(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040813
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
E02F 9/02 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
E02F9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145408
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高 國傑
(57)【要約】
【課題】瓦礫等の障害物を取り去りながら移動することである。
【解決手段】移動体は、平面視で外形が円状の本体部と、本体部を本体部の中心を軸として本体部の周方向に本体部を回転させると共に、本体部を進行方向へ移動させる作動部と、本体部に取り付けられ、進行方向を向いた状態で、進行方向の障害物を捕獲し、本体部が作動部によって回転して進行方向とは異なる方向を向いた状態で、捕獲した障害物を排出する捕獲排出部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で外形が円状の本体部と、
前記本体部を前記本体部の中心を軸として前記本体部の周方向に前記本体部を回転させると共に、前記本体部を進行方向へ移動させる作動部と、
前記本体部に取り付けられ、進行方向を向いた状態で、進行方向の障害物を捕獲し、前記本体部が前記作動部によって回転して前記進行方向とは異なる方向を向いた状態で、捕獲した障害物を排出する捕獲排出部と、
を備える移動体。
【請求項2】
前記捕獲排出部は、
前記本体部の外周部に形成された凹状の凹部に対して収納する収納位置と前記凹部に対して突出する突出位置とに移動すると共に移動方向に延び、前記移動方向に対して交差する交差方向に広げられた引掛け部が先端に設けられた爪部と、
前記爪部を移動させる他の作動部と、
を備える請求項1に移動体。
【請求項3】
前記爪部を振動させる振動部を備える、
請求項2に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の無人走行用の移動体は、箱体とこの箱体を覆う走行用クローラから構成される無人走行用の移動体であって、箱体は、内部に移動体制御用の機器収納空間を有し、箱体上面に機器付設用のセンターベースバーを備えており、箱体下面はクローラベルトの摺接面を形成し、箱体の前後にはプーリーが設けられており、走行用クローラは、箱体の前後に設けたプーリー間にクローラベルトが掛け回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、災害地などの瓦礫等の障害物の多い不整地を走行する移動体として、クローラ式走行用移動体が有る。このクローラ式走行用移動体は、瓦礫等の障害物を上から押さえつけながら走行する。
【0005】
しかし、このような移動体では、瓦礫等の障害物に覆われている捜索対象物を探しながら移動することができない。例えば、移動体が瓦礫等の障害物を取り去りながら移動することができれば、瓦礫等の障害物に覆われている捜索対象物を探しながら移動することができる。
【0006】
本開示の課題は、瓦礫等の障害物を取り去りながら移動することができる移動体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様に係る移動体は、平面視で外形が円状の本体部と、前記本体部を前記本体部の中心を軸として前記本体部の周方向に前記本体部を回転させると共に、前記本体部を進行方向へ移動させる作動部と、前記本体部に取り付けられ、進行方向を向いた状態で、進行方向の障害物を捕獲し、前記本体部が前記作動部によって回転して前記進行方向とは異なる方向を向いた状態で、捕獲した障害物を排出する捕獲排出部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
第1態様の移動体によれば、捕獲排出部が、進行方向の障害物を捕獲する。さらに、障害物を捕獲した状態で、作動部が、本体部を本体部の中心を軸として周方向に回転させる。ここで、本体部の外形が平面視で円状とされるため、本体部が本体部の中心を軸として容易に回転する。
【0009】
そして、本体部が進行方向とは異なる方向を向いた状態で、捕獲排出部が障害物を進行方向とは異なる方向へ排出する。これを繰り返しながら移動体が進行方向へ移動する。換言すれば、進行方向の障害物を取り去りながら移動体が進行方向へ移動する。このように、移動体が、瓦礫等の障害物を取り去りながら移動することができる。
【0010】
本開示の第2態様に係る移動体は、第1態様に記載の移動体において、前記捕獲排出部は、前記本体部の外周部に形成された凹状の凹部に対して収納する収納位置と前記凹部に対して突出する突出位置とに移動すると共に移動方向に延び、前記移動方向に対して交差する交差方向に広げられた引掛け部が先端に設けられた爪部と、前記爪部を移動させる他の作動部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
第2態様の移動体によれば、凹部から突出した突出位置に移動した爪部が、引掛け部で障害物を引っ掛ける。そして、引掛け部に障害物を引っ掛けた状態で、他の作動部が爪部を収納位置へ移動させることで、障害物が凹部に収納されて捕獲される。このように、爪部が移動方向に対して交差する交差方向に広げられた引掛け部を有することで、爪部は、引掛け部を有しない場合と比して、容易に障害物を捕獲することができる。
【0012】
本開示の第3態様に係る移動体は、第2態様に記載の移動体において、前記爪部を振動させる振動部を備えることを特徴とする。
【0013】
第3態様の移動体によれば、振動部が爪部を振動させる。そして、振動する爪部を障害物に接触させることで障害物も振動する。これにより、障害物とこの障害物が接触する他の障害物との摩擦抵抗が小さくなることで、爪部は、振動しない場合と比して、爪部の引掛け部に引っ掛かった障害物を容易に移動させて捕獲することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、瓦礫等の障害物を取り去りながら移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る移動体の全体であって、爪部が収納位置に移動した状態を示した斜視図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る移動体の全体であって、爪部が突出位置に移動した状態を示した斜視図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係る移動体であって、移動部を進行方向及び後退方向に移動させる駆動部等を示した斜視図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係る移動体であって、爪部を振動させるための振動部を示した斜視図である。
【
図5】(A)(B)本開示の第1実施形態に係る移動体の移動工程を示した工程図である。
【
図6】(A)(B)本開示の第1実施形態に係る移動体の移動工程を示した工程図である。
【
図7】(A)(B)本開示の第1実施形態に係る移動体の移動工程を示した工程図である。
【
図8】(A)(B)本開示の第1実施形態に係る移動体の移動工程を示した工程図である。
【
図9】(A)(B)本開示の第2実施形態に係る移動体において、障害物を長距離運搬する運搬工程を示した工程図である。
【
図10】(A)(B)本開示の第2実施形態に係る移動体において、障害物を長距離運搬する運搬工程を示した工程図である。
【
図11】(A)(B)本開示の第2実施形態に係る移動体において、障害物を長距離運搬する運搬工程を示した工程図である。
【
図12】(A)(B)本開示の第2実施形態に係る移動体において、障害物を長距離運搬する運搬工程を示した工程図である。
【
図13】(A)(B)本開示の第2実施形態に係る移動体において、障害物を長距離運搬する運搬工程を示した工程図である。
【
図14】(A)(B)本開示の第2実施形態に係る移動体において、障害物を長距離運搬する運搬工程を示した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
本開示の実施形態に係る移動体の一例を
図1~
図8に従って説明する。
【0017】
なお、各図に示す矢印Hは、鉛直方向であって、移動体10の上下方向を示し、矢印Lは、移動体10の進行方向であって本実施形態では水平方向であり、矢印Wは、進行方向に向いている移動体10の幅方向であって本実施形態では水平方向である。そして、矢印H、矢印L、及び矢印Wは互いに直交する。
【0018】
(移動体10の全体構成)
移動体10は、
図1に示されるように、本体部20と、本体部20に対して移動する移動部30と、移動部30を移動させる駆動部40と、本体部20に取り付けられる一対の車輪50と、車輪50を回転させる駆動部60とを備えている。さらに、移動体10は、移動部30に備えられた爪部34を振動させる振動部70を備えている。なお、移動体10の構成については、移動体10が進行方向を向いた状態で説明する。
【0019】
〔本体部20〕
本体部20は、
図1に示されるように、上方から見て円状である。換言すれば、本体部20は、平面視で円状である。ここで、平面視とは、移動体10を水平面に置いて、上方から見たことをいう。また、本体部20は、底板22と、フランジ板24とを有している。そして、本実施形態では、一例として、本体部20の直径は、0.70〔m〕~1.3〔m〕程度とされている。
【0020】
-底板22-
底板22は、進行方向の部分と後退方向の部分が凹状に切りかかれた円状とされている。具体的には、底板22の外周部において進行方向の部分には、凹状に切りかかれた凹部22aが形成され、底板22の外周部において後退方向の部分には、凹状に切りかかれた凹部22bが形成されている。このように、凹部22a、22bは、本体部20の外周部に形成されている。
【0021】
さらに、底板22において幅方向の両側部分には、車輪50が挿入される一対の貫通孔22cが形成されている。
【0022】
-フランジ板24-
フランジ板24は、底板22の縁から立ち上がっており、底板22の外周縁に設けられたフランジ部24aと、底板22の凹部22a、22bを構成すると共に進行方向に延びる縁に設けられたフランジ部24bとを備えている。
【0023】
〔移動部30〕
移動部30は、
図1、
図2に示されるように、幅方向において、本体部20の中央部分で、底板22の上方に配置され、進行方向に延びている。そして、移動部30は、骨格部32と、骨格部32に取り付けられている爪部34とを有している。
【0024】
-骨格部32-
骨格部32は、図示せぬレール部材によって進行方向及び後退方向に本体部20に対して移動可能に底板22に取り付けられている。そして、骨格部32は、板厚方向を幅方向とすると共に進行方向に延びる一対の長尺板32aと、板厚方向を進行方向とすると共に長尺板32aにおいて進行方向の端部に取り付けられた端板32bとを有している。さらに、骨格部32は、板厚方向を進行方向とすると共に長尺板32aにおいて後退方向の端部に取り付けられた端板32cとを有している。
【0025】
一対の長尺板32aは、幅方向から見て、進行方向に延びる矩形状とされており、幅方向で離間している。さらに、長尺板32aにおいて上方を向いた端面には、進行方向に延びているラックギア36(
図3参照)が形成されている。
【0026】
端板32bは、進行方向から見て、幅方向に延びる矩形状とされており、一対のフランジ部24bの間に配置されている。そして、端板32bの幅方向の両端部は、長尺板32aから幅方向に突出し、端板32bには、進行方向を向いた面33が形成されている。
【0027】
端板32cは、後退方向から見て、幅方向に延びる矩形状とされており、一対のフランジ部24bの間に配置されている。そして、端板32cの幅方向の両端部は、長尺板32aから幅方向に突出している。
【0028】
-爪部34-
爪部34は、端板32bの面33において幅方向の一方側の部分に取り付けられている一対の棒部34aと、一対の棒部34aの先端に掛け渡された引掛け部34bとを有している。
【0029】
一対の棒部34aは、上下方向に離間し、進行方向に延びている。そして、一対の棒部34aの基端が端板32bの面33に取り付けられている。
【0030】
引掛け部34bは、上下方向に延びた長尺状とされており、棒部34aの先端に固定されている。ここで、引掛け部34bの一部は、幅方向において、棒部34aに対して他方側へ突出している。換言すれば、爪部34の先端には、爪部34の移動方向に対して交差する交差方向に広げられた引掛け部34bが設けられている。
【0031】
以上の構成において、移動部30は、図示せぬレール部材によって本体部20に対して進行方向及び後退方向に移動する。具体的には、図示せぬストッパによって移動範囲が規制され、移動部30は、爪部34が本体部20の凹部22aに収納される収納位置(
図1参照)と、爪部34が本体部20の凹部22aから突出する突出位置(
図2参照)とへ移動する。
【0032】
ここで、爪部34が収納位置へ移動した状態で、平面視で移動部30の全体が、円状の本体部20の内側の領域に配置されるようになっている(
図5(A)参照)。
【0033】
〔駆動部40〕
駆動部40は、
図3に示されるように、モータ42と、ピニオンギア44aが形成されたピニオン44と、モータ42の回転力をピニオン44に伝達する伝達部46とを備えている。駆動部40は、他の作動部の一例である。
【0034】
モータ42は、一対の長尺板32aの間に配置されており、底板22に取り付けられている。
【0035】
ピニオン44は、一対のピニオンギア44aと、一対のピニオンギア44aの端部に取り付けられると共に幅方向に延びる軸44bとを備えている。そして、一対のピニオンギア44aは、長尺板32aの上方を向いた端面に形成されたラックギア36と噛み合っている。
【0036】
なお、モータ42には、図示せぬリード線の一端部が接続されている。そして、リード線の他端部には電源及びコントローラが接続されている。このコント―ラを用いることで、モータ42が、稼働非稼働とされ、稼働時には、正逆方向へ回転するようになっている。
【0037】
この構成において、
図5(A)に示されるように、爪部34が収納位置に移動した移動体10の進行方向に瓦礫等の障害物Bが有る状態で、モータ42が正方向に回転する回転力を、伝達部46を介してピニオン44へ付与すると、
図5(B)に示されるように、収納位置の爪部34が突出位置へ移動する。具体的には、上方から見て爪部34と端板32bとの間に障害物Bが配置されるように、爪部34が突出位置へ移動する。換言すれば、上方から見て爪部34と端板32bとに障害物Bが挟まれるように、爪部34が突出位置へ移動する。
【0038】
さらに、爪部34が突出位置に配置された状態で、モータ42が逆方向に回転する回転力を、伝達部46を介してピニオン44へ付与すると、突出位置の爪部34が収納位置へ移動する。これにより、障害物Bが、爪部34の引掛け部34bに引っ掛かりながら本体部20の凹部22aへ移動し、爪部34によって移動体10に捕獲される。
【0039】
また、
図6(B)に示されるように、移動体10が障害物Bを捕獲して爪部34が後退方向に向いた状態で、モータ42が正方向に回転する回転力を、伝達部46を介してピニオン44へ付与する。そうすると、
図7(A)に示されるように、収納位置の爪部34が突出位置へ移動すると共に端板32bが障害物Bを押し出す。このようにして、障害物Bが、後退方向へ排出される。
【0040】
以上説明したように、進行方向の障害物Bを捕獲すると共に、障害物Bを後退方向へ排出する捕獲排出部38は、突出位置と収納位置とに移動する爪部34と、爪部34を移動させる駆動部40とを含んで構成されている。
【0041】
〔車輪50、駆動部60〕
車輪50は、
図1、
図2に示されるように、一対設けられ、底板22の貫通孔22cに挿入されている。
【0042】
一対の車輪50は、幅方向に離間し、車輪50の回転軸が幅方向に延びるように移動部30を間において配置されている。そして、車輪50の下端部分が、貫通孔22cを通して底板22の下方へ突出している。
【0043】
駆動部60は、一対の車輪50に対して夫々設けられ、モータ62と、モータ62の回転力を車輪50へ伝達する伝達部64とを備えている。モータ62は、幅方向において車輪50と移動部30との間に配置され、底板22に取り付けられている。
【0044】
また、底板22の下面には、360度回転するボールキャスターが取り付けられており(図示省略)、このボールキャスターと一対の車輪50とが、地面に接触している。以下説明の便宜上、幅方向の一方側の車輪50を車輪50aと称し、幅方向他方側の車輪50を車輪50bと称する。
【0045】
なお、モータ62には、図示せぬリード線の一端部が接続されている。そして、リード線の他端部には電源及びコントローラが接続されている。このコント―ラを用いることで、モータ62が、稼働非稼働とされ、稼働時には、正逆方向へ回転するようになっている。
【0046】
この構成において、移動体10が進行方向を向いた状態で、一対のモータ62が正方向に回転する回転力を、伝達部64を介して車輪50a、50bへ夫々付与すると、車輪50a、50bが正方向へ回転して、移動体10(本体部20)が進行方向へ移動する。
【0047】
一方、移動体10が進行方向を向いた状態で、一対のモータ62が逆方向に回転する回転力を、伝達部64を介して車輪50a、50bへ夫々付与すると、車輪50a、50bが逆方向へ回転して、移動体10が後退方向へ移動する。
【0048】
さらに、一方のモータ62が正方向に回転する回転力を、伝達部64を介して車輪50aへ付与し、他方のモータ62が逆方向に回転する回転力を、伝達部64を介して車輪50bへ付与する。そうすると、車輪50aが正方向に回転し、車輪50bが逆方向に回転して、移動体10は、上方から見て円状の本体部20の中心を軸として時計方向へ回転する。
【0049】
また、一方のモータ62が逆方向に回転する回転力を、伝達部64を介して車輪50aへ付与し、他方のモータ62が正方向に回転する回転力を、伝達部64を介して車輪50bへ付与する。そうすると、車輪50aが逆方向に回転し、車輪50bが正方向に回転して、移動体10は、上方から見て円状の本体部20の中心を軸として反時計方向へ回転する。
【0050】
以上説明したように、本体部20を本体部20の中心を軸として本体部20の周方向に回転させると共に、本体部20を進行方向及び後退方向へ移動させる作動部26は、車輪50及び駆動部60を含んで構成されている。
【0051】
〔振動部70〕
振動部70は、
図4に示されるように、本体部20の進行方向側の部分で、フランジ部24bを間において凹部22aの幅方向の一方側に配置されている。
【0052】
振動部70は、モータ72と、モータ72の軸部72aに取り付けられた偏心カム74とを備えている。そして、モータ72は、底板22に取り付けられている。
【0053】
なお、モータ72には、図示せぬリード線の一端部が接続されている。そして、リード線の他端部には電源及びコントローラが接続されている。このコント―ラを用いることで、モータ72が、回転するようになっている。
【0054】
この構成において、モータ72が回転することで偏心カム74が回転する。カムが偏心しているため、モータ72自身が振動する。この振動が底板22を介して移動部30の爪部34へ伝達されることで、爪部34が振動する。本実施形態では、一例として、爪部34は、2~7〔mm〕程度の振幅で、170~230〔Hz〕程度の振動数で振動するようになっている。なお、本実施形態では、モータ72自身の振動を、底板22を介して移動部30の爪部34へ伝達されることで、爪部34を振動させたが、爪部34に振動部70を内蔵して、爪部34のみを振動させてもよい。
【0055】
(作用)
次に、移動体10の作用について説明する。具体的には、移動体10が瓦礫等の障害物Bを取り除きながら進行する状態について説明する。なお、移動体10に設けられたモータ42、62、72については、ユーザーによって図示せぬコントローラを用いて稼働するようになっている。つまり、以下に説明する作用について、ユーザーが図示せぬコントローラを用いて移動体10を稼働させることで実行される。
【0056】
図5(A)に示されるように、爪部34が収納位置に移動している移動体10の進行方向には、いびつな障害物Bが複数散乱している。この状態では、移動体10が進行方向へ移動することができない。
【0057】
そこで、モータ72を稼働させることで、爪部34が振動する。さらに、モータ42を稼働させて、
図5(B)に示されるように、収納位置の爪部34を突出位置に移動させる。具体的には、上方から見て爪部34と端板32bとの間に障害物Bが配置されるように、爪部34を突出位置へ移動させる。
【0058】
さらに、モータ42を稼働させて、
図6(A)に示されるように、突出位置の爪部34を収納位置へ移動させる。これにより、爪部34と端板32bとの間の障害物Bが、本体部20の内部へ入る。換言すれば、進行方向の障害物Bが、移動体10に捕獲される。
【0059】
具体的には、爪部34と障害物Bを接触させ、爪部34の振動を障害物Bに伝達する。障害物Bが振動することで、振動しない場合と比して、障害物Bとこの障害物Bが接触する他の障害物Bとの摩擦抵抗が小さくなる。換言すれば、障害物Bが振動することで、振動しない場合と比して、障害物Bを移動させやすくなる。そして、突出位置の爪部34が収納位置へ移動することで、障害物Bが、爪部34の引掛け部34bに引っ掛かりながら移動し、移動体10に捕獲される。
【0060】
障害物Bが移動体10に捕獲された状態で、一対のモータ62を稼働させて、車輪50aを逆方向へ回転させ、車輪50bを正方向へ回転させる。これにより、
図6(B)に示されるように、移動体10は、上方から見て円状の本体部20の中心を軸として反時計方向へ180度回転する。換言すれば、移動体10は、上方から見て円状の本体部20の中心を軸として反時計方向へ半回転する。
【0061】
この状態で、モータ42を稼働させて、
図7(A)に示されるように、収納位置の爪部34を突出位置へ移動させる。これにより、障害物Bが、端板32bにより本体部20から押し出される。換言すれば、障害物Bが、後退方向へ排出される。
【0062】
障害物Bを排出すると、モータ42を稼働させて、
図7(B)に示されるように、突出位置の爪部34を収納位置へ移動させる。
【0063】
さらに、一対のモータ62を稼働させて、車輪50aを正方向へ回転させ、車輪50bを逆方向へ回転させる。これにより、
図8(A)に示されるように、移動体10は、上方から見て円状の本体部20の中心を軸として時計方向へ回転することで、進行方向に散乱している他の障害物Bと爪部34とが対向する。または、車輪50aを逆方向へ回転させ、車輪50bを正方向へ回転させる。これにより、移動体10は、上方から見て円状の本体部20の中心を軸として反時計方向へ回転することで、進行方向に散乱している他の障害物Bと爪部34とが対向する。
【0064】
そして、進行方向に散乱した障害物Bを捕獲して後退方向に排出する前述の工程を繰り返し、
図8(B)に示されるように、進行方向の障害物Bを取り去りながら移動体10が進行方向へ移動する。
【0065】
(まとめ)
以上説明したように、駆動部40によって移動する爪部34が進行方向の障害物Bを捕獲し、障害物Bを捕獲した状態で、本体部20が本体部の中心を軸として周方向に半回転する。ここで、本体部20の外形が、平面視で円状とされていることで、容易に本体部20が回転する。
【0066】
そして、本体部20が半回転した状態で、駆動部40によって移動する端板32bが障害物Bを後退方向に排出する。これを繰り返すことで、移動体10は、進行方向の障害物Bを取り去り、進行方向へ進行する。このように、移動体10が瓦礫等の障害物Bを取り去りながら移動することができる。
【0067】
また、爪部34の先端の引掛け部34bは、棒部34aに対して爪部34の移動方向に対して交差する方向に広がっている。この引掛け部34bで障害物Bを引っ掛けて移動させて、移動体10が障害物Bを捕獲する。このように、爪部34が引掛け部34bを有することで、引掛け部34bが形成されない場合と比して、障害物Bを容易に移動させることができる。
【0068】
また、突出位置に移動した爪部34と障害物Bを接触させることで、爪部34の振動が障害物Bに伝達されて障害物Bが振動する。これにより、爪部が振動しない場合と比して、障害物Bを容易に移動させることができる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、本開示の第2実施形態に係る移動体10の一例を
図9~
図14に従って説明する。なお、第2実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0070】
図9(A)に示されるように、移動体10が進行方向に複数並んでいる。本実施形態では、一例として3個並んでいる。以下説明の便宜上、移動体10については、進行方向から後退方向に向けて、移動体10a、移動体10b、移動体10cと称する。なお、移動体10a、10b、10cを区別しない場合は、末尾のアルファベットを省略する。
【0071】
そして、
図9(A)に示されるように、移動体10a、10b、10cの爪部34は進行方向を向いており、爪部34は、収納位置に移動している。さらに、移動体10aの進行方向には、いびつな障害物Bが複数散乱している。なお、各移動体10の爪部34は、振動部70によって振動している。
【0072】
この状態では、
図9(B)に示されるように、上方から見て移動体10aの爪部34と端板32bとの間に障害物Bが配置されるように、移動体10aの駆動部40が、移動体10aの爪部34を突出位置へ移動させる。さらに、
図10(A)に示されるように、移動体10aの駆動部40が、移動体10aの爪部34を収納位置へ移動させる。これにより、移動体10aが障害物Bを捕獲する。
【0073】
また、移動体10aのモータ62を稼働させ、車輪50a、50bが回転させることで、移動体10aを時計回り、または反時計回りに半回転させて、
図10(B)に示されるように、移動体10aの底板22の凹部22aと、移動体10bの底板22の凹部22aとを対向させる。さらに、
図11(A)に示されるように、移動体10aの駆動部40が、移動体10aの爪部34を突出位置に移動させ、障害物Bを移動体10bの凹部22aへ排出する。これにより、移動体10bは、障害物Bを捕獲する。
【0074】
また、
図11(B)に示されるように、移動体10aの駆動部40が、移動体10aの爪部34を収納位置へ移動させる。さらに、
図12(A)に示されるように、移動体10aのモータ62を稼働させ、車輪50a、50bを回転させることで、移動体10aを時計回り、または反時計回りに半回転させる。また、移動体10bのモータ62を稼働させ、車輪50a、50bを回転させることで、移動体10bを反時計回り、または反時計回りに半回転させる。これより、移動体10bの底板22の凹部22aと、移動体10cの底板22の凹部22aとを対向させる。
【0075】
さらに、
図12(B)に示されるように、移動体10bの駆動部40が、移動体10bの爪部34を突出位置に移動させ、障害物Bを移動体10cの凹部22aへ排出する。これにより、移動体10cは、障害物Bを捕獲する。
【0076】
また、
図13(A)に示されるように、移動体10bの駆動部40が、移動体10bの爪部34を収納位置へ移動させる。さらに、
図13(B)に示されるように、移動体10bのモータ62を稼働させ、車輪50a、50bを回転させることで、移動体10bを時計回り、または反時計回りに半回転させる。また、移動体10cのモータ62を稼働させ、車輪50a、50bを回転させることで、移動体10cを反時計回り、または反時計回りに半回転させる。
【0077】
さらに、
図14(A)に示されるように、移動体10cの駆動部40が、移動体10cの爪部34を突出位置に移動させ、障害物Bを後退方向へ排出する。また、
図14(B)に示されるように、移動体10cの駆動部40が、移動体10cの爪部34を収納位置へ移動させる。
【0078】
このようにして、移動体10を複数設けることで、移動体10が1個の場合と比して、障害物Bを長距離運搬することができる。
【0079】
なお、本開示を特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示は係る実施形態に限定されるものではなく、本開示は本開示の範囲にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、図示せぬリード線によって接続されたコントローラを用いて駆動源としてのモータの稼働非稼働を制御したが、無線によってモータの稼働非稼働を制御してもよい。この場合には、モータに電力を供給する電池等を移動体10に搭載する必要がある。
【0080】
また、上記実施形態では、一対の車輪50を用いて移動体10を進行、後退、及び回転させたが、無限軌道等を用いて移動体10を移動させてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、爪部34の振動については、少なくとも障害物Bを捕獲するときに爪部34が振動していればよい。
【符号の説明】
【0082】
10 移動体
20 本体部
22a 凹部
26 作動部
34 爪部
34b 引掛け部
38 捕獲排出部
40 駆動部(他の作動部の一例)
70 振動部
B 障害物