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  • 特開-蛍光体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040840
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】蛍光体
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/63 20060101AFI20240318BHJP
   C01B 35/12 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C09K11/63
C01B35/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145461
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 良々歌
(72)【発明者】
【氏名】宮田 怜
【テーマコード(参考)】
4H001
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001XA05
4H001XA08
4H001XA19
4H001XA20
4H001XA37
4H001XA38
4H001XA56
4H001YA24
4H001YA25
4H001YA58
4H001YA59
4H001YA63
4H001YA65
4H001YA70
(57)【要約】
【課題】新規蛍光体を提供すること
【解決手段】本開示の一側面は、RbM(BOで表される母体結晶に、Reで表される賦活元素が固溶した蛍光体であって、一般式:A(M4(1-x),Re4x)(BO[一般式において、0<x<1である]で表され、上記Aは、K及びRbからなる群から選択される一種以上の元素であり、上記Mは、Sr、Ba、及びCaからなる群から選択される一種以上の元素であり、上記Reは、Mn、Cr、Ce、Pr、Eu、Tb、及びYbからなる群より選択される一種以上の元素である、蛍光体を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AM(BOで表される母体結晶に、Reで表される賦活元素が固溶した蛍光体であって、
一般式:A(M4(1-x),Re4x)(BO[一般式において、0<x<1である]で表され、
前記Aは、K及びRbからなる群から選択される一種以上の元素であり、
前記Mは、Sr、Ba、及びCaからなる群から選択される一種以上の元素であり、
前記Reは、Mn、Cr、Ce、Pr、Eu、Tb、及びYbからなる群より選択される一種以上の元素である、蛍光体。
【請求項2】
前記一般式においてxが、0<x≦0.005である、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
前記一般式において、
前記AがRbであり、
前記ReがCe及びEuからなる群より選択される一種以上の元素である、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項4】
前記一般式において、
前記MがSrであり、
前記ReがEuである、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項5】
前記一般式において、
前記AがRbであり、
前記MがSrである、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項6】
前記母体結晶は直方晶系に属し、空間群Ama2(40)対称性を有する結晶である、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体としては、β-SiAlON、及びCASN等の窒化物やガドリニウム等を構成元素として含むボレート化合物等に賦活元素を固溶させた蛍光体などが知られている。
【0003】
特許文献1には、実験式(Y1-x-y-zEuGd)BOを有するユーロピウム活性化イットリウム、ガドリニウムボレート蛍光体であって、0.01<x<0.1、0<y<0.5であり、M=Mg、Ca,Sr、またはBaであり、0<z<0.1である、特許文献1に開示された方法で調製される、ユーロピウム活性化イットリウム、ガドリニウムボレート蛍光体が開示されている。特許文献2には、一般式Y(1-x-y-z)GdTbLa)BO[式中、0.01≦x≦0.4、0.01≦y≦0.1及び0<z≦0.2]の蛍光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002-501950号公報
【特許文献2】特開2004-331979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蛍光体が利用される領域の拡大に伴い、設計選択肢の拡大の観点から、新規蛍光体が求められている。
【0006】
本開示は、新規蛍光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の[1]~[7]を提供する。
【0008】
[1]
AM(BOで表される母体結晶に、Reで表される賦活元素が固溶した蛍光体であって、
一般式:A(M4(1-x),Re4x)(BO[一般式において、0<x<1である]で表され、
前記Aは、K及びRbからなる群から選択される一種以上の元素であり、
前記Mは、Sr、Ba、及びCaからなる群から選択される一種以上の元素であり、
前記Reは、Mn、Cr、Ce、Pr、Eu、Tb、及びYbからなる群より選択される一種以上の元素である、蛍光体。
[2]
前記一般式においてxが、0<x≦0.005である、[1]に記載の蛍光体。
[3]
前記一般式において、
前記AがRbであり、
前記ReがCe及びEuからなる群より選択される一種以上の元素である、[1]又は[2]に記載の蛍光体。
[4]
前記一般式において、
前記MがSrであり、
前記ReがEuである、[1]又は[2]に記載の蛍光体。
[5]
前記一般式において、
前記AがRbであり、
前記MがSrである、[1]~[4]いずれかに記載の蛍光体。
[6]
前記母体結晶は直方晶系に属し、空間群Ama2(40)対称性を有する結晶である、[1]~[5]のいずれかに記載の蛍光体。
[7]
波長455nmの光を照射した際の発光スペクトルにおいて、500~550nmの波長域に最大発光強度を有する発光ピークの半値幅が70nm未満である、[1]~[6]のいずれかに記載の蛍光体。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、新規蛍光体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例における発光強度測定の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。
【0012】
本明細書において例示する材料は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。本明細書における「工程」とは、互いに独立した工程であってもよく、同時に行われる工程であってもよい。
【0013】
蛍光体の一実施形態は、AM(BOで表される母体結晶に、Reで表される賦活元素が固溶した蛍光体である。上記蛍光体は、一般式:A(M4(1-x),Re4x)(BO[一般式において、0<x<1である]で表される。上記蛍光体は、上記母体結晶におけるAの一部がReによって置換された化合物といえる。
【0014】
上記一般式におけるxの下限値は、例えば、0.0001以上、0.0003以上、又は0.0005以上であってよい。上記一般式におけるxの下限値が上記範囲内であることで、蛍光体の発光強度をより向上し得る。上記一般式におけるxの上限値は、例えば、0.8以下、0.5以下、0.2以下、0.1以下、0.05以下、0.01以下、0.005以下、0.003以下、0.002以下、又は0.001以下であってよい。上記一般式におけるxの上限値が上記範囲内であることで、蛍光体中の異相の割合を十分に低減でき、異相の存在に起因する量子効率の低下をより十分に低減できる。上記一般式におけるxの値は上述の範囲内で調整してよく、例えば、0<x≦0.005、又は0<x≦0.001であってよい。
【0015】
上記一般式において、Aは、K(カリウム)及びRb(ルビジウム)からなる群から選択される一種以上の元素であるが、より短波長の発光を示す蛍光体を得る観点から、Rbであってよい。
【0016】
上記一般式において、Mは、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、及びCa(カルシウム)からなる群から選択される一種以上の元素であるが、一種又は二種であることが好ましく、イオン半径がEuと近いことから、ReがEuを含む場合に母体結晶中へのReの固溶がより容易となる観点から、Srであってよい。
【0017】
上記一般式においてReは、Mn(マンガン)、Cr(クロム)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Eu(ユウロピウム)、Tb(テルビウム)、及びYb(イッテルビウム)からなる群より選択される一種以上の元素であるが、例えば、従来の蛍光体と同等以上の品質の蛍光体をより容易に得る観点から好ましくは、Ce、Pr、Eu、Tb、及びYbからなる群より選択される一種以上の元素であってよく、より強い強度の発光が観測されやすい可能性があることからより好ましくは、Ce、及びEuからなる群より選択される一種以上の元素であってよく、さらに好ましくはEuであってよい。上記一般式においてReは、化学的安定性の観点から、一種又は二種であることが好ましく、一種であることがより好ましい。
【0018】
上記一般式において、上記AがRbであり、上記ReがCe及びEuからなる群より選択される一種以上の元素であってよい。この場合、上記一般式は、Rb(M4(1-x),Re)(BO[一般式において、0<x<1である]で表される。
【0019】
上記一般式において、上記MがSrであり、上記ReがEuであってよい。この場合、上記一般式は、A(Sr4(1-x),Eu)(BO[一般式において、0<x<1である]で表される。
【0020】
上記一般式において、上記AがRbであり、上記MがSrであってよい。この場合、上記一般式は、Rb(Sr4(1-x),Re)(BO[一般式において、0<x<1である]で表される。この場合、Reは、更にEuであってよく、Rb(Sr4(1-x),Eu)(BO[一般式において、0<x<1である]で表される蛍光体であってよい。
【0021】
蛍光体の構成元素及び割合は、マルチ型ICP発光分光分析装置によって決定することができる。具体的には、実施例に記載の方法で測定する。なお、蛍光体における元素組成は、蛍光体を製造する際の各元素の仕込みの割合に対応することから、原料組成から蛍光体の元素組成を推定することもできる。
【0022】
上記蛍光体を構成する上記母体結晶は直方晶系に属し、空間群Ama2(40)対称性を有する結晶であってよい。上記蛍光体は、一般式:RbSr4(1-x)(BO:Eu4xで表され、且つ母体結晶は直方晶系に属し、空間群Ama2(40)対称性を有する結晶であってよい。
【0023】
上記蛍光体は、波長455nmの光を照射した際の発光スペクトルにおいて、500~550nmの波長域に最大発光強度を有する発光ピークの半値幅が小さなものとなっている。上記半値幅の上限値は、例えば、70nm未満、65nm以下、60nm以下、58nm以下であってよい。上記半値幅の上限値が上記範囲内であることで、蛍光体の発光輝度をより向上させることができる。上記半値幅の上限値が上記範囲内であることでまた、色純度のより高い蛍光体を得ることできる。上記半値幅の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、50nm以上、52nm以上、54nm以上、又は56nm以上であってよい。上記半値幅は上述の範囲内で調整でき、例えば、50~60nmであってよい。
【0024】
本明細書において蛍光体の発光ピークの波長及び半値幅は、波長455nmの光を照射したときの蛍光スペクトル測定によって決定される値を意味する。本明細書において半値幅は、半値全幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)を意味し、波長455nmの光を照射したときの蛍光スペクトル測定によって得られる蛍光スペクトルから決定することができる。
【0025】
蛍光体の製造方法の一例は、K及びRbからなる群から選択される一種以上の元素を構成元素として有する化合物、Sr、Ba、及びCaからなる群から選択される一種以上の元素を構成元素として有する化合物、Mn、Cr、Ce、Pr、Eu、Tb、及びYbからなる群より選択される一種以上の元素を構成元素として有する化合物、並びにホウ酸(HBO)を含む原料粉末を大気下で加熱処理して焼成物を得る工程(焼成工程)と、焼成物を還元雰囲気下で加熱処理して加熱処理物を得る工程(還元工程)とを有する。上記加熱処理物は、目的とする蛍光体であってよい。
【0026】
K及びRbからなる群から選択される一種以上の元素を構成元素として有する化合物は、例えば、炭酸塩、酸化物、フッ化物、酸フッ化物、塩化物、窒化物、及び金属等であってよく、好ましくは炭酸塩である。
【0027】
Sr、Ba、及びCaからなる群から選択される一種以上の元素を構成元素として有する化合物は、例えば、炭酸塩、酸化物、フッ化物、酸フッ化物、塩化物、窒化物、及び金属等であってよく、好ましくは炭酸塩である。
【0028】
Mn、Cr、Ce、Pr、Eu、Tb、及びYbからなる群より選択される一種以上の元素を構成元素として有する化合物は、発光中心となる元素の供給源となる化合物である。Mn、Cr、Ce、Pr、Eu、Tb、及びYbからなる群より選択される一種以上の元素を構成元素として有する化合物は、例えば、酸化物、炭酸塩、フッ化物、酸フッ化物、塩化物、窒化物、及び金属等であってよく、好ましくは酸化物である。
【0029】
上記原料粉末に占める上述の化合物の配合割合は、目的とする蛍光体の組成(一般式におけるxの値)等に応じて、調整してよい。
【0030】
上記原料粉末の調製は、各化合物を秤量し、混合することによって調製できる。混合には、乾式混合法又は湿式混合法を用いてもよい。乾式混合法は、例えば、V型混合機等を用いて各成分を混合する方法であってよい。湿式混合法は、例えば、水等の溶媒又は分散媒を加えて溶液又はスラリーを調製し各成分を混合して、その後、溶媒又は分散媒を除去する方法であってよい。
【0031】
焼成工程では、大気下での加熱処理によって各種原料を反応させ、原料に含まれる不要物を取り除く工程である。
【0032】
焼成工程における加熱温度は(焼成温度)は、例えば、700℃以下であってよく、400~700℃、400~600℃、450~600℃、又は450~550℃であってよい。上記焼成温度の下限値が上記範囲内であることで、反応をより促進できる。また、上記焼成温度の上限値が上記範囲内であることで、原料成分の揮発をより抑制できる。
【0033】
焼成工程における加熱時間(焼成時間)は、例えば、2~15時間、4~12時間、6~10時間、又は7~9時間であってよい。上記焼成時間の下限値が上記範囲内であることで、反応をより促進できる。上記焼成時間の上限値が上記範囲内であることで、原料成分の揮発をより抑制できる。
【0034】
還元工程は還元雰囲気下において行う。還元工程を還元雰囲気下で行うことによって、発光中心となる元素(Re)を還元し、発光中心となる元素の価数を調整できる。還元雰囲気は、例えば、水素、一酸化炭素、アンモニア等の還元性ガスを含む。還元雰囲気の還元性の程度を調整するため、還元雰囲気は窒素等を更に含んでもよい。還元雰囲気は、例えば、窒素及び水素の混合ガスであってよい。
【0035】
還元工程における加熱温度(還元温度)は、例えば、800~1300℃、800~1200℃、800~1100℃、800~1000℃、又は800~900℃であってよい。上記還元温度の下限値が上記範囲内であることで、反応をより促進できる。また、上記還元温度の上限値が上記範囲内であることで、原料成分の揮発をより抑制できる。
【0036】
還元工程における加熱時間(還元時間)は、例えば、2~15時間、4~12時間、6~10時間、又は7~9時間であってよい。上記還元時間の下限値が上記範囲内であることで、反応をより促進できる。上記還元時間の上限値が上記範囲内であることで、原料成分の揮発をより抑制できる。
【0037】
上述の製造方法は、焼成工程及び還元工程に加えて、その他の工程を有していてもよい。その他の工程は、例えば、解砕工程、分級工程、及び酸処理工程等が挙げられる。
【0038】
解砕工程は、例えば、焼成工程で得られる焼成物、及び還元工程で得られる加熱処理物が塊状で得られる場合があるため、これらを解砕し、粒度を調整する工程である。解砕工程においては、乳鉢等を用いてもよく、また一般的な粉砕機又は解砕機を用いることもできる。粉砕機及び解砕機としては、例えば、ボールミル、ジェットミル、及びヘンシェルミキサー等が挙げられる。解砕工程は、イオン交換水等の媒体を共存させた湿式におけるボールミル粉砕で行われることが望ましい。また、ボールミルにはジルコニアボールを使用できる。
【0039】
また、蛍光体の製造方法の別の一例は、上述の原料粉末を、800℃以上の還元雰囲気下で加熱処理して加熱処理物を得る工程(加熱処理工程)、を有する。該製造方法は、還元雰囲気下で原料粉末を直接加熱処理して加熱処理物を得る方法となっており、焼成工程と還元工程とを別々に行う必要がない。上記加熱処理物は、目的とする蛍光体であってよい。還元雰囲気は、先に示した製造方法の還元工程における還元雰囲気と同様であってよい。
【0040】
以上に示したような製造方法によって、本開示に係る蛍光体を調製し得る。本開示に係る蛍光体は、表示装置等の発光装置に使用する蛍光体として好適に使用できる。発光装置の一実施形態は、一次光を発する発光素子と、上記一次光の一部を吸収して、一次光の波長よりも長い波長を有する二次光を発する波長変換体と、を備える発光装置である。
【0041】
一次光を発する発光素子は、例えば、InGaN青色LED等であってよい。
【0042】
上記波長変換体は、上述の蛍光体を含む。上記波長変換体は、上述の蛍光体の他に、他の蛍光体を含んでもよい。他の蛍光体としては、例えば、上述の蛍光体粉末以外の赤色蛍光体、黄色蛍光体、黄緑色蛍光体、緑色蛍光体等を含んでもよい。その他の蛍光体は、蛍光体組成物を用いる用途に応じて選択することができ、例えば、発光装置に要求される輝度、色味、及び演色性等に応じて選択して組み合わせることができる。赤色蛍光体としては、例えば、従来のCASN系蛍光体等が挙げられる。緑色~黄色蛍光体(緑色から黄色の波長帯域に蛍光波長を有する蛍光体)としては、例えば、YAG蛍光体、LuAG蛍光体等が挙げられる。黄色蛍光体としては、Ca-α-SiAlON蛍光体等、緑色蛍光体としてはβ-SiAlON蛍光体等が挙げられる。
【0043】
上記発光素子及び波長変換体は、封止樹脂等に分散されていてもよい。封止樹脂としては、それ自体が無色であるものが望ましく、可視光波長に対する透過性に優れるものを用いることができる。封止樹脂は一般には、透明であると認識されるものを用いることができる。上述のような樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂又はアクリル樹脂等であってよい。
【0044】
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。また、上述した実施形態についての説明内容は、互いに適用することができる。
【実施例0045】
以下、実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明する。ただし、本開示は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
炭酸ルビジウム(RbCO、Aldrich社製)、炭酸ストロンチウム(SrCO、株式会社高純度化学研究所製)、ホウ酸(HBO、株式会社高純度化学研究所製)、及び酸化ユウロピウム(Eu、信越化学工場株式会社製)を、Rb:Sr:B:Euがモル比で1:3.96:3:0.04となるように、それぞれ測り取り、アルミナ製乳鉢を用いて10分間混合し、原料粉末6.0gを得た。原料粉末をアルミナ製坩堝に入れ、大気下において、縦型炉で室温から、約5℃/minの昇温速度で500℃まで昇温し、500℃で8時間保持して焼成物を得た。室温まで冷却したのち、アルミナ製乳鉢によって、得られた焼成物を粉砕した。
【0047】
粉砕された焼成物の粉末4.0gをアルミナ製坩堝に入れ、高温雰囲気炉で室温から、約5℃/minの昇温速度で800℃まで昇温し、800℃で8時間保持した。高温雰囲気炉中の雰囲気は、窒素と水素との混合ガス(体積比でN:H=96:4となるように混合したもの)とした。その後、室温まで冷却したのち、アルミナ製乳鉢によって粉砕することによって、Euが固溶したRbSr4(1-x)(BOの粉末を調製した。なお、得られた蛍光体粉末が、Euが固溶したRbSr4(1-x)(BOの粉末であることは、以下の組成分析によって、確認した。RbSr4(1-x)(BO:Eu4xで表される式中のxの値は、表1に示す。
【0048】
[組成式の決定:ICP発光分光分析方法]
マルチ型ICP発光分光分析装置(Agilent社の装置、型番:5110VDV型)を用いて組成を分析した。蛍光体10mgを白金るつぼに入れ、アルカリ性融剤2gを加え、電気炉で融解した。放冷後、白金るつぼに塩酸(HCl)20mLを加え、温浴中で加温溶解して溶液を得た。その後、得られた溶液を100mLに定容した。この100mLの溶液を純水で10倍に希釈し試験液として、上記装置にセットし、組成を分析した。
【0049】
(実施例2~4)
一般式:Rb(M4(1-x),Re4x)(BOにおけるxの値を、0.05、0.02、及び0.5に設定し、炭酸ルビジウム、炭酸ストロンチウム、ホウ酸、及び酸化ユウロピウムの配合量を表1に示すとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にして、Euが固溶したRbSr4(1-x)(BOの粉末を調製した。RbSr4(1-x)(BO:Eu4xで表される式中のxの値は、表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
<Euが固溶したRbSr4(1-x)(BOの粉末の評価>
実施例において調製した粉末について、後述する方法で、発光強度、発光スペクトルの半値幅、及び粉末X線回折による結晶の対称性を評価した。
【0052】
[発光強度の測定、及び発光スペクトルの半値幅の決定]
実施例において調製した粉末について、蛍光体として機能するかを確認するために、発光強度の測定を行った。測定には、分光蛍光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、商品名:F-7000)を用いた。まず、測定対象である蛍光体を石英セルに充填し、これを付属の固定試料ホルダーに固定した。次に、励起波長455nmで蛍光スペクトルを測定した。結果を図1に示す。また、得られた発光スペクトルにおいて、最大発光強度に対する半分の強度の値をとる波長を決定し、その差分をとることで半値幅を算出した。結果を表2に示す。
【0053】
図1に示すとおり、実施例1~4のいずれの粉末の発光スペクトルにおいても、発光ピークが示す最大発光強度(ピークトップ)が500~550nmの波長域に属していることが確認された。なお、参考例1では発光ピークは観測されないことが確認されている。
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示されるとおり、実施例1~4のいずれの蛍光体粉末についても、蛍光ピークの半値幅が60nm未満と小さな値をとっており、色純度の観点から、優れた蛍光体となり得ることが確認された。
【0056】
[粉末X線回折の測定]
実施例において調製した粉末について、X線回折装置(株式会社リガク製、製品名:UltimaIV)を用いて、粉末のX線回折パターンを取得した。測定には、CuKα線(特性X線)を用いた。
【0057】
X線回折スペクトルの回折パターンと、対称性が確定されている結晶群の回折パターンとの比較から、実施例1~4の蛍光体粉末における母体結晶のいずれもが空間群Ama2(40)対称性を有する結晶であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示によれば、新規蛍光体を提供できる。これによって、選択し得る蛍光体種の選択肢が増え、発光素子等の設計の幅を拡張することができる。
図1