(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040789
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】タルト生地及び該タルト生地を使用したタルト
(51)【国際特許分類】
A21D 13/14 20170101AFI20240318BHJP
A21D 8/02 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A21D13/14
A21D8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145372
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増井 修
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB21
4B032DE06
4B032DG02
4B032DK02
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK47
4B032DP40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】原料混合後の寝かせを行わなくても成形性が良く、タルト生地と生地に充填したフィリング材とを同時焼成できる大量生産に適したタルト生地、タルト及びそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】タルト生地全体中、クッキー生地を37~80重量%、クッキーの粉砕物を15~55重量%、油脂組成物Bを2~8重量%含有し、クッキー生地は、クッキー生地中の穀粉100重量部に対して、油脂組成物A25~75重量部、卵(乾燥重量)1.2~8.5重量部、砂糖20~75重量部を含み、クッキー生地全体中の水分含量が12~20重量%であり、タルト生地は、タルト生地中の穀粉100重量部に対して、卵(乾燥重量)1.1~8重量部、砂糖18.5~73.5重量部、油脂組成物A及びBを27~77重量部含み、タルト生地全体中の水分含量が7~17.5重量%、クッキーの粉砕物は、クッキー生地が焼成されたクッキーの粉砕物である、タルト生地。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッキー生地、クッキーの粉砕物、油脂組成物Bを含む混合物からなるタルト生地であって、
前記クッキー生地は、クッキー生地中の穀粉100重量部に対して、油脂組成物A25~75重量部、卵(乾燥重量)1.2~8.5重量部、砂糖20~75重量部を含み、且つ前記クッキー生地全体中の水分含量が12~20重量%であり、
前記タルト生地は、タルト生地中の穀粉100重量部に対して、卵(乾燥重量)1.1~8重量部、砂糖18.5~73.5重量部、油脂組成物A及びBの合計量として27~77重量部を含み、且つ前記タルト生地全体中の水分含量が7~17.5重量%であり、
前記クッキーの粉砕物は、前記クッキー生地が焼成されたクッキーの粉砕物であって、前記クッキーの粉砕物の粒度は、目開き40mmの篩を通過し、且つ、目開き0.7mmの篩を通過しないものの含有量が、前記クッキーの粉砕物全体中60重量%以上であり、
タルト生地全体中、クッキー生地を37~80重量%、クッキーの粉砕物を15~55重量%、油脂組成物Bを2~8重量%含有する、タルト生地。
油脂組成物A:クッキー生地及びクッキーの粉砕物に含まれ、油脂含量が油脂組成物A全体中70重量%以上である。
油脂組成物B:クッキー生地及びクッキーの粉砕物とは別にタルト生地に含まれ、油脂含量が油脂組成物B全体中70重量%以上である。
【請求項2】
フィリング材が充填された請求項1に記載のタルト生地が焼成されたタルト。
【請求項3】
タルト生地全体中、クッキー生地が37~80重量%、クッキーの粉砕物が15~55重量%、油脂組成物Bが2~8重量%となるようにそれぞれを混合することを特徴とし、
前記クッキー生地は、クッキー生地中の穀粉100重量部に対して、油脂組成物A25~75重量部、卵(乾燥重量)1.2~8.5重量部、砂糖20~75重量部を含み、且つ前記クッキー生地全体中の水分含量が12~20重量%であり、
前記クッキーの粉砕物は、前記クッキー生地が焼成されたクッキーの粉砕物であって、前記クッキーの粉砕物の粒度は、目開き40mmの篩を通過し、且つ、目開き0.7mmの篩を通過しないものの含有量が、前記クッキーの粉砕物全体中60重量%以上であり、
タルト生地中の穀粉100重量部に対して、卵(乾燥重量)1.1~8重量部、砂糖18.5~73.5重量部、油脂組成物A及びBの合計量として27~77重量部を含み、且つ前記タルト生地全体中の水分含量が7~17.5重量%である、タルト生地の製造方法。
油脂組成物A:クッキー生地及びクッキーの粉砕物に含まれ、油脂含量が油脂組成物A全体中70重量%以上である。
油脂組成物B:クッキー生地及びクッキーの粉砕物とは別にタルト生地に含まれ、油脂含量が油脂組成物B全体中70重量%以上である。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法で得られたタルト生地を成形し、該タルト生地にフィリング材を充填してから、上火/150~220℃、下火/140~200℃で15~50分間焼成することを特徴とする、タルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タルト生地及びこのタルト生地を使用したタルトに関する。
【背景技術】
【0002】
タルトは、タルト生地(タルト台)と、フィリング材の組み合わせからなる菓子で、一般的な製法として洋菓子専門店等の少量生産の現場では、原料を混合した後に冷蔵庫で寝かせてから成形したタルト生地のみを一旦焼成(空焼き、白焼き)してタルト台を調製し、ここにフィリング材を充填して再度焼成を行うことで製造される。
【0003】
工場での大量生産においては、少量生産の現場と同様の製法で製造される場合や、生産効率の観点から、型に敷いたタルト生地中に直接フィリング材を充填して同時に焼成される場合がある。後者の場合、タルト生地とフィリング材がともに十分に加熱される条件で焼成すると、フィリング材が加熱され過ぎて、焦げや表面に割れが生じる。また、フィリング材に適した条件で加熱すると、タルト生地が生焼け状態になり、十分な焼き色や、満足のいくサクサクした食感が得られにくい。そのため、焦げや表面の割れをやや犠牲にするか、焼き色やサクサクした食感をやや犠牲にするか、或いは低めの温度で長めの時間焼成して生産効率を犠牲にする。更に、大量生産においても、成形性の観点からタルト生地の原料を混合した後の寝かせが必須であるため、生産効率は十分ではない。
【0004】
そこでこのような問題を解決するために、例えば、特許文献1では、タルト生地とフィリング生地の界面に、50℃で液状の可食性素材を介在させて焼成するタルト菓子の製造方法が開示されている。しかしながら、この製法では、成形性の観点からタルト生地の原料を混合した後の寝かせは必須であり、できたタルトも、焼成温度が低めのため、タルト台の焼き色は薄く、サクサクした食感も満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、原料混合後の寝かせを行わなくても成形性が良く、タルト生地と該生地に充填したフィリング材とを同時焼成できる大量生産に適したタルト生地、該タルト生地を使用し、該タルト生地が焼成された部分の焼き色が良好で、且つサクサクした食感のタルト、及び、それらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、原料として、クッキー生地、クッキーの粉砕物、及び、油脂組成物Bを含む混合物からなり、クッキー生地、クッキーの粉砕物、及び、油脂組成物Bをそれぞれ特定量含有するタルト生地は、原料混合後の寝かせを行わなくても成形性が良く、該タルト生地と該生地に充填したフィリング材とを同時焼成でき、該タルト生地が焼成された部分の焼き色は良好で、且つサクサクした食感であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第一は、クッキー生地、クッキーの粉砕物、油脂組成物Bを含む混合物からなるタルト生地であって、前記クッキー生地は、クッキー生地中の穀粉100重量部に対して、油脂組成物A25~75重量部、卵(乾燥重量)1.2~8.5重量部、砂糖20~75重量部を含み、且つ前記クッキー生地全体中の水分含量が12~20重量%であり、前記タルト生地は、タルト生地中の穀粉100重量部に対して、卵(乾燥重量)1.1~8重量部、砂糖18.5~73.5重量部、油脂組成物A及びBの合計量として27~77重量部を含み、且つ前記タルト生地全体中の水分含量が7~17.5重量%であり、前記クッキーの粉砕物は、前記クッキー生地が焼成されたクッキーの粉砕物であって、前記クッキーの粉砕物の粒度は、目開き40mmの篩を通過し、且つ、目開き0.7mmの篩を通過しないものの含有量が、前記クッキーの粉砕物全体中60重量%以上であり、タルト生地全体中、クッキー生地を37~80重量%、クッキーの粉砕物を15~55重量%、油脂組成物Bを2~8重量%含有する、タルト生地に関する。油脂組成物A:クッキー生地及びクッキーの粉砕物に含まれ、油脂含量が油脂組成物A全体中70重量%以上である。油脂組成物B:クッキー生地及びクッキーの粉砕物とは別にタルト生地に含まれ、油脂含量が油脂組成物B全体中70重量%以上である。本発明の第二は、フィリング材が充填された前記のタルト生地が焼成されたタルトに関する。本発明の第三は、タルト生地全体中、クッキー生地が37~80重量%、クッキーの粉砕物が15~55重量%、油脂組成物Bが2~8重量%となるようにそれぞれを混合することを特徴とし、前記クッキー生地は、クッキー生地中の穀粉100重量部に対して、油脂組成物A25~75重量部、卵(乾燥重量)1.2~8.5重量部、砂糖20~75重量部を含み、且つ前記クッキー生地全体中の水分含量が12~20重量%であり、前記クッキーの粉砕物は、前記クッキー生地が焼成されたクッキーの粉砕物であって、前記クッキーの粉砕物の粒度は、目開き40mmの篩を通過し、且つ、目開き0.7mmの篩を通過しないものの含有量が、前記クッキーの粉砕物全体中60重量%以上であり、タルト生地中の穀粉100重量部に対して、卵(乾燥重量)1.1~8重量部、砂糖18.5~73.5重量部、油脂組成物A及びBの合計量として27~77重量部を含み、且つ前記タルト生地全体中の水分含量が7~17.5重量%である、タルト生地の製造方法に関する。本発明の第四は、前記の製造方法で得られたタルト生地を成形し、該タルト生地にフィリング材を充填してから、上火/150~220℃、下火/140~200℃で15~50分間焼成することを特徴とする、タルトの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従えば、原料混合後の寝かせを行わなくても成形性が良く、タルト生地と該生地に充填したフィリング材とを同時焼成できる大量生産に適したタルト生地、該タルト生地を使用し、該タルト生地が焼成された部分の焼き色が良好で、且つサクサクした食感のタルト、及び、それらの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき、更に詳細に説明する。本発明のタルト生地は、原料として、クッキー生地、クッキーの粉砕物、及び、油脂組成物Bをそれぞれ特定量含有する混合物からなり、原料混合後の寝かせを行わなくても成形性が良く、型に敷いたタルト生地中に直接フィリング材を充填して焼成できる、つまり、タルト生地とフィリング材との同時焼成が可能なため、大量生産に適していることが特徴である。そして、該タルト生地にフィリング材が充填されてから焼成されたタルトにおいては、タルト生地が焼成された部分の焼き色が良好で、且つサクサクした食感である。
【0011】
ここで、本開示における寝かせとは、タルト生地用の原料を全て混合した後、1~15℃で2~24時間静置することである。
【0012】
前記クッキー生地は、穀粉、油脂組成物A、卵、砂糖をそれぞれ特定量含有し、且つクッキー生地全体中の水分含量が特定の範囲にある。
【0013】
前記クッキー生地中の穀粉は、穀物を挽いて粉末状にしたものであり、菓子の製造に通常用いられるものであれば、その由来や精製度合いに特に制限なく用いることができる。穀粉の由来としては、小麦、大麦、ライ麦、ソバ、コメ、とうもろこし等が例示できる。穀粉としては、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、ソバ粉、コメ粉、とうもろこし粉等が例示できる。タルト生地を焼成して得られるタルト台の風味や食感、大量生産性の観点から、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉が好ましく、小麦粉がより好ましい。特に、小麦粉を、クッキー生地中の穀粉全体中70重量%以上含むことが好ましい。小麦粉としては、強力粉、準強力粉、超強力粉、中力粉、薄力粉等を用いることができ、その中でも薄力粉が好ましい。
【0014】
油脂組成物は、油脂を連続相とする組成物を意味し、ショートニングのように油溶性の成分のみで構成されてもよいし、水を含む油中水型油脂組成物であってもよい。
【0015】
油脂組成物Aは、クッキー生地及びクッキーの粉砕物に含まれ、油脂含量が油脂組成物A全体中70重量%以上の油脂組成物である。
【0016】
前記クッキー生地及びクッキーの粉砕物中の油脂組成物Aとしては、油中水型乳化タイプのマーガリン、ファットスプレッド及びバター、並びに無水タイプのショートニング等が例示できる。食感の観点からは、油中水型乳化タイプの油脂組成物が望ましく、その中でも油脂組成物A全体中の油脂含量は70~95重量%がより好ましく、80~95重量%が更に好ましい。
【0017】
前記クッキー生地中の油脂組成物Aの含有量は、クッキー生地中の穀粉100重量部に対して、25~75重量部が好ましく、35~75重量部がより好ましく、45~70重量部が更に好ましい。含有量が25重量部より少ないと、タルト台のサクサクした食感が低下する場合がある。75重量部より多いと、焼き色が薄くなる場合がある。
【0018】
前記クッキー生地中の卵は、鶏卵を割卵して卵殻を取り除き、中身だけを集めたもので、液全卵、液卵黄、液卵白、生全卵、生卵黄、生卵白、乾燥全卵、乾燥卵黄、及び乾燥卵白等が例示でき、これらの群から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。前記クッキー生地中の卵は、液状のままでも乾燥した状態でもよく、殺菌、凍結等の処理が施されていてもよく、これらの1種以上の混合物でも使用できる。
【0019】
前記クッキー生地中の卵の含有量(乾燥重量)は、クッキー生地中の穀粉100重量部に対して、1.2~8.5重量部が好ましく、2~8重量部がより好ましく、3~7重量部が更に好ましい。含有量が1.2重量部より少ないと、タルト生地の成形性が悪くなる場合がある。また8.5重量部より多いと、タルト台のサクサクした食感が低下する場合がある。
【0020】
前記クッキー生地中の砂糖としては、上白糖、グラニュー糖、粉糖、ザラメ糖、三温糖、黒糖、きび砂糖、てんさい糖、和三盆糖等が例示でき、これらの群から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。風味の観点からは、上白糖、グラニュー糖、粉糖、及びザラメ糖から選ばれる少なくとも1種が好ましく、上白糖、及びグラニュー糖から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、上白糖が更に好ましい。
【0021】
前記クッキー生地中の砂糖の含有量は、クッキー生地中の穀粉100重量部に対して、20~75重量部が好ましく、30~70重量部がより好ましく、35~65重量部が更に好ましい。含有量が20重量部より少ないと、焼き色が薄くなったり、甘味が不足する場合がある。75重量部より多いと、甘くなり過ぎたり、タルト生地の成形性が悪くなる場合がある。
【0022】
前記クッキー生地中の水分含量は、クッキー生地全体中12~20重量%が好ましく、14~20重量%がより好ましく、15~19重量%が更に好ましい。水分含量が12重量%より少ないと、タルト生地の成形性が悪くなる場合があり、20重量%より多いと、タルトの焼き色が薄くなったり、タルト台のサクサクした食感が低下する場合がある。
【0023】
前記クッキー生地は、本発明の効果を損なわない範囲で、クッキーの製造に通常用いられるベーキングパウダー、乳製品、ココア、食塩、アーモンドパウダー等の粉末ナッツ類、香辛料、乳化剤、香料、着色料等の任意成分を添加することができる。
【0024】
前記タルト生地中のクッキー生地の含有量は、タルト生地全体中37~80重量%が好ましく、40~70重量%がより好ましく、43.5~60重量%が更に好ましい。含有量が37重量%より少ないと、タルト生地の成形性が悪くなる場合がある。80重量%より多いと、タルトの焼き色が薄くなったり、タルト台のサクサクした食感が低下する場合がある。
【0025】
前記クッキーの粉砕物は、前記クッキー生地が焼成されたクッキーの粉砕物である。前記クッキーの粉砕物の粒度は、食感と成形性の観点から、目開き40mmの篩を通過し、且つ、目開き0.7mmの篩を通過しないものの含有量が、前記クッキーの粉砕物全体中60重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上が更に好ましい。目開き40mmの篩を通過し、且つ、目開き0.7mmの篩を通過しないものの含有量が60重量%より少ないと、タルト生地の成形性が悪くなる場合がある。
【0026】
前記タルト生地中のクッキーの粉砕物の含有量は、15~55重量%が好ましく、25~55重量%がより好ましく、35~53重量%が更に好ましい。含有量が15重量%より少ないと、タルトの焼き色が薄くなったり、タルト台のサクサクした食感が低下する場合がある。55重量%より多いと、タルト生地の成形性が悪くなる場合がある。
【0027】
本発明のタルト生地は、前記クッキー生地及び前記クッキーの粉砕物に含まれる油脂組成物Aとは別に、油脂組成物Bを含む。
【0028】
油脂組成物Bは、クッキー生地及びクッキーの粉砕物が包含する油脂組成物A以外のタルト生地に含まれる油脂組成物であり、油脂含量が油脂組成物B全体中70重量%以上の油脂組成物である。
【0029】
油脂組成物Bとしては、前記油脂組成物Aと同じものが例示でき、同じ物を使用すれば良い。
【0030】
タルト生地中の油脂組成物Bの含有量は、タルト生地全体中2~8重量%が好ましく、3~7重量%がより好ましく、4~6重量%が更に好ましい。2重量%より少ないとタルト生地の成形性が悪くなる場合があり、8重量%より多いとタルト生地の成形性が悪くなったり、焼き色が薄くなる場合がある。
【0031】
本発明のタルト生地は、タルト生地中の穀粉100重量部に対して、卵(乾燥重量)1.1~8重量部、砂糖18.5~73.5重量部、油脂組成物A及びBの合計量として27~77重量部を含み、且つ前記タルト生地全体中の水分含量が7~17.5重量%である。
【0032】
本発明のタルト生地に充填されるフィリング材は、タルトの製造に通常用いられるものであれば、特に制限はないが、クリームチーズを主原料とし、これにクリーム、糖類、卵、風味原料等を適宜配合して調製したペースト状組成物や、小麦粉、澱粉、ナッツ類もしくはその加工品を主原料とし、これに糖類、油脂、乳製品、卵、風味原料等を加え、加熱殺菌してペースト状にしたフラワーペースト類等が例示できる。前記風味原料としては、ココア、チョコレート、コーヒー、果肉、果汁、芋類、豆類又は野菜類等が例示できる。
【0033】
本発明のタルト生地及びこのタルト生地を使用したタルトの製造方法を以下に例示する。まず、タルト生地用のクッキー生地を、菓子生地の代表的な製法であるシュガーバッター法に順じて製造することができる。即ち、前記クッキー生地全体中の水分含量が12~20重量%になるように、砂糖20~75重量部、油脂組成物A25~75重量部、卵(乾燥重量)1.2~8.5重量部、必要に応じて水を配合してミキシングして起泡させクリーム状にした後、更に穀粉100重量部を配合してミキシングし、クッキー生地を得ることができる。なお、穀粉を他の原料と一緒に混合するオールインミックス法でも調製することができるが、食感の観点からは、砂糖と油脂組成物Aを予めミキシングして、その他の原料を混合するシュガーバッター法が好ましい。
【0034】
次に、クッキーの粉砕物は、前記クッキー生地を冷蔵庫で2~24時間寝かせ、シート状に圧延した後、常法に従ってオーブン等で150~220℃で12~35分間焼成してクッキーを作製した後、室温で放冷してからフードプロセッサーや粉砕機等で粉砕し、篩分けして得ることができる。クッキーの粉砕物の粒度は、フードプロセッサーや粉砕機の回転速度や粉砕時間、回転刃の形状等で調整することができる。
【0035】
最後に、タルト生地全体中、前記クッキー生地37~80重量%、前記クッキーの粉砕物15~55重量%、前記油脂組成物B2~8重量%を含有するように、前記クッキー生地、前記クッキーの粉砕物、及び、前記油脂組成物Bを混合し、タルト生地を得ることができる。
【0036】
つまり、タルト生地中の穀粉100重量部に対して、卵(乾燥重量)1.1~8重量部、砂糖18.5~73.5重量部、油脂組成物A及びBの合計量として27~77重量部を含み、且つタルト生地全体中の水分含量が7~17.5重量%である、タルト生地を得ることができる。
【0037】
得られたタルト生地にフィリング材を充填して焼成することによりタルトを得ることができる。より具体的には、得られたタルト生地を成形し、次に、成形されたタルト生地に所望のフィリング材を充填してから、上火/150~220℃、下火/140~200℃の焼成温度で15~50分間焼成してタルトを得ることが好ましい。タルト生地の成形としては、得られたタルト生地を特定の重量に分割した後、タルト成形機等を用いて成形したり、或いは得られたタルト生地をシート状に圧延した後、型抜きをして、タルト型に生地を敷いて、型からはみ出した生地は麺棒でおとして、成形することができる。
【0038】
前記焼成温度は、上火/160~220℃、下火/140~190℃がより好ましく、上火/170~215℃、下火/145~180℃が更に好ましい。焼成温度が上火150℃及び/又は下火140℃より低いと、タルトの焼き色が薄くなったり、タルト台のサクサクした食感が得られない場合がある。一方、上火220℃及び/又は下火200℃より高いと、焼き色が濃くなり過ぎたり、フィリング材の表面が割れる場合がある。
【0039】
前記焼成する時間は、15~40分間がより好ましく、17~35分間が更に好ましい。焼成時間が15分間よりも短いと、タルトの焼き色が薄くなったり、タルト台のサクサクした食感が得られない場合がある。50分間より長いと、焼き色が濃くなり過ぎたり、フィリング材の表面が割れる場合がある。
【実施例0040】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0041】
実施例及び比較例で使用した原料は以下の通りである。
1)日清製粉(株)製「バイオレット」(水分含量:12.0重量%)
2)(株)カネカ製「コンセブールガトー」(水分含量:16.3重量%、油脂含量:83.1重量%)
3)キュピータマゴ(株)製「液全卵(殺菌)」(水分含量:76.1重量%)
4)日本精糖(株)製「上白糖P」(水分含量:0.8重量%)
5)(株)アイコク製「アイコク ベーキングパウダー 赤プレミアム」(水分含量:4.5重量%)
【0042】
(タルト生地の成形性の評価)
実施例及び比較例で作製したタルト生地の作製時の成形性を、以下の基準で評価した。ここで、タルト生地の作製時の成形性が良好であるとは、タルト生地が硬すぎたり、べたついたりすることがなく伸展性が良好であり、切れたりすることなく容易に目的の形を作ることができることをいう。
5点:実施例9のタルト生地よりも良く、成形性が極めて良好である
4点:実施例9のタルト生地と同等で、成形性が良好である
3点:実施例9のタルト生地よりも若干劣り、成形性が少し悪いが、生産性においては問題ないレベルである
2点:実施例9のタルト生地よりも劣り、成形性が悪い
1点:実施例9のタルト生地よりも明らかに劣り、成形性が非常に悪い
【0043】
(タルトの焼き色の評価)
実施例及び比較例で得られた各タルト(各水準10個)を目視で観察し、以下の基準で評価して、その平均値を評価点とした。
5点:実施例9のタルトよりも良く、タルト台及びフィリング材のどちらも焼き色が極めて良好である
4点:実施例9のタルトと同等で、タルト台及びフィリング材のどちらも焼き色が良好である
3点:実施例9のタルトよりも少し劣り、タルト台及び/又はフィリング材の焼き色が若干薄い又は若干濃いが、商品性は問題ないレベルである
2点:実施例9のタルトよりも劣り、タルト台及び/又はフィリング材の焼き色が薄い又は濃く、焼き色が悪い
1点:実施例9のタルトよりも明らかに劣り、タルト台及び/又はフィリング材の焼き色が非常に薄い又は非常に濃く、焼き色が極めて悪い
【0044】
(タルト台の食感の評価)
熟練した10人のパネラーに、実施例及び比較例で得られた各タルトを食してもらって官能評価を行い、その評価点の平均値を官能評価とした。その際の評価基準は以下の通りであった。
5点:実施例9のタルト台よりも良く、サクサクした食感が極めて良好である
4点:実施例9のタルト台と同等で、サクサクした食感が良好である
3点:実施例9のタルト台よりも少し悪く、サクサクした食感が若干劣るが、商品としては問題ないレベルである
2点:実施例9のタルト台よりよりも悪く、サクサクした食感が感じられない
1点:実施例9のタルト台よりよりも非常に悪く、サクサクした食感が全く感じられない
【0045】
<総合評価>
タルト生地の成形性、タルトの焼き色、及び、タルト台の食感の各評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
A:タルト生地の成形性、タルトの焼き色、及び、タルト台の食感が全て4.0点以上5.0点以下であるもの
B:タルト生地の成形性が4点又は5点で、タルトの焼き色、及び、タルト台の食感がどちらも3.5点以上5.0点以下で、且つ、3.5点以上4.0点未満が1つ以上あるもの
C:タルト生地の成形性、タルトの焼き色、及び、タルト台の食感が全て3.0点以上5.0点以下であり、且つ3.0点以上3.5点未満が1つ以上あるもの
D:タルト生地の成形性、タルトの焼き色、及び、タルト台の食感が全て2.0点以上5.0点以下であり、且つ2.0点以上3.0点未満が1つ以上あるもの
E:タルト生地の成形性、タルトの焼き色、及び、タルト台の食感の評価で、2.0点未満が少なくとも一つあるもの
【0046】
(製造例1) クッキー生地の作製
表1の配合に従って、25℃に温調した油脂組成物A(マーガリン):65重量部と上白糖:50重量部をボウルに投入し、ミキサーにてビーターを使用し、中速で3分間ミキシングしたところに、全卵:25重量部を投入して、低速で1分間ミキシングし、更に、篩通した薄力粉:100重量部とベーキングパウダー:1重量部を添加して低速で1分間ミキシングした後、冷蔵庫に12時間保存してから、厚さ2.5mmのシート状に圧延してクッキー生地を調製した。調製したクッキー生地中の穀粉100重量部に対する卵(乾燥重量)の含有量、及び、クッキー生地中の水分含量を表1に示した。
【0047】
【0048】
(製造例2、3) クッキー生地の作製
表1の配合に従って、上白糖:50重量部を、20重量部(製造例2)、又は、75重量部(製造例3)に変更した以外は、製造例1と同様にしてクッキー生地を調製した。調製したクッキー生地中の穀粉100重量部に対する卵(乾燥重量)の含有量、及び、クッキー生地中の水分含量を表1に示した。
【0049】
(製造例4、5) クッキー生地の作製
表1の配合に従って、全卵:25重量部を、5重量部(製造例4)、又は、35重量部(製造例5)に変更した以外は、製造例1と同様にしてクッキー生地を調製した。調製したクッキー生地中の穀粉100重量部に対する卵(乾燥重量)の含有量、及び、クッキー生地中の水分含量を表1に示した。
【0050】
(製造例6、7) クッキー生地の作製
表1の配合に従って、油脂組成物A:65重量部を、25重量部(製造例6)、又は、75重量部(製造例7)に変更した以外は、製造例1と同様にしてクッキー生地を調製した。調製したクッキー生地中の穀粉100重量部に対する卵(乾燥重量)の含有量、及び、クッキー生地中の水分含量を表1に示した。
【0051】
(製造例8) クッキーの粉砕物の作製
表2に従って、製造例1で調製したクッキー生地を190℃で18分間焼成してクッキーを作製した。作製したクッキーを室温で2時間放冷してから、フードプロセッサーで粉砕してクッキーの粉砕物を得た。調製したクッキー中の成分組成及び水分含量、得られたクッキー粉砕物中、目開き40mmの篩を通過し、且つ、目開き0.7mmの篩を通過しないものの含有量を表2に示した。
【0052】
【0053】
(製造例9~14) クッキーの粉砕物の作製
表2に従って、製造例1のクッキー生地を、製造例2のクッキー生地(製造例9)、製造例3のクッキー生地(製造例10)、製造例4のクッキー生地(製造例11)、製造例5のクッキー生地(製造例12)、製造例6のクッキー生地(製造例13)、又は、製造例7のクッキー生地(製造例14)に変更した以外は、製造例8と同様にしてクッキーの粉砕物を得た。得られたクッキー粉砕物中、目開き40mmの篩を通過し、且つ、目開き0.7mmの篩を通過しないものの含有量を表2に示した。
【0054】
(製造例15) チーズフィリングの作製
クリームチーズ(北海道乳業(株)製「リュクスクリームチーズ」):75重量部、クリームチーズ(ベルジャポン(株)製「キリクリームチーズ」):100重量部、ホイップクリーム((株)カネカ製「ラシェンテG」):7.5重量部、グラニュー糖(東洋精糖(株)製「グラニュー糖」):25重量部をボウルに投入し、ミキサーにてビーターを使用し、低速で5分間ミキシングして均一にした。ここに、卵白(キュピータマゴ(株)製「液卵白(殺菌)」):20重量部、グラニュー糖(東洋精糖(株)製「グラニュー糖」):15重量部、食塩(財団法人塩事業センター製「精製塩」):0.5重量部をホイップして作製したメレンゲ:35.5重量部、レモン果汁:0.5重量部を添加し、ビーターを使用し、低速で1分間ミキシングしてチーズフィリングを作製した。
【0055】
(製造例16) チョコレートフィリングの作製
クリームチーズ(北海道乳業(株)製「リュクスクリームチーズ」):40重量部、発酵バター((株)カネカ製「カネカ発酵バター 食塩不使用」):25重量部、ホイップクリーム((株)カネカ製「ラシェンテG」):100重量部、グラニュー糖(東洋精糖(株)製「グラニュー糖」):21重量部をボウルに投入し、ミキサーにてビーターを使用し、低速で5分間ミキシングして均一にした。ここに、湯煎して融解したスイートチョコレート(LE BOURNESDN BHD製「ダークチョコレートナゲット」):62.5重量部、湯煎して融解したミルクチョコレート(LE BOURNESDN BHD製「ミルクチョコレートナゲット」):37.5重量部、卵黄(三州食品(株)製「殺菌液卵黄」):20重量部を添加し、ビーターを使用し、低速で1分間ミキシングしてチョコレートフィリングを作製した。
【0056】
(実施例1) チーズタルトの作製
表3の配合に従って、クッキー生地(製造例1):43.5重量部、クッキーの粉砕物(製造例8):52.2重量部、25℃に温調した油脂組成物B(マーガリン):4.3重量部をボウルに投入し、ミキサーにてビーターを使用し、低速で2分間混合してタルト生地を得た後すぐに、生地20gをタルト成形機(マサミ産業(株)製、「KTM-90」、タルト型の直径:68mm、高さ:20mm)を用いて成形したタルト生地に、チーズフィリング(製造例15):30gを充填した後、オーブンにて上火215℃/下火150℃で、17分間焼成し、チーズタルトを得た。得られたタルト生地中の成分組成及び水分含量、得られたタルト生地の成形性、タルトの焼き色、及び、タルト台の食感の評価を表3に示した。
【0057】
【0058】
(実施例2~5、比較例1~5) チーズタルトの作製
表3の配合に従って、クッキー生地(製造例1)、クッキーの粉砕物(製造例8)、及び、油脂組成物Bの配合量を変更した以外は、実施例1と同様にしてチーズタルトを得た。得られたタルト生地中の成分組成及び水分含量、得られたタルト生地の成形性、タルトの焼き色、及び、タルト台の食感の評価を表3に示した。
【0059】
表3から明らかなように、タルト生地全体中、クッキー生地が37~80重量%、クッキーの粉砕物が15~55重量%、油脂組成物Bが2~8重量%の範囲にあるタルト生地を使用したチーズタルト(実施例1~5)は、いずれもタルト生地の成形性、タルトの焼き色、及び、タルト台の食感の評価が良好で、大量生産に適していた。一方、タルト生地全体中、クッキー生地が34.0重量%と少なく、クッキーの粉砕物が58.0重量%と多いタルト生地を使用したチーズタルト(比較例1)は、タルト生地の成形性の評価が悪く、総合評価はEであった。タルト生地全体中、クッキーの粉砕物が13.0重量%と少ないタルト生地を使用したチーズタルト(比較例2)は、タルトの焼き色、及び、タルト台の食感の評価が悪く、総合評価はDであった。タルト生地全体中、クッキー生地が82.0重量%と多いタルト生地を使用したチーズタルト(比較例3)は、タルトの焼き色、及び、タルト台の食感の評価が悪く、総合評価はDであった。タルト生地全体中、油脂組成物Bが1.0重量%と少ないタルト生地を使用したチーズタルト(比較例4)は、タルト生地の成形性の評価が悪く、総合評価はEであった。タルト生地全体中、油脂組成物Bが10.0重量%と多いタルト生地を使用したチーズタルト(比較例5)は、タルト生地の成形性、及び、タルトの焼き色の評価が悪く、総合評価はDであった。
【0060】
(実施例6~12) チーズタルトの作製
表4の配合に従って、製造例1のクッキー生地と製造例8のクッキーの粉砕物をそれぞれ、製造例2のクッキー生地と製造例9のクッキーの粉砕物(実施例6)、製造例3のクッキー生地と製造例10のクッキーの粉砕物(実施例7)、製造例4のクッキー生地と製造例11のクッキーの粉砕物(実施例8)、製造例5のクッキー生地と製造例12のクッキーの粉砕物(実施例9)、製造例6のクッキー生地と製造例13のクッキーの粉砕物(実施例10)、製造例7のクッキー生地と製造例14のクッキーの粉砕物(実施例11)、又は、製造例2のクッキー生地と製造例13のクッキーの粉砕物(実施例12)に変更した以外は、実施例1と同様にしてチーズタルトを得た。得られたタルト生地中の成分組成及び水分含量、得られたタルト生地の成形性、タルトの焼き色、及び、タルト台の食感の評価を表4に示した。
【0061】
【0062】
表4から明らかなように、タルト生地中の穀粉100重量部に対して、卵(乾燥重量)1.1~8重量部、砂糖18.5~73.5重量部、油脂組成物A及びBの合計量として27~77重量部を含み、且つタルト生地全体中の水分含量が7~17.5重量%の範囲にあり、タルト生地全体中、クッキー生地が37~80重量%、クッキーの粉砕物が15~55重量%、油脂組成物Bが2~8重量%の範囲にあるタルト生地を使用したチーズタルト(実施例1、6~12)は、いずれもタルト生地の成形性、タルトの焼き色、及び、タルト台の食感の評価が良好で、大量生産に適していた。
【0063】
(実施例13) チョコレートタルトの作製
実施例1において、製造例15のチーズフィリングを、製造例16のチョコレートフィリングに変更した以外は、実施例1と同様にしてチョコレートタルトを得た。得られたチョコレートタルトは、タルト生地の成形性(評価点:4点)、タルトの焼き色(評価点:4.2点)、及び、タルト台の食感(評価点:4.4点)は良好で、総合評価はAであり、大量生産に適していた。