
【0038】
<その他の実施形態について>
本実施形態の金型形状の選定方法で選定されるプレス用金型2は、第1型11が下型であって、第2型12が上型であるが、逆であってもよい。また、駆動機構6によって昇降される型は、第2型12に限定されず、第1型11であってもよい。換言すると、第1成形面11aの形状が凹状に湾曲し且つ第2成形面12aが凸状に湾曲し、2つの成形面11a,12aが互いに突き合わせることができればよい。更に、第2成形面12aに形成される凹溝12bの数は、2つに限定されず1つであってもよく、3つ以上であってもよい。更に、凹溝12bは、第1成形面11aにおいて突出部分12cに対応する位置、即ち凹み部分11bの第2方向両側に形成されてもよい。また、プレス用金型2において、凹溝12b必ずしも両方が必要ではない。
【0039】
更に、本実施形態の金型形状の選定方法では、規定数のプレート形状をシミュレーションした後、プレート形状比較工程において、全てのプレート形状のうち最も目標形状に近い最適なプレート形状が選ばれてもよい。本実施形態の金型形状の選定方法では、最適化計算を用いて金型形状が選定されているが、その他の計算方法を用いて金型形状が選定されてもよい。本実施形態の金型形状の選定方法では、逐次プレスに限定されず、単発のプレス成形や複数回のプレス成形であってもよい。更に、本実施形態の金型形状の選定方法では、必ずしもパラメータ群に凹溝12bのパラメトリック曲線f(x)の変数が含まれている必要はない。また、凹溝12bの形状は、必ずしもパラメトリック曲線f(x)で表されるような形状である必要はない。
【0040】
<例示的な実施形態>
第1の局面の金型形状の選定方法は、プレートに対して第1方向に相対移動しながら逐次プレスすることによって曲面プレートを成形するプレス機の金型の形状を選定する金型形状の選定方法であって、金型形状に関する複数のパラメータを含むパラメータ群を作成するパラメータ作成工程と、前記パラメータ作成工程で作成される前記パラメータ群に基づいて成型される前記金型によって成形されるプレート形状をシミュレーションするシミュレーション工程と、前記パラメータ作成工程で作成される互いに異なる前記パラメータ群に基づいて前記シミュレーション工程を複数回行うことによって得られる複数の前記プレート形状に基づいて金型形状を選定する選定工程とを、備え、前記金型は、第1方向に直交する第2方向において前記プレートより幅広く且つ凹状に湾曲する第1成形面を含む第1型と、第2方向において前記プレートより幅広く且つ凸状に湾曲する第2成形面を含む第2型とを、備え、前記第1成形面は、第2方向に関して第1曲率半径で形成され、第1方向に関して第2方向両端の各々を第2及び第3曲率半径で夫々形成され且つ第2方向において最も凹んでいる部分を第4曲率半径で形成され、前記第2成形面は、プレス時に前記第1成形面に突き合わされ、且つ第1方向の長さである幅に関して前記第1成形面の幅の1/α倍で形成され、前記複数のパラメータ群は、前記第1乃至第4曲率半径、及び比率αを含んでいる方法である。
【0041】
上記局面に従えば、パラメータに2つの成形面の幅の比率αが含まれている。それ故、プレス後のプレートをより目標形状に近づけることができる、即ち曲面プレートへの成形性を向上させることができる金型を選定することができる。
【0042】
第2の局面の金型形状の選定方法は、第1の局面における金型形状の選定方法において、前記選定工程では、複数の前記プレート形状と目標形状とを比較することによって前記金型形状が選定されてもよい。
【0043】
上記局面に従えば、評価工程において、複数のプレート形状に関して目標形状と比較することによって金型形状が選定される。それ故、目標形状に近いプレート形状を得ることができる金型形状を選定することができる。
【0044】
第3の局面の金型形状の選定方法は、第1又は2の局面における金型形状の選定方法において、前記パラメータ作成工程、及び前記シミュレーション工程、及び前記選定工程に関して、最適化計算が用いられてもよい。
【0045】
上記局面に従えば、パラメータ作成工程、及びシミュレーション工程、及び評価工程に関して、最適化計算が用いられる。それ故、金型形状の選定に要する時間を低減することができる。
【0046】
第4の局面の金型形状の選定方法は、第1乃至3の何れか1つの局面における金型形状の選定方法において、記シミュレーション工程では、前記金型によって前記プレートを逐次プレスすることによって成形された際の前記プレート形状をシミュレーションしてもよい。
【0047】
上記局面に従えば、シミュレーション工程において、金型によってプレートを逐次プレスすることによって成形された際のプレート形状がシミュレーションされる。それ故、実際にプレスされるプレートに応じたシミュレーション結果が得られるので、より好ましい金型形状を選定することができる。
【0048】
第5の局面の金型形状の選定方法は、第1乃至第4の何れか1つの局面における金型形状の選定方法において、前記第1成形面及び前記第2成形面の少なくとも一方の成形面には、凹部が形成され、前記凹部は、前記第1成形面及び前記第2成形面を突き合せた状態で前記第2成形面の最も突き出ている突出部分の少なくとも第2方向一方側に形成され、前記凹部の断面形状は、パラメトリック曲線で形成され、前記パラメータ群は、前記凹部のパラメトリック曲線の変数を含んでもよい。
【0049】
上記局面に従えば、凹部を形成することによって、プレス時に発生する突出部付近の過剰曲げが抑制される。このような凹部の形状もパラメータに含めることによって、より好ましい金型形状を選定することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 プレス機
2 プレス用金型(金型)
4 曲面プレート
5 プレート
11 第1型
11a 第1成形面
12 第2型
12a 第2成形面
12b 凹溝(凹部)
12c 突出部分
f パラメトリック曲線
r1 第1曲率半径
r2 第2曲率半径
r3 第3曲率半径
r4 第4曲率半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8