(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040781
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】挟持工具
(51)【国際特許分類】
B25B 7/02 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
B25B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145358
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】391013634
【氏名又は名称】株式会社ツノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】角田 健二
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雄児
(72)【発明者】
【氏名】土田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 路一
【テーマコード(参考)】
3C020
【Fターム(参考)】
3C020PP01
3C020QQ05
(57)【要約】
【課題】被挟持物を挟持する際、挟持面部を被挟持物の真横から接触させることができ、押し出す力を同時に加えにくく、断面円形状等の滑りやすい被挟持物であっても強固に挟持可能な挟持工具を提供する。
【解決手段】前端に挟持部1を有し後端に柄部2を有する一対の挟持半体3と、交差状に配される前記一対の挟持半体3を開閉回動可能に連結する回動軸4とを含み、前記柄部2を操作することで前記挟持部1を開閉可能に構成した挟持工具であって、前記挟持部1の互いに対向する挟持面部5は夫々、前記挟持半体3の前端から所定範囲迄において内側に凸となる円弧状に形成された第一湾曲領域6を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端に挟持部を有し後端に柄部を有する一対の挟持半体と、交差状に配される前記一対の挟持半体を開閉回動可能に連結する回動軸とを含み、前記柄部を操作することで前記挟持部を開閉可能に構成した挟持工具であって、
前記挟持部の互いに対向する挟持面部は夫々、前記挟持半体の前端から所定範囲迄において内側に凸となる円弧状に形成された第一湾曲領域を有することを特徴とする挟持工具。
【請求項2】
請求項1記載の挟持工具において、前記第一湾曲領域に、前記挟持部を閉塞した状態で前記挟持面部が互いに当接する当接部が設けられるように構成されていることを特徴とする挟持工具。
【請求項3】
請求項2記載の挟持工具において、前記当接部は前記挟持部の前端に位置していることを特徴とする挟持工具。
【請求項4】
請求項1記載の挟持工具において、断面円形状の被挟持物を挟持した際、前記第一湾曲領域と前記被挟持物との当接部分および前記被挟持物の中心を一直線上に位置させることができるように構成されていることを特徴とする挟持工具。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の挟持工具において、前記挟持面部の前記第一湾曲領域の後方には、外側に凸となる円弧状に形成された第二湾曲領域が連設されていることを特徴とする挟持工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挟持工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペンチやプライヤー等の挟持工具は、回動軸によりX字状に回動開閉自在に交差連結されており、柄部の開閉操作により先端の挟持部(アゴ部)は回動を伴って開閉する。
【0003】
例えば特許文献1に開示されるように、挟持部の挟持面が、ぴったりと閉じる平坦面である場合、挟持面がV字に開いた状態で被挟持物に接触しV字を閉じるように力をかけて挟持するため、被挟持物を前方に押し出す力も同時に加わることになる。
【0004】
そのため、滑りやすい被挟持物、例えば断面円形状のものを挟持しようとした場合(例えば溝や六角穴がなめたボルトの頭部を横から挟持して回そうとする場合)、強固に掴もうとすると滑り抜けてしまう場合が往々にしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、被挟持物を挟持する際、挟持面部を被挟持物の真横から接触させることができ、前方若しくは後方に押し出す力を同時に加えにくく、断面円形状等の滑りやすい被挟持物であっても強固に挟持可能な、これまでにない挟持工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
前端に挟持部1を有し後端に柄部2を有する一対の挟持半体3と、交差状に配される前記一対の挟持半体3を開閉回動可能に連結する回動軸4とを含み、前記柄部2を操作することで前記挟持部1を開閉可能に構成した挟持工具であって、
前記挟持部1の互いに対向する挟持面部5は夫々、前記挟持半体3の前端から所定範囲迄において内側に凸となる円弧状に形成された第一湾曲領域6を有することを特徴とする挟持工具に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の挟持工具において、前記第一湾曲領域6に、前記挟持部1を閉塞した状態で前記挟持面部5が互いに当接する当接部8が設けられるように構成されていることを特徴とする挟持工具に係るものである。
【0010】
また、請求項2記載の挟持工具において、前記当接部8は前記挟持部1の前端に位置していることを特徴とする挟持工具に係るものである。
【0011】
また、請求項1記載の挟持工具において、断面円形状の被挟持物9を挟持した際、前記第一湾曲領域6と前記被挟持物9との当接部分Aおよび前記被挟持物9の中心Oを一直線上に位置させることができるように構成されていることを特徴とする挟持工具に係るものである。
【0012】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の挟持工具において、前記挟持面部5の前記第一湾曲領域6の後方には、外側に凸となる円弧状に形成された第二湾曲領域7が連設されていることを特徴とする挟持工具に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述のように構成したから、被挟持物を挟持する際、挟持面部を被挟持物の真横から接触させることができ、前方若しくは後方に押し出す力を同時に加えにくく、断面円形状等の滑りやすい被挟持物であっても強固に挟持可能な、これまでにない挟持工具となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図15】従来例で板を横向きに挟持した場合の概略説明図である。
【
図16】従来例で板を縦向きに挟持した場合の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0016】
柄部2を操作して挟持部1を閉塞し第一湾曲領域6で被挟持物を挟持すると、第一湾曲領域6の円弧状部分の一部が左右方向(真横)から被挟持物9に対向当接する。
【0017】
したがって、被挟持物9に当接する部分の前方および後方は被挟持物9に対して離隔し、強い挟持力で挟持しても被挟持物9を前方若しくは後方に押し出す力を同時に加えにくく滑り抜けにくい。
【0018】
例えば、第一湾曲領域6の曲率などを適宜設定して、断面円形状の被挟持物9を挟持した際、前記第一湾曲領域6と前記被挟持物9との当接部分Aおよび前記被挟持物9の中心Oを一直線上に位置させるように構成することができ、滑りやすい断面円形状の被挟持物9でも強固に挟持でき、例えば溝や六角穴がなめたボルトの頭部を横から挟持して良好に回すことが可能となる。
【実施例0019】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0020】
本実施例は、
図1に図示したように、前端に挟持部1を有し後端に柄部2を有する一対の挟持半体3と、交差状に配される前記一対の挟持半体3を開閉回動可能に連結する回動軸4とを含み、前記柄部2を操作することで前記挟持部1を開閉可能に構成した挟持工具である。
【0021】
具体的には、前記挟持部1の互いに対向する挟持面部5は夫々、前記挟持半体3の前端から所定範囲迄において(回動軸4に交差する断面の形状が)内側に凸となる円弧状に形成された第一湾曲領域6を有するものである。
【0022】
各部を具体的に説明する。
【0023】
本実施例の各挟持部1の挟持面部5は、
図2に図示したように、前端側に前記第一湾曲領域6が設けられ、第一湾曲領域6の後方には外側に凸となる円弧状に形成された第二湾曲領域7が連設されている。
【0024】
また、第二湾曲領域7の後方には切断刃10が連設されている。また、切断刃10と柄部2との間には回動軸4が設けられている。
【0025】
なお、本実施例では、挟持部1同士の対向方向を左右方向とし、回動軸方向(
図1の紙面手前奥方向)および左右方向と交差する方向を前後方向として以下説明する。
【0026】
本実施例においては、各挟持部1の挟持面部5には夫々、回動軸方向に延設される溝歯11(
図3(b)などでは図示を省略している。)が前後方向に複数並設され、回動軸方向から見たとき、第一湾曲領域6において溝歯11の歯先を前後方向に結ぶ仮想線が内側に凸となる円弧状となるように前記挟持面部5が構成されている。つまり、溝歯11を省略した各図の第一湾曲領域6の円弧状線は溝歯11の歯先を結んだ仮想線に沿った線である(第二湾曲領域7の円弧状線も同様。)。
【0027】
また、本実施例は、回動軸方向からみたとき、第一湾曲領域6に、挟持部1を閉塞した状態で挟持面部5が互いに当接する当接部8が設けられるように構成されている。具体的には、各第一湾曲領域6の円弧を構成する円20同士の接点が、当接部8に位置するように構成されている(当接部8は回動軸方向に延在し線状に当接する。)。
【0028】
具体的には、回動軸方向からみたとき、各第一湾曲領域6の円弧を構成する円20の円弧中心O´は、前記左右方向において一直線上に位置し、挟持部1を閉塞した状態で前記円弧中心O´同士を結ぶ仮想直線Xが第一湾曲領域6内に位置するように構成されている(この仮想直線X上に当接部8および接点が位置している。)。
【0029】
そして、
図3(b),4(b)に図示したように、断面円形状の被挟持物9を挟持した際、前記円弧中心O´、第一湾曲領域6と被挟持物9との当接部分Aおよび被挟持物9の中心Oを、左右方向において一直線上(仮想直線X上)に位置させることができるように構成されている。したがって、第一湾曲領域6の突出部分を被挟持物9に真横から当接させて強固に挟持できる。本実施例では、
図3,4のように、小径物であっても大径物であっても、第一湾曲領域6内で挟持すれば、真横から良好に挟持できる。
【0030】
なお、上述のように、歯溝11が存在することから、挟持部1で被挟持物9を挟持した際、被挟持物9には各挟持面部5の溝歯11の歯先が一若しくは複数ずつ当接するため、当接部分Aは一点ではなく実際にはある程度の範囲を有する。
【0031】
また、本実施例では、当接部8は挟持部1の前端に位置する構成としている(前記仮想直線Xが挟持部1の前端に位置するように構成されている。)。したがって、第一湾曲領域6のどの位置でも、掴みにくい断面円形状の被挟持物9を良好に挟持できるし、前端がぴったり閉じるため紙片や薄いシート体なども良好に挟持できる。
【0032】
また、板などの断面矩形状の被挟持物9は、特許文献1に開示されるような従来構成では、
図15,16に図示したように、横向きに掴む場合も縦向きに掴む場合も挟持部51の挟持面が被挟持物9の端部(角)に当たり該端部を挟持することになる。したがって、端部を前方に押し出す力も加わるため滑り抜けが生じ易い。この点、本実施例では被挟持物9の端部ではなく奥に入った部分を前方に押し出す力を加えることなく強固に挟持できる(後述の別例3,4参照)。図中、符合54は回動軸である。
【0033】
なお、前記接点および当接部8は挟持部1の前端位置に限らず、
図5~7に図示した別例1のように、前端より後方側に設ける(前記仮想直線Xが前端より後方側に位置するように構成する)こともできる。
【0034】
この場合、当接部8から後方では被挟持物9を良好に挟持できるが(
図6参照)、当接部8より前方で被挟持物9を挟持しようとすると、被挟持物9との当接部分Aと中心Oとが左右方向において一直線上とならず(仮想直線Xにも重ならず)、前方に押し出す力が生じる場合がある(
図7参照)。また、挟持部1前端が閉塞しないため、例えば紙片などは本実施例の構成に比べ若干掴みにくい場合がある。
【0035】
また、回動軸方向からみたとき、第一湾曲領域6の円弧を構成する円20同士が接点で接触する構成に限らず、
図8~10に図示した別例2のように、円20同士が2点で交わる構成(挟持部1を閉塞した状態で仮想直線Xが第一湾曲領域6外に位置する構成)とすることもできる。
【0036】
この場合、挟持部1の前端が当接部8となり、この当接部8に一方の交点が位置することになる。別例2の場合には、径がある程度大きい被挟持物9は良好に挟持できるが(
図9参照)、小径物を挟持しようとすると、被挟持物9との当接部分Aと中心Oとが左右方向において一直線上とならず、後方に押し出す力が生じる場合がある(
図10参照)。
【0037】
また、第一湾曲領域6は挟持部1の全長(挟持部1の前端位置から切断刃10の後端位置までの長さ)の少なくとも2%以上の範囲にわたって設けるのが好ましい。本実施例では約40%の範囲にわたって設けている。
【0038】
また、第一湾曲領域6の円弧の曲率半径は、本実施例では35mmとしている。当該曲率半径は好ましくは15mm~55mm程度であるが、1mmから400mmの範囲で適宜設定できる。
【0039】
例えば、曲率半径を330mmとした別例3(
図11,12)においては、従来例(
図15)に対し、横向きの薄板状の被挟持物9を挟持部1に深く入れても該挟持部1を角に当てることなく被挟持物9の奥に入った部分を強固に掴める形状となる。また、曲率半径を1.5mmとした別例4(
図13,14)においては、従来例(
図16)に対し、縦向きの薄板状の被挟持物9でも挟持部1を角に当てることなく良好に掴める形状となる。
【0040】
なお、本実施例は挟持部1の互いに対向する挟持面部5の前端から所定範囲迄に第一湾曲領域6を設けた構成としているが、挟持部1の互いに対向する挟持面部5の前端から所定領域迄には、回動軸方向からみたとき直線状に形成されたストレート部(平坦部分)を設け、その後方に第一湾曲領域6を連設する構成としても良い。この場合、ストレート部は第一湾曲領域6より狭い範囲で設ける。
【0041】
本実施例は上述のように構成したから、第一湾曲領域6の円弧状部分の一部が左右方向(真横)から被挟持物9に対向当接する際、被挟持物9に当接する部分の前方および後方は被挟持物9に対して離隔し、強い挟持力で挟持しても被挟持物9を前方若しくは後方に押し出す力を同時に加えにくく滑り抜けにくい。
【0042】
また、断面円形状の被挟持物9を挟持した際、前記第一湾曲領域6と前記被挟持物9との当接部分Aおよび前記被挟持物9の中心Oを一直線上に位置させることができ、滑りやすい断面円形状の被挟持物9でも強固に挟持でき、例えば溝や六角穴がなめたボルトの頭部を横から挟持して良好に回すことが可能となる。
【0043】
よって、本実施例は、被挟持物を挟持する際、挟持面部を被挟持物の真横から接触させることができ、前方若しくは後方に押し出す力を同時に加えにくく、断面円形状等の滑りやすい被挟持物であっても強固に挟持可能な、これまでにない挟持工具となる。