IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-差動増幅器 図1A
  • 特開-差動増幅器 図1B
  • 特開-差動増幅器 図2
  • 特開-差動増幅器 図3
  • 特開-差動増幅器 図4
  • 特開-差動増幅器 図5
  • 特開-差動増幅器 図6
  • 特開-差動増幅器 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040843
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】差動増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20240318BHJP
   H03F 3/34 20060101ALI20240318BHJP
   H03F 3/38 20060101ALI20240318BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H03F3/45
H03F3/34 210
H03F3/38
H03F3/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145465
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真砂 健一
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA12
5J500AA26
5J500AA51
5J500AC13
5J500AF09
5J500AF15
5J500AF18
5J500AH10
5J500AH25
5J500AH40
5J500AK02
5J500AK56
5J500AM08
5J500AM13
5J500AS15
5J500AT01
5J500DN01
5J500DP01
5J500MU04
5J500MV14
5J500MV18
(57)【要約】
【課題】差動増幅器の出力に発生し得るオフセット電圧を低減する。
【解決手段】差動増幅器(1)は、第1トランジスタ(M1)及び第2トランジスタ(M2)を含む第1差動入力対を備える第1差動増幅回路(A1)と、第1入力信号に基づく第1信号を前記第1トランジスタの制御端子に供給し第2入力信号に基づく第2信号を前記第2トランジスタの制御端子に供給するか、前記第1信号を前記第2トランジスタの制御端子に供給し前記第2信号を前記第1トランジスタの制御端子に供給するか、を切り替えるように構成された第1切替回路(B1)と、を備える。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1トランジスタ及び第2トランジスタを含む第1差動入力対を備える第1差動増幅回路と、
第1入力信号に基づく第1信号を前記第1トランジスタの制御端子に供給し第2入力信号に基づく第2信号を前記第2トランジスタの制御端子に供給するか、前記第1信号を前記第2トランジスタの制御端子に供給し前記第2信号を前記第1トランジスタの制御端子に供給するか、を切り替えるように構成された第1切替回路と、
を備える、差動増幅器。
【請求項2】
第3トランジスタ及び第4トランジスタを含む第2差動入力対を備える第2差動増幅回路と、
前記第1入力信号を前記第3トランジスタの制御端子に供給し前記第2差動増幅回路の出力を前記第4トランジスタの制御端子に供給するか、前記第1入力信号を前記第4トランジスタの制御端子に供給し前記第2差動増幅回路の出力を前記第3トランジスタの制御端子に供給するか、を切り替えるように構成された第2切替回路と、
をさらに備え、
前記第1切替回路は、前記第2差動増幅回路と前記第1差動増幅回路との間に設けられる、請求項1に記載の差動増幅器。
【請求項3】
第5トランジスタ及び第6トランジスタを含む第3差動入力対を備える第3差動増幅回路と、
前記第2入力信号を前記第5トランジスタの制御端子に供給し前記第3差動増幅回路の出力を前記第6トランジスタの制御端子に供給するか、前記第2入力信号を前記第6トランジスタの制御端子に供給し前記第3差動増幅回路の出力を前記第5トランジスタの制御端子に供給するか、を切り替えるように構成された第3切替回路と、
をさらに備え、
前記第1切替回路は、前記第2差動増幅回路及び前記第3差動増幅回路と前記第1差動増幅回路との間に設けられる、請求項2に記載の差動増幅器。
【請求項4】
前記第1切替回路は、第1チョッピング信号に基づき動作し、
前記第2切替回路は、第2チョッピング信号に基づき動作し、
前記第1チョッピング信号の位相と前記第2チョッピング信号の位相とは同相である、請求項2に記載の差動増幅器。
【請求項5】
前記第1切替回路は、第1チョッピング信号に基づき動作し、
前記第2切替回路は、第2チョッピング信号に基づき動作し、
前記第1チョッピング信号の位相と前記第2チョッピング信号の位相とは互いにずれている、請求項2に記載の差動増幅器。
【請求項6】
前記第1切替回路は、第1チョッピング信号に基づき動作し、
前記第2切替回路は、第2チョッピング信号に基づき動作し、
前記第1チョッピング信号の位相と前記第2チョッピング信号の位相とは逆相である、請求項2に記載の差動増幅器。
【請求項7】
前記第1切替回路が、前記第1信号を前記第1トランジスタの制御端子に供給し前記第2信号を前記第2トランジスタの制御端子に供給するとき、
前記第2切替回路が、前記第1入力信号を前記第3トランジスタの制御端子に供給し前記第2差動増幅回路の出力を前記第4トランジスタの制御端子に供給する、請求項2に記載の差動増幅器。
【請求項8】
前記第1切替回路が、前記第1信号を前記第2トランジスタの制御端子に供給し前記第2信号を前記第1トランジスタの制御端子に供給するとき、
前記第2切替回路が、前記第1入力信号を前記第3トランジスタの制御端子に供給し前記第2差動増幅回路の出力を前記第4トランジスタの制御端子に供給する、請求項2に記載の差動増幅器。
【請求項9】
前記差動増幅器は電流センサである、請求項1~8のいずれか一項に記載の差動増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、差動増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、入力間に発生するオフセットひいては出力に発生するオフセット電圧を低減できる差動増幅器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-271607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で提案されている差動増幅器は、一対のトランジスタのエミッタ間を抵抗によって結合した差動対を備える構成であることが必要であるという制約がある。
【0005】
そのため、一対のトランジスタのエミッタ間を抵抗によって結合した差動対を備える構成の差動増幅器、一対のトランジスタのエミッタ間を抵抗によって結合した差動対を備えない構成の差動増幅器のいずれであっても、差動増幅器の出力に発生し得るオフセット電圧を低減することができる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書中に開示されている差動増幅器は、第1トランジスタ及び第2トランジスタを含む第1差動入力対を備える第1差動増幅回路と、第1入力信号に基づく第1信号を前記第1トランジスタの制御端子に供給し第2入力信号に基づく第2信号を前記第2トランジスタの制御端子に供給するか、前記第1信号を前記第2トランジスタの制御端子に供給し前記第2信号を前記第1トランジスタの制御端子に供給するか、を切り替えるように構成された第1切替回路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本明細書中に開示されている発明によれば、差動増幅器の出力に発生し得るオフセット電圧を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、第1実施形態に係る差動増幅器の概略構成を示す図である。
図1B図1Bは、差動増幅回路の一構成例を示す図である。
図2図2は、第1チョッピング信号の波形例を示す図である。
図3図3は、第2実施形態に係る差動増幅器の概略構成を示す図である。
図4図4は、第1チョッピング信号及び第2チョッピング信号の波形例を示す図である。
図5図5は、第1チョッピング信号及び第2チョッピング信号の他の波形例を示す図である。
図6図6は、第1チョッピング信号及び第2チョッピング信号のさらに他の波形例を示す図である。
図7図7は、第3実施形態に係る差動増幅器の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、MOSトランジスタとは、ゲートの構造が、「導電体または抵抗値が小さいポリシリコン等の半導体からなる層」、「絶縁層」、及び「P型、N型、又は真性の半導体層」の少なくとも3層からなる電界効果トランジスタをいう。つまり、MOSトランジスタのゲートの構造は、金属、酸化物、及び半導体の3層構造に限定されない。
【0010】
<第1実施形態>
図1Aは、第1実施形態に係る差動増幅器1の概略構成を示す図である。差動増幅器1は、差動増幅回路A1と、切替回路B1と、抵抗R1~R4と、入力端子T1及びT2と、バイアス電圧端子T3と、出力端子T4と、を備える。
【0011】
差動増幅回路A1は、Pチャネル型MOSトランジスタM1及びM2を含む差動入力対を備える。なお、本実施形態とは異なり、差動増幅回路A1の差動入力対を構成するトランジスタは、Pチャネル型MOSトランジスタ以外のトランジスタであってもよい。
【0012】
切替回路B1は、スイッチSW1及びSW2を備える。スイッチSW1は、端子11~13を備え、チョッピング信号C1に基づき、端子11と端子12とが電気的に接続される第1状態と、端子11と端子13とが電気的に接続される第2状態と、を切り替える。スイッチSW2は、端子21~23を備え、チョッピング信号C1に基づき、端子21と端子22とが電気的に接続される第1状態と、端子21と端子23とが電気的に接続される第2状態と、を切り替える。チョッピング信号C1は、図2に示すように、LOWレベルとHIGHレベルとを交互に繰り返す周期的な信号である。
【0013】
入力端子T1は、入力信号IN1を受け取る。入力端子T1は、抵抗R1の第1端に接続される。抵抗R1の第2端は、端子11及び抵抗R2の第1端に接続される。抵抗R2の第2端は、差動増幅回路A1の出力端及び出力端子T4に接続される。出力端子T4は、出力信号OUT1を出力する。
【0014】
入力端子T2は、入力信号IN2を受け取る。入力端子T2は、抵抗R3の第1端に接続される。抵抗R3の第2端は、端子21及び抵抗R4の第1端に接続される。抵抗R4の第2端は、バイアス電圧端子T3に接続される。バイアス電圧端子T3には、バイアス電圧(例えばグラウンド電圧)が印加される。
【0015】
端子12及び22は、Pチャネル型MOSトランジスタM1のゲートに接続される。端子13及び23は、Pチャネル型MOSトランジスタM2のゲートに接続される。
【0016】
上述した構成である差動増幅器1のゲインは、抵抗R1~R4の抵抗値に応じた値になる。
【0017】
入力信号IN1に基づく信号S1は、端子11に供給される。チョッピング信号C1がLOWレベルであるとき、スイッチSW1は、端子11と端子12とを電気的に接続する。また、チョッピング信号C1がHIGHレベルであるとき、スイッチSW1は、端子11と端子13とを電気的に接続する。
【0018】
入力信号IN2に基づく信号S2は、端子21に供給される。チョッピング信号C1がLOWレベルであるとき、スイッチSW2は、端子21と端子23とを電気的に接続する。また、チョッピング信号C1がHIGHレベルであるとき、スイッチSW2は、端子21と端子22とを電気的に接続する。
【0019】
したがって、チョッピング信号C1がLOWレベルであるとき、切替回路B1は、入力信号IN1に基づく信号S1をPチャネル型MOSトランジスタM1のゲートに供給する。また、チョッピング信号C1がHIGHレベルであるとき、切替回路B1は、入力信号IN2に基づく信号S2をPチャネル型MOSトランジスタM1のゲートに供給する。
【0020】
差動増幅器1の出力信号OUT1に発生し得るオフセット電圧は、主としてPチャネル型MOSトランジスタM1及びM2のマッチングばらつきに起因する。
【0021】
しかしながら、差動増幅器1では、切替回路B1の周期的な切替動作によって信号S1及びS2の各供給先とPチャネル型MOSトランジスタM1及びM2の各ゲートとの組み合わせが周期的に変化する。差動増幅器1は、当該変化によってPチャネル型MOSトランジスタM1及びM2のマッチングばらつきを平滑化しているため、出力信号OUT1に発生し得るオフセット電圧を低減することができる。
【0022】
図1Bは、差動増幅回路A1の一構成例を示す図である。図1Bに示す構成例の差動増幅回路A1は、Pチャネル型MOSトランジスタM1及びM2と、Pチャネル型MOSトランジスタM7~M9と、電流源CS1と、Nチャネル型MOSトランジスタM10~M14と、スイッチSW7及びSW8と、を備える。
【0023】
スイッチSW7は、端子71~73を備え、チョッピング信号C1’に基づき、端子71と端子72とが電気的に接続される第1状態と、端子71と端子73とが電気的に接続される第2状態と、を切り替える。スイッチSW8は、端子81~83を備え、チョッピング信号C1’に基づき、端子81と端子82とが電気的に接続される第1状態と、端子81と端子83とが電気的に接続される第2状態と、を切り替える。チョッピング信号C1’は、チョッピング信号C1に同期する。
【0024】
定電圧VCCは、Pチャネル型MOSトランジスタM7~M9の各ソースと、電流源CS1の第1端と、に印加される。電流源CS1の第2端は、Nチャネル型MOSトランジスタM10のゲート及びドレインと、Nチャネル型MOSトランジスタM11のゲートと、に接続される。Nチャネル型MOSトランジスタM11のドレインは、Pチャネル型MOSトランジスタM7のゲート及びドレインと、Pチャネル型MOSトランジスタM8のゲートと、Pチャネル型MOSトランジスタM9のゲートと、に接続される。
【0025】
Pチャネル型MOSトランジスタM8のドレインは、Pチャネル型MOSトランジスタM1及びM2の各ソースに接続される。Pチャネル型MOSトランジスタM9のドレインは、Nチャネル型MOSトランジスタM14のドレインに接続される。Pチャネル型MOSトランジスタM9のドレインとNチャネル型MOSトランジスタM14のドレインとの接続ノードが差動増幅回路A1の出力端となる。
【0026】
Pチャネル型MOSトランジスタM1のソースは、スイッチSW7の端子71と、Nチャネル型MOSトランジスタM12のドレインに接続される。Pチャネル型MOSトランジスタM2のソースは、スイッチSW8の端子81と、Nチャネル型MOSトランジスタM13のドレインに接続される。スイッチSW7の端子72及びスイッチSW8の端子83は、Nチャネル型MOSトランジスタM12及びM13の各ゲートに接続される。スイッチSW7の端子73及びスイッチSW8の端子82は、Nチャネル型MOSトランジスタM14のゲートに接続される。Nチャネル型MOSトランジスタM10~M14の各ソースはグラウンド電位に接続される。
【0027】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態に係る差動増幅器2の概略構成を示す図である。差動増幅器2は、第1実施形態に係る差動増幅器1に差動増幅回路A2及び切替回路B2が追加された構成である。なお、第1実施形態と同様の部分については適宜説明を省略し、主として第1実施形態と異なる部分について説明する。差動増幅回路A2の構成例は、差動増幅回路A1の構成例と同様である。ただし、差動増幅回路A2内のスイッチは、チョッピング信号C2に同期するチョッピング信号に基づき動作する。
【0028】
差動増幅回路A2は、Pチャネル型MOSトランジスタM3及びM4を含む差動入力対を備える。なお、本実施形態とは異なり、差動増幅回路A2の差動入力対を構成するトランジスタは、Pチャネル型MOSトランジスタ以外のトランジスタであってもよい。
【0029】
切替回路B2は、スイッチSW3及びSW4を備える。スイッチSW3は、端子31~33を備え、チョッピング信号C2に基づき、端子31と端子32とが電気的に接続される第1状態と、端子31と端子33とが電気的に接続される第2状態と、を切り替える。スイッチSW4は、端子41~43を備え、チョッピング信号C2に基づき、端子41と端子42とが電気的に接続される第1状態と、端子41と端子43とが電気的に接続される第2状態と、を切り替える。チョッピング信号C2は、図4図6に示すように、LOWレベルとHIGHレベルとを交互に繰り返す周期的な信号である。
【0030】
差動増幅回路A2及び切替回路B2は、入力端子T1と抵抗R1との間に設けられる。これにより、切替回路B1は、差動増幅回路A2と差動増幅回路A1との間に設けられることになる。
【0031】
本実施形態では、入力端子T1は、抵抗R1の第1端ではなく端子31に接続される。端子32及び42は、Pチャネル型MOSトランジスタM3のゲートに接続される。端子33及び43は、Pチャネル型MOSトランジスタM4のゲートに接続される。
【0032】
差動増幅回路A2の出力端は、抵抗R1の第1端及び端子41に接続される。
【0033】
入力信号IN1は、入力端子T1から端子31に供給される。チョッピング信号C2がLOWレベルであるとき、スイッチSW3は、端子31と端子32とを電気的に接続する。また、チョッピング信号C2がHIGHレベルであるとき、スイッチSW3は、端子31と端子33とを電気的に接続する。
【0034】
差動増幅回路A2の出力は、端子41に供給される。チョッピング信号C2がLOWレベルであるとき、スイッチSW4は、端子41と端子43とを電気的に接続する。また、チョッピング信号C2がHIGHレベルであるとき、スイッチSW4は、端子41と端子42とを電気的に接続する。
【0035】
したがって、チョッピング信号C2がLOWレベルであるとき、切替回路B2は、入力信号IN1をPチャネル型MOSトランジスタM3のゲートに供給する。また、チョッピング信号C2がHIGHレベルであるとき、切替回路B2は、差動増幅回路A2の出力をPチャネル型MOSトランジスタM3のゲートに供給する。
【0036】
上述した構成である差動増幅回路A2及び切替回路B2は、入力信号IN1を入力して入力信号IN1を抵抗R1に出力するバッファアンプである。
【0037】
差動増幅回路A2及び切替回路B2によって構成されるバッファアンプの出力に発生し得るオフセット電圧は、主としてPチャネル型MOSトランジスタM3及びM4のマッチングばらつきに起因する。
【0038】
しかしながら、差動増幅回路A2及び切替回路B2によって構成されるバッファアンプでは、切替回路B2の周期的な切替動作によって入力信号IN1及び差動増幅回路A2の出力の各供給先とPチャネル型MOSトランジスタM3及びM4の各ゲートとの組み合わせが周期的に変化する。差動増幅回路A2及び切替回路B2によって構成されるバッファアンプは、当該変化によってPチャネル型MOSトランジスタM3及びM4のマッチングばらつきを平滑化しているため、差動増幅回路A2及び切替回路B2によって構成されるバッファアンプの出力に発生し得るオフセット電圧を低減することができる。
【0039】
そして、差動増幅回路A2及び切替回路B2によって構成されるバッファアンプの出力に発生し得るオフセット電圧と、差動増幅器2の出力信号OUT1に発生し得るオフセット電圧とが相殺されると、差動増幅器2の出力信号OUT1に発生し得るオフセット電圧は、差動増幅器1の出力信号OUT1に発生し得るオフセット電圧よりも小さくなる。
【0040】
逆に、差動増幅回路A2及び切替回路B2によって構成されるバッファアンプの出力に発生し得るオフセット電圧によって、差動増幅器2の出力信号OUT1に発生し得るオフセット電圧が増大すると、差動増幅器2の出力信号OUT1に発生し得るオフセット電圧は、差動増幅器1の出力信号OUT1に発生し得るオフセット電圧よりも大きくなる。
【0041】
切替回路B1及びB2がどのような切替動作を行えば上述した相殺が実現できるかは、Pチャネル型MOSトランジスタM1及びM2のマッチングばらつきと、Pチャネル型MOSトランジスタM3及びM4のマッチングばらつきとの関係性に依存する。
【0042】
したがって、例えば図4に示す場合、図5に示す場合、図6に示す場合のうちのどれが差動増幅器1の出力信号OUT1に発生し得るオフセット電圧を最も低減できるかがシミュレーション、実験等で確認され、オフセット電圧を最も低減できるものが採用されるようにすればよい。
【0043】
なお、図4は、チョッピング信号C1の位相とチョッピング信号C2の位相とを同相にした場合のチョッピング信号C1及びC2の波形を示している。この場合、切替回路B1が、信号S1をPチャネル型MOSトランジスタM1のゲートに供給し信号S2をPチャネル型MOSトランジスタM2のゲートに供給するとき、切替回路B2が、入力信号IN1をPチャネル型MOSトランジスタM3のゲートに供給し差動増幅回路A2の出力をPチャネル型MOSトランジスタM4のゲートに供給する。
【0044】
また、図5は、チョッピング信号C1の位相とチョッピング信号C2の位相とを逆相にした場合のチョッピング信号C1及びC2の波形を示している。この場合、切替回路B1が、信号S1をPチャネル型MOSトランジスタM2のゲートに供給し信号S2をPチャネル型MOSトランジスタM1のゲートに供給するとき、切替回路B2が、入力信号IN1をPチャネル型MOSトランジスタM3のゲートに供給し差動増幅回路A2の出力をPチャネル型MOSトランジスタM4のゲートに供給する。
【0045】
また、図6は、チョッピング信号C1の位相とチョッピング信号C2の位相とを所定の角度(180°を除く)ずらした場合、のチョッピング信号C1及びC2の波形を示している。上記の所定の角度として複数の異なる角度が設定されることが望ましい。
【0046】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態に係る差動増幅器3の概略構成を示す図である。差動増幅器3は、第2実施形態に係る差動増幅器2に差動増幅回路A3及び切替回路B3が追加された構成である。なお、第2実施形態と同様の部分については適宜説明を省略し、主として第2実施形態と異なる部分について説明する。
【0047】
差動増幅回路A3は、Pチャネル型MOSトランジスタM5及びM6を含む差動入力対を備える。なお、本実施形態とは異なり、差動増幅回路A3の差動入力対を構成するトランジスタは、Pチャネル型MOSトランジスタ以外のトランジスタであってもよい。差動増幅回路A3の構成例は、差動増幅回路A1の構成例と同様である。ただし、差動増幅回路A3内のスイッチは、チョッピング信号C2に同期するチョッピング信号に基づき動作する。
【0048】
切替回路B3は、スイッチSW5及びSW6を備える。スイッチSW5は、端子51~53を備え、チョッピング信号C2に基づき、端子51と端子52とが電気的に接続される第1状態と、端子51と端子53とが電気的に接続される第2状態と、を切り替える。スイッチSW6は、端子61~63を備え、チョッピング信号C2に基づき、端子61と端子62とが電気的に接続される第1状態と、端子61と端子63とが電気的に接続される第2状態と、を切り替える。
【0049】
差動増幅回路A3及び切替回路B3は、入力端子T2と抵抗R3との間に設けられる。これにより、切替回路B1は、差動増幅回路A2及びA3と差動増幅回路A1との間に設けられることになる。
【0050】
本実施形態では、入力端子T2は、抵抗R3の第1端ではなく端子51に接続される。端子52及び62は、Pチャネル型MOSトランジスタM5のゲートに接続される。端子53及び63は、Pチャネル型MOSトランジスタM6のゲートに接続される。
【0051】
差動増幅回路A3の出力端は、抵抗R3の第1端及び端子61に接続される。
【0052】
入力信号IN2は、入力端子T2から端子51に供給される。チョッピング信号C2がLOWレベルであるとき、スイッチSW5は、端子51と端子52とを電気的に接続する。また、チョッピング信号C2がHIGHレベルであるとき、スイッチSW5は、端子51と端子53とを電気的に接続する。
【0053】
差動増幅回路A3の出力は、端子61に供給される。チョッピング信号C2がLOWレベルであるとき、スイッチSW6は、端子61と端子63とを電気的に接続する。また、チョッピング信号C2がHIGHレベルであるとき、スイッチSW6は、端子61と端子62とを電気的に接続する。
【0054】
したがって、チョッピング信号C2がLOWレベルであるとき、切替回路B3は、入力信号IN2をPチャネル型MOSトランジスタM5のゲートに供給する。また、チョッピング信号C2がHIGHレベルであるとき、切替回路B3は、差動増幅回路A3の出力をPチャネル型MOSトランジスタM5のゲートに供給する。
【0055】
上述した構成である差動増幅回路A3及び切替回路B3は、入力信号IN2を入力して入力信号IN2を抵抗R3に出力するバッファアンプである。
【0056】
差動増幅回路A3及び切替回路B3によって構成されるバッファアンプの出力に発生し得るオフセット電圧と、差動増幅器2の出力信号OUT1に発生し得るオフセット電圧とが相殺されると、差動増幅器3の出力信号OUT1に発生し得るオフセット電圧は、差動増幅器2の出力信号OUT1に発生し得るオフセット電圧よりも小さくなる。
【0057】
本実施形態では、切替回路B2及びB3はチョッピング信号C2によって制御されたが、切替回路B2及びB3それぞれが別個のチョッピング信号によって制御されてもよい。切替回路B1~B3それぞれを制御する3つのチョッピング信号の位相関係を最適化することで差動増幅器3の出力信号OUT1に発生し得るオフセット電圧をより一層低減することができる。
【0058】
<適用例>
上述した差動増幅器1~3それぞれは、例えば電流センサとして用いられる。上述した差動増幅器1~3それぞれが電流センサである場合、検出対象の電流が流れるセンス抵抗の第1端が入力端子T1に接続され、当該センス抵抗の第2端が入力端子T2に接続される。
【0059】
なお、差動増幅器1~3それぞれの用途は、電流センサに限定されない。
【0060】
<その他>
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。これまでに説明してきた各種の実施形態は、矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施してもよい。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。
【0061】
<付記>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0062】
本開示の差動増幅器(1~3)は、第1トランジスタ(M1)及び第2トランジスタ(M2)を含む第1差動入力対を備える第1差動増幅回路(A1)と、第1入力信号に基づく第1信号を前記第1トランジスタの制御端子に供給し第2入力信号に基づく第2信号を前記第2トランジスタの制御端子に供給するか、前記第1信号を前記第2トランジスタの制御端子に供給し前記第2信号を前記第1トランジスタの制御端子に供給するか、を切り替えるように構成された第1切替回路(B1)と、を備える構成(第1の構成)である。
【0063】
上記第1の構成の差動増幅器において、第3トランジスタ(M3)及び第4トランジスタ(M4)を含む第2差動入力対を備える第2差動増幅回路(A2)と、前記第1入力信号を前記第3トランジスタの制御端子に供給し前記第2差動増幅回路の出力を前記第4トランジスタの制御端子に供給するか、前記第1入力信号を前記第4トランジスタの制御端子に供給し前記第2差動増幅回路の出力を前記第3トランジスタの制御端子に供給するか、を切り替えるように構成された第2切替回路(B2)と、をさらに備え、前記第1切替回路は、前記第2差動増幅回路と前記第1差動増幅回路との間に設けられる構成(第2の構成)であってもよい。
【0064】
上記第2の構成の差動増幅器において、第5トランジスタ(M5)及び第6トランジスタ(M6)を含む第3差動入力対を備える第3差動増幅回路(A3)と、前記第2入力信号を前記第5トランジスタの制御端子に供給し前記第3差動増幅回路の出力を前記第6トランジスタの制御端子に供給するか、前記第2入力信号を前記第6トランジスタの制御端子に供給し前記第3差動増幅回路の出力を前記第5トランジスタの制御端子に供給するか、を切り替えるように構成された第3切替回路(B3)と、をさらに備え、前記第1切替回路は、前記第2差動増幅回路及び前記第3差動増幅回路と前記第1差動増幅回路との間に設けられる構成(第3の構成)であってもよい。
【0065】
上記第2又は第3の構成の差動増幅器において、前記第1切替回路は、第1チョッピング信号に基づき動作し、前記第2切替回路は、第2チョッピング信号に基づき動作し、
前記第1チョッピング信号の位相と前記第2チョッピング信号の位相とは同相である構成(第4の構成)であってもよい。
【0066】
上記第2又は第3の構成の差動増幅器において、前記第1切替回路は、第1チョッピング信号に基づき動作し、前記第2切替回路は、第2チョッピング信号に基づき動作し、前記第1チョッピング信号の位相と前記第2チョッピング信号の位相とは互いにずれている構成(第5の構成)であってもよい。
【0067】
上記第5の構成の差動増幅器において、前記第1切替回路は、第1チョッピング信号に基づき動作し、前記第2切替回路は、第2チョッピング信号に基づき動作し、前記第1チョッピング信号の位相と前記第2チョッピング信号の位相とは逆相である構成(第6の構成)であってもよい。
【0068】
上記第2又は第3の構成の差動増幅器において、前記第1切替回路が、前記第1信号を前記第1トランジスタの制御端子に供給し前記第2信号を前記第2トランジスタの制御端子に供給するとき、前記第2切替回路が、前記第1入力信号を前記第3トランジスタの制御端子に供給し前記第2差動増幅回路の出力を前記第4トランジスタの制御端子に供給する構成(第7の構成)であってもよい。
【0069】
上記第2又は第3の構成の差動増幅器において、前記第1切替回路が、前記第1信号を前記第2トランジスタの制御端子に供給し前記第2信号を前記第1トランジスタの制御端子に供給するとき、前記第2切替回路が、前記第1入力信号を前記第3トランジスタの制御端子に供給し前記第2差動増幅回路の出力を前記第4トランジスタの制御端子に供給する構成(第8の構成)であってもよい。
【0070】
上記第1~第8いずれかの構成の差動増幅器において、前記差動増幅器は電流センサである構成(第9の構成)であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1~3 差動増幅器
11~13、21~23、31~33、41~43、51~53、61~63 端子
A1~A3 差動増幅回路
B1~B3 切替回路
CS1 電流源
M1~M9 Pチャネル型MOSトランジスタ
M10~M14 Nチャネル型MOSトランジスタ
R1~R4 抵抗
SW1~SW8 スイッチ
T1、T2 入力端子
T3 バイアス電圧端子
T4 出力端子
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7