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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040774
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】チキンエキス含有飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20210101AFI20240318BHJP
   A23L 2/39 20060101ALI20240318BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240318BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20240318BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20240318BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240318BHJP
   A23L 13/30 20160101ALN20240318BHJP
【FI】
A23L2/38 N
A23L2/00 Q
A23L2/00 A
A23L2/66
A23L2/56
A23L2/52
A23L2/00 B
A23L13/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145347
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】ヌアンアノン,セーンシンパラット
(72)【発明者】
【氏名】不破 喬
(72)【発明者】
【氏名】スピーヤー,ドンチャルームユッタナー
(72)【発明者】
【氏名】ナッタカーン,ワンナコーン
(72)【発明者】
【氏名】松林 秀貴
(72)【発明者】
【氏名】シャージャン,リン
(72)【発明者】
【氏名】チンチン,ヤオ
【テーマコード(参考)】
4B042
4B117
【Fターム(参考)】
4B042AC01
4B042AC03
4B042AC04
4B042AD34
4B042AE08
4B042AG07
4B042AH01
4B042AH02
4B042AH03
4B042AH04
4B042AK02
4B042AK04
4B042AK10
4B042AP02
4B042AP06
4B042AP07
4B042AP14
4B042AP15
4B042AP30
4B117LC03
4B117LC04
4B117LE01
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK15
4B117LK17
4B117LP01
4B117LP02
4B117LP14
4B117LP20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規なチキンエキス含有飲料を提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、チキンエキス含有飲料であって、トリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分を含み、1種以上の臭気成分の合計含有量が2.7ug/ml以下であり、かつ、アンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドを含み、1種以上のイミダゾールジペプチドの合計含有量が1.6mg/ml以上である、飲料が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チキンエキス含有飲料であって、
トリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分を含み、前記1種以上の臭気成分の合計含有量が2.7ug/ml以下であり、かつ、
アンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドを含み、前記1種以上のイミダゾールジペプチドの合計含有量が1.6mg/ml以上である、飲料。
【請求項2】
トリメチルアミンの含有量が0.2~2.5ug/mlである、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
イソバレリン酸の含有量が0.05~2ug/mlである、請求項1に記載の飲料。
【請求項4】
前記1種以上の臭気成分の合計含有量が1~2.4ug/mlである、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
アンセリンおよびカルノシンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項6】
アンセリンの含有量が0.5~3.5mg/mlである、請求項1~5のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項7】
カルノシンの含有量が0.1~2mg/mlである、請求項1~6のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項8】
アンセリンおよびカルノシンの合計含有量が1.7~4.8mg/mlである、請求項1~7のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項9】
レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料、清涼飲料、チキンスープ、ゼリー状飲料、粉末飲料または機能性飲料である、請求項1~8のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の飲料の製造方法であって、
鶏胸肉から得られるチキンエキスを前記飲料中のチキンエキスの総量に対して1~75重量%配合することを含む、方法。
【請求項11】
鶏胸肉から得られるチキンエキスに対する鶏の足および関節から得られるチキンエキスの配合量が重量比で1:0.5~1:10となるように、鶏の足および関節から得られるチキンエキスを配合することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
チキンエキス含有飲料の味質改善方法であって、
前記飲料に含まれるトリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分の合計含有量を2.7ug/ml以下に調整し、かつ、前記飲料に含まれるアンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドの合計含有量を1.6mg/ml以上に調整することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チキンエキスを含む飲料およびその製造方法などに関する。本発明はまた、チキンエキスを含む飲料の味質改善方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりからタンパク質(プロテイン)を豊富に含む飲食品が注目されている。特にアジアで伝統的に飲用されてきたチキンエキス含有飲料は高タンパク飲料として注目されており、種々の製品が開発・製造販売されている。
【0003】
例えば、中国特許出願公開第109287979号明細書(特許文献1)には、健康的かつ栄養価の高い缶入りチキンスープとして、漢方薬を含む様々な原料を含むチキンスープが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第109287979号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チキンエキスについては特有の臭い(生臭さ(fishy)、おう吐臭(vomiting)など)があることが知られており、そのような臭いを低減する試みが行われている。しかしながら、消費者はチキンエキスの効能をその鶏肉の肉感(meatiness)から感じる傾向にあるため、チキンエキス特有の臭いを低減するのみでは、チキンエキスの満足度を全体的に向上し得ないことが判明した。そのため、新規なチキンエキス含有飲料が求められており、特に、チキンエキス特有の臭いが低減されており、かつ、鶏肉の肉感を感じられる新規なチキンエキス含有飲料が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討したところ、所定の臭気成分の含有量を抑え、アンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドの含有量を所定の範囲に調整することで、チキンエキス特有の臭いを抑えつつ、鶏肉の肉感を感じられるチキンエキス含有飲料が得られるとの知見を得た。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0007】
本発明は、次に示す飲料および当該飲料の製造方法などを提供する。
[1]
チキンエキス含有飲料であって、
トリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分を含み、前記1種以上の臭気成分の合計含有量が2.7ug/ml以下であり、かつ、
アンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドを含み、前記1種以上のイミダゾールジペプチドの合計含有量が1.6mg/ml以上である、飲料。
[2]
トリメチルアミンの含有量が0.2~2.5ug/mlである、[1]に記載の飲料。
[3]
イソバレリン酸の含有量が0.05~2ug/mlである、[1]に記載の飲料。
[4]
前記1種以上の臭気成分の合計含有量が1~2.4ug/mlである、[1]~[3]のいずれかに記載の飲料。
[5]
アンセリンおよびカルノシンを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の飲料。
[6]
アンセリンの含有量が0.5~3.5mg/mlである、[1]~[5]のいずれかに記載の飲料。
[7]
カルノシンの含有量が0.1~2mg/mlである、[1]~[6]のいずれかに記載の飲料。
[8]
アンセリンおよびカルノシンの合計含有量が1.7~4.8mg/mlである、[1]~[7]のいずれかに記載の飲料。
[9]
レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料、清涼飲料、チキンスープ、ゼリー状飲料、粉末飲料または機能性飲料である、[1]~[8]のいずれかに記載の飲料。
[10]
[1]~[9]のいずれかに記載の飲料の製造方法であって、
鶏胸肉から得られるチキンエキスを前記飲料中のチキンエキスの総量に対して1~75重量%配合することを含む、方法。
[11]
鶏胸肉から得られるチキンエキスに対する鶏の足および関節から得られるチキンエキスの配合量が重量比で1:0.5~1:10となるように、鶏の足および関節から得られるチキンエキスを配合することを含む、[10]に記載の方法。
[12]
チキンエキス含有飲料の味質改善方法であって、
前記飲料に含まれるトリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分の合計含有量を2.7ug/ml以下に調整し、かつ、前記飲料に含まれるアンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドの合計含有量を1.6mg/ml以上に調整することを含む、方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、チキンエキス特有の臭いを抑えつつ、鶏肉の肉感を感じられるチキンエキス含有飲料を提供することができる。本発明の好ましい態様によれば、チキンエキス特有の臭いを抑えつつ、鶏肉の肉感をしっかりと感じられるチキンエキス含有飲料を提供することができる。本発明の他の好ましい態様によれば、さらに不快な酸味が抑えられたチキンエキス含有飲料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施をすることができる。
なお、本明細書において引用した全ての文献、および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。
【0010】
1.飲料
本発明は、一態様としてチキンエキス含有飲料(以下、「本発明の飲料」ともいう)を提供する。本明細書において、「チキンエキス含有飲料」とは、チキンエキスを含有する経口摂取可能な液体状の組成物を意味する。本発明のいくつかの実施形態において、飲料はレディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料、清涼飲料、チキンスープ、ゼリー状飲料、粉末飲料および機能性飲料を包含する。本明細書において粉末飲料とは、水またはお湯で所定の濃度に希釈して飲用するための粉末状の飲料を意味する。さらにチキンエキス含有飲料には、加熱してスープ状の状態で飲用するような組成物、例えばパウチ入りスープ(チキンエッセンス(Chicken EssenceまたはDEOC(Drip Essence of Chicken))など)、も包含される。本発明の好ましい実施形態におけるチキンエキス含有飲料は、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料である。
【0011】
本発明の一実施形態によるチキンエキス含有飲料は、トリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分を含み、前記1種以上の臭気成分の合計含有量が2.7ug/ml以下であり、かつ、アンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドを含み、前記1種以上のイミダゾールジペプチドの合計含有量が1.6mg/ml以上である。以下、本発明の飲料について説明する。
【0012】
<チキンエキス>
本発明の飲料は、チキンエキスを含む。チキンエキスは、鶏の肉、骨および皮等の部分を原料として熱水抽出等により得られる成分である。チキンエキスは、一般的にカルノシンおよびアンセリンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドを含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態における飲料に用いるチキンエキスがカルノシンおよびアンセリンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドの塩を含む場合、チキンエキス中のイミダゾールジペプチドの含有量は、イミダゾールジペプチドおよびその塩の総量を意味する。
【0014】
イミダゾールジペプチドの塩の例は、特に限定されず、ナトリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムおよびアンモニアの水酸化物、炭酸塩および重炭酸塩のような無機塩;ならびにメチルアミン、ジメチルアミンおよびトリメチルアミンの塩のようなモノ-、ジ-またはトリ-アルキルアミン塩、モノ-、ジ-またはトリ-ヒドロキシアルキルアミン塩、グアニジン塩およびN-メチルグルコサミン塩のような有機塩を含む塩が挙げられる。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態における飲料にチキンエキスを用いる場合、原料となる鶏肉等を液体中で加熱して得られるエキスを用いてもよいし、市販品のチキンエキスを用いてもよい。チキンエキスの原料は鶏の骨、軟骨、足(もみじともいう)等を含んでいてもよい。
【0016】
チキンエキスの市販品としては、「Brand's Essence of Chicken (BEC)(Suntory Beverage & Food Asia社製)」、「Scotch(登録商標) Essence of Chicken(タイのScotch Industrial社製)」、「Quaker Essence of chicken(台湾のStandard Foods Corporation社製)」、「SWANSON(登録商標)のChicken stock and broth(Campbell Soup Company社製)」、「Drip Chicken Essence (シンガポールのEu Yan Sang International社製)」、「Boned Chicken Tonic (シンガポールのEu Yan Sang International社製)」、「Boiled Essence of Chicken (台湾のLao Xie Zhen社製)」などが挙げられる。このような市販製品のいずれも使用することができるが、Brand's Essence of Chicken (BEC)を使用することが好ましい。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態における飲料に用いられるチキンエキスを、鶏肉や鶏の骨、軟骨、足等(以下、「鶏肉等」)の温水抽出により製造する場合、一般的に用いられる方法で製造することができる。例えば、鶏肉等を溶媒中で高温で常圧または加圧下で処理することでチキンエキスを製造することができる。チキンエキスの製造の際には、溶媒での粗抽出後に脂肪やコレステロールを除去し、その後余分な溶媒を除去することで濃度を上げてもよい。
【0018】
本明細書において、チキンエキスには、上記の方法によって得られる液体抽出物、液体抽出物の希釈溶液、濃縮物、または乾燥粉末、およびこれらの精製生成物が包含される。精製物は例えば、チキンエキスに対して珪藻土ろ過、限外ろ過、膜処理、液分離操作、樹脂等による分画処理を施し、高純度化することにより得ることができる。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態における飲料中のチキンエキスの量(固形分換算)は、特に限定されないが、5重量%~20重量%であることが好ましい。本発明の好ましい実施形態におけるチキンエキスの量(固形分換算)は、6重量%~14重量%、8重量%~12重量%または9重量%~11重量%であってもよい。
【0020】
<臭気成分>
本発明のいくつかの実施形態における飲料は、トリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分を含み、その1種以上の臭気成分の含有量は、2.7ug/ml以下である。トリメチルアミンはチキンエキスの製造時に発生する臭気成分の一つであり、生臭い匂い(fishy odor)をもたらし得る。イソバレリン酸もチキンエキスの製造時に発生する臭気成分の一つであり、おう吐臭のような匂い(vomiting odor)をもたらし得る。例えばこれらの臭気成分はチキンエキスのレトルト条件での加熱時などに発生することがある。
【0021】
トリメチルアミンの含有量は、イソバレリン酸との合計含有量が2.7μg/ml以下であれば特に限定されず、0ug/mlまたは検出限界以下の量であってもよい。本発明のいくつかの態様において、トリメチルアミンの含有量は0.2~2.5ug/ml、0.2~2ug/ml、0.2~1.5ug/ml、0.2~1ug/ml、0.2~0.8ug/ml、0.8~2.5ug/ml、0.8~2ug/ml、0.8~1.5ug/ml、0.8~1ug/ml、1~2.5ug/ml、1~2ug/mlまたは1~1.5ug/mlであってもよい。トリメチルアミンの含有量は、実施例に記載の方法で、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0022】
イソバレリン酸の含有量は、トリメチルアミンとの合計含有量が2.7μg/ml以下であれば特に限定されず、0ug/mlまたは検出限界以下の量であってもよい。本発明のいくつかの態様において、イソバレリン酸の含有量は0.05~2ug/ml、0.05~1.5ug/ml、0.05~1ug/ml、0.05~0.09ug/ml、0.05~0.08ug/ml、0.01~0.2ug/ml、0.01~0.15ug/ml、0.01~0.13ug/ml、0.01~0.12ug/ml、0.01~0.1ug/mlまたは0.01~0.08ug/mlであってもよい。イソバレリン酸の含有量は、実施例に記載の方法で、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0023】
トリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分の合計含有量は2.7 ug/ml以下であれば特に限定されないが、0.1~2.4ug/ml、0.1~2.2ug/ml、0.1~2ug/ml、0.1~1.8ug/ml、0.3~2.4ug/ml、0.3~2.2ug/ml、0.3~2ug/ml、0.3~1.8ug/ml、0.5~2.4ug/ml、0.5~2.2ug/ml、0.5~2ug/ml、0.5~1.8ug/ml、0.8~2.4ug/ml、0.8~2.2ug/ml、0.8~2ug/ml、0.8~1.8ug/ml、1~2.4ug/ml、1~2.2ug/ml、1~2ug/ml、1~1.8ug/ml、1.2~2.4ug/ml、1.2~2.3ug/ml、1.2~2.2ug/ml、1.2~2ug/mlまたは1.2~1.8ug/mlであってもよい。合計含有量は実施例に記載の方法で、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0024】
<アンセリンおよびカルノシン>
本発明のいくつかの実施形態における飲料は、アンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドを含む。イミダゾールジペプチドは、イミダゾール環を持つヒスチジンを構成成分とするジペプチドの総称である(柳内延也著、日本食品化学工学会誌、2014年、61巻、1号、p. 45)。ここでイミダゾールは、5員環状の芳香族複素環系化合物の一種であって、窒素原子を第1位と第3位に有する含窒素芳香族複素環系化合物である。
【0025】
本発明者らは、驚くべきことに、トリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分の合計含有量を所定の範囲内とし、かつ、アンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドの含有量を所定量以上とすることで、チキンエキスに特有の臭い(生臭さ、おう吐臭など)を抑えつつ、鶏肉の肉感を感じられるチキンエキス含有飲料を提供できることを見出した。好ましい態様によれば、アンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドの含有量を所定の範囲内とすることで、さらに不快な酸味を抑えることができる。
【0026】
イミダゾールジペプチドには様々な種類があり、アンセリンよびカルノシン以外のイミダゾールジペプチドを含んでいてもよい。例えば、バレニン、ホモアンセリンおよびホモカルノシンから選択される1種以上のイミダゾールジペプチドをさらに含んでいてもよい。本発明の好ましい実施形態における飲料は、アンセリンおよびカルノシンを含む。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態における飲料に用いるイミダゾールジペプチドは、イミダゾールジペプチドを含む材料(例えば魚肉)から水系溶媒にて抽出して得られたもの、または化学合成により得たものであってもよく、その由来や原料は特に制限されない。イミダゾールジペプチドは、例えば、マグロ、カツオおよびサケなどの魚肉、牛肉、豚肉および鶏肉などから得ることができる。豚や牛などの哺乳類ではカルノシンが多く、水生哺乳類ではカルノシンとバレニンが1:2程度であり、鳥類ではカルノシンとアンセリンが1:3の割合であり、大型魚類になるとほぼアンセリンだけになるといわれている(柳内延也著、日本食品化学工学会誌、2014年、61巻、1号、p. 45)。本発明においては、所望の効能や用途に応じてイミダゾールジペプチドの原料を選択することができる。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態における飲料に含まれるアンセリンの含有量は、カルノシンとの合計含有量が1.6mg/ml以上であれば特に限定されないが、例えば0.5~3.5mg/mlである。アンセリンの含有量は、0.5~3mg/ml、0.5~2.5mg/ml、0.5~2mg/ml、0.5~1.5mg/ml、0.5~1mg/ml、1~3mg/ml、1.5~3mg/ml、2~3mg/mlまたは2.5~3mg/mlであってもよい。アンセリンの含有量は、好ましくは1.2~2.8mg/ml、より好ましくは1.5~2.5mg/ml、さらに好ましくは1.7~2.3mg/mlである。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態における飲料に含まれるカルノシンの含有量は、アンセリンとの合計含有量が1.6mg/ml以上であれば特に限定されないが、例えば0.1~2mg/mlである。カルノシンの含有量は、0.1~1.8mg/ml、0.1~1.6mg/ml、0.1~1.4mg/ml、0.1~1.2mg/ml、0.1~1mg/ml、0.2~1.5mg/ml、0.4~1.5mg/ml、0.5~1.5mg/ml、0.7~1.5mg/mlまたは0.8~1.5mg/mlであってもよい。カルノシンの含有量は、好ましくは0.5~1.5mg/ml、より好ましくは0.7~1.4mg/ml、さらに好ましくは0.8~1.2mg/mlである。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態における飲料に含まれるアンセリンとカルノシンの合計量は、1.7~4.8mg/mlである。アンセリンとカルノシンの合計含有量をこの範囲とすることで、チキンエキスに特有の臭い(生臭さ、おう吐臭など)を抑えつつ、鶏肉の肉感を感じられるチキンエキス含有飲料を提供することができる。本発明のいくつかの実施形態において、アンセリンとカルノシンの合計量は、例えば、1.7~4.5mg/ml、1.7~4mg/ml、1.7~3.5mg/ml、1.7~3mg/ml、2~4mg/ml、2.2~4mg/ml、2.4~4mg/ml、2.6~4mg/ml、2.8~4mg/ml、2~3.8mg/ml、2.2~3.8mg/ml、2.4~3.8mg/ml、2.6~3.8mg/ml、2.8~3.8mg/ml、2~3.5mg/ml、2.2~3.5mg/ml、2.4~3.5mg/ml、2.6~3.5mg/mlまたは2.8~3.5mg/mlであってもよい。アンセリンとカルノシンの合計含有量は、好ましくは1.8~4.2mg/ml、より好ましくは2~4mg/ml、さらに好ましくは2.4~3.5mg/mlである。
【0031】
アンセリンおよびカルノシンなどのイミダゾールジペプチドの含有量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定することで求めることができるが、配合量から含有量が算出できる場合は配合量から求めてもよい。HPLCで測定する場合の測定条件は分析器の標準の測定方法で測定することができる。HPLCで測定する際には、イオン交換カラム(例えば、300SCX(寸法:4.6×250mm、粒子径:5μm))等を用いることができる。
【0032】
<他の成分および特性>
本発明のいくつかの実施形態による飲料は水を含む。水は、特に限定されず、風味に悪影響を与えない限りあらゆる水が使用できるが、例えば水道水、イオン交換水、軟水、蒸留水、炭酸水、逆浸透水(RO水)、活性炭処理水、精製水および脱塩水が挙げられる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態による飲料のpHは、好ましくは4~7、4.5~7、5~7、5.5~7、6~7、4~6.8、4.5~6.8、5~6.8、5.5~6.8、6~6.8、4~6.6、4.5~6.6、5~6.6、5.5~6.6または6~6.6であってもよい。pHをこの範囲に調整することで、酸味の少ない好ましい味を実現することができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態による飲料のBrix(可溶性固形分量)は、好ましくは5~20であり、より好ましくは6~14であり、さらに好ましくは8~12である。飲料のBrix(可溶性固形分量)は、糖度屈折計で測定することができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態による飲料は、甘味料を含んでいてもよい。甘味料としては、低甘味度甘味料、高甘味度甘味料またはその組み合わせを含んでいてもよい。低甘味度甘味料としては、例えば、グルコース、スクロース(グラニュー糖など)、フルクトース、マルトース、オリゴ糖、果糖ブドウ糖液糖、乳糖、プシコース、アロース、タガトース、キシロースまたはリボースが挙げられる。高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、ネオテーム、アドバンテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、サッカリン、サッカリンナトリウム、サイクラミン酸ナトリウム、ズルチン、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ソーマチン、モネリン、クルクリン、マビンリン、ブラゼイン、ペンタジン、ヘルナンズルチン、4β-ヒドロキシヘルナンズルチン、ミラクリン、グリチルリチン、ルブソシド、フィロズルチン、モグロシドIV、モグロシドV、ステビオール配糖体(レバウジオシドA、レバウジオシドD、レバウジオシドM)、ソーマチン、モネリン、ブラゼイン、モナチン、羅漢果抽出物またはステビア抽出物が挙げられる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態による飲料は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記の成分以外に通常の飲料に添加可能な成分を含有していてもよい。そのような成分として、例えば、酸味料、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定化剤などが挙げられる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態による飲料の容器の形態は限定されず、例えば缶、瓶、PETボトル、パウチ、紙パックおよびプラスチック容器等の容器に封入して容器詰めされた飲料の形態としてもよい。本発明の好ましい実施形態によれば、飲料の容器は、手軽に定期的に摂取する観点から小分けパウチである。容器詰めした後に加熱殺菌を行う場合、その種類は特に限定されず、例えば転倒殺菌、UHT殺菌およびレトルト殺菌等の通常の手法を用いて行うことができる。加熱殺菌工程の温度は特に限定されないが、例えば65~130℃、好ましくは80~120℃で、1~40分である。ただし、上記の条件と同等の殺菌価が得られれば適当な温度で数秒、例えば5~30秒での殺菌でも問題はない。
【0038】
[本発明の飲料の例示的な実施形態]
以下に本発明の飲料の例示的な実施形態を示すが、本発明は下記の実施形態に制限されるものではない。
本発明の一実施形態によれば、
チキンエキス含有飲料であって、
トリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分を含み、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーによって測定される、前記1種以上の臭気成分の合計含有量が2.7ug/ml以下であり、かつ、
アンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドを含み、前記1種以上のイミダゾールジペプチドの合計含有量が1.6mg/ml以上である、飲料が提供される。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、
チキンエキス含有飲料であって、
トリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分を含み、前記1種以上の臭気成分の合計含有量が0.5~2.4ug/mlであり、かつ、
アンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドを含み、前記1種以上のイミダゾールジペプチドの合計含有量が2~3.8mg/mlである、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料が提供される。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、
チキンエキス含有飲料であって、
トリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分を含み、前記1種以上の臭気成分の合計含有量が1~2.2ug/mlであり、かつ、
アンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドを含み、前記1種以上のイミダゾールジペプチドの合計含有量が2.4~3.5mg/mlである、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料が提供される。
【0041】
2.飲料の製造方法
本発明は、一態様として、以下の飲料の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)を提供する。本発明の製造方法は、トリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分の合計含有量と、アンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドの合計含有量が所定の範囲の飲料が得られれば特に限定されない。
【0042】
本発明の一実施形態の製造方法は、例えば、次のような方法が挙げられる。まず、鶏肉等を細かく刻み、次いで、溶媒中で高温で常圧または加圧下で処理することで鶏肉等に含まれるたんぱく質等を分解してヒトが吸収しやすい比較的低分子量のペプチドに変換する。得られた粗抽出液から脂肪やコレステロールを除去し、その後余分な溶媒を除去することでチキンエッセンスの濃度を上げる。この操作を複数回繰り返してもよい。密度、色および栄養価が所望の範囲に入っていることを確認し、ろ過した後に容器詰めし、真空包装する。その後加熱殺菌する。使用する鶏肉等の部位によって含まれる成分の比率に違いがあるため、使用する鶏肉等の部位を調製することで所望の臭気成分量と、イミダゾールジペプチド量のチキンエキスを得ることができる。例えば、カルノシンやアンセリンなどのイミダゾールジペプチドは鶏の胸肉の部分に多く含まれている傾向がある。また、トリメチルアミンやイソバレリン酸などの臭気成分は、鶏の足(足先付近)の部分を用いてチキンエキスを製造した際に多く発生する傾向がある。したがって、各部位に含まれる成分の量を分析し、使用する部位の比率を適宜調整することで、過度な負担なく本発明の飲料を製造することができる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態における製造方法は、鶏胸肉から得られるチキンエキスを飲料中のチキンエキスの総量に対して1~75重量%配合することを含む。上記のとおり、鶏胸肉にはカルノシンやアンセリンなどのイミダゾールジペプチドが多く含まれている傾向があるため、鶏胸肉から得られるチキンエキスを所定量配合することで、飲料中のカルノシンおよびアンセリンの量を調整することができる。本発明の他の実施形態において、鶏胸肉から得られるチキンエキスの割合は、5~75重量%、5~70重量%、5~65重量%、5~60重量%、5~55重量%、5~50重量%、10~75重量%、10~70重量%、10~65重量%、10~60重量%、10~55重量%または5~50重量%であってもよい。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態における製造方法は、鶏胸肉から得られるチキンエキスに対する鶏の足および関節から得られるチキンエキスの配合量が重量比で1:0.5~1:10となるように、鶏の足および関節から得られるチキンエキスを配合することを含む。この実施形態において、鶏の足および関節から得られるチキンエキスは、鶏の足から得られるチキンエキスのみを含んでいてもよく、鶏の関節から得られるチキンエキスのみを含んでいてもよく、両方を含んでいてもよい。上記のとおり、鶏胸肉にはカルノシンやアンセリンなどのイミダゾールジペプチドが多く含まれている傾向があるのに対して、鶏の足や関節のイミダゾールジペプチドの含有量は比較的少ない傾向があるため、鶏胸肉から得られるチキンエキスの比率を調整することで、飲料中のカルノシンおよびアンセリンの量を調整することができる。本発明の他の実施形態において、当該重量比は、1:1~1:10、1:2~1:10、1:3~1:10、1:4~1:10、1:5~1:10、1:0.5~1:4、1:0.5~1:3または1:0.5~1:2であってもよい。
【0045】
あるいは、チキンエキスにイミダゾールジペプチド製剤を添加して本発明の飲料を調製してもよい。例えば、アンセリンやカルノシンの含有量が低い部位から得られたチキンエキスに対して、市販のイミダゾールジペプチド製剤(たとえば、Lytone Enterprise社製、「Imida 15」、アンセリンおよびカルノシン純度:15%以上等)を添加して飲料中のアンセリンとカルノシン量を調整してもよい。チキンエキスは上記のような方法で鶏肉等を用いて調製してもよいが、市販のものを用いてもよい。なお、各成分の添加のタイミングは同時でも同時でなくてもよい。
【0046】
本発明の一態様の製造方法において、「飲料」、「チキンエキス」、「臭気成分」、「アンセリンおよびカルノシン」および「他の成分および特性」に関しては、に関しては、上記飲料の項目で述べた定義と同様であり、その数値は上記飲料の項目で述べた数値がそのまま当てはまる。
【0047】
3.チキンエキス含有飲料の味質改善方法
本発明は、一態様として、以下のチキンエキス含有飲料の味質改善方法(以下、「本発明の改善方法」ともいう)を提供する。本発明の改善方法によれば、チキンエキス含有飲料の有するチキンエキス特有の臭い(生臭さ、おう吐臭など)を低減し、かつ、鶏肉の肉感を向上することができる。具体的には、チキンエキス含む飲料に含まれるトリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分の合計含有量を所定量以下に調整し、かつ、前記飲料に含まれるアンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドの合計含有量を所定量以上に調整することで、チキンエキス含有飲料の有するチキンエキス特有の臭い(生臭さ、おう吐臭など)を低減し、かつ、鶏肉の肉感を向上することができる。
【0048】
本発明の一実施形態による改善方法は、チキンエキス含有飲料の味質改善方法であって、飲料に含まれるトリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分の合計含有量を2.7ug/ml以下に調整し、かつ、飲料に含まれるアンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドの合計含有量を1.6mg/ml以上に調整することを含む、方法である。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態による改善方法において、チキンエキス含有飲料に含まれるトリメチルアミンの含有量は、イソバレリン酸との合計含有量が2.7μg/ml以下であれば特に限定されず、0ug/mlまたは検出限界以下の量に調整してもよい。本発明のいくつかの態様において、トリメチルアミンの含有量は0.2~2.5ug/ml、0.2~2ug/ml、0.2~1.5ug/ml、0.2~1ug/ml、0.2~0.8ug/ml、0.8~2.5ug/ml、0.8~2ug/ml、0.8~1.5ug/ml、0.8~1ug/ml、1~2.5ug/ml、1~2ug/mlまたは1~1.5ug/mlに調整してもよい。トリメチルアミンの含有量は、実施例に記載の方法で、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態による改善方法において、チキンエキス含有飲料に含まれるイソバレリン酸の含有量は、トリメチルアミンとの合計含有量が2.7μg/ml以下であれば特に限定されず、0ug/mlまたは検出限界以下の量に調整してもよい。本発明のいくつかの態様において、イソバレリン酸の含有量は0.05~2ug/ml、0.05~1.5ug/ml、0.05~1ug/ml、0.05~0.09ug/ml、0.05~0.08ug/ml、0.01~0.2ug/ml、0.01~0.15ug/ml、0.01~0.13ug/ml、0.01~0.12ug/ml、0.01~0.1ug/mlまたは0.01~0.08ug/mlに調整してもよい。イソバレリン酸の含有量は、実施例に記載の方法で、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態による改善方法において、チキンエキス含有飲料に含まれるトリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分の合計含有量は2.7ug/ml以下であれば特に限定されないが、0.1~2.4ug/ml、0.1~2.2ug/ml、0.1~2ug/ml、0.1~1.8ug/ml、0.3~2.4ug/ml、0.3~2.2ug/ml、0.3~2ug/ml、0.3~1.8ug/ml、0.5~2.4ug/ml、0.5~2.2ug/ml、0.5~2ug/ml、0.5~1.8ug/ml、0.8~2.4ug/ml、0.8~2.2ug/ml、0.8~2ug/ml、0.8~1.8ug/ml、1~2.4ug/ml、1~2.2ug/ml、1~2ug/ml、1~1.8ug/ml、1.2~2.4ug/ml、1.2~2.4ug/ml、1.2~2.2ug/ml、1.2~2ug/mlまたは1.2~1.8ug/mlに調整してもよい。合計含有量は実施例に記載の方法で、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0052】
本発明細書において、「飲料に含まれるトリメチルアミンおよびイソバレリン酸からなる群から選択される1種以上の臭気成分のヘッドスペースガスクロマトグラフィーによって測定される合計含有量を2.7ug/ml以下に調整する」とは、チキンエキス含有飲料中の臭気成分の合計含有量が最終的に2.7ug/ml以下となっていれば特に限定されない。したがって、チキンエキス含有飲料からこれらの臭気成分除去することで調整してもよく、配合するチキンエキスの割合を調整することで臭気成分の量を調整してもよい。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態において、チキンエキス含有飲料に含まれるアンセリンの含有量は、カルノシンとの合計含有量が1.6mg/ml以上であれば特に限定されないが、例えば0.5~3.5mg/mlに調整してもよい。アンセリンの含有量は、0.5~3mg/ml、0.5~2.5mg/ml、0.5~2mg/ml、0.5~1.5mg/ml、0.5~1mg/ml、1~3mg/ml、1.5~3mg/ml、2~3mg/mlまたは2.5~3mg/mlに調整してもよい。アンセリンの含有量は、好ましくは1.2~2.8mg/ml、より好ましくは1.5~2.5mg/ml、さらに好ましくは1.7~2.3mg/mlである。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態において、チキンエキス含有飲料に含まれるカルノシンの含有量は、アンセリンとの合計含有量が1.6mg/ml以上であれば特に限定されないが、例えば0.1~2mg/mlに調整してもよい。カルノシンの含有量は、0.1~1.8mg/ml、0.1~1.6mg/ml、0.1~1.4mg/ml、0.1~1.2mg/ml、0.1~1mg/ml、0.2~1.5mg/ml、0.4~1.5mg/ml、0.5~1.5mg/ml、0.7~1.5mg/mlまたは0.8~1.5mg/mlに調整してもよい。カルノシンの含有量は、好ましくは0.5~1.5mg/ml、より好ましくは0.7~1.4mg/ml、さらに好ましくは0.8~1.2mg/mlである。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態において、チキンエキス含有飲料に含まれるアンセリンとカルノシンの合計量は、1.7~4.8mg/mlに調整してもよい。アンセリンとカルノシンの合計含有量をこの範囲とすることで、チキンエキスに特有の臭い(生臭さ、おう吐臭など)を抑えつつ、鶏肉の肉感を感じられるチキンエキス含有飲料を提供することができる。本発明のいくつかの実施形態において、アンセリンとカルノシンの合計量は、例えば、1.7~4.5mg/ml、1.7~4mg/ml、1.7~3.5mg/ml、1.7~3mg/ml、2~4mg/ml、2.2~4mg/ml、2.4~4mg/ml、2.6~4mg/ml、2.8~4mg/ml、2~3.8mg/ml、2.2~3.8mg/ml、2.4~3.8mg/ml、2.6~3.8mg/ml、2.8~3.8mg/ml、2~3.5mg/ml、2.2~3.5mg/ml、2.4~3.5mg/ml、2.6~3.5mg/mlまたは2.8~3.5mg/mlに調整してもよい。アンセリンとカルノシンの合計含有量は、好ましくは1.8~4.2mg/ml、より好ましくは2~4mg/ml、さらに好ましくは2.4~3.5mg/mlである。
【0056】
本発明細書において、「飲料に含まれるアンセリンおよびカルノシンからなる群から選択される1種以上のイミダゾールジペプチドの合計含有量を1.6mg/ml以上に調整する」とは、チキンエキス含有飲料中のイミダゾールジペプチドの合計含有量が最終的に1.6mg/ml以下となっていれば特に限定されない。したがって、チキンエキス含有飲料に意味上記のようなイミダゾールジペプチド製剤を添加することで調整してもよく、配合するチキンエキスの割合を調整することでイミダゾールジペプチドの量を調整してもよい。
【0057】
本発明の一態様の改善方法において、「飲料」、「チキンエキス」、「臭気成分」、「アンセリンおよびカルノシン」および「他の成分および特性」に関しては、上記飲料の項目で述べた定義と同様である。
【0058】
本明細書において、「少なくとも」との文言は、特定の項目の数が、挙げられた数以上であってよいことを意味する。また、本願内において、「約」との文言は、主体が「約」に続く数値の±25%、±10%、±5%、±3%、±2%または±1%の範囲に存在することを意味する。例えば「約10」は、7.5~12.5の範囲を意味する。
【実施例0059】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0060】
[実施例1]
〈例1-1~1-23〉
本実施例に使用した原料は次のとおりである:エキスA(足の部位から得られたチキンエキス、Brix10)、エキスB(胸肉の部位から得られたチキンエキス、Brix10)、エキスC(足の部位から得られたチキンエキス、Brix12)、イミダゾールジペプチド製剤(Lytone Enterprise社製、「Imida 15」、アンセリンおよびカルノシンの総量:15%以上)および水(RO水(逆浸透水))。各エキス中の各成分の含有量を表1に示す。
【表1】
【0061】
エキスA、BおよびCは以下の方法で得られたものを用いた。
[エキスAおよびCの調製方法]
チキンの足の部位および水と1:1.2(重量ベース)で混合し、容器に入れた後、オートクレーブを用いて125℃、255分加熱処理した。加熱処理後得られた抽出液を200メッシュの篩に通すことで固形分を除去した。その後、オーバーナイトで静置することで油溶性層と水溶性層に分けて、水溶性層のみ取り出した。その後、エバポレーターを用いて、Brix10以上まで濃縮を行った。その後、フィルターエイド(Hyflo super cell)を用いて90~95℃で10分間処理を行い、清澄化された抽出液を得た。その後、水を加えてBrix10に調整した後、容器に詰め、120℃8分間の加熱殺菌を行った。これをエキスAとした。同様の方法でエキスCは濃縮の工程でBrixを12以上に調整し、最終的に水を加えてBrix12に調整した後、同様に殺菌することで調整した。
【0062】
[エキスBの調製方法]
チキンの胸肉の部位および水と1:1.2(重量ベース)で混合し、容器に入れた後、オートクレーブを用いて125℃、255分加熱処理した。加熱処理後得られた抽出液を200メッシュの篩に通すことで固形分を除去した。その後、オーバーナイトで静置することで油溶性層と水溶性層に分けて、水溶性層のみ取り出した。その後、エバポレーターを用いて、Brix10以上まで濃縮を行った。その後、フィルターエイド(Hyflo super cell)を用いて90~95℃で10分間処理を行い、清澄化された抽出液を得た。その後、水を加えてBrix10に調整した後、容器に詰め、120℃8分間の加熱殺菌を行った。これをエキスBとした。
【0063】
得られた各エキス中のアンセリンとカルノシンの含有量は以下の条件でHPLCにより行った。
<HPLCの分析条件>
装置:UV検出器を備えた高速液体クロマトグラフィーシステム(Agilentから入手可能なAgilent 1100シリーズ)
カラム:Zorbax 300-SCX 4.6 mm ID × 250 mm、Agilent から入手可能。
移動相: 50 mM リン酸二水素カリウム
流速:1.0mL/min
流路: チャンネル A (50 mM リン酸二水素カリウム)、チャンネル B (アセトニトリル)、チャンネル D (脱イオン水)
UV 検出器の波長: 210 nm
サンプル注入量:10μL
【0064】
Imida 15のアンセリンとカルノシンの合計含有量は、原料のロットごとの各成分の詳細な含有量を示した分析証明書(COA: Certificate of Analysis)における情報を用いた。本実施例に用いたImida 15のアンセリンとカルノシンの合計含有量は158mg/gであった。
【0065】
各エキス中の臭気成分(トリメチルアミン、イソバレリン酸)の含有量は、下記の手順で測定した。
【0066】
<ヘッドスペースガスクロマトグラフィー分析>
[トリメチルアミンの分析]
チキンエキスを含む容器のヘッドスペース内の不快な臭気成分(トリメチルアミン)の濃度を、ヘッドスペース-固相マイクロ抽出ユニットと組み合わせた島津GCMS-QP2010PLUSによって分析した。8mLのサンプルを20mLの抽出ボトルに移し、40μLの内部標準(デカン酸メチル(decanoic acid methyl ester)、0.05mg/mL)を混合した。抽出ボトルを40℃のウォーターバスで20分間密閉した。ヘッドスペース-固相マイクロ抽出は、GCMSへの注入の30分前に行った。
【0067】
[イソバレリン酸の分析]
チキンエキスを含む容器のヘッドスペース内の不快な臭気成分(イソバレリン酸)の濃度を、ヘッドスペース-固相マイクロ抽出ユニットと組み合わせた島津GCMS-QP2010PLUSによって分析した。8mLのサンプルを20mLの抽出ボトルに移し、40μLの内部標準(デカン酸メチル(decanoic acid methyl ester)、0.05mg/mL)を混合した。40μLの9M硫酸で酸性化した後、抽出ボトルを40℃のウォーターバスで20分間密閉した。ヘッドスペース-固相マイクロ抽出は、GCMSへの注入の30分前に行った。
【0068】
上記の原料を表2に記載の組成で混合することにより、サンプル飲料を得た。飲料サンプルの組成と、含有される各成分の量を表2に示す。各成分の含有量は使用した原料に含まれる量から算出した。Imida 15とRO水に含まれるトリメチルアミンとイソバレリン酸の量はゼロとした。各原料を混合した後、100mlとなるように必要に応じて水を添加してサンプルを得た。
【表2】
【0069】
上記手順で得られたサンプル飲料の味質を評価した。各サンプルを専門パネリスト4名が以下の基準に基づいて評価した。
【表3】
【0070】
試験を行う前に、パネリスト同士で十分に上記評価基準についてすり合せを行った。結果を表4にまとめる。表4に示す結果は4名の専門パネリストによる評点のすり合わせを行った。さらに、得られた結果のうち、「肉感」と「不快な生臭さとおう吐臭」の評価の結果の悪い方の評点が2以下であったものは評価を「NG」とした。これらの評価が3点以上であったものについては、3つの官能評価の数値を足し合わせた総合点でA~Dの評価を行った。総合点が13点以上のものを「A」、総合点が12点のものを「B」、総合点が11点のものを「C」、総合点が10点のものを「D」とした。なお、総合点が11点以上であっても、酸味の評価が2点以下のものは総合評価を「D」とした。
【表4】