(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040821
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0251 20230101AFI20240318BHJP
【FI】
G06Q30/02 398
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145423
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000191076
【氏名又は名称】日鉄ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117857
【弁理士】
【氏名又は名称】南林 薫
(72)【発明者】
【氏名】北里 翔平
(72)【発明者】
【氏名】於 力
(72)【発明者】
【氏名】豊倉 諭
(72)【発明者】
【氏名】道前 翔矢
(72)【発明者】
【氏名】石井 智彬
(72)【発明者】
【氏名】藤野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】簡 逸民
(72)【発明者】
【氏名】伊達 雄太
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 義史
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB08
(57)【要約】
【課題】ユーザの経済活動に係る行動の特性により即した誘引先の候補を抽出可能とする。
【解決手段】ユーザの入金及び出金のうちの少なくともいずれかに係る一連の履歴データそれぞれを、当該ユーザの経済活動に係る複数の行動のうちのいずれかに関連付ける関連付け手段と、前記複数の行動それぞれの時系列に沿った変化に基づく前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する抽出手段と、抽出された前記誘引先の候補を示す情報を所定の出力先に出力する出力手段と、を備える、情報処理装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの入金及び出金のうちの少なくともいずれかに係る一連の履歴データそれぞれを、当該ユーザの経済活動に係る複数の行動のうちのいずれかに関連付ける関連付け手段と、
前記複数の行動それぞれの時系列に沿った変化に基づく前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する抽出手段と、
抽出された前記誘引先の候補を示す情報を所定の出力先に出力する出力手段と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記関連付け手段は、入金に係る第1の履歴データと、所定の用途に対応する出金に係る第2の履歴データと、当該用途以外の他の用途に対応する出金に係る第3の履歴データと、を互いに異なる行動に関連付ける、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記抽出手段は、前記所定の用途から分類されるより詳細な用途を加味して、前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記所定の用途は、金融商品への投資及び金融教育コンテンツの利用のうち少なくともいずれかの用途を含み、
前記抽出手段は、前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補として、金融商品及び金融教育コンテンツのうち少なくともいずれかの誘引先の候補を抽出する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記抽出手段は、前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を、前記ユーザと前記誘引先の候補との関係に係る条件を加味して抽出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記抽出手段は、前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補として、前記ユーザと前記誘引先の候補との関係に係る条件に応じて、当該ユーザを誘引することが望ましい候補、当該ユーザを誘引することが望ましくない候補、及び当該ユーザの誘引を制限すべき候補のうち少なくともいずれかの候補を抽出する、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記抽出手段は、前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を、対象となるユーザの特性を加味して抽出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記抽出手段は、前記ユーザの年齢に応じて、抽出対象とする前記誘引先の候補を制限する、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記抽出手段は、
前記複数の行動それぞれの時系列に沿った変化を示すデータに対して、正解のラベルとして当該複数の行動の主体となるユーザが利用した前記誘引先の候補を示す情報を関連付けた教師データを利用した教師あり学習に基づき構築された学習済モデルに対して、
前記一連の履歴データそれぞれが関連付けられた複数の行動それぞれの時系列に沿った変化を示すデータを入力することで、前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記抽出手段は、
前記誘引先の候補との関係について所定の特性を示すユーザの前記複数の行動それぞれの時系列に沿った変化を示すデータに対して、当該ユーザが利用した前記誘引先の候補を示す情報を正解のラベルとして関連付けた教師データを利用して教師あり機械学習に基づき構築された、前記所定の特性に対応する学習済モデルに対して、
前記一連の履歴データそれぞれが関連付けられた複数の行動それぞれの時系列に沿った変化を示すデータを入力することで、対象となるユーザとの関係について前記所定の特性を加味した、当該ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する、
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
ユーザの入金及び出金のうちの少なくともいずれかに係る一連の履歴データそれぞれを、当該ユーザの経済活動に係る複数の行動のうちのいずれかに関連付ける関連付けステップと、
前記複数の行動それぞれの時系列に沿った変化に基づく前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する抽出ステップと、
抽出された前記誘引先の候補を示す情報を所定の出力先に出力する出力ステップと、
を含む、情報処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
ユーザの入金及び出金のうちの少なくともいずれかに係る一連の履歴データそれぞれを、当該ユーザの経済活動に係る複数の行動のうちのいずれかに関連付ける関連付けステップと、
前記複数の行動それぞれの時系列に沿った変化に基づく前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する抽出ステップと、
抽出された前記誘引先の候補を示す情報を所定の出力先に出力する出力ステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象となるユーザが商品を購入したりサービスを利用したりするように誘導するための技術が各種検討されている。このような技術の一例として、対象となるユーザの商品購入履歴に基づいて、当該ユーザの趣味や嗜好に合致しそうな商品を推薦し、当該ユーザに購買を促すような仕組みが提案されている。また、他の一例として、対象となるユーザに対して同じ商品を購入した他のユーザが、他にどのような商品を購入しているかを紹介することで、対象となるユーザに購買を促すような仕組みが提案されている。特許文献1には、ユーザによる商品の購買履歴情報とネットサーフィンの履歴とに基づいて、当該ユーザの嗜好にあったジャンルの商品だけを抽出して推薦する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、商品の購入履歴やサービスの利用状況から抽出される誘引先の候補は、ユーザの好みの傾向には即してはいるものの、投資や貯蓄等といった経済活動に係る行動の特性に必ずしも即しているとは限らない場合がある。このような背景から、ユーザの経済活動に係る行動の特性により即した誘引先の候補を抽出可能とする仕組みの実現が期待されている。
【0005】
本発明は上記の問題を鑑み、ユーザの経済活動に係る行動の特性により即した誘引先の候補を抽出可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る情報処理装置は、ユーザの入金及び出金のうちの少なくともいずれかに係る一連の履歴データそれぞれを、当該ユーザの経済活動に係る複数の行動のうちのいずれかに関連付ける関連付け手段と、前記複数の行動それぞれの時系列に沿った変化に基づく前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する抽出手段と、抽出された前記誘引先の候補を示す情報を所定の出力先に出力する出力手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザの経済活動に係る行動の特性により即した誘引先の候補を抽出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】情報処理システムのシステム構成の一例を示した図である。
【
図2】情報処理装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
【
図3】情報処理システムの機能の概要について説明するための図である。
【
図4】トランザクションデータのデータベースの構造の一例を示した図である。
【
図5】トランザクションデータのデータベースの構造の一例を示した図である。
【
図6】トランザクションデータのデータベースの構造の一例を示した図である。
【
図7】ユーザの行動特性の判定結果の一例を示した図である。
【
図8】投資行動のデータの管理方法の一例について説明するための図である。
【
図9】情報処理システムの機能構成の一例を示した機能ブロック図である。
【
図11】ユーザの行動特性と誘引先の候補との関係の一例を示した図である。
【
図12】ユーザの行動特性に応じて誘引先の候補の一例を示した図である。
【
図13】情報処理システムの処理の一例を示したフローチャートである。
【
図14】ユーザの行動特性と誘引先の候補との関係の一例を示した図である。
【
図15】ユーザの行動特性と誘引先の候補との関係の一例を示した図である。
【
図16】ユーザの行動特性と誘引先の候補との関係の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0010】
<システム構成>
図1を参照して、本実施形態に係る情報処理システムのシステム構成の一例について説明する。本実施形態に係る情報処理システム1は、ユーザからの各種指示や他の金融機関からの各種指示等のような種々の指示に応じた手続きの履歴を利用して、対象となるユーザの行動の特性を判定し、当該行動の特性により即した商品やサービス等のような誘引先の候補を出力する。
具体的には、情報処理システム1は、金融機関の利用に伴う入金や出金の履歴、電子マネー等を利用したキャッシュレス決済の履歴、商品の購入やサービスの利用に伴い付与されるポイント履歴等を利用して、対象となるユーザの経済活動に係る行動の特性を判定(または、推定)する。そのうえで、情報処理システム1は、対象となるユーザの行動の特性により即した商品やサービス等のような誘引先の候補(例えば、当該ユーザに推薦する商品やサービス等の候補)を抽出して出力する。
なお、本実施形態では、特にユーザの経済活動に係る行動特性を判定することで、当該行動特性により即した金融商品や金融教育コンテンツを誘引先の候補として抽出及び出力する場合に着目して、情報処理システム1の構成や処理の説明を行うものとする。
【0011】
本実施形態に係る情報処理システム1は、情報処理装置100と、1以上の端末装置200とを含む。
図1に示す例では、端末装置200として、端末装置200a及び200bが設けられている。情報処理装置100と、端末装置200とは、ネットワークN1を介して各種情報やデータを相互に送受信可能に接続されている。
【0012】
情報処理システム1を構成する各装置間を接続するネットワークN1の種別は特に限定されない。具体的な一例として、ネットワークN1は、LAN(Local Area Network)、インターネット、専用線、または、WAN(Wide Area Network)等により構成されていてもよい。また、ネットワークN1は、有線のネットワークにより構成されていてもよいし、無線のネットワークにより構成されていてもよい。また、ネットワークN1は、複数のネットワークを含んでもよく、一部のネットワークとして、他のネットワークとは異なる種別のネットワークが含まれてもよい。また、各装置間の通信が論理的に確立されていればよく、ネットワークN1の物理的な構成は特に限定されない。具体的な一例として、各装置間の通信が他の通信装置等により中継されてもよい。加えて、情報処理システム1を構成する一連の装置が、必ずしも共通のネットワークに接続されていなくてもよい。すなわち、情報やデータの送受信が行われる装置間の通信を確立することが可能であれば、一部の装置と他の装置とのそれぞれが直接接続されるネットワークが異なっていてもよい。
【0013】
情報処理装置100は、ユーザの指示に応じた各種処理や各種手続きの履歴情報に基づき当該ユーザの行動特性を判定し、当該ユーザの行動特性により即した誘引先の候補の抽出及び出力を行う。なお、誘引先の候補の抽出結果に応じた情報の出力先は特に限定はされない。具体的な一例として、情報処理装置100は、誘引先の候補の抽出結果に応じた情報を、ネットワークN1を介して端末装置200に出力することで、当該端末装置200を介して当該端末装置200の利用者に当該情報を提示してもよい。また、他の一例として、情報処理装置100は、誘引先の候補の抽出結果に応じた情報を、各種解析を行う他のサーバ装置等に出力してもよいし、所定の記憶領域に記憶させてもよい。なお、ユーザの行動特性の判定に係る仕組みや、当該ユーザの行動特性により即した誘引先の候補の抽出及び出力に係る仕組みについては、詳細を別途後述する。
【0014】
端末装置200は、情報処理装置100が提供する機能の利用に係る入力を受け付けるための入力インタフェースの役割や、当該ユーザへの各種情報の提示に係る出力インタフェースの役割を担う。
【0015】
なお、
図1に示す構成はあくまで一例であり、別途後述する情報処理システム1の各構成要素の機能を実現することが可能であれば、必ずしも当該情報処理システム1のシステム構成は限定されない。具体的な一例として、情報処理装置100及び端末装置200が一体的に構成された所謂スタンドアロン環境として情報処理システム1が実現されてもよい。また、他の一例として、情報処理装置100に相当する構成要素が、複数の装置が協働することで実現されてもよいし、所謂ネットワークサービスとして実現されてもよい。
【0016】
<ハードウェア構成>
図2を参照して、本実施形態に係る情報処理システム1における情報処理装置100や端末装置200として適用可能な情報処理装置900のハードウェア構成の一例について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る情報処理装置900は、CPU(Central Processing Unit)910と、ROM(Read Only Memory)920と、RAM(Random Access Memory)930とを含む。また、情報処理装置900は、補助記憶装置940と、ネットワークI/F970とを含む。また、情報処理装置900は、出力装置950と、入力装置960とのうち少なくともいずれかを含んでもよい。CPU910と、ROM920と、RAM930と、補助記憶装置940と、出力装置950と、入力装置960と、ネットワークI/F970とは、バス980を介して相互に接続されている。
【0017】
CPU910は、情報処理装置900の各種動作を制御する中央演算装置である。例えば、CPU910は、情報処理装置900全体の動作を制御してもよい。ROM920は、CPU910で実行可能な制御プログラムやブートプログラムなどを記憶する。RAM930は、CPU910の主記憶メモリであり、ワークエリア又は各種プログラムを展開するための一時記憶領域として用いられる。
【0018】
補助記憶装置940は、各種データや各種プログラムを記憶する。補助記憶装置940は、HDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Drive)に代表される不揮発性メモリ等のような、各種データを一時的または持続的に記憶可能な記憶デバイスにより実現される。
【0019】
出力装置950は、各種情報を出力する装置であり、ユーザに対する各種情報の提示に利用される。例えば、出力装置950は、ディスプレイ等の表示デバイスにより実現される。この場合には、出力装置950は、各種表示情報を表示させることで、ユーザに対して情報を提示する。また、他の一例として、出力装置950は、音声や電子音等の音を出力する音響出力デバイスにより実現されてもよい。この場合には、出力装置950は、音声や電信等の音を出力することで、ユーザに対して情報を提示する。また、出力装置950として適用されるデバイスは、ユーザに対して情報を提示するために利用する媒体に応じて適宜変更されてもよい。
【0020】
入力装置960は、ユーザからの各種指示の受け付けに利用される。本実施形態では、入力装置960は、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力デバイスを含む。また、他の一例として、入力装置960は、マイクロフォン等の集音デバイスを含み、ユーザが発話した音声を集音してもよい。この場合には、集音された音声に対して音響解析や自然言語処理等の各種解析処理が施されることで、この音声が示す内容がユーザからの指示として認識される。また、入力装置960として適用されるデバイスは、ユーザからの指示を認識する方法に応じて適宜変更されてもよい。また、入力装置960として複数種類のデバイスが適用されてもよい。
【0021】
ネットワークI/F970は、外部の装置とのネットワークを介した通信に利用される。なお、ネットワークI/F970として適用されるデバイスは、通信経路の種別や適用される通信方式に応じて適宜変更されてもよい。
【0022】
CPU910が、ROM220又は補助記憶装置940に記憶されたプログラムをRAM930に展開し、このプログラムを実行することで、
図9に示す情報処理装置100の機能構成や、
図13を参照して説明する情報処理装置100の処理等が実現される。
【0023】
<技術思想>
図3~
図8を参照して、本実施形態に係る情報処理システム1の機能の基本的な技術思想について概要を以下に説明する。まず、
図3を参照して、情報処理システム1の機能の概要について説明する。
本実施形態に係る情報処理システム1は、金融系データベースにて管理されている入金及び出金のうちの少なくともいずれかに係るトランザクションデータを参照し、各トランザクションデータをユーザの経済活動に係る複数の行動のうちのいずれかに関連付ける。
【0024】
金融系データベースでは、例えば、預金履歴、金融商品の購入及び運用履歴、キャッシュレス決済履歴、及び共通ポイント履歴等として、入金や出金の処理に伴い発生するトランザクションの履歴データが管理されている。なお、以降では、入金の処理に伴い発生するトランザクションの履歴データを「入金に係る履歴データ」とも称し、出金の処理に伴い発生するトランザクションの履歴データを「出金に係る履歴データ」とも称する。
【0025】
預金履歴として管理されるトランザクションの履歴データには、対象となる口座の預金残高や対象となる口座への入金に係る履歴データや当該口座からの出金に係る履歴データが含まれる。また、本実施形態に係る情報処理システム1においては、口座からの出金に係る履歴データについては、投資を目的とした出金に係る履歴データと、投資とは異なる他の用途に対応する出金に係る履歴データとが区別される。
例えば、
図4は、預金履歴として管理されるトランザクションデータのデータベースの構造の一例を示した図である。
図4に示すデータベースでは、対象となる口座への入金や出金に伴い変動する預金残高を管理するテーブルに対して、当該入金や当該出金に係る取引の履歴(例えば、金額や入出金の日時等)を管理するテーブルが紐付けられている。また、入金や出金に係る各取引は、当該取引の用途に応じて分類分けがなされている。これにより、例えば、出金に係る取引の履歴が、所定の用途に対応する出金(例えば、投資目的の出金)の履歴と、当該用途以外の他の用途に対応する出金(例えば、投資目的以外の出金)の履歴とのいずれに該当するかを識別することが可能となる。
なお、投資を目的とした出金に係る履歴データが「所定の用途に対応する出金に係る第2の履歴データ」の一例に相当し、投資とは異なる他の用途に対応する出金に係る履歴データが「所定の用途以外の他の用途に対応する出金に係る第3の履歴データ」の一例に相当する。また、入金に係る履歴データが、「第1の履歴データ」の一例に相当する。
【0026】
金融商品の購入及び運用履歴として管理されるトランザクションの履歴データには、金融商品の購入や運用を目的とした出金に係る履歴データが含まれる。この金融商品の購入や運用を目的とした出金に係る履歴データは、投資を目的とした出金に係る履歴データ(第2の履歴データ)に区分される。
例えば、
図5は、金融商品の購入及び運用履歴として管理されるトランザクションデータのデータベースの構造の一例を示した図である。
図5に示すデータベースでは、運用の対象となる金融商品を示す情報、当該運用の種別(例えば、注目、保有、売却、購入、予約等)、運用に適用された金額、及び売買日時等の情報が、金融商品の購入及び運用履歴として管理されている。
【0027】
キャッシュレス決済履歴として管理されるトランザクションの履歴データには、キャッシュレス決済の利用に伴う出金に係る履歴データが含まれる。このキャッシュレス決済の利用に伴う出金に係る履歴データは、投資とは異なる他の用途に対応する出金に係る履歴データ(第3の履歴データ)に区分される。
また、共通ポイント履歴として管理されるトランザクションの履歴データには、複数の企業が加盟して利用できるポイントプログラム(ポイントサービス)にて適用される所謂共通ポイントの利用に伴う履歴データが含まれる。この、共通ポイントの利用に伴う履歴データは、投資とは異なる他の用途に対応する出金に係る履歴データ(第3の履歴データ)に区分される。
例えば、
図6は、キャッシュレス決済履歴や共通ポイント履歴として管理されるトランザクションデータのデータベースの構造の一例を示した図である。
図6に示すデータベースでは、残高を示す情報、ポイントの種別、入出金日時等の情報が、利用履歴として管理されている。
【0028】
情報処理システム1は、
図3に示すように、上述した金融データベースにて管理されている入金や出金に係る各履歴データを、ユーザの経済活動に係る行動である、消費行動、貯蓄行動、及び投資行動のいずれかに関連付ける。
具体的には、情報処理システム1は、入金に係る履歴データを、「貯蓄行動」に関連付ける。すなわち、預金履歴として管理されている入金に係る履歴データについては、貯蓄行動に関連付けられることとなる。
また、情報処理システム1は、出金に係る履歴データのうち、投資を目的とした出金に係る履歴データを「投資行動」に関連付ける。すなわち、預金履歴として管理されている投資の出金に係る履歴データや、金融商品の購入及び運用履歴として管理されている金融商品の購入や運用を目的とした出金に係る履歴データについては、投資行動に関連付けられることとなる。
また、情報処理システム1は、出金に係る履歴データのうち、投資とは異なる他の用途に対応する出金に係る履歴データを「消費行動」に関連付ける。すなわち、預金履歴として管理されている投資とは異なる他の用途に対応する出金に係る履歴データについては、消費行動に関連付けられることとなる。
また、キャッシュレス決済履歴として管理されている出金に係る履歴データや、共通ポイント履歴として管理されている出金に係る履歴データについても、投資目的か否かに応じて投資行動及び消費行動のいずれかに関連付けられることとなる。具体的な一例として、共通ポイントが投資性のある商品に振り替えられた場合や、金融商品の購入への自動割り当てに利用された場合には、対象となる履歴データは投資行動に関連付けられる。
【0029】
情報処理システム1は、入金や出金に係る履歴データが関連付けられた各行動(貯蓄行動、投資行動、及び消費行動)の時系列に沿った変化に基づき、対象となるユーザの行動特性を判定する。
例えば、
図7は、ユーザの経済活動に係る複数の行動の時系列に沿った変化に基づく、行動特性の判定結果の一例を示した図である。
図7に示す例では、(a)~(d)として4つの事例を示している。また、(a)~(d)として示す各事例において、左側の表は、対象となる期間(1月~6月までの期間)における月ごとの消費行動、投資行動、及び貯蓄行動の度合いを数値として示している。また、中央の表は、消費行動、投資行動、及び貯蓄行動それぞれの時系列に沿った変化に基づく、ユーザの行動特性の分析結果の一例を示しており、この分析結果を月ごとにプロットした結果が右側にグラフとして示されている。
具体的には、データAは、貯蓄行動の積み上げの合計値から消費行動の積み上げの合計値を差し引いたうえで、さらに投資行動の積み上げの合計値を差し引いたデータである。また、データBは、月ごとの投資行動の積み上げの合計値を示したデータである。また、データCは、月ごとの消費行動の合計値を示したデータである。
【0030】
例えば、(a)及び(b)として例示したサンプルは、データA及びデータBがともに0付近で推移している。このようなケースでは、貯蓄と消費とが拮抗しており、かつ投資も行われていないことから、対象となるユーザについては、生活に余裕がないことが推測され得る。
また、(c)として例示したサンプルは、データBが0付近で推移しているものの、データAについては1次曲線的に上昇している。このようなケースでは、貯蓄が消費を上回っており、かつ投資が行われていないことから、対象となるユーザについては、普通預金等のような投資性のないものにより蓄財を行っていることが推測され得る。
また、(d)として例示したサンプルは、データA及びデータBがともに1次曲線的に上昇している。このようなケースでは、貯蓄が消費を上回っており、かつ投資も行われていることがわかる。また、貯蓄が投資を上回っていることから、対象となるユーザについては、投資を行ってなお生活に余裕があることが推測され得る。
【0031】
また、投資行動のデータについては、どのような種別の金融商品に対してどれだけ投入が行われたかを区別できる場合がある。具体的な一例として、金融商品の購入や運用に係る履歴データとして、運用の対象となる金融商品の区分が管理されている場合には、対象となる投資行動が、どのような種別の金融商品にどれだけ投入が行われたかを区別することが可能となる。
例えば、
図8は、投資行動のデータを、運用対象となる金融商品の種別ごとに区別して管理する場合の一例を示した図である。
図8に示す例では、投資行動のデータが、運用対象となる金融商品の種別である、「円建て債券」、「外貨建て債券」、「国内株式」、「海外株式」、「投資信託」、「金」、「FX」、「REIT」、及び「その他」に分けて管理されている。また、
図8に示す例では、運用対象となる金融商品の種別を特定できなかった投資行動のデータについては、「不明」に分類されている。
すなわち、
図8に示す例では、投資という用途に対応する出金に係る履歴データに応じた投資行動のデータが、当該用途から分類されるより詳細な用途(例えば、投資先となる金融商品の種別ごとの用途)ごとに区別して管理されている。
なお、
図8に示す例では、主に金融商品に着目して説明を行っているが、金融教育コンテンツ等についても、当該コンテンツの種別や内容等に応じて区別して管理することが可能である。
【0032】
そして、情報処理システム1は、
図3に示すように、対象となるユーザの行動特性の判定結果に応じて、当該ユーザの誘引先の候補(例えば、金融商品や金融教育コンテンツ等)を抽出したうえで、当該誘引先の候補を示す情報を所定の出力先に出力する。
【0033】
なお、行動特性に応じて誘引先の候補を抽出する条件(換言すると、行動特性と誘引先の候補との対応関係)については、各ユーザによる各誘引先の候補の利用に係る履歴と、当該ユーザの行動特性とに応じて構築される。
具体的な一例として、過去の一定期間において金融活動(金融商品の購入及び運用や、金融教育コンテンツの利用等)を行った経験のある複数のユーザをサンプルとして、利用経験のある誘引先の候補の評価を行ってもらう。そのうえで、例えば、評価対象となる誘引先の候補と、当該評価を行ったサンプルの行動特性を示すデータとを関連付けて管理する。これにより、例えば、良い評価を受けた誘引先の候補については、当該評価の主体となるサンプルと同様の行動特性を示す他のユーザには、同様に良い評価を受ける可能性が高くなるため、当該他のユーザに対してより好適な誘引先の候補となり得る。すなわち、対象となるユーザの行動特性に応じて、当該ユーザにより好適な誘引先の候補を抽出可能とするためには、評価対象となる誘引先の候補と、当該誘引先の候補に対して良い評価を行ったサンプルの行動特性を示すデータとを関連付けて管理すればよい。
【0034】
また、行動特性に応じた誘引先の候補の抽出に、所謂機械学習に基づき構築された学習済モデルが利用されてもよい。この場合には、例えば、サンプルの行動特性を示すデータに対して、当該サンプルが評価対象とした誘引先の候補(例えば、金融商品や金融教育コンテンツ等)を示す情報をラベル(正解のラベル)として付与した教師データを利用して、学習済モデルの構築を行えばよい。これにより、当該学習済モデルに対して、対象となるユーザの行動特性を示すデータ(消費行動、投資行動、及び貯蓄行動の時系列に沿った変化を示すデータ)を入力することで、当該行動特性により即した誘引先の候補を示す情報を出力として得ることが可能となる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理システムは、入金及び出金のうち少なくともいずれかの履歴データを解析して対象となるユーザの行動特性を判定することで、当該行動特性により即した誘引先を抽出する。これにより、例えば、対象となるユーザに対してより好適な商品やサービスの候補(すなわち、誘引先の候補)を提示することが可能となる。そこで、以降では、本実施形態に係る情報処理システムの構成及び処理についてより詳しく説明する。
【0036】
<機能構成>
図9を参照して、本実施形態に係る情報処理システム1の機能構成の一例ついて、特に情報処理装置100の構成に着目して説明する。なお、以降では、対象となるユーザの行動特性の判定や、当該行動特性に応じた誘引先の候補の抽出に、機械学習に基づき構築された学習済モデルを利用するものとする。
【0037】
情報処理装置100は、解析部101と、教師データ生成部102と、学習処理部103と、記憶部104と、抽出処理部105と、出力制御部106とを含む。
【0038】
解析部101は、入金及び出金の少なくともいずれかに係る履歴データを解析し、当該履歴データを、ユーザの経済活動に係る複数の行動のうちのいずれかに関連付ける。なお、本実施形態では、前述したように、解析部101は、入金や出金に係る各履歴データを、消費行動、貯蓄行動、及び投資行動のいずれかに関連付けるものとする。
【0039】
例えば、
図10は、履歴データの一例を示した図である。
具体的には、
図10(a)は、消費行動に関連付けられる履歴データの一例として、所定の口座からの引き落とし(すなわち、出金)に係る履歴データの一例を示している。
また、
図10(b)は、貯蓄行動に関連付けられる履歴データの一例として、所定の口座への入金や振り込みに係る履歴データの一例を示している。
図10(a)及び
図10(b)に示す例では、入金または出金が行われた日付、手続きの内容(入金及び出金のいずれか)、及び金額等を示す情報が記録されている。これらの情報を利用することで、対象となる履歴データが入金及び出金のいずれに該当するかを特定することが可能となるため、当該履歴データを消費行動及び貯蓄行動のいずれに関連付けるかを特定することが可能となる。また、上記情報を利用することで、入金や出金が行われたタイミング、すなわち貯蓄行動や消費行動が行われたタイミングや、入金や出金の金額等を特定することも可能となる。
【0040】
また、
図10(c)~
図10(f)は、投資行動に関連付けられる履歴データの一例を、金融商品の種別ごとに示している。具体的には、
図10(c)は、円建て債券の購入や運用に係る履歴データの一例を示している。
図10(d)は、外貨建て債券の購入や運用に係る履歴データの一例を示している。
図10(e)は、国内株式の購入や運用に係る履歴データの一例を示している。
図10(f)は、海外株式の購入や運用に係る履歴データの一例を示している。なお、
図10(c)~
図10(f)はあくまで一例であり、対象となる金融商品や金融教育コンテンツ等の種別に応じて、履歴データのデータ構造が適宜変更されてもよい。
図10(c)~
図10(f)に示す例では、投資(購入や運用)が行われた日付、運用された金額、及び投資の対象等を示す情報が記録されている。これらの情報を利用することで、対象となる履歴データを投資行動に関連付けたり、当該投資行動の対象となる金融商品や金融教育コンテンツ等を特定したりすることが可能となる。また、上記情報を利用することで、投資行動が行われたタイミングや、運用された金額等を特定することも可能となる。
【0041】
教師データ生成部102は、対象となるユーザの行動特性に応じた誘引先の抽出に係る学習済モデルの構築に利用される教師データを、解析部101による各サンプルの履歴データの解析結果に基づき生成する。具体的には、教師データ生成部102は、サンプル(ユーザ)ごとに、当該サンプルの経済活動に係る複数の行動それぞれの時系列に沿った変化を示すデータ(換言すると、行動特性を示すデータ)に対して、当該サンプルが評価対象とした誘引先の候補を示す情報をラベルとして関連付けることで、教師データを生成する。以上のようにして、教師データ生成部102は、一連のサンプルそれぞれについて教師データを生成し、当該教師データを学習処理部103に出力する。
【0042】
学習処理部103は、教師データ生成部102から一連のサンプルそれぞれについて生成された教師データを取得し、当該教師データを使用した機械学習に基づきモデルの構築を行う。以上のようにして、対象となるユーザの経済活動に係る複数の行動(すなわち、消費行動、貯蓄行動、及び投資行動)それぞれの時系列に沿った変化を示すデータを入力することで、当該ユーザの行動特性を判定し、当該行動特性の判定結果に応じた誘引先の候補を出力する学習済モデルが構築される。学習済モデルの構築結果に応じたデータ(すなわち、モデルの学習結果に応じたデータ)は、記憶部104に記憶される。記憶部104は、各種データを保持するための記憶領域を模式的に示している。
【0043】
ここで、
図11を参照して、ユーザの行動特性と、抽出対象となる誘引先の候補との関係の学習結果の一例について説明する。なお、
図11に示す例においてデータA、データB、及びデータCとして示した特徴は、
図7を参照して前述したデータA、データB、及びデータCに対応している。具体的には、
図11に示す例では、データA、データB、及びデータCそれぞれの特徴と、これらの組み合わせの特徴とを含む一連の特徴のうちの少なくともいずれかの特徴に応じた行動特性と、当該行動特性を示すユーザ(サンプル)が利用していた誘引先の候補とが関連付けられている。また、当該複数の特徴それぞれに対して、複数の特徴の組み合わせによるユーザの行動特性の判定に際して、他の特徴との関係についてAND条件とするのかOR条件とするのかが設定されていてもよい。
【0044】
具体的な一例として、誘引先の候補である「積み立てNISA(○○証券)」に着目すると、「Aの特徴=10万円以上で推移している」、「Bの特徴=0円で推移している」、または「Cの特徴=収入より小さい」の条件を満たし、かつ「A×Cの特徴=A>Cで推移している」の条件を満たすサンプルが利用していることがわかる。
また、他の一例として、誘引先の候補である「株口座開設(○○証券)」に着目すると、「Cの特徴=収入より小さい」または「投資行動の投入割合=投資信託25%以上」の条件を満たし、かつ「Aの特徴=50万円以上で推移している」及び「A×Cの特徴=A>Cで推移している」の条件を満たすサンプルが利用していることがわかる。
以上のような特性を利用することで、例えば、対象となるユーザの行動特性を示すデータと、各誘引先の候補に関連付けられたサンプルの行動特性を示すデータとのマッチングを行うことで、当該ユーザの行動特性と同様または類似する行動特性を示すサンプルが利用していた誘引先の候補を抽出することが可能となる。
すなわち、構築された学習済モデルに対して、対象となるユーザの行動特性を示すデータ(換言すると、経済活動に係る複数の行動それぞれの時系列に沿った変化を示すデータ)を入力することで、当該学習済モデルに、実質的に同様の行動特性を示すサンプルが利用していた誘引先の候補を出力させることが可能となる。
【0045】
抽出処理部105は、上述した特性を利用することで、対象となるユーザ(例えば、金融商品や金融教育コンテンツ等の誘引先への誘引対象となる利用者)の行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する。具体的には、抽出処理部105は、解析部101から対象となるユーザの履歴データの解析結果に応じた、当該ユーザの経済活動に係る複数の行動(すなわち、消費行動、貯蓄行動、及び投資行動)それぞれの時系列に沿った変化を示すデータを取得する。抽出処理部105は、記憶部104にデータが保持された学習済モデルに対して解析部101から取得したデータを入力することで、当該学習済モデルに対象となるユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を出力させる。以上のようにして、抽出処理部105は、対象となるユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出し、抽出された誘引先の候補を示すデータを出力制御部106に出力する。
【0046】
例えば、
図12は、ユーザの行動特性に応じて抽出された誘引先の候補の一例を示している。
図12に示す例では、誘引先の候補として、金融商品のみに限らず、金融教育コンテンツも抽出対象として含まれている。
一般的には、金融商品の購入に際して、当該商品に対するリスク等を十分に教育することによってより多くのリターンを得たり、損失を少なくしたりする効果が期待できる。また、教育についても、一部のコンテンツにより教育を受ける投資活動に関して、当該投資活動に伴うリスクを回避するための他の教育がセットで行われることで、より効果的な教育を行うことが可能となる。本実施形態に係る情報処理システムに依れば、ユーザの行動特性に応じて、上述した内容を体系立ててセットにした誘引先の候補の一式を当該ユーザに提供することが可能となる。
【0047】
出力制御部106は、抽出処理部105から対象となるユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を示すデータを取得し、当該データを所定の出力先に出力する。具体的な一例として、出力制御部106は、ディスプレイ等のような出力装置に上記データを出力することで、当該出力装置を介して対象となるユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を示す情報をオペレータ(例えば、システムを操作するオペレータ)に通知してもよい。また、他の一例として、出力制御部106は、各種解析を行う情報処理装置(例えば、サーバ等)に上記データを出力してもよい。これにより、当該情報処理装置は、対象となるユーザの行動特性に応じた誘引先の候補の抽出結果を各種解析に利用することが可能となる。
【0048】
なお、上記構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る情報処理システム1の機能構成は、必ずしも
図9に示す例には限定されない。例えば、
図9を参照して説明した情報処理装置100の機能構成が、複数の装置が協働することで実現されてもよい。具体的な一例として、情報処理装置100の一連の構成要素のうちの一部の構成要素の機能が他の装置により実現されてもよい。また、他の一例として、情報処理装置100の一連の構成要素のうち少なくとも一部の構成要素の処理の負荷が複数の装置に分散されてもよい。また、情報処理装置100の一連の構成要素のうち少なくとも一部の構成要素の機能が、クラウドサービスに代表される所謂ネットワークサービスとして実現されてもよい。
以上、
図9を参照して、本実施形態に係る情報処理システム1の機能構成の一例ついて、特に情報処理装置100の構成に着目して説明した。
【0049】
<処理>
図13を参照して、本実施形態に係る情報処理システムの処理の一例について、特に情報処理装置100の処理に着目して、学習済モデルの構築に係る処理と、当該学習済モデルを利用した誘引先の抽出に係る処理と分けて、それぞれ説明する。
【0050】
まず、
図13(A)を参照して、学習済モデルの構築に係る処理の一例について説明する。
S101において、解析部101は、過去の一定期間において金融活動を行った経験のある複数のユーザをサンプルとして、当該サンプルの入金及び出金の少なくともいずれかに係る履歴データを解析する。そして、解析部101は、当該解析の結果に基づき、各履歴データを、ユーザの経済活動に係る複数の行動、すなわち、消費行動、貯蓄行動、及び投資行動のいずれかに関連付ける。
【0051】
S102において、教師データ生成部102は、対象となるユーザの行動特性に応じた誘引先の候補の抽出に係る学習済モデルの構築に利用される教師データを、S101における解析部101による各サンプルの履歴データの解析結果に基づき生成する。具体的には、教師データ生成部102は、サンプルごとに、当該サンプルの経済活動に係る複数の行動それぞれの時系列に沿った変化を示すデータに対して、当該サンプルが評価対象とした誘引先の候補を示す情報をラベルとして関連付けることで、教師データを生成する。
【0052】
S103において、学習処理部103は、S102にて教師データ生成部102により一連のサンプルそれぞれについて生成された教師データを取得し、当該教師データを使用した機械学習に基づきモデルの構築を行う。これにより、対象となるユーザの行動特性を示すデータ(換言すると、ユーザの経済活動に係る複数の行動それぞれの事例に沿った変化を示すデータ)を入力することで、当該行動特性により即した誘引先の候補を出力する学習済モデルが構築される。学習済モデルの構築結果に応じたデータは、記憶部104に記憶される。
【0053】
次いで、
図13(B)を参照して、上記学習済モデルを利用した誘引先の抽出に係る処理の一例について説明する。
S201において、解析部101は、誘引先の候補の抽出対象となるユーザの入金及び出金の少なくともいずれかに係る履歴データを解析する。そして、解析部101は、当該解析の結果に基づき、各履歴データを、ユーザの経済活動に係る複数の行動、すなわち、消費行動、貯蓄行動、及び投資行動のいずれかに関連付ける。これにより、例えば、指定された期間の履歴データを対象とすることで、対象となるユーザの当該期間における消費行動、貯蓄行動、及び投資行動それぞれの時系列に沿った変化を示すデータを生成することが可能となる。
【0054】
S202において、抽出処理部105は、S201における解析部101による対象となるユーザの履歴データの解析結果に応じたデータを、記憶部104にデータが保持された学習済モデルに入力する。これにより、当該学習済モデルにより、対象となるユーザの行動特性の判定が行われ、当該行動特性の判定結果に応じた誘引先の候補の抽出結果を示す情報が当該学習済モデルから出力される。以上のようにして、抽出処理部105は、対象となるユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する。
【0055】
S203において、出力制御部106は、S202において抽出処理部105により抽出された、対象となるユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を示すデータを所定の出力先に出力する。具体的な一例として、出力制御部106は、ディスプレイ等のような出力装置に上記データを出力することで、当該出力装置を介して対象となるユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を示す情報をオペレータに通知してもよい。
【0056】
以上、
図13を参照して、本実施形態に係る情報処理システムの処理の一例について、特に情報処理装置100の処理に着目して、学習済モデルの構築に係る処理と、当該学習済モデルを利用した誘引先の抽出に係る処理と分けて、それぞれ説明した。
【0057】
<変形例>
本実施形態に係る情報処理システムの変形例について以下に説明する。
【0058】
(変形例1)
まず、本実施形態に係る情報処理システムの変形例1について説明する。一部の金融商品のように誘引先の候補の中には、利用に関して年齢制限が設けられているものがある。具体的な一例として、株式の口座開設に年齢制限がないのに対して、仮想通貨の口座開設が18歳から、FXの口座開設が20歳からというように、金融商品の種別ごとに個別に年齢制限が設けられている場合がある。このような状況を鑑み、本変形例では、対象となるユーザの行動特性の判定結果に応じた誘引先の候補の抽出に際して、当該ユーザの特性や属性(例えば、年齢)を加味して抽出対象を制御するための仕組みの一例について説明する。
【0059】
例えば、
図14は、本変形例における、ユーザの行動特性と、抽出対象となる誘引先の候補との関係の学習結果の一例を示した図である。なお、
図14に示す例においてデータA、データB、及びデータCとして示した特徴は、
図11に示す例と同様に、
図7を参照して前述したデータA、データB、及びデータCに対応している。
図14に示す例では、年齢の条件が設けられている点で、
図11に示す例と異なる。本変形例では、抽出処理部105は、対象となるユーザの誘引先の候補の抽出に際して、一連の候補の中に年齢の条件が設定された候補が含まれている場合には、当該年齢の条件と当該ユーザの年齢とを照合することで、当該候補を抽出の対象とするか否かを判定する。これにより、対象となるユーザの年齢が条件を満たさない誘引先の候補については抽出対象から除外するようなフィルタリング処理(すなわち、抽出対象を制限するようなフィルタリング処理)を実現することが可能である。
【0060】
なお、対象となるユーザの年齢に応じて、抽出対象とする誘引先の候補を制御する(例えば、制限する)ことが可能であれば、そのための構成や方法については特に限定はされない。具体的な一例として、対象となるユーザの行動特性に応じた誘引先の候補の抽出については学習済モデルが行い、当該学習済モデルから出力される一連の誘引先の候補に対して、別途年齢の条件に基づくフィルタリング処理が適用されてもよい。また、他の一例として、年齢の条件も加味して誘引先の候補を抽出するような制約が適用されるように学習済モデルを構築することが可能であれば、当該学習済モデルを利用して最終的に出力される誘引先の候補(すなわち、年齢の条件を加味した誘引先の候補)の抽出が行われてもよい。
【0061】
また、上記では主に年齢の条件に応じて抽出対象とする誘引先の候補を制御する場合の一例について説明したが、年齢のみに限らず、ユーザの他の特性や属性を加味して、抽出対象とする誘引先の候補の制御が行われてもよい。具体的な一例として、対象となるユーザの性別や国籍等を加味して、抽出対象とする誘引先の候補の制御(例えば、制限)が行われてもよい。
【0062】
以上、
図14を参照して、本実施形態に係る情報処理システムの変形例1について説明した。
【0063】
(変形例2)
次いで、本実施形態に係る情報処理システムの変形例2について説明する。前述した実施形態では、対象となるユーザの行動特性に応じて、当該ユーザにより好適な誘引先の候補(すなわち、ユーザを誘引することが望ましい誘引先の候補)を抽出する場合の一例について説明した。一方で、誘引先の候補の中には、対象となるユーザを誘引することが望ましくない誘引先の候補や、当該ユーザの誘引を制限すべき誘引先の候補(ひいては、誘引を禁止することが望ましい候補)が含まれているような状況も想定され得る。そこで、本変形例では、対象となるユーザの行動特性に応じて、当該ユーザを誘引することが望ましくない誘引先の候補や、当該ユーザの誘引を制限すべき誘引先の候補を抽出するための仕組みの一例について説明する。
【0064】
まず、対象となるユーザの行動特性に応じて、誘引先の候補の中から、当該ユーザを誘引することが望ましくない誘引先の候補を抽出するための仕組みの一例について説明する。この場合には、まず前述した実施形態と同様に、過去の一定期間において金融活動を行った経験のある複数のユーザをサンプルとして、利用経験のある誘引先の候補の評価を行ってもらう。そのうえで、例えば、評価対象となる誘引先の候補と、当該誘引先の候補に対して悪い評価を行ったサンプルの行動特性を示すデータとを関連付けて管理すればよい。また、誘引先の候補の抽出に学習済モデルを利用する場合には、サンプルの行動特性を示すデータに対して、当該サンプルが悪い評価を行った誘引先の候補を示す情報をラベルとして付与した教師データを利用して、当該学習済モデルの構築を行えばよい。
【0065】
例えば、
図15は、本変形例における、ユーザの行動特性と、抽出対象となる誘引先の候補との関係の学習結果の一例を示した図である。なお、
図15に示す例においてデータA、データB、及びデータCとして示した特徴は、
図11に示す例と同様に、
図7を参照して前述したデータA、データB、及びデータCに対応している。
具体的な一例として、誘引先の候補である「国内株MIX投資信託(×□信託銀行)」に着目すると、「Bの特徴=0円で推移している」または「A×Cの特徴=A<Cで推移している」の条件を満たし、かつ「投資行動の投入割合=投資信託10%未満」の条件を満たすサンプルが利用していることがわかる。すなわち、上記誘引先の候補については、上記と同様の行動特性を示すユーザには、悪い評価を受ける可能性が高くなるため、当該ユーザを誘引することが好ましくない誘引先の候補となり得ることとなる。
【0066】
以上のように、評価対象となる誘引先の候補と、当該誘引先の候補に対して悪い評価を行ったサンプルの行動特性を示すデータとを関連付けて管理することで、対象となるユーザの行動特性を示すデータを入力として、当該ユーザを誘引することが好ましくない誘引先の候補を抽出することが可能となる。
【0067】
次いで、対象となるユーザの行動特性に応じて、誘引先の候補の中から、当該ユーザの誘引を制限すべき誘引先の候補(ひいては、誘引を禁止することが望ましい候補)を抽出するための仕組みの一例について説明する。この場合には、過去の一定期間において信用情報機関(例えば、CIC、JICC、KSSC等)に事故情報が記録された複数のユーザ(所謂ブラックリストに記載された複数のユーザ)をサンプルとして、利用経験のある誘引先の候補の選択を行ってもらう。なお、この際に、一連の誘引先の候補のうち、所定の種別の金融商品(例えば、ローン系の金融商品等)や金融教育コンテンツが選択対象から除外されていてもよい。そのうえで、例えば、選択された誘引先の候補と、当該誘引先の候補を選択対象としたサンプルの行動特性を示すデータとを関連付けて管理すればよい。また、誘引先の候補の抽出に学習済モデルを利用する場合には、サンプルの行動特性を示すデータに対して、当該サンプルが選択対象とした誘引先の候補を示す情報をラベルとして付与した教師データを利用して、当該学習済モデルの構築を行えばよい。
【0068】
例えば、
図16は、本変形例における、ユーザの行動特性と、抽出対象となる誘引先の候補との関係の学習結果の他の一例を示した図である。なお、
図16に示す例においてデータA、データB、及びデータCとして示した特徴は、
図11に示す例と同様に、
図7を参照して前述したデータA、データB、及びデータCに対応している。
具体的な一例として、誘引先の候補である「FX口座仮設(○○証券)」に着目すると、「Aの特徴=10万円以下で推移している」、「Cの特徴=収入より小さい」、「A×Bの特徴=任意の連続する6か月で4か月以上でB<Aとなる月がある」、かつ「投資行動の投入割合=国内株式10%以下」の条件を満たすサンプルが選択していることがわかる。すなわち、上記誘引先の候補については、上記と同様の行動特性を示すユーザが利用することで事故につながる可能性が考えられるため、当該ユーザの誘引を制限すべき誘引先の候補となり得ることとなる。
【0069】
以上のように、評価対象となる誘引先の候補と、事故情報が記録されたサンプルのうちの当該誘引先の候補を選択したサンプルの行動特性を示すデータとを関連付けて管理することで、対象となるユーザの行動特性を示すデータを入力として、当該ユーザの誘引を制限すべき誘引先の候補を抽出することが可能となる。
【0070】
以上説明したように、ユーザと誘引先の候補との関係に係る条件に応じて、誘引先の候補それぞれと、ユーザの行動特性との関係を学習させることで、抽出対象となる誘引先の候補を、抽出結果の利用目的に応じて制御することが可能となる。
以上、
図15及び
図16を参照して、本実施形態に係る情報処理システムの変形例2について説明した。
【0071】
<むすび>
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理システムにおいて、情報処理装置は、ユーザの入金及び出金のうちの少なくともいずれかに係る一連の履歴データそれぞれを、当該ユーザの経済活動に係る複数の行動のうちのいずれかに関連付ける。また、情報処理装置は、上記複数の行動それぞれの時系列に沿った変化に基づく上記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する。そのうえで、情報処理装置は、抽出された誘引先の候補を示す情報を所定の出力先に出力する。
以上のような構成より、対象となるユーザに対して、当該ユーザの行動の特性により即した誘引先(例えば、当該ユーザを誘引することが望ましい候補、当該ユーザを誘引することが望ましくない候補、及び当該ユーザの誘引を制限すべき候補等)を提示することが可能となる。
【0072】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)ユーザの入金及び出金のうちの少なくともいずれかに係る一連の履歴データそれぞれを、当該ユーザの経済活動に係る複数の行動のうちのいずれかに関連付ける関連付け手段と、前記複数の行動それぞれの時系列に沿った変化に基づく前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する抽出手段と、抽出された前記誘引先の候補を示す情報を所定の出力先に出力する出力手段と、を備える、情報処理装置。
(2)前記関連付け手段は、入金に係る第1の履歴データと、所定の用途に対応する出金に係る第2の履歴データと、当該用途以外の他の用途に対応する出金に係る第3の履歴データと、を互いに異なる行動に関連付ける、(1)に記載の情報処理装置。
(3)前記抽出手段は、前記所定の用途から分類されるより詳細な用途を加味して、前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する、(2)に記載の情報処理装置。
(4)前記所定の用途は、金融商品への投資及び金融教育コンテンツの利用のうち少なくともいずれかの用途を含み、前記抽出手段は、前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補として、金融商品及び金融教育コンテンツのうち少なくともいずれかの誘引先の候補を抽出する、(3)に記載の情報処理装置。
(5)前記抽出手段は、前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を、前記ユーザと前記誘引先の候補との関係に係る条件を加味して抽出する、(1)~(4)のいずれか1項に記載の情報処理装置。
(6)前記抽出手段は、前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補として、前記ユーザと前記誘引先の候補との関係に係る条件に応じて、当該ユーザを誘引することが望ましい候補、当該ユーザを誘引することが望ましくない候補、及び当該ユーザの誘引を制限すべき候補のうち少なくともいずれかの候補を抽出する、(5)に記載の情報処理装置。
(7)前記抽出手段は、前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を、対象となるユーザの特性を加味して抽出する、(1)~(6)のいずれか1項に記載の情報処理装置。
(8)前記抽出手段は、前記ユーザの年齢に応じて、抽出対象とする前記誘引先の候補を制限する、(7)に記載の情報処理装置。
(9)前記抽出手段は、前記複数の行動それぞれの時系列に沿った変化を示すデータに対して、正解のラベルとして当該複数の行動の主体となるユーザが利用した前記誘引先の候補を示す情報を関連付けた教師データを利用した教師あり学習に基づき構築された学習済モデルに対して、前記一連の履歴データそれぞれが関連付けられた複数の行動それぞれの時系列に沿った変化を示すデータを入力することで、前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する、(1)~(8)のいずれか1項に記載の情報処理装置。
(10)前記抽出手段は、前記誘引先の候補との関係について所定の特性を示すユーザの前記複数の行動それぞれの時系列に沿った変化を示すデータに対して、当該ユーザが利用した前記誘引先の候補を示す情報を正解のラベルとして関連付けた教師データを利用して教師あり機械学習に基づき構築された、前記所定の特性に対応する学習済モデルに対して、前記一連の履歴データそれぞれが関連付けられた複数の行動それぞれの時系列に沿った変化を示すデータを入力することで、対象となるユーザとの関係について前記所定の特性を加味した、当該ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する、(9)に記載の情報処理装置。
(11)情報処理装置が実行する情報処理方法であって、ユーザの入金及び出金のうちの少なくともいずれかに係る一連の履歴データそれぞれを、当該ユーザの経済活動に係る複数の行動のうちのいずれかに関連付ける関連付けステップと、前記複数の行動それぞれの時系列に沿った変化に基づく前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する抽出ステップと、抽出された前記誘引先の候補を示す情報を所定の出力先に出力する出力ステップと、を含む、情報処理方法。
(12)コンピュータに、ユーザの入金及び出金のうちの少なくともいずれかに係る一連の履歴データそれぞれを、当該ユーザの経済活動に係る複数の行動のうちのいずれかに関連付ける関連付けステップと、前記複数の行動それぞれの時系列に沿った変化に基づく前記ユーザの行動特性に応じた誘引先の候補を抽出する抽出ステップと、抽出された前記誘引先の候補を示す情報を所定の出力先に出力する出力ステップと、を実行させる、プログラム。
【符号の説明】
【0073】
1 情報処理システム
100 情報処理装置
101 解析部
102 教師データ生成部
103 学習処理部
104 記憶部
105 抽出処理部
106 出力制御部
200 端末装置