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特開2024-40846作曲支援方法、プログラム、および電子機器
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  • 特開-作曲支援方法、プログラム、および電子機器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040846
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】作曲支援方法、プログラム、および電子機器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
G10H1/00 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145468
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】岡野 真吾
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478GG07
(57)【要約】
【課題】作曲を支援すること。
【解決手段】電子機器は、登録されている度数表記での音の時系列に対応する複数のパターンの中からのユーザのパターン指定に基づいてコード進行を決定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器は、
登録されている度数表記での音の時系列に対応する複数のパターンの中からのユーザのパターン指定に基づいてコード進行を決定する作曲支援方法。
【請求項2】
前記電子機器は、前記パターン指定及びユーザからのキーの指定に基づいて、前記コード進行を決定する請求項1に記載の作曲支援方法。
【請求項3】
前記電子機器は、複数のコード種を登録したコードネームデータベースから、前記パターン指定及び前記キーの指定によって決定される基音に基づいたコード種を特定する、請求項2に記載の作曲支援方法。
【請求項4】
前記電子機器は、指定されたパターンに対応するユーザのバリエーションの指定に応じて、前記指定されたバリエーションを含むコード進行を決定する、請求項1に記載の作曲支援方法。
【請求項5】
前記電子機器は、前記決定されたコード進行の任意のコードに対するセカンダリドミナントモーションの指定に応じて、前記決定されたコード進行に前記指定されたセカンダリドミナントモーションを反映させたアレンジを前記コード進行に対して行う、請求項1記載の作曲支援方法。
【請求項6】
少なくとも1つの制御回路を有し、
前記制御回路は、登録されている度数表記での音の時系列に対応する複数のパターンの中からのユーザのパターン指定に基づいてコード進行を決定する、電子機器。
【請求項7】
前記パターン指定及びユーザからのキーの指定に基づいて、前記コード進行を決定する請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
複数のコード種を登録したコードネームデータベースから、前記パターン指定及び前記キーの指定によって決定される基音に基づいたコード種を特定する、請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】
指定されたパターンに対応するユーザのバリエーションの指定に応じて、前記指定されたバリエーションを含むコード進行を決定する、請求項6に記載の電子機器。
【請求項10】
前記決定されたコード進行の任意のコードに対するセカンダリドミナントモーションの指定に応じて、前記決定されたコード進行に前記指定されたセカンダリドミナントモーションを反映させたアレンジを前記コード進行に対して行う、請求項6記載の電子機器。
【請求項11】
コンピュータに、登録されている度数表記での音の時系列に対応する複数のパターンの中からのユーザのパターン指定に基づいてコード進行を決定させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作曲支援方法、プログラム、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
リズム、メロディー、ハーモニーは音楽の三大要素といわれている。ハーモニーはコード(和音)で表すことができ、コードは、基音(ベースノート)からの音の重なり方で決まる固有の名称(コードネーム)を持っている。一つのコードだけでできている曲はまれで、コードは、一つの曲の中で様々に変化してゆく。このようなコードの繋がり(コード進行)にはある程度の法則性があり、人が聞いて気持ちよく感じるコード進行は、幾つかの型(以下、パターンと称する)に分類することができる。例えば、近年のトップチャートにランキングされる楽曲は、高い割合である特定のパターンのコード進行を用いているとも言われている。
【0003】
近年、コンピュータを用いて作曲や演奏を楽しむ人たちが増えてきている。この種の技術はDAW(Digital Audio Workstation)、あるいはDTM(DeskTop Music)と称され、専用のハードウェアやソフトウェアが数多く提供されている。また、ユーザが選択した音楽ジャンルに応じたコード進行にしたがって自動伴奏する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-271564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コード進行は作曲の要とも言えるが、曲想に適したコード進行を選択することは簡単とは言えない。定番のパターンがあるとはいってもその数は多いし、やみくもに選ぶわけにはいかない。音楽理論に詳しい作曲者はイメージに合ったコード進行をいくつも試してみることができるが、これは初心者には大変難しい。難しいところはコンピュータに任せて、作曲者の創造性を刺激するような技術の提供が要望されている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、コード進行を手軽に作成できるようにした作曲支援方法、プログラム、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態である作曲支援方法は、電子機器が、登録されている度数表記での音の時系列に対応する複数のパターンの中からのユーザのパターン指定に基づいてコード進行を決定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コード進行を手軽に作成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係わる電子楽器の一例を示す外観図である。
図2図2は、図1に示される電子機器200の一例を示す機能ブロック図である。
図3図3は、電子機器200の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、電子機器200のタッチパネル20に表示されるGUIの一例を示す図である。
図5図5は、図4の操作時における処理の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係わる電子楽器の一例を示す外観図である。電子楽器としてのデジタルキーボード100は、例えば、電子ピアノ、シンセサイザー、あるいは電子オルガン等の鍵盤楽器である。デジタルキーボード100は、鍵盤付きの電子機器として捉えることもできる。
【0011】
デジタルキーボード100は、表示パネル3、鍵盤4、操作部5、および譜面台MSを備える。表示パネル3は、例えば、タッチパネル機能付きの液晶モニタ(Liquid Crystal Display:LCD)を備え、演奏者の操作部5の操作に伴うメッセージや、レッスンモードの選択リストなどを表示する。
【0012】
鍵盤4は、ユーザの手で操作可能な操作部の一例であり、操作子としての鍵2を複数配列して構成される。鍵2は、演奏者が音高を指定するための白鍵、黒鍵を含む操作子(演奏操作子)である。演奏者が鍵2を押鍵及び離鍵することで、デジタルキーボード100は、指定された音高に対応する音の発音及び消音を行う。
【0013】
操作部5は、演奏者が各種の設定等を行うための操作ボタンやダイヤルなどを有する。ユーザ(使用者)は、操作ボタンやダイヤルなどを操作して、音量調整等の各種の設定操作等を行うことができる。ユーザは操作ボタンを用いて、例えば、レッスンモードの使用及び不使用の選択や、音量調整等の各種の設定操作等を行うことができる。表示パネル3の下に配列される複数のファンクションキー1も、操作部5に含まれるとしてよい。
【0014】
また、デジタルキーボード100は、有線経由、或いはBluetooth(登録商標)、BLE(Bluetooth Low Energy)、Wi-Fi(登録商標)、近距離無線通信(NFC:Near field communication)等の無線経由のいずれかの通信を用いて、タブレットやスマートフォンなどの電子機器200に接続することが可能である。例えば、電子機器200をケーブル300を介してデジタルキーボード100に接続することができる。この状態で電子機器200を譜面台MSに載置し、デジタルキーボード100記憶された楽曲の楽譜を表示させたり、デジタルキーボード100の操作インタフェースとして使用することができる。
【0015】
図2は、図1の電子機器200の一例を示す機能ブロック図である。電子機器200は、少なくとも1つのプロセッサ(制御回路)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、内部バス14、入出力インタフェース15、入力部16、通信部17、ボタン部18、インタフェース部(I/F)19、タッチパネル20、および、出力部21を備える。このうち入出力インタフェース15は、入力部16、通信部17、ボタン部18、インタフェース部(I/F)19、タッチパネル20、および、出力部21に接続され、各部で授受されるデータを内部バス14に流す。
【0016】
プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)、またはMPU(Micro Processing Unit)等の演算処理ユニットであり、ROM12に記憶されたプログラム12aに従って実施形態の諸機能を実現する。すなわちプロセッサ11は、プログラム12aをワーキングメモリとしてのRAM13に読み出し、実行する。
【0017】
RAM13は、例えばユーザが入力した作曲データ13aを記憶する。ユーザの作曲操作が終了すると、作曲データ13aはストレージ22に送られ、所定のファイルシステム上に作曲データファイル22aとして保存される。
【0018】
入力部16は、例えばアナログ/ディジタルコンバータを備え、マイク16aから取得された音声等の音を信号化したアナログ音信号を例えば44.1KHz周期でサンプリングしてデジタルオーディオ信号を生成する。
【0019】
通信部17は、パッチアンテナ17aを介して無線周波数信号を送受信し、電子機器200の無線通信機能を実現する。すなわち電子機器200は、Wi-Fiなどの無線リンクを介してインターネットやデジタルキーボード100と相互に通信し、楽譜データや楽曲データ等を取得することができる。また、通信部17は、接続部17bに接続されたケーブル300を介してデジタルキーボード100と有線接続による通信をすることもできる。
【0020】
ボタン部18は、起動ボタンや音量調節ボタンなどを含む、ユーザインタフェースの一つである。
インタフェース部19は、フラッシュメモリ等のストレージ22に接続可能なスロットを備え、ストレージ22とプロセッサ11、ROM12、RAM13等とのデータの授受を仲介する。
【0021】
タッチパネル20は、アプリの起動画面などを表示して、タッチパネル20へのタッチをセンシングする機能を有するGUI(Graphical User Interface)を介してユーザの操作を受け付ける。
【0022】
出力部21は、ディジタル/アナログコンバータなどを備え、電子メトロノームのクリック音などのオーディオデータをアナログ波形信号に変換し、スピーカ21aから出力する。スピーカ21aに代えて、若しくはスピーカ21aを備えると共にヘッドフォン出力端子を設け、該端子にヘッドフォン、イヤフォン、インナーフォン等を接続して出力するようにしてもよい。
【0023】
ROM12は、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶デバイスであり、電子機器200を制御するプログラム12aに加えて、電子機器200の制御のもとで、パターンデータ12b、コードネームデータ12c、および、バリエーションデータ12dを記憶している。
【0024】
パターンデータ12bは、度数表記での音の時系列に対応する複数のパターンを登録したデータベースである。ここで、度数表記とは、曲のキー(調)によらずにコード進行を表記する方法であり、ディグリーネームとも称される。例えば、属七和音はディグリーネームではV7と表記され、キーCではG7、キーAではE7であるが、表記のうえではV7で変わらない。このように、コードの音程そのものを示すディグリーネームは通常、下記《1》のようにローマ数字で表される。
【0025】
【数1】
【0026】
ちなみに、コードネームの表記で用いられるアラビア数字(6,7,9,13等)は、コード内で使用されている音程の状態を示す。
【0027】
「いちろくにーごー」あるいは「よんごーさんろく」等と呼ばれる、定番のコード進行が幾つもある。これは、ディグリーネームで表されるコード進行のローマ数字だけを取り出して呼びならわしたものである。例えば、キーCで「いちろくにーごー」といえば下記《2》に対応付けて「C-Am7-Dm7-G7」になるし、「よんごーさんろく」といえば《3》に対応付けて「F-G-Em-Am7」になる。
【0028】
【表1】
【0029】
なおこれらは一例であり様々なバリエーションがある。コード進行を「度数表記での音の時系列」と捉えることで、様々なパターンのコード進行を分類し、区別することができる。なお、アラビア数字よりもローマ数字による表記のほうがわかりやすいので、[1-6-2-5]や[4-5-3-6]といった表記でパターンを分類することができる。つまり、アラビア数字、ローマ数字の区別は本質的ではない。
【0030】
このように実施形態では、コード進行からコード種の表記を無くし、キーに対する音程だけを連結して一つのコード進行パターンとする。パターンデータ12bは、端的に言えば、このようにして区別し得るコード進行のパターンを、複数登録して作成されるデータベースである。
【0031】
コードネームデータ12cは、キーおよび基音から特定されるコード種を登録したデータベースである。例えばキーCにおけるEを基音とするコードはEm,Em7,Em6等であり、Fを基音とするコードはF,Fmaj7等である。コードネームデータ12cには、このような複数のコード種が登録される。つまりコードネームデータ12cは、コードネームで表されるコードを登録しているデータベースである。
【0032】
バリエーションデータ12dは、パターンデータ12bに登録されたパターンごとのコード種のバリエーションを登録したデータベースである。例えば、[1-6-2-5]パターンには、以下の4つのタイプのバリエーションを登録することができる。
【0033】
【表2】
【0034】
[4-5-3-6]パターンには、以下の4つのタイプのバリエーションを登録することができる。
【0035】
【表3】
【0036】
もちろんこれらも一例にすぎず、さらに多様なバリエーションをバリエーションデータ12dに登録することができる。
【0037】
ところで、プロセッサ11は、実施形態に係わる処理機能として指定受付部11a、およびコード進行決定部11bを備える。指定受付部11a、およびコード進行決定部11bは、プログラム12aに基づくプロセッサ11の演算処理により実現される、処理機能である。すなわちプログラム12aは、プロセッサ11に、指定受付部11a、およびコード進行決定部11bのそれぞれの機能を実行させる命令を含む。
【0038】
指定受付部11aは、ユーザによる、パターンの指定と、キーの指定とを受け付ける。パターンの指定とは、パターンデータ12bに登録された複数のパターンから任意の一つを選択する操作である。
【0039】
コード進行決定部11bは、ユーザにより指定されたパターンのそれぞれの基音に対応するコード種を、前記指定されたキーに基づいて特定する。コードの基音とは、CM7コードであればC、AmコードであればA、というように、コード種を表す基本となる音表記である。例えば[1-6-2-5]パターンのキーCにおける基音は、C,A,D,Gであり、ベーシックなコード種はC,Am,Dm,G7として特定される。コード進行決定部11bは、これらのコード種からなるコード進行をGUI上に表示するためのデータを生成する。
【0040】
次に、上記構成における処理フロー及び作用を説明する。
図3は、電子機器200の処理手順の一例を示すフローチャートである。図3において、ユーザは、パターンデータ12bに登録された、ディグリーネームで構成されたコード進行のパターン群から任意の一つを選択する(ステップS1)。
次に、電子機器200或いはプロセッサ11は、作曲したい曲のキー(調)が既に設定されているかを判定し(ステップS2)、未定であれば(No)、例えばGUIにメッセージを表示してキーの指定を促す。これを受けてユーザは曲のキーを決定し、入力する(ステップS4)。このステップでユーザは、ステップS1で選択したコード進行のパターンに割り当てるキー(調性)を1つ選択するだけでいい。なおキーの種類は、メジャーキーであればC、D♭(C#)、D、E♭(D#)、E、F、F#(G♭)、G、A♭(G#)、A、B♭(A#)、および、Bの、12種類ある。マイナーキーも同様である。
【0041】
(ステップS3)
ステップS1でのコード進行のパターンとステップS2でのキー(調性)とが指定されると、電子機器200或いはプロセッサ11は、コード進行に表れる個々のコード種にポピュラーなコードを当てはめ、ベーシックなコード進行を決定する(ステップS3)。例えば、1-6-2-5のパターンが選択され、キーCが指定されると、《4》のコード進行が決定される。
【0042】
【表4】
【0043】
このとき、《5》のように2拍ごとの進行や、《6》のような1拍ごとの進行でもよい。このように、コードのレングス(拍数)をユーザに指定させるようにしても良い。
【0044】
【表5】
【0045】
次に、電子機器200或いはプロセッサ11は、ステップS3で決定されたコード進行をアレンジするかどうかをユーザに問い合わせる(ステップS5)。ベーシックなコード進行から得られる和音の繋がりの雰囲気を変えたい場合などに、コード進行のバリエーションを変化させてアレンジすることができる。ここではアレンジのタイプを選択することで、ステップS1でのコード進行自体はそのままでコード種を変更することができる。
【0046】
コード種として例えば、Type1~Type4のように、パターンごとに複数の選択肢があり、ユーザはその中から一つのタイプを選択する(ステップS6)。そうすると、電子機器は、ベーシックなコード進行の中のコード種をタイプに沿って変化させ(ステップS7)、これにより、コード進行全体の雰囲気に変化を生じさせるアレンジを施すことができる。
【0047】
例えばType1が選択されると、《4》のコード進行が《7》のようにアレンジされる。
【0048】
【表6】
【0049】
2小節目のAm7がA7に変化し、次の小節のDm7に対してのドミナント・モーションとなるので、単純にAm7を用いるよりも、コード進行に動的な印象を与えることができる。Am7をA7に変えることは、コード理論に知見を持つユーザであればAm7をA7に変えることが想到できるが、実施形態では、そのような知識を持たないユーザであっても、パターンごとに設定されたタイプを変更するだけで簡単にベーシックのコード進行にアレンジを加えることができる。
【0050】
別の手法として、セカンダリードミナントモーションを加えるアレンジも可能である。電子機器200或いはプロセッサ11は、ベーシックなコード進行の特定のコードにセカンダリードミナントモーションを加えるかどうかをユーザに問い合わせる(ステップS8)。
【0051】
ステップS8でYesであれば、電子機器200或いはプロセッサ11はユーザにパターンの選択を促す(ステップS9)。選択肢には、例えば以下のようなパターンがある。
【0052】
【表7】
【0053】
GUIにおけるパターンの表示方法は、さまざまな態様を考えることができる。例えばユーザにとって最もわかりやすい表記になるように、設定で表示方法を選択できるようにしてもよい。
【0054】
ステップS9において、ツーファイブパターンが選択されたとする。そうすると、例えば《8》に示されるようなベーシックなコード進行のAm7(2小節目)に対してセカンダリドミナントモーションを挿入すると、その前の1小節目のコード種が変更されて《9》のようにアレンジされる。
【0055】
【表8】
【0056】
挿入の方法は、上記のようにCM7の差し替えでもよいし、《10》のように、1小節目の3拍、4拍に挿入するといった応用も可能である。セカンダリドミナントモーションの関係するコードをどのような形態で挿入するかを、ユーザが選択できるようにしてもよい。
【0057】
【表9】
【0058】
ステップS7、またはステップS10が終了すると処理手順は再びステップS3に戻り、アレンジを繰り返すことができる。つまりユーザが納得できるまで何度でもアレンジを繰り返すことができる。そうして、ユーザが納得すれば、コード進行のパターンに基づく、最小単位(小節数)のコード進行が確定する(ステップS11)。ユーザはこの一連の作業を繰り返し、必要な分のコード進行を決定し組み合わせて、一つの曲として作曲してゆくことができる。このように、コード進行の雰囲気を変更したい箇所のコードに対して解決するコード進行のパターンを選択することにより、基本のコード進行に、動的な印象を与えるアレンジが行える。
【0059】
図3に示される手順によれば、難しいコード理論などを理解する必要なしに曲の土台ができあがり、作曲の大きな支援となる。さらに、作成されたコード進行を、自動伴奏機能などと組み合わせて使用すれば、メロディ以外のパートの作成は自動で完了となる。このように作成されたコード進行に合わせることによって、ユーザは、メロディの作曲をすることができる。
【0060】
図4は、電子機器200のタッチパネル20に表示されるGUIの一例を示す図である。このGUIでは、パターン(Pattern)、キー(key)、およびアレンジ(Arrange)をタップして指定できるようになっている。パターンの選択において、1-6-2-5が指定され、キーの選択において[B]が指定され、アレンジの選択において[2-5 Type M]が指定されたとする。そうすると、できあがったコード進行は、例えば《9》のコードを半音下げて[B♭m7-E♭7-A♭m7-C#m7-F#7]といったものになる。
【0061】
図5は、図4の操作時における処理の流れを説明するための図である。ユーザが[1-6-2-5]のパターンを選択し、キー[B]を指定すると、ベーシックなコード進行として[BM7-A♭m7-C#m7-F#7]ができる。これをそのまま用いても良い。
【0062】
さらにアレンジを加えたくなれば、このコード進行の任意のコードに対し、セカンダリドミナントのパターンを指定することができる。例えば[2-5 Type M]がユーザに指定されると、[B♭m7-E♭7-A♭m7-C#m7-F#7]のコード進行が決定される。このようにしてできたコード進行を繋げるだけで、曲の骨格が簡単にできあがる。例えば[B♭m7-E♭7-A♭m7-C#m7-F#7]を、別に作成した[BM7-E♭7-A♭m7-C#m7-F#7]に繋げるだけで、曲の[Aメロ]→[Bメロ]といったパートを簡単に作曲できる。
【0063】
以上述べたように実施形態では、ディグリーネームを例えばアラビア数字に置き換え、また、コード種の表記を無くして、キーに対する音程だけの連結表記にして一つのパターンとする。このようなパターンを電子機器200に複数記憶させておき、ユーザはそれを選択することだけで、コード種を意識する事無く、定番のコード進行を作成する事ができるようになる。また、選択されたパターンには幾つかのバリエーションが設定されており、バリエーションをパターンに組み合わせることで、定番のコード進行でありながら、アレンジを加えることもできる。さらに、ユーザによる選択されたパターンに含まれる任意のコードに対し、セカンダリードミナントモーションを挿入したアレンジを加えることもできる。
【0064】
従って実施形態によれば、定番のコード進行が簡単に決定されるので、ユーザはメロディの作曲だけに注力できる。作成されたコード進行やメロディを自動伴奏システムに読み込ませれば、より具体的なアレンジが可能となる。これらのことから、実施形態によれば、コード進行を手軽に作成できるようにした作曲支援方法、プログラム、および電子機器を提供することが可能になる。これにより、楽曲を創作することをさらに楽しくすることができ、ひいては、音楽文化の形成や発展を促すことが可能になる。
【0065】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、図3の処理手順において、パターンの選択(ステップS1)と、キーの指定(ステップS4)との手順とを入れ替えてもよく、コード進行のバリエーションのアレンジ(ステップS5)とセカンダリードミナントモーションを加えるアレンジ(ステップS8)との手順とを入れ替えてもよい。
【0066】
また、上記実施の形態において、電子機器200をデジタルキーボード100と独立した構成としたが、デジタルキーボード100は、電子機器200における上述した機能をなしハードウェア及、ソフト備えるようにしてもよい。この場合、ケーブル300であったり、個別のデジタルキーボード100と電子機器200とを通信する通信手段は無用となる。
【0067】
また、上記実施の形態において、パターンデータ12b、コードネームデータ12c及びバリエーションデータ12dのそれぞれのデータベースを備えていたが、これらのデータベースの少なくとも一部は、電子機器200及びデジタルキーボード100以外のサーバ等の外部電子機器が備えていてもよい。この場合、電子機器200及びデジタルキーボード100のいずれかが、外部電子機器と通信することによって、各データベースからデータの読み出し等を行えばよい。
【0068】
以上、本発明の技術的範囲には、本発明の目的が達成される範囲での様々な変形や改良などが含まれるものであり、そのことは当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0069】
1…ファンクションキー2…鍵3…表示パネル4…鍵盤5…操作部11…プロセッサ11a…指定受付部11b…コード進行決定部12…ROM12a…プログラム12b…パターンデータ12c…コードネームデータ12d…バリエーションデータ13…RAM13a…作曲データ14…内部バス15…入出力インタフェース16…入力部16a…マイク17…通信部17a…パッチアンテナ17b…接続部18…ボタン部19…インタフェース部20…タッチパネル21…出力部21a…スピーカ22…ストレージ22a…作曲データファイル100…デジタルキーボード200…電子機器300…ケーブル。
図1
図2
図3
図4
図5