(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040849
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20240318BHJP
B60W 40/068 20120101ALI20240318BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W40/068
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145476
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】筒井 隆
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA33
3D241BA49
3D241BB40
3D241BC01
3D241CD11
3D241CD16
3D241CE05
3D241DB02B
3D241DB02Z
3D241DB20A
3D241DB20Z
3D241DB26Z
3D241DC42B
3D241DC42Z
3D241DC47B
3D241DC47Z
3D241DC50B
(57)【要約】
【課題】乗員の安心感を向上させることが可能な車両制御装置を得ること。
【解決手段】車両10の目標速度を算出する目標速度設定部126fを備えた車両制御装置100であって、目標速度算出部は、車両の外界センサ20のセンシング範囲の外縁までの車両の目標経路TRの経路長l
1と路面の摩擦係数とを用いて外縁SR
pの手前の停止位置で車両を停車可能な第1速度V
1を算出し、目標経路を複数に区画した各区間の道路幅w
iと摩擦係数に応じて第2速度V
2を設定し、第1速度と第2速度のうち最小の速度を選択して目標速度V
tgtに設定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の目標速度を算出する目標速度算出部を備えた車両制御装置であって、
前記目標速度算出部は、
前記車両の外界センサのセンシング範囲の外縁までの前記車両の目標経路の経路長と路面の摩擦係数とを用いて前記外縁の手前の停止位置で前記車両を停車可能な第1速度を算出する第1速度算出部と、
前記目標経路を複数に区画した各区間の道路幅と前記摩擦係数に応じて第2速度を算出する第2速度算出部と、
前記第1速度と前記第2速度のうち最小の速度を選択して前記目標速度に設定する目標速度設定部と、を含むことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記目標速度算出部は、
前記道路幅を制限している物体の高さに応じて前記第2速度を補正することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記目標速度算出部は、
前記道路幅を制限している物体の高さが高くなるに応じて前記第2速度を低下させる補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両と路側物との間隔に従って車両の前後運動を制御する技術に関する発明が知られている(下記特許文献1)。特許文献1に記載された走行制御装置は、車両の進行方向前方の側方物体若しくは道路端と前記車両との間のクリアランス又は前記車両の進行方向前方の車線幅が小さいとき、前記加速度が、前記クリアランス又は前記車線幅が大きいときに比して、低く設定される手段を含む装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術では、加速度または減速度を制限することができるが、目標車速そのものを一意に決めることができない。また、自動運転や運転支援における将来の目標速度プロファイルを決めることができない。
【0005】
これらの課題を解決するためには、前方の道路状況を判断できる範囲がリアルタイムで把握できる前提で、状況に応じて具体的に目標車速を決める手段が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の車両制御装置は、車両の目標速度を算出する目標速度算出部を備えた車両制御装置であって、前記目標速度算出部は、前記車両の外界センサのセンシング範囲の外縁までの前記車両の目標経路の経路長と路面の摩擦係数とを用いて前記外縁の手前の停止位置で前記車両を停車可能な第1速度を算出する第1速度算出部と、前記目標経路を複数に区画した各区間の道路幅と前記摩擦係数に応じて第2速度を算出する第2速度算出部と、前記第1速度と前記第2速度のうち最小の速度を選択して前記目標速度に設定する目標速度設定部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乗員に恐怖感や違和感を与えない車速を設定することができ、乗員の安心感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る車両制御装置の一実施形態を示す車両の概略図。
【
図4】
図3に示す目標速度算出部の処理の一例を示すフロー図。
【
図5】
図4に示すセンシング範囲を特定する処理を説明する車両の平面図。
【
図6】
図4に示すセンシング範囲を特定する処理を説明する車両の平面図。
【
図7】
図4に示すセンシング範囲を特定する処理を説明する車両の平面図。
【
図8】
図4に示すセンシング範囲を特定する処理を説明する車両の平面図。
【
図9】
図4に示すセンシング範囲を特定する処理を説明する車両の平面図。
【
図10】
図4に示す目標経路を取得する処理から目標速度を出力する処理の説明図。
【
図11】
図4に示す各々の第2速度を算出する処理を説明する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明に係る車両制御装置の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る車両制御装置の一実施形態を示す車両10の概略図である。
図2は、
図1に示す車両10のブロック図である。
【0010】
車両10は、自動運転機能または運転支援機能を有する自動車である。車両10は、たとえば、動力源11と、車輪12と、ステアリングホイール13と、パワーステアリング14と、シフトレバー15と、アクセルペダル16と、ブレーキペダル17と、ブレーキキャリパ18と、ハイドロリックユニット19と、を備えている。また、車両10は、たとえば、外界センサ20と、車両センサ30と、通信ユニット40と、GNSS受信機50と、地図データ60と、車両制御装置100と、を備えている。以下、車両10の各部の構成を詳細に説明する。
【0011】
動力源11は、たとえば、エンジンとモータの少なくとも一方であり、トランスミッションを介して車輪12を駆動させる。車輪12は、車両10の接地部であるタイヤを有している。車両10の接地部である車輪12のタイヤと、車両10が走行する路面との間の摩擦係数μは、たとえば、路面の状態や気象条件によって変化する。ステアリングホイール13は、手動運転時に車両10の乗員であるドライバーによって操作される。パワーステアリング14は、ステアリングホイール13の操作に応じた操舵力を発生させる。
【0012】
シフトレバー15は、たとえば、車両10の手動運転時に、ドライバーよって、「D」、「N」、「P」、「R」など、トランスミッションの状態を切り換える操作に用いられる。アクセルペダル16は、たとえば、車両10の手動運転時に、ドライバーが操作量を増減させることで、動力源11から出力される駆動力を増減させる。ブレーキペダル17は、たとえば、車両10の手動運転時に、ドライバーが操作量を増減させることで、ハイドロリックユニット19を介してブレーキキャリパ18が発生する制動力を増減させる。
【0013】
外界センサ20は、車両10の周囲の外界情報を取得するセンサである。外界センサ20は、たとえば、単眼カメラ21と、ステレオカメラ22と、ミリ波レーダー23と、レーザーレーダー24と、ソナーセンサ25とを備えている。外界センサ20は、これらのセンサにより、外界情報として、たとえば、車両10から物体までの距離および方向や、車両10に対する物体の相対速度などを取得する。
【0014】
なお、外界センサ20は、少なくともステレオカメラ22を備えていれば、後述する車両制御装置100の目標速度算出部126による目標速度Vtgtの算出を行うことが可能である。すなわち、外界センサ20は、たとえば、単眼カメラ21、ミリ波レーダー23、レーザーレーダー24、または、ソナーセンサ25のいずれか一つ以上を有しなくてもよい。
【0015】
車両センサ30は、車両10の速度を含む走行情報を取得するセンサである。車両センサ30は、たとえば、操舵角センサ31と、ジャイロセンサ32と、加速度センサ33と、速度センサ34とを含む。すなわち、車両センサ30は、たとえば、これらのセンサによって、操舵角や、ロール・ピッチ・ヨーの角速度や、車両10の前後方向の加速度および減速度や、車両10の横方向の横加速度や、車両10の速度などを含む、車両10の走行情報を取得する。なお、速度センサ34としては、たとえば、車輪速センサを用いることができる。
【0016】
通信ユニット40は、たとえば、無線通信回線およびインターネット回線を介して、道路管理者などの外部のサーバに接続され、道路情報、気象情報、路面状況などの各種の情報を取得して、車両制御装置100へ入力する。また、通信ユニット40は、たとえば、車両制御装置100から出力された情報を、無線通信回線を介して外部へ送信することができる。また、通信ユニット40は、たとえば、路上や車両10の外部のインフラストラクチャに設置されたセンサによって検出された情報を受信して、車両制御装置100に入力することも可能である。
【0017】
GNSS受信機50は、複数の測位衛星からの電波を受信して車両10の位置情報を取得して、車両制御装置100へ入力する。地図データ60は、たとえば、車両10に搭載された記憶装置に記憶され、車両10の位置情報に基づく地図情報を車両制御装置100へ入力する。なお、地図データ60は、必ずしも車両10に搭載された記憶装置に記憶されていなくてもよく、たとえば、通信ユニット40を介して外部から受信してもよい。
【0018】
車両制御装置100は、たとえば、中央処理装置(CPU)、メモリ、プログラム、タイマー、入出力部などを備えたマイクロコンピュータによって構成された電子制御装置である。車両制御装置100は、たとえば、外界認識部110と、走行計画部120と、走行制御部130と、ブレーキ制御部140と、操舵制御部150と、駆動力制御部160と、を備えている。これら車両制御装置100の各部は、それぞれ、マイクロコンピュータによって構成されていてもよく、二以上が一つのマイクロコンピュータに統合されていてもよい。また、車両制御装置100の各部は、たとえば、CPUによってプログラムを実行することで実現される車両制御装置100の機能を表している場合もある。
【0019】
外界認識部110は、たとえば、センサフュージョンコントローラであり、外界センサ20から外界情報を取得して物体を認識する。外界認識部110は、たとえば、単眼カメラ21、ステレオカメラ22、ミリ波レーダー23、レーザーレーダー24、ソナーセンサ25など、外界センサ20の複数のセンサから取得した情報の統合や取捨選択を行って車両10の自動運転に必要な信頼性を確保する。また、外界認識部110は、外界センサ20から取得した外界情報に基づく物体の認識結果を、適切なフォーマットで走行計画部120へ出力する。
【0020】
図3は、
図2に示す走行計画部120のブロック図である。走行計画部120は、たとえば、車両センサ30から車両10の速度を含む走行情報を取得し、外界認識部110から物体の認識結果を取得して、車両10の走行計画を生成する。走行計画部120は、たとえば、自己位置推定部121と、目標経路算出部122と、車線維持走行部123と、障害回避部124と、摩擦係数取得部125と、目標速度算出部126と、道路幅算出部128と、を有している。なお、走行計画部120は、少なくとも目標速度算出部126を有していれば、後述する目標速度V
tgtの算出を行うことが可能である。
【0021】
自己位置推定部121は、たとえば、GNSS受信機50から入力された車両10の位置情報と、地図データ60から取得した車両10の周囲の地図情報に基づいて、車両10の位置を推定し、推定した車両10の位置を目標速度算出部126へ出力する。また、自己位置推定部121は、GNSS受信機50から入力された車両10の位置情報と、地図データ60から取得した地図情報に加えて、車両センサ30の検出結果に基づいて車両10の位置を推定してもよい。
【0022】
目標経路算出部122は、たとえば、自己位置推定部121によって推定された車両10の位置と、車両10の乗員によって設定された車両10の目的地と、地図データ60から取得した地図情報とに基づいて、車両10の目標経路を算出する。
【0023】
車線維持走行部123は、たとえば、車両10の自動運転を行う場合に、車両10の運転者のステアリング操作を必要とすることなく、同一の車線を維持して車両10を走行させるための制御量を算出する。
【0024】
障害回避部124は、たとえば、外界認識部110の認識結果に基づいて、車両10の目標経路に存在する障害物を回避するための車両10の走行経路を算出する。自己位置推定部121、目標経路算出部122、車線維持走行部123、および障害回避部124の推定結果および算出結果は、たとえば、目標速度算出部126および走行制御部130へ出力される。
【0025】
摩擦係数取得部125は、たとえば、車両10の接地部であるタイヤと、車両10が走行する路面との間の摩擦係数μを取得する。摩擦係数取得部125による摩擦係数μの取得方法は、特に限定されない。摩擦係数取得部125は、摩擦係数μを、たとえば、タイヤのトレッドの振動挙動に基づいて推定したり、車両10の横加速度およびヨー角速度に基づいて推定したり、車輪12のスリップ角と車両10の横加速度から推定するなど、公知の方法によって取得することができる。摩擦係数取得部125は、取得した摩擦係数μを目標速度算出部126へ出力する。
【0026】
道路幅算出部128は、たとえば、
図11の各区間S
1~S
6において、
図12に例示されるように定義される値wを、外界認識部110から得られる障害物情報や車線情報に基づいて道路幅w
iとして算出する。
【0027】
図12は、値wの定義例を説明する図である。
図12(1)は、車両10が通過する左右の障害物200Lと200Rとの間の距離をwと定義し、
図12(2)は、車両10の中心線から左右の障害物200Lと200Rまでのそれぞれの距離のうち短い方をwとして定義する。そして、
図12(3)は、車両10の側面と左右の障害物200L、200Rとのそれぞれの距離のうち短い方をwとして定義し、
図12(4)は、車両10の側面から左右の障害物200L、200Rまでのそれぞれの距離を合計した大きさをwとして定義する。
【0028】
目標速度算出部126は、目標速度を一定値でなく動的に簡単な方法で算出し続ける機能を有する。目標速度算出部126は、たとえば、第1速度算出部126aと、第2速度算出部126bと、目標速度設定部126fと、を含んでいる。また、目標速度算出部126は、たとえば、法定速度取得部126c、設定速度取得部126d、または、上限速度設定部126eの少なくとも一つを含むことができる。
図3に示す目標速度算出部126の各部は、たとえば、CPUによってプログラムを実行することによって実現される目標速度算出部126の各機能を示している。
【0029】
図4は、
図3に示す目標速度算出部126の処理の一例を示すフロー図である。
図5から
図9は、
図4に示すセンシング範囲を特定する処理P1を説明する車両10の平面図である。また、
図10は、
図4に示す目標経路を取得する処理P2から目標速度V
tgtを出力する処理P8までを説明する平面図である。
図11は、
図4に示す各々の第2速度V
2iを算出する処理P5を説明する平面図である。
【0030】
目標速度算出部126は、
図4に示す処理を開始すると、まず、外界センサ20のセンシング範囲を特定する処理P1を実行する。この処理P1において、第1速度算出部126aは、たとえば、以下に説明するように、外界センサ20のセンシング範囲SRを特定する。なお、外界センサ20のセンシング範囲SRを特定する機能は、たとえば、センシング範囲特定部として、第1速度算出部126aから独立させて設けることも可能である。この場合、センシング範囲特定部は、たとえば、目標速度算出部126の内部、走行計画部120の内部、または、外界認識部110の内部に設けることができる。
【0031】
第1速度算出部126aは、たとえば、単眼カメラ21、ステレオカメラ22、ミリ波レーダー23、レーザーレーダー24、ソナーセンサ25などの仕様に基づく物体の検出可能範囲を、センシング範囲SRとして特定する。このような外界センサ20の仕様に基づく物体の検出可能範囲は、たとえば、あらかじめ走行計画部120のメモリに記憶されている。
【0032】
具体的には、第1速度算出部126aは、たとえば、
図5および
図6に示すように、車両10に搭載された外界センサ20を構成する各センサの検出可能距離D、各センサの画角などの検出可能角度α、および重複する検出可能範囲に基づいて、センシング範囲SRを特定する。
【0033】
また、第1速度算出部126aは、たとえば、
図7に示すように、気象条件に応じて、単眼カメラ21またはステレオカメラ22の縮小または拡大されたセンシング範囲SRを特定してもよい。この場合、第1速度算出部126aは、たとえば、ワイパースイッチの状態(弱、中、強)や、単眼カメラ21やステレオカメラ22の画像、または、通信ユニット40を介して受信する気象情報に基づいて、降雨量、降雪量、または霧の濃度を取得することができる。
【0034】
より具体的には、第1速度算出部126aは、たとえば、降雨量、降雪量、霧の濃度などの気象条件にしきい値を設定し、しきい値を超えた場合に、その前までのセンシング範囲SRよりも縮小されたセンシング範囲SRを特定する。
図7に示す例において、第1速度算出部126aは、降雨量、降雪量、または霧の濃度が第1のしきい値を超えるまでは、最も拡大された検出可能距離D
0のセンシング範囲SR
0を特定する。
【0035】
また、
図7に示す例において、第1速度算出部126aは、降雨量、降雪量、または霧の濃度が第1のしきい値を超え、かつ第2のしきい値を超えるまでは、その前までのセンシング範囲SR
0よりも縮小された検出可能距離D
1のセンシング範囲SR
1を特定する。さらに、第1速度算出部126aは、降雨量、降雪量、または霧の濃度が第1のしきい値を超え、かつ第2のしきい値を超えると、その前までのセンシング範囲SR
1よりも縮小された検出可能距離D
2のセンシング範囲SR
2を特定する。
【0036】
また、
図8に示す例のように、夜間や照明が設置されていないトンネル内など、明るさが所定のしきい値を下回ると、第1速度算出部126aは、その前までのセンシング範囲SR
0よりも縮小された前照灯の照射範囲に対応するセンシング範囲SR
3を特定する。また、
図9に示す例のように、たとえば、対向車201やガードレール200、または建造物等の障害物200によって外界センサ20のセンシング範囲SRに死角BAが生じている場合には、目標速度算出部126は、その死角BAが除外されたセンシング範囲SRを特定する。
【0037】
次に、第1速度算出部126aは、たとえば、
図4および
図10に示すように、目標経路TRを取得する処理P2を実行する。この目標経路TRは、前述のように、たとえば、目標経路算出部122によって算出されて目標速度算出部126へ入力され、第1速度算出部126aによって取得される。
【0038】
次に、第1速度算出部126aは、たとえば、
図4および
図10に示すように、センシング範囲SRの外縁SR
pまでの目標経路TRの経路長l
1を算出する処理P3を実行する。この処理P3において、第1速度算出部126aは、たとえば、前述の処理P1で特定したセンシング範囲SRと、前述の処理P2で取得した目標経路TRとに基づいて、センシング範囲SRの外縁SR
pまでの車両10の目標経路TRの経路長l
1を算出する。
【0039】
次に、第1速度算出部126aは、たとえば、
図4に示すように、第1速度V
1を算出する処理P4を実行する。この処理P4において、第1速度算出部126aは、たとえば、前述の処理P3で算出したセンシング範囲SRの外縁SR
pまでの目標経路TRの経路長l
1と摩擦係数取得部125から取得した路面の摩擦係数μを用いて、車両10の上限減速度g
1を算出する。この上限減速度g
1は、たとえば、車両10が走行する路面の摩擦係数μに基づいて算出され、さらに安全率が乗じられた、車両10の緊急停止時の上限減速度である。
【0040】
そして、第1速度算出部126aは、たとえば、
図14に示す式(1)により、センシング範囲SRの外縁SR
pの手前の停止位置において車両10を停車可能な、第1速度V
1を算出する。この第1速度V
1は、目標経路TRに沿って走行する車両10が、上限減速度g
1を超えない減速度で、外界センサ20のセンシング範囲SRの外縁SR
pよりも手前の停止位置で停車可能な速度である。
【0041】
次に、第2速度算出部126bは、目標経路TRを複数に区画した各区間S
1,S
2,S
3,・・・,S
iの道路幅w
1,w
2,w
3,・・・,w
iと車両10が走行する路面の摩擦係数μとに応じて第2速度V
2を算出する。第2速度算出部126bは、たとえば、
図15に示す式(2)を用いて、センシング範囲SRに含まれる目標経路TRの各々の区間S
1,S
2,S
3,・・・,S
iを走行する時の車両10の第2速度V
21,V
22,V
23,・・・,V
2iを算出する。なお、式(2)において、l
21,l
22,l
23,・・・,l
2iは、
図11に示すように、車両10から各々の分割区間の進入位置までの経路長である。
【0042】
図15に示す式(2)の各々の第2速度V
21,V
22,V
23,・・・,V
2iは、
図11に示すように、各々の区間S
1,S
2,S
3,...,S
iの進入位置までに上限減速度g
2で減速することができ、かつ、各々の区間の道路幅に応じ乗員が安心感を持って通過できる速度である。すなわち、第2速度算出部126bは、たとえば、上記の各区間S
1,S
2,S
3,・・・,S
iまでに、所定の上限減速度g
2を超えない減速度で車両10が減速可能な第2速度V
21,V
22,V
23,・・・,V
2iを算出する。道路幅は、車両10が通過可能な路面の幅であり、電柱や路上駐車の車両等の存在により変化する。例えば、路上駐車の車両により道路幅w
iが狭くなっている区間の第2速度V
2は、乗員が安心感を持って通過できるように他の区間の第2速度V
2よりも低い速度となる。
【0043】
図16に示す式(3)のf(w
i)は、f(μ)は各分割区間S
iにおける道路幅w
iから通過可能車速u
iを一意に求めることができる関数である。道路幅w
iが狭くなるに応じて通過可能車速u
iも低くなるように設定されている。道路幅w
iは、道路幅算出部128で得られたものを用いる。式(3)の通過可能車速u
iは、各地点での通行可能な道路幅w
iより一意に決まる関数f(w
i)と、摩擦係数によって決まる倍率f(μ)により決まる。道路幅w
iは道路幅算出部128より与えられ、摩擦係数μは摩擦係数取得部125より与えられる。
【0044】
図13は、関数f(w
i)の具体例を示す図である。
関数f(w
i)は、たとえば
図13(1)に示すように、道路幅w
iに比例するものであっても良いし、
図13(2)のように道路幅w
iから2次元テーブル引きで求めるものであっても良い。f(μ)も同様に摩擦係数μに比例するものであっても良いし、摩擦係数μから2次元テーブル引きで求めるものであっても良い。
【0045】
次に、第2速度算出部126bは、
図4に示すように、最小の第2速度V
2を選定する処理P6を実行する。この処理P6において、第2速度算出部126bは、たとえば、
図17に示す式(4)を用いて、算出した複数の第2速度V
21,V
22,V
23,・・・,V
2iのうち、最小の速度を第2速度V
2に設定する。これにより、第2速度V
2を、センシング範囲SRに含まれる目標経路TRの全体を車両10がトレース可能な速度に設定することができる。
【0046】
第2速度算出部126bは、目標経路TRの道路幅を制限している障害物200等の物体の高さ情報に応じて第2速度V2を補正する。物体の高さ情報は、外界センサ20によって検出した情報を用いることができる。例えば、道路幅を制限している物体がラインマーカのような高さが低い物体である場合には第2速度V2の補正はしないが、大型トラックや高い壁のような高さが高い物体である場合には、第2速度V2に速度を低下させる係数をかけて補正する。第2速度算出部126bは、物体の高さが高くなるに応じて漸次第2速度V2を低下させる補正を行ってもよい。
【0047】
次に、目標速度設定部126fは、目標速度V
tgtを算出する処理P7を実行する。この処理P7において、目標速度設定部126fは、たとえば、
図18に示す式(5)を用いて、第1速度V
1と第2速度V
2のうち、最小の速度を選択して目標速度V
tgtに設定する。これにより、目標速度V
tgtを、外界センサ20のセンシング範囲SRの外縁SR
pの手前の停止位置で車両10を停車可能で、かつ、乗員が道路幅に対して不安を感じない速度に設定することができる。
【0048】
法定速度取得部126cは、目標経路TRの法定速度を取得して、目標速度設定部126fに提供する。目標速度設定部126fは、第1速度V1と第2速度V2と法定速度のうち、最小の速度を選択して目標速度Vtgtに設定するので、目標速度が法定速度を超過した値に設定されるのを防止することができる。なお、法定速度取得部126cは、目標経路TRの法定速度を、たとえば、地図データ60から取得してもよく、外界認識部110による道路標識の認識結果に基づいて取得してもよい。
【0049】
設定速度取得部126dは、車両10の乗員が設定する設定速度を取得して、目標速度設定部126fに提供する。目標速度設定部126fは、第1速度V1と第2速度V2と設定速度のうち、最小の速度を選択して目標速度Vtgtに設定するので、目標速度が設定速度を超過した値に設定されるのを防止することができる。なお、設定速度取得部126dは、車両10の乗員による設定速度を、たとえば、車両10に搭載されたタッチパネルなどの入力装置から取得してもよく、車両10に搭載されたマイクと乗員の音声を認識する音声認識部によって取得してもよい。
【0050】
上限速度設定部126eは、目標経路TRの道路幅に応じて上限速度を設定する。この場合、目標速度設定部126fは、第1速度V1と第2速度V2と上限速度のうち、最小の速度を選択して目標速度Vtgtに設定するので、目標速度が上限速度を超過した値に設定されるのを防止することができ、車両10の安全性を向上させることができる。なお、上限速度設定部126eは、目標経路TRの道路幅を、たとえば、地図データ60から取得してもよく、外界認識部110による道路標識の認識結果に基づいて取得してもよい。
【0051】
次に、走行計画部120は、前述のように目標速度算出部126によって算出および設定された目標速度V
tgtを、たとえば、
図2に示す走行制御部130へ出力する処理P8を実行する。ここで、走行計画部120は、たとえば、目標速度V
tgtとともに目標経路TRを走行制御部130へ出力する。走行制御部130は、走行計画部120から入力された目標速度V
tgtと目標経路TRに基づいて、ブレーキ制御部140、操舵制御部150、および駆動力制御部160へ制御指令を出力する。
【0052】
ブレーキ制御部140、操舵制御部150、および駆動力制御部160は、それぞれ、走行制御部130から入力された制御指令に基づいて、ハイドロリックユニット19およびブレーキキャリパ18、パワーステアリング14、ならびに動力源11を制御する。これにより、車両10の自動運転が可能になる。
【0053】
以下、本実施形態の車両制御装置100の作用を説明する。
本実施形態の車両制御装置100は、車両10の目標速度Vtgtを算出する目標速度算出部126を備えている。目標速度算出部126は、第1速度算出部126aと、第2速度算出部126bと、目標速度設定部126fとを含んでいる。第1速度算出部126aは、車両10の外界センサ20のセンシング範囲SRの外縁SRpまでの車両10の目標経路TRの経路長l1と路面の摩擦係数μとを用いて、外縁SRpの手前の停止位置で車両10を停車可能な第1速度V1を算出する。第2速度算出部126bは、目標経路中の各区間の道路幅w1,w2,w3,・・・,wiと摩擦係数μとを用いて、乗員が道路幅wに対して不安を感じない第2速度V2を算出する。そして、目標速度設定部126fは、第1速度V1と第2速度V2のうち最小の速度を選択して目標速度Vtgtに設定する。
【0054】
したがって、車両制御装置100は、自動運転中に常に適切な目標速度が得られ、センシング範囲SRに含まれる目標経路中に道路幅が狭小な箇所があっても、乗員に不安を感じさせずに走行させることができる。さらに、外界センサ20のセンシング範囲SRの外に障害が存在する場合でも、車両10を障害の手前で確実に停車させることができる。車両10が目標経路TRを走行中に、外界センサ20によって検出できなかった障害による安全性の低下を抑制しつつ乗員に不安を感じさせない走行が可能な車両制御装置100を提供することができる。
【0055】
本実施形態の車両制御装置100によれば、法的な制限速度や一定の目標値とは別に、「先が見えている範囲で何かあっても止まり切れる」「見えている範囲内の全区間の道路幅を元に違和感・恐怖感の無い速度で通過する」という2つの指標をもとに、常に一意に求まる適正な目標速度を実用的に求めることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 車両、20 外界センサ、100 車両制御装置、110 外界認識部、120 走行計画部、122 目標経路算出部、125 摩擦係数取得部、126 目標速度算出部、126a 第1速度算出部、126b 第2速度算出部、126c 法定速度取得部、126d 設定速度取得部、126e 上限速度設定部、126f 目標速度設定部、128 道路幅算出部、130 走行制御部、g1 上限減速度、g2 上限減速度、l1 経路長、Vtgt 目標速度、SR センシング範囲、SRp 外縁、TR 目標経路、V1 第1速度、V2 第2速度、μ 摩擦係数