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特開2024-40786液状ガスケット硬化促進方法及び液状ガスケット硬化促進用治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040786
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】液状ガスケット硬化促進方法及び液状ガスケット硬化促進用治具
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/14 20060101AFI20240318BHJP
   F16J 15/00 20060101ALI20240318BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
F16J15/14 C
F16J15/00 C
F02F11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145367
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】塩野谷 晋
(57)【要約】
【課題】液状ガスケットの硬化を促進することが可能な液状ガスケット硬化促進方法等を提供する。
【解決手段】第1の部材10に形成された第1のガスケット保持面部と、第2の部材20に形成された第2のガスケット保持面部22との間に充填された液状ガスケットの硬化を促進させる液状ガスケット硬化促進方法を、第2の部材における第2のガスケット保持面部の背面部に、液状ガスケットの硬化を促進する所定の温度範囲に昇温された加熱治具100を当接させた状態で保持する工程を有する構成とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材に形成された第1のガスケット保持面部と、第2の部材に形成された第2のガスケット保持面部との間に充填された液状ガスケットの硬化を促進させる液状ガスケット硬化促進方法であって、
前記第2の部材における前記第2のガスケット保持面部の背面部に、前記液状ガスケットの硬化を促進する所定の温度範囲に昇温された加熱治具を当接させた状態で保持する工程を有すること
を特徴とする液状ガスケット硬化促進方法。
【請求項2】
前記第2の部材は少なくとも一部が鉄系金属からなり、
前記加熱治具は、前記鉄系金属に吸着する磁性体を有すること
を特徴とする請求項1に記載の液状ガスケット硬化促進方法。
【請求項3】
前記第2のガスケット保持面部は、前記第2の部材を前記第1の部材に締結する機械的締結手段が挿通されるフランジ部に設けられ、
前記加熱治具には前記機械的締結手段との干渉を防止する逃げ部が形成されていること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液状ガスケット硬化促進方法。
【請求項4】
前記第1の部材は、車両のトランスミッションケース又はエンジンブロックであって、
前記第2の部材は、前記トランスミッションケース又は前記エンジンブロックの内部部品を潤滑する潤滑油が貯留されるオイルパンであること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液状ガスケット硬化促進方法。
【請求項5】
第1の部材に形成された第1のガスケット保持面部と、第2の部材に形成された第2のガスケット保持面部との間に充填された液状ガスケットを硬化させる際に用いられる液状ガスケット硬化促進用治具であって、
前記第2の部材における前記第2のガスケット保持面部の背面部に、前記液状ガスケットの硬化を促進する所定の温度範囲に昇温された状態で当接されること
を特徴とする液状ガスケット硬化促進用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の部材の間に液状ガスケットを充填し硬化させる液状ガスケット硬化促進方法、及び、このような液状ガスケット硬化促進方法に用いられる液状ガスケット硬化促進用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のオイルパンに設けられるガスケットに関する技術として、例えば特許文献1には、液状ガスケットの充填量を増大し、かつ、液状ガスケットの硬化時間を短縮するため、延在方向における少なくとも一部の領域に液状ガスケットが充填されるガスケットにおいて、本体部の側面に沿って設けられる平板部と、液状ガスケットが充填される領域かつ本体部における下端部に配置され、本体部の側面から突き出た突起部とを備え、平板部が突起部に対して間隔をあけて配置され、突起部が延在方向において互いに間隔をあけて複数設けられるものが記載されている。
特許文献2には、液状ガスケットの硬化を促進しかつ、フランジ間の面圧の確保を容易とするため、オイルパンのフランジの取付面である幅方向の中央に突部を全周に連続形成し、ブロックフランジの取付面と反対側の上面(背面)にリブを突出させたものが記載されている。
特許文献3には、液状ガスケットの硬化時間を短縮し、リークの発生を防止するため、オイルパンとシリンダブロックのいずれか一方の締結フランジに、付加硬化型ガスケットの主剤、助剤を塗布し、オイルパンとシリンダブロックを締結するオイルパン取付け方法において、主剤がシリコン系組成物を含む成形体とし、助剤が白金系化合物を含む溶液とすることが記載されている。
特許文献4には、油漏れを生じることなく、シリンダブロックにオイルパンを容易に取り付けるため、オイルパンに位置決め治具を装着し、オイルパンに液状ガスケットを塗布し、位置決め治具をシリンダブロックに接触させることで、オイルパンをガイドしながらシリンダブロックの所定位置に配置し、オイルパンをシリンダブロックに固定後にオイルパンから位置決め治具を取り外すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-197580号公報
【特許文献2】特開平10-103152号公報
【特許文献3】特開2004-232512号公報
【特許文献4】特開2010-242638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液状ガスケット(Formed In Place Gasket,FIPG)は、液状あるいはゲル状の材料をフランジ面に塗布し、貼り合わせた後、硬化させて接着、シールするものである。
このような液状ガスケットとして、常温で硬化するRTVシリコン系の材料を用いたものが普及している。
RTVシリコン系の液状ガスケットは、空気中の湿気(水分)と反応し、ゴム状弾性体に硬化する。
このような液状ガスケットは、塗布後硬化して十分なシール性能が得られるまでにある程度の硬化時間を要するが、ガスケットが設けられる装置(一例として、トランスミッションやエンジンなど)の生産性を向上するため、液状ガスケットの硬化を迅速化することが求められている。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、液状ガスケットの硬化を促進することが可能な液状ガスケット硬化促進方法及び液状ガスケット硬化促進用治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る液状ガスケット硬化促進方法は、第1の部材に形成された第1のガスケット保持面部と、第2の部材に形成された第2のガスケット保持面部との間に充填された液状ガスケットの硬化を促進させる液状ガスケット硬化促進方法であって、前記第2の部材における前記第2のガスケット保持面部の背面部に、前記液状ガスケットの硬化を促進する所定の温度範囲に昇温された加熱治具を当接させた状態で保持する工程を有することを特徴とする。
これによれば、加熱治具からの第2の部材を介した熱伝達によって、未硬化の液状ガスケットを加熱し、液状ガスケットの硬化を促進することができる。
これにより、液状ガスケットが十分なシール性を発揮するまでの時間を短縮して次工程に移行するまでの待機時間を短縮することができる。
【0006】
本発明において、前記第2の部材は少なくとも一部が鉄系金属からなり、前記加熱治具は、前記鉄系金属に吸着する磁性体を有する構成とすることができる。
これによれば、加熱治具を第2の部材に磁力で吸着させることにより、工具や他の保持具等を用いることなく加熱治具を第2の部材に当接させた状態で保持することができる。
【0007】
本発明において、前記第2のガスケット保持面部は、前記第2の部材を前記第1の部材に締結する機械的締結手段が挿通されるフランジ部に設けられ、前記加熱治具には前記機械的締結手段との干渉を防止する逃げ部が形成されている構成とすることができる。
これによれば、逃げ部により機械的締結手段と加熱治具との干渉を防止するとともに、逃げ部が機械的締結手段を避けるよう加熱治具を配置することにより、加熱治具の第2の部材に対する位置決めを容易かつ確実に行うことができる。
【0008】
本発明において、前記第1の部材は、車両のトランスミッションケース又はエンジンブロックであって、前記第2の部材は、前記トランスミッションケース又は前記エンジンブロックの内部部品を潤滑する潤滑油が貯留されるオイルパンである構成とすることができる。
これによれば、車両のトランスミッションケースにオイルパンを取り付ける際に、液状ガスケットの硬化を促進し、車両あるいはトランスミッションの製造工程や修理作業等の効率を改善することができる。
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明の他の一態様に係る液状ガスケット硬化促進用治具は、これによれば、第1の部材に形成された第1のガスケット保持面部と、第2の部材に形成された第2のガスケット保持面部との間に充填された液状ガスケットを硬化させる際に用いられる液状ガスケット硬化促進用治具であって、前記第2の部材における前記第2のガスケット保持面部の背面部に、前記液状ガスケットの硬化を促進する所定の温度範囲に昇温された状態で当接されることを特徴とする。
これによれば、上述した液状ガスケット硬化促進方法の硬化と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、液状ガスケットの硬化を促進することが可能な液状ガスケット硬化促進方法及び液状ガスケット硬化促進用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用した液状ガスケット硬化促進方法の実施形態が適用されるトランスミッションのオイルパン周辺部の模式的側面視図である。
図2図1のII-II部矢視図である。
図3】本発明を適用した液状ガスケット硬化促進用治具の実施形態の外観斜視図である。
図4】実施形態の液状ガスケット硬化促進用治具が取り付けられた状態のトランスミッションのオイルパン周辺部の模式的側面視図である。
図5図4のV-V部矢視図である。
図6図5のIV-IV部模式的矢視断面図である。
図7】実施形態の液状ガスケット硬化促進用治具による硬化促進効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した液状ガスケット硬化促進方法、及び、液状ガスケット硬化促進用治具の実施形態について説明する。
実施形態の液状ガスケット硬化促進方法、及び、液状ガスケット硬化促進用治具は、例えば、乗用車等の車両の変速機構等が収容されるトランスミッションケースと、オイルパンとの結合部に用いられる。
【0013】
図1は、実施形態の液状ガスケット硬化促進方法が適用されるトランスミッションのオイルパン周辺部の模式的側面視図である。
図2は、図1のII-II部矢視図である。
【0014】
トランスミッションケース10は、例えば、図示しない変速機構、発進デバイス、AWDトランスファ、フロントディファレンシャル等の駆動系部品を収容する筐体(第1の部材)である。
変速機構は、例えば、チェーン式、ベルト式、トロイダル式などの無段変速機(CVT)バリエータや、複数のプラネタリギヤセットなどを有する構成とすることができる。
発進デバイスは、車速ゼロからの発進を可能とする装置であって、例えばトルクコンバータや湿式あるいは乾式のクラッチ等を有する構成とすることができる。
AWDトランスファは、変速機構部の出力を、前輪駆動機構と後輪駆動機構に配分するものである。
フロントディファレンシャルは、前輪駆動機構の一部を構成し、AWDトランスファの前輪側出力を減速する最終減速装置、及び、左右前輪の差回転を許容する差動機構などを備えている。
【0015】
トランスミッションケース10は、例えば、アルミニウム系合金の鋳造によって概形を形成されるとともに、必要箇所に機械加工(切削加工)が施されている。
トランスミッションケース10の下部には、開口11が形成されている。
開口11の周縁部には、本発明の第1のガスケット保持面部として機能する面部が機械加工によって形成されている。
【0016】
トランスミッションケース10の下部には、オイルパン20が設けられる。
オイルパン20は、開口11を閉塞する蓋状の部材(第2の部材)である。
オイルパン20は、本体部21、フランジ部22等を有する。
オイルパン20は、例えば、磁石を吸着可能な鉄系金属の板材(鋼板等)をプレス加工して形成されている。
【0017】
本体部21は、下方に張り出したトレイ状(パン状)に形成されている。
本体部21は、トランスミッション内の潤滑油、あるいは、潤滑油と作動油を兼ねた作動流体(オートマティックトランスミッションフルード・ATF)の一部を貯留する容器としても機能する。
【0018】
フランジ部22は、本体部21を上下方向から見たときの外周縁部に沿って設けられている。
フランジ部22は、オイルパン20を上下方向から(トランスミッションケース10側から)見たときに、本体部21の外周縁部から外側に張り出して形成されている。
フランジ部22は、トランスミッションケース10の開口11の周縁部に設けられた面部と協働し、ガスケット30を保持する第2のガスケット保持面部である。
フランジ部22には、ボルトB等の機械的締結手段が挿通されるボルト穴が、周方向に分散して設けられている。
オイルパン20は、ボルト穴に挿通されたボルトBを、トランスミッションケース10の開口11の周縁部に設けられた図示しないネジ穴に締結することで、トランスミッションケース10に取り付けられる。
【0019】
フランジ部22と、フランジ部22と対向するトランスミッションケース10の開口11の周縁部との間には、ガスケット30が設けられる。
ガスケット30は、例えばトランスミッションの製造工程や、修理、整備の現場において、オイルパン20をトランスミッションケース10の開口11に取り付ける前に、例えばRTVシリコン系の液状ガスケット(FIPG)をフランジ部22、開口11の周縁部の少なくとも一方に塗布し、その後硬化前にオイルパン20をトランスミッションケース10に締結し、さらに所定時間養生させることによって液状ガスケットが硬化し、形成される。
硬化後のガスケット30は、耐油性を有するゴム状の弾性体となる。
【0020】
本実施形態においては、このような液状ガスケットの硬化を迅速化するために、以下説明する治具(液状ガスケット硬化促進用治具)100を用いる。
図3は、本発明を適用した液状ガスケット硬化促進用治具の実施形態の外観斜視図である。
加熱治具100は、オイルパン20のフランジ部22の全周に沿って延在する環状の部材として形成されている。
加熱治具100は、例えば、所定の着磁方向に着磁された磁性体(一例として鉄系金属)によって、一体に形成されている。
加熱治具100の磁力(パラメータとして、例えば表面磁束密度)は、加熱治具100の自重を、オイルパン20への吸着力によって保持可能であるとともに、作業者が手作業で着脱可能な程度に設定される。
【0021】
加熱治具100は、オイルパン20のフランジ部22の下面部と当接する上面部101を有する。
環状に形成された加熱治具100を任意の箇所で切って見た横断面形状は、例えば、上面部101に沿った一辺を有する矩形状とすることができる。
上面部101は、フランジ部22とできるだけ大きな面積で面接触していることが好ましい。
【0022】
加熱治具100には、逃げ部102が形成されている。
逃げ部102は、加熱治具100をオイルパン20のフランジ部22に当接させた際に、加熱治具100とボルトBとの干渉を防止する機能を有する。
逃げ部102は、複数のボルトBのそれぞれに対応して設けられる。
逃げ部102は、例えば、環状の加熱治具100の内周縁部を外側に凹ませた凹部あるいは切り欠き部として構成することができる。
また、このような逃げ部102は、加熱治具100をフランジ部22に取り付ける際に、加熱治具100の位置決めを容易化する機能も有する。
【0023】
図4は、実施形態の液状ガスケット硬化促進用治具が取り付けられた状態のトランスミッションのオイルパン周辺部の模式的側面視図である。
図5は、図4のV-V部矢視図である。
実施形態の液状ガスケット硬化促進方法を含むオイルパンの取り付け方法においては、先ず、トランスミッションケース10の開口11の周縁部と、オイルパン20のフランジ部22の上面部(トランスミッションケース10側の面部)との少なくとも一方に、液状ガスケットを塗布する。
このとき、液状ガスケットは、開口11の周方向に沿って、全周にわたって連続的に塗布される。
【0024】
その後、オイルパン20のフランジ部22の上面部がトランスミッションケース10の開口11の周縁部に対向するようにオイルパン20をトランスミッションケース10に押し付ける。
この状態で、オイルパン20は、ボルトBによりトランスミッションケース10に締結される。
これにより、液状ガスケットは、開口11の周縁部とオイルパン20のフランジ部22との間隔を、全周にわたって連続的に閉塞した状態で圧縮され、この間隔に沿って広がり、間隔に充填される。
【0025】
次に、オイルパン20のフランジ部22の下面に、予め恒温槽などの外部熱源で加熱した加熱治具100を取り付ける。
このとき、加熱治具100の逃げ部102がボルトBと干渉しないように配置することにより、加熱治具100がオイルパン20に対して所定の位置となるよう位置決めすることができる。
加熱治具100は、それ自体が発生する磁力によって、オイルパン20に吸着し、工具や他の保持具等を用いることなく、フランジ部22に圧着した状態で保持される。
その後、所定の養生時間の経過後、加熱治具100は取り外される。
取り外された加熱治具100は、例えば、他のトランスミッションケース10へのオイルパン20の取り付けに備えて、再び恒温槽などの熱源によって加熱される。
【0026】
図6は、図5のIV-IV部模式的矢視断面図である。
ガスケット30には、厚肉部31、薄肉部32が設けられている。
厚肉部31は、薄肉部32に対して、フランジ部22の接合面部の法線方向に沿った厚みが大きくされている。
厚肉部31は、トランスミッションケース10の開口11における縁部側(環状のフランジ部22の内側)に沿って設けられている。
薄肉部32は、開口11から離れた側(フランジ部22の外側)に沿って設けられている。
厚肉部31と薄肉部32との境界部33においては、ガスケット30の厚みは、連続的に変化する。
【0027】
実施形態において、ガスケット30の材料として、加熱により硬化が促進される液状ガスケットを用いる。
ガスケット30を構成する液状ガスケットが未硬化の状態において、フランジ部22に加熱された加熱治具100が取り付けられると、加熱治具100に蓄熱された熱は、加熱治具100に対する温度勾配が低い方向に、すなわち、フランジ部22からガスケット30(液状ガスケット)に伝搬する。
ここで、上述した所定の硬化時間は、最も硬化に時間を要する厚肉部31において、硬化が十分に進行し、シール性を確保可能であることを考慮して設定することができる。
また、この硬化時間は、例えば周囲の気温などの環境条件に応じて変更することができる。例えば、液状ガスケット及び周囲の気温が低温となる冬季には、夏季に対して硬化時間を増加させることができる。
【0028】
図7は、実施形態の液状ガスケット硬化促進用治具による硬化促進効果を示すグラフである。
図7において、横軸は液状ガスケット塗布後の経過時間を示し、縦軸は硬化率を示している。
また、実施形態(加熱治具100仕様)のデータを実線で示し、本発明の比較例(治具なし)のデータを破線で示している。
【0029】
液状ガスケットが十分なシール性等を発揮するために必要な硬化率を、例えば80%程度に設定した場合、比較例では約24分を養生に要している。
これに対し、実施形態のように加熱治具100を用い、液状ガスケットを加熱することにより、液状ガスケットの硬化が促進され、実施形態においては、約16分で必要な硬化率が得られ、養生を完了することができる。
【0030】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)加熱治具100からのオイルパン20を介した熱伝達によって、未硬化の液状ガスケットを加熱し、液状ガスケットの硬化を促進することができる。
これにより、液状ガスケットがガスケット30として十分なシール性を発揮するまでの時間を短縮して次工程(例えばトランスミッションフルードの注入)に移行するまでの待機時間を短縮することができる。
(2)加熱治具100をオイルパン20に磁力で吸着させることにより、工具や他の保持具等を用いることなく加熱治具100をオイルパン20に当接させた状態で保持することができる。
(3)加熱治具100に設けた逃げ部102により、ボルトBと加熱治具100との干渉を防止するとともに、逃げ部102がボルトBを避けるよう加熱治具100を配置することにより、加熱治具100のオイルパン20に対する位置決めを容易かつ確実に行うことができる。
(4)車両のトランスミッションケース10にオイルパン20を取り付ける際に、液状ガスケットの硬化を促進し、車両あるいはトランスミッションの製造工程や修理作業等の効率を改善することができる。
【0031】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)液状ガスケット硬化促進方法、及び、液状ガスケット硬化促進用治具は、上述した実施形態の構成に限定されず、適宜変更することができる。
例えば、加熱治具の形状、構造、材質などは、上述した実施形態の構成に限らず、適宜変更することができる。
例えば、実施形態においては、加熱治具の全体を磁性体によって一体に形成しているが、磁性体を加熱治具に部分的に設けて、他の部分は非磁性体によって構成してもよい。
また、加熱治具を磁性体以外の手段によって保持するようにしてもよい。
(2)実施形態において、液状ガスケット硬化促進方法、及び、液状ガスケット硬化促進用治具は、一例として車両のトランスミッションケースとオイルパンとの間の液状ガスケットの硬化促進に用いているが、適用の対象となる第1の部材、第2の部材は、これらに限定されず適宜変更することができる。
例えば、本発明は、エンジンブロックとオイルパンとの間に設けられる液状ガスケットの硬化促進にも利用することができる。
(3)実施形態においては、加熱治具を予め恒温槽などの外部熱源を用いて加熱しているが、これに代えて、あるいは、これと併用して、加熱治具自体に例えば電気ヒータ等の熱源を設けてもよい。
(4)本発明において用いられる液状ガスケットの種類は、RTVシリコン系のものに限らず、加熱により硬化を促進可能な他種の液状ガスケットであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 トランスミッションケース 11 開口
20 オイルパン 21 本体部
22 フランジ部 B ボルト
30 ガスケット 31 厚肉部
32 薄肉部 33 境界部
100 加熱治具 101 上面部
102 逃げ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7