(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040772
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ピックアップ装置、ピックアップ装置の制御方法およびピックアップ装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/67 20060101AFI20240318BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H01L21/68 E
H01L21/78 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145345
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】塙 康弘
【テーマコード(参考)】
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5F063AA33
5F063DD86
5F063EE11
5F131AA04
5F131BA54
5F131CA37
5F131EB32
5F131EB72
5F131EC33
5F131EC74
5F131EC77
(57)【要約】
【課題】より構造が簡単で、ダイシングテープからの剥離の際に、チップ部品に加わる曲げモーメントが低減されるピックアップ装置等を提供する。
【解決手段】ピックアップ装置は、ダイシングテープの上に貼り付けられているチップ部品を前記ダイシングテープからピックアップするためのピックアップ装置であって、外周部から中心部に向かってバネ定数が小さくなる錐体状のバネと、前記ダイシングテープの下面を介して前記チップ部品を前記錐体状のバネの中心部により押圧するように、前記錐体状のバネを前記チップ部品の主面の法線方向に移動させるバネ移動手段と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングテープの上に貼り付けられているチップ部品を前記ダイシングテープからピックアップするためのピックアップ装置であって、
外周部から中心部に向かってバネ定数が小さくなる錐体状のバネと、
前記ダイシングテープの下面を介して前記チップ部品を前記錐体状のバネの中心部により押圧するように、前記錐体状のバネを前記チップ部品の主面の法線の方向に移動させるバネ移動手段と、
を有することを特徴とするピックアップ装置。
【請求項2】
前記錐体状のバネを構成するバネ線の断面の外径は、
前記外周部から前記中心部に向かって小さくなる
ことを特徴とする請求項1に記載のピックアップ装置。
【請求項3】
前記バネ線の断面形状が、
円状である、
ことを特徴とする請求項2に記載のピックアップ装置。
【請求項4】
前記バネ線の断面形状が、
矩形状である、
ことを特徴とする請求項2に記載のピックアップ装置。
【請求項5】
前記錐体状のバネの全体の形状が、
円錐状または楕円錐状または多角錐状である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のピックアップ装置。
【請求項6】
前記チップ部品の上面と対向する位置に設けられ、前記チップ部品を吸着するコレットと、
前記コレットを少なくとも前記法線の方向に移動させるコレット駆動手段と、
を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のピックアップ装置。
【請求項7】
前記チップ部品の上面と対向する位置に設けられ、前記チップ部品を吸着するコレットと、
前記コレットを少なくとも前記法線の方向に移動させるコレット駆動手段と、
を有することを特徴とする請求項5に記載のピックアップ装置。
【請求項8】
ダイシングテープの上に貼り付けられているチップ部品を前記ダイシングテープからピックアップするためのピックアップ装置の制御方法であって、
前記ピックアップ装置は、
外周部から中心部に向かってバネ定数が小さくなる錐体状のバネ、
を備え、
前記ピックアップ装置が、
前記ダイシングテープの下面を介して前記チップ部品を前記錐体状のバネの中心部により押圧するように、前記錐体状のバネを前記チップ部品の主面の法線の方向に移動させる、
ことを特徴とするピックアップ装置の制御方法。
【請求項9】
前記ピックアップ装置は、
前記チップ部品の上面と対向する位置に設けられ、前記チップ部品を吸着するコレットと、
前記コレットを少なくとも前記法線の方向に移動させるコレット駆動手段と、
を備え、
前記ピックアップ装置が、
前記コレットを前記チップ部品の上面に接触させ、
前記コレットに前記錐体状のバネを圧縮させる力を印加し、
前記錐体状のバネの復元力が前記チップ部品の下面に加わるように、前記コレットを前記錐体状のバネから離れる方向に移動させる、
ことを特徴とする請求項8に記載のピックアップ装置の制御方法。
【請求項10】
ダイシングテープの上に貼り付けられているチップ部品を前記ダイシングテープからピックアップするためのピックアップ装置の制御プログラムであって、
前記ピックアップ装置は、
外周部から中心部に向かってバネ定数が小さくなる錐体状のバネ、
を備え、
前記ピックアップ装置の制御プログラムは、
前記ダイシングテープの下面を介して前記チップ部品を前記錐体状のバネの中心部により押圧するように、前記錐体状のバネを前記チップ部品の主面の法線の方向に移動させる処理を、
前記ピックアップ装置に実行させることを特徴とするピックアップ装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピックアップ装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等のチップ部品の製造では、一般的に、1枚のウェハに複数のチップ部品が形成される。そして、ダイシング等の分割手法を用いて、ウェハが個々のチップ部品に分割される。一般的なダイシングでは、ダイシングテープが用いられる。ダイシングテープは片面に粘着性を有するフィルムである。ダイシングテープは、ダイシングシート、ウェハシート、粘着シートなどとも呼ばれる。
【0003】
ダイシングを行う際に、まずウェハの裏面がダイシングテープに貼付される。次にダイシングによってウェハが個々のチップ部品に分割される。ダイシングが終わると、次に、ダイシングテープを引き延ばす加工であるエキスパンドが施され、チップ部品とチップ部品の間に隙間が形成される。次に、紫外線照射等によって、ダイシングテープの粘着性が低下される。次にコレットと呼ばれる吸着手段を備えたピックアップ装置によって、チップ部品の表面が吸着され、チップ部品がピックアップされる。この際、一般的な方法では、突き上げピンによって、ダイシングテープの裏面が突き上げられる。この突き上げによって、チップ部品のダイシングテープからの剥離が促進される。
【0004】
上記のピックアップ装置では、チップ部品の中央を1本の突き上げピンで突き上げるのが最も簡単な構成である。この構成で突き上げを行うと、チップ部品の端部から剥離が始まる。この際、突き上げピンの先端部が突き当たっている場所を支点とし、チップ部品の端部を作用点とし、作用点にダイシングテープの粘着力(剥離力)が作用する曲げモーメントが発生する。チップ部品のサイズが大きくなると、支点から、作用点であるチップ部品の端部までの距離が長くなる。これに伴って、チップ部品に加わる曲げモーメントが大きくなる。この曲げモーメントによりチップ部品に加わる応力がチップ部品の破壊応力を超えると、チップ部品に破損が生じる。このため、チップ部品のサイズが大きくなると、チップ部品が破損するリスクが増大する。
【0005】
そこで、チップ部品に加わる曲げモーメントを低減する方法が特許文献1で提案されている。例えば、特許文献1には、チップ部品(チップ)の外周部から剥離を行うピックアップ方法および装置の発明が記載されている。特許文献1のピックアップ装置は、径の異なる複数の筒体(第1吸引筒体、第2吸引筒体、第1突き上げ筒体、第2突き上げ筒体)と複数の突き上げピンを備えている。
【0006】
ピックアップにおいては、まず、最も外側の筒体(第1吸引筒体)の吸引孔を介してダイシングテープ(貼付シート、ダイシングシート)を吸引することにより、ダイシングテープが第1吸引筒体の上端部に吸着される(引用文献1の
図3(a))。
【0007】
次に、第1吸引筒体の内側に配置されている第1突き上げ筒体、第2吸引筒体、第2突き上げ筒体および突き上げピンを同じ高さまで上昇させて、ダイシングテープを介してチップ部品を上方に突き上げる(引用文献1の
図3(b))。これにより、チップ部品が貼り付けられているダイシングテープのうち、第1突き上げ筒体の外周側でチップ部品の下面の外周縁からチップ部品の内側に向かってわずかに剥離される。この動作では、第1突き上げ筒体の突き当り部分が支点となり、第1吸引筒体の上のチップ部品端部が剥離ポイント(作用点)になる。
【0008】
次に、第1吸着筒体と第1突き上げ筒体の高さを維持したまま、第1突き上げ筒体の内側に位置する第2突き上げ筒体と第2吸引筒体と突き上げピンをピックアップ装置が同じ高さだけ上昇させる。そして、ダイシングテープを介して、ピックアップ装置がチップ部品をさらに上方に突き上げる(引用文献1の
図3(c))。これにより、第2突き上げ筒体の外周側で、先の貼付面外周縁からチップ部品の内側に向って、さらにダイシングテープが剥離される。この動作では、第2突き上げ筒体の突き当り部分が支点となり、第1突き上げ筒体の上のチップ部品端部が剥離ポイント(作用点)になる。
【0009】
次に、第1吸着筒体と第1突き上げ筒体と第2突き上げ筒体の高さを維持したまま、第2突き上げ筒体よりも内側に位置する第2吸着筒体と突き上げピンを同じ高さだけさらに上昇させ、チップ部品をさらに突き上げる(引用文献1の
図3(d))。これにより、第2吸着筒体の外周側で、先の貼付面外周縁からチップ1の内側に向って、さらにダイシングテープが剥離される。この動作では、第2突き上げ筒体の突き当り部分が支点となり、第1突き上げ筒体の上のチップ部品端部が剥離ポイント(作用点)になる。
【0010】
次に、第1吸着筒体、第1突き上げ筒体、第2突き上げ筒体および第2吸着筒体の高さが維持される。そして、この状態のまま、突き上げピンがさらに上昇される。これにより、チップ部品がさらに突き上げられる。その結果、突き上げピンの先端上にチップ部品が支持される(引用文献1の
図3(e))。この時、第2吸着筒体の吸引溝からの吸引により第2吸着筒体に接するダイシングテープが第2吸着筒体に吸着されて固定される。こうして、突き上げピンにより、ダイシングテープからチップ部品がより効果的に剥離される。この動作では、突き上げピンの突き当り部分が支点となり、第2突き上げ筒体の上のチップ部品端部が剥離ポイント(作用点)になる。
【0011】
以上の各工程において、支点から作用点までの距離が、チップ部品の中心を1本の突き上げピンの突上げる構成と比較して、短くなる。このため、チップ部品の中心を1本の突き上げピンの突上げる構成に比べて、チップ部品に作用する曲げモーメントが大幅に低減される。そして、特許文献1に記載の技術では、剥離の進行に応じて、順次、内側の筒体や突き上げピンが突き上げられる。こうして、ダイシングテープがチップの外周縁から順次剥離され、ダイシングテープとチップ部品との間の貼付面積が徐々に減少される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1のピックアップ装置では、複数の筒体や突き上げピンを独立して動かすために、複数のアクチュエータが複数の筒体や突き上げピンごとに設けられていた。このため構造が複雑になるという問題があった。
【0014】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、より構造が簡単で、ダイシングテープからの剥離の際に、チップ部品に加わる曲げモーメントが低減されるピックアップ装置等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明のピックアップ装置は、ダイシングテープの上に貼り付けられているチップ部品を前記ダイシングテープからピックアップするためのピックアップ装置であって、外周部から中心部に向かってバネ定数が小さくなる錐体状のバネと、前記ダイシングテープの下面を介して前記チップ部品を前記錐体状のバネの中心部により押圧するように、前記錐体状のバネを前記チップ部品の主面の法線方向に移動させるバネ移動手段と、を有する。
【0016】
また、本発明のピックアップ装置の制御方法は、ダイシングテープの上に貼り付けられているチップ部品を前記ダイシングテープからピックアップするためのピックアップ装置の制御方法であって、前記ピックアップ装置は、外周部から中心部に向かってバネ定数が小さくなる錐体状のバネ、を備え、前記ピックアップ装置が、前記ダイシングテープの下面を介して前記チップ部品を前記錐体状のバネの中心部により押圧するように、前記錐体状のバネを前記チップ部品の主面の法線の方向に移動させる。
【0017】
また、本発明のピックアップ装置の制御プログラムは、ダイシングテープの上に貼り付けられているチップ部品を前記ダイシングテープからピックアップするためのピックアップ装置の制御プログラムであって、前記ピックアップ装置は、外周部から中心部に向かってバネ定数が小さくなる錐体状のバネ、を備え、前記ピックアップ装置の制御プログラムは、前記ダイシングテープの下面を介して前記チップ部品を前記錐体状のバネの中心部により押圧するように、前記錐体状のバネを前記チップ部品の主面の法線の方向に移動させる処理を、前記ピックアップ装置に実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果は、より構造が簡単で、ダイシングテープからの剥離の際に、チップ部品に加わる曲げモーメントが低減されるピックアップ装置等を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態のピックアップ装置を示す側面図である。
【
図2】第1の実施形態のピックアップ装置の第1の動作状態を示す側面図である。
【
図3】第1の実施形態のピックアップ装置の第2の動作状態を示す側面図である。
【
図4】第1の実施形態のピックアップ装置の第3の動作状態を示す側面図である。
【
図5】第1の実施形態のピックアップ装置の第4の動作状態を示す側面図である。
【
図6】第1の実施形態のピックアップ装置の第5の動作状態を示す側面図である。
【
図7】第1の実施形態のピックアップ装置の第6の動作状態を示す側面図である。
【
図8】第2の実施形態のピックアップ装置を示す側面図である。
【
図9】第2の実施形態のピックアップ装置の第1の動作状態を示す側面図である。
【
図10】第2の実施形態のピックアップ装置の第2の動作状態を示す側面図である。
【
図11】第2の実施形態のピックアップ装置の第3の動作状態を示す側面図である。
【
図12】第2の実施形態の錐体状のバネの製造方法の一例を示す平面図である。
【
図13】第2の実施形態の錐体状のバネの第1の変形例を示す平面図である。
【
図14】第2の実施形態の錐体状のバネの第2の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお各図面の同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のピックアップ装置を示す側面図である。ピックアップ装置100は、ダイシングテープ200の上に貼り付けられているチップ部品300をピックアップするための装置である。ピックアップ装置100は、錐体状のバネ10と、バネ移動手段20と、を有する。
【0022】
錐体状のバネ10は、錐体状の鶴巻バネである。錐体状のバネ10は、根元部(
図1の紙面の下側)から先端部(
図1の紙面の上側)に向けて、徐々に外径が小さくなるように形成されている。錐体状のバネ10の先端部は、ダイシングテープ200の裏面に当接される。錐体状のバネ10の根元部は、バネ移動手段20に取り付けられている。錐体状のバネ10は、後述の吸着ブロック30の内部に収容されている。錐体状のバネ10は、外周部から中心部に向かってバネ定数が小さくなるように形成されている。錐体状のバネ10においては、例えば、外周部から中心部に向かって断面の外径が小さくなる。これにより、上記のバネ定数が実現される。
【0023】
例えば、線径がテーパー状の線材を螺旋状に巻くことによって、錐体状のバネ10が形成される。ここで、テーパー状とは線径が大から小へ徐々に変化することである。線材の断面の形状は、例えば、円状である。また、錐体状のバネ10の全体の形状は、線材の巻き方によって決定される。錐体状のバネ10の全体の形状は、例えば、円錐、楕円錐、多角錐とされる。
【0024】
また、例えば、板状のバネ鋼を打ち抜くことによっても、錐体状のバネ10が形成され得る。この場合、まず、外周部から中心に向かって線幅が減少するような螺旋の形状にバネ鋼が打ち抜かれる。そして、全体が錐体を形成するように、打ち抜いたバネ鋼が変形される。この際、錐体状のバネ10の線材の断面は矩形状になる。なお、打ち抜いた線材の端部が面取りされても良い。この場合、線材の断面は、矩形が面取りされた形になる。
【0025】
バネ移動手段20は、後述の吸着ブロック30に、チップ部品300の主面の法線nの方向に移動可能に取り付けられている。また、バネ移動手段20は、錐体状のバネ10をチップ部品300の主面の法線nの方向に移動させる。この際、錐体状のバネ10の中心がダイシングテープ200の下面に近づくように、バネ移動手段20の移動が行われる。バネ移動手段20が錐体状のバネ10をダイシングテープ200に近づく方向に移動させると、ダイシングテープ200の下面を介して、錐体状のバネ10がチップ部品300を押圧する。なお、図示はしていないが、電動モータなどによって、バネ移動手段20が、チップ部品300の主面の法線nの方向に移動される。つまり、バネ移動手段20によって、
図1の上下方向に、錐体状のバネ10が移動される。
【0026】
吸着ブロック30は、錐体状のバネ10と、バネ移動手段20の一部とを収容する。吸着ブロック30は、バネ移動手段20がチップ部品300の主面の法線nの方向に移動できるように、バネ移動手段20を保持する。また、吸着ブロック30の上面には、チップ部品300が貼り付けられたダイシングテープ200が、載置される。吸着ブロック30は、ダイシングテープ200の裏面を吸着する。吸着ブロック30において、ピックアップの対象となるチップ部品300に対応する部分は、開口部(不図示)となっている。この開口部を介して空気を吸引することで、吸着ブロック30は、ダイシングテープ200の裏面を吸着する。つまり、ピックアップを行う領域では、ダイシングテープ200が吸着されない。
【0027】
次に、ピックアップ装置100の動作について説明する。
図2は、第1の実施形態のピックアップ装置100の第1の動作状態を示す側面図である。まず、
図1の状態から、ダイシングテープ200の下面に近づくように、バネ移動手段20が、法線nの方向に移動される。これにより、錐体状のバネ10が同じ方向に移動される。そして、錐体状のバネ10の中心部が、ダイシングテープ200の下面に当接する。
図2は、この状態を表している。
【0028】
次に、錐体状のバネ10が圧縮されるように、さらにバネ移動手段20がダイシングテープ200の下面に近づけられる。錐体状のバネ10は、外周部から中心部に向かってバネ定数が小さくなっている。このため、上記の動作では、錐体状のバネ10は、中心部から圧縮が始まり、圧縮が錐体状のバネ10の外周部に向かって徐々に広がっていく。
【0029】
図3は、第1の実施形態のピックアップ装置100の第2の動作状態を示す側面図である。
図3では、ダイシングテープ200の下面とバネ移動手段との距離が、錐体状のバネ10の外周部の線径と同じになっている。つまり、錐体状のバネ10の全体が圧縮されている。
【0030】
図4は、第1の実施形態のピックアップ装置100の第3の動作状態を示す側面図である。錐体状のバネ10の復元力によって、チップ部品300が法線nの方向に押し上げられている。この際、錐体状のバネ10の外周部が復元し、錐体状のバネ10の、それより中央側の部分は圧縮されたままである。本実施形態では、錐体状のバネ10のバネ定数が、外周部で大きく、中央に行くにしたがって小さくなっている。これが、上記の状態となる理由である。この動作によって、チップ部品300の外周部がダイシングテープ200から剥離される。
【0031】
図5は、第1の実施形態のピックアップ装置100の第4の動作状態を示す側面図である。第4の状態では、第3の状態よりも、錐体状のバネ10の復元が、中央側に進行している。これにより、第3の状態よりも、ダイシングテープ200の剥離が、チップ部品300の中央側に進行している。
【0032】
図6は、第1の実施形態のピックアップ装置100の第5の動作状態を示す側面図である。第5の状態では、第4の状態よりも、錐体状のバネ10の復元が、中央側に進行している。これにより、第4の状態よりも、ダイシングテープ200の剥離が、チップ部品300の中央側に進行している。
【0033】
図7は、第1の実施形態のピックアップ装置100の第6の動作状態を示す側面図である。第6の状態では、第4の状態よりも、錐体状のバネ10の復元が、中央側に進行している。そして、錐体状のバネ10の全体が、外力の無い状態まで復元している。これにより、第4の状態よりも、ダイシングテープ200の剥離が、チップ部品300の中央側に進行している。この状態では、チップ部品300の大部分がダイシングテープ200から剥離されている。このため、チップ部品300が容易にピックアップされる。
【0034】
以上のような動作によって、剥離の際に、チップ部品300を折り曲げる曲げモーメントが低減される。
【0035】
以上に説明したピックアップ装置100では、特許文献1のピックアップ装置と同様に、ダイシングテープ200からの剥離において、チップ部品300に加わる曲げモーメントが低減される。そして、ピックアップ装置100は、バネ移動手段20によって錐体状のバネ10を上下動させるだけの簡単な構成となっている。つまり、複数のアクチュエータを使用して複数の突き上げ手段を制御する特許文献1のピックアップ装置100より簡単な構成で、同様な動作が実現される。
【0036】
以上、本実施形態のピックアップ装置100等について説明した。
【0037】
本実施形態のピックアップ装置100は、ダイシングテープ200の上に貼り付けられているチップ部品300をダイシングテープ200からピックアップする。ピックアップ装置100は、錐体状のバネ10と、バネ移動手段20と、を有する。錐体状のバネ10では、外周部から中心部に向かってバネ定数が小さくなる。そして、バネ移動手段20が、錐体状のバネ10をチップ部品300の主面の法線nの方向に移動させる。この際、錐体状のバネ10の中心部によって、ダイシングテープ200の下面が押圧されるように、移動が行われる。そして、ダイシングテープ200の下面を介して、チップ部品300の下面が押圧される。
【0038】
このような構成により、剥離の際に、チップ部品300を折り曲げる曲げモーメントが低減される。そして、バネ移動手段20が錐体状のバネ10を移動させるだけの簡単な構成によって、上記の剥離が実現される。
【0039】
また一態様によれば、ピックアップ装置100の錐体状のバネ10がバネ線によって構成される。そしてバネ線の断面の外径が、外周部から中心部に向かって小さくなる。この構成では、断面の外径が外周から中心に向かって小さくなるため、バネ定数が漸減する構成が実現される。
【0040】
また一態様によれば、ピックアップ装置100において、錐体状のバネ10を構成するバネ線の断面形状が、円状である。このような構成とするために、例えば、断面が円状の線材が用いられる。この線材は、線径がテーパー状である。太い方が外、細い方が中心となるように、線材をらせん状に巻くことで、錐体状のバネ10が形成される。
【0041】
また一態様によれば、ピックアップ装置100において、錐体状のバネ10を構成するバネ線の断面形状が、矩形状である。例えば、平板のバネ鋼400を打ち抜いたものが、錐体状のバネ10の原材料となる。まず、外周部から中心に向かって線幅が細くなるパターンで、平板のバネ鋼400が打ち抜かれる。そして、中心部が錐体の頂部となるように、打ち抜かれた材料を変形させることで、錐体状のバネ10が形成される。バネ鋼400が垂直に打ち抜かれれば、できたものは断面が矩形になる。この構成では、材料の角が面取りされても良い。
【0042】
また一態様によれば、ピックアップ装置100において、錐体状のバネ10の全体の形状が、円錐状または楕円錐状または多角錐状である。円錐状のバネは、円錐バネとして一般的に用いられている。しかしながら、錐体状のバネ10全体の形状は、円錐状に限られない。例えば、形状が、楕円錐状や多角錐状であっても良い。線材の巻き方や、平板の打ち抜くパターンを調整することで、このような形状が形成される。
【0043】
また、本発明のピックアップ装置の制御方法は、ピックアップ装置100を制御する。ダイシングテープ200の上にピックアップ対象のチップ部品300が貼り付けられている。ダイシングテープ200からチップ部品300がピックアップされる。ピックアップ装置100は、錐体状のバネ10を備える。錐体状のバネ10では、外周部から中心部に向かってバネ定数が小さくなる。そして、ダイシングテープ200の下面に近づくように、錐体状のバネ10が、チップ部品300の主面の法線nの方向に移動される。この際、錐体状のバネ10の中心部が、ダイシングテープ200の下面を押圧するように、移動が行われる。そして、ダイシングテープ200の下面を介して、チップ部品300の下面が押圧される。
【0044】
上記の構成では、チップ部品300の外周部からダイシングテープ200の剥離が始まる。そして、チップ部品300の中心部に向かって剥離が徐々に進行する。これは、錐体状のバネ10のバネ定数が、外周部から中心部に向かって小さくなっているためである。その結果、チップ部品300に加わる曲げモーメントが低減される。
【0045】
また、本発明のピックアップ装置の制御プログラムは、ピックアップ装置100に処理を実行させる。ダイシングテープ200の上にピックアップ対象のチップ部品300が貼り付けられている。ダイシングテープ200からチップ部品300がピックアップされる。ピックアップ装置100は、錐体状のバネ10を備える。錐体状のバネ10では、外周部から中心部に向かってバネ定数が小さくなる。そして、制御プログラムは、錐体状のバネ10を移動する処理をピックアップ装置100に実行させる。この処理では、錐体状のバネ10が、チップ部品300の主面の法線nの方向に移動される。この移動は、錐体状のバネ10が、ダイシングテープ200の下面に近づく移動である。この際、錐体状のバネ10の中心部が、ダイシングテープ200の下面を押圧するように、移動が行われる。そして、ダイシングテープ200の下面を介して、チップ部品300の下面が押圧される。
【0046】
上記の構成では、チップ部品300の外周部からダイシングテープ200の剥離が始まる。そして、チップ部品300の中心部に向かって剥離が徐々に進行する。これは、錐体状のバネ10のバネ定数が、外周部から中心部に向かって小さくなっているためである。その結果、チップ部品300に加わる曲げモーメントが低減される。
【0047】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態のピックアップ装置101を示す側面図である。ピックアップ装置101は、コレット90と、コレット駆動手段91とを備えている。
【0048】
コレット90は、チップ部品300の上面と対向する位置に設けられる。そして、コレット90は、チップ部品300を吸着する。
【0049】
コレット駆動手段91は、コレット90を少なくとも法線nの方向に移動させる。コレット駆動手段91はコレットに負荷する力を調整できるようになっている。また、図示はしていないが、コレット90の位置は、コレット位置検出手段で検出される。
【0050】
次に、ピックアップ装置101の動作について説明する。
図9は、第2の実施形態のピックアップ装置101の第1の動作状態を示す側面図である。コレット90がチップ部品300の上面に当接している。そして、コレット90が、ピックアップ対象のチップ部品300を、隣のチップ部品300と同じ高さに制御している。また、錐体状のバネ10をダイシングテープ200の裏面に押し付けるように、バネ移動手段20が錐体状のバネ10を移動させている。第1の状態では、全体がつぶれた状態になるまで、錐体状のバネ10が圧縮されている。
【0051】
図10は、第2の実施形態のピックアップ装置101の第2の動作状態を示す側面図である。コレット90が第1の状態よりも上方に移動している。バネ移動手段20は、第1の状態と同じ位置に保持されている。この状態では、錐体状のバネ10の外周部が復元し、錐体状のバネ10の、それより中央側の部分は圧縮されたままである。本実施形態では、錐体状のバネ10のバネ定数が、当該錐体状のバネ10の外周部から中央部に向かって小さくなっている。このため、錐体状のバネ10が上記の状態となる。この動作によって、チップ部品300の外周部がダイシングテープ200から剥離される。
【0052】
図11は、第2の実施形態のピックアップ装置101の第3の動作状態を示す側面図である。第3の状態では、コレット90が第1の状態よりも上方に移動している。また、バネ移動手段20は、第2の状態と同じ位置に保持されている。この制御により、第2の状態よりも、錐体状のバネ10の復元が、中央側に進行している。そして、錐体状のバネ10の全体が、外力の無い状態まで復元している。この状態では、チップ部品300の大部分がダイシングテープ200から剥離されている。ピックアップ装置100には、第3の状態におけるコレット90の高さが予め記憶されている。そして、コレット駆動手段91が、コレット90をさらに上方に移動させる。これにより、チップ部品300がダイシングテープ200から完全に剥離され、ピックアップが完了する。
【0053】
以上のような動作によって、ピックアップの際に、チップ部品300を折り曲げる曲げモーメントが低減される。
【0054】
次に、錐体状のバネ10の具体例について説明する。
図12は、第2の実施形態の錐体状のバネ10の製造方法の一例を示す平面図である。錐体状のバネ10は、例えば、板状のバネ鋼400を所定のパターンに打ち抜くことによって形成される。この所定のパターンとは、
図12のような螺旋状のパターンである。
図12の例では、外周部で幅が広く、中央に向かって幅が減少する。錐体状のバネ10の形成では、まず、
図12の10aに示すパターンにバネ鋼400が打ち抜かれる。次に、打ち抜かれたパターン10aの中央部を
図11の表面から上方に引き上げるように、線材が変形される。これにより、バネ材が錐体状に成形される。
【0055】
次に、錐体状のバネ10の変形例について説明する。
図13は、第2の実施形態の錐体状のバネ10の第1の変形例を示す平面図である。第1の変形例の錐体状のバネ10は、上から見た平面の形状が、楕円上の螺旋である。そして、外周部から中央部に向かって、幅が狭くなる。つまり、錐体状のバネ10全体の形状が、楕円錐状になる。
【0056】
図14は、第2の実施形態の錐体状のバネ10の第2の変形例を示す平面図である。第2の変形例の錐体状のバネ10は、上から見た平面の形状が、四角に近い螺旋である。そして、外周部から中央部に向かって、幅が狭くなる。第2の変形例では、錐体状のバネ10が、四角錐の形状になる。
【0057】
以上、本実施形態のピックアップ装置101等について説明した。
【0058】
本実施形態のピックアップ装置101は、ダイシングテープ200の上に貼り付けられているチップ部品300をダイシングテープ200からピックアップする。ピックアップ装置100は、錐体状のバネ10と、バネ移動手段20と、コレット90と、コレット駆動手段91と、を有する。錐体状のバネ10では、外周部から中心部に向かってバネ定数が小さくなる。そして、バネ移動手段20が、錐体状のバネ10をチップ部品300の主面の法線n方向に移動させる。この際、錐体状のバネ10の中心部によって、ダイシングテープ200の下面が押圧されるように、移動が行われる。そして、ダイシングテープ200の下面を介して、チップ部品300の下面が押圧される。チップ部品300の上面と対向する位置にコレット90が設けられる。コレット90がチップ部品300を吸着する。コレット駆動手段91は、コレット90を少なくとも法線nの方向に移動させる。
【0059】
この構成では、コレット90によって、チップ部品300の上面の位置が制御される。これにより、錐体状のバネ10の圧縮量が自在に制御される。ここで、錐体状のバネ10のバネ定数は、外周部から中心に向かって小さくなっている。このため、チップ部品300の外周部からダイシングテープ200の剥離が始まる。そして、チップ部品300の中心部に向かって剥離が徐々に進行する。その結果、剥離の際に、チップ部品300を折り曲げる曲げモーメントが低減される。
【0060】
また、本実施形態のピックアップ装置101の制御方法は、ピックアップ装置101を制御する。ダイシングテープ200の上にピックアップ対象のチップ部品300が貼り付けられている。ダイシングテープ200からチップ部品300がピックアップされる。そして、ピックアップ装置100が、錐体状のバネ10と、コレット90と、コレット駆動手段91と、を備える。錐体状のバネ10では、外周部から中心部に向かってバネ定数が小さくなる。そして、ダイシングテープ200の下面に近づくように、錐体状のバネ10が、法線nの方向に移動される。この際、錐体状のバネ10の中心部が、ダイシングテープ200の下面を押圧するように、移動が行われる。そして、ダイシングテープ200の下面を介して、チップ部品300の下面が押圧される。チップ部品300の上面と対向する位置にコレット90が設けられる。コレット90がチップ部品300を吸着する。コレット駆動手段91は、コレット90を少なくとも法線nの方向に移動させる。ここで法線nは、チップ部品300の主面の法線である。そして、ピックアップ装置101の制御方法では、コレット駆動手段91が、コレット90をチップ部品300の上面に接触させる。また、錐体状のバネ10を圧縮させる力を、コレット駆動手段91がコレット90に印加する。また、錐体状のバネ10から離れる方向に、コレット駆動手段91がコレット90を移動させる。この移動によって、錐体状のバネ10の復元力がチップ部品300の下面に加わる。
【0061】
上記の構成では、コレット90によって、チップ部品300の上面の位置が制御される。これにより、錐体状のバネ10の圧縮量が自在に制御される。ここで、錐体状のバネ10のバネ定数は、外周部から中心に向かって小さくなっている。そして、コレット90を上昇させることにより、錐体状のバネ10の圧縮が徐々に解除される。この際、錐体状のバネ10の外周部から復元が始まる。これは、錐体状のバネ10のバネ定数が、外周部から中心部に向かって小さくなっているためである。このため、チップ部品300の外周部からダイシングテープ200の剥離が始まる。そして、コレット90の上昇に従って、錐体状のバネ10の復元が進行する。これに伴い、チップ部品300の中心部に向かって剥離が徐々に進行する。その結果、剥離の際に、チップ部品300を折り曲げる曲げモーメントが低減される。
【0062】
上述した第1乃至第2の実施形態の処理を、コンピュータに実行させるプログラムおよび該プログラムを格納した記録媒体も本発明の範囲に含む。記録媒体としては、例えば、磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ、などを用いることができる。
【0063】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 錐体状のバネ
20 バネ移動手段
30 吸着ブロック
90 コレット
91 コレット駆動手段
100、101 ピックアップ装置
200 ダイシングテープ
300 チップ部品
400 バネ鋼