IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本線路技術の特許一覧 ▶ 東京地下鉄株式会社の特許一覧

特開2024-40765情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
<>
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図1
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図2
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図3
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図4
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図5
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図6
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図7
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図8
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図9
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図10
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図11
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図12
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040765
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240318BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240318BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20240318BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240318BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G01B11/00 H
G01B11/02 H
G06T7/00 650Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145332
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】592047973
【氏名又は名称】株式会社日本線路技術
(71)【出願人】
【識別番号】504158881
【氏名又は名称】東京地下鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】武田 岳
(72)【発明者】
【氏名】工藤 浩之
【テーマコード(参考)】
2F065
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA24
2F065CC35
2F065FF04
2F065JJ26
2F065QQ06
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
2G051AA90
2G051AB01
2G051AC16
2G051BA20
2G051BB03
2G051CA03
2G051CB01
2G051EA11
2G051ED01
5L096BA08
5L096CA02
5L096CA16
5L096DA02
5L096EA43
5L096FA66
5L096GA10
5L096GA43
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】濃淡画像に基づいて水があるか否かを判定する際に、金属製部品等を水と誤検知することを少なくできる情報処理装置等を提供する。
【解決手段】撮影範囲に対応して画素毎に濃淡の度合いを示す濃淡値を有する濃淡画像と、前記撮影範囲に対応して画素毎に高さの度合いを示す高さ値を有する高さ画像と、を取得し、高さ画像の有する高さ値に基づいて選別される、濃淡画像における所定の高さより低い高さに対応する画素の濃淡値に基づいて、撮影範囲内に水があるか否かを判定する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影範囲に対応して画素毎に濃淡の度合いを示す濃淡値を有する濃淡画像と、前記撮影範囲に対応して画素毎に高さの度合いを示す高さ値を有する高さ画像と、を取得する画像取得手段と、
前記高さ画像が有する高さ値に基づいて選別される、前記濃淡画像における所定の高さより低い高さに対応する画素の濃淡値に基づいて、前記撮影範囲内に水があるか否かを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記高さ画像が有する高さ値に基づいて、前記濃淡画像における所定の高さより低い高さに対応する画素の濃淡値を選別した判定用画像を生成する判定用画像生成手段を更に備え、
前記判定手段は、前記判定用画像における前記濃淡値に基づいて、前記撮影範囲内に水があるか否かを判定することを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記判定手段は、前記判定用画像における前記濃淡値が第1閾値以上である前記画素の数が第2閾値以上である場合に、前記撮影範囲内に水があると判定することを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記判定用画像における各画素について、当該画素の濃淡値と所定の画素数だけ離れた画素の濃淡値との差分値を算出して、当該差分値を画素毎に有する差分画像を生成する差分画像生成手段を更に備え、
前記判定手段は、前記判定用画像における前記濃淡値が第1閾値以上である前記画素の数が第2閾値以上であり、且つ、前記差分画像における前記濃淡値が第3閾値以上である前記画素の数が第4閾値以上である場合に、前記撮影範囲内に水があると判定することを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れか一項に記載の情報処理装置であって、
前記所定の高さに基づいて前記高さ画像を二値化したマスク画像を生成するマスク画像生成手段を更に備え、
前記判定用画像生成手段は、前記濃淡画像に対して前記マスク画像を合成して前記判定用画像を生成することを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
撮影範囲に対応して画素毎に濃淡の度合いを示す濃淡値を有する濃淡画像と、前記撮影範囲に対応して画素毎に高さの度合いを示す高さ値を有する高さ画像と、を取得する画像取得手段と、
前記高さ画像が有する高さ値に基づいて選別される、前記濃淡画像における所定の高さより高い高さに対応する画素の濃淡値に基づいて、前記撮影範囲内に水があるか否かを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置による情報処理方法であって、
撮影範囲に対応して画素毎に濃淡の度合いを示す濃淡値を有する濃淡画像と、前記撮影範囲に対応して画素毎に高さの度合いを示す高さ値を有する高さ画像と、を取得する画像取得工程と、
前記高さ画像が有する高さ値に基づいて選別される、前記濃淡画像における所定の高さより低い高さに対応する画素の濃淡値に基づいて、前記撮影範囲内に水があるか否かを判定する判定工程と、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、
撮影範囲に対応して画素毎に濃淡の度合いを示す濃淡値を有する濃淡画像と、前記撮影範囲に対応して画素毎に高さの度合いを示す高さ値を有する高さ画像と、を取得する画像取得手段、
前記高さ画像が有する高さ値に基づいて選別される、前記濃淡画像における所定の高さより低い高さに対応する画素の濃淡値に基づいて、前記撮影範囲内に水があるか否かを判定する判定手段、
として機能させることを特徴とする情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃淡画像に基づいて水の存在を検知する情報処理装置等の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、地下鉄等の一部の鉄道のレール103は、コンクリート道床101の上に配置された枕木102にレール締結装置104により固定されている。コンクリート道床101上には、湧き水や雨水などにより水Wが滞水となって溜まることがあり、滞水がレール103の底部の腐食の要因となる。そのためレール103の腐食の要因となる水の発生場所を把握することが重要となるが、鉄道全線でのリアルタイムでの把握は困難であり、従来は巡視時に目視で確認して対応している。
【0003】
一方で、水の存在を検知する技術として、例えば、天候条件(例えば雨天)に応じて予め地表面(路面)を撮影した過去画像と現在画像を比較して、現在画像と一致した過去画像に基づいて現在の地表面(路面)の状態を判定する技術(特許文献1参照)が開示されている。また、路面を撮影した画像における路面領域上の被写体の一部と路面領域以外の領域の被写体の一部とが互いに鏡像関係にあることに基づいて、路面上の水面を検知する技術(特許文献2参照)が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、天候条件に対応する過去画像と現在画像の比較により地表面(路面)の状態を判定するため、過去画像に存在しない新たに発生した水を把握することが難しいという問題がある。また、特許文献2に記載の技術では、水の近辺に水により鏡像関係となる被写体が存在しない場合は水を検知できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-157676号公報
【特許文献2】特開2018-101901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、レール103の近辺を、照明光を照射しながら上方から撮影した濃淡画像(グレースケール画像)に基づいて、レール103の近辺に存在する水Wを検知するアイデアがある。図2(A)、(B)は濃淡画像の一例であり、濃淡画像において水Wが存在する領域(例えば、図2(A)の点線201で示す領域、図2(B)の点線202、203で示す領域)は照明光が水Wで反射することにより他の領域よりも「白色」で表現されていると考えられる。そこで、画素値が「240」以上の部分に水Wが存在すると仮定して多数の濃淡画像を検証したところ、図3(A)の濃淡画像におけるレール103の頭面や、図3(B)の濃淡画像におけるボルト105の頭面など、金属製部品に相当する領域の画素値が「240」以上となるためこれらを誤検知することが分かった。
【0007】
このように、濃淡画像の画素値により水Wを検知することができるが、その一方で照明光を水と同程度に反射する金属製部品等の誤検知も多いという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みて為されたもので、濃淡画像に基づいて水があるか否かを判定する際に、金属製部品等を水と誤検知することを少なくできる情報処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、撮影範囲に対応して画素毎に濃淡の度合いを示す濃淡値を有する濃淡画像と、前記撮影範囲に対応して画素毎に高さの度合いを示す高さ値を有する高さ画像と、を取得する画像取得手段と、前記高さ画像が有する高さ値に基づいて選別される、前記濃淡画像における所定の高さより低い高さに対応する画素の濃淡値に基づいて、前記撮影範囲内に水があるか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の情報処理装置であって、前記高さ画像が有する高さ値に基づいて、前記濃淡画像における所定の高さより低い高さに対応する画素の濃淡値を選別した判定用画像を生成する判定用画像生成手段を更に備え、前記判定手段は、前記判定用画像における前記濃淡値に基づいて、前記撮影範囲内に水があるか否かを判定することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の情報処理装置であって、前記判定手段は、前記判定用画像における前記濃淡値が第1閾値以上である前記画素の数が第2閾値以上である場合に、前記撮影範囲内に水があると判定することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の情報処理装置であって、前記判定用画像における各画素について、当該画素の濃淡値と所定の画素数だけ離れた画素の濃淡値との差分値を算出して、当該差分値を画素毎に有する差分画像を生成する差分画像生成手段を更に備え、前記判定手段は、前記判定用画像における前記濃淡値が第1閾値以上である前記画素の数が第2閾値以上であり、且つ、前記差分画像における前記濃淡値が第3閾値以上である前記画素の数が第4閾値以上である場合に、前記撮影範囲内に水があると判定することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4の何れか一項に記載の情報処理装置であって、前記所定の高さに基づいて前記高さ画像を二値化したマスク画像を生成するマスク画像生成手段を更に備え、前記判定用画像生成手段は、前記濃淡画像に対して前記マスク画像を合成して前記判定用画像を生成することを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、撮影範囲に対応して画素毎に濃淡の度合いを示す濃淡値を有する濃淡画像と、前記撮影範囲に対応して画素毎に高さの度合いを示す高さ値を有する高さ画像と、を取得する画像取得手段と、前記高さ画像が有する高さ値に基づいて選別される、前記濃淡画像における所定の高さより高い高さに対応する画素の濃淡値に基づいて、前記撮影範囲内に水があるか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、情報処理装置による情報処理方法であって、撮影範囲に対応して画素毎に濃淡の度合いを示す濃淡値を有する濃淡画像と、前記撮影範囲に対応して画素毎に高さの度合いを示す高さ値を有する高さ画像と、を取得する画像取得工程と、前記高さ画像が有する高さ値に基づいて選別される、前記濃淡画像における所定の高さより低い高さに対応する画素の濃淡値に基づいて、前記撮影範囲内に水があるか否かを判定する判定工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、コンピュータを、撮影範囲に対応して画素毎に濃淡の度合いを示す濃淡値を有する濃淡画像と、前記撮影範囲に対応して画素毎に高さの度合いを示す高さ値を有する高さ画像と、を取得する画像取得手段、前記高さ画像が有する高さ値に基づいて選別される、前記濃淡画像における所定の高さより低い高さに対応する画素の濃淡値に基づいて、前記撮影範囲内に水があるか否かを判定する判定手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、濃淡画像における所定の高さを基準に選別した画素の濃淡値に基づいて水があるか否かを判定することにより、金属製部品等が存在する部分を除外して濃淡値による水の有無判定を行うため、金属製部品等を水と誤検知することを少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】コンクリート道床軌道の一例を示す断面図である。
図2】(A)、(B)はレール近辺(水を含む)を上方から撮影した濃淡画像の一例を示す図である。
図3】(A)、(B)はレール近辺を上方から撮影した濃淡画像の一例を示す図である。
図4】本実施形態における画像処理システムSの構成例を示す模式図である。
図5】コンクリート道床軌道の一例を示す断面図である。
図6】本実施形態におけるレール撮影装置10の構成例を示すブロック図である。
図7】本実施形態における画像処理装置30の構成例を示すブロック図である。
図8】本実施形態における判定用画像の生成例を示す図である。
図9】本実施形態における制御部31による滞水判定処理の一例を示すフローチャートである。
図10】本実施形態における画像リストの一例を示す図である。
図11】本実施形態における制御部31による判定画像生成処理の一例を示すフローチャートである。
図12】本実施形態における制御部31による差分画像生成処理の一例を示すフローチャートである。
図13】滞水判定処理の検知精度の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0020】
[1.画像処理システムSの構成]
まず、図4を用いて、本実施形態における画像処理システムSの構成について説明する。画像処理システムSは、車両Tの底部に設置されるレール撮影装置10と、画像処理装置30と、を含む。レール撮影装置10と画像処理装置30は、例えば、USBケーブル、専用線、インターネット、移動体通信網等を介して接続され、データの受け渡しが可能となっている。レール撮影装置10は、レール103及びその近辺を上方から撮影した画像を記録して画像処理装置30に渡す。画像処理装置30はレール撮影装置10から受け取った画像に写っている水W(滞水)を検知する。
【0021】
画像処理システムSは、レール103の近辺を上方から撮影した濃淡画像に基づいて、レール103の下方に存在する水Wを検知する。濃淡画像は、レール103上を走行する車両Tの底部に照明とカメラを設け、車両を走行させつつ、照明でレール103の近辺を照らしながらカメラで撮影する。なお、1枚の濃淡画像又は距離画像により表される範囲を撮影範囲という。
【0022】
また、画像処理システムSでは、濃淡画像により水Wを検知する際、金属製部品の誤検知を減らすため、図5に示すように、水Wが発生する高さより上方であって、且つ、レール締結装置104(最も低い位置にある金属製部品の一例)より下方である高さ位置Hを基準として(以下、高さ位置Hを「基準高さ位置H」という)、基準高さ位置Hより上方に対応する画素(ピクセル)については検知対象から除外する。何れの画素が基準高さ位置Hより上方に対応する画素であるかは、別途撮影された距離画像に基づいて判別する。なお、基準高さ位置Hは、レール103やレール締結装置104等の金属製部品の設置されている高さに基づいて設定する。
【0023】
[2.レール撮影装置10の構成]
次に、図6を用いて、レール撮影装置10の構成について説明する。レール撮影装置10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、ラインセンサカメラ14と、プロファイルカメラ15と、LED(Light Emitting Diode)照明16とを備えている。
【0024】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。そして、CPUが、ROMや記憶部12に記憶された各種プログラムを読み出し実行することにより各種機能を実現する。
【0025】
記憶部12は、例えば、SSD(Solid State Drive)等により構成されており、オペレーティングシステムや各種プログラムを記憶する。なお、各種プログラムは、例えば、他のサーバ装置等からネットワークを介して取得されるようにしても良いし、記録媒体に記録されてドライブ装置を介して読み込まれるようにしても良い。また、記憶部12は、ラインセンサカメラ14により撮影された濃淡画像と、プロファイルカメラ15により撮影された距離画像を記憶する。距離画像及び濃淡画像は、画像リストにより管理され、画像リストも記憶部12に記憶される。
【0026】
通信部13は、画像処理装置30との間で無線又は有線による通信を行う。通信部13は、例えば、制御部11の制御の下、記憶部12に記憶された距離画像、濃淡画像及び画像リストを画像処理装置30に送信する。
【0027】
ラインセンサカメラ14、プロファイルカメラ15及びLED照明16は、制御部11の制御の下、動作する。ラインセンサカメラ14及びプロファイルカメラ15は、LED照明16により照らされた状態のレール103を含む撮影範囲を上方から撮影する。ラインセンサカメラ14は8ビットの濃淡画像を生成する。このとき、ラインセンサカメラ14は複数の画素からなる画素列単位で撮影し、複数の画素列を合成して1枚の濃淡画像を生成する。また、プロファイルカメラ15は8ビットの距離画像を生成する。濃淡画像は画素毎に「0:黒」~「255:白」の256階調の画素値を有する。距離画像は画素毎に「0:黒(プロファイルカメラ15から遠い)」~「255:白(プロファイルカメラ15から近い)」の階調の画素値を有する。なお、本実施形態では、濃淡画像及び距離画像の画像サイズは「1024画素(横)×5001画素(縦)」とし、また、一画素は、横が約0.7mm、縦が約1.0mmに相当する。
【0028】
[3.画像処理装置30の構成]
次に、図7を用いて、画像処理装置30の構成について説明する。画像処理装置30は、制御部31と、記憶部32と、通信部33と、表示部34と、操作部35とを備えている。
【0029】
制御部31は、CPU、ROM、RAM等により構成されている。そして、CPUが、ROMや記憶部32に記憶された各種プログラムを読み出し実行することにより各種機能を実現する。なお、制御部31又はCPUは本発明の「コンピュータ」の一例である。
【0030】
記憶部32は、例えば、SSD等により構成されており、オペレーティングシステムや各種プログラムを記憶する。なお、各種プログラムは、例えば、他のサーバ装置等からネットワークを介して取得されるようにしても良いし、記録媒体に記録されてドライブ装置を介して読み込まれるようにしても良い。また、記憶部32は、レール撮影装置10から受信した距離画像、濃淡画像及び画像リストを記憶する。
【0031】
通信部33は、レール撮影装置10との間で無線又は有線による通信を行う。通信部33は、例えば、制御部31の制御の下、距離画像、濃淡画像及び画像リストをレール撮影装置10から受信する。なお、距離画像、濃淡画像及び画像リストは、これらの元データをレール締結装置104から受信して、元データを元に画像処理装置30が生成することとしてもよい。
【0032】
表示部34は、例えば、液晶ディスプレイ等により構成されており、文字や画像等の情報を表示する。操作部35は、例えば、キーボード、マウス等により構成されており、オペレータからの操作指示を受け付け、その指示内容を指示信号として制御部31に出力する。
【0033】
[3.画像処理装置30の動作]
次に、画像処理装置30の動作例について説明する。
【0034】
[3.1.絶対画素値による判定処理]
まず、図8を用いて、画像処理装置30の制御部31による「絶対画素値による判定処理」について説明する。制御部31は、距離画像に対して、基準高さ位置Hに相当する画素値(ここでは、「75」とする)を基準に二値化処理を行い、マスク画像(二値化画像)を生成する。すなわち、制御部31は、距離画像に基づいて、画素値が「0」~「75」の画素については画素値を「1」に変換し、画素値が「76」~「255」の画素については画素値を「0」に変換したマスク画像を生成する。
【0035】
また、制御部31は、濃淡画像とマスク画像を合成して判定用画像を生成する。このとき、制御部31は、濃淡画像とマスク画像のそれぞれ対応する画素の画素値同士を乗算して判定用画像の対応する画素値とする。これにより、判定用画像における、基準高さ位置Hより上方の高さに対応する画素の画素値が「0」となる。
【0036】
そして、制御部31は、判定用画像において画素値(絶対画素値)が「240」を超える画素数が「5」画素以上あるか否かを判定し、「NO」である場合にはその判定用画像の撮影範囲に水Wが存在しないと判定する。一方、「YES」である場合にはその判定用画像の撮影範囲に水Wが存在すると判定してもよい。
【0037】
なお、「絶対画素値による判定処理」において、画素値の閾値としての「240」や、画素数の閾値としての「5」は、これらの数値に限られず、水Wを検知する目的を達成することが可能な範囲で任意に設定することができる。
【0038】
[3.2.相対画素値による判定処理]
次に、画像処理装置30の制御部31による「相対画素値による判定処理」について説明する。制御部31は、「絶対画素値による判定処理」において判定用画像に画素値(絶対画素値)が「240」を超える画素数が5画素以上あると判定した場合には、更に、「相対画素値による判定処理」を行うこととしてもよい。これは、誤検知をさらに減らすための処理であり、具体的には、濃淡画像において、水Wのある領域では、光が反射した部分は白く映り、光が反射しない部分は黒く映るため、白い部分と黒い部分との濃淡の差が大きいという特徴や、濃淡画像で白く写りやすい鉄粉や水の乾いた跡などは周囲が黒く写っていない(白が広がっている)という特徴を考慮する。すなわち、周辺画素の画素値との変位量が大きな値を示す領域は水Wの有る領域、変位量が小さな値を示す領域は水Wの無い領域(鉄粉や水の乾いた跡などの領域)と判定する。そこで、制御部31は、濃淡画像の画素毎に、所定の画素数だけ離れた画素の画素値の差分を画素値(相対画素値)とする差分画像を生成して判定に用いる。
【0039】
そして、制御部31は、差分画像において画素値(相対画素値)が「230」を超える画素数が「40」画素以上あるか否かを判定し、「NO」である場合にはその差分画像の撮影範囲に水Wが存在しないと判定する一方、「YES」である場合にその差分画像の撮影範囲に水Wが存在すると判定する。このように、上述した「絶対画素値による判定処理」と、「相対画素値による判定処理」の双方の処理を行う場合には、判定用画像において画素値(絶対画素値)が「240」を超える画素数が「5」画素以上あり、且つ、差分画像において画素値(相対画素値)が「230」を超える画素数が「40」画素以上ある場合に水Wが存在すると判定する。
【0040】
なお、「相対画素値による判定処理」において、画素値の閾値としての「230」や、画素数の閾値としての「40」は、これらの数値に限られず、水Wを検知する目的を達成することが可能な範囲で任意に設定することができる。
【0041】
[4.画像処理装置30の処理フロー]
次に、図9図12を用いて、画像処理装置30の制御部31による滞水判定処理について説明する。
【0042】
まず、制御部31は、記憶部32に記憶されている画像リストを取得する(ステップS1)。図10に示すように、画像リストには、レール撮影装置10が車両Tの走行中に連続して撮影した複数の濃淡画像及び距離画像のファイル名が画像番号毎に記述されている。画像番号が同一の濃淡画像及び距離画像は同一の撮影範囲となるように、濃淡画像及び距離画像は生成されている。例えば、図10の例ではファイル名「g00001」の濃淡画像と、ファイル名「k00001」の距離画像は同一の撮影範囲を撮影した画像である。なお、距離画像及び濃淡画像は、滞水判定処理の事前処理で「1024画素×5001画素」のサイズに調整しておくこととする。
【0043】
次に、制御部31は、画像番号に対応する変数nに「1」をセットする(ステップS2)。
【0044】
次に、制御部31は、画像リストを参照し、変数nに対応する濃淡画像を取得する(ステップS3)。例えば、変数nの値が「1」であれば、ファイル名「g00001」の濃淡画像を取得する。
【0045】
次に、制御部31は、画像リストを参照し、変数nに対応する距離画像を取得する(ステップS4)。例えば、変数nの値が「1」であれば、ファイル名「k00001」の距離画像を取得する。
【0046】
次に、制御部31は、判定用画像生成処理を行う(ステップS5)。
【0047】
ここで、図11を用いて制御部31による判定用画像生成処理について説明する。
【0048】
制御部31は、ステップS4の処理で取得した距離画像を基準高さ位置Hに対応する値に基づいて二値化してマスク画像(図8参照)を生成する(ステップS31)。
【0049】
次に、制御部31は、ステップS3の処理で取得した濃淡画像についてエラーがある場合にエラー処理を行う(ステップS32)。制御部31は、例えば、濃淡画像の横方向(行方向)に黒線が入るエラーが発生している場合に次のエラー処理を行う。まず、濃淡画像の横方向の1024画素の数値の平均値(=各行ごとの平均値)を各行(5001行)について算出する。次いで、算出した5001個の平均値のうち、値が「0」の行についてはすべて黒と判定できるため、該当行を削除する。よって、当該エラー処理を行った画像については、その後の処理(例えば、ステップS7の処理やステップS10の処理の画素数の計数処理)において、「1024画素×5001画素」より小さいサイズの画像に対して処理を行うことになる。
【0050】
次に、制御部31は、ステップS3の処理で取得した濃淡画像(ステップS32の処理でエラー処理を行った場合にはエラー処理後の濃淡画像)と、ステップS31の処理で生成したマスク画像を合成して、判定用画像(図8参照)を生成し(ステップS33)、図9のステップS6の処理に移行する。
【0051】
次に、制御部31は、判定用画像生成処理(ステップS5)で生成した判定用画像について、画素値(絶対画素値)が「240」以上の画素数を計数する(ステップS6)。
【0052】
次いで、制御部31は、ステップS6の処理で計数した画素数が「5」画素以上であるか否かを判定する(ステップS7)。このとき、制御部31は、ステップS6の処理で計数した画素数が「5」画素以上ではないと判定した場合には(ステップS7:NO)、変数nに対応する画像番号(画像)について「滞水無し」と判定し(ステップS12)、ステップS13の処理に移行する。なお、制御部31は、「滞水無し」と判定した場合には判定結果を変数nに対応する画像番号と対応付けて記憶部32に記憶させる。一方、制御部31は、ステップS6の処理で計数した画素数が「5」画素以上であると判定した場合には(ステップS7:YES)、差分画像生成処理を行う(ステップS8)。
【0053】
ここで、図12を用いて制御部31による差分画像生成処理について説明する。
【0054】
制御部31は、判定用画像生成処理(ステップS5)で生成した判定用画像の画素値を高輝度値化する(ステップS51)。例えば、制御部31は、判定用画像の各画素値を2.5倍する。この処理は、「水(光反射以外)の黒さ(=A)」と「コンクリート道床等の黒さ(=B)」とをより区別するために行う。高輝度値化前の元画像ではAとBの画素値が比較的近い値(例えば、A:5、B:20)であるため、ステップS53の処理で相対画素値(差分値)を算出しても、差が出にくい。そこで、判定用画像の画素値を高輝度値化することにより、AとBの画素値を差別化することができる(例えば、A:12.5、B:50)。これにより、例えば、白い箇所(水の光反射箇所又は鉄粉等)の画素値が「255」だった場合に、高輝度値化前の元画像では誤検知してしまうが、高輝度値化後の画像では誤検知を防ぐことができる。
【0055】
次に、制御部31は、ステップS51の処理で高輝度値化した判定用画像に基づいて、判定用画像を10画素分だけ下方にシフトさせたシフト画像を生成する(ステップS52)。なお、制御部31は、10画素分だけ下方にシフトすることにより画素値を失った上端部の10行分の画素については「0」をセットするか、又は、次の判定用画像(変数(n+1))の下端部の10行分の画素値を借りてきてセットすることとする。なお、ここでは、シフト方向を「下方」、シフト画素数を「10」としたがシフト方向及びシフト画素数はこれに限られない。シフト方向を「上方」、「左方」、「右方」としてもよいし、シフト画素数も判定用画像の画像サイズに応じて例えば「5画素」、「15画素」等にしてもよい。
【0056】
次に、制御部31は、判定用画像とシフト画像に基づいて画素毎の相対画素値(差分値)を算出し、差分画像を生成する(ステップS53)。具体的には、制御部31は、判定用画像とシフト画像の同じ位置の画素の画素値の差分(相対画素値)を算出して差分画像の該当する画素にセットする処理を各画素について行う。制御部31は、ステップS53の処理を終えると、図9のステップS9の処理に移行する。
【0057】
次に、制御部31は、差分画像生成処理(ステップS8)で生成した差分画像について、画素値(相対画素値)が「230」以上の画素数を計数する(ステップS9)。
【0058】
次いで、制御部31は、ステップS9の処理で計数した画素数が「40」画素以上であるか否かを判定する(ステップS10)。このとき、制御部31は、ステップS9の処理で計数した画素数が「40」画素以上ではないと判定した場合には(ステップS10:NO)、変数nに対応する画像番号(画像)について「滞水無し」と判定し(ステップS12)、ステップS13の処理に移行する。なお、制御部31は、「滞水無し」と判定した場合には判定結果を変数nに対応する画像番号と対応付けて記憶部32に記憶させる。一方、制御部31は、ステップS9の処理で計数した画素数が「40」画素以上であると判定した場合には(ステップS10:YES)、変数nに対応する画像番号(画像)について「滞水有り」と判定し(ステップS11)、ステップS13の処理に移行する。なお、制御部31は、「滞水有り」と判定した場合には判定結果を変数nに対応する画像番号と対応付けて記憶部32に記憶させる。
【0059】
制御部31は、ステップS11の処理又はステップS12の処理を終えると、次いで、変数nがN(滞水判定処理の処理対象である濃淡画像(又は距離画像)の枚数を示す値。図10の画像リストの例では、「4000」)と同じ値であるか否かを判定する(ステップS13)。このとき、制御部31は、変数nがNと同じ値ではないと判定した場合、すなわち、滞水判定処理の処理対象である画像が残っていると判定した場合には(ステップS13:NO)、変数nに「1」を加算し(ステップS14)、ステップS3の処理に移行する。一方、制御部31は、変数nがNと同じ値であると判定した場合、すなわち、滞水判定処理の処理対象である画像が残っていないと判定した場合には(ステップS13:YES)、滞水判定処理を終了する。
【0060】
[5.滞水判定処理による検知精度の評価]
次に、図13を用いて、滞水判定処理による検知精度の評価について説明する。評価のためにまず、レール撮影装置10により地下鉄のレール近辺を21,802mにわたって撮影して得た濃淡画像及び距離画像(8,640枚(n=8,640))に対して、画像処理装置30により滞水判定処理を行った。その結果、画像処理装置30は864(480+384)枚について「滞水有り」と判定し、7776(71+7705)枚について「滞水無し」と判定した。
【0061】
一方で、同じ区間を人が目視により滞水の有無を確認し、滞水判定処理の判定結果を検証した。その結果、滞水判定処理で「滞水有り」と判定された864枚のうち、480枚について実際に滞水が確認され、384枚については滞水が確認されなかった。また、滞水判定処理で「滞水無し」と判定された7776枚のうち、71枚について滞水が確認され、7705枚については滞水が確認されなかった。
【0062】
上記結果に基づいて、評価指標である「適合率」、「再現率」、「F値」、「正答率」を算出したところ以下の通りとなった。
(1)適合率(「滞水有り」判定が正解した割合)=480/(480+384)=約56%
(2)再現率(実際の「滞水有り」の発見割合)=480/(480+71)=約87%
(3)F値(適合率と再現率の調和平均)=約0.68
(4)正答率(全データ中の正解した割合)
=(480+7705)/(480+71+384+7705)=約95%
【0063】
以上説明したように、本実施形態の画像処理装置30(「情報処理装置」の一例)は、制御部31(「画像取得手段」、「判定手段」の一例)が、レール103を含む撮影範囲に対応して画素毎に濃淡の度合いを示す画素値(「濃淡値」の一例)を有する濃淡画像と、撮影範囲に対応して画素毎に高さの度合いを示す画素値(「高さ値」の一例)を有する距離画像(「高さ画像」の一例)と、を取得し、距離画像が有する画素値に基づいて選別される、濃淡画像における基準高さ位置H(「所定の高さ」の一例)より低い高さに対応する画素の画素値に基づいて、撮影範囲内に水Wがあるか否かを判定する。
【0064】
また、本実施形態の画像処理装置30は、制御部31(「判定用画像生成手段」の一例)が、距離画像が有する画素値に基づいて、濃淡画像における基準高さ位置H(「所定の高さ」の一例)より低い高さに対応する画素の画素値を選別した判定用画像を生成し、判定用画像における画素値に基づいて、撮影範囲内に水Wがあるか否かを判定する。
【0065】
したがって、本実施形態の画像処理装置30によれば、濃淡画像における基準高さ位置Hより低い高さに対応する画素の画素値に基づいて水Wがあるか否かを判定することにより、金属製部品等が存在する高さより低い部分に限定して(すなわち、金属製部品等を除外して)濃淡画像の画素値による水の有無判定を行うため、金属製部品等を水と誤検知することを少なくできる。
【0066】
さらに、本実施形態の制御部31は、判定用画像における画素値が「240」(「第1閾値」の一例)以上である画素の数が「5」(「第2閾値」の一例)以上である場合に、撮影範囲内に水Wがあると判定することができる。
【0067】
さらにまた、本実施形態の制御部31(「差分画像生成手段」の一例)は、判定用画像における各画素について、当該画素の画素値と「10」画素(「所定の画素数」の一例)だけ離れた画素の画素値との差分値を算出して、当該差分値を画素毎に有する差分画像を生成し、判定用画像における画素値が「240」以上である画素の数が「5」以上であり、且つ、差分画像における画素値が「230」(「第3閾値」の一例)以上である画素の数が「40」(「第4閾値」の一例)以上である場合に、撮影範囲内に水Wがあると判定することができる。これにより、濃淡画像において、水Wのある領域では白い部分と黒い部分との濃淡の差が大きいという特徴や、濃淡画像で白く写りやすい鉄粉や水の乾いた跡などは周囲が黒く写っていない(白が広がっている)という特徴を判定ロジックに反映させることができ、水W以外のものの誤検知を更に少なくできる。
【0068】
さらにまた、本実施形態の制御部31(「マスク画像生成手段」の一例)は、基準高さ位置Hに基づいて距離画像を二値化したマスク画像を生成し、濃淡画像に対してマスク画像を合成して判定用画像を生成する。これにより容易に判定用画像を生成することができる。
【0069】
[6.変形例]
[6.1.変形例1]
濃淡画像に対して合成するマスク画像の生成に関して、距離画像と濃淡画像で撮影範囲(特に撮影幅)が一致していない場合には、図11のステップS33の処理の前までに以下に説明する処理を行ってもよい。すなわち、制御部31は、必要に応じてステップS31の処理で生成したマスク画像のサイズ調整を行う。制御部31は、例えば、マスク画像に対して画像収縮処理を2回行った後に、マスク画像の黒部分(マスク範囲)を上下「10」画素、左右「30」画素拡大する。これにより、画像左右方向にマスク範囲を拡大することでマスクしきれない部分を減らすことができる。
【0070】
[6.2.変形例2]
レール撮影装置10がGPS受信機等により濃淡画像と距離画像を撮影した位置を示す位置情報を取得し、画像リストの画像番号と紐付けて位置情報を記述しておくこととしてもよい。これにより、滞水判定処理により「滞水有り」と判定された画像番号と紐付く位置情報から、「滞水有り」と判定された位置を容易に特定することができ、滞水への対応を迅速にとることができる。
【0071】
[6.3.変形例3]
上記実施形態では、図5に示したように、レール103やレール締結装置104等の金属製部品より下方の部分を対象に水Wがあるか否かを判定したが、これに代えて、金属製部品等の光を反射しやすい物より上方の部分を対象に水Wがあるか否かを判定したい場合に滞水判定処理を応用することができる。具体的には、制御部31は、撮影範囲に対応して画素毎に濃淡の度合いを示す画素値を有する濃淡画像と、撮影範囲に対応して画素毎に高さの度合いを示す画素値を有する距離画像と、を取得し、距離画像が有する画素値に基づいて選別される、濃淡画像における基準高さ位置Hより高い高さに対応する画素の濃淡値に基づいて、撮影範囲内に水があるか否かを判定する。
【0072】
なお、制御部31は、例えば、図11のステップS31の処理で、距離画像を二値化してマスク画像を生成する際に、基準高さ位置Hより高い位置を示す画素の画素値を「0」に変換し、基準高さ位置Hより低い位置を示す画素の画素値を「1」に変換してマスク画像を生成することとしてもよい。これにより、濃淡画像とマスク画像を合成して判定用画像を生成する際に、基準高さ位置Hより低い位置に対応する画素を判定対象から除外することができる。つまり、金属製部品等が存在する高さより高い部分に限定して(すなわち、金属製部品を除外して)濃淡値による水の有無判定を行うことができる。
【0073】
[6.4.変形例4]
上記実施形態では、レール103を含む撮影範囲に水Wが有るか否かを判定することとしたが、撮影範囲にレール103が含まれない場合にも本発明を適用してもよい。
【0074】
[6.5.変形例5]
滞水判定処理(図9参照)のステップS8~ステップS10の処理(「相対画素値による判定処理」)を飛ばして、ステップS7で「YES」と判定した場合にステップS11の処理に移行して「滞水有り」と判定することとしてもよい。すなわち、「絶対画素値による判定処理」のみで滞水の有無を判定することとしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 :レール撮影装置
11 :制御部
12 :記憶部
13 :通信部
14 :ラインセンサカメラ
15 :プロファイルカメラ
16 :LED照明
30 :画像処理装置
31 :制御部
32 :記憶部
33 :通信部
34 :表示部
35 :操作部
101 :コンクリート道床
102 :枕木
103 :レール
104 :レール締結装置
105 :ボルト
201 :点線
202 :点線
203 :点線
H :高さ位置
S :画像処理システム
T :車両
W :水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13