(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040798
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】管状体の製造方法及び管状体の製造装置
(51)【国際特許分類】
B65B 9/207 20120101AFI20240318BHJP
【FI】
B65B9/207
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145384
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】吉田 恵太
【テーマコード(参考)】
3E050
【Fターム(参考)】
3E050AA02
3E050AA03
3E050AB02
3E050AB08
3E050BA07
3E050BA08
3E050BA14
3E050CA02
3E050CB01
3E050CC09
3E050DC03
3E050DG01
3E050FA02
3E050FB02
3E050FB07
3E050FC10
3E050GB02
(57)【要約】
【課題】管状体の品質を向上する。
【解決手段】管状体10は、筒状体12の外周面が表皮シート14で被覆されている。管状体10は、筒状体12と表皮シート14とを当接させた状態で筒状体12及び表皮シート14を搬送しながら、表皮シート14を筒状体12の外周面に巻き付けて製造される。管状体10の製造に際して、筒状体12と表皮シート14とを当接させる当接位置P1よりも下流側で、筒状体12の搬送経路を表皮シート14側に曲げるとよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体と表皮シートとを当接させた状態で前記筒状体及び前記表皮シートを搬送しながら、前記表皮シートを前記筒状体の外周面に巻き付けて、前記筒状体の外周面が前記表皮シートで被覆された管状体を製造する管状体の製造方法であって、
前記筒状体と前記表皮シートとを当接させる当接位置よりも下流側で、前記筒状体の搬送経路を前記表皮シート側に曲げる
ことを特徴とする管状体の製造方法。
【請求項2】
前記当接位置と前記筒状体に対する前記表皮シートの巻き付けを完了する完了位置との間で、前記筒状体を押さえ部材により前記表皮シート側へ押して、前記筒状体の搬送経路を前記表皮シート側に曲げる請求項1記載の管状体の製造方法。
【請求項3】
筒状体と、前記筒状体の外周面を被覆する表皮シートとを有する管状体の製造装置であって、
前記筒状体と前記表皮シートとを当接させた状態で搬送する搬送部と、
前記搬送部による搬送中に前記筒状体を前記表皮シート側へ押して、前記筒状体の搬送経路を前記表皮シート側に曲げる押さえ部材と、を備える
ことを特徴とする管状体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管状体の製造方法及び管状体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空調用の熱媒管や給水管などの配管を被覆して、配管を保温や保護するための表皮付き管状体がある(例えば、特許文献1参照)。このような表皮付き管状体は、発泡体などの管状体と、管状体の外周面を被覆する表皮とを備えており、管長方向にスリットが形成されている。表皮付き管状体は、スリットから配管を挿入することで配管の外側に取り付けられる。その後、表皮のヒレ状部分を貼り付け、スリットが塞がれることで配管に固定される。
【0003】
特許文献1の表皮付き管状体は、以下のように製造されている。管状体が管長方向に繰り出されるとともに、シート面に粘着剤が塗布された表皮シートがシート長方向に繰り出される。管状体と表皮シートとが一次成形ガイドを通過する際に、管長方向がシート長方向に沿うように管状体が表皮シートの粘着剤塗布面側に対向配置される。そして、管状体が一次成形ガイドの上方から繰り出されるとともに、表皮シートが一次成形ガイドの下方から繰り出され、管状体と表皮シートとが一次成形ガイドの入口で合流する。一次成形ガイドにおいて、表皮シートのシート幅方向の両端部が持ち上げられて表皮シートが管状体に巻き付けられる。これにより、シート幅方向の一端部に所定幅で張り出したヒレ状部分を除いて、表皮シートが管状体の外周面に貼り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の製造方法であると、一次成形ガイドにおいて、表皮シートの両端部が持ち上げられて管状体の外周面に巻き付けられる際に重力により表皮シートにシワが生じたり、表皮シートの張りが強くなり過ぎて、得られる表皮付き管状体の形状が悪化したりするなど、要求される品質を満たさないことがある。
【0006】
本発明は、従来の技術に係る前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、品質がよい管状体が得られる管状体の製造方法及び管状体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る管状体の製造方法の第1態様は、
筒状体と表皮シートとを当接させた状態で前記筒状体及び前記表皮シートを搬送しながら、前記表皮シートを前記筒状体の外周面に巻き付けて、前記筒状体の外周面が前記表皮シートで被覆された管状体を製造する管状体の製造方法であって、
前記筒状体と前記表皮シートとを当接させる当接位置よりも下流側で、前記筒状体の搬送経路を前記表皮シート側に曲げることを要旨とする。
【0008】
本発明に係る管状体の製造方法の第2態様は、前記製造方法の第1態様において、
前記当接位置と前記筒状体に対する前記表皮シートの巻き付けを完了する完了位置との間で、前記筒状体を押さえ部材により前記表皮シート側へ押して、前記筒状体の搬送経路を前記表皮シート側に曲げるようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る管状体の製造装置の第1態様は、
筒状体と、前記筒状体の外周面を被覆する表皮シートとを有する管状体の製造装置であって、
前記筒状体と前記表皮シートとを当接させた状態で搬送する搬送部と、
前記搬送部による搬送中に前記筒状体を前記表皮シート側へ押して、前記筒状体の搬送経路を前記表皮シート側に曲げる押さえ部材と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る管状体の製造方法によれば、筒状体の外周面を表皮シートで被覆して得られる管状体の品質を向上できる。
本発明に係る管状体の製造装置によれば、筒状体の外周面を表皮シートで被覆して得られる管状体の品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係る管状体の一部を示す斜視図であり、(a)は配管に取り付ける前であり、(b)は配管に取り付けた状態を示す。
【
図2】実施例に係る管状体の製造装置を示す概略側面図である。
【
図3】表皮シートに付与される胴体固定部及び閉止固定部の配置を示す説明図である。
【
図4】(a)は
図2のA-A線で切断した概略断面図であり、(b)は
図2のB-B線で切断した概略断面図であり、(c)は
図2のC-C線の位置で切断した概略断面図である。なお、(b)及び(c)において、当接位置にある表皮シート及び筒状体の位置を2点鎖線で示している。
【
図5】(a)は
図2のD-D線で切断した概略断面図であり、(b)は
図2のE-E線で切断した概略断面図である。なお、(a)において、当接位置にある表皮シート及び筒状体の位置を2点鎖線で示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る管状体の製造方法及び管状体の製造装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例0013】
図1に示すように、実施例に係る管状体10は、筒状体12と、筒状体12の外周面を被覆する表皮シート14とを備えている。また、管状体10は、筒状体12の外側から内側の空洞部分に到達するスリット16と、スリット16を塞ぐ閉止片18とを有している。スリット16は、筒状体12の管長全体に亘って形成されている。表皮シート14は、筒状体12の外周面に対して、スリット16で分断された一方の端縁近傍から他方の端縁近傍にかけて巻かれている。管状体10において、筒状体12と表皮シート14とが固定されている。表皮シート14が筒状体12の外周面全体に固定されてもよいが、実施例では、表皮シート14が筒状体12の外周面における周方向の一部範囲に固定されている。実施例では、表皮シート14の一縁部が、筒状体12の外周面におけるスリット16の一縁部近傍に、胴体固定部20で固定されている。また、表皮シート14の他縁部に延びる閉止片18の根元部分が、筒状体12の外周面におけるスリット16の他縁部近傍に、胴体固定部20で固定されている。なお、実施例の胴体固定部20は、両面テープである。このように、実施例の管状体10は、胴体固定部20以外において、筒状体12の外周面と表皮シート14とが接しているだけである。
【0014】
図1(a)に示すように、実施例の閉止片18は、表皮シート14を延長して形成されている。閉止片18は、閉止片18を管状体10の外周面に固定する閉止固定部22を有している。実施例の閉止固定部22は、両面テープである。
【0015】
筒状体12は、管状体10に求める機能に応じて材料を選択すればよいが、例えば、ポリエチレンフォームなどのポリオレフィン系フォームや、ポリウレタンフォームなどの発泡体を用いると、管状体10の断熱性を向上できることから好ましい。また、筒状体12は、スリット16を開閉可能な柔軟性を有しているとよい。表皮シート14は、管状体10に求める機能に応じて材料を選択すればよいが、例えば、ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどの樹脂を用いるとよく、発泡体のような気泡を有していない所謂ソリッド樹脂が、管状体10の耐候性を向上できることから好ましい。
【0016】
図1(b)に示すように、管状体10は、スリット16から配管100を挿入して、配管100の周りに取り付けられる。次に、閉止片18がスリット16を覆うように配置され、保護紙24を剥がして露出させた閉止固定部22が表皮シート14の前記一縁部の外表面に貼り付けられることで、管状体10が配管100に固定される。実施例の管状体10は、配管100の保温や保冷を図る保護材として用いられる。
【0017】
図2に示すように、実施例に係る管状体10の製造装置30は、表皮シート14と筒状体12とを当接させた状態で搬送する搬送部32を備えている。ここで、搬送部32において、筒状体12及び表皮シート14が合流する(当たり始める)位置を当接位置P1という。実施例では、当接位置P1において、表皮シート14が下側で、筒状体12が上側に配置される。なお、以下の説明において、「表皮シート14側」(実施例では下側)及び「表皮シート14と反対側」(実施例では上側)と方向を説明する場合、特に断りがないならば、当接位置P1での表皮シート14及び筒状体12の配置を基準とする。また、「上流側」及び「下流側」は、筒状体12及び表皮シート14の搬送方向を基準とする。
【0018】
搬送部32は、押さえ部材46,48、案内部材50,52、及び送り部54を含む。搬送部32では、送り部54によって表皮シート14及び筒状体12が一緒に引っ張られることにより、表皮シート14及び筒状体12が一緒に搬送される。また、搬送部32では、後述のシート供給部34と送り部54との間のシート搬送速度の差によって、表皮シート14が張られた状態を実現している。
【0019】
製造装置30は、ロール状の原反26から引き出された表皮シート14を、筒状体12と当接する当接位置P1へ向けて案内するシート供給部34を備えている。実施例のシート供給部34は、ローラ形状であり、その周面に、表皮シート14が平らに展開した状態で巻き掛けられている(
図3参照)。実施例のシート供給部34は、円周の上端から表皮シート14を、搬送部32に向けて水平に送り出す。シート供給部34は、表皮シート14の搬送に同期して回転可能である。
【0020】
図3に示すように、製造装置30は、胴体固定部20及び閉止固定部22を、表皮シート14に付与する付与部36を備えている。実施例の付与部36は、3本のテープリールのそれぞれから引き出した胴体固定部20及び閉止固定部22の一面を表皮シート14に貼り付けて、表皮シート14の搬送に伴って胴体固定部20及び閉止固定部22を表皮シート14に連続的に付与する。また、製造装置30は、付与部36の下流側において、胴体固定部20から剥離した保護紙24を回収する回収部38を備えている。回収部38は、当接位置P1の上流側に設けられ、実施例では、吸引により保護紙24を回収する。
【0021】
図2に示すように、製造装置30は、筒状体12を当接位置P1へ案内する筒状体供給部40を備えている。実施例の筒状体供給部40は、樋状の通路である。筒状体供給部40は、筒状体12の直径に合わせて幅が設定されており、筒状体12の幅方向の位置を所定の中心位置に揃えた状態で、筒状体12を、その管長方向に搬送する。実施例の筒状体供給部40は、シート供給部34の上側に位置しており、シート供給部34の上端から繰り出された表皮シート14の上側に筒状体12を送り出す。
【0022】
製造装置30は、搬送部32の下流側に、シート供給部34から送り出された表皮シート14を筒状に成形するシート成形部材44を備えている。シート成形部材44は、管状体10の外周面に合わせた大きさの通孔44aと、通孔44aに繋がる切れ目44bとを有している(
図5(b)参照)。また、シート成形部材44は、通孔44aの上流側に、表皮シート14の縁部を切れ目44b側へ案内する案内面44cを有している(
図2参照)。実施例のシート成形部材44は、通孔44aの上部に切れ目44bが設けられている。シート成形部材44は、上流から下流に向かうにつれて上方傾斜する案内面44cによって、表皮シート14の両方の縁部を持ち上げて、表皮シート14を上側に配置された筒状体12の外周面に巻き付けるように案内する。また、シート成形部材44は、表皮シート14において閉止片18となる片側の縁部を、切れ目44bを通るように案内する(
図5(a)参照)。更に、シート成形部材44は、通孔44aを通過する筒状体12の外周面に巻き付いた表皮シート14を外側から押さえ、胴体固定部20により筒状体12と表皮シート14とを貼り合わせる(
図5(b)参照)。
【0023】
図2に示すように、実施例のシート成形部材44は、筒状体12の案内を開始する開始位置P2から通孔44aの出口まで、筒状体12の搬送経路が水平になるように案内する。そして、シート成形部材44における通孔44aの出口が、筒状体12に対する表皮シート14の巻き付けが完了する完了位置P3となっている。
【0024】
製造装置30は、搬送部32による搬送中に筒状体12を表皮シート14側(実施例では下側)へ押して、筒状体12の搬送経路を表皮シート14側(実施例では下側)に曲げる押さえ部材46,48を備えている。実施例の押さえ部材46,48は、筒状体12の搬送に伴って回転する従動ローラである。押さえ部材46,48は、筒状体12を挟んで表皮シート14と反対側(実施例では上側)に設置されている。また、押さえ部材46,48は、当接位置P1にある筒状体12における表皮シート14と反対側の端(実施例では上端)よりも、表皮シート14側(実施例では下側)において、表皮シート14と当接するように設置されている。実施例では、第1押さえ部材46は第2押さえ部材48よりも上流側に設置されており、第2押さえ部材48は第2押さえ部材48よりも表皮シート14側(実施例では下側)に設置されている。当接位置P1での筒状体12の搬送経路と、押さえ部材46,48で曲げられた筒状体12の搬送経路とのなす角度である傾斜角αが、鈍角であることが好ましい。このように、筒状体12の搬送経路を比較的緩い角度で曲げることで、表皮シート14の張りが強くなり過ぎることを防止できる。
【0025】
押さえ部材46,48は、完了位置P3よりも上流側に配置されている。なお、押さえ部材46,48は、開始位置P2よりも上流側に配置され、筒状体12がシート成形部材44に到達する前に、筒状体12の搬送経路を当接位置P1の搬送経路から曲げている。なお、押さえ部材46,48により表皮シート14側(実施例では下側)に曲げられた筒状体12の搬送経路は、シート成形部材44により表皮シート14と反対側(実施例では上側)に再び曲げられ、水平に戻される。押さえ部材46,48は、1基でもよいが、搬送部32での筒状体12及び表皮シート14の搬送方向に複数基設置してもよい。
【0026】
図5(a)に示すように、押さえ部材46,48により開始位置P2での筒状体12(
図5(a)の実線)が、当接位置P1での筒状体12(
図5(a)の2点鎖線)よりも、表皮シート14側(実施例では下側)に変位している。ここで、当接位置P1を通る筒状体12と開始位置P2を通る筒状体12との間の変位寸法H(
図2参照)を、筒状体12の直径程度に設定することが好ましい。これにより、搬送部32において表皮シート14に適度なテンションをかけつつ、筒状体12の搬送経路の傾斜角αを比較的緩い角度とすることができる。
【0027】
図2に示すように、製造装置30は、表皮シート14と共に搬送中の筒状体12を案内する案内部材50,52を備えていてもよい。案内部材50,52は、筒状体12を挟んで表皮シート14と反対側(実施例では上側)に設置されている。ここで、案内部材50,52は、筒状体12が表皮シート14と反対側(実施例では上側)へ移動することを制限し、筒状体12と表皮シート14との搬送方向を揃える。案内部材50,52は、1基でもよいが、筒状体12及び表皮シート14の搬送方向に複数基設置してもよい。実施例では、第1案内部材50と、第1案内部材50の下流側に間隔をあけて配置された第2案内部材52とを備えている。第1案内部材50は、搬送部32において第1押さえ部材46の上流側に配置されて、押さえ部材46,48によって搬送経路を曲げられる前の筒状体12を案内している。第2案内部材52は、第2押さえ部材48の下流側に配置されて、押さえ部材46,48によって搬送経路を曲げられた後の筒状体12を案内している。実施例の案内部材50,52は、筒状体12の搬送に伴って回転する従動ローラである。
【0028】
実施例において、シート成形部材44の下流側に、シート成形部材44で表皮シート14が巻き付けれた筒状体12を挟んで配置された2基の送り部54,54が設けられている。各送り部54は、プーリの間に巻き掛けられたベルトが、プーリの駆動により回転することで、表皮シート14が巻き付けられた筒状体12を送るようになっている。
【0029】
実施例において、送り部54の下流側に、筒状体12にスリット16を形成するスリット形成部56が設けられている。なお、スリット16が予め形成された筒状体12に表皮シート14が巻き付けられてもよく、この場合、スリット形成部56が省略される。また、実施例において、スリット形成部56の下流側に、管状体10を所定長さに切断する切断部58が設けられている。
【0030】
次に、実施例の製造装置30を用いた管状体10の製造方法について説明する。
図2に示すように、送り部54による表皮シート14の搬送に伴って原反26から引き出された表皮シート14が、シート供給部34を介して搬送部32に繰り出される。
図3に示すように、搬送部32に繰り出される前に、表皮シート14には、付与部36から引き出された胴体固定部20及び閉止固定部22が、表皮シート14の搬送に伴って連続的に付与される。シート供給部34に展開された表皮シート14の一縁部に、1条の胴体固定部20が貼り付けられ、表皮シート14の他縁部に、1条の閉止固定部22と1条の胴体固定部20とが並べて貼り付けられる。また、表皮シート14が搬送部32に繰り出される前に、胴体固定部20から保護紙24が剥がされて回収部38で回収され、胴体固定部20の粘着面が露出される。なお、閉止固定部22の保護紙24は剥がされない。
【0031】
シート供給部34から搬送部32に繰り出される表皮シート14の搬送に同期して、筒状体12が筒状体供給部40から搬送部32に送り出される。管長方向を搬送方向に沿わせて筒状体供給部40から送り出された筒状体12が当接位置P1で表皮シート14に当たり、表皮シート14の上側に筒状体12が当接した状態を保ったまま搬送される(
図4(a)参照)。このとき、筒状体12は、表皮シート14の幅方向に並行配置された2条の胴体固定部20,20の幅方向中央部に位置している(
図3及び
図4(a)参照)。実施例では、当接位置P1から、当接位置P1の下流側に配置された第1案内部材50まで、筒状体12と表皮シート14とが水平方向へ並行搬送される。
【0032】
搬送部32において表皮シート14に当接した状態で搬送中の筒状体12を第1押さえ部材46で表皮シート14側(実施例では下側)へ押すことで、当接位置P1よりも下流側で、筒状体12の搬送経路が表皮シート14側(実施例では下側)に曲げられる(
図2参照)。筒状体12の搬送経路が斜め下方へ曲がると、水平方向へ搬送されていた表皮シート14と筒状体12とが干渉し、筒状体12が表皮シート14の幅方向中央部に密着する。また、筒状体12に押されて表皮シート14の幅方向中央部が当接位置P1よりも下がることで、表皮シート14の両縁部が相対的に持ち上がる(
図4(b)参照)。このように、筒状体12の搬送経路を表皮シート14側へ曲げることで、表皮シート14が筒状体12の外周面に巻き付く途中の状態になる。
【0033】
第1押さえ部材46を通過した筒状体12を第2押さえ部材48で表皮シート14側(実施例では下側)へ押すことで、筒状体12の搬送経路が曲がる(
図2参照)。これにより、筒状体12と表皮シート14との干渉度合いが大きくなり、筒状体12が表皮シート14の幅方向中央部に更に密着する。また、筒状体12に更に押されることで、表皮シート14の両縁部の持ち上がり量が大きくなり、筒状体12の外周面に表皮シート14が巻き付く範囲が大きくなる(
図4(c)参照)。このように、シート成形部材44に至る前に、筒状体12の外周面に対する表皮シート14の巻き付けが進行する。
【0034】
表皮シート14の巻き付けが進行した状態にある筒状体12が、開始位置P2に至ると、筒状体12における表皮シート14側(実施例では下側)が表皮シート14を介してシート成形部材44に当接する(
図5(a)参照)。これにより、筒状体12の搬送経路が表皮シート14と反対側(実施例では上側)に曲がり、シート成形部材44を通る搬送経路が、当接位置P1での搬送経路と同じ水平方向に変わる。そして、シート成形部材44に案内されて、表皮シート14が筒状体12の外周面に巻き付けられる。筒状体12及び筒状体12の外周面に巻き付いた表皮シート14が、シート成形部材44の通孔44aを通過する際に、表皮シート14が胴体固定部20により筒状体12の外周面に固定される(
図5(b)参照)。このとき、表皮シート14の閉止片18は、シート成形部材44の切れ目44bから通孔44aの外側へ延出し、閉止片18がスリット16が形成される側と反対側へ折り返される。
【0035】
表皮シート14が巻かれた筒状体12が対向配置された送り部54,54の間を通ることで、送り部54で押さえ付けられた閉止片18が折り返された状態で癖付けされる(
図2参照)。そして、筒状体12の全周のうち、表皮シート14から僅かに露出した露出部分がスリット形成部56により管長方向へ切断されることで、表皮シート14における一縁部と他縁部の閉止片18の根元との間にスリット16が形成される。切断部58で切断することで、所定管長の管状体10が得られる。このように、筒状体12と表皮シート14とを当接させた状態で筒状体12及び表皮シート14を搬送しながら、表皮シート14を筒状体12の外周面に巻き付けることで、筒状体12の外周面が表皮シート14で被覆された管状体10が連続的に製造される。
【0036】
前述したように、筒状体12と表皮シート14とを当接させる当接位置P1よりも下流側で、筒状体12の搬送経路を表皮シート14側に曲げることで、筒状体12を表皮シート14に密着させることができる。また、当接位置P1の搬送経路から曲がった搬送経路で筒状体12が搬送されていくことで、筒状体12の表皮シート14側から表皮シート14と反対側へ向けて、表皮シート14が徐々に巻き付いていく。このとき、筒状体12の押し付けにより表皮シート14にテンションがかかり、この状態で表皮シート14が筒状体12の外周面に巻き付いていくことで、表皮シート14のシワの発生を防止できる。特に、表皮シート14がシート成形部材44に到達する開始位置P2よりも上流側で、筒状体12の搬送経路の変化による筒状体12の外周面に対する表皮シート14の巻き付けを開始すると、表皮シート14にテンションをかけ易い。また、筒状体12の搬送経路の曲げ度合いの調節により、表皮シート14にかかるテンションを簡単に調節することができる。従って、得られた管状体10において、表皮シート14の張りが足りずにシワが生じたり、表皮シート14の張りが強過ぎてスリット16が開いてしまうなどの不具合の発生を回避できる。このように、前述の製造装置30によれば、筒状体12の外周面を表皮シート14で被覆して得られる管状体10の品質を向上できる。同様に、前述の製造方法によれば、筒状体12の外周面を表皮シート14で被覆して得られる管状体10の品質を向上できる。
【0037】
例えば、当接位置P1からシート成形部材44までの搬送経路が水平である場合、筒状体12の下側にある表皮シート14の縁部を、シート成形部材44の形状だけで持ち上げることになるから、重力により表皮シート14が弛んでシワが生じ易くなる。実施例によれば、筒状体12によって筒状体12の下側にある表皮シート14の幅方向中央部を押すことで、その反動によって表皮シート14の両縁部を重力に抗して上側へ持ち上げることができる。このように、筒状体12の押さえ付けによる反作用を利用することで、表皮シート14を重力に起因する弛みを抑えたもとで持ち上げることができる。従って、表皮シート14を筒状体12の外周面に適度に張った状態で巻き付けることができる。
【0038】
例えば、当接位置P1とシート成形部材44とを、当接位置P1での筒状体12と表皮シート14との配置方向(実施例では上下方向)にずらすだけでも、当接位置P1の搬送経路から筒状体12の搬送経路を曲げることは可能である。実施例のように、当接位置P1と完了位置P3との間において、筒状体12を押さえ部材46,48により表皮シート14側へ押して、筒状体12の搬送経路を表皮シート14側に曲げることで、表皮シート14にかかるテンションを調節し易くなり、得られる管状体10の品質をより向上できる。
【0039】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。なお、本発明は、実施例及び以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
(1)実施例では、当接位置で表皮シートの上側に筒状体を配置する場合を説明したが、例えば、当接位置で表皮シートの下側に筒状体を配置して互いに接した状態で搬送してもよく、当接位置で表皮シートと筒状体とを左右横並びで配置して互いに接した状態で搬送してもよい。すなわち、表皮シートと筒状体とが当接する関係にあれば、どのような向きに並べて配置されていてもよい。このように、筒状体と表皮シートとの配置が実施例と相違していても、重力の影響を受けて表皮シートに弛みが生じる課題があり、当接位置の下流側で筒状体の搬送経路を表皮シート側に曲げることで、実施例と同様の作用効果を奏する。
(2)押さえ部材は、実施例のようにローラ状であることに限らず、ベルト状や板状や棒状などであってもよい。また、押さえ部材は、実施例のように従動ローラであることに限らず、自ら回転する駆動ローラであってもよい。
(3)案内部材は、実施例のようにローラ状であることに限らず、ベルト状や板状や棒状などであってもよい。また、案内部材は、実施例のように従動ローラであることに限らず、自ら回転する駆動ローラであってもよい。
(4)シート供給部は、表皮シートを、空気吸引などにより吸着可能なローラであってもよい。
(5)筒状体は、要求される管状体の管長よりも長い長尺物を供給しても、要求される管状体の管長に合わせたものを供給しても、何れであってもよい。
(6)表皮シートを巻き付けた後に筒状体にスリットを形成しても、予めスリットが形成された筒状体に表皮シートを巻いても、何れであってもよい。なお、表皮シートを巻き付けた後に筒状体にスリットを形成するほうが、表皮シートの巻き付け時にスリットの向きを気にしなくてもよいことから筒状体の供給が楽になる。
(7)胴体固定部は、両面テープに限らず、接着剤を塗布して接着層を形成するなど、表皮シートと筒状体とを固定可能なその他の手段を採用できる。
(8)閉止固定部は、両面テープに限らず、接着剤を塗布して接着層を形成するなど、閉止片を固定可能なその他の手段を採用できる。