(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040759
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】個片フィルムの製造方法及び個片フィルム、並びに表示装置の製造方法及び表示装置
(51)【国際特許分類】
H05K 3/08 20060101AFI20240318BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20240318BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240318BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20240318BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240318BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20240318BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20240318BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20240318BHJP
B32B 3/14 20060101ALI20240318BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240318BHJP
B32B 15/04 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
H05K3/08 D
C09D5/24
C09D201/00
H05K3/00 N
G09F9/00 348
G09F9/00 338
G09F9/33
H01R11/01 501C
H01R43/00 H
B32B3/14
B32B7/025
B32B15/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145317
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
(72)【発明者】
【氏名】林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】渡部 一夢
(72)【発明者】
【氏名】白岩 俊紀
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
5C094
5E051
5E339
5G435
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB01H
4F100AG00A
4F100AK01A
4F100AK25B
4F100AK53B
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4J038HA066
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5C094BA23
5E051CA03
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5G435KK05
(57)【要約】
【課題】個片の優れた加工性を得ることができる個片フィルムの製造方法及び個片フィルム、並びに表示装置の製造方法及び表示装置を提供する。
【解決手段】基材21上に設けられた異方性導電膜22に対して基材21側からレーザー光を照射し、該照射部分の異方性導電膜22を除去し(除去部23)、異方性導電膜22からなる所定形状の個片を形成する。ここで。異方性導電膜22の厚みは、1μm以上10μm以下であり、異方性導電膜22の30℃における溶融粘度は、2000Pa・s以上800000Pa・s以下であり、異方性導電膜22中の導電粒子は、異方性導電膜22の厚み方向における導電粒子の中心位置の平均値に90%以上存在する。これにより、個片の優れた加工性を得ることができ、タクトタイムを向上させることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に設けられた異方性導電膜に対して前記基材側からレーザー光を照射し、該照射部分の異方性導電膜を除去し、前記基材上に異方性導電膜からなる所定形状の個片を形成し、
前記異方性導電膜の厚みが、前記異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の0.9倍以上8倍以下であり、
前記異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、2000Pa・s以上800000Pa・s以下である個片フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記異方性導電膜中の導電粒子が、前記異方性導電膜の厚み方向における前記導電粒子の中心位置の平均値に90%以上存在する請求項1記載の個片フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記所定形状の遮光部が形成されたマスクを介して前記レーザー光を照射する請求項1記載の個片フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記所定形状が、鈍角からなる多角形、角が丸い多角形、楕円、長円、及び円から選択される少なくとも1種である請求項1記載の個片フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記異方性導電膜中の前記導電粒子が面方向に整列されてなる請求項1記載の個片フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、5000Pa・s以上500000Pa・s以下である請求項1記載の個片フィルムの製造方法。
【請求項7】
異方性導電膜からなる所定形状の個片を有し、
前記異方性導電膜の厚みが、前記異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の0.9倍以上8倍以下であり、
前記異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、2000Pa・s以上800000Pa・s以下である個片フィルム。
【請求項8】
前記異方性導電膜中の導電粒子が、前記異方性導電膜の厚み方向における前記導電粒子の中心位置の平均値に90%以上存在する請求項7記載の個片フィルム。
【請求項9】
前記所定形状が、鈍角からなる多角形、角が丸い多角形、楕円、長円、及び円から選択される少なくとも1種である請求項7記載の個片フィルム。
【請求項10】
前記異方性導電膜中の前記導電粒子が面方向に整列されてなる請求項7記載の個片フィルム。
【請求項11】
前記異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、5000Pa・s以上500000Pa・s以下である請求項7記載の個片フィルム。
【請求項12】
基材上に設けられた異方性導電膜に対して前記基材側からレーザー光を照射し、該照射部分の異方性導電膜を除去し、前記基材上に異方性導電膜からなる所定形状の個片を形成する形成工程と、
前記所定形状の個片を配線基板の所定位置、又は発光素子の電極面に転写させる転写工程と、
前記転写された個片を介して、前記発光素子を前記配線基板に実装させる実装工程とを有し、
前記異方性導電膜の厚みが、前記異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の0.9倍以上8倍以下であり、
前記異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、2000Pa・s以上800000Pa・s以下である表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記異方性導電膜中の導電粒子が、前記異方性導電膜の厚み方向における前記導電粒子の中心位置の平均値に90%以上存在する請求項12記載の表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記形成工程では、前記所定形状の遮光部が形成されたマスクを介して前記レーザー光を照射する請求項12記載の表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記転写工程では、前記基材側からレーザー光を照射して前記所定形状の個片を配線基板の所定位置、又は発光素子の電極面に転写させる請求項12記載の表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記所定形状が、鈍角からなる多角形、角が丸い多角形、楕円、長円、及び円から選択される少なくとも1種である請求項12記載の表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記異方性導電膜中の前記導電粒子が面方向に整列されてなる請求項12記載の表示装置の製造方法。
【請求項18】
前記異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、5000Pa・s以上500000Pa・s以下である請求項12記載の表示装置の製造方法。
【請求項19】
基材上に設けられた異方性導電膜に対して前記基材側からレーザー光を照射し、該照射部分の異方性導電膜を除去し、前記基材上に異方性導電膜からなる所定形状の個片を形成する形成工程と、
前記所定形状の個片を第1の電子部品の所定位置に転写させる転写工程と、
前記転写された個片を介して、第2の電子部品を前記配線基板に実装させる実装工程とを有し、
前記異方性導電膜の厚みが、前記異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の0.9倍以上8倍以下であり、
前記異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、2000Pa・s以上800000Pa・s以下である接続構造体の製造方法。
【請求項20】
複数の発光素子と、
発光素子を配列する配線基板と、
前記複数の発光素子と前記配線基板とを接続させた硬化膜とを備え、
前記硬化膜が、異方性導電膜からなる所定形状の個片が硬化してなり、
前記異方性導電膜の厚みが、前記異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の0.9倍以上8倍以下であり、
前記異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、2000Pa・s以上800000Pa・s以下である表示装置。
【請求項21】
前記異方性導電膜中の導電粒子が、前記異方性導電膜の厚み方向における前記導電粒子の中心位置の平均値に90%以上存在する請求項20記載の表示装置。
【請求項22】
前記所定形状が、鈍角からなる多角形、角が丸い多角形、楕円、長円、及び円から選択される少なくとも1種である請求項20記載の表示装置。
【請求項23】
前記個片間の距離が、3μm以上である請求項20記載の表示装置。
【請求項24】
前記発光素子が、1画素を構成するサブピクセル単位で配列されてなる請求項20記載の表示装置。
【請求項25】
前記個片が、前記配線基板上にサブピクセル単位若しくはピクセル単位で配列されてなる請求項20記載の表示装置。
【請求項26】
第1の電子部品と、
第2の電子部品と、
前記第1の電子部品と前記第2の電子部品とを接続させた硬化膜とを備え、
前記硬化膜が、異方性導電膜からなる所定形状の個片が硬化してなり、
前記異方性導電膜の厚みが、前記異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の0.9倍以上8倍以下であり、
前記異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、2000Pa・s以上800000Pa・s以下である接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、接着剤フィルム(NCF:Non Conductive Film)等の接続フィルムを個片化する個片フィルムの製造方法、及び個片フィルムに関する。また、個片フィルムを介して発光素子を接続させ、配列させる表示装置の製造方法、及び表示装置に関する。特にミニLED(Light Emitting Diode)、マイクロLED等のLED素子を接続させ、配列させる表示装置の製造方法、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代ディスプレイとして、ミニLEDやマイクロLEDディスプレイの開発が注目を集めている。ミニLEDやマイクロLEDディスプレイは、微小な発光素子を基板上に配列して構成されているため、液晶ディスプレイに必要とされるバックライトを省略可能であり、ディスプレイの薄膜化を図ることができ、また、さらなる広色域化、高精細化、省電力化を図ることができる。
【0003】
特許文献1には、LEDをACFで接合する工法が開示されている。特許文献1に記載の工法では、ACFを基板の素子搭載面に一括で貼り付けるため、ACFの接着樹脂及び導電粒子が各LEDピッチ間に残存してしまう。このため、発光素子アレイに光透過性が求められる場合、光の透過を妨げてしまい、優れた光透過性を得ることができない。また、フィルムを基板全面に設けた場合、不良発生時のリペア工数が増加するといった生産性への悪影響が懸念される。
【0004】
一方、ACFをLEDの直下のみに貼り付ける場合、ACFの接着樹脂及び導電粒子が各LEDピッチ間に残存することがなく、光の透過を妨げることがないため、光透過性を得ることができる。
【0005】
しかしながら、ACF等の接続フィルムをLEDの直下にのみ貼り付けることは困難である。例えば、接続フィルムの個片を形成した後、個片を基板に貼り付ける場合において、個片の形状が悪い場合、基板又はLEDへの個片の転写性が悪化してしまい、ディスプレイ製造のタクトタイムが悪化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0255505号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本技術は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、個片の優れた加工性を得ることができる個片フィルムの製造方法及び個片フィルム、並びに表示装置の製造方法及び表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術に係る個片フィルムの製造方法は、基材上に設けられた異方性導電膜に対して前記基材側からレーザー光を照射し、該照射部分の異方性導電膜を除去し、前記基材上に異方性導電膜からなる所定形状の個片を形成し、前記異方性導電膜の厚みが、前記異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の0.9倍以上8倍以下であり、前記異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、2000Pa・s以上800000Pa・s以下である。
【0009】
本技術に係る個片フィルムは、異方性導電膜からなる所定形状の個片を有し、前記異方性導電膜の厚みが、前記異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の0.9倍以上8倍以下であり、前記異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、2000Pa・s以上800000Pa・s以下である。
【0010】
本技術に係る表示装置の製造方法は、基材上に設けられた異方性導電膜に対して前記基材側からレーザー光を照射し、該照射部分の異方性導電膜を除去し、前記基材上に異方性導電膜からなる所定形状の個片を形成する形成工程と、前記所定形状の個片を配線基板の所定位置、又は発光素子の電極面に転写させる転写工程と、前記転写された個片を介して、前記発光素子を前記配線基板に実装させる実装工程とを有し、前記異方性導電膜の厚みが、前記異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の0.9倍以上8倍以下であり、前記異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、2000Pa・s以上800000Pa・s以下である。
【0011】
本技術に係る接続構造体の製造方法は、基材上に設けられた異方性導電膜に対して前記基材側からレーザー光を照射し、該照射部分の異方性導電膜を除去し、前記基材上に異方性導電膜からなる所定形状の個片を形成する形成工程と、前記所定形状の個片を第1の電子部品の所定位置に転写させる転写工程と、前記転写された個片を介して、第2の電子部品を前記配線基板に実装させる実装工程とを有し、前記異方性導電膜の厚みが、前記異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の0.9倍以上8倍以下であり、前記異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、2000Pa・s以上800000Pa・s以下である。
【0012】
本技術に係る表示装置は、複数の発光素子と、発光素子を配列する配線基板と、前記複数の発光素子と前記配線基板とを接続させた硬化膜とを備え、前記硬化膜が、異方性導電膜からなる所定形状の個片が硬化してなり、前記異方性導電膜の厚みが、前記異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の0.9倍以上8倍以下であり、前記異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、2000Pa・s以上800000Pa・s以下である。
【0013】
本技術に係る接続構造体は、第1の電子部品と、第2の電子部品と、前記第1の電子部品と前記第2の電子部品とを接続させた硬化膜とを備え、前記硬化膜が、異方性導電膜からなる所定形状の個片が硬化してなり、前記異方性導電膜の厚みが、前記異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の0.9倍以上8倍以下であり、前記異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、2000Pa・s以上800000Pa・s以下である。
【発明の効果】
【0014】
本技術によれば、個片の優れた加工性を得ることができ、タクトタイムを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、異方性導電膜を模式的に示す断面図であり、
図1(A)は、導電粒子が基準値に90%以上存在し、基準値が基材側に近い状態を示し、
図1(B)は、導電粒子が基準値に90%以上存在し、基準値が基材の反対側に近い状態を示し、
図1(C)は、導電粒子が厚み方向に分散した状態を示す。
【
図2】
図2は、本実施の形態に係るレーザーリフトオフ装置の一例を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、具体例1として示す個片フィルムの製造方法の一例を説明するための図であり、
図3(A)は、基材上に異方性導電膜が形成された異方性導電膜基板を示し、
図3(B)は、第1方向に除去部を剥離させる様子を示し、
図3(C)は、第2方向に除去部を剥離させる様子を示し、
図3(D)は、基材上に異方性導電膜の個片が形成された個片フィルムを示す。
【
図4】
図4(B)は、マスクの開口を通過したレーザー光の照射の一例を模式的に示す図である。
【
図5】
図5(A)は、個片加工時におけるバリが発生した個片の一例を示す顕微鏡写真であり、
図5(B)は、個片転写時における捲れや欠けが発生した個片の一例を示す顕微鏡写真である。
【
図6】
図6(A)は、開口の窓部内に遮光部を有するマスクの一例を模式的に示す図であり、
図6(B)は、マスクの開口を通過したレーザー光の照射の一例を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、開口の窓部内に複数の遮光部を有するマスクの一例を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、マスクの開口の形状例を模式的に示す図であり、
図8(A)は、開口の窓部内に矩形状の遮光部を有するマスクを示し、
図8(B)は、開口の窓部内に正方形状の遮光部を有するマスクを示し、
図8(C)は、開口の窓部内に角が丸い矩形状の遮光部を有するマスクを示し、
図8(D)は、開口の窓部内に円形状の遮光部を有するマスクを示す。
【
図9】
図9は、基材に設けられた異方性導電膜を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、個片フィルムと、配線基板とを対向させた状態を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、基材側からレーザー光を照射し、異方性導電膜の個片を配線基板の所定位置に転写し、配列させた状態を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、配線基板の所定位置に配列した個片上に発光素子を実装させた状態を模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13は、基板側からレーザー光を照射し、異方性導電膜の個片を配線基板上に電極位置で転写し、配列させた状態を模式的に示す断面図である。
【
図14】
図14は、配線基板に電極単位で配列した個片上に発光素子を実装させた状態を模式的に示す断面図である。
【
図15】
図16は、基材に設けられた異方性導電膜の個片と、転写基板に配列された発光素子とを対向させた状態を模式的に示す断面図である。
【
図16】
図16は、基材側からレーザー光を照射し、異方性導電膜の個片を転写基板に配列された発光素子上に転写させた状態を模式的に示す断面図である。
【
図17】
図17は、個片が転写された発光素子を配線基板上に再転写させる状態を模式的に示す断面図である。
【
図18】
図18は、実装体の作製方法を模式的に示す図であり、
図18(A)は、個片を準備する工程を示し、
図18(B)は、基板に個片を転写する工程を示し、
図18(C)は、μLED素子を仮固定する工程を示し、
図18(D)は、μLED素子を圧着させる工程を示す。
【
図19】
図19は、点灯試験のための評価基板を模式的に示す平面図である。
【
図20】
図20(A)は、μLED素子の電極面を模式的に示す平面図であり、
図20(B)は、μLED素子を評価基板に実装した様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.個片フィルムの製造方法
2.個片フィルム
3.表示装置の製造方法
4.表示装置
5.実施例
【0017】
<1.個片フィルムの製造方法>
本実施の形態に係る個片フィルムの製造方法は、基材上に設けられた異方性導電膜に対して基材側からレーザー光を照射し、照射部分の異方性導電膜を除去し、基材上に異方性導電膜からなる所定形状の個片を形成する。ここで、異方性導電膜の厚み、及び異方性導電膜の30℃における溶融粘度を下記範囲とすることにより、個片の優れた加工性を得ることができる。
【0018】
異方性導電膜の厚みは、好ましくは異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の0.9倍以上8倍以下、好ましくは異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の1倍以上7倍以下、さらに好ましくは異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の1.5倍以上5倍以下である。また、異方性導電膜の厚みは、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上6μm以下、さらに好ましくは2μm以上4μm以下である。異方性導電膜の厚みを上記範囲とすることにより、レーザー光の照射により千切れ易くなり、マスクの形状通りの形状の個片を得ることができる。異方性導電膜の厚みは、公知のマイクロメータやデジタルシックネスゲージを用いて測定することができ、例えば10箇所以上を測定し、平均して算出することができる。
【0019】
異方性導電膜の30℃における溶融粘度は、好ましくは2000Pa・s以上800000Pa・s以下、より好ましくは5000Pa・s以上500000Pa・s以下、さらに好ましくは10000Pa・s以上300000Pa・s以下である。粘度が低すぎるとレーザー光照射後に個片が縮んでしまい、個片の膜の維持が困難となり、粘度が高すぎると異方性導電膜の膜性が強く、レーザー光照射による除去が困難となる。異方性導電膜の30℃における溶融粘度は、レオメーターを用いて、例えば測定周波数を10Hzとして測定することができる。
【0020】
また、異方性導電膜中の導電粒子は、異方性導電膜の厚み方向における導電粒子の中心位置の平均値に90%以上存在することが好ましく、92%以上存在することがより好ましく、95%以上存在することがさらに好ましい。これにより、アブレーションの程度にムラが生じるのを抑制し、マスクの形状通りの形状の個片を得ることができる。異方性導電膜の厚み方向における導電粒子の中心位置の平均値に対する導電粒子の存在割合は、異方性導電膜の断面を顕微鏡で観察し、導電粒子を測定して算出することができる。例えば異方性導電膜の断面に導電粒子が200個以上存在する所定範囲の断面を測定対象とし、測定対象の断面の導電粒子の中心位置を測定してその平均値を基準値(基準線)とし、所定範囲内において基準値に導電粒子の外径の一部がかかる(基準線と導電粒子の端部との最短距離が粒子径の0.5倍以下である)導電粒子の割合を求める。ここで、基準線は、フィルム断面におけるフィルム表面の線と略平行と考えてよい。換言すれば、厚み方向における導電粒子の中心位置は、所定範囲の基準線に対する導電粒子の存在割合である。
【0021】
図1は、異方性導電膜を模式的に示す断面図であり、
図1(A)は、導電粒子が基準値に90%以上存在し、基準値が基材側に近い状態を示し、
図1(B)は、導電粒子が基準値に90%以上存在し、基準値が基材の反対側に近い状態を示し、
図1(C)は、導電粒子が厚み方向に分散した状態を示す。
【0022】
図1(A)~
図1(C)に示すように、異方性導電膜2A~2Cは、基材1上に設けられる。基材1は、レーザー光に対して透過性を有するものであればよく、中でも全波長に亘って高い光透過率を有する石英ガラスであることが好ましい。
【0023】
図1(A)及び
図1(B)に示すように、異方性導電膜2A、2Bは、導電粒子3が基準値(基準線L1、L2)に90%以上存在することが好ましい。これにより、バリ・欠け・縮み・伸びなどの発生を抑制し、マスクの形状通りの形状の個片を得ることができる。一方、
図1(C)に示すように、導電粒子3が厚み方向に分散し、基準値(基準線L3)に存在する導電粒子3が90%未満である異方性導電膜2Cの場合、レーザー光の照射による剥離の際にアブレーションの程度にムラが生じてしまい、マスクの形状通りの形状の個片を得ることが困難となる場合がある。
【0024】
[異方性導電膜]
異方性導電膜のバインダーは、熱、光などのエネルギーにより硬化するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、熱硬化型バインダー、光硬化型バインダー、熱・光併用硬化型バインダーなどから適宜選択することができる。
【0025】
熱硬化型バインダーとしては、例えば、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合型樹脂組成物、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合型樹脂組成物、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合型樹脂組成物などが挙げられる。光硬化型バインダーとしては、例えば、エポキシ化合物と光カチオン重合開始剤とを含む光カチオン重合型樹脂組成物、(メタ)アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合型樹脂組成物などが挙げられる。熱・光併用硬化型バインダーとしては、熱硬化型バインダーと光硬化型バインダーとの混合物などが挙げられる。なお、(メタ)アクリレート化合物とは、アクリルモノマー(オリゴマー)、及びメタクリルモノマー(オリゴマー)のいずれも含む意味である。
【0026】
(熱カチオン重合型樹脂組成物)
以下では、熱硬化型バインダーの具体例として、膜形成樹脂と、エポキシ化合物と、熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合型樹脂組成物を例に挙げて説明する。
【0027】
膜形成樹脂としては、例えば平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000~80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の種々の樹脂が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からブチラール樹脂を用いることが好ましい。膜形成樹脂の含有量は、熱硬化型バインダー100質量部に対し、好ましくは20~70質量部、より好ましくは30~60質量部以下、さらに好ましくは45~55質量部である。
【0028】
エポキシ化合物は、分子内に1つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等であってもよく、ウレタン変性のエポキシ樹脂であっても構わない。これらの中でも、水素添加ビスフェノールAグリシジルエーテルを好ましく用いることができる。水素添加ビスフェノールAグリシジルエーテルの具体例としては、例えば三菱ケミカル社製の商品名「YX8000」を挙げることができる。エポキシ化合物の含有量は、熱硬化型バインダー100質量部に対し、好ましくは30~60質量部、より好ましくは35~55質量部以下、さらに好ましくは35~45質量部である。
【0029】
熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により、カチオン重合型化合物をカチオン重合させ得る酸を発生するものであり、公知のヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができる。これらの中でも、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。芳香族スルホニウム塩系の重合開始剤の具体例としては、例えば三新化学工業株式会社製の商品名「SI-60L」を挙げることができる。熱カチオン重合開始剤の含有量は、熱硬化型バインダー100質量部に対し、好ましくは1~20質量部、より好ましくは5~15質量部以下、さらに好ましくは8~12質量部である。
【0030】
なお、熱硬化型バインダーに配合する他の添加物として、必要に応じて、ゴム成分、無機フィラー、シランカップリング剤、希釈用モノマー、充填剤、軟化剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤などを配合してもよい。
【0031】
ゴム成分は、クッション性(衝撃吸収性)の高いエラストマーであれば特に限定されるものではなく、具体例として、例えば、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ポリウレタン樹脂(ポリウレタン系エラストマー)などを挙げることができる。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができる。無機フィラーは、単独でも2種類以上を併用してもよい。
【0032】
このような構成からなる熱硬化型バインダーにより、レーザー光により個片を形成する際の硬化反応を抑制することができ、熱圧着の際には熱により速硬化させることができる。
【0033】
(導電粒子)
導電粒子としては、公知の異方性導電フィルムにおいて使用されているものを適宜選択して使用することができる。例えば、ニッケル(融点 1455℃)、銅(融点 1085℃)、銀(融点 961.8℃)、金(融点 1064℃)、パラジウム(融点 1555℃)、錫(融点 231.9℃)、ホウ化ニッケル(融点 1230℃)、ルテニウム(融点 2334℃)、錫合金であるはんだ等の金属粒子が挙げられる。また、例えば、金属粒子の表面をニッケル、銅、銀、金、パラジウム、錫、ホウ化ニッケル、ルテニウムなどの金属で被覆された金属被覆金属粒子などが挙げられる。また、例えば、ポリアミド、ポリベンゾグアナミン、スチレン及びジビニルベンゼンから選ばれる少なくとも1種のモノマーをモノマー単位として含むポリマー等の樹脂粒子の表面をニッケル、銅、銀、金、パラジウム、錫、ホウ化ニッケル、ルテニウムなどの金属で被覆した金属被覆樹脂粒子が挙げられる。また、例えば、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム、ジルコニア、カーボンブラック、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、ソーダ石灰ガラス及びアルミナシリケートガラス等の無機粒子の表面をニッケル、銅、銀、金、パラジウム、錫、ホウ化ニッケル、ルテニウムなどの金属で被覆した金属被覆無機粒子などが挙げられる。また、金属被覆樹脂粒子及び金属被覆無機粒子の被覆金属層は、単層でもよいし異種金属の複層であってもよい。
【0034】
また、これらの導電粒子を、例えば、樹脂層や、樹脂粒子、無機粒子等の絶縁性粒子にて被覆することにより絶縁被覆処理を施してもよい。なお、導電粒子の粒子径は、絶縁被覆処理の部分を含まない。導電粒子の粒子径は、実装される光学素子、配線基板の電極、バンプの面積などにより適宜変更されるが、1~30μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましく、1~3μmであることが特に好ましい。例えば、マイクロLED素子の実装に使用される場合、電極やバンプの面積が小さいため、導電粒子の粒子径は、1~3μmであることが好ましく、1~2.5μmであることがより好ましく、1~2.2μmであることが特に好ましい。粒子径は、顕微鏡観察(光学顕微鏡、金属顕微鏡、電子顕微鏡など)で200個以上を計測し、その平均値とすることができる。
【0035】
また、導電粒子が前述した樹脂粒子又は無機粒子に金属を被覆した金属被覆樹脂粒子又は金属被覆無機粒子である場合、金属の被覆厚みは、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下である。この被覆厚みは、金属被覆が複層である場合、金属被覆全体の厚みである。金属の被覆厚みが、上記下限以上及び上記上限以下であると、十分な導電性が得られやすく、また導電粒子が硬くなりすぎずに、前述した樹脂粒子や無機粒子の特性を活かしやすい。
【0036】
金属の被覆厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電粒子の断面を観察することにより測定できる。上記被覆厚みについては、任意の被覆厚み5箇所の平均値を1個の導電粒子の被覆厚みとして算出することが好ましく、被覆部全体の厚みの平均値を1個の導電粒子の被覆厚みとして算出することがより好ましい。上記被覆厚みは、任意の導電粒子10個について、各導電粒子の被覆厚みの平均値を算出することにより求めることが好ましい。
【0037】
また、導電粒子の形状としては、球状、楕円体状、スパイク状、不定形状等の形状が挙げられる。これらの中でも、粒子径や粒度分布の制御が容易であることから球状の形状である導電粒子が好ましい。また、導電粒子は、接続性を向上させるために、表面に突起を有していてもよい。
【0038】
異方性導電膜は、導電粒子が面方向に整列されていることが好ましい。導電粒子が面方向に整列していることにより、粒子面密度が均一となり、導通性及び絶縁性を向上させることができる。導電粒子が面方向に整列されている状態とは、例えば、導電粒子が所定ピッチで所定方向に配置されている配列軸を1以上有する平面格子パターンが挙げられ、斜方格子、六方格子、正方格子、矩形格子、平行体格子などが挙げられる。導電粒子が面方向に整列されているとは、膜の平面視で導電粒子が配列していると言い変えてもよい。また、導電粒子の面方向の配列は、ランダムであってもよく、平面格子パターンが異なる複数の領域を有していてもよい。
【0039】
異方性導電膜の粒子面密度は、接続対象の電極サイズに応じて適宜設計でき、粒子面密度の下限は、500個/mm2以上、20000個/mm2以上、40000個/mm2以上、50000個/mm2以上とすることができ、粒子面密度の上限は、1500000個/mm2以下、1000000個/mm2以下、500000個/mm2以下、100000個/mm2以下とすることができる。これにより、接続対象の電極サイズが小さい場合でも、優れた導通性及び絶縁性を得ることができる。異方性導電膜の粒子面密度は、製造時にフィルム化した際の導電粒子の配列部分のものである。複数の個片から粒子個数密度を求める場合は、個片とスペースを含めた面積から個片間のスペースを除いた面積と粒子数とから粒子面密度を求めることができる。
【0040】
異方性導電膜は、フィルム状にすることで、基材に異方性導電膜を設けることが容易となる。取り扱い性の観点からは、異方性導電膜の片面又は両面にポリエチレンテレフタレートフィルム等の離型性フィルムを設けたものであってもよい。また、異方性導電膜は、導電粒子を含有していない接着剤層や粘着剤層を積層してもよく、その層数や積層面は、対象や目的に合わせて適宜選択することができる。
【0041】
異方性導電膜を製造する方法としては、例えば、基材上に異方性導電接着剤の溶液を塗布、乾燥する方法や、基材上に導電粒子を含まない接着層を形成し、得られた接着層に導電粒子を固定する方法などが挙げられる。
【0042】
[レーザーリフトオフ装置]
レーザー光の照射により所定形状の個片を形成する装置として、例えば、レーザーリフトオフ(LLO:Laser Lift Off)装置を用いることができる。レーザーリフトオフ装置は、基材上に形成された材料層に対してレーザー光を照射し、基材から材料層を剥離するものであり、レーザーリフトオフ装置として、例えば信越化学工業(株)製、商品名「Invisi LUM-XTR」などを挙げることができる。
【0043】
図2は、本実施の形態に係るレーザーリフトオフ装置の一例を模式的に示す図である。
図2に示すように、レーザーリフトオフ装置10は、レーザー光の光軸を走査するレーザースキャナ11と、所定のピッチにて所定の形状の開口が複数配列されたマスク12と、レーザー光をドナー基板に縮小投影する投影レンズ13と、ドナー基板を保持するドナーステージと、レセプター基板を保持するレセプターステージとを備える。個片フィルムの形成では、基材21上に異方性導電膜22が形成された異方性導電膜基板20をドナー基板としてドナーステージに保持し、レセプター基板で異方性導電膜基板20から分離された異方性導電膜の除去部23を受け止める。
【0044】
レーザー装置としては、例えば波長180nm~360nmのレーザー光を発振するエキシマレーザーを用いることができる。エキシマレーザーの発振波長は、例えば193、248、308、351nmであり、これらの発振波長の中から異方性導電膜22の材料の光吸収性に応じて好適に選択することができる。また、基材21と異方性導電膜22との間にリリース材を設けた場合、リリース材の材料の光吸収性に応じて好適に選択することができる。
【0045】
レーザースキャナ11は、例えば2軸のガルバノスキャナーで構成されたスキャニングミラーを有し、マスク12上の開口に向けて、レーザー光の光軸をX軸方向及びY軸方向に走査するとともに、レーザー光のパルス照射を制御する。
【0046】
マスク12は、基材21と異方性導電膜22との境界面におけるレーザー光の照射が所定の形状となるように、所定ピッチで所定サイズの窓の配列のパターンが形成されている。マスクには、例えばクロムメッキにてパターンが施され、クロムメッキが施されていない窓部分はレーザー光を透過し、クロムメッキが施されている部分はレーザー光を遮断する。
【0047】
投影レンズ13は、マスク12のパターンを通過したレーザー光をドナー基板に投影する。また、ドナーステージは、少なくともX軸及びY軸に移動させる移動機構を有し、ドナー基板のレーザー光の照射位置を移動させる。
【0048】
レーザーリフトオフ装置10は、レーザースキャナ11と、マスク12と、レーザースキャナ11とマスク12との間に配置されたフィールドレンズ、少なくとも像側がテレセントリックな縮小投影レンズ13を含む構成からなる走査型縮小投影光学系を構成する。
【0049】
レーザー装置からの出射光は、テレスコープ光学系に入射し、その先のレーザースキャナ11へと伝搬する。レーザースキャナ11に入射する直前におけるレーザー光は、ドナーステージのX軸及びY軸の移動範囲内のいずれの位置においても、概ね平行光となるようテレスコープ光学系により調整され、レーザースキャナ11に対し、概ね同一サイズ、同一角度(垂直)により入射する。
【0050】
レーザースキャナ11を通過したレーザー光は、フィールドレンズを経てマスク12に入射し、マスク12のパターンを通過したレーザー光は、投影レンズ13に入射する。投影レンズ13から出射されたレーザー光は、基材21側から入射し、基材21と異方性導電膜22との境界面の所定の位置に対し、マスク12の開口の形状で正確に投影される。
【0051】
基材21と異方性導電膜22との境界面で結像されるレーザー光のパルスエネルギーは、好ましくは0.001~2J、より好ましくは0.01~1.5Jであり、さらに好ましくは0.1~1Jである。フルーエンス(fluence)は、好ましくは0.001~2J/cm2であり、より好ましくは0.01~1J/cm2であり、さらに好ましくは0.05~0.5J/cm2である。パルス幅(照射時間)は、好ましくは0.01~1×109ピコ秒であり、より好ましくは0.1~1×107ピコ秒であり、さらに好ましくは1~1×105ピコ秒である。パルス周波数は、好ましくは0.1~10000Hz、より好ましくは1~1000Hz、さらに好ましくは1~100Hzである。照射パルス数は、好ましくは1~30,000,000である。
【0052】
このようなレーザーリフトオフ装置を用いることにより、基材21と異方性導電膜22との境界面に衝撃波を発生させ、基材21から異方性導電膜22の除去部23を剥離させ、基材21上の残存部により所定形状の個片を高精度及び高効率に形成することができ、優れた加工性を得ることができる。また、所定形状の個片は、レーザー光の照射による影響が小さいため、個片の反応率を25%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下とすることができ、優れた転写性を得ることができる。
【0053】
なお、レーザー照射前の硬化性樹脂膜やレーザー照射後に得られた個片の反応率の測定は、例えばFT-IRを用いて反応基の減少率により求めることができる。個片が小さい場合は、個片を打ちぬいた膜の端部から反応率を測定してもよい。また、レーザー照射前の個片の反応率の測定は、例えば冷蔵庫から取り出して室温で8時間以内にすることが好ましく、レーザー照射後の個片の反応率の測定は、レーザー照射後室温で8時間以内にすることが好ましい。
【0054】
エポキシ化合物の反応を利用した硬化性樹脂膜の場合は、例えば次のように試料を作製し、FT-IRを用いて反応率を測定することができる。先ず、硬化した個片を先端が鋭利なペン型カッターを用いてサンプリングする。次に、サンプリングした個片試料をダイヤモンド・セル上に乗せ、ダイヤモンド・セル上で薄く平らにし、サンプルホルダーに取り付け装置本体にセットする。
【0055】
なお、本測定に使用したダイヤモンド・セルは2枚1組になっており、試料を2枚のセル板に挟んで締め付け押し潰す。その後、試料が付いているセル板1枚を用いて測定する。測定する際に必要となる試料量は極微量である。試料量が多すぎると、試料を薄く押しつぶすことができないため、試料膜厚の厚い状態での測定になる。その結果、ベースラインが下がったり、傾いたり、またピークが飽和してしまい、スペクトルの解析を困難にする。したがって、試料量については,ダイヤモンド・セル上で薄く調整できる程度(例えば、10μm以下の膜厚に押しつぶすことができる程度)の量をサンプリングすることが好ましい。
【0056】
検出器は、冷却させておくことで感度が大きく向上するため、予め測定前に液体窒素を用いて検出器を30min程度冷却させる。また、FT-IRの測定条件は、例えば、下記のように設定する。
測定方式:透過式
測定温度:25℃
測定湿度:60%以下
測定時間:12sec
検出器のスペクトル領域範囲:4000~700cm-1
【0057】
そして、ダイヤモンド・セルを赤外顕微鏡にセッティングし、バックグラウンド測定を実施する。バックグラウンド測定位置は、試料測定位置のなるべく近くにすることで良好なベースラインを得やすくなる。次いで、試料に赤外線を照射させてIRスペクトルを得る。IRスペクトルのメチル基(2930cm-1付近)及びエポキシ基(914cm-1付近)のピーク高さを測定し、下記式のように、メチル基のピーク高さに対するエポキシ基のピーク高さの反応前後(例えばレーザー照射前後)の比率で算出することができる。
反応率(%)={1-(a/b)/(A/B)}×100
上記式において、Aは反応前のエポキシ基のピーク高さ、Bは反応前のメチル基のピーク高さ、aは反応後のエポキシ基のピーク高さ、bは反応後のメチル基のピーク高さである。なお、エポキシ基のピークに他のピークが重なる場合は、完全硬化(反応率100%)させたサンプルのピーク高さを0%とすればよい。
【0058】
また、(メタ)アクリレート化合物の反応を利用した硬化性樹脂膜の場合は、エポキシ化合物と同様に、例えば赤外吸収スペクトルのメチル基(2930cm-1付近)及び(メタ)アクリロイル基(1635cm-1付近)のピーク高さを測定し、メチル基のピーク高さに対する(メタ)アクリロイル基のピーク高さの反応前後の比率で算出することができる。
【0059】
また、(メタ)アクリロイル基のピーク高さが小さい、または脂環式エポキシ基やオキセタニル基を有する場合は、例えば次のように試料を作製し、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)により反応率を求めてもよい。先ず、硬化した個片を先端が鋭利なペン型カッターを用いてサンプリングする。次に、サンプル重量を0.015mg以上採取した後、バイアル瓶に入れて抽出溶媒のアセトニトリルを加える。抽出溶媒量は0.025-0.25%の範囲で任意の濃度を決め計算する。そして、バイアル瓶を測定装置本体にセットし例えば下記測定条件でHPLCの測定を行う。
抽出:ACN 0.025-0.25%
機器:UPLC(Waters社製)
グラジェント条件:A60B40(1分保持)→5分後にA1B99(6分保持)
※Aは水/アセニト=9:1、Bはアセトニトリル
流量:0.4mL/min
カラム:10cm
測定温度:40℃
注入量:5μL
【0060】
HPLCで得られたクロマトグラムから反応前後(レーザー照射前後)の反応性成分の減衰率より下記式のように個片の反応率を算出することができる。
反応率(%)={1-c/C}×100
上記式において、Cは反応前の反応性成分のピーク高さ又は面積、cは反応後の反応性成分のピーク高さ又は面積である。
【0061】
[具体例1]
具体例1として示す個片フィルムの製造方法は、開口の窓部が四角形状であるマスクを用い、基材から異方性導電膜の不要部分を剥離し、異方性導電膜の残存部分で四角形状の個片を構成する。
【0062】
図3は、具体例1として示す個片フィルムの製造方法の一例を説明するための図であり、
図3(A)は、基材上に異方性導電膜が形成された異方性導電膜基板を示し、
図3(B)は、第1方向に除去部を剥離させる様子を示し、
図3(C)は、第2方向に除去部を剥離させる様子を示し、
図3(D)は、基材上に異方性導電膜の個片が形成された個片フィルムを示す。また、
図4(A)は、開口の窓部が四角形状であるマスクの一例を模式的に示す図であり、
図4(B)は、マスクの開口を通過したレーザー光の照射の一例を模式的に示す図である。なお、
図3及び
図4では、マスクの開口を1つとしているが、所定のピッチにて開口が複数配列されていることが望ましい。
【0063】
先ず、
図3(A)に示すように、基材31上に異方性導電膜32が形成された異方性導電膜基板30を準備する。次に、
図3(B)及び
図4(B)に示すように、異方性導電膜基板30を反転させ、基材31側からレーザー光を照射し、マスクの開口の四角形状の窓部を通過したレーザー光により、異方性導電膜32の四角形状の除去部33を剥離させる。そして、
図4(B)に示すように、四角形状の除去部33の範囲を第1の方向D1に移動させ、マスクの第1の方向D1を長手方向とし、第1の方向D1に直交する第2の方向D2を短手方向とする異方性導電膜を形成する。
【0064】
続いて、
図3(C)及び
図4(B)に示すように、第1の方向D1を長手方向とし、第1の方向D1に直交する第2の方向D2を短手方向とする異方性導電膜に対して、四角形状の除去部33の範囲を第2の方向D2に移動させる。これにより、
図3(D)に示すように、第1の方向D1に所定幅、及び第2の方向D2に所定幅を有する四角形状の個片34を形成することができる。
【0065】
四角形状の除去部33の範囲を第1の方向又は第2の方向に移動させる際、四角形状の除去部33の範囲をオーバーラップさせることが好ましい。これにより、個片加工時におけるバリの発生を抑制し、個片転写時における捲れや欠けを抑制することができる。
【0066】
図5(A)は、個片加工時におけるバリが発生した個片の一例を示す顕微鏡写真であり、
図5(B)は、個片転写時における捲れや欠けが発生した個片の一例を示す顕微鏡写真である。除去部の範囲を移動させる場合において、除去部の範囲の重複が不十分である場合、
図5(A)に示すように、隣接する除去部の範囲の境界においてバリが発生した個片41が形成されることがある。バリが発生した個片41は、正確な位置に転写することが困難となり、
図5(B)に示すように捲れが発生した個片42や欠けが発生した個片43となり、転写成功率が低下してしまう。
【0067】
[具体例2]
具体例2として示す個片フィルムの製造方法は、開口の窓部内に所定形状の遮光部が形成されたマスクを用い、基材から個片周囲の異方性導電膜の不要部分を剥離し、異方性導電膜の残存部分で所定形状の個片を構成する。
【0068】
図6(A)は、開口の窓部内に遮光部を有するマスクの一例を模式的に示す図であり、
図6(B)は、マスクの開口を通過したレーザー光の照射の一例を模式的に示す図である。なお、
図6(A)及び
図6(B)では、マスクの開口を1つとしているが、所定のピッチにて開口が複数配列されていることが望ましい。
【0069】
先ず、具体例1と同様、基材上に異方性導電膜が形成された異方性導電膜基板を準備し、異方性導電膜基板を反転させ、基材側からレーザー光を照射し、マスクの開口を通過したレーザー光により、異方性導電膜の除去部を剥離させる。
図6(A)に示すように、マスクの開口は、四角形状の窓部内の中心に四角形状の遮光部51を有するため、除去部は、四角形状の中心に四角形状の穴を有するドーナツ状となる。そして、
図6(B)に示すように、四角形状の除去部の範囲を第1の方向及び第1の方向に直交する第2の方向に移動させ、第1の方向に所定幅、及び第2の方向に所定幅を有する四角形状の個片52を形成する。
【0070】
具体例2として示す個片フィルムの製造方法によれば、マスクの開口の窓部内に個片52を形成するための遮光部51を有するため、個片52の周囲の異方性導電膜を確実に除去することができる。このため、個片加工時におけるバリの発生を防止することができ、個片転写時における捲れや欠けを抑制することができる。
【0071】
図7は、開口の窓部内に複数の遮光部を有するマスクの一例を模式的に示す図である。前述した
図6(A)及び
図6(B)では、マスクの開口の窓内に遮光部を1つとしているが、例えば、
図7に示すように、遮光部53が開口の窓部内にX軸方向に所定のピッチ及びY軸の方向に所定のピッチで複数形成されていてもよい。窓部の大きさ(W1×W2)は、マスクの大きさやレーザー光照射の有効範囲の最大値に基づいて決めることができる。このようなマスクを用いることにより、レーザー光の1度の照射で複数の個片を形成することができる。
【0072】
[開口の形状例]
図8は、マスクの開口の形状例を模式的に示す図であり、
図8(A)は、開口の窓部内に矩形状の遮光部を有するマスクを示し、
図8(B)は、開口の窓部内に正方形状の遮光部を有するマスクを示し、
図8(C)は、開口の窓部内に角が丸い矩形状の遮光部を有するマスクを示し、
図8(D)は、開口の窓部内に円形状の遮光部を有するマスクを示す。
【0073】
マスクの開口は、
図8(A)に示すように開口の窓部内に矩形状の遮光部54Aを有してもよく、
図8(B)に示すように正方形状の遮光部54Bを有してもよく、
図8(C)に示すように角が丸い矩形状の遮光部54Cを有してもよく、
図8(D)に示すように円形状の遮光部54Dを有してもよい。これにより、遮光部の形状を投影した、矩形、正方形、角が丸い矩形、円形の個片を得ることができる。また、個片の加工性、及びLLOによる転写の観点からは、遮光部の形状は、例えば、鈍角(90°より大きく180°よりも小さい角)からなる多角形、角が丸い多角形、楕円、長円、円などであることが好ましい。遮光部の形状に鋭角の角がある場合、個片の加工性が悪化し、また、個片のLLOによる転写時に個片の捲れや欠けが発生する頻度が高くなる。
【0074】
<2.個片フィルム>
本実施の形態に係る個片フィルムは、前述した個片フィルムの製造方法により得ることができる。すなわち、個片フィルムは、基材と、異方性導電膜からなる所定形状の個片とを備える。ここで、異方性導電膜の厚み、異方性導電膜の30℃における溶融粘度、及び基準値に対する導電粒子の存在割合は、前述した範囲である。
【0075】
個片の形状は、前述したように、LLOによる個片転写時における捲れや欠けの発生を抑制するため、鈍角からなる多角形、角が丸い多角形、楕円、長円、及び円から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、基材は、前述したように、レーザー光に対して透過性を有するものであればよく、中でも全波長に亘って高い光透過率を有する石英ガラスであることが好ましい。
【0076】
個片の寸法(縦×横)は、接続対象である電子部品の寸法に応じて適宜設定され、電子部品の面積に対する個片の面積の比は、特に制限はない。大きすぎると接続に関与しないフィルムが相対的に広くなり、構造体の光学特性に影響する懸念があるため、電子部品の面積に対する個片の面積の比の上限は、5.0以下、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.2以下、更により好ましくは2.4以下である。また、小さくなりすぎると、マイクロLEDの着弾精度の許容範囲が狭くなり生産性の悪化が懸念されるため、電子部品の面積に対する個片の面積の比の下限は、0.5以上、好ましくは0.8以上、更に好ましくは1.2以上である。これらの比は、構造体の目的に合わせて適宜設計できる。また、個片の厚みは、異方性導電膜の厚みと同様、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上6μm以下、さらに好ましくは2μm以上4μm以下である。個片の厚みは、公知のマイクロメータやデジタルシックネスゲージ、レーザー変位計を用いて測定することができ、例えば10箇所以上を測定し、平均して算出することができる。個片の寸法は、全て同じあることが好ましいが、接続構造体の設計自由度を高めるため、複数種類存在してもよい。
【0077】
また、基材上の個片間の距離は、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。また、個片間の距離の上限は、好ましくは3000μm以下、より好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは500μm以下である。個片間の距離が小さ過ぎる場合、個片の転写が困難となり、個片間の距離が大き過ぎる場合、個片を貼り付ける方法が好ましくなる。個片間の距離は、顕微鏡観察(光学顕微鏡、金属顕微鏡、電子顕微鏡など)を用いて計測することができる。
【0078】
<3.表示装置の製造方法>
本実施の形態に係る表示装置の製造方法は、基材上に設けられた異方性導電膜に対して基材側からレーザー光を照射し、該照射部分の異方性導電膜を除去し、基材上に異方性導電膜からなる所定形状の個片を形成する形成工程と、所定形状の個片を配線基板の所定位置、又は発光素子の電極面に転写させる転写工程と、転写された個片を介して、発光素子を配線基板に実装させる実装工程とを有する。これにより、個片の優れた加工性を得ることができ、タクトタイムの短縮化を図ることができる。
【0079】
個片の形状は、配線基板及び発光素子の電極の形状に対応して形成されており、前述したように、個片の加工性、及びLLOによる個片転写時における捲れや欠けの発生を抑制するため、鈍角からなる多角形、角が丸い多角形、楕円、長円、円から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0080】
個片は、1画素単位(例えばRGB1組の1ピクセル単位)、すなわち複数発光素子単位で配列させてもよく、1画素を構成するサブピクセル単位(例えば任意のRGB単位)、すなわち発光素子単位で配列させてもよい。これにより、高いPPI(Pixels Per Inch)の発光素子アレイから低いPPIの発光素子アレイまで対応することができる。また、例えばRGBを1ピクセルとする場合、3サブピクセルを1組、もしくはRGBの冗長回路3サブピクセルを含む計6サブピクセルを1組として配列されるため、個片は、1組6サブピクセル単位で配列させてもよい。
【0081】
また、個片は、例えば発光素子のp側の第1導電型電極又はn側の第2導電型電極に対応する電極単位で配列させてもよい。また、個片は、生産性を上げるため、透明性を損なわない範囲、例えば1mm×1mmを単位で配列させてもよい。
【0082】
また、形成工程において、異方性導電膜の不要部を効率よく除去するために、異方性導電膜に前処理を行ってもよい。前処理としては、例えば、発光素子単位や電極単位の個片形状の切り込み、複数の縦方向の切り込み及び複数の横方向の切り込みが交差した格子状の切り込みなどが挙げられる。切り込みは、機械的方法、化学的方法、レーザーなどを用いて設けることができる。なお、切り込みは、基材に達するまで深くなくてもよく、ハーフカットでもよい。これにより、個片のめくれの発生を抑制することができる。
【0083】
また、転写工程における個片の転写方法は、特に限定されるものではないが、例えば前述したレーザーリフトオフ法(LLO法)により個片を基材から配線基板又は発光素子に直接転写、配置する方法や、個片を予め密着させた転写材(スタンプ材)を用いて転写材から配線基板又は発光素子に転写、配置する方法が挙げられる。
【0084】
また、実装工程における発光素子の配置方法は、特に限定されるものではないが、例えば前述したレーザーリフトオフ法(LLO法)により発光素子を配線基板に配置する方法や、発光素子を予め密着させた転写材(スタンプ材)を用いて転写材から配線基板に配置する方法が挙げられる。
【0085】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態に係る表示装置の製造方法は、レーザーリフトオフ装置を用いて、レーザー光の照射部分の異方性導電膜を除去し、基材上に異方性導電膜からなる所定形状の個片を形成する形成工程(A1)と、レーザーリフトオフ装置を用いて、所定形状の個片を配線基板の所定位置に転写させる転写工程(B1)と、レーザーリフトオフ装置を用いて、発光素子を配線基板の所定位置に配列し、発光素子を配線基板に実装させる実装工程(C1)とを有する。
【0086】
以下、
図9~
図12を参照して、所定形状の個片を形成する形成工程(A1)、所定形状の個片を転写させる転写工程(B1)、及び、発光素子を配線基板に実装する実装工程(C1)について説明する。
【0087】
[形成工程(A1)]
形成工程(A1)では、基材上に設けられた異方性導電膜を準備し、前述したレーザーリフトオフ装置を用いて、基材側からレーザー光を照射し、前述したマスクの開口を通過したレーザー光により、異方性導電膜の除去部を剥離させ、個片を形成する。個片の形成方法は、前述した個片フィルムの製造方法と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0088】
図9は、基材に設けられた異方性導電膜を模式的に示す断面図である。
図9に示すように、異方性導電膜基板は、基材61と、導電粒子63を含有する異方性導電膜とを備え、基材61に異方性導電膜62が設けられる。基材61及び異方性導電膜62は、前述した基材31及び異方性導電膜32と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0089】
また、アブレーション耐性を高める観点から、導電粒子63は、融点が1400℃以上である金属を含むことが好ましい。入手容易性の観点から、金属の融点の上限は、3500℃程度であることが好ましい。また、入手容易性の観点から、導電粒子63を構成する金属は、ニッケル、パラジウム又はルテニウムを含むことが好ましい。
【0090】
また、導電粒子63として、前述した樹脂粒子の表面を金属で被覆した金属被覆樹脂粒子、又は、無機粒子の表面を金属で被覆した金属被覆無機粒子を使用する場合、樹脂粒子や無機粒子へのアブレーションの影響を最小限にするために、金属の被覆厚みを0.08μm以上とすることが好ましく、0.1μm以上とすることがより好ましく、0.15μm以上とすることが特に好ましく、0.2μm以上とすることが最も好ましい。この金属の被覆厚みの上限は、導電粒子63の直径によるが、導電粒子63の直径の20%又は0.5μm程度であることが好ましい。
【0091】
[転写工程(B)]
図10は、個片フィルムと、配線基板とを対向させた状態を模式的に示す断面図である。
図10に示すように、先ず、転写工程(A)では、個片フィルム60と配線基板70とを対向させる。
【0092】
個片フィルム60は、基材61と導電粒子63を含有する異方性導電膜からなる個片64とを備え、基材61表面に個片64が発光素子単位で配列されている。基板61は、レーザー光に対して透過性を有するものであればよく、中でも全波長に亘って高い光透過率を有する石英ガラスであることが好ましい。
【0093】
個片64の寸法(縦×横)は、チップ部品である発光素子の寸法に応じて適宜設定され、発光素子の面積に対する個片64の面積の比は、好ましくは0.5~5.0、より好ましくは0.5~4.0、さらに好ましくは0.5~2.0である。また、個片64の厚みは、好ましくは2~10μm、より好ましくは3~8μm以、さらに好ましくは4~6μm以下である。個片の寸法は、全て同じあることが好ましいが、接続構造体の設計自由度を高めるため、複数種類存在してもよい。個片64は電極のみに設ける場合があり、この場合には導電フィルムと解釈してもよい。これにより、従来のACP(Anisotropic Conductive Paste)、ACF(Anisotropic Conductive Film)、NCF(Non Conductive Film)、接着剤などの接続では達成できなかった優れた光透過性、導通性、及び絶縁性を有する接続構造体を得ることができる。
【0094】
また、基材61上に配列した個片間の距離は、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。また、個片間の距離の上限は、好ましくは3000μm以下、より好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは500μm以下である。個片間の距離が小さ過ぎる場合、優れた光透過性や美観を得るのが困難となり、個片間の距離が大き過ぎる場合、高PPIの表示装置を得るのが困難となる。個片間の距離は、顕微鏡観察(光学顕微鏡、金属顕微鏡、電子顕微鏡など)を用いて計測することができる。
【0095】
配線基板70は、基材71上に第1導電型用回路パターンと、第2導電型用回路パターンとを備え、発光素子が1画素を構成するサブピクセル(副画素)単位で配置されるように、例えばp側の第1導電型電極及びn側の第2導電型電極に対応する位置にそれぞれ第1電極72及び第2電極73を有する。また、配線基板70は、例えばマトリクス配線のデータ線、アドレス線などの回路パターンを形成し、1画素を構成する各サブピクセルに対応する発光素子をオンオフ可能とする。1画素は、例えば、R(赤)G(緑)B(青)の3個のサブピクセルで構成しても、RGBW(白)、RGBY(黄)の4個のサブピクセルで構成しても、RG、GBの2個のサブピクセルで構成してもよい。
【0096】
また、配線基板70は、透明Display用途で用いる場合は透光基板であることが好ましく、基材71は、ガラス、PET(Polyethylene Terephthalate)などであることが好ましい。第1電極72及び第2電極73は、ITO(Indium-Tin-Oxide)、IZO(Indium-Zinc-Oxide)、ZnO(Zinc-Oxide)、IGZO(Indium-Gallium-Zinc-Oxide)などの透明導電膜であることが好ましい。
【0097】
図11は、基材側からレーザー光を照射し、異方性導電膜の個片を配線基板の所定位置に転写し、配列させた状態を模式的に示す断面図である。
図11に示すように、転写工程(B)では、前述したレーザーリフトオフ装置を用いて、基材61側からレーザー光を照射し、異方性導電膜の個片64を配線基板70の所定位置に転写し、配列させる。基材61と基板70とを位置合わせして転写することにより、基板70上にサブピクセル単位で個片64を配列させることができる。
【0098】
また、基材61のサイズに対して基板70のサイズが大きい場合、基材61を複数回位置合わせして個片64を転写することにより、基板70の画面領域にサブピクセル単位で個片64を配列させることができる。
【0099】
異方性導電膜の個片64の転写には、前述したレーザーリフトオフ装置を用いることができる。このような転写方式は、レーザーリフトオフと呼ばれ、例えば、レーザーによるアブレーションを利用した方式である。前述したレーザーリフトオフ装置において、ドナー基板である個片フィルム60をドナーステージに保持し、レセプター基板である配線基板70をレセプターステージに保持する。個片フィルムと配線基板との間の距離は、好ましくは10~20000μm、より好ましくは50~1500μm、さらに好ましくは80~1000μmである。
【0100】
レーザー装置としては、例えば波長180nm~360nmのレーザー光を発振するエキシマレーザーを用いることができる。エキシマレーザーの発振波長は、例えば193、248、308、351nmであり、これらの発振波長の中から異方性導電膜の材料の光吸収性に応じて好適に選択することができる。
【0101】
マスクは、基材61と異方性導電膜の個片64との境界面における投影が、所望のレーザー光の配列となるように、所定ピッチで所定サイズの窓の配列が形成されたパターンを用いる。マスクには、基材61に例えばクロムメッキにてパターンが施され、クロムメッキが施されていない窓部分はレーザー光を透過し、クロムメッキが施されている部分はレーザー光を遮断する。
【0102】
レーザー装置からの出射光は、テレスコープ光学系に入射し、その先のレーザースキャナ11へと伝搬する。レーザースキャナ11に入射する直前におけるレーザー光は、ドナーステージのX軸及びY軸の移動範囲内のいずれの位置においても、概ね平行光となるようテレスコープ光学系により調整され、レーザースキャナ11に対し、概ね同一サイズ、同一角度(垂直)により入射する。
【0103】
レーザースキャナ11を通過したレーザー光は、フィールドレンズを経てマスク12に入射し、マスク12のパターンを通過したレーザー光は、投影レンズ13に入射する。投影レンズ13から出射されたレーザー光は、基材61側から入射し、その表面(下面)に形成されている異方性導電膜の個片64の位置に対し、マスクパターンの縮小サイズにて正確に投影される。
【0104】
異方性導電膜の個片と基材との界面に照射される結像されるレーザー光のパルスエネルギーは、好ましくは0.001~2J、より好ましくは0.01~1.5Jであり、さらに好ましくは0.1~1Jである。フルーエンス(fluence)は、好ましくは0.001~2J/cm2であり、より好ましくは0.01~1J/cm2であり、さらに好ましくは0.05~0.5J/cm2である。パルス幅(照射時間)は、好ましくは0.01~1×109ピコ秒であり、より好ましくは0.1~1×107ピコ秒であり、さらに好ましくは1~1×105ピコ秒である。パルス周波数は、好ましくは0.1~10000Hz、より好ましくは1~1000Hz、さらに好ましくは1~100Hzである。照射パルス数は、好ましくは1~30,000,000である。
【0105】
このようなレーザーリフトオフ装置を用いることにより、基材61と異方性導電膜の個片64との境界面において、レーザー光を照射された個片64に衝撃波を発生させ、個片64を基材61から剥離して配線基板70に向けてリフトし、複数の個片64を配線基板70の所定位置に着弾させることができる。これにより、異方性導電膜の個片64を高精度及び高効率に配線基板70に転写、配列させることができ、タクトタイムの短縮化を図ることができる。
【0106】
転写工程(B1)後の異方性導電膜の個片64の反応率は、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。転写工程(B1)後の個片64の反応率が25%以下であることにより、実装工程(C1)において、発光素子を熱圧着させることが可能となる。反応率の測定は、前述したように、例えばFT-IRを用いて求めることができる。
【0107】
また、配線基板70の所定位置に配列した個片間の距離は、個片フィルム60の基材61上に配列した個片間の距離と同様、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。また、個片間の距離の上限は、好ましくは3000μm以下、より好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは500μm以下である。個片間の距離が小さ過ぎる場合、異方性導電フィルムを配線基板70全面に貼り付ける方法が好ましくなり、個片間の距離が大き過ぎる場合、異方性導電フィルムを配線基板70の所定位置に貼り付ける方法が好ましくなる。個片間の距離は、顕微鏡観察(光学顕微鏡、金属顕微鏡、電子顕微鏡など)を用いて計測することができる。
【0108】
[実装工程(C1)]
図12は、配線基板の所定位置に配列した個片上に発光素子を実装させた状態を模式的に示す断面図である。
図12に示すように、実装工程(C1)では、配線基板70の所定位置に配列した個片64上に発光素子80を実装させる。
【0109】
発光素子80は、本体81と、第1導電型電極82と、第2導電型電極83とを備え、第1導電型電極82と第2導電型電極83とが、同一面側に配置された水平構造を有する。本体81は、例えばn-GaNからなる第1導電型クラッド層と、例えばInxAlyGa1-x-yN層からなる活性層と、例えばp-GaNからなる第2導電型クラッド層とを備え、いわゆるダブルヘテロ構造を有する。第1導電型電極82は、パッシベーション層により第1導電型クラッド層の一部に形成され、第2導電型電極83は、第2導電型クラッド層の一部に形成される。第1導電型電極82と第2導電型電極83との間に電圧が印加されると、活性層にキャリアが集中し、再結合することにより発光が生じる。
【0110】
発光素子80は、1画素を構成する各サブピクセルに対応して基板70上に配列され、発光素子アレイを構成する。1画素は、例えば、R(赤)G(緑)B(青)の3個のサブピクセルで構成しても、RGBW(白)、RGBY(黄)の4個のサブピクセルで構成しても、RG、GBの2個のサブピクセルで構成してもよい。
【0111】
サブピクセルの配列方法としては、例えば、RGBの場合、ストライプ配列、モザイク配列、デルタ配列などが挙げられる。ストライプ配列は、RGBを縦ストライプ状に配列したものであり、高精細化を図ることができる。また、モザイク配列は、RGBの同一色を斜めに配置したものであり、ストライプ配列より自然な画像を得ることができる。また、デルタ配列は、RGBを三角形に配列し、各ドットがフィールド毎に半ピッチずれたものであり、自然な画像表示を得ることができる。
【0112】
実装工程(C1)では、前述したレーザーリフトオフ装置を用いて発光素子80を配線基板70の所定位置に配置することができる。前述したレーザーリフトオフ装置において、ドナー基板である発光素子をドナーステージに保持し、レセプター基板である配線基板70をレセプターステージに保持する。発光素子と配線基板との間の距離は、好ましくは10~1000μm、より好ましくは50~500μm、さらに好ましくは80~200μmである。
【0113】
発光素子80を配線基板70に接続させる方法としては、公知の異方性導電フィルムにおいて用いられている熱圧着、光圧着、熱光併用圧着などの接続方法を適宜選択して使用することができる。また、導電粒子が半田粒子の場合には、リフローにより接続してもよい。熱圧着の条件としては、例えば、温度150℃~260℃、圧力1MPa~60MPa、時間5秒~300秒である。異方性導電膜が硬化することにより、硬化膜が形成され、発光素子80間に硬化膜が存在せずに配線基板70が露出した状態で、配線基板70上に発光素子80を異方性接続させることができる。また、配線基板70を透光基板とすることにより、異方性導電フィルムを配線基板70の全面に貼り付けた場合に比べて、優れた光透過性を得ることができる。
【0114】
[第1の実施の形態の変形例]
前述した第1の実施の形態における転写工程(B1)では、
図10及び
図11に示すように、異方性導電膜の個片64を配線基板70上に発光素子単位であるサブピクセル単位で配列させることとしたが、これらに限られるものではなく、例えば、例えば発光素子のp側の第1導電型電極又はn側の第2導電型電極に対応する電極単位で配列してもよい。
【0115】
図13は、基板側からレーザー光を照射し、異方性導電膜の個片を配線基板上に電極位置で転写し、配列させた状態を模式的に示す断面図であり、
図14は、配線基板に電極単位で配列した個片上に発光素子を実装させた状態を模式的に示す断面図である。
図13に示すように、転写工程(B1)において、発光素子80の例えばp側の第1導電型電極82及びn側の第2導電型電極83にそれぞれ対応する第1電極72及び第2電極73に対し、それぞれ第1の個片64A及び第2の個片64Bを転写する。
【0116】
個片64A、64Bの寸法(縦×横)は、発光素子の電極の寸法に応じて適宜設定さ電子部品の面積に対する個片の面積の比は、特に制限はない。大きすぎると接続に関与しないフィルムが相対的に広くなるため、電極の面積に対する個片の面積比の上限は、5.0以下、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.2以下、更により好ましくは2.4以下である。また、小さくなりすぎると、接続が不安定なる懸念が生じるため、電子部品の面積に対する個片の面積の比の下限は、0.5以上、好ましくは0.8以上、更に好ましくは1.2以上である。これらの比は、構造体の目的に合わせて適宜設計できる。また、個片の厚みは、好ましくは2~10μm、より好ましくは3~8μm以、さらに好ましくは4~6μm以下である。
【0117】
図14に示すように、実装工程(C1)では、配線基板70上に電極単位で配列された個片64A、64B上に発光素子80を実装させる。これにより、表示装置の透明性をさらに向上させることができる。
【0118】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る表示装置の製造方法によれば、レーザー光の照射により異方性導電膜の個片64を高精度及び高効率に配線基板70に転写、配列させることができるため、タクトタイムの短縮化を図ることができる。また、従来のACP、ACF、NCF、接着剤などの接続では達成できなかった優れた光透過性、導通性、及び絶縁性を得ることができ、高輝度・高精細な透明ディスプレイを得ることができる。
【0119】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係る表示装置の製造方法は、レーザーリフトオフ装置を用いて、レーザー光の照射部分の異方性導電膜を除去し、基材上に異方性導電膜からなる所定形状の個片を形成する形成工程(A2)と、レーザーリフトオフ装置を用いて、所定形状の個片を発光素子の電極面に転写させる転写工程(B2-1)と、レーザーリフトオフ装置を用いて、個片が転写された発光素子を配線基板の所定位置に再転写させる再転写工程(B2-2)と、発光素子を配線基板に実装する実装工程(C2)とを有する。これにより、個片の優れた加工性及び転写性を得ることができ、タクトタイムの短縮化を図ることができる。
【0120】
以下、
図15~
図17を参照して、所定形状の個片を形成する形成工程(A2)、所定形状の個片を発光素子の電極面に転写させる転写工程(B2-1)、個片が転写された発光素子を配線基板の所定位置に再転写させる再転写工程(B2-2)及び、発光素子を配線基板に実装する実装工程(C2)について説明する。なお、第1の実施の形態と同一の構成には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0121】
[形成工程(A2)]
形成工程(A2)は、第1の実施の形態における形成工程(A1)と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0122】
[転写工程(B2-1)]
図15は、基材に設けられた異方性導電膜の個片と、転写基板に配列された発光素子とを対向させた状態を模式的に示す断面図である。
図15に示すように、転写工程(B2)では、基材61に設けられた異方性導電膜の個片64と転写基板90とを対向させる。個片64は、基材61上に発光素子50の電極の形状に対応して形成されている。
【0123】
転写基板90は、基材91と、基材91上に配列された発光素子80とを備える。基材91は、後述する再転写工程(B2-2)の転写方式に応じて適宜選択される。例えば、後述する再転写工程(B2-2)において、レーザーによるアブレーションを利用した転写方式を用いる場合、基材91は、レーザー光に対して透過性を有するものであればよく、中でも全波長に亘って高い光透過率を有する石英ガラスであることが好ましい。また、例えば、後述する再転写工程(B2-2)において、転写基板90を配線基板20に貼り合わせて発光素子80を転着させる場合、基材91は、例えばシリコーンゴム層を有していてもよい。
【0124】
転写工程(B2-1)では、前述した第1の実施の形態と同様、例えばレーザーリフトオフと呼ばれるレーザーによるアブレーションを利用した転写方式を用いることができる。
【0125】
図16は、基材側からレーザー光を照射し、異方性導電膜の個片を転写基板に配列された発光素子上に転写させた状態を模式的に示す断面図である。
図16に示すように、転写工程(B2-1)では、基材61側からレーザー光を照射し、異方性導電膜の個片64を転写基板90に配列された発光素子80上に転写させる。
【0126】
前述した第1の実施の形態と同様、異方性導電膜の個片64の転写には、前述したレーザーリフトオフ装置を用いることができる。レーザーリフトオフ装置を用いることにより、基材61と異方性導電膜の個片64との境界面において、レーザー光を照射された個片64に衝撃波を発生させ、複数の個片64を基材61から剥離して転写基板に配列された発光素子80に向けてリフトし、個片64を発光素子80に高精度に着弾させることができる。
【0127】
[再転写工程(B2-2)]
図17は、個片が転写された発光素子を配線基板上に再転写させる状態を模式的に示す断面図である。
図17に示すように、再転写工程(B2-2)では、個片64が転写された発光素子80を配線基板70上に再転写させる。再転写する方法としては、特に限定されるものではないが、例えばレーザーリフトオフ法(LLO法)により転写基板90から配線基板70に個片64が転写された発光素子80を直接転写、配置する方法、個片64が転写された発光素子80を予め密着させた転写基板90から配線基板70に発光素子80を転写、配置する方法などが挙げられる。
【0128】
また、再転写工程(B2-2)では、発光素子80を、1画素を構成するサブピクセル単位で転写させることが好ましい。これにより、高いPPI(Pixels Per Inch)の発光素子アレイから低いPPIの発光素子アレイまで対応することができる。
【0129】
[実装工程(C2)]
実装工程(C2)では、個片64を介して配線基板70の所定位置に配列した発光素子80を実装させる。発光素子80を実装させた状態は、
図12に示す第1の実施の形態と同様である。発光素子80を配線基板70に接続させる方法は、第1の実施の形態と同様である。これにより、発光素子80間に異方性導電膜が存在せずに配線基板70が露出した状態で、配線基板70上に発光素子80を異方性接続させることができる。また、配線基板70を透光基板とすることにより、異方性導電フィルムを配線基板70の全面に貼り付けた場合に比べて、優れた光透過性を得ることができる。
【0130】
[第2の実施の形態の変形例]
前述した第2の実施の形態における転写工程(B2-1)では、
図15及び
図16に示すように、異方性導電膜の個片64を発光素子80上に転写させることとしたが、これらに限られるものではなく、例えば、異方性導電膜の個片を、発光素子上に電極単位で転写させてもよい。すなわち、
図14に示す第1の実施の形態の変形例のように、発光素子80の例えばp側の第1導電型電極82及びn側の第2導電型電極83にそれぞれ第1の個片及び第2の個片を転写させ、実装してもよい。これにより、表示装置の透明性をさらに向上させることができきる。
【0131】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る表示装置の製造方法によれば、レーザー光の照射により異方性導電膜の個片64を高精度及び高効率に発光素子80に転写、配列させることができるため、タクトタイムの短縮化を図ることができる。また、従来のACP、ACF、NCF、接着剤などの接続では達成できなかった優れた光透過性、導通性、及び絶縁性を得ることができ、高輝度・高精細な透明ディスプレイを得ることができる。
【0132】
[リペア工程]
前述した実施の形態に係る表示装置において、例えば不点灯の発光素子がある場合、前述したレーザーリフトオフ装置を用いて、不点灯の発光素子取り除いた後、再度該当部に異方性導電膜の個片を転写し、発光素子を実装するリペアを行うことができる。レーザーリフトオフ装置において、発光素子が配列された配線基板を備える表示装置をドナーステージに保持し、配線基板側からレーザー光を照射して、所望の発光素子及び個片を剥離し、レセプター基板で配線基板から剥離された発光素子及び個片を受け止める。本実施の形態では、個片間に配線基板が露出しているため、リペアは、個片単位で行うことが好ましい。
【0133】
また、前述した実施の形態では、ディスプレイとしての表示装置の製造方法を例に挙げたが、本技術は、これに限られるものではなく、例えば、光源としての発光装置の製造方法にも適用することができる。また、第1の電子部品と第2の電子部品とを接続する接続構造体の製造方法にも適用することができる。すなわち、接続構造体の製造方法は、基材上に設けられた異方性導電膜に対して基材側からレーザー光を照射し、該照射部分の異方性導電膜を除去し、基材上に異方性導電膜からなる所定形状の個片を形成する形成工程と、所定形状の個片を第1の電子部品の所定位置に転写させる転写工程と、転写された個片を介して、第2の電子部品を配線基板に実装させる実装工程とを有し、異方性導電膜の厚みが、異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の0.9倍以上8倍以下であり、異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、2000Pa・s以上800000Pa・s以下である。第1の電子部品及び第2の電子部品としては、例えば、発光素子、IC(Integrated Circuit)、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)、LCD(Liquid Crystal Display)パネル、有機EL(OLED)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用途、タッチパネル用途などの透明基板、プリント配線板(PWB)などが挙げられる。プリント配線板の材質は、特に限定されず、例えば、FR-4基材などのガラエポでもよく、熱可塑性樹脂などのプラスチック、セラミックなども用いることができる。また、透明基板は、透明性の高いものであれば特に限定はなく、ガラス基板、プラスチック基板などが挙げられる。
【0134】
<4.表示装置>
本実施の形態に係る表示装置は、前述した表示装置の製造方法により得ることができる。すなわち、表示装置は、複数の発光素子と、発光素子を配列する配線基板と、複数の発光素子と配線基板とを接続させた硬化膜とを備え、硬化膜が、前述した異方性導電膜からなる所定形状の個片が硬化してなる。
【0135】
個片の形状は、鈍角からなる多角形、角が丸い多角形、楕円、長円、円から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これにより、個片間に基板を露出させることができ、優れた光透過性や美観を得ることができる。
【0136】
前述した
図12及び
図14に示すように、表示装置は、複数の発光素子80と、発光素子80を配列する基板70と、複数の発光素子80と基板70とを接続させる硬化膜とを備える。
【0137】
硬化膜は、所定形状の異方性導電膜の個片が硬化したものである。基板70上の個片の配列は、光透過性の効果が得られれば、特に限定されるものではないが、発光素子80に対応したサブピクセル単位であることが好ましい。個片がサブピクセル単位で配列されることにより、個片間の基板の露出部を増加させることができ、非常に優れた光透過性を得ることができる。個片がサブピクセル単位で配列された場合の個々のマイクロLED間の露出部に存在する個片の面積は、マイクロLEDの面積の3.2倍以下、好ましくは2.4倍以下、更により好ましくは1.2倍以下であることが好ましい。また、サブピクセル単位の近接した複数の発光素子80を一つの個片で接続してもよい。これにより、実装速度を短縮させる(実装効率を早める)ことができ、また、基板側の透明性や色味の条件によって許容できる仕様の範囲を広げることができる。
【0138】
異方性導電膜の硬化膜は、異方性導電膜と同様、導電粒子が面方向に整列されていることが好ましい。導電粒子が面方向に整列していることにより、粒子面密度が均一となり、導通性及び絶縁性を向上させることができる。導電粒子が面方に整列されている状態とは、例えば、導電粒子が所定ピッチで所定方向に配置されている配列軸を1以上有する平面格子パターンが挙げられ、斜方格子、六方格子、正方格子、矩形格子、平行体格子などが挙げられる。導電粒子が面方向に整列されているとは、膜の平面視で導電粒子が配列していると言い変えてもよい。また、導電粒子の面方向の配列は、ランダムであってもよく、平面格子パターンが異なる複数の領域を有していてもよい。
【0139】
また、異方性導電膜の硬化膜の粒子面密度は、発光素子80の電極サイズに応じて適宜設計でき、粒子面密度の下限は、500個/mm2以上、20000個/mm2以上、40000個/mm2以上、50000個/mm2以上とすることができ、粒子面密度の上限は、1500000個/mm2以下、1000000個/mm2以下、500000個/mm2以下、100000個/mm2以下とすることができる。これにより、発光素子80の電極サイズが小さい場合でも、優れた導通性及び絶縁性を得ることができる。
【0140】
異方性導電膜の硬化膜の粒子面密度は、製造時にフィルム化した際の導電粒子のものである。これはランダムに配置された部分でも、配列部分のものを測定したものであっても同様となる。複数の個片から粒子個数密度を求める場合は、個片とスペースを含めた面積から個片間のスペースを除いた面積と粒子数とから粒子面密度を求めることができる。個片は、個数密度で表すことが不適切な場合もあり、1つの個片における粒子の占有面積率や、粒子径と粒子間中心距離及び個数で表すことが適当な場合もある。
【0141】
なお、異方性導電膜の硬化膜の粒子面密度は、製造時にフィルム化した際の導電粒子のものである。これはランダムに配置された部分でも、配列部分のものを測定したものであっても同様となる。複数の個片から粒子個数密度を求める場合は、個片とスペースを含めた面積から個片間のスペースを除いた面積と粒子数とから粒子面密度を求めることができる。個片は、個数密度で表すことが不適切な場合もあり、1つの個片における粒子の占有面積率や、粒子径と粒子間中心距離及び個数で表すことが適当な場合もある。
【0142】
1つの個片あたりの導電粒子の数は、発光素子80の電極サイズに応じて適宜設計でき、下限は、例えば2個以上、好ましく4個以上、より好ましくは10個以上であり、上限は、6000個以下、好ましくは500個以下、より好ましくは100以下である。
【0143】
個片が基板に載置(設けられた)後の可視光の平均透過率は、好ましくは20%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは50%以上である。これにより、優れた光透過性や美観を有する表示装置を得ることができる。透明でない基板でない場合でも、素ガラスや評価用の透明基板に個片を貼り付け、これをリファレンス(Ref)として平均透過率を求めることができる。発光素子が設けられた可視光の平均透過率は、より低いものとなる。発光素子が実装されている場合、点灯していない状態で測定しているものとする。可視光の平均透過率は、例えば紫外可視分光光度計を用いて測定することができる。
【0144】
発光素子のサイズに対する個片のサイズは、導通性が得られれば、発光素子80のサイズよりも小さくてもよい。また、個片は、表示装置の光透過性の効果が得られれば、発光素子の直下だけでなく、周縁部に存在するように配置しても構わない。
【0145】
発光素子80からの個片のはみ出し量は、好ましくは30μm未満、より好ましくは10μm未満、さらに好ましくは5μm未満である。また、個片がはみ出さない場合、はみ出し量は、ゼロ、マイナスであってもよい。これにより、基板の全面に硬化膜を設けた表示装置の構成例に比べて、優れた光透過率を得ることができる。なお、発光素子80からの個片のはみ出し量は、発光素子80の周縁から個片の周縁までの距離の最大値である。
【0146】
本実施の形態に係る表示装置によれば、硬化膜の個片間に基板70が露出した露出部を有することにより、従来のACP、ACF、NCF、接着剤などを全面に設けた接続では達成できなかった優れた光透過性、導通性、及び絶縁性を得ることができ、高輝度・高精細な透明ディスプレイを得ることができる。
【0147】
なお、上述の実施の形態では、発光素子80をサブピクセル単位で配列したディスプレイとしての表示装置を例に挙げたが、本技術は、これに限られるものではなく、例えば、光源としての発光装置にも適用することができる。発光装置は、複数の発光素子と、発光素子を配列する基板と、複数の発光素子と基板とを接続させた硬化膜とを備え、硬化膜が、複数の個片からなり、個片間に基板が露出した露出部を有する。このような発光装置によれば、発光素子80が微小サイズになることにより、1つのウエハあたりのチップの取り数が増えるため、低価格化を図ることができ、また、発光装置の薄型化や省エネ化といった産業上の利点を得ることができる。
【0148】
また、本技術は、第1の電子部品と第2の電子部品とを接続した接続構造体にも適用することができる。すなわち、接続構造体は、第1の電子部品と、第2の電子部品と、第1の電子部品と第2の電子部品とを接続させた硬化膜とを備え、硬化膜が、異方性導電膜からなる所定形状の個片が硬化してなり、異方性導電膜の厚みが、異方性導電膜中の導電粒子の粒子径の0.9倍以上8倍以下であり、異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、2000Pa・s以上800000Pa・s以下である。
【実施例0149】
<3.実施例>
本実施例では、所定の厚み、所定の粒子配置、所定の粒子整列、及び所定の溶融粘度を有する異方性導電フィルムを個片に加工し、個片の形状状態について評価した。また、加工した個片を用いてμLED素子を実装した実装体について点灯評価した。なお、本技術は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0150】
[異方性導電フィルムの溶融粘度測定]
レオメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、HAAKE MARS)を使用し、下記測定条件で30℃における異方性導電フィルムの溶融粘度を測定した。異方性導電フィルムを重ねて300μmの厚みのサンプルを測定した。
測定条件:ガラスコーティングポリプロピレン容器(PP08、Φ8mm)、周波数10Hz
【0151】
[基準線に対する導電粒子の存在率の算出]
異方性導電膜の断面を顕微鏡で観察し、導電粒子が200箇所以上である所定範囲内の導電粒子の厚み方向の中心位置を測定してその平均値を基準線とし、所定範囲内において基準線に外径の一部がかかる導電粒子の割合を求めた。
【0152】
[異方性導電フィルムの個片加工]
レーザーリフトオフ装置(信越エンジニアリング製LUM-XTR)を用いて、4インチの石英ガラスに貼付された異方性導電フィルムの石英ガラス側からレーザー光を照射して不要部分を素ガラスに転写し、石英ガラスに異方性導電フィルムの個片を形成した。前述した
図2に示すように、レーザーリフトオフ装置は、例えば、レーザー光の光軸を走査するレーザースキャナと、所定のピッチにて所定の形状の開口が複数配列されたマスクと、レーザー光をドナー基板に縮小投影する投影レンズと、ドナー基板を保持するドナーステージと、レセプター基板を保持するレセプターステージとを備えており、ドナー基板である異方性導電フィルム基板をドナーステージに保持し、レセプター基板である素ガラスをレセプターステージに保持し、異方性導電フィルムと素ガラスとの間の距離を100μmとした。
【0153】
レーザー装置は、発振波長を248nmとするエキシマレーザーを用いた。レーザー光のパルスエネルギーは、600mJ、フルーエンス(fluence)は250mJ/cm2、パルス幅(照射時間)は30000ピコ秒、パルス周波数は0.01kHz、照射パルス数は各個片につき1パルスとした。
【0154】
異方性導電フォルムと石英ガラスとの界面に照射される結像されるレーザー光のパルスエネルギーは、0.001~2Jであり、フルーエンス(fluence)は、0.001~2J/cm2であり、パルス幅(照射時間)は、0.01~1×109ピコ秒であり、パルス周波数は、0.1~10000Hzであり、照射パルス数は、1~30,000,000とした。
【0155】
マスクは、ドナー基板である異方性導電フィルム基板の異方性導電フィルムと石英ガラスとの境界面における投影が、横158μmピッチ及び縦158μmピッチで個片のサイズ(直径80μmの円形)の配列となるように、個片の形状となる円形の遮光部が形成されたパターンを用いた。マスクを介してレーザー光を照射し、異方性導電フォルムを打ち抜き、石英ガラス上に直径80μmの円形の複数の個片を形成した。
【0156】
[個片の形状状態の評価]
異方性導電フィルムを個片に加工した後、個片(Total 10,000pcs)からランダムに1000pcs選定し、個片形状が正常な状態(捲れや欠けが無い状態)のものを顕微鏡による目視にてカウントした(捲れや欠けについては、前述した
図5(B)に示す捲れが発生した個片42や欠けが発生した個片43を参照)。そして、下記式にて形状の正常率を算出した。形状正常率は、好ましくは85%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上である。
形状正常率=正常な形状の個片数/母数×100
【0157】
[点灯試験の評価]
また、加工した個片を用いてμLED素子を実装した実装体について点灯評価した。実装体の作製、及び点灯評価は、次のように行った。
【0158】
(実装体の作製)
図18は、実装体の作製方法を模式的に示す図であり、
図18(A)は、個片を準備する工程を示し、
図18(B)は、基板に個片を転写する工程を示し、
図18(C)は、μLED素子を仮固定する工程を示し、
図18(D)は、μLED素子を圧着させる工程を示す。
図19は、点灯試験のための評価基板を模式的に示す平面図であり、
図20(A)は、μLED素子の電極面を模式的に示す平面図であり、
図20(B)は、μLED素子を評価基板に実装した様子を模式的に示す図である。
【0159】
図18(A)に示すように、先ず、前述の石英ガラス101上に加工された所定形状の個片104を準備し、
図18(B)に示すように、個片104の背面(石英ガラス101側)からレーザーを照射し、個片104を評価基板107の指定箇所に転写した。個片104の転写は、前述の個片転写の評価におけるLLOと同様に行った。
【0160】
評価基板107は、厚み0.5mmのガラス基材上に下地が厚み20nmのCr及び表面が厚み80nmのAuの配線パターンが形成され、
図27に示すように、櫛歯6本の第1の櫛型電極107Aと、櫛歯6本の第2の櫛型電極107Bとを15組備えるものを用いた。配線パターンは、
図19及び
図20(B)に示すように、櫛歯のライン幅が90μm、スペース幅が12μm又は24μmであり、1チャンネル当たり約1300μm×15ch≒19.3mmであるものを用い、所定形状の個片をスペース幅が12μmの配線間に転写した。
【0161】
次に、
図18(C)に示すように、予めLLOによりμLED素子108が凸部に並べられたポリジメチルシロキサン(PDMS)シート109を位置合わせし、30℃-30MPa-10seの条件で貼り合わせ、
図20(B)に示すように、個片104を介してμLED素子108を評価基板107のスペース幅が12μmの配線間に仮固定した。
【0162】
μLED素子108は、
図20(A)に示すように、外径が34μm×58μm、第1の電極108A及び第2の電極108Bの大きさが27μm×18μm、第1の電極108Aと第2の電極108Bとの距離が16μmであるものを用いた。
【0163】
次に、
図18(D)に示すように、150℃-150N-30secの圧着条件のプレスにてμLED素子108を一括圧着させ、μLED素子(Total 3,600pcs)を実装した実装体を作製した。
【0164】
(点灯評価)
実装体の第1の櫛型電極と第2の櫛型電極とに3.0Vの電圧を印加し、すべてのμLED素子(Total 3,600pcs)に対して点灯数をカウントし、下記式にて点灯率を算出した。点灯率は、95%以上であることが好ましい。
点灯率=点灯数/母数×100
【0165】
[実施例1]
(異方性導電フィルムの作製)
フェノキシ樹脂(商品名:PKHH、巴化学工業株式会社製)35質量部、高純度ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YL-980、三菱ケミカル株式会社製)50質量部、疎水性シリカ(商品名:R202、日本アエロジル株式会社製)5質量部、カチオン重合開始剤(商品名:SI-60L、三新化学工業株式会社製)7質量部、及びシランカップリング剤(商品名:KBM-503、信越シリコーン株式会社製)3質量部を混合し、バインダーを作製した。
【0166】
バインダーを厚さ50μmのPETフィルム上に塗布、乾燥させ、厚み4μmの樹脂フィルムを形成し、粒子密度58000pcs/mm
2で導電粒子(平均粒径2.2μm、樹脂コア金属被覆微粒子、Niメッキ0.1μm厚、積水化学工業株式会社製)が六方格子状に配列された配列シートを樹脂フィルムに貼り合わせ、導電粒子を樹脂フィルムに押し込んで転写し、導電粒子が整列された異方性導電フィルムを作製した。そして、異方性導電フィルムの導電粒子転写面側を石英ガラスに貼り合わせ、
図1(A)に示すように、基準値が基材側に近い状態である異方性導電フィルム基板を作製した。
【0167】
表1に示すように、実施例1の異方性導電フィルムの30℃における溶融粘度は、20000Pa・sであった。また、基準値に対する導電粒子の存在率は95%であった。実施例1の異方性導電フィルム基板の個片加工後の個片の形状正常率は99%以上であり、個片を用いてμLED素子を実装した実装体の点灯率は99%以上であった。
【0168】
[実施例2]
厚み2μmの樹脂フィルムを形成し、導電粒子が整列された異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に異方性導電フィルム基板を作製した。
【0169】
表1に示すように、実施例2の異方性導電フィルムの30℃における溶融粘度は、20000Pa・sであった。また、基準値に対する導電粒子の存在率は99%であった。実施例2の異方性導電フィルム基板の個片加工後の個片の形状正常率は99%以上であり、個片を用いてμLED素子を実装した実装体の点灯率は99%以上であった。
【0170】
[実施例3]
厚み10μmの樹脂フィルムを形成し、導電粒子が整列された異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に異方性導電フィルム基板を作製した。
【0171】
表1に示すように、実施例3の異方性導電フィルムの30℃における溶融粘度は、20000Pa・sであった。また、基準値に対する導電粒子の存在率は90%であった。実施例3の異方性導電フィルム基板の個片加工後の個片の形状正常率は95%であり、個片を用いてμLED素子を実装した実装体の点灯率は95%であった。
【0172】
[実施例4]
異方性導電フィルムの導電粒子転写面の反対面側を石英ガラスに貼り合わせ、
図1(B)に示すように、基準値が基材の反対面側に近い状態である異方性導電フィルム基板を作製した以外は、実施例1と同様に異方性導電フィルム基板を作製した。
【0173】
表1に示すように、実施例4の異方性導電フィルムの30℃における溶融粘度は、20000Pa・sであった。また、基準値に対する導電粒子の存在率は95%であった。実施例4の異方性導電フィルム基板の個片加工後の個片の形状正常率は99%以上であり、個片を用いてμLED素子を実装した実装体の点灯率は99%以上であった。
【0174】
[実施例5]
実施例1を基準として、フェノキシ樹脂の配合量を減少させ、高純度ビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合量を増加させて、30℃における溶融粘度が2000Pa・sである異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に異方性導電フィルム基板を作製した。
【0175】
表1に示すように、実施例5の異方性導電フィルムの30℃における溶融粘度は、2000Pa・sであった。また、基準値に対する導電粒子の存在率は95%であった。実施例5の異方性導電フィルム基板の個片加工後の個片の形状正常率は98%であり、個片を用いてμLED素子を実装した実装体の点灯率は98%であった。
【0176】
[実施例6]
実施例1を基準として、フェノキシ樹脂の配合量を増加させ、高純度ビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合量を減少させて、30℃における溶融粘度が800000Pa・sである異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に異方性導電フィルム基板を作製した。
【0177】
表1に示すように、実施例6の異方性導電フィルムの30℃における溶融粘度は、800000Pa・sであった。また、基準値に対する導電粒子の存在率は95%であった。実施例6の異方性導電フィルム基板の個片加工後の個片の形状正常率は97%であり、個片を用いてμLED素子を実装した実装体の点灯率は97%であった。
【0178】
[実施例7]
粒子密度58000pcs/mm2で導電粒子(平均粒径2.2μm、樹脂コア金属被覆微粒子、Niメッキ0.1μm厚、積水化学工業株式会社製)がランダムに配列された配列シートを樹脂フィルムに貼り合わせ、導電粒子を樹脂フィルムに押し込んで転写し、導電粒子がランダムに配列された異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に異方性導電フィルム基板を作製した。
【0179】
表2に示すように、実施例7の異方性導電フィルムの30℃における溶融粘度は、20000Pa・sであった。また、基準値に対する導電粒子の存在率は95%であった。実施例7の異方性導電フィルム基板の個片加工後の個片の形状正常率は88%であり、個片を用いてμLED素子を実装した実装体の点灯率は86%であった。
【0180】
[実施例8]
異方性導電フィルムの導電粒子転写面の反対面側を石英ガラスに貼り合わせ、
図1(B)に示すように、基準値が基材の反対面側に近い状態である異方性導電フィルム基板を作製した以外は、実施例7と同様に異方性導電フィルム基板を作製した。
【0181】
表2に示すように、実施例8の異方性導電フィルムの30℃における溶融粘度は、20000Pa・sであった。また、基準値に対する導電粒子の存在率は95%であった。実施例8の異方性導電フィルム基板の個片加工後の個片の形状正常率は86%であり、個片を用いてμLED素子を実装した実装体の点灯率は85%であった。
【0182】
[比較例1]
厚み20μmの樹脂フィルムを形成し、導電粒子が整列された異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に異方性導電フィルム基板を作製した。
【0183】
表2に示すように、比較例1の異方性導電フィルムの30℃における溶融粘度は、20000Pa・sであった。また、基準値に対する導電粒子の存在率は95%であった。比較例1の異方性導電フィルム基板の個片加工後の個片の形状正常率は0%であった。
【0184】
[比較例2]
バインダーに、粒子密度が58000pcs/mm
2となるように導電粒子(平均粒径2.2μm、樹脂コア金属被覆微粒子、Niメッキ0.1μm厚、積水化学工業株式会社製)を混合し、異方性導電接着剤組成物を調整した。そして、異方性導電接着剤組成物を厚さ50μmのPETフィルム上に塗布、乾燥させ、
図1(C)に示すように、異方性導電膜内の導電粒子が厚み方向に分散した厚み4μmの異方性導電フィルムを形成した以外は、実施例1と同様に異方性導電フィルム基板を作製した。
【0185】
表2に示すように、実施例7の異方性導電フィルムの30℃における溶融粘度は、20000Pa・sであった。また、基準値に対する導電粒子の存在率は70%であった。比較例2の異方性導電フィルム基板の個片加工後の個片の形状正常率は73%であり、個片を用いてμLED素子を実装した実装体の点灯率は70%であった。
【0186】
[比較例3]
実施例1を基準として、フェノキシ樹脂の配合量を減少させ、高純度ビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合量を増加させて、30℃における溶融粘度が1000Pa・sである異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に異方性導電フィルム基板を作製した。
【0187】
表1に示すように、比較例3の異方性導電フィルムの30℃における溶融粘度は、1000Pa・sであった。また、基準値に対する導電粒子の存在率は95%であった。比較例3の異方性導電フィルム基板の個片加工後の個片の形状正常率は80%であり、個片を用いてμLED素子を実装した実装体の点灯率は80%であった。
【0188】
[比較例4]
実施例1を基準として、フェノキシ樹脂の配合量を増加させ、高純度ビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合量を減少させて、30℃における溶融粘度が1000000Pa・sである異方性導電フィルムを作製した以外は、実施例1と同様に異方性導電フィルム基板を作製した。
【0189】
表1に示すように、比較例4の異方性導電フィルムの30℃における溶融粘度は、1000000Pa・sであった。また、基準値に対する導電粒子の存在率は95%であった。比較例4の異方性導電フィルム基板の個片加工後の個片の形状正常率は76%であり、個片を用いてμLED素子を実装した実装体の点灯率は76%であった。
【0190】
表1に、実施例1~6の形状正常率の評価結果を示し、表2に、実施例7、8、及び比較例1~4の形状正常率の評価結果を示す。
【0191】
【0192】
【0193】
比較例1は、異方性導電膜の厚みが20μmであるため、形状正常率が0%であった。これは、異方性導電膜の厚みが大きいため、異方性導電膜が千切れなかったためと考えられる。比較例2は、異方性導電膜内の導電粒子が厚み方向に分散しているため、形状正常率が良好ではなかった。これは、アブレーションの程度にムラが生じたためと考えられる。比較例3は、異方性導電膜の30℃における溶融粘度が1000Pa・sであるため、良好な形状正常率が得られなかった。これは、異方性導電膜の30℃における溶融粘度が低いため、レーザー光照射後に個片が縮んでしまい、個片の膜の維持が困難であるためと考えられる。比較例4は、異方性導電膜の30℃における溶融粘度が、1000000Pa・sであるため、異方性導電膜の膜性が強く、レーザー光照射による除去が困難であるためと考えられる。
【0194】
実施例1~8は、異方性導電膜の厚みが1μm以上10μm以下であり、異方性導電膜の30℃における溶融粘度が2000Pa・s以上800000Pa・s以下であり、異方性導電膜中の導電粒子が厚み方向における導電粒子の中心位置の平均値に90%以上存在するため、良好な形状正常率が得られた。また、実施例1~6は、異方性導電膜内の導電粒子が面方向に整列しているため、90%以上の形状正常率を得ることができた。これは、面方向のアブレーションの程度が均一化するためと考えられる。
【0195】
また、実施例1~8の正常な形状の個片の外形付近を金属顕微鏡で観察したところ、導電粒子の配置に沿って個片の外形が加工されていることが確認できた。すなわち、個片は、導電粒子の配置に沿って千切れていることが確認できた。また、実施例1~8における点灯試験の点灯率は、個片の形状正常率と同様であった。
1 基材、2A~2C 異方性導電膜、3 導電粒子、 10 レーザーリフトオフ装置、 11レーザースキャナ、12 マスク、13 投影レンズ、20 異方性導電膜基板、21 基材、22 異方性導電膜、23 除去部、30 異方性導電膜基板、31 基材、32 異方性導電膜、33 除去部、34 個片、41 バリが発生した個片、42 捲れが発生した個片、43、欠けが発生した個片、51 遮光部、52 個片、53 遮光部、54A~54D 遮光部、60 個片フィルム、61 基材、62 異方性導電膜、63 導電粒子、64 個片、64A 個片、64B 個片、70 配線基板、71 基材、72 第1電極、73 第2電極、80 発光素子、81 本体、82 第1導電型電極、83 第2導電型電極、90 転写基板、91 基材、101 石英ガラス、104 個片、 107 評価基板、107A 第1の櫛型電極、107B 第2の櫛型電極、108 μLED素子、108A 第1の電極、108B 第2の電極、109 PDMSシート