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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040822
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】多色固形化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20240318BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q1/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145424
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】592042750
【氏名又は名称】株式会社アルビオン
(74)【代理人】
【識別番号】100122541
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 友彰
(72)【発明者】
【氏名】宮本 貴文
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083CC12
4C083DD04
4C083DD21
4C083FF06
(57)【要約】
【課題】製造に用いる化粧料バルクの選択の幅が広く、化粧料バルク硬度が意図せず変質することを防止可能な多色固形化粧料の製造方法を提供する。
【解決手段】粉末化粧料を棒状に成形されてなる棒状成形体の周囲に、棒状成形体とは異なる色の粉末化粧料を付着させて多色棒状成形体を得る棒状成形体取得工程と、互いの中心軸を平行にして配置された2以上の多色棒状成形体が、2以上の割型を合体させて構成された容器内で圧縮されることにより、容器の内部形状に対応した形状でなる多色化粧料バルクを得る圧縮工程と、2以上の割型を分離させて容器から取り出された多色化粧料バルクが、棒状成形体の中心軸と直交する方向に切断される切断工程と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末化粧料を棒状に成形されてなる棒状成形体の周囲に、前記棒状成形体とは異なる色の粉末化粧料を付着させて多色棒状成形体を得る棒状成形体取得工程と、
互いの中心軸を平行にして配置された2以上の前記多色棒状成形体が、2以上の割型を合体させて構成された容器内で圧縮されることにより、前記容器の内部形状に対応した形状でなる多色化粧料バルクを得る圧縮工程と、
2以上の前記割型を分離させて前記容器から取り出された前記多色化粧料バルクが、前記棒状成形体の中心軸と直交する方向に切断される切断工程と、
を有することを特徴とする多色固形化粧料の製造方法。
【請求項2】
前記容器の長手方向の少なくとも一端側は、前記容器の長手方向への移動が規制された側壁で構成され、前記切断工程は、前記多色化粧料バルクが載置面に置かれた状態で切断されることを特徴とする請求項1に記載の多色固形化粧料の製造方法。
【請求項3】
前記容器は、前記容器の長手方向に沿って分割される第1割型と第2割型とを有し、前記圧縮工程は、前記第1割型と前記第2割型とを合体させて閉じることによって、前記第1割型及び前記第2割型に配置された2以上の前記多色棒状成形体が圧縮されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多色固形化粧料の製造方法。
【請求項4】
前記容器は、前記容器の長手方向に沿って開口部を有する第1割型と、前記開口部を閉塞する第2割型とを有し、前記圧縮工程は、前記第1割型の前記開口部から前記第2割型で押圧することによって、前記第1割型に配置された2以上の前記多色棒状成形体が圧縮されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多色固形化粧料の製造方法。
【請求項5】
前記容器は、前記容器の長手方向に沿って分割される第1割型と第2割型とを有し、前記容器の長手方向の一端側は、前記容器の長手方向への移動が規制された側壁で構成され、前記容器の長手方向の他端側は開口部を有し、前記圧縮工程は、前記第1割型と前記第2割型とを合体させた状態において、前記開口部から押圧部材によって押圧されることによって、前記容器内の2以上の前記多色棒状成形体が圧縮されることを特徴とする請求項1に記載の多色固形化粧料の製造方法。
【請求項6】
前記容器は、半球状のキャビティが形成された第1割型及び第2割型とを有し、前記圧縮工程は、前記第1割型と前記第2割型とを合体させて閉じることによって、前記第1割型及び前記第2割型に配置された2以上の前記多色棒状成形体が球体状に圧縮されることを特徴とする請求項1に記載の多色固形化粧料の製造方法。
【請求項7】
粉末化粧料を棒状に成形されてなる棒状成形体を、所望する各色分を得る棒状成形体取工程と、
互いの中心軸を平行にして配置された2以上の前記棒状成形体が、2以上の割型を合体させて構成された容器内で圧縮されることにより、前記容器の内部形状に対応した形状でなる多色化粧料バルクを得る圧縮工程と、
2以上の前記割型を分離させて前記容器から取り出された前記多色化粧料バルクが、前記棒状成形体の中心軸と直交する方向に切断される切断工程と、
を有することを特徴とする多色固形化粧料の製造方法。
【請求項8】
前記切断工程は、前記多色化粧料バルクが載置面に置かれた状態で切断されることを特徴とする請求項7に記載の多色固形化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色固形化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、仕切りのない化粧皿内に複数色の固形化粧料が直接隣接された状態で装填された多色固形化粧料が提供されている。
【0003】
従来、そのような多色固形化粧料の製造方法としては、例えば、単色の棒状化粧料を数色分成形し、これらを組み合わせてピストン式の押出成形機で小径にして多色棒状化粧料を成形し、これを軸に直交する方向に切断して多色板状固形化粧料を得る方法(特許文献1参照)、粉末化粧料を棒状に成形した棒状成型物の表面に粉末化粧料を付着させた多色化粧料バルク(粉末化粧料付き棒状成型物)を、内容物を押出し可能な容器に収容し、棒状成型物の長軸方向に所定量押出して、棒状成型物の長軸に直交する方向に切断して多色固形化粧料を得る方法(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭63-5368号公報
【特許文献2】特開2013-79202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法によると、多色棒状化粧料の成形のためにピストン式の押出成形機が用いられることから、押出成形機によって押し出すことができる程度の柔らかさを有する化粧料バルクを使用する必要があった。同様に、特許文献2に記載の方法によると、内容物を押し出すことができる容器によって多色化粧料バルクが所定量押出されて切断されるため、前記容器によって押し出すことができる程度の柔らかさを有する化粧料バルクを使用せざるを得なかった。その結果、従来の方法によると、使用できる化粧料バルクの選択の幅が限定されるという問題点があった。
【0006】
一方、特許文献2に記載の方法によると、多色化粧料バルクの切断時に内容物を押し出すことができる容器を用いて所定量押出して切断するものであるため、切断時における押出しによって化粧料バルクが意図せず硬く変質してしまうという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、製造に用いる化粧料バルクの選択の幅が広く、化粧料バルク硬度が意図せず変質することを防止可能な多色固形化粧料の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の多色固形化粧料の製造方法は、粉末化粧料を棒状に成形されてなる棒状成形体の周囲に、前記棒状成形体とは異なる色の粉末化粧料を付着させて多色棒状成形体を得る棒状成形体取得工程と、互いの中心軸を平行にして配置された2以上の前記多色棒状成形体が、2以上の割型を合体させて構成された容器内で圧縮されることにより、前記容器の内部形状に対応した形状でなる多色化粧料バルクを得る圧縮工程と、2以上の前記割型を分離させて前記容器から取り出された前記多色化粧料バルクが、前記棒状成形体の中心軸と直交する方向に切断される切断工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の多色固形化粧料の製造方法において、前記容器の長手方向の少なくとも一端側は、前記容器の長手方向への移動が規制された側壁で構成され、前記切断工程は、前記多色化粧料バルクが載置面に置かれた状態で切断されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の多色固形化粧料の製造方法において、前記容器は、前記容器の長手方向に沿って分割される第1割型と第2割型とを有し、前記圧縮工程は、前記第1割型と前記第2割型とを合体させて閉じることによって、前記第1割型及び前記第2割型に配置された2以上の前記多色棒状成形体が圧縮されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の多色固形化粧料の製造方法において、前記容器は、前記容器の長手方向に沿って開口部を有する第1割型と、前記開口部を閉塞する第2割型とを有し、前記圧縮工程は、前記第1割型の前記開口部から前記第2割型で押圧することによって、前記第1割型に配置された2以上の前記多色棒状成形体が圧縮されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の多色固形化粧料の製造方法において、前記容器は、前記容器の長手方向に沿って分割される第1割型と第2割型とを有し、前記容器の長手方向の一端側は、前記容器の長手方向への移動が規制された側壁で構成され、前記容器の長手方向の他端側は開口部を有し、前記圧縮工程は、前記第1割型と前記第2割型とを合体させた状態において、前記開口部から押圧部材によって押圧されることによって、前記容器内の2以上の前記多色棒状成形体が圧縮されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の多色固形化粧料の製造方法において、前記容器は、半球状のキャビティが形成された第1割型及び第2割型とを有し、前記圧縮工程は、前記第1割型と前記第2割型とを合体させて閉じることによって、前記第1割型及び前記第2割型に配置された2以上の前記多色棒状成形体が球体状に圧縮されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の多色固形化粧料の製造方法は、粉末化粧料を棒状に成形されてなる棒状成形体を、所望する各色分を得る棒状成形体取工程と、互いの中心軸を平行にして配置された2以上の前記棒状成形体が、2以上の割型を合体させて構成された容器内で圧縮されることにより、前記容器の内部形状に対応した形状でなる多色化粧料バルクを得る圧縮工程と、2以上の前記割型を分離させて前記容器から取り出された前記多色化粧料バルクが、前記棒状成形体の中心軸と直交する方向に切断される切断工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の多色固形化粧料の製造方法において、前記切断工程は、前記多色化粧料バルクが載置面に置かれた状態で切断されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製造に用いる化粧料バルクの選択の幅が広く、化粧料バルク硬度が意図せず変質することを防止可能な多色固形化粧料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法を示す図であり、(a)は、棒状成形体の斜視図、(b)は、多色棒状成形体の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法に用いる容器を示す図であり、(a)は、割型が分離した状態の容器の斜視図、(b)は、割型が合体した状態の容器の斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法における収容工程を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法における圧縮工程を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法を示す図であり、(a)は、多色化粧料バルクの取り出し工程を示す斜視図、(b)は、多色化粧料バルクの切断工程を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法を示す図であり、(a)は、多色固形化粧料の装填工程を示す斜視図、(b)は、多色固形化粧料のプレス工程を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態の変形例2に係る多色固形化粧料の製造方法に用いる容器の斜視図であり、(a)は、割型が分離した状態の容器の斜視図、(b)は、割型が合体した状態の容器の斜視図である。
図8】本発明の実施形態の変形例3に係る多色固形化粧料の製造方法に用いる容器の斜視図であり、(a)は、割型が分離した状態の容器の斜視図、(b)は、割型が合体した状態の容器の斜視図である。
図9】本発明の実施形態の変形例4に係る多色固形化粧料の製造方法を示す図であり、(a)は、割型が合体した状態の容器の斜視図、(b)は、収容工程及び圧縮工程を示す斜視図、(c)は、多色化粧料バルクの取り出し工程を示す斜視図、(d)は、多色化粧料バルクの切断工程を示す正面図、(e)は、多色固形化粧料の装填工程を示す図、(f)は、多色固形化粧料のプレス工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る多色固形化粧料の製造方法は、粉末化粧料を棒状に成形されてなる棒状成形体の周囲に、棒状成形体とは異なる色の粉末化粧料を付着させて多色棒状成形体を得る棒状成形体取得工程と、互いの中心軸を平行にして配置された2以上の多色棒状成形体が、2以上の割型を合体させて構成された容器内で圧縮されることにより、容器の内部形状に対応した形状でなる多色化粧料バルクを得る圧縮工程と、2以上の割型を分離させて容器から取り出された多色化粧料バルクが、棒状成形体の中心軸と直交する方向に切断される切断工程と、を有する。
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法について、図面を参照して説明する。本発明に係る多色固形化粧料の製造方法は、頬紅やアイシャドウその他のフェイスパウダー、即ち、メイクアップ用の多色固形粉末化粧料の製造に特に好適である。
【0020】
[棒状成形体取得工程]
図1を参照して、本実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法の棒状成形体取得工程について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法を示す図であり、(a)は、棒状成形体の斜視図、(b)は、多色棒状成形体の斜視図である。
【0021】
本実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法の棒状成形体取得工程は、粉末化粧料を棒状に成形されてなる棒状成形体の周囲に、棒状成形体とは異なる色の粉末化粧料を付着させて多色棒状成形体を得る工程である。
【0022】
図1(a)に示すように、粉末化粧料を棒状に成形することにより2以上の棒状成形体11を得る。棒状成型体11の成形方法としては、一例として、単色のスラリー状乃至粘土状とした化粧料バルクを、スクリュー押出ホッパーにより押し出す射出成形方法やプレス型によって押圧成形する方法などを用いることができる。
【0023】
棒状成形体11の成形に用いる粉末化粧料は、粉体を含み棒状に成形することができるものであればよく、成形の際の形態は特に限定されない。例えば、粉末状、顆粒状、団粒状、粘土状、スラリー状、又はこれらの混合物の形態とした粉末化粧料を、棒状成形体11の成形に用いることができる。粉末化粧料をこれらの形態とする際は、必要に応じて公知の揮発性溶剤を適量添加して調整することが可能である。
【0024】
2以上の棒状成形体11のそれぞれは、総て同一色の粉末化粧料によって成形されるものであってもよく、互いに異なる色の粉末化粧料によって成形されるものであってもよい。
【0025】
棒状成形体11の硬度は、多色固形化粧料1としての使用性等により適宜調整さればよく限定されないが、静置した状態で成形された形状を維持できる程度の硬度を有するものであれば、作業性が向上するため好適な場合もある。
【0026】
棒状成形体11の形状は、特に限定されるものではなく、棒状成形体11を含む多色化粧料バルク10を切断したときに所望の模様が得られるように適宜選択することができる。そのため、棒状成形体11は、図1(a)に示すように円柱形状としてもよいし、その他の多角柱形状であってもよい。
【0027】
続いて、図1(b)に示すように、棒状成形体11の周囲に粉末化粧料を付着させることによって、多色棒状成形体12を得る。棒状成形体11の周囲に付着させる粉末化粧料は、棒状成形体11の成形に用いた粉末化粧料とは異なる色のものを用いることが好適である。このような多色棒状成形体12を用いて後述の工程を経て得られる多色固形化粧料1に、棒状成形体11とは異なる色による網の目模様を出現させることができる(図5(b)、図6参照)。これにより、少なくとも棒状成形体11をなす粉末化粧料及び棒状成形体11の周囲に付着させた粉末化粧料という異なる色の粉末化粧料がブレンドされるようにパフにとられてメイクアップに用いることができる多色固形化粧料1を提供することができる。
【0028】
棒状成形体11の周囲に粉末化粧料を付着させる方法は特に限定されない。一例として、平坦なトレイ内に入れられた粉末化粧料の上で棒状成形体11を転がして棒状成形体11の周囲に粉末化粧料を付着させる方法、ベルトコンベヤー上に撒かれた粉末化粧料の上に棒状成形体11を置き、押さえ部材によりで棒状成形体11を上から押さえ付けながらベルトコンベヤーを駆動させることで、棒状成形体11の周囲に粉末化粧料を付着させる方法などを用いればよい。これにより、棒状成形体11の周囲に略均一な粉末化粧料層を形成することができる。
【0029】
粉末化粧料を付着させる棒状成形体11の部位は任意であり、図1(b)に示すように棒状成形体11の側面に対してのみ付着させてもよいし、棒状成形体11の長手方向の両端面(底面)を含めて表面全体に付着させてもよく、特に限定されない。
【0030】
棒状成形体11の周囲に形成する粉末化粧料層の厚さは、多色固形化粧料1に出現させる網の目模様の所望する幅に応じて適宜調整すればよい。
【0031】
なお、より複雑な模様の多色固形化粧料を得るために、棒状成形体11に対して粉末化粧料層を2以上形成するようにしてもよく、その場合、第1粉末化粧料層に用いられる粉末化粧料の色とは別の色の粉末化粧料によって第2粉末化粧料層を形成するようにしてもよい。
【0032】
[収容工程・圧縮工程]
図2乃至図4を参照して、本実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法の収容工程及び圧縮工程について説明する。図2は、本発明の実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法に用いる容器を示す図であり、(a)は、割型が分離した状態の容器の斜視図、(b)は、割型が合体した状態の容器の斜視図、図3は、本発明の実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法における収容工程を示す斜視図、図4は、本発明の実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法における圧縮工程を示す斜視図である。
【0033】
本実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法の収容工程は、2以上の多色棒状成形体が互いの中心軸を平行にして容器に配置され収容される工程である。また、本実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法の圧縮工程は、互いの中心軸を平行にして配置された2以上の多色棒状成形体が、2以上の割型を合体させて構成された容器内で圧縮されることにより、容器の内部形状に対応した形状でなる多色化粧料バルクを得る工程である。
【0034】
図3に示すように、2以上の多色棒状成形体12は、互いの中心軸Bを平行にして容器20に配置され収容される。
【0035】
本実施形態に係る容器は、容器の長手方向に沿って分割される第1割型と第2割型とを有する。一例として、本実施形態に係る容器20は、図2(a)に示すように、円柱形状でなる容器20が長手方向Aに沿って二等分された形状でなる、上面が開口した第1割型21及び第2割型22を有する。そして、図2(b)に示すように、第1割型21と第2割型22とを合体させて閉じることによって、円柱形状の内部形状(収容空間)が形成される。これにより、後述する図3(a)に示すように、第1割型21と第2割型22のそれぞれの開口した上面側から、多色棒状固形成形体12を収容することができる。
【0036】
本実施形態に係る容器は、容器の長手方向の少なくとも一端側は、容器の長手方向への移動が規制された側壁で構成される。一例として、容器20は、長手方向Aの両端側が、容器20の長手方向Aへの移動が規制された側壁21a、21b、22a、22bにより構成されている。例えば、図2に示すように、容器20の側壁21a、21b、22a、22bは固定的に設けられていればよく、容器20は、その収容空間内の内容物を押し出す構造を必要としない。
【0037】
本実施形態に係る容器20は、割型が合体した状態(図2(b)参照)において、内部形状(収容空間)が円柱形状となるものを説明するが、内部形状は特に限定されるものではなく、最終的に製造する多色固形化粧料1の外形に応じて適宜変更可能である。
【0038】
容器20の材質は、2以上の多色棒状成形体12を収容することができるものであれば特に限定されるものではないが、作業性や衛生面の観点から樹脂製又は金属製の材質を採用することが好適である。
【0039】
多色固形化粧料1に網の目模様を出現させる観点から、図3に示すように、2以上の多色棒状成形体12を容器20内に配置及び収容することが好適である。収容される多色棒状成形体12の本数や配置は、多色固形化粧料1に出現させる所望する模様に応じて適宜調整すればよい。
【0040】
多色棒状成形体12は、後述の工程を経て得られる多色固形化粧料1に所望の模様が出現するように、容器20内に配置されることが好ましい。この時、必要に応じて、容器20と多色棒状成形体12との隙間や、2以上の多色棒状成形体12同士の隙間に、棒状成形体11の周囲に付着させた粉末化粧料と同質の粉末化粧料を適量補充してもよい。これにより、容器20内の所望する位置に多色棒状成形体12を配置でき、多色固形化粧料1の表面に形成される模様に反映することができる。
【0041】
容器20内に配置される2以上の多色棒状成形体12は、互いに同じ色の棒状成形体11を有するものでもよいし、異なる色の棒状成形体11を有するものであってもよい。
【0042】
後述の多色化粧料バルク10の容器20からの取り出しを容易に行うために、容器20内に2以上の多色棒状成形体12を配置するに際しては、予め第1割型21及び第2割型22に不織布等を敷くことが可能であり、また好適である。
【0043】
図4(a)に示すように、2以上の多色棒状成形体12が容器20(第1割型21及び第2割型22のそれぞれ)に配置及び収容された後、その矢印方向に向かって第2割型22を第1割型21に合体させ、図4(b)に示すように、第1割型21と第2割型22とを完全に閉じることによって、第1割型21及び第2割型22に配置された2以上の多色棒状成形体12を圧縮する。
【0044】
これにより、2以上の多色棒状成形体12は、容器20の内部形状に対応した形状(本実施形態では円柱形状)に圧縮されることにより密度が均一化され、容器20内で多色化粧料バルク10が成形される。
【0045】
[切断工程]
図5を参照して、本実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法の切断工程について説明する。図5は、本発明の実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法を示す図であり、(a)は、多色化粧料バルクの取り出し工程を示す斜視図、(b)は、多色化粧料バルクの切断工程を示す斜視図である。
【0046】
本実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法の切断工程は、2以上の割型を分離させて容器から取り出された多色化粧料バルクが、載置面に置かれた状態で、多色化粧料バルクの中心軸と直交する方向に所定厚さで切断される工程である。
【0047】
圧縮工程の後、図5(a)に示すように、容器20の第1割型21と第2割型22とを分離させ、容器20内で成形された多色化粧料バルク10を取り出す。この多色化粧料バルク10は、圧縮された棒状成形体11と、圧縮されて一体化された粉末化粧料(棒状成形体11の周囲に付着させたもの、及び/又は、上記隙間に補充されたもの)とから構成されるものである。また、上記までの各工程を経ることにより、多色化粧料バルク10は、中心軸(図5(b)参照)方向における一端側から他端側まで均一に形成されたものとなり得る。
【0048】
図5(b)に示すように、容器20から取り出された多色化粧料バルク10は、多色化粧料バルク10の中に含まれる少なくともいずれかの棒状成形体11の中心軸Bと直交する方向に所定厚さ毎に切断され、多色固形化粧料1を得る。
【0049】
多色固形化粧料1の硬度が意図せず変質することを防止するため、切断時、多色化粧料バルク10は、図示しない載置面に置かれた状態とし、可能な限り多色化粧料バルク10の周囲を押さえる手段を用いないのが好ましい。多色化粧料バルク10を切断するために多色化粧料バルク10が置かれる載置面は特に限定されるものではなく、例えば、固定的に設置される台座の上面や、可能するベルトコンベヤーの上面でもよい。また、載置面は、平坦面に限定されず、切断手段の刃先が挿通可能な溝を1以上備えるものや、多色化粧料バルク10の転がり等防止のための形状を備えるものであってもよい。
【0050】
切断手段は、容器20から完全に取り出された開放状態にある多色固形化粧料1を、型崩れを起こすことなく切断できる手段が好適であり、より具体的には超音波カッターが好ましい。もっとも、多色固形化粧料1の硬度に応じて、その他の切断手段を用いてもよいことは言うまでもない。
【0051】
所定厚さは、後述の化粧皿2(図6参照)の深さ等に応じて適宜設定する。
【0052】
[プレス工程]
図6を参照して、本実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法のプレス工程について説明する。図6は、本発明の実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法を示す図であり、(a)は、多色固形化粧料の装填工程を示す斜視図、(b)は、多色固形化粧料のプレス工程を示す斜視図である。
【0053】
図6(a)に示すように、多色固形化粧料1を化粧皿2に装填する。その後、多色固形化粧料1は、公知の図示しないプレス装置により、化粧皿2の開口側(図6(b)における矢印方向)からプレス処理が施される。
【0054】
以上の通り、本実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法によれば、表面から底面に至るまで均一な模様が形成された多色固形化粧料1を効率的に製造することができることに加えて、以下のような効果をも奏するものである。
【0055】
本実施形態に係る多色化粧料バルクの成形(圧縮工程)においては、従来のようにピストン式の押出成形機を用いることなく、多色化粧料バルクを2以上の割型からなる容器を用いて圧縮して成形し、割型を分離させて容器から多色化粧料バルクが取り出されるものであるため、従来の押出成形機では押出し成形できなかった硬い化粧料バルクをも用いることができる。同様に、本実施形態に係る多色固形化粧料の切断工程においては、従来のように内容物を押し出すことができる容器によって所定量押出して切断するのではなく、容器から完全に取り出され載置面に置かれた状態で切断するものであるため、従来の押出し容器によって押し出すことができなかった硬い化粧料バルクをも用いることができる。その結果、本実施形態に係る多色固形化粧料の製造方法によると、使用できる化粧料バルクの選択の幅が広がるという効果を奏するものである。
【0056】
また、本実施形態に係る多色化粧料バルクの切断工程においては、従来のように内容物を押し出すことができる容器によって所定量押出して切断するものではなく、容器から完全に取り出され載置面に置かれた開放状態で切断するものであるため、多色化粧料バルクの硬さが製造工程中において意図せず変質することを回避することができるという効果をも奏するものである。
【0057】
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0058】
[変形例1]
上記実施形態においては、棒状成形体11の周囲に粉末化粧料を付着させた多色棒状成形体12(図1(b)参照)を用いて、多色化粧料バルク10を成形し(図5参照)、網の目模様が出現する多色固形化粧料1を製造する方法を説明した。本発明はこれに限られず、粉末化粧料を棒状に成形されてなる棒状成形体(図1(a)参照)を、所望する各色分を得る棒状成形体取得工程と、互いの中心軸を平行にして配置された2以上の棒状成形体が、2以上の割型を合体させて構成された容器内で圧縮されることにより、容器の内部形状に対応した形状でなる多色化粧料バルクを得る圧縮工程と、2以上の割型を分離させて容器から取り出された多色化粧料バルクが、棒状成形体の中心軸と直交する方向に所定厚さで切断される切断工程と、を有する多色固形化粧料の製造方法としてもよい。尚、後述の変形例においても同様である。
【0059】
変形例1によっても、上記実施形態と同様の効果を得ながら、仕切りのない化粧皿内に複数色の固形化粧料が直接隣接された状態で装填された多色固形化粧料を提供することができる。
【0060】
[変形例2]
以下、上記実施形態の変形例2について、図7を参照して説明する。本発明の実施形態の変形例2に係る多色固形化粧料の製造方法に用いる容器の斜視図であり、(a)は、割型が分離した状態の容器の斜視図、(b)は、割型が合体した状態の容器の斜視図である。
【0061】
上記実施形態に係る容器20は、図2(a)に示すように、円柱形状でなる容器20が長手方向Aに沿って二等分された形状でなる、上面が開口した第1割型21及び第2割型22を有するものを説明した。本発明はこれに限られず、図7(a)に示すように、容器200は、容器200の長手方向Aに沿って開口部211を有する第1割型210と、開口部211を閉塞する第2割型220とを有するものとして構成し、圧縮工程は、第1割型210の開口部211から第2割型220で押圧することによって、第1割型210に配置された2以上の多色棒状成形体12が圧縮されることを内容とするものとしてもよい。
【0062】
変形例2に係る容器200は、収容すべき2以上の多色棒状成形体12を第1割型210に配置及び収容してから、第2割型220によって閉塞及び圧縮するものである。図7(b)に示すように、変形例2に係る容器200は、第1割型210が第2割型220によって閉塞されたときに、第1割型210及び第2割型220のそれぞれの内部形状によって円柱形状の内部形状(収容空間)が形成される。
【0063】
変形例2によっても、上記実施形態と同様の効果を得ながら、仕切りのない化粧皿内に複数色の固形化粧料が直接隣接された状態で装填された多色固形化粧料を提供することができる。
【0064】
[変形例3]
以下、上記実施形態の変形例3について、図8を参照して説明する。図8は、本発明の実施形態の変形例3に係る多色固形化粧料の製造方法に用いる容器の斜視図であり、(a)は、割型が分離した状態の容器の斜視図、(b)は、割型が合体した状態の容器の斜視図である。
【0065】
上記実施形態に係る容器20は、図2に示すように、長手方向Aの両端側が、容器20の長手方向Aへの移動が規制された側壁21a、21b、22a、22bにより構成されたものを説明した。本発明はこれに限られず、容器の長手方向の少なくとも一端側が、容器の長手方向への移動が規制された側壁で構成されればよい。その一例として、変形例3に係る容器300は、図8(a)に示すように、有底円筒形状でなる容器300が長手方向Aに沿って二等分された形状でなる、上面が開口した第1割型310及び第2割型320を有するものとし、長手方向Aの一端側にのみ、長手方向Aへの移動が規制される側壁310a、320aを有し、図8(b)に示すように、長手方向Aの他端側には側壁がなく開口部301を有している。図8に示すように、容器300の側壁310a、320aは、一例として固定的に設けられ、容器300は、その収容空間内の内容物を押し出す構造を必要としない。
【0066】
容器300を用いる場合の収容工程においては、第1割型310と第2割型320とを合体させて有底円筒形状となった容器300の開口部301から、多色棒状成形体12を入れて容器300内に収容させることも可能である。この時、容器300内に、多色棒状成形体12を配置するための仕切り部材を予め入れておき、その仕切り部材によって仕切られた空間に多色棒状成形体12を入れるようにしてもよい。これによれば、多色固形化粧料1に出現する模様の再現性を高めることができる。
【0067】
容器300を用いる場合の圧縮工程においては、多色棒状成形体12が収容された容器300の開口部301から、押圧部材330で押圧することによって、容器300内に配置された2以上の多色棒状成形体12を圧縮する。なお、収容工程において仕切り部材を用いた場合は、圧縮工程の前に仕切り部材を取り除いておく。
【0068】
変形例3によっても、上記実施形態と同様の効果を得ながら、仕切りのない化粧皿内に複数色の固形化粧料が直接隣接された状態で装填された多色固形化粧料を提供することができる。
【0069】
[変形例4]
以下、上記実施形態の変形例4について、図9を参照して説明する。図9は、本発明の実施形態の変形例4に係る多色固形化粧料の製造方法を示す図であり、(a)は、割型が合体した状態の容器の斜視図、(b)は、収容工程及び圧縮工程を示す斜視図、(c)は、多色化粧料バルクの取り出し工程を示す斜視図、(d)は、多色化粧料バルクの切断工程を示す正面図、(e)は、多色固形化粧料の装填工程を示す図、(f)は、多色固形化粧料のプレス工程を示す図である。
【0070】
図9(a)に示すように、変形例4に係る多色固形化粧料の製造方法に用いる容器400は、それぞれ半球状のキャビティが形成された第1割型410及び第2割型420とを有する。図9(b)に示すように、第1割型410(又は第2割型420)に、互いの中心軸Bを平行にして2以上の多色棒状成形体12を配置し、第1割型410及び第2割型420を合体させて閉じることによって、2以上の多色棒状成形体12を容器400内で球体状に圧縮する。図9(c)に示すように、第1割型410及び第2割型420を分離させて、球体状に成形された多色化粧料バルク10を容器400から取り出す。図9(d)に示すように、球体状に成形された多色化粧料バルク10を、図示しない載置面に置かれた状態で、棒状成形体10の中心軸Bと直交する方向に切断して、多色固形化粧料1を得る。図9(e)に示すように、多色固形化粧料1を化粧皿2に装填し、図9(f)に示すように、多色固形化粧料1に対して、プレス装置450により、上方(矢印方向)からプレス処理を施す。
【0071】
変形例4によっても、上記実施形態と同様の効果を得ながら、仕切りのない化粧皿内に複数色の固形化粧料が直接隣接された状態で装填された多色固形化粧料を提供することができる。特に、変形例4によれば、中央部に向かって膨らみを有する形状(ドーム形状)に形成された多色固形化粧料とすることができ、形状設計の自由度が高くなる。
【0072】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 多色固形化粧料
2 化粧皿
10 多色化粧料バルク
11 棒状成形体
12 多色棒状成形体
20 容器
21 第1割型
21a、21b 側壁
22 第2割型
22a、22b 側壁
200 容器
210 第1割型
210a、210b 側壁
211 開口部
220 第2割型
300 容器
301 開口部
310 第1割型
310a 側壁
320 第2割型
320a 側壁
330 押圧部材
400 容器
410 第1割型
420 第2割型
450 プレス装置
A 長手方向
B 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9