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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040800
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】通過人数計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 8/10 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
G01V8/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145386
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000210403
【氏名又は名称】竹中エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 航佑
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB16
2G105BB17
2G105CC04
2G105EE06
2G105HH01
(57)【要約】
【課題】従来よりも誤計測が生じにくい通過人数計測装置を提供する。
【解決手段】通過人数計測装置10Aは、時間Δtが経過する毎に生成されるエリア画像に基づいて追尾対象を認識する追尾対象認識部22と、認識された追尾対象の発生位置がエリア画像を構成する複数の分割領域のうちのいずれに属するのかを記憶する発生位置記憶部24と、時刻tに生成されたエリア画像である現エリア画像に含まれる追尾対象の時刻t+Δtにおける位置を予測する位置予測部25と、現エリア画像に、予測された時刻t+Δtにおける位置が発生位置が属する分割領域とは異なる分割領域の外縁領域に属する追尾対象が含まれる場合に、当該追尾対象の数だけ通過人数をカウントアップし、さらに、当該追尾対象の時刻t+Δtの位置の周辺に禁止領域を設定する通過処理部26とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検知エリアを通過した人の数を計測する通過人数計測装置であって、
時間Δtが経過する毎に生成される前記検知エリアに関するエリア画像に基づいて、前記人に相当する追尾対象を認識する追尾対象認識部と、
認識された追尾対象に識別番号を付与する識別番号付与部と、
認識された追尾対象の発生位置が前記エリア画像を構成する複数の分割領域のうちのいずれに属するのかを、当該追尾対象に付与された識別番号に対応付けて記憶する発生位置記憶部と、
時刻tに生成されたエリア画像である現エリア画像に含まれる追尾対象の時刻t+Δtにおける位置を予測する位置予測部と、
前記現エリア画像に、予測された時刻t+Δtにおける位置が前記発生位置が属する分割領域とは異なる分割領域の外縁領域に属する追尾対象が含まれる場合に、当該追尾対象から前記識別番号を消去するとともに、当該追尾対象の数だけ前記人の数をカウントアップし、さらに、当該追尾対象の時刻tまたは時刻t+Δtの位置の周辺に禁止領域を設定する通過処理部と、
を備え、
前記識別番号付与部は、前記現エリア画像に含まれる追尾対象に対応する追尾対象が時刻t-Δtに生成されたエリア画像である前エリア画像に含まれていると判定した場合は、前記現エリア画像に含まれる当該追尾対象に前記前エリア画像に含まれる当該追尾対象に付与されている識別番号と同一の識別番号を付与する一方、前記現エリア画像に含まれる追尾対象に対応する追尾対象が前記前エリア画像に含まれていないと判定した場合は、前記現エリア画像に含まれる当該追尾対象に新たな識別番号を付与し、
また、前記識別番号付与部は、前記禁止領域に属する追尾対象については、新たな識別番号の付与を行わない
ことを特徴とする通過人数計測装置。
【請求項2】
前記通過処理部は、前記禁止領域の形状、大きさ、および位置のうちの少なくとも1つを予め定めた規則に従って時間Δtが経過する毎に変化させることができる
ことを特徴とする請求項1に記載の通過人数計測装置。
【請求項3】
時刻tに生成された前記エリア画像は、時刻tに生成された熱画像である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通過人数計測装置。
【請求項4】
時刻tに生成された前記エリア画像は、時刻t-Δtおよび時刻tに生成された2つの熱画像の差画像である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通過人数計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種施設や各種乗物の出入口付近等に設けられた検知エリアを通過した人の数を計測する通過人数計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の入退室監視装置が知られている。この監視装置は、出入口の上方に設けられた一対の熱感知センサ(室外側サーモパイルセンサおよび室内側サーモパイルセンサ)と、各センサの出力信号の差分を増幅する増幅器と、増幅器の出力信号に基づいて人の動きを判別するCPU処理部とを備えている。この監視装置によれば、人の入室および退室だけでなく、入室しようとした人が入室することなくUターンしたことや、退室しようとした人が退室することなくUターンしたことも判別することができる。しかしながら、この監視装置は、複数の人が同時に入室または退室をした場合に、その人数を正確に特定することはできない。入室と退室とが同時に起こった場合についても同様である。
【0003】
この問題を解決するために、出入口付近に設けられた検知エリアに関する熱画像を一定時間毎に生成する熱画像センサと、生成された熱画像を分析することにより検知エリアにおける人の動きを特定する画像分析部とを備えたタイプの監視装置が提案されている。この監視装置によれば、検知エリアを通過した人の通過方向と通過人数を特定することができる。例えば、この監視装置によれば、出入口から2人が入って来るとともに、出入口から3人が出て行ったことを特定することができる。
【0004】
ところで、熱画像を用いるタイプの監視装置では、予め定められた時間毎に生成される熱画像において、熱変化があったことを示す画素の集まり(クラスタ)を追尾していくことにより検知エリアにおける人の動きを特定するのが一般的である。しかしながら、この方式では、検知エリアの外縁に差し掛かった人の動きを特定することが難しく、人の動きを特定し損なった結果、通過人数に誤計測が生じてしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-113355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも誤計測が生じにくい通過人数計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る通過人数計測装置は、所定の検知エリアを通過した人の数を計測する装置であって、時間Δtが経過する毎に生成される検知エリアに関するエリア画像に基づいて、人に相当する追尾対象を認識する追尾対象認識部と、認識された追尾対象に識別番号を付与する識別番号付与部と、認識された追尾対象の発生位置がエリア画像を構成する複数の分割領域のうちのいずれに属するのかを、当該追尾対象に付与された識別番号に対応付けて記憶する発生位置記憶部と、時刻tに生成されたエリア画像である現エリア画像に含まれる追尾対象の時刻t+Δtにおける位置を予測する位置予測部と、現エリア画像に、予測された時刻t+Δtにおける位置が発生位置が属する分割領域とは異なる分割領域の外縁領域に属する追尾対象が含まれる場合に、当該追尾対象から識別番号を消去するとともに、当該追尾対象の数だけ人の数をカウントアップし、さらに、当該追尾対象の時刻tまたは時刻t+Δtの位置の周辺に禁止領域を設定する通過処理部と、を備え、識別番号付与部は、現エリア画像に含まれる追尾対象に対応する追尾対象が時刻t-Δtに生成されたエリア画像である前エリア画像に含まれていると判定した場合は、現エリア画像に含まれる当該追尾対象に前エリア画像に含まれる当該追尾対象に付与されている識別番号と同一の識別番号を付与する一方、現エリア画像に含まれる追尾対象に対応する追尾対象が前エリア画像に含まれていないと判定した場合は、現エリア画像に含まれる当該追尾対象に新たな識別番号を付与し、また、識別番号付与部は、禁止領域に属する追尾対象については、新たな識別番号の付与を行わない、との構成を有している。
【0008】
上記通過人数計測装置の通過処理部は、禁止領域の形状、大きさ、および位置のうちの少なくとも1つを予め定めた規則に従って時間Δtが経過する毎に変化させる、との構成を有していてもよい。
【0009】
上記通過人数計測装置において、時刻tに生成されたエリア画像は、例えば、時刻tに生成された熱画像、または、時刻t-Δtおよび時刻tに生成された2つの熱画像の差画像である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来よりも誤計測が生じにくい通過人数計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施例に係る通過人数計測装置のブロック図である。
図2】第1実施例に係る通過人数計測装置において生成されるエリア画像を示す図である。
図3】第1実施例に係る通過人数計測装置の制御部が実行する追尾対象の認識および識別番号の付与に関する図である。
図4】第1実施例に係る通過人数計測装置の制御部が実行する追尾対象の位置予測に関する図である。
図5】第1実施例に係る通過人数計測装置の制御部が実行する通過処理に関する図である。
図6】第1実施例に係る通過人数計測装置において、人が検知エリアの外縁に差し掛かったときに生成されるエリア画像の詳細を示す図である。
図7】禁止領域を設定しない場合に生じ得る問題に関する図である。
図8】禁止領域を設定することにより図7に示した問題が解決され得ることを示す図である。
図9】第1実施例に係る通過人数計測装置の動作フロー図である。
図10】本発明の第2実施例に係る通過人数計測装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る通過人数計測装置の実施例について説明する。
【0013】
[第1実施例]
図1に、本発明の第1実施例に係る通過人数計測装置10Aを示す。通過人数計測装置10Aは、商業施設の出入口付近の床200に設けられた検知エリアAをM1方向に通過する歩行者W1の数とM2方向に通過する歩行者W2の数とを計測するためのもので、同図に示すように、熱画像生成部11Aと、記憶部12と、制御部20Aと、設定部13と、外部インタフェース部14と、音声出力部15と、発光部16と、これらを収容する筐体とを備えている。通過人数計測装置10Aは、熱画像生成部11Aが検知エリアAを向くように、天井100に取り付けられている。
【0014】
本実施例では、取り付け高さHが4mである。また、本実施例の検知エリアAは、想定される通過方向M1,M2に直交する辺の長さが4m、通過方向M1,M2に平行な辺の長さが3mの長方形である。取り付け高さHが変化すると、これに応じて検知エリアAの大きさも変化する。
【0015】
熱画像生成部11Aは、二次元の熱画像センサで構成されている。熱画像生成部11Aは、検知エリアA(床200)または当該エリアA内にいる歩行者W1,W2から放射される遠赤外線を検出し、検出結果に対応した60画素×45画素の熱画像(より正確には、熱画像に関するデータ)を生成する。熱画像の生成は、1/10s毎に行われる。生成された熱画像は、順次記憶部12に送られる。
【0016】
記憶部12は、揮発性または不揮発性のメモリで構成されている。記憶部12は、熱画像生成部11Aから1/10s毎に送られてきた熱画像のうち、少なくとも最新のものとその1つ前のものとを格納している。言い換えると、記憶部12には、最後に生成された熱画像(以下、「第2熱画像」という)と、その1/10s前に生成された熱画像(以下、「第1熱画像」という)とが格納されている。
【0017】
制御部20Aは、マイクロプロセッサ(MPU)と当該プロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムとで構成されている。本実施例では、コンピュータプログラムの実行により、差画像生成部21、追尾対象認識部22、識別番号付与部23、発生位置記憶部24、位置予測部25および通過処理部26が制御部20A内に形成されている。
【0018】
差画像生成部21は、記憶部12に格納された第1熱画像および第2熱画像に基づいて、差画像P(より正確には、差画像Pに関するデータ)を生成する。例えば、差画像生成部21は、第2熱画像を構成する座標(0,0)の画素が示す温度から第1熱画像を構成する座標(0,0)の画素が示す温度を引くことにより、差画像Pを構成する座標(0,0)の画素が示すべき熱変化を求める。
【0019】
図2に示すように、差画像Pは、通過方向M1,M2に隣接する2つの同じ大きさの分割領域(第1分割領域P1および第2分割領域P2)で構成され、全体では60画素×45画素の大きさを有している。なお、ハッチングを付したF1部分は第1分割領域P1の外縁領域であり、F1とは異なるハッチングを付したF2部分は第2分割領域P2の外縁領域である。本実施例では、矩形状を有する第1分割領域P1を構成する4辺のうち、第2分割領域P2に接しない3辺に接する領域が外縁領域F1となっている。同様に、本実施例では、矩形状を有する第2分割領域P2を構成する4辺のうち、第1分割領域P1に接しない3辺に接する領域が外縁領域F2となっている。
【0020】
本実施例では、この差画像Pが「エリア画像」として使用される。エリア画像Pは、1/10sの間に検知エリアAにおいてどのような熱変化があったのかを示しているといえる。
【0021】
追尾対象認識部22は、1/10s毎に生成されるエリア画像Pに基づいて、検知エリアA内にいる人に相当する追尾対象を認識する。追尾対象認識部22は、エリア画像Pに対して適当なノイズ除去処理を施してから追尾対象を認識してもよい。
【0022】
識別番号付与部23は、追尾対象認識部22によって認識された追尾対象に識別番号を付与する。認識された追尾対象の数が複数の場合、識別番号付与部23は、それぞれに対して識別番号を付与する。
【0023】
図3を参照しながら、追尾対象認識部22が実行する追尾対象の認識および識別番号付与部23が実行する識別番号の付与について、具体的に説明する。
【0024】
時刻t0に生成されたエリア画像Pt0図3(A)参照)は、熱変化があったことを示す画素を含んでいない。このため、追尾対象認識部22は、検知エリアA内にいる人に相当する画素の集まり(以下、「クラスタ」という)、すなわち、追尾対象と認識すべきものはエリア画像Pt0に存在しないと判断する。追尾対象が存在しないため、識別番号付与部23による識別番号の付与は行われない。
【0025】
時刻t0からΔt(=1/10s)が経過した時刻t1に生成されたエリア画像Pt1図3(B)参照)は、第1分割領域P1に位置するクラスタTG1を含んでいる。このため、追尾対象認識部22は、クラスタTG1を追尾対象と認識する。そして、識別番号付与部23は、クラスタTG1に識別番号“01”を付与するとともに、クラスタTG1の発生場所である“P1”をクラスタTG1の識別番号である“01”に対応付けて発生位置記憶部24に記憶させる。
【0026】
時刻t2に生成されたエリア画像Pt2図3(C)参照)は、第1分割領域P1に位置するクラスタTG1と第2分割領域P2に位置するクラスタTG2とを含んでいる。このため、追尾対象認識部22は、クラスタTG1およびクラスタTG2を追尾対象と認識する。
【0027】
識別番号付与部23は、クラスタTG1およびクラスタTG2に識別番号を付与する際に、時刻t1に生成されたエリア画像Pt1に含まれる全クラスタ(本具体例では、クラスタTG1のみ)の位置を参照する。そして、識別番号付与部23は、
・時刻t1のクラスタTG1と時刻t2のクラスタTG1との間の距離
・時刻t1のクラスタTG1と時刻t2のクラスタTG2との間の距離
を比較し、時刻t1におけるクラスタTG1に最も近いのは時刻t2におけるクラスタTG1であることから、時刻t2におけるクラスタTG1に時刻t1におけるクラスタTG1に付与されている識別番号、すなわち識別番号“01”を付与する。一方、識別番号付与部23は、クラスタTG2に新たな識別番号“02”を付与するとともに、クラスタTG2の発生場所である“P2”をクラスタTG2の識別番号である“02”に対応付けて発生位置記憶部24に記憶させる。
【0028】
時刻t3に生成されたエリア画像Pt3図3(D)参照)は、第2分割領域P2に位置するクラスタTG1およびクラスタTG2を含んでいる。このため、追尾対象認識部22は、クラスタTG1およびクラスタTG2を追尾対象と認識する。
【0029】
識別番号付与部23は、クラスタTG1およびクラスタTG2に識別番号を付与する際に、時刻t2に生成されたエリア画像Pt2に含まれる全クラスタ(本具体例では、クラスタTG1およびクラスタTG2)の位置を参照する。そして、識別番号付与部23は、
・時刻t2のクラスタTG1と時刻t3のクラスタTG1との間の距離
・時刻t2のクラスタTG1と時刻t3のクラスタTG2との間の距離
・時刻t2のクラスタTG2と時刻t3のクラスタTG1との間の距離
・時刻t2のクラスタTG2と時刻t3のクラスタTG2との間の距離
を比較し、時刻t2におけるクラスタTG1に最も近いのは時刻t3におけるクラスタTG1であり、かつ時刻t2におけるクラスタTG2に最も近いのは時刻t3におけるクラスタTG2であることから、時刻t3におけるクラスタTG1に時刻t2におけるクラスタTG1に付与されている識別番号、すなわち識別番号“01”を付与するとともに、時刻t3におけるクラスタTG2に時刻t2におけるクラスタTG2に付与されている識別番号、すなわち識別番号“02”を付与する。
【0030】
このように、識別番号付与部23は、時刻tに生成されたエリア画像Pである現エリア画像に含まれる追尾対象に対応する追尾対象が時刻t-Δtに生成されたエリア画像Pである前エリア画像に含まれていると判定した場合は、現エリア画像に含まれる当該追尾対象に前エリア画像に含まれる当該追尾対象に付与されている識別番号と同一の識別番号を付与する一方、現エリア画像に含まれる追尾対象に対応する追尾対象が前エリア画像に含まれていないと判定した場合は、現エリア画像に含まれる当該追尾対象に新たな識別番号を付与する。
【0031】
位置予測部25は、時刻tに生成されたエリア画像Pである現エリア画像に含まれる追尾対象(クラスタ)の時刻t+Δtにおける位置を予測する。
【0032】
通過処理部26は、時刻tに生成されたエリア画像Pである現エリア画像に、予測された時刻t+Δtにおける位置が発生位置が属する分割領域とは異なる分割領域の外縁領域に属する追尾対象が含まれている場合に、当該追尾対象から識別番号を消去するとともに、当該追尾対象の数だけ通過人数をカウントアップし、さらに、当該追尾対象の時刻t+Δtの位置の周辺に禁止領域を設定する。
【0033】
図4および図5を参照しながら、位置予測部25が実行する位置予測および通過処理部26が実行する通過処理について、具体的に説明する。
【0034】
時刻t3において、クラスタTG1およびクラスタTG2のそれぞれに識別番号が付与されると、位置予測部25は、識別番号“01”が付与されたクラスタTG1の時刻t2-t3の間の移動距離および移動方向、すなわち直前の移動距離および移動方向に基づいて、時刻t4におけるクラスタTG1の位置を予測する。同様に、位置予測部25は、識別番号“02”が付与されたクラスタTG2の直前の移動距離および移動方向に基づいて、時刻t4におけるクラスタTG2の位置を予測する。図4(B)中のTG1’およびTG2’は、予測された位置を示す。
【0035】
予測されたクラスタTG1の位置TG1’は、第2分割領域P2の外縁領域F2に属している。また、発生位置記憶部24によれば、クラスタTG1に付与された識別番号“01”に対応する発生位置は“P1”である。このため、通過処理部26は、クラスタTG1から識別番号“01”を消去するとともに(図4(A)および図5(A)参照)、第1分割領域P1から第2分割領域P2に向かう方向(すなわち、M1方向)に検知エリアAを通過した人(歩行者W1)の数をカウントアップする。その後、通過処理部26は、時刻t4における実際のクラスタTG1の周辺に楕円形状の禁止領域NGを設定する(図5(B)参照)。
【0036】
一方、予測されたクラスタTG2の位置TG2’は、第1分割領域P1の外縁領域F1および第2分割領域P2の外縁領域F2のいずれにも属していない。このため、通過処理部26は、クラスタTG2に関しては識別番号の消去、カウントアップおよび禁止領域NGの設定を行わない。
【0037】
なお、仮に予測されたクラスタTG2の位置TG2’が第2分割領域P2の外縁領域F2に属していたとしても、クラスタTG2に付与された識別番号“02”に対応する発生位置は“P2”なので、通過処理部26は、クラスタTG2に関しては識別番号の消去、カウントアップおよび禁止領域NGの設定を行わない。このような場合は、クラスタTG2に相当する人が検知エリアAを通過したとはいえないからである。
【0038】
前述した通り、識別番号付与部23は、追尾対象認識部22によって認識された追尾対象に識別番号を付与する。ただし、識別番号付与部23は、禁止領域NGに属する追尾対象については、既存の識別番号の付与は行うが、新たな識別番号の付与は行わない。このような処理の意義については、後で詳細に説明する。
【0039】
外部インタフェース部14は、適当な外部機器に接続されている。外部インタフェース部14は、通過処理部26による計測の結果、すなわち、検知エリアAをM1方向に通過した歩行者W1の数とM2方向に通過した歩行者W2の数とを予め定めたタイミングおよび形式で当該外部機器に送信することができる。
【0040】
音声出力部15は、ブザーまたはスピーカーで構成されている。音声出力部15は、通過処理部26による計測の結果に対応した音声を出力することにより、計測結果を周辺にいる者に知らせることができる。
【0041】
発光部16は、少なくとも1つの発光ダイオードで構成されている。発光部16は、通過処理部26による計測の結果に対応した態様(色、明るさ等)で点灯または点滅することにより、計測結果を周辺にいる者に知らせることができる。
【0042】
設定部13は、ディップスイッチで構成されている。ユーザは、設定部13を介して各種の設定を行うことができる。また、ユーザは、設定部13を介して、外部インタフェース部14、音声出力部15および発光部16のオン/オフを個別に切り替えることもできる。
【0043】
続いて、禁止領域NGを設定する意義について説明する。
【0044】
図3図5および後で参照する図7および図8ではクラスタを小さな円で表したが、実際のクラスタは、図6に例示するクラスタTG1のように、刻一刻と変化する不規則に拡がった形状を有している。また、多くの場合、クラスタの位置は、重心を計算することにより求められる。このため、M1方向に検知エリアAを通過しようとする人(TG1)が検知エリアAの外縁(第2分割領域P2の外縁領域F2)に差し掛かると、図6(A)~(C)に示すように、クラスタTG1が外縁領域F2に留まり続けているかのように見えることがある。禁止領域NGを設定するのは、これにより生じる誤計測を防ぐためである。
【0045】
図7および図8を参照しながら、禁止領域NGを設定することにより誤計測が防がれることを具体的に説明する。なお、この具体例では、第1分割領域P1から第2分割領域P2に向かう方向にクラスタTG1が移動し、それを追いかけるようにクラスタTG2が移動するものとする。
【0046】
禁止領域NGを設定しない場合は、図7に示すように、時刻tdに識別番号“01”が消去されたクラスタTG1に、Δt後の時刻teに新たな識別番号“03”が付与される。そして、さらにΔt後の時刻tfに、
・時刻teのクラスタTG1と時刻tfのクラスタTG2との間の距離
・時刻teのクラスタTG2と時刻tfのクラスタTG2との間の距離
が比較され、前者の方が小さければ、これまで識別番号“02”が付与されていたクラスタTG2に別の識別番号“03”が付与される。識別番号“03”は、時刻teにおいて第2分割領域P2に属するクラスタTG1に新たに付与されたものであり、発生位置記憶部24に記憶された識別番号“03”に対応する発生位置は“P2”である。このため、クラスタTG2に相当する人がこのままM1方向に進んで検知エリアAから出たとしても、通過人数はカウントアップされない。すなわち、誤計測が生じる。
【0047】
これに対して、禁止領域NGを設定する場合は、図8に示すように、時刻tgに識別番号“01”が消去されたクラスタTG1の周辺に禁止領域NGが設定されるので、Δt後の時刻thに、クラスタTG1に新たな識別番号“03”が付与されることはない。さらにΔt後の時刻tiに、これまで識別番号“02”が付与されていたクラスタTG2に別の識別番号“03”が付与されてしまうこともなく、その結果、上記の誤計測が防がれる。
【0048】
図9は、これまでに述べてきた各部の動きを時系列に記述した、本実施例に係る通過人数計測装置10Aの動作フロー図である。
【0049】
ステップS1では、熱画像生成部11Aが生成した第1熱画像を記憶部12が格納する。
【0050】
ステップS1の1/10s後に実行されるステップS2では、熱画像生成部11Aが生成した第2熱画像を記憶部12が格納する。
【0051】
ステップS2の後に実行されるステップS3では、差画像生成部21が第1熱画像および第2熱画像から差画像(エリア画像)Pを生成する。
【0052】
ステップS3の後に実行されるステップS4では、追尾対象認識部22がエリア画像Pに含まれる追尾対象を認識する。
【0053】
ステップS4の後に実行されるステップS5では、識別番号付与部23が認識された追尾対象に識別番号を付与する。
【0054】
ステップS5の後に実行されるステップS6では、位置予測部25が認識された追尾対象の1/10s後の位置を予測する。
【0055】
ステップS6の後に実行されるステップS7では、予測された追尾対象の位置に基づいて通過処理部26が所定の通過処理を実行する。通過処理には、予測された追尾対象の位置が外縁領域F1,F2に属しているかどうかの判定、識別番号の消去、通過人数のカウントアップ、禁止領域NGの設定が含まれる。
【0056】
本実施例に係る通過人数計測装置10Aは、1/10s毎にこの動作フローに従って繰り返し動作する。なお、2巡目のフローでは、1巡目で生成・格納された第2熱画像が第1熱画像となる。3巡目以降についても同様である。
【0057】
以上のように、本実施例に係る通過人数計測装置10Aによれば、検知エリアAの外縁に差し掛かった人に相当する追尾対象の周辺に禁止領域NGを設定し、新たな識別番号の付与を禁止することにより、後続の追尾対象に誤った識別番号が付与されて誤計測が生じるのを防ぐことができる。
【0058】
[第2実施例]
図10に、本発明の第2実施例に係る通過人数計測装置10Bを示す。通過人数計測装置10Bは、熱画像生成部11Aの代わりに熱画像生成部11Bを備えている点と、制御部20Aの代わりに制御部20Bを備えている点と、記憶部12を備えていない点とにおいて通過人数計測装置10Aと相違しているが、他の点においては通過人数計測装置10Aと共通している。
【0059】
熱画像生成部11Bは、予め定めた時間(例えば、1/10s)の間に生じた検知エリアAの熱変化に関する画像、すなわち、第1実施例の差画像に相当する画像を生成することができるタイプの二次元の熱画像センサで構成されている。本実施例では、熱画像生成部11Bによって生成された画像が「エリア画像」Pとなる。
【0060】
制御部20Bは、制御部20Aと同様、マイクロプロセッサと当該プロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムとで構成されている。本実施例では、コンピュータプログラムの実行により、追尾対象認識部22、識別番号付与部23、発生位置記憶部24、位置予測部25および通過処理部26が制御部20B内に形成されている。
【0061】
第2実施例に係る通過人数計測装置10Bによれば、第1実施例に係る通過人数計測装置10Aと同じ作用効果が得られる。
【0062】
[変形例]
以上、本発明に係る人数計測装置の第1実施例および第2実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれらに限定されるものではない。
【0063】
例えば、通過人数計測装置10A,10Bは、商業施設以外の各種施設や各種乗物の出入口付近等に設けられた検知エリアAを通過する人を計測してもよい。
【0064】
また、通過人数計測装置10A,10Bの取り付け場所は、壁面であってもよい。
【0065】
また、通過人数計測装置10A,10Bは、設定部13、外部インタフェース部14、音声出力部15および発光部16の全部または一部を備えていなくてもよい。
【0066】
また、通過人数計測装置10Aは、差画像生成部21(および記憶部12)を備えていなくてもよい。この場合、制御部20Aは、熱画像生成部11Aが生成した熱画像自体をエリア画像Pとして使用することができる。
【0067】
また、通過人数計測装置10A,10Bは、熱画像生成部11A,11B、記憶部12および差画像生成部21の代わりに、検知エリアAにおける人の動き示すエリア画像Pを生成することが可能な任意のエリア画像生成手段を備えていてもよい。このような手段としては、例えば、距離画像センサを挙げることができる。距離画像センサを使用した場合は、床200よりも高いことを示している画素の集まりがクラスタ(追尾対象)となる。
【0068】
また、検知エリアAは、互いに形状が異なる2つ以上の分割領域で構成されていてもよい。
【0069】
また、エリア画像Pを構成する各分割領域の外縁領域は、他の分割領域に接しない全ての辺に接するように設けられていなくてもよい。逆に言うと、各分割領域の外縁領域は、他の分割領域に接しない1つ以上の辺に接するように設けられていればよい。
【0070】
また、図4および図5に示した状況で通過処理部26が設定する禁止領域NGについては、次のような変形例が考えられる。なお、これらの変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
・禁止領域NGの形状を円形状または正多角形状とする。
・時刻t4におけるクラスタTG1の周辺ではなく時刻t3におけるクラスタTG1の周辺に禁止領域NGを設定する。
・時刻t3に予測された位置TG1’の周辺に禁止領域NGを設定する。
・予め定めた条件を満たすまで禁止領域NGを設定し続ける。例えば、Δt×3が経過するまで禁止領域NGを設定し続ける。あるいは、クラスタTG1が存在しなくなるまで禁止領域NGを設定し続ける。
・予め定めた規則に従って、Δtが経過する毎に禁止領域NGの形状、大きさおよび位置のうちの少なくとも1つを変化させていく。例えば、クラスタTG1の大きさに応じて禁止領域NGの大きさを変化させていく。
【符号の説明】
【0071】
10A,10B 通過人数計測装置
11A,11B 熱画像生成部
12 記憶部
13 設定部
14 外部インタフェース部
15 音声出力部
16 発光部
20A,20B 制御部
21 差画像生成部
22 追尾対象認識部
23 識別番号付与部
24 発生位置記憶部
25 位置予測部
26 通過処理部
100 天井
200 床
P エリア画像
P1 第1分割領域
P2 第2分割領域
TG1,TG2 追尾対象(クラスタ)
W1,W2 歩行者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10