(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040806
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】アスファルト舗装路
(51)【国際特許分類】
E01C 3/06 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
E01C3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145401
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】394014641
【氏名又は名称】カネカケンテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】黒部 和彦
(72)【発明者】
【氏名】原口 望
(72)【発明者】
【氏名】中道 幹芳
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA04
2D051AG01
2D051AG18
2D051CA01
(57)【要約】
【課題】隣地からの地中冷気の回り込みを抑えて、路面の凍上を防止すること。
【解決手段】路床(14)と路盤(20)との間に断熱材層(28)が敷設され、断熱材層(28)が細粒度アスファルト混合物層(26)の表面に対して略平行になっており、隣地境界(LC)側における断熱材層(28)の下側に垂直断熱材層(30)が埋設され、垂直断熱材層(30)が断熱材層(28)に対して略垂直になっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路床の上側に敷設された路盤と、
前記路盤の上側に敷設された細粒度アスファルト混合物層と、
前記路床と前記路盤との間に敷設され、前記細粒度アスファルト混合物層の表面に対して略平行になっている断熱材層と、
隣地境界側における前記断熱材層の下側に埋設され、前記断熱材層に対して略垂直になっている垂直断熱材層と、を備える、アスファルト舗装路。
【請求項2】
前記断熱材層は、前記細粒度アスファルト混合物層の表面から130mm以上600mm未満の深さに埋設され、前記垂直断熱材層は、前記断熱材層の上面から230mm~870mmの深さに埋設されている、請求項1に記載にアスファルト舗装路。
【請求項3】
路床の上側に敷設された路盤と、
前記路盤の上側に敷設された細粒度アスファルト混合物層と、
前記路床と前記路盤との間に敷設され、前記細粒度アスファルト混合物層の表面に対して略平行になっている断熱材層と、
前記断熱材層の幅方向の少なくともいずれかの端部に連続して形成され、隣地に埋設され、隣地の表面に対して略平行になっている延長断熱材層と、を備える、アスファルト舗装路。
【請求項4】
前記断熱材層は、前記細粒度アスファルト混合物層の表面から130mm以上600mm未満の深さに埋設され、前記延長断熱材層は、隣地境界から隣地の表面に平行な方向に400mm~900mmだけ延長している、請求項3に記載のアスファルト舗装路。
【請求項5】
前記断熱材層の幅方向の少なくともいずれかの端部に連続して形成され、隣地に埋設され、隣地の表面に対して略平行になっている延長断熱材層を更に備える、請求項1に記載のアスファルト舗装路。
【請求項6】
前記断熱材層は、前記細粒度アスファルト混合物層の表面から130mm以上600mm未満の深さに埋設され、前記延長断熱材層は、隣地境界から隣地の表面に平行な方向に0mm超500mm以下だけ延長しており、前記垂直断熱材層は、前記断熱材層の上面から230mm~870mmの深さに埋設されている、請求項5に記載にアスファルト舗装路。
【請求項7】
前記断熱材層の厚み及び前記垂直断熱材層の幅は、それぞれ、25mm~100mmであり、前記断熱材層及び前記垂直断熱材層は、それぞれ、圧縮強度が25N/cm2以上の合成樹脂発泡体からなる、請求項1に記載のアスファルト舗装路。
【請求項8】
前記断熱材層及び前記垂直断熱材層は、それぞれ、独立気泡率が90%以上のポリスチレン系樹脂発泡体からなる、請求項1に記載のアスファルト舗装路。
【請求項9】
前記断熱材層及び前記垂直断熱材層は、それぞれ、押出発泡ポリスチレン系樹脂発泡体からなる、請求項1に記載のアスファルト舗装路。
【請求項10】
前記断熱材層の厚み及び前記延長断熱材層の厚みは、それぞれ、25mm~100mmであり、前記断熱材層及び前記延長断熱材層は、それぞれ、圧縮強度が25N/cm2以上の合成樹脂発泡体により構成されている、請求項3に記載のアスファルト舗装路。
【請求項11】
前記断熱材層及び前記延長断熱材層は、それぞれ、独立気泡率が90%以上のポリスチレン系樹脂発泡体により構成されている、請求項3に記載のアスファルト舗装路。
【請求項12】
前記断熱材層及び延長断熱材層は、それぞれ、押出発泡ポリスチレン系樹脂発泡体により構成されている、請求項3に記載のアスファルト舗装路。
【請求項13】
前記断熱材層の厚み、前記垂直断熱材層の幅、及び前記延長断熱材層の厚みは、それぞれ、25mm~100mmであり、前記断熱材層、前記垂直断熱材層、及び前記延長断熱材層は、それぞれ、圧縮強度が25N/cm2以上の合成樹脂発泡体により構成されている、請求項5に記載のアスファルト舗装路。
【請求項14】
前記断熱材層、前記垂直断熱材層、及び前記延長断熱材層は、それぞれ、独立気泡率が90%以上のポリスチレン系樹脂発泡体により構成されている、請求項5に記載のアスファルト舗装路。
【請求項15】
前記断熱材層、前記垂直断熱材層、及び前記延長断熱材層は、それぞれ、押出発泡ポリスチレン系樹脂発泡体により構成されている、請求項5に記載のアスファルト舗装路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトによって舗装された歩道及び車道等のアスファルト舗装路に係り、特に、路面の凍上防止機能を有したアスファルト舗装路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寒冷地における車道等の凍上対策として、土質条件に着目した置換工法、水分条件に着目した遮水工法、及び温度条件に着目した断熱工法が知られている。
【0003】
置換工法は、凍結時にアイスレンズが発生しない材料(非凍結材料)で凍結深さの範囲の土壌を置き換える方法であって、最も一般的に採用されている。しかしながら、路体又は路床の一部を非凍上性材料に置換する必要があり、更に、温度、水分、日射の環境条件、置換する材料の土質変動により凍上が再発するという問題がある。
【0004】
遮水工法は、金属又はビニールからなる不透水層等の遮水層によって水の供給を遮断することで、アイスレンズの成長を抑制し、路面の凍上を防止する方法である。しかしながら、遮水効果を長期的に発揮できるかが不明であり、現実性が乏しく、実際の施工例が非常に少ない状況にある。
【0005】
一方、断熱工法は、凍上の発生原因の3要素(土質、温度、水分条件)の一つである温度を抑制するものであって、路床上部に設けられた断熱材層によって、路床への冷気の侵入を抑制し、路面の凍上を防止する方法である。例えば、特許文献1に記載のように車道への断熱工法の適用が進んでいる。特許文献1に記載のアスファルト舗装路は、砂層の一部を断熱材層(特許文献1では防水性耐圧断熱層と称される)で置換することで、掘削深さの低減を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のアスファルト舗装路においては、断熱材層の上側にコンクリート層が敷設されており、コンクリート層の重量(荷重)によって断熱材層が潰れて、所望の断熱性能が発揮できないという問題がある。
【0008】
また、前述のように、比較的幅の広い車道では、断熱材層の敷設幅を十分に確保することができるものの、隣地との間に余裕のない車道又は歩道、比較的幅の狭い歩道においては、断熱材層の敷設幅を十分に確保することが困難である。そのため、隣地との間に余裕のない歩道又は車道、比較的幅の狭い歩道に断熱工法の適用が進んでなく、これらの車道又は歩道においても断熱工法の適用によって路面の凍上の防止することが望まれている。
【0009】
そこで、本発明の一態様は、隣地との間に余裕のない歩道又は車道、比較的幅の狭い歩道においても、所望の断熱性能を発揮しつつ、隣地からの地中冷気の回り込みを抑えて、路面の凍上防止を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の通りである。
【0011】
〔1〕路床の上側に敷設された路盤と、前記路盤の上側に敷設された細粒度アスファルト混合物層と、前記路床と前記路盤との間に敷設され、前記細粒度アスファルト混合物層の表面に対して略平行になっている断熱材層と、隣地境界側における前記断熱材層の下側に埋設され、前記断熱材層に対して略垂直になっている垂直断熱材層と、を備える、アスファルト舗装路。
【0012】
〔2〕前記断熱材層は、前記細粒度アスファルト混合物層の表面から130mm以上600mm未満の深さに埋設され、前記垂直断熱材層は、前記断熱材層の上面から230mm~870mmの深さに埋設されている、〔1〕のアスファルト舗装路。
【0013】
〔3〕路床の上側に敷設された路盤と、前記路盤の上側に敷設された細粒度アスファルト混合物層と、前記路床と前記路盤との間に敷設され、前記細粒度アスファルト混合物層の表面に対して略平行になっている断熱材層と、前記断熱材層の幅方向の少なくともいずれかの端部に連続して形成され、隣地に埋設され、隣地の表面に対して略平行になっている延長断熱材層と、を備える、アスファルト舗装路。
【0014】
〔4〕前記断熱材層は、前記細粒度アスファルト混合物層の表面から130mm以上600mm未満の深さに埋設され、前記延長断熱材層は、隣地境界から隣地の表面に平行な方向に400mm~900mmだけ延長している、〔3〕のアスファルト舗装路。
【0015】
〔5〕前記断熱材層の幅方向の少なくともいずれかの端部に連続して形成され、隣地に埋設され、隣地の表面に対して略平行になっている延長断熱材層を更に備える、〔1〕または〔2〕のアスファルト舗装路。
【0016】
〔6〕前記断熱材層は、前記細粒度アスファルト混合物層の表面から130mm以上600mm未満の深さに埋設され、前記延長断熱材層は、隣地境界から隣地の表面に平行な方向に0mm超500mm以下だけ延長しており、前記垂直断熱材層は、前記断熱材層の上面から230mm~870mmの深さに埋設されている、〔5〕のアスファルト舗装路。
【0017】
〔7〕前記断熱材層の厚み及び前記垂直断熱材層の幅は、それぞれ、25mm~100mmであり、前記断熱材層及び前記垂直断熱材層は、それぞれ、圧縮強度が25N/cm2以上の合成樹脂発泡体からなる、〔1〕、〔2〕、〔5〕または〔6〕のアスファルト舗装路。
【0018】
〔8〕前記断熱材層及び前記垂直断熱材層は、それぞれ、独立気泡率が90%以上のポリスチレン系樹脂発泡体からなる、〔1〕、〔2〕、〔5〕~〔7〕の何れかのアスファルト舗装路。
【0019】
〔9〕前記断熱材層及び前記垂直断熱材層は、それぞれ、押出発泡ポリスチレン系樹脂発泡体からなる、〔1〕、〔2〕、〔5〕~〔8〕の何れかのアスファルト舗装路。
【0020】
〔10〕前記断熱材層の厚み及び前記延長断熱材層の厚みは、それぞれ、25mm~100mmであり、前記断熱材層及び前記延長断熱材層は、それぞれ、圧縮強度が25N/cm2以上の合成樹脂発泡体により構成されている、〔3〕または〔4〕のアスファルト舗装路。
【0021】
〔11〕前記断熱材層及び前記延長断熱材層は、それぞれ、独立気泡率が90%以上のポリスチレン系樹脂発泡体により構成されている、〔3〕、〔4〕または〔10〕のアスファルト舗装路。
【0022】
〔12〕前記断熱材層及び前記延長断熱材層は、それぞれ、押出発泡ポリスチレン系樹脂発泡体により構成されている、〔3〕、〔4〕、〔10〕または〔11〕のアスファルト舗装路。
【0023】
〔13〕前記断熱材層の厚み、前記垂直断熱材層の幅、及び前記延長断熱材層の厚みは、それぞれ、25mm~100mmであり、前記断熱材層、前記垂直断熱材層、及び前記延長断熱材層は、それぞれ、圧縮強度が25N/cm2以上の合成樹脂発泡体により構成されている、〔5〕または〔6〕のアスファルト舗装路。
【0024】
〔14〕前記断熱材層、前記垂直断熱材層、及び前記延長断熱材層は、それぞれ、独立気泡率が90%以上のポリスチレン系樹脂発泡体により構成されている、〔5〕、〔6〕または〔13〕のアスファルト舗装路。
【0025】
〔15〕前記断熱材層、前記垂直断熱材層、及び前記延長断熱材層は、それぞれ、押出発泡ポリスチレン系樹脂発泡体により構成されている、〔5〕、〔6〕、〔13〕または〔14〕のアスファルト舗装路。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様によれば、隣地との間に余裕のない歩道又は車道、比較的幅の狭い歩道においても、所望の断熱性能を発揮しつつ、隣地からの地中冷気の回り込みを抑えて、路面の凍上を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態1に係るアスファルト舗装路の模式的な断面図である。
【
図2】実施形態1の変形例に係るアスファルト舗装路の模式的な断面図である。
【
図3】実施形態2に係るアスファルト舗装路の模式的な断面図である。
【
図4】実施形態2の変形例に係るアスファルト舗装路の模式的な断面図である。
【
図5】実施形態3に係るアスファルト舗装路の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態について図面を参照して説明する。本願の明細書及び特許請求の範囲の記載において、幅方向とは、アスファルト舗装路の幅方向のことである。本願の明細書及び特許請求の範囲の記載において、数値範囲を表わす「X~Y」は、X以上でかつY以下の意味である。X以上でかつY以下以外の数値範囲については、「X以上(または超)Y未満(または以下)」と明記する。図面中、「WD」は幅方向、「UD」は上方向、「DD」は下方向をそれぞれ指している。
【0029】
〔実施形態1〕
図1を参照して、実施形態1に係るアスファルト舗装路10の構成について説明する。
図1は、実施形態1に係るアスファルト舗装路10の模式的な断面図である。
【0030】
(アスファルト舗装路10)
図1に示すように、実施形態1に係るアスファルト舗装路10は、幅方向に離隔した2つの隣地12(1つの隣地12のみ図示)の間にアスファルトによって舗装された歩道又は車道であり、凍上防止機能を有している。そして、アスファルト舗装路10の具体的な構成は、次の通りである。
【0031】
(敷砂層16、保護砂層18)
図1に示すように、地盤を固めた路床14の上側には、不陸調整層としての敷砂層16が敷設されており、敷砂層16は、川砂や砕砂により構成されている。敷砂層16の厚みは、特に限定するものではないが、0mm~100mmであることが好ましく、30mm~50mmであることがより好ましい。敷砂層16の厚みは、例えば、50mmである。また、敷砂層16の上側には、保護砂層18が敷設されており、保護砂層18は、川砂や砕砂により構成されている。保護砂層18の厚みは、特に限定するものではないが、例えば、40mmである。
【0032】
(路盤20、縁石22)
図1に示すように、保護砂層18の上側には、路盤20が敷設されている。換言すれば、地盤を固めた路床14の上側には、路盤20が敷砂層16及び保護砂層18を介して敷設されている。路盤20は、砕石により構成されている。路盤20の厚みは、特に限定するものではないが、100mm~600mmであることが好ましく、200mm~550mmであることがより好ましい。路盤20の厚みは、例えば、400mmである。路盤20の上側における2つの隣地境界LC側には、縁石22がそれぞれ敷設されており、2つの縁石22は、幅方向に離隔している。なお、路盤20の上側における隣地境界LC側に縁石22を敷設する代わりに、舗装止めブロック(図示省略)を敷設してもよい。
【0033】
(アスファルト安定処理層24)
図1に示すように、路盤20の上側における2つの縁石22の間には、基層としてのアスファルト安定処理層24が敷設されている。アスファルト安定処理層24は、路盤20の不陸を補正して、上からの荷重を路盤20に均一に伝達する。アスファルト安定処理層24は、粗骨材、細骨材、フィラ、及びアスファルト等からなる加熱アスファルト混合物により構成されている。アスファルト安定処理層24の厚みは、特に限定するものではないが、30mm~200mmであることが好ましく、50mm~120mmであることがより好ましい。アスファルト安定処理層24の厚みは、例えば、50mmである。
【0034】
(細粒度アスファルト混合物層26)
図1に示すように、アスファルト安定処理層24の上側には、表層としての細粒度アスファルト混合物層26が敷設されている。換言すれば、路盤20の上側には、細粒度アスファルト混合物層26がアスファルト安定処理層24を介して敷設されている。細粒度アスファルト混合物層26は、2つの縁石22の間に配置されている。細粒度アスファルト混合物層26は、上からの荷重をアスファルト安定処理層24に伝達する。細粒度アスファルト混合物層26は、粗骨材、細骨材、フィラ、及びアスファルト等からなる加熱アスファルト混合物により構成されている。細粒度アスファルト混合物層26の厚みは、特に限定するものではないが、30mm~200mmであることが好ましく、50mm~150mmであることがより好ましい。細粒度アスファルト混合物層26の厚みは、例えば、100mmである。
【0035】
(断熱材層28)
図1に示すように、敷砂層16と保護砂層18との間には、断熱材層28が敷設されている。換言すれば、路床14と路盤20との間には、断熱材層28が敷砂層16及び保護砂層18を介して敷設されている。断熱材層28は、細粒度アスファルト混合物層26の表面に対して略平行になっている。ここで、細粒度アスファルト混合物層26の表面に対して略平行とは、細粒度アスファルト混合物層26の表面となす角が±15°の範囲内であることをいう。
【0036】
(垂直断熱材層30)
図1に示すように、隣地境界LC側における断熱材層28の下側には、垂直断熱材層30が埋設されている。垂直断熱材層30は、断熱材層28に対して略垂直になっている。ここで、断熱材層28に対して略垂直とは、断熱材層28の上面に対する垂直断熱材層30の傾斜角(交差角)が90°±30°の範囲内であることをいう。アスファルト舗装路10において、断熱材層28の上面に対する垂直断熱材層30の傾斜角(交差角)は、例えば、90°である。また、垂直断熱材層30の上端は、断熱材層28の下面に接触している。
【0037】
(断熱材層28の厚み、垂直断熱材層30の幅)
断熱材層28の厚み及び垂直断熱材層30の幅は、それぞれ、25mm~100mmであることが好ましく、50mm~75mmであることがより好ましい。断熱材層28の厚み及び垂直断熱材層30の幅は、例えば、50mmである。断熱材層28の厚み等を25mm以上としたのは、断熱材層28の厚み等が25mm未満の場合には、断熱材層28等が十分な断熱性能を発揮できなくなると共に、土圧に耐えうる十分な圧縮強度を保持できなくなるからである。断熱材層28の厚み等を100mm以下にしたのは、断熱材層28の厚み等が100mmを超えると、断熱材層28等の材料コストが増加すると共に、断熱材層28の過度の厚み等によって施工時の取扱性が低下する傾向にあるからである。
【0038】
断熱材層28及び垂直断熱材層30は、それぞれ、圧縮強度が25N/cm2以上の合成樹脂発泡体により構成されていることが好ましい。合成樹脂発泡体の圧縮強度を25N/cm2以上としたのは、合成樹脂発泡体の圧縮強度が25N/cm2未満であると、断熱材層28等にかかる荷重によって断熱材層28が潰れて、所望の断熱性能を発揮できなくなるだけでなく、断熱材層28等の変形によりアスファルト舗装路10の路面歪みが生じる傾向にあるからである。断熱材層28等にかかる荷重とは、舗装荷重と輪荷重との和、舗装荷重と群集荷重との和、又は舗装荷重と輪荷重と群集荷重との和のいずれかである。
【0039】
断熱材層28及び垂直断熱材層30を構成する合成樹脂発泡体としては、例えば、ポリスチレン系樹脂発泡体、ポリエチレン系樹脂発泡体、ポリプロピレン系樹脂発泡体等のポリオレフィン系樹脂発泡体、ポリウレタン系樹脂発泡体、ポリ塩化ビニル系樹脂発泡体等が挙げられる。断熱材層28及び垂直断熱材層30は、それぞれ、合成樹脂発泡体の他に、金属板、合成樹脂フィルム、セメント板等の積層板を含んでもよい。
【0040】
特に、断熱材層28及び垂直断熱材層30は、それぞれ、独立気泡率が90%以上のポリスチレン系樹脂発泡体により構成されることが好ましい。ポリスチレン系樹脂発泡体の独立気泡率を90%以上にしたのは、ポリスチレン系樹脂発泡体の独立気泡率が90%未満になると、ポリスチレン系樹脂発泡体の小口面(端面)からの吸水の影響により、含水率の増加に伴う断熱材層28等の熱伝導率の劣化が生じる傾向にあるからである。
【0041】
90%以上の独立気泡率を有するポリスチレン系樹脂発泡体は、押出発泡体であることが好ましい。換言すれば、断熱材層28及び垂直断熱材層30は、それぞれ、押出発泡ポリスチレン系樹脂発泡体により構成されることが好ましい。これは、施工時等の取扱時における断熱材層28等の割れや欠け等による欠損等を防止するためである。
【0042】
(断熱材層28の埋設深さ)
図1に示すように、断熱材層28は、細粒度アスファルト混合物層26の表面から理論最大凍結深度に対し70%目安に定められる置換厚との間に埋設されている。なお、最大凍結深度とは、地中温度が0℃となる地表面(細粒度アスファルト混合物層26の表面)からの深さのことであり、最大凍結深度は、気温等の気象条件の他、土質や含水率により影響を受ける。
【0043】
最大凍結深度を実測により求める方法としては、(a)メチレンブルー凍結深度計を利用する方法、(b)地盤中の各層に熱電対を埋設する方法、(c)調査孔を掘削して凍結期の地中温度及び凍結の状態を観測する方法等がある。一方、最大凍結深度を計算によって算出(推定)する場合には、気温から理論最大凍結深度Dmaxを求めて推定する。理論最大凍結深度Dmaxは、最寄りの気象観測データより下式を用いて算出(推定)することができる。
【0044】
Dmax=C√F
C:土質による定数 、F:凍結指数
凍結指数は、単位を℃・dayで表し、日平均気温がマイナスとなる連続した期間における日平均気温の累計値である。例えば、11月2日に日平均気温がマイナスに転じ、翌年の3月21日に日平均気温がプラスに転じたとした場合、11月1日から3月20日までの日平均気温の累計値が対象となり、その値が400であれば、凍結指数Fは400になる。
【0045】
断熱材層28は、細粒度アスファルト混合物層26の表面から、好ましくは130mm以上600mm未満の深さ、より好ましくは200mm~500mmの深さに埋設されている。
図1に示すように、断熱材層28は、例えば、細粒度アスファルト混合物層26の表面から330mmの深さに埋設されている。断熱材層28の埋設深さを細粒度アスファルト混合物層26の表面から130mm以上としたのは、断熱材層28の埋設深さが細粒度アスファルト混合物層26の表面から130mm未満であると、断熱材層28等にかかる荷重によって断熱材層28が潰れて、所望の断熱性能を発揮できなくなるからである。断熱材層28の埋設深さを細粒度アスファルト混合物層26の表面から600mm未満としたのは、北海道において市町村毎の理論最大凍結深度が900mm~1600mmの範囲に算出されており、理論最大凍結深度に対し70%を目安に凍上被害を防止するための置換厚が定められており、その置換厚は600mm~1100mmとなっている。断熱材層28の埋設深さが細粒度アスファルト混合物層26の表面から600mm未満であれば、凍上被害を防止するための置換厚に達することがなく、所望の断熱性能を発揮できるからである。
【0046】
理論最大凍結深度は、前述のように、一般的に寒冷地において定められており、日本国内の寒冷地は、北陸、東北、北海道の地域である。北海道においては、前述のように市町村毎の理論最大凍結深度は、900mm~1600mmの範囲に算出されており、凍上被害を防止するための置換厚は理論最大凍結深度に対し70%を目安に定められており、600mm~1100mmとなっている。一例を挙げると、札幌市の最大凍結深度は、1150mm、置換厚は800mmとなっている。
【0047】
(垂直断熱材層30の埋設深さ)
垂直断熱材層30は、断熱材層28の上面から、好ましくは230mm~870mmの深さ、より好ましくは350mm~820mmの深さに埋設されている。
図1に示すように、垂直断熱材層30は、例えば、断熱材層28の上面から370mmの深さに埋設されている。垂直断熱材層30の埋設深さを断熱材層28の上面から230mm以上としたのは、垂直断熱材層30の埋設深さが断熱材層28の上面から230mm未満であると、隣地12側からの地中冷気を断熱することができず、地中冷気の回り込みによって凍上害の発生するおそれがあるからである。垂直断熱材層30の埋設深さを断熱材層28の上面から870mm以下としたのは、垂直断熱材層30の埋設深さが断熱材層28の上面から870mmを超えると、深く入り込んで垂直断熱材層30を埋設施工する必要があり、アスファルト舗装路10の施工性が低下する傾向にあるからである。
【0048】
また、
図1に示すように、アスファルト舗装路10は、断熱材層28の上側にコンクリート層が敷設されていない構成であることが好ましい。それゆえ、少なくとも断熱材層28は、コンクリート層に対して耐荷重性能(耐圧性能)を発揮する程度にまで強度を大きくする必要がない。断熱材層28の圧縮強度は、25N/cm
2~80N/cm
2であることが好ましく、30N/cm
2~60N/cm
2であることがより好ましい。
【0049】
(作用効果)
続いて、実施形態1の作用効果について説明する。
【0050】
アスファルト舗装路10の構成によると、前述のように、隣地境界LC側における断熱材層28の下側に垂直断熱材層30が埋設されており、垂直断熱材層30が断熱材層28に対して略垂直になっている。そのため、アスファルト舗装路10が隣地との間に余裕のない歩道又は車道、比較的幅の狭い歩道であっても、隣地12からの地中冷気の回り込みを抑えて、路面の凍上の防止することができる。
【0051】
特に、断熱材層28の埋設深さが細粒度アスファルト混合物層26の表面から130mm以上600mm未満の深さであるため、断熱材層28にかかる荷重によって断熱材層28がより潰れ難くなり、所望の断熱性能を十分に発揮することができる。
【0052】
また、アスファルト舗装路10の構成によると、断熱材層28の上側には、保護砂層18、路盤20、アスファルト安定処理層24、及び細粒度アスファルト混合物層26が下側からこの順で敷設されているだけで、コンクリート層が敷設されていない。すなわち、アスファルト舗装路10は、断熱材層28の上側にコンクリート層が敷設されていない構成である。そのため、断熱材層28にかかる荷重によって断熱材層28及び垂直断熱材層30が潰れて難くなり、所望の断熱性能を発揮することができる。
【0053】
特に、垂直断熱材層30の埋設深さが断熱材層28の上面から230mm~870mmの深さであるため、アスファルト舗装路10の施工性を高めつつ、隣地12からの地中冷気の回り込みをより抑えて、路面の凍上を十分に防止することができる。
【0054】
従って、実施形態1によれば、アスファルト舗装路10が隣地との間に余裕のない歩道又は車道、比較的幅の狭い歩道であっても、所望の断熱性能を十分に発揮しつつ、隣地12からの地中冷気の回り込みを抑えて、路面の凍上を十分に防止することができる。
【0055】
(実施形態1の変形例)
図2を参照して、実施形態1の変形例に係るアスファルト舗装路10Aの構成について説明する。
図2は、実施形態1の変形例に係るアスファルト舗装路10Aの模式的な断面図である。
【0056】
(アスファルト舗装路10Aの概要)
図2に示すように、実施形態1の変形例に係るアスファルト舗装路10Aは、幅方向に離隔した2つの隣地12(1つの隣地12のみ図示)の間にアスファルトによって舗装された歩道又は車道であり、凍上防止機能を有している。アスファルト舗装路10Aは、一部を除き、実施形態1に係るアスファルト舗装路10(
図1参照)と同様の構成を有している。アスファルト舗装路10Aの構成のうち、アスファルト舗装路10の構成と異なる点についてのみ説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0057】
(垂直断熱材層30)
アスファルト舗装路10Aにおいて、垂直断熱材層30は、隣地境界LC側の切土形状に対応して鉛直方向に傾斜している。断熱材層28の上面に対する垂直断熱材層30の傾斜角は、例えば、117°であり、90°±30°の範囲内である。換言すれば、アスファルト舗装路10Aにおいても、垂直断熱材層30は、断熱材層28に対して略垂直になっている。また、アスファルト舗装路10Aにおいても、垂直断熱材層30の上端は、断熱材層28の下面に接触している。垂直断熱材層30は、断熱材層28の上面から230mm~870mmの深さに埋設されている。
【0058】
そして、実施形態1の変形例によれば、前述の実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0059】
〔実施形態2〕
図3を参照して、実施形態2に係るアスファルト舗装路32の構成について説明する。
図3は、実施形態2に係るアスファルト舗装路32の模式的な断面図である。
【0060】
(アスファルト舗装路32の概要)
図3に示すように、実施形態2の変形例に係るアスファルト舗装路32は、幅方向に離隔した2つの隣地12(1つの隣地12のみ図示)の間にアスファルトによって舗装された歩道又は車道であり、凍上防止機能を有している。アスファルト舗装路32は、一部を除き、実施形態1に係るアスファルト舗装路10(
図1参照)と同様の構成を有している。アスファルト舗装路32の構成のうち、アスファルト舗装路10の構成と異なる点についてのみ説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0061】
(延長断熱材層34)
アスファルト舗装路32において、隣地境界LC側における断熱材層28の下側に垂直断熱材層30(
図1参照)が埋設されていない。断熱材層28の幅方向の少なくともいずれかの端部には、延長断熱材層34が連続して形成されている。換言すれば、アスファルト舗装路32は、垂直断熱材層30の代わりに、延長断熱材層34を備えている。断熱材層28の幅方向の端部に延長断熱材層34が連続して形成される態様としては、延長断熱材層34が断熱材層28に一体成形されている場合と、延長断熱材層34が断熱材層28に接着剤又はラップ被覆で接合されている場合とがある。いずれの場合においても、断熱材層28と延長断熱材層34との間に隙間は存在しない。
【0062】
延長断熱材層34は、隣地12に埋設されており、細粒度アスファルト混合物層26の表面に対して略平行になっている。細粒度アスファルト混合物層26の表面に対して略平行とは、細粒度アスファルト混合物層26の表面となす角が±15°の範囲内であることをいう。また、延長断熱材層34は、隣地12の表面に対して略平行になっている。隣地12の表面に対して略平行とは、隣地12の表面となす角が±15°の範囲内であることをいう。
【0063】
延長断熱材層34の厚みは、前述の断熱材層28の厚みに関する理由と同様の理由から、25mm~100mmであることが好ましく、50mm~75mmであることがより好ましい。延長断熱材層34の厚みは、例えば、50mmである。延長断熱材層34は、前述の断熱材層28の合成樹脂発泡体に関する理由と同様の理由から、圧縮強度が25N/cm2以上の合成樹脂発泡体により構成されていることが好ましい。また、延長断熱材層34を構成する合成樹脂発泡体としては、断熱材層28を構成する合成樹脂発泡体と同じものが用いられる。延長断熱材層34は、合成樹脂発泡体の他に、金属板、合成樹脂フィルム、セメント板等の積層板を含んでもよい。
【0064】
(延長断熱材層34の隣地境界LCからの延長長さ)
延長断熱材層34は、隣地境界LCから隣地12の表面に平行な方向に、好ましくは400mm~900mm、より好ましくは500mm~800mmだけ延長している。延長断熱材層34は、例えば、隣地境界LCから隣地12の表面に平行な方向に500mmだけ延長している。延長断熱材層34の隣地境界LCからの延長長さを400mm以上としたのは、延長断熱材層34の隣地境界LCからの延長長さが400mm未満であると、隣地12側からの地中冷気を断熱することができず、地中冷気の回り込みによって凍上害の発生するおそれがあるからである。延長断熱材層34の隣地境界LCからの延長長さを900mm以下としたのは、延長断熱材層34の隣地境界LCからの延長長さが900mmを超えると、隣地12に大きく入り込んで延長断熱材層34を埋設施工する必要があり、アスファルト舗装路32の施工性が低下する傾向にあるからである。
【0065】
(作用効果)
続いて、実施形態2の作用効果について説明する。
【0066】
アスファルト舗装路32の構成によると、アスファルト舗装路10(
図1参照)の構成と同様に、断熱材層28の上側には、コンクリート層が敷設されていない。断熱材層28の埋設深さが細粒度アスファルト混合物層26の表面から130mm以上600mm未満の深さである。そのため、断熱材層28等にかかる荷重によって断熱材層28がより潰れ難くなり、所望の断熱性能を十分に発揮することができる。
【0067】
アスファルト舗装路32の構成によると、前述のように、断熱材層28の幅方向の少なくともいずれかの端部に延長断熱材層34が連続して形成されている。延長断熱材層34が細粒度アスファルト混合物層26の表面に対して略平行になっている。そのため、アスファルト舗装路32が隣地との間に余裕のない歩道又は車道、比較的幅の狭い歩道であっても、隣地12からの地中冷気の回り込みを抑えて、路面の凍上の防止することができる。
【0068】
特に、延長断熱材層34の隣地境界LCから延長長さが隣地12の表面に平行な方向に400mm~900mmであるため、アスファルト舗装路32の施工性を高めつつ、隣地12からの地中冷気の回り込みをより抑えて、路面の凍上を十分に防止することができる。
【0069】
従って、実施形態2によれば、アスファルト舗装路32が隣地との間に余裕のない歩道又は車道、比較的幅の狭い歩道であっても、所望の断熱性能を十分に発揮しつつ、隣地12からの地中冷気の回り込みを抑えて、路面の凍上を十分に防止することができる。
【0070】
(実施形態2の変形例)
図4を参照して、実施形態2の変形例に係るアスファルト舗装路32Aの構成について説明する。
図4は、実施形態2の変形例に係るアスファルト舗装路32Aの模式的な断面図である。
【0071】
(アスファルト舗装路32Aの概要)
図4に示すように、実施形態2の変形例に係るアスファルト舗装路32Aは、幅方向に離隔した2つの隣地12(1つの隣地12のみ図示)の間にアスファルトによって舗装された歩道又は車道であり、凍上防止機能を有している。アスファルト舗装路32Aは、一部を除き、実施形態2に係るアスファルト舗装路32(
図3参照)と同様の構成を有している。アスファルト舗装路32Aの構成のうち、アスファルト舗装路32の構成と異なる点についてのみ説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1及び実施形態2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0072】
(延長断熱材層34)
図4に示すように、アスファルト舗装路32Aにおいて、延長断熱材層34は、隣地12側の盛土形状に応じて、細粒度アスファルト混合物層26の表面に対して±15°の範囲を超えて傾斜している。換言すれば、延長断熱材層34は、細粒度アスファルト混合物層26の表面に対して略平行になっていない。一方、延長断熱材層34は、隣地12の表面に対して略平行になっている。
【0073】
そして、実施形態2の変形例によれば、前述の実施形態2と同様の作用効果を奏する。
【0074】
〔実施形態3〕
図5を参照して、実施形態3に係るアスファルト舗装路36の構成について説明する。
図5は、実施形態3に係るアスファルト舗装路36の模式的な断面図である。
【0075】
(アスファルト舗装路36の概要)
図5に示すように、実施形態3に係るアスファルト舗装路36は、幅方向に離隔した2つの隣地12(1つの隣地12のみ図示)の間にアスファルトによって舗装された歩道又は車道であり、凍上防止機能を有している。アスファルト舗装路36は、一部を除き、実施形態1に係るアスファルト舗装路10(
図1参照)と同様の構成を有している。アスファルト舗装路36の構成のうち、アスファルト舗装路10の構成と異なる点についてのみ説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0076】
(延長断熱材層38)
図5に示すように、アスファルト舗装路36において、断熱材層28の幅方向の少なくともいずれかの端部には、延長断熱材層38が連続して形成されている。換言すれば、アスファルト舗装路36は、垂直断熱材層30及び延長断熱材層38を備えている。断熱材層28の幅方向の端部に延長断熱材層38が連続して形成される態様としては、延長断熱材層38が断熱材層28に一体成形されている場合と、延長断熱材層38が断熱材層28に接着剤又はラップ被覆で接合されている場合とがある。いずれの場合においても、断熱材層28と延長断熱材層38との間に隙間は存在しない。延長断熱材層38は、隣地12に埋設されており、細粒度アスファルト混合物層26の表面に対して略平行になっている。延長断熱材層38は、隣地12の表面に対して略平行になっている。
【0077】
延長断熱材層38の厚みは、前述の断熱材層28の厚みに関する理由と同様の理由から、25mm~100mmであることが好ましく、50mm~75mmであることがより好ましい。延長断熱材層38の厚みは、例えば、50mmである。延長断熱材層38は、前述の断熱材層28の合成樹脂発泡体に関する理由と同様の理由から、圧縮強度が25N/cm2以上の合成樹脂発泡体により構成されていることが好ましい。また、延長断熱材層38を構成する合成樹脂発泡体としては、断熱材層28を構成する合成樹脂発泡体と同じものが用いられる。延長断熱材層38は、合成樹脂発泡体の他に、金属板、合成樹脂フィルム、セメント板等の積層板を含んでもよい。
【0078】
(延長断熱材層38の隣地境界LCからの延長長さ)
延長断熱材層38は、隣地境界LCから隣地12の表面に平行な方向に、好ましくは0mm超500mm以下、より好ましくは0mm~400mmだけ延長している。
図5に示すように、延長断熱材層38は、例えば、隣地境界LCから隣地12の表面に平行な方向に400mmだけ延長している。アスファルト舗装路36は、垂直断熱材層30を備えていることから、延長断熱材層38の隣地境界LCからの延長長さの下限は、0mmを超えていればよく、特に限定されない。また、延長断熱材層38の隣地境界LCからの延長長さを500mm以下としたのは、延長断熱材層38の隣地境界LCからの延長長さが500mmを超えると、隣地12側への入り込みを少なくして、延長断熱材層38を埋設施工することができず、アスファルト舗装路36の施工性が低下する傾向にあるからである。
【0079】
(作用効果)
続いて、実施形態3の作用効果について説明する。
【0080】
アスファルト舗装路36の構成によると、アスファルト舗装路10(
図1参照)の構成と同様に、断熱材層28の上側には、コンクリート層が敷設されていない。断熱材層28の埋設深さが細粒度アスファルト混合物層26の表面から130mm以上600mm未満の深さである。そのため、断熱材層28等にかかる荷重によって断熱材層28がより潰れ難くなり、所望の断熱性能を十分に発揮することができる。
【0081】
アスファルト舗装路36の構成によると、アスファルト舗装路10(
図1参照)の構成と同様に、隣地境界LC側における断熱材層28の下側に垂直断熱材層30が埋設されており、垂直断熱材層30が断熱材層28に対して略垂直になっている。垂直断熱材層30の埋設深さは、断熱材層28の上面から230mm~870mmの深さである。そのため、アスファルト舗装路36が隣地12との間に余裕のない歩道又は車道、比較的幅の狭い歩道であっても、隣地12からの地中冷気の回り込みを抑えて、路面の凍上を十分に防止することができる。
【0082】
特に、断熱材層28の幅方向の少なくともいずれかの端部に延長断熱材層38が連続して形成されている。延長断熱材層38が細粒度アスファルト混合物層26の表面に対して略平行になっている。延長断熱材層34の隣地境界LCから延長長さは、隣地12の表面に平行な方向に0mm超500mm以下である。そのため、アスファルト舗装路36が隣地12との間に余裕のない歩道又は車道、比較的幅の狭い歩道であっても、隣地12からの地中冷気の回り込みをより抑えて、路面の凍上をより十分に防止することができる。
【0083】
従って、実施形態3によれば、アスファルト舗装路36が隣地12との間に余裕のない歩道又は車道、比較的幅の狭い歩道であっても、所望の断熱性能を十分に発揮しつつ、隣地12からの地中冷気の回り込みをより抑えて、路面の凍上をより十分に防止することができる。
【0084】
〔付記事項〕
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0085】
10 アスファルト舗装路(実施形態1に係るアスファルト舗装路)
12 隣地
14 路床
16 敷砂層
18 保護砂層
20 路盤
22 縁石
24 アスファルト安定処理層
26 細粒度アスファルト混合物層
28 断熱材層
30 垂直断熱材層
10A アスファルト舗装路(実施形態1の変形例に係るアスファルト舗装路)
32 アスファルト舗装路(実施形態2に係るアスファルト舗装路)
34 延長断熱材層
32A アスファルト舗装路(実施形態2の変形例に係るアスファルト舗装路)
36 アスファルト舗装路(実施形態3に係るアスファルト舗装路)
38 延長断熱材層