(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040776
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】成膜装置、および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20240318BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/458
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145351
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】上遠野 一広
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和展
(72)【発明者】
【氏名】三鬼 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】虎谷 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】側瀬 聡文
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030BA08
4K030BA11
4K030BA21
4K030BA42
4K030BA47
4K030EA04
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4K030KA36
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4K030KA41
5F045AA06
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5F045GB06
(57)【要約】
【課題】基板を収容するチャンバ内の状態を精度よく検出可能な成膜装置、および半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】一の実施形態によれば、成膜装置は、基板を収容するチャンバと、前記基板を支持するステージと、前記チャンバ内にガスを供給して、前記基板上に膜を形成するガス供給部とを備える。前記装置はさらに、前記チャンバ内の前記ステージの上方の第1箇所の圧力に応じて変化する第1値を検出する第1検出部と、前記第1値に基づいて、前記基板上に前記膜を形成する処理を制御する制御部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容するチャンバと、
前記基板を支持するステージと、
前記チャンバ内にガスを供給して、前記基板上に膜を形成するガス供給部と、
前記チャンバ内の前記ステージの上方の第1箇所の圧力に応じて変化する第1値を検出する第1検出部と、
前記第1値に基づいて、前記基板上に前記膜を形成する処理を制御する制御部と、
を備える成膜装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1値に基づいて、前記ステージの高さを制御する、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第1箇所は、前記ステージと、前記ガス供給部から供給されたガスを前記チャンバ内に供給するシャワーヘッドとの間に位置する、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第1値は、前記第1箇所の圧力と、前記チャンバ内の前記第1箇所と異なる第2箇所の圧力とに応じて変化する、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記第2箇所は、前記チャンバ内の前記ステージの下方に位置する、請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記第2箇所の圧力に応じて変化する第2値を検出する第2検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1値および前記第2値に基づいて、前記基板上に前記膜を形成する処理を制御する、請求項4に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記第1値は、前記第1箇所の圧力と前記第2箇所の圧力との圧力差である、請求項4に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記第2値は、前記第2箇所の圧力である、請求項6に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記第1検出部は、前記圧力差を検出して、前記圧力差に応じて変化する電気信号を出力する少なくとも1つのピエゾ素子を含む、請求項7に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記ステージは、第1部材と、前記第1部材上に設けられた前記ピエゾ素子と、前記ピエゾ素子上に設けられ、前記基板を支持する第2部材とを含む、請求項9に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第1検出部の複数のピエゾ素子により複数の第1箇所で検出された複数の第1値に基づいて、前記基板上に前記膜を形成する処理を制御する、請求項9に記載の成膜装置。
【請求項12】
半導体基板をチャンバ内に収容し、
前記半導体基板をステージにより支持し、
前記チャンバ内の前記ステージの上方の第1箇所の圧力に応じて変化する第1値を第1検出部により検出し、
前記チャンバ内にガス供給部からガスを供給して、前記第1値に基づいて、前記半導体基板上に膜を形成する処理を制御部により制御する、
ことを含む半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、成膜装置、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CVD(Chemical Vapor Deposition)装置等の成膜装置により基板上に膜を形成する場合、基板を収容するチャンバ内の状態を精度よく検出できることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板を収容するチャンバ内の状態を精度よく検出可能な成膜装置、および半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の実施形態によれば、成膜装置は、基板を収容するチャンバと、前記基板を支持するステージと、前記チャンバ内にガスを供給して、前記基板上に膜を形成するガス供給部とを備える。前記装置はさらに、前記チャンバ内の前記ステージの上方の第1箇所の圧力に応じて変化する第1値を検出する第1検出部と、前記第1値に基づいて、前記基板上に前記膜を形成する処理を制御する制御部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態のCVD装置の構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態のCVD装置の動作を説明するためのグラフである。
【
図3】第1実施形態のCVD装置の構成を説明するための平面図である。
【
図4】第1実施形態のCVD装置の動作を説明するためのシーケンス図である。
【
図5】第1実施形態のCVD装置の動作を説明するための別のシーケンス図である。
【
図6】第2および第3実施形態のCVD装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1~
図6において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のCVD装置の構成を示す模式図である。
図1のCVD装置は、例えばALD(Atomic Layer Deposition)装置である。
図1のCVD装置は、成膜装置の例である。
【0009】
本実施形態のCVD装置は、チャンバ11と、ステージ12と、回転シャフト13と、ガス供給部14と、ガス配管15と、シャワーヘッド16と、排気リング17と、バルブ18と、ポンプ19と、圧力計21と、制御部22と、高さ調整部23とを備えている。ステージ12は、下板12aと、上板12bと、1つ以上のピエゾ素子12cとを含んでいる。ガス供給部14は、複数のMFC(Mass Flow Controller)14a、14b、14c、14d、14eを含んでいる。下板12aは第1部材の例であり、上板12bは第2部材の例である。ピエゾ素子12cは第1検出部の例であり、圧力計21は第2検出部の例である。
【0010】
図1は、互いに垂直なX方向、Y方向、およびZ方向を示している。この明細書では、+Z方向を上方向として取り扱い、-Z方向を下方向として取り扱う。-Z方向は、重力方向と一致していてもよいし、重力方向と一致していなくてもよい。
【0011】
チャンバ11は、ウェハ1を収容する。
図1に示すウェハ1は、基板1aと膜1bとを含んでいる。基板1aは例えば、Si(シリコン)基板などの半導体基板である。膜1bは例えば、本実施形態のCVD装置により基板1a上に形成されたCVD膜である。本実施形態の膜1bは、金属元素と酸素とを含む金属膜であり、例えば、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)、およびO(酸素)を含むIGZO膜である。本実施形態では、基板1aを含むウェハ1がチャンバ11内に搬入され、チャンバ11内でCVDにより基板1a上に膜1bが形成され、基板1aと膜1bとを含むウェハ1がチャンバ11から搬出される。本実施形態では、基板1a上に膜1bを形成するなどの種々の処理を行い、その後にウェハ1を複数のチップに分割(ダイシング)することで、ウェハ1から複数の半導体装置を製造する。
【0012】
ステージ12は、チャンバ11内のウェハ1を支持する。ステージ12は、下板12aと、下板12a上に設けられた1つ以上のピエゾ素子12cと、これらのピエゾ素子12c上に設けられ、ウェハ1を支持する上板12bとを含んでいる。
図1では、上板12bの上面にウェハ1が載置されている。各ピエゾ素子12cは、各ピエゾ素子12cにかかる圧力を検出して、当該圧力に応じて変化する電気信号を出力する。本実施形態の各ピエゾ素子12cは、チャンバ11内のステージ12の上方の箇所の圧力と、チャンバ11内のステージ12の下方の箇所の圧力との圧力差を検出する。前者の箇所は第1箇所の例であり、後者の箇所は第2箇所の例であり、上記の圧力差は第1値の例である。ピエゾ素子12cのさらなる詳細については、後述する。
【0013】
回転シャフト13は、ステージ12の下板12aに取り付けられており、ステージ12を支持している。回転シャフト13は、ステージ12を矢印A2のように回転させることで、ステージ12上のウェハ1を回転させることができる。
【0014】
ガス供給部14は、チャンバ11内にガスを供給する。これにより、基板1a上にこのガスにより膜1bを形成することができる。本実施形態のガス供給部14は、Inを含むInガスと、Gaを含むGaガスと、Znを含むZnガスと、Oを含むOガスと、希釈ガスとを供給する。これにより、膜1bとしてIGZO膜を形成することができる。Inガス、Gaガス、およびZnガスは第1ガスの例であり、Oガスは第2ガスの例である。Oガスは、例えばO3(オゾン)ガスである。希釈ガスは、例えば希ガスである。ガス供給部14内のMFC14a~14eはそれぞれ、Inガス、Gaガス、Znガス、Oガス、および希釈ガスの流量を計測および制御する。
【0015】
ガス配管15は、ガス供給部14とシャワーヘッド16とを連結しており、ガス供給部14から供給されたガスをシャワーヘッド16に供給する。
【0016】
シャワーヘッド16は、ガス配管15からのガスをチャンバ11内に供給する。
図1に示すように、シャワーヘッド16は、チャンバ11内のステージ12の上方に配置されている。よって、シャワーヘッド16から噴射されたガスは、ステージ12上の基板1aの上面に到達する。その結果、基板1aの上面に膜1bが形成される。
【0017】
排気リング17は、チャンバ11の側壁に取り付けられており、チャンバ11内のガスを排出する。排気リング17は、バルブ18を介してポンプ19と連結されている。バルブ18が開いた状態でポンプ19が動作すると、チャンバ11内のガスが排気リング17へと排出される。
【0018】
圧力計21は、チャンバ11内の圧力を検出する。本実施形態の圧力計21は、チャンバ11内のステージ12の下方の箇所の圧力を検出して、当該圧力の検出結果を示す信号を出力する。上述のように、この箇所は第2箇所の例である。また、上記の圧力は第2値の例である。
【0019】
制御部22は、本実施形態のCVD装置の種々の動作を制御する。例えば、制御部22は、各ピエゾ素子12cから上記の電気信号を受信し、ステージ12の上方の箇所の圧力Paと、ステージ12の下方の箇所の圧力Pbとの圧力差ΔPを、この電気信号から取得する。また、制御部22は、圧力計21から上記の信号を受信し、ステージ12の下方の箇所の圧力Pbを、この信号から取得する。本実施形態の制御部22は、取得した圧力差ΔPおよび圧力Pbに基づいて、ステージ12の上方の箇所の圧力Paを算出し、算出した圧力Paに基づいて、基板1a上に膜1bを形成する処理(成膜処理)を制御する。例えば、制御部22は、算出した圧力Paに基づいて、基板1a上に膜1bを形成する際のステージ12の高さを好適な高さに制御する。これにより、基板1a上に好適な膜1bを形成することが可能となる。なお、制御部22は、圧力Paを算出せずに、取得した圧力差ΔPおよび圧力Pbに基づいて、成膜処理を制御してもよい。
【0020】
高さ調整部23は、ステージ12の下板12aに取り付けられており、ステージ12の高さを調整する。高さ調整部23は、ステージ12の高さを矢印A1のように変化させることで、ステージ12上のウェハ1の高さを変化させることができる。ステージ12の高さは、高さ調整部23の代わりに回転シャフト13により調整可能でもよいし、高さ調整部23および回転シャフト13により調整可能でもよい。制御部22は、高さ調整部23および/または回転シャフト13を動作させることで、ステージ12の高さを制御することができる。
【0021】
次に、引き続き
図1を参照し、本実施形態のCVD装置のさらなる詳細を説明する。
【0022】
図1は、チャンバ11内の領域R1、R2、R3を示している。領域R1、R2はおおむね、ステージ12の上面とシャワーヘッド16の下面との間に位置している。領域R3は、チャンバ11内のその他の領域である。具体的には、領域R1は、平面視でステージ12の中心付近に位置しており、領域R2は、平面視でステージ12の外周付近に位置している。領域R1、R2は、ステージ12の上方に位置している。一方、領域R3は例えば、ステージ12の下方の領域を含んでいる。
【0023】
ガス供給部14からのガスにより基板1a上に膜1bを形成する際、このガスは主に、シャワーヘッド16とステージ12との間の領域に供給される。よって、領域R1、R2内の圧力は、一般に領域R3内の圧力よりも高くなる。さらには、領域R1内の圧力が、一般に領域R2内の圧力よりも高くなる。その結果、ウェハ1の上面にかかる圧力が、ウェハ1の下面にかかる圧力よりも高くなる。本実施形態の各ピエゾ素子12cは、前者の圧力と後者の圧力との間の圧力差を検出する。具体的には、各ピエゾ素子12cは、領域R1(またはR2)と領域R3との圧力差を検出する。一方、圧力計21は、領域R3内の圧力を検出する。
【0024】
領域R1、R2内の圧力は、膜1bの膜質や形成過程に影響を与える。そのため、領域R1、R2内の圧力を精度よく検出することが望ましい。しかしながら、チャンバ11内の圧力を圧力計21により領域R3内で検出すると、R1、R2内の圧力より低い圧力が検出されてしまう。また、領域R1、R2内の圧力を圧力計21により検出しようとしても、圧力計21を領域R1、R2内に配置することは難しい。例えば、圧力計21を領域R1、R2内に配置すると、圧力計21付近の基板1a上に膜1bが形成され難くなってしまう。
【0025】
そこで、本実施形態のCVD装置は、領域R1と領域R3との圧力差を、各ピエゾ素子12cにより検出する。これにより、領域R1内の圧力に関する情報を、各ピエゾ素子12cの検出結果から取得することが可能となる。例えば、領域R1と領域R3との圧力差の検出結果と、領域R3内の圧力の検出結果とに基づいて、領域R1内の圧力を算出することが可能となる。各ピエゾ素子12cは、領域R1内の圧力の代わりに、領域R2内の圧力を検出してもよい。
【0026】
本実施形態の制御部22は、算出された領域R1内の圧力に基づいて、ステージ12の高さを制御する。ステージ12の高さは例えば、ウェハ1の上面の圧力を一定に維持するように制御される。これにより、一定の圧力下で基板1a上に膜1bを形成することが可能となる。ステージ12の高さは、ステージ12のどの箇所を基準に定めてもよい。本実施形態の制御部22は、算出された領域R1内の圧力に基づいて、ステージ12の上面の高さ(Z座標)を制御する。
【0027】
本実施形態の膜1bは、金属元素と酸素とを含む金属膜であり、例えば、In、Ga、Zn、およびOを含むIGZO膜である。この場合、金属元素を含むガスから金属膜を形成する際の吸着効率が、領域R1、R2内の圧力の影響を受けることや、この影響の大きさが金属元素の種類により異なることが問題となる。本実施形態によれば、ウェハ1の上面の圧力を一定に維持することで、このような問題を抑制することが可能となる。
【0028】
ALDなどのCVDにより膜1bが形成される際には、ガスの流量が大きく変化することが多いため、領域R1、R2内の圧力が大きく変化することが多い。本実施形態によれば、ウェハ1の上面の圧力を一定に維持することで、CVDを好適に実施することが可能となる。また、CVDを実施する際には、チャンバ11の入口付近の箇所にCVD膜が形成されてしまう場合がある(ローディング効果)。本実施形態では、ウェハ1の上面の圧力を好適な圧力に維持することで、このようなCVD膜の形成を低減させてもよい。
【0029】
制御部22の制御対象は、ステージ12の高さ以外でもよい。例えば、制御部22は、算出された領域R1内の圧力に基づいて、ガス供給部14から供給されるガスの流量を制御してもよい。これにより、ステージ12の高さを制御する場合と同様に、ウェハ1の上面の圧力を一定に維持することが可能となる。ただし、ウェハ1の上面の圧力は、ステージ12の高さにより制御した方が、ガスの流量により制御するよりも容易である。また、ガスの流量によりウェハ1の上面の圧力を高くすると、高価なガスの消費量が増加してしまう。よって、ウェハ1の上面の圧力は一般に、ステージ12の高さにより制御する方が好ましい。
【0030】
各ピエゾ素子12cによる圧力差の検出は、基板1a上に膜1bを形成している間に行われてもよいし、基板1a上に膜1bを形成する前に事前に行われてもよい。後者の場合には、実際の処理として基板1a上に膜1bを形成する前に、事前処理として基板1a上に膜1bを形成する。事前処理の際には、各ピエゾ素子12cが、個々の工程で圧力差を検出する。実際の処理の際には、制御部22が、事前処理の際に検出された圧力差に基づいて、個々の工程でステージ12の高さを制御する。例えば、実際の処理の工程A、工程B、工程Cにおけるステージ12の高さはそれぞれ、事前処理の工程A、工程B、工程Cにおける圧力差の検出結果に基づいて制御される。事前処理における圧力差の検出結果は例えば、実際の処理の際に利用するために、制御部22のストレージ内に保存される。
【0031】
このような事前処理を採用する場合、事前処理は、シミュレーションで行うことも考えられる。しかしながら、チャンバ11内の圧力の変化をシミュレーションで計算することは難しい。そこで、本実施形態の事前処理は、本実施形態のCVD装置を用いて実際に行うことが望ましい。
【0032】
図2は、第1実施形態のCVD装置の動作を説明するためのグラフである。
【0033】
図2の横軸は、MFC14eにより計測される希釈ガスの流量を示す。
図2の縦軸は、希釈ガスの圧力を示す。
図2は、ガス供給部14からチャンバ11内に希釈ガスが供給される際の、配管15内での希釈ガスの圧力と、チャンバ11(領域R1)内での希釈ガスの圧力とを示している。
【0034】
図2によれば、希釈ガスの流量が高くなると、配管15内での希釈ガスの圧力と、チャンバ11内での希釈ガスの圧力との差が大きくなることが分かる。これは、配管15に設けた圧力計での計測値を、チャンバ11内の圧力とみなすと、チャンバ11内の実際の圧力とこの計測値との誤差が大きくなることを示している。よって、チャンバ11内の圧力を、配管15に設けた圧力計で精度よく計測することは難しい。この誤差は、希釈ガスの流量が高くなるほど大きくなり、例えば希釈ガスの流量が500sccm以上になると顕著となる。これは、希釈ガス以外のガスを供給する場合でも同様である。
【0035】
よって、本実施形態のCVD装置は、チャンバ11(領域R1)内の圧力を、チャンバ11内のピエゾ素子12cを利用して計測する。これにより、精度のよい圧力計測を実現することが可能となる。
【0036】
図3は、第1実施形態のCVD装置の構成を説明するための平面図である。
【0037】
図3(a)は、本実施形態のステージ12の第1の例を示している。本例のステージ12は、下板12aと上板12bとの間に1つのピエゾ素子12cを含んでいる。このピエゾ素子12cは、ステージ12の中心Cと重なる位置に配置されている。この場合の制御部22は、このピエゾ素子12cにより検出された圧力差に基づいて、ステージ12の高さを制御する。
【0038】
図3(b)は、本実施形態のステージ12の第2の例を示している。本例のステージ12は、下板12aと上板12bとの間に複数のピエゾ素子12cを含んでいる。これらのピエゾ素子12cは、互いに離間されて配置されており、互いに異なる箇所の圧力差を検出する。この場合の制御部22は、これらのピエゾ素子12cにより検出された圧力差に基づいて、ステージ12の高さを制御する。例えば、ステージ12の高さが、これらのピエゾ素子12cにより検出された圧力差の平均または分布に基づいて制御される。圧力差の平均は、度数平均でも加重平均でもよい。
【0039】
図3(b)のピエゾ素子12cは、中心C上に配置された1つのピエゾ素子P1と、中心Cの近くに配置された4つのピエゾ素子P2と、中心Cから遠くに配置された8つのピエゾ素子P3とを含んでいる。例えば、4つのピエゾ素子P2が中心Cに対して同心円状に設けられ、8つのピエゾ素子P3が中心Cに対して同心円状に設けられている。制御部22は例えば、ピエゾ素子P1により検出された圧力差と、ピエゾ素子P2により検出された圧力差の平均と、ピエゾ素子P3により検出された圧力差の平均とに基づいて、ステージ12の高さを制御してもよい。
【0040】
図4は、第1実施形態のCVD装置の動作を説明するためのシーケンス図である。
図4は、ステージ12の高さの時間変化を示している。
【0041】
期間T1には、制御部22が、CVD装置の立ち上げ動作を行う。立ち上げ動作を行う際には、ステージ12の高さは、一定の高さに保たれる(待機状態)。
図4は、待機状態におけるステージ12の高さを、破線で示している。
【0042】
期間T2には、制御部22が、ピエゾ素子12cにより検出される圧力差と、ステージ12の高さとの対応関係を調査する事前シーケンスを行う。事前シーケンスは、ガスを供給して基板1a上に膜1bを形成することで行われてもよいし、単にガスを供給することで行われてもよい。後者の場合、事前シーケンスは、希釈ガスのみを供給することで行われてもよい。
図4は、希釈ガスのみを供給することで行われる事前シーケンスの例を示している。
【0043】
期間T3には、制御部22が、基板1a上に膜1bを形成するシーケンスを行う。
図4に示す期間T3は、Inガスを供給する期間と、希釈ガスを供給する期間と、Oガスを供給する期間と、希釈ガスを供給する期間とを順に含んでいる。これにより、膜1bの一部として、InおよびOを含む層が形成される。同様に、Gaガスを供給する期間と、希釈ガスを供給する期間と、Oガスを供給する期間と、希釈ガスを供給する期間とを順に含むように、期間T3の処理がさらに行われる。これにより、膜1bの一部として、GaおよびOを含む層が形成される。同様に、Znガスを供給する期間と、希釈ガスを供給する期間と、Oガスを供給する期間と、希釈ガスを供給する期間とを順に含むように、期間T3の処理がさらに行われる。これにより、膜1bの一部として、ZnおよびOを含む層が形成される。これらの層を交互に繰り返し形成することで、膜1bとしてIGZO膜が形成される。
【0044】
期間T3には、制御部22が、期間T2に取得された対応関係を用いて、ステージ12の高さを制御する。これにより、基板1a上に膜1bを形成する際のステージ12の高さを好適な高さに制御することが可能となり、基板1a上に好適な膜1bを形成することが可能となる。なお、期間T3において希釈ガスを供給する際(パージ期間)には、ステージ12の高さは、待機状態の高さに戻される。
【0045】
図5は、第1実施形態のCVD装置の動作を説明するための別のシーケンス図である。
【0046】
図5は、
図4の期間T2の事前シーケンスを行わずに、期間T3の膜1bの形成を行う場合を示している。Inガスの供給は、時間Taに開始されている。制御部22は、Inガスの供給が開始されると、ステージ12の高さを徐々に低下させる。
図5では、ステージ12の高さが、時間Taから時間Tbまで低下し、時間Tbから時間Tcまで上昇し、その後に最適な高さに維持されている。
図5に示す時間Tdには、ステージ12の高さがすでに最適な高さに達している。なお、ステージ12の高さは、時間Tb、Tcのような変化を経由せずに、時間Taの高さから時間Tdの高さに変化してもよい。
【0047】
Inガスの供給開始後に、制御部22は、ピエゾ素子12cにより検出される圧力差に基づいて、ステージ12の最適な高さを決定し、ステージ12を最適な高さに維持する。Inガスの供給と、ステージ高さの調整は、並行して行われる。
【0048】
図5に示す動作は、Gaガス、Znガス、およびOガスを供給する際にも同様に行われる。
図5は、Oガスを供給する際のステージ12の高さの変化を示している。
【0049】
また、
図5のシーケンスは、
図4の期間T3に行われてもよい。つまり、期間T2の事前シーケンスの後に、
図5の期間T3のシーケンスを行ってもよい。事前シーケンスに加えて、例えばInガスの供給と並行してステージ12の高さを調整してもよい。これにより、ステージ12の高さを、より正確に調整することができる。
【0050】
以上のように、本実施形態のCVD装置は、ステージ12の上方の箇所の圧力と、ステージ12の下方の箇所の圧力との圧力差を、各ピエゾ素子12cにより検出し、検出された圧力差に基づいて、基板1a上に膜1bを形成する処理(成膜処理)を制御する。よって、本実施形態によれば、チャンバ11内の状態を精度よく検出することが可能となり、これにより基板1a上に好適な膜1bを形成することが可能となる。
【0051】
(第2および第3実施形態)
図6は、第2および第3実施形態のCVD装置の構成を示す模式図である。
【0052】
図6(a)は、第2実施形態のCVD装置内のステージ12を示している。本実施形態のCVD装置の構成は、第1実施形態のCVD装置の構成と同様である。ただし、本実施形態のステージ12は、下板12aと上板12bとの間に、1つ以上のピエゾ素子12cの代わりに、1つ以上の弾性部材12dを含んでいる。また、本実施形態のCVD装置は、光学式センサ31を備えている。光学式センサ31は、発光部31aと、受光部31bと、演算部31cとを含んでいる。光学式センサ31は、第1検出部の例である。
【0053】
第1実施形態では、領域R1内の圧力が領域R3内の圧力より高くなると(
図1)、各ピエゾ素子12cにかかる圧力が変化する。第1実施形態の制御部22は、領域R1内の圧力と領域R3内の圧力との圧力差を、各ピエゾ素子12cから受信した電気信号から取得することができる。第1実施形態の制御部22は、取得した圧力差に基づいて、ステージ12の高さを制御する。
【0054】
一方、本実施形態では、領域R1内の圧力が領域R3内の圧力より高くなると、ステージ12の高さが変化する。理由は、下板12aと上板12bとの間の幅が、弾性部材12dの作用により変化するからである。光学式センサ31は、ステージ12の高さを光学的に検出し、ステージ12の高さの検出結果を示す信号を出力する。本実施形態の制御部22は、現在のステージ12の高さを、光学式センサ31から受信した信号から取得することができる。本実施形態の制御部22は、取得した高さに基づいて、ステージ12の高さを制御する。なお、光学式センサ31または制御部22は、光学式センサ31により検出された高さから上記の圧力差を算出し、制御部22は、この圧力差を用いて第1実施形態と同様の制御を行ってもよい。
【0055】
光学式センサ31では、発光部31aが、上板12bにレーザ光を発光する。レーザ光は、上板12bの上面で反射する。受光部31bは、上板12bで反射したレーザ光を受光する。演算部31cは、レーザ光の受光結果に基づいて、ステージ12の高さを算出する。なお、本実施形態のCVD装置は、ステージ12の高さを複数箇所で検出する複数の光学式センサ31を備えていてもよい。また、本実施形態のCVD装置は、ステージ12の高さを非光学式に検知する1つ以上のセンサを備えていてもよい。
【0056】
図6(b)は、第3実施形態のCVD装置内のステージ12を示している。本実施形態のCVD装置の構成は、第2実施形態のCVD装置の構成と同様である。ただし、本実施形態のステージ12は、下板12aと上板12bとの間に、1つ以上の弾性部材12dの代わりに、支持部材12eを含んでいる。
【0057】
本実施形態では、上板12bが、支持部材12e上にカンチレバー(片持ち梁)状態で設けられている。よって、領域R1内の圧力が領域R3内の圧力より高くなると、カンチレバーの弾性作用により、ステージ12の高さが局所的に変化する。本実施形態の光学式センサ31は、第2実施形態と同様に、ステージ12の高さを光学的に検出し、ステージ12の高さの検出結果を示す信号を出力する。その後の処理は、第2実施形態の場合と同様である。
【0058】
第2または第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、チャンバ11内の状態を精度よく検出することが可能となり、これにより基板1a上に好適な膜1bを形成することが可能となる。
【0059】
なお、本発明の実施形態は、次のような態様で実施してもよい。
【0060】
(付記1)
基板を収容するチャンバと、
前記基板を支持するステージと、
前記チャンバ内にガスを供給して、前記基板上に膜を形成するガス供給部と、
前記チャンバ内の前記ステージの上方の第1箇所の圧力に応じて変化する第1値を検出する第1検出部と、
前記第1値に基づいて、前記基板上に前記膜を形成する処理を制御する制御部と、
を備える成膜装置。
【0061】
(付記2)
前記制御部は、前記第1値に基づいて、前記ステージの高さを制御する、付記1に記載の成膜装置。
【0062】
(付記3)
前記第1箇所は、前記ステージと、前記ガス供給部から供給されたガスを前記チャンバ内に供給するシャワーヘッドとの間に位置する、付記1に記載の成膜装置。
【0063】
(付記4)
前記第1値は、前記第1箇所の圧力と、前記チャンバ内の前記第1箇所と異なる第2箇所の圧力とに応じて変化する、付記1に記載の成膜装置。
【0064】
(付記5)
前記第2箇所は、前記チャンバ内の前記ステージの下方に位置する、付記4に記載の成膜装置。
【0065】
(付記6)
前記第2箇所の圧力に応じて変化する第2値を検出する第2検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1値および前記第2値に基づいて、前記基板上に前記膜を形成する処理を制御する、付記4に記載の成膜装置。
【0066】
(付記7)
前記第1値は、前記第1箇所の圧力と前記第2箇所の圧力との圧力差である、付記4に記載の成膜装置。
【0067】
(付記8)
前記第2値は、前記第2箇所の圧力である、付記6に記載の成膜装置。
【0068】
(付記9)
前記第1検出部は、前記圧力差を検出して、前記圧力差に応じて変化する電気信号を出力する少なくとも1つのピエゾ素子を含む、付記7に記載の成膜装置。
【0069】
(付記10)
前記ステージは、第1部材と、前記第1部材上に設けられた前記ピエゾ素子と、前記ピエゾ素子上に設けられ、前記基板を支持する第2部材とを含む、付記9に記載の成膜装置。
【0070】
(付記11)
前記制御部は、前記第1検出部の複数のピエゾ素子により複数の第1箇所で検出された複数の第1値に基づいて、前記基板上に前記膜を形成する処理を制御する、付記9に記載の成膜装置。
【0071】
(付記12)
前記第1検出部は、前記ステージの高さを光学的に検出する、付記1に記載の成膜装置。
【0072】
(付記13)
前記ステージは、第1部材と、前記第1部材上に設けられた弾性部材と、前記弾性部材上に設けられ、前記基板を支持する第2部材とを含む、付記1に記載の成膜装置。
【0073】
(付記14)
前記ステージは、第1部材と、前記第1部材上に設けられた支持部材と、前記支持部材上にカンチレバーの状態で設けられ、前記基板を支持する第2部材とを含む、付記1に記載の成膜装置。
【0074】
(付記15)
前記ガス供給部は、金属元素を含む第1ガスと、酸素を含む第2ガスとを供給することで、前記金属元素と酸素とを含む前記膜を形成する、付記1に記載の成膜装置。
【0075】
(付記16)
半導体基板をチャンバ内に収容し、
前記半導体基板をステージにより支持し、
前記チャンバ内の前記ステージの上方の第1箇所の圧力に応じて変化する第1値を第1検出部により検出し、
前記チャンバ内にガス供給部からガスを供給して、前記第1値に基づいて、前記半導体基板上に膜を形成する処理を制御部により制御する、
ことを含む半導体装置の製造方法。
【0076】
(付記17)
前記第1値は、前記第1箇所の圧力と、前記チャンバ内の前記第1箇所と異なる第2箇所の圧力とに応じて変化する、付記16に記載の半導体装置の製造方法。
【0077】
(付記18)
前記第1値は、前記第1箇所の圧力と前記第2箇所の圧力との圧力差である、付記17に記載の半導体装置の製造方法。
【0078】
(付記19)
前記第1検出部は、前記圧力差を検出して、前記圧力差に応じて変化する電気信号を出力する少なくとも1つのピエゾ素子を含む、付記18に記載の半導体装置の製造方法。
【0079】
(付記20)
前記ステージは、第1部材と、前記第1部材上に設けられた前記ピエゾ素子と、前記ピエゾ素子上に設けられ、前記半導体基板を支持する第2部材とを含む、付記19に記載の半導体装置の製造方法。
【0080】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0081】
1:ウェハ、1a:基板、1b:膜、
11:チャンバ、12:ステージ、12a:下板、12b:上板、
12c:ピエゾ素子、12d:弾性部材、12e:支持部材、
13:回転シャフト、14:ガス供給部、14a:MFC、14b:MFC、
14c:MFC、14d:MFC、14e:MFC、15:ガス配管、
16:シャワーヘッド、17:排気リング、18:バルブ、19:ポンプ、
21:圧力計、22:制御部、23:高さ調整部、
31:光学式センサ、31a:発光部、31b:受光部、31c:演算部