(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040866
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】圧入治具、及び圧入方法
(51)【国際特許分類】
B25B 27/08 20060101AFI20240318BHJP
B23P 19/02 20060101ALI20240318BHJP
B23P 11/02 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B25B27/08
B23P19/02 B
B23P11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145497
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】星尾 光紀
(72)【発明者】
【氏名】本山 康弘
【テーマコード(参考)】
3C030
3C031
【Fターム(参考)】
3C030BB02
3C031DD22
(57)【要約】
【課題】フランジ部を有する位置決めピンの突出部の変形を抑制することができる。
【解決手段】棒状のピン本体部及びピン本体部の両端の間からピン本体部の径方向外側に沿って延びるフランジ部を含む位置決めピンを、基盤に形成されたピン孔に圧入するための圧入治具は、棒状のガイドアダプタと、ガイドアダプタを貫通させるための貫通孔が形成されているハウジングと、を備え、フランジ部からピン本体部の一方側を突出部とすると、ガイドアダプタには、ガイドアダプタの先端面からピン本体部の突出部よりも長く延び、ピン本体部の突出部の外径よりも大きい孔部が形成され、孔部の入口は、フランジ部のフランジ径よりも小さい孔径を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状のピン本体部及び前記ピン本体部の両端の間から前記ピン本体部の径方向外側に沿って延びるフランジ部を含む位置決めピンを、基盤に形成されたピン孔に圧入するための圧入治具であって、
棒状のガイドアダプタと、
前記ガイドアダプタを貫通させるための貫通孔が形成されているハウジングと、を備え、
前記フランジ部から前記ピン本体部の一方側を突出部とすると、
前記ガイドアダプタには、前記ガイドアダプタの先端面から前記ピン本体部の前記突出部よりも長く延び、前記ピン本体部の前記突出部の外径よりも大きい孔部が形成され、
前記孔部の入口は、前記フランジ部のフランジ径よりも小さい孔径を有する、
圧入治具。
【請求項2】
前記ガイドアダプタの外径は、前記貫通孔の内径と略同一である、
請求項1に記載の圧入治具。
【請求項3】
前記ガイドアダプタには、前記先端面から前記先端面の反対側の反対面まで延びる延在孔が形成されており、
前記延在孔は、前記孔部を含んでいる、
請求項1又は2に記載の圧入治具。
【請求項4】
前記ガイドアダプタの前記先端面は、内側部と、前記内側部よりも前記ガイドアダプタの径方向外側に位置する外側部と、を含み、
前記内側部は、前記外側部よりも前記先端面の反対側の反対面から離れており、
前記孔部の前記入口は、前記内側部に形成されている、
請求項1又は2に記載の圧入治具。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記貫通孔の開口の一方である一方側開口が形成され前記基盤側に向く下面と、前記貫通孔の開口の他方である他方側開口が形成され前記基盤側とは反対側に向く上面と、前記下面と前記上面とを接続する外周面と、を含み、
前記下面は、前記外周面とともに切り欠かれることで形成される凹部を含み、
前記一方側開口は、前記凹部の凹面に位置している、
請求項1又は2に記載の圧入治具。
【請求項6】
前記基盤に形成されている挿入孔に挿入可能な位置合わせ部を含む2つの突出部材をさらに含み、
前記ハウジングには、前記位置合わせ部を除く前記突出部材の少なくとも一部が圧入される2つの圧入孔が形成されている、
請求項1又は2に記載の圧入治具。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記貫通孔が形成されている本体部と、前記本体部から前記貫通孔が延びる方向とは交差する方向に沿って突出し、前記圧入孔が形成されているアーム部と、を含み、
前記貫通孔が延びる方向において、前記本体部は前記アーム部よりも厚い、
請求項6に記載の圧入治具。
【請求項8】
前記ガイドアダプタは、前記フランジ部よりも硬い、
請求項1又は2に記載の圧入治具。
【請求項9】
前記基盤は、前記ピン本体部よりも硬い、
請求項1又は2に記載の圧入治具。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の圧入治具を用いて、棒状のピン本体部及び前記ピン本体部の両端の間から前記ピン本体部の径方向外側に沿って延びるフランジ部を含む位置決めピンを、基盤に形成されたピン孔に圧入する圧入方法であって、
前記ガイドアダプタの前記孔部に前記ピン本体部の前記突出部が挿入された状態で、前記ガイドアダプタに前記位置決めピンを保持させるステップと、
前記位置決めピンを保持している前記ガイドアダプタを、前記貫通孔を介して前記ハウジングに貫通させるステップと、
前記ピン本体部のうち前記フランジ部を挟んで前記突出部とは反対側を挿入部とすると、前記ハウジングに前記ガイドアダプタを貫通させた後に、前記ピン孔に前記ピン本体部の前記挿入部を挿入するステップと、
前記ガイドアダプタの前記先端面とは反対側の反対面をハンマーで叩くステップと、を備える、
圧入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧入治具及び圧入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フランジ部を有する位置決めピンを基盤に取り付ける際には、位置決めピンの一部を基盤に形成されているピン孔に挿入させた状態で基盤から突出している位置決めピンの別の一部(突出部と記載する)を、例えばハンマーによって叩くことで、位置決めピンを基盤のピン孔に圧入していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、位置決めピンの突出部が直接的に加圧されているので、位置決めピンの突出部が変形してしまう場合がある。これに対して、特許文献1には、ブッシュ圧入装置を用いて、ブッシュ(位置決めピン)をワーク(基盤)の孔内に圧入することが開示されている。しかしながら、特許文献1に記載のブッシュ圧入装置は、ブッシュを縮小変形させながらワークの孔内に圧入させるため、ブッシュがOリングのような弾性体である場合には適用可能であるが、位置決めピンに対して適用することは難しい。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、フランジ部を有する位置決めピンの突出部の変形を抑制することができる圧入治具、及び圧入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る圧入治具は、棒状のピン本体部及び前記ピン本体部の両端の間から前記ピン本体部の径方向外側に沿って延びるフランジ部を含む位置決めピンを、基盤に形成されたピン孔に圧入するための圧入治具であって、棒状のガイドアダプタと、前記ガイドアダプタを貫通させるための貫通孔が形成されているハウジングと、を備え、前記フランジ部から前記ピン本体部の一方側を突出部とすると、前記ガイドアダプタには、前記ガイドアダプタの先端面から前記ピン本体部の前記突出部よりも長く延び、前記ピン本体部の前記突出部の外径よりも大きい孔部が形成され、前記孔部の入口は、前記フランジ部のフランジ径よりも小さい孔径を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の圧入治具によれば、フランジ部を有する位置決めピンの突出部の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】一実施形態に係るガイドアダプタをガイドアダプタの延在方向に沿って切断した断面図である。
【
図5】一実施形態に係るハウジングを貫通孔の延在方向に沿って切断した断面図である。
【
図6A】一実施形態に係る圧入治具の作用・効果を説明するための図である。
【
図7】一実施形態に係る圧入方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態による圧入治具及び圧入方法について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
<基盤>
図1は、基盤100の構成の一例を示す図である。基盤100は、例えば、航空機に搭載される燃焼器を収容する燃焼器ケースである。
図1に例示する形態では、基盤100は、円筒形状を有しており、基盤本体部102と、基盤本体部102に接続され開口106を画定する端面108を有する基盤フランジ部104と、を含む。基盤フランジ部104には、端面108から端面108の反対側の面まで延びる複数のピン孔110が形成されている。このピン孔110には、後述する位置決めピン200が圧入される。尚、基盤100に形成されるピン孔110は、
図1に例示する形態に限定されない。例えば、ピン孔110は、基盤本体部102の内周面から外周面に延びる孔であってもよい。また、本開示は、基盤100を燃焼器ケースに限定するものではない。
【0011】
<位置決めピン>
図2は、位置決めピン200の構成の一例を示す図である。
図2に例示するように、位置決めピン200は、棒状のピン本体部202(ピン心棒)と、ピン本体部202の両端202a、202bの間からピン本体部202の径方向外側に沿って延びるフランジ部204と、を含む。ピン本体部202の径方向とは、ピン本体部202の軸線202Oを中心とする方向であって、「ピン本体部202の径方向外側に沿って延びる」とは軸線202Oから離れることを意味する。
【0012】
ピン本体部202は、フランジ部204よりもピン本体部202の一端202a側に位置する突出部206と、フランジ部204を挟んで突出部206とは反対側に位置する挿入部208と、を含む。
図2に例示する形態では、ピン本体部202の軸線202Oが延びる方向(軸線202Oの延在方向)において、突出部206及び挿入部208のそれぞれは互いに同一の長さとなっている。本開示では、軸線202Oの延在方向における突出部206の長さをL1、ピン本体部202の径方向における突出部206の外径をL2、フランジ部204のフランジ径をL3とする。フランジ部204のフランジ径L3は、突出部206の外径L2より大きい。
【0013】
図2に例示する形態では、フランジ部204は、ピン本体部202の周方向の全体に亘って設けられている。フランジ部204は、軸線202Oの延在方向におけるピン本体部202の中央に位置している。尚、フランジ部204の構成は、
図2に例示する形態に限定されない。例えば、幾つかの実施形態では、フランジ部204は、ピン本体部202の周方向の一部に亘って設けられている。幾つかの実施形態では、フランジ部204は、軸線202Oの延在方向において、ピン本体部202の一端202a側又は他端202b側の何れか一方側に位置している。
【0014】
<圧入治具>
(構成)
本開示の一実施形態に係る圧入治具1の構成について説明する。圧入治具1は、位置決めピン200を基盤100に形成されたピン孔110に圧入するための治具である。一実施形態では、基盤100は、ピン本体部202よりも硬い。例えば、基盤100及びピン本体部202のそれぞれを構成する材料は金属であって、基盤100はピン本体部202よりもビッカース硬さが大きい。
【0015】
図3は、一実施形態に係る圧入治具1の斜視図である。
図3に例示するように、圧入治具1は、棒状のガイドアダプタ2と、ガイドアダプタ2を貫通させるための貫通孔3が形成されているハウジング4と、を含む。
【0016】
ガイドアダプタ2について説明する。
図4は、一実施形態に係るガイドアダプタ2をガイドアダプタ2の延在方向に沿って切断した断面図である。一実施形態では、ガイドアダプタ2の外径L4は、貫通孔3の内径と略同一である。ガイドアダプタ2には、ガイドアダプタ2の先端面6からピン本体部202の突出部206(突出部206の長さL1)よりも長く延びる孔部8が形成されている。孔部8は、ピン本体部202の突出部206の外径L2よりも大きい内径を有する。孔部8の入口10は、フランジ部204のフランジ径L3よりも小さい孔径を有する。
【0017】
一実施形態では、ガイドアダプタ2は、フランジ部204よりも硬い。例えば、ガイドアダプタ2及びフランジ部204のそれぞれを構成する材料は金属であり、ガイドアダプタ2はフランジ部204よりもビッカース硬さが大きい。尚、フランジ部204及びピン本体部202のそれぞれは、互いに同じ金属(材料)で構成されてもよいし、互いに異なる金属(材料)で構成されてもよい。ガイドアダプタ2及び基盤100のそれぞれは、互いに同じ金属(材料)で構成されてもよいし、互いに異なる金属(材料)で構成されてもよい。
【0018】
一実施形態では、
図4に例示するように、ガイドアダプタ2の先端面6は、内側部6aと、内側部6aよりもガイドアダプタ2の径方向外側に位置する外側部6bと、を含む。ガイドアダプタ2の径方向とは、ガイドアダプタ2の軸線2Oを中心とする方向であって、内側部6aは外側部6bより軸線2Oに近接している。先端面6の内側部6aは、先端面6の外側部6bよりもガイドアダプタ2の先端面6の反対側の反対面12から離れている。つまり、先端面6の内側部6aは、先端面6の外側部6bよりも基盤100側に向かって突出している。そして、先端面6の内側部6aには、孔部8の入口10が形成されている。このように、孔部8は、ピン本体部202の突出部206が孔部8に挿入される際に(
図4参照)、ガイドアダプタ2の先端面6の内側部6aがフランジ部204と当接するように構成されている。
【0019】
一実施形態では、孔部8は、孔部8の内径がピン本体部202の突出部206の外径L2と同程度の大きさとなっており、位置決めピン200のガイドアダプタ2からの脱落を抑制可能に構成されている。不図示であるが、幾つかの実施形態では、ガイドアダプタ2の先端面6の内側部6aには、この内側部6aよりも高い粘性を有する膜を形成可能な油が塗布されている。このような構成によれば、ガイドアダプタ2に位置決めピン200を差し込み、位置決めピン200を下方に向けたとしても、位置決めピン200のガイドアダプタ2からの脱落を抑制できる。
【0020】
一実施形態では、
図4に例示するように、ガイドアダプタ2には、先端面6から反対面12まで延びる延在孔14が形成されている。そして、延在孔14は、孔部8を含んでいる。つまり、ガイドアダプタ2は、両端が開口された筒形状を有するように構成されている。
図4に例示する形態では、延在孔14は直線状に延びている。延在孔14は、孔部8よりも反対面12側に位置し、孔部8に接続されている接続孔部16を含む。
図4に例示する形態では、接続孔部16は孔部8よりも小さい内径を有している。接続孔部16は、ガイドアダプタ2の反対面12に形成される挿入口17を含んでいる。この挿入口17及び孔部8の入口10が延在孔14の開口である。
【0021】
ハウジング4について説明する。
図5は、一実施形態に係るハウジング4を貫通孔3の延在方向に沿って切断した断面図である。一実施形態では、ハウジング4は、基盤100側に向く下面24と、基盤100側とは反対側に向く上面26と、下面24と上面26とを接続する外周面28とを含んでいる。貫通孔3は、ハウジング4の下面24から上面26まで直線状に延びている。つまり、ハウジング4の下面24には、貫通孔3の開口の一方である一方側開口30が形成されている。ハウジング4の上面26には、貫通孔3の開口の他方である他方側開口32が形成されている。貫通孔3は、ガイドアダプタ2よりも短くなるように延びている。このため、ガイドアダプタ2は、貫通孔3を介してハウジング4を貫通している状態において、先端面6及び反対面12のうちの少なくとも一方は、ハウジング4外に露出している。
【0022】
一実施形態では、
図3及び
図5に例示するように、ハウジング4の下面24は、外周面28とともに切り欠かれることで形成される凹部50を含む。そして、貫通孔3の一方側開口30は、凹部50の凹面52(基盤100側に向く面)に位置している。
図3及び
図5に例示する形態では、凹部50は、後述する本体部20の下面38を本体部20の外周面28とともに切り欠くことで形成されている。
【0023】
以下では、貫通孔3が延びる方向を垂直方向D1と記載し、垂直方向D1の一方を下方とし、垂直方向D1の他方を上方とする。また、垂直方向D1と直交する方向のうちの1つの方向を水平方向D2と記載する。
【0024】
一実施形態では、
図3及び
図5に例示するように、ハウジング4は、貫通孔3が形成されている本体部20と、アーム部22と、を含む。本体部20及びアーム部22のそれぞれは、箱形状を有している。本体部20及びアーム部22のそれぞれは、一体的に形成されている。アーム部22は、本体部20から水平方向D2に沿って突出している。垂直方向D1において、本体部20はアーム部22よりも厚い。そして、本体部20の上面34は、アーム部22の上面36よりも垂直方向D1の上方に位置している。本体部20の下面38及びアーム部22の下面40は、垂直方向D1における位置が互いに同じであり、互いに面一となっている。
【0025】
図3及び
図5に例示する形態では、アーム部22は、第1アーム部22A(22)と、本体部20を挟んで第1アーム部22Aとは反対側に位置する第2アーム部22B(22)と、を含んでいる。第1アーム部22Aは、本体部20から水平方向D2の一方に向かって突出している。第2アーム部22Bは、本体部20から水平方向D2の他方に向かって突出している。尚、本開示は、2つのアーム部22を含むハウジング4に限定するものではなく、ハウジング4は1つのアーム部22を含んでいてもよいし、3つ以上のアーム部22を含んでいてもよい。
【0026】
一実施形態では、
図3及び
図5に例示するように、ハウジング4には、2つの圧入孔42が形成されている。
図3及び
図5に例示する形態では、2つの圧入孔42のうちの一方は、第1アーム部22Aの下面40から上面36まで延びている。2つの圧入孔42のうちの他方は、第2アーム部22Bの下面40から上面36まで延びている。
【0027】
一実施形態では、
図3及び
図5に例示するように、圧入治具1は、2つの突出部材44(ポジショナルヘッド)をさらに含む。突出部材44は、基盤100に形成されている挿入孔114に挿入可能な位置合わせ部45と、圧入孔42に圧入される圧入部46(位置合わせ部45を除く突出部材44の一部)と、を含む。位置合わせ部45は、挿入孔114の孔径よりも小さい外径を有しているのであれば、特に限定されない。圧入部46は、圧入孔42の孔径と同程度の外径を有している。突出部材44は、圧入部46が圧入孔42に圧入されることでハウジング4に脱着可能に取り付けられる。このため、圧入治具1は、挿入孔114に対応する位置合わせ部45を含む突出部材44(位置合わせに好適なポジショナルヘッド)に取り換えられるようになっている。
【0028】
(作用・効果)
一実施形態に係る圧入治具1の作用・効果について説明する。
図6Aは、一実施形態に係る圧入治具1の作用・効果を説明するための図である。
図6Bは、
図6Aの点線領域Rを拡大して示す図である。
【0029】
従来、フランジ部204を有する位置決めピン200は、挿入部208が基盤100のピン孔110に挿入され、且つ突出部206が基盤100のピン孔110から突出している状態で、突出部206が例えばハンマー150で叩かれることによって、基盤100のピン孔110に圧入されることが多い。しかしながら、このような圧入方法では、突出部206がハンマー150によって直接的に加圧されるため変形してしまう虞がある。
【0030】
上述の虞に対して、一実施形態によれば、
図6Bに参照されるように、位置決めピン200の突出部206をガイドアダプタ2の孔部8に挿入させつつ、ガイドアダプタ2の先端面6の内側部6aが位置決めピン200のフランジ部204に当接している状態で、位置決めピン200の挿入部208を基盤100のピン孔110に挿入することができる。そして、
図6Aに参照されるように、ハンマー150でガイドアダプタ2の反対面12を叩いて、ガイドアダプタ2でフランジ部204を押圧して位置決めピン200を基盤100のピン孔110に圧入することで、突出部206への直接的な加圧は回避される。よって、フランジ部204を有する位置決めピン200の突出部206の変形を抑制することができる。
【0031】
一実施形態によれば、ガイドアダプタ2の外径L4が貫通孔3の内径と略同一であるので、ガイドアダプタ2がハウジング4を貫通している際におけるガイドアダプタ2とハウジング4との間の隙間が小さい。よって、ハンマー150でガイドアダプタ2の反対面12を叩いて位置決めピン200を基盤100のピン孔110に圧入する際に、ガイドアダプタ2の傾きや揺れが抑制される。このため、位置決めピン200には垂直方向D1の下方に向かう荷重が付加され、位置決めピン200または基盤100の損傷を抑制することができる(いわゆる「かじり」の発生を防止することができる)。
【0032】
一実施形態によれば、ガイドアダプタ2に延在孔14が形成されることで、ガイドアダプタ2の孔部8に位置決めピン200の突出部206が挿入されているか否かを、反対面12に形成される延在孔14の挿入口17から視認することができる。また、ガイドアダプタ2の孔部8に位置決めピン200の突出部206が挿入されている際に、例えば、作業員の手などによって挿入口17を閉じて、延在孔14内の気圧を外気圧より低くし、ガイドアダプタ2に位置決めピン200を保持させることができる。
【0033】
尚、一実施形態では、ガイドアダプタ2には孔部8を含む延在孔14が形成されていたが、本開示はこの形態に限定されない。ガイドアダプタ2には、突出部206を挿入させつつ、先端面6が位置決めピン200のフランジ部204に当接可能な孔部8だけが形成されてもよい。
【0034】
一実施形態によれば、ガイドアダプタ2の先端面6の内側部6aがフランジ部204と当接するので、ハンマー150でガイドアダプタ2の反対面12を叩いてフランジ部204を押圧する際に、位置決めピン200に対して効果的に荷重を付与することができる。
【0035】
ハウジング4の下面24が基盤100に接触している、又は基盤100に非常に接近している場合、ガイドアダプタ2の孔部8に挿入されている位置決めピン200を視認することは容易ではない。一実施形態によれば、窓として機能可能な凹部50が形成されることで、上述したような場合であっても、位置決めピン200を凹部50から視認することができる。
【0036】
一実施形態によれば、ハウジング4に取り付けられている2つの突出部材44の位置合わせ部45を基盤100の2つの挿入孔114のそれぞれに挿入することで、貫通孔3とピン孔110とを互いに同軸にさせる位置合わせを簡単に行うことができる。
【0037】
尚、一実施形態では、第1アーム部22A及び第2アーム部22Bのそれぞれに1つの圧入孔42が形成されていたが、本開示はこの形態に限定されない。圧入孔42は、本体部20に形成されてもよい。複数の圧入孔42が、第1アーム部22A又は第2アーム部22Bに形成されてもよい。
【0038】
本体部20が垂直方向D1に薄く設計されると、貫通孔3に挿入されているガイドアダプタ2が容易に傾斜する虞がある。一実施形態によれば、本体部20はアーム部22よりも垂直方向D1に厚く設計されるので、本体部20の厚みを確保し、ガイドアダプタ2の傾斜を抑制することができる。特に、ガイドアダプタ2の反対面12をハンマー150で叩く場合のガイドアダプタ2の傾斜を抑制できる。
【0039】
一実施形態によれば、ガイドアダプタ2はフランジ部204よりも硬いので、ハンマー150でガイドアダプタ2を叩いてフランジ部204を押圧する際に、フランジ部204に対する荷重の付与効率を高めることができる。
【0040】
一実施形態によれば、基盤100がピン本体部202よりも硬い場合であっても、圧入治具1を用いてフランジ部204を有する位置決めピン200を基盤100のピン孔110に圧入することで、位置決めピン200の突出部206への直接的な加圧は回避されるので、突出部206の変形を抑制することができる。
【0041】
ところで、一実施形態では、
図6Bに例示するように、孔部8は、位置決めピン200の突出部206が挿入された際に空隙部48が形成されるように、ガイドアダプタ2の先端面6から延びている。このような構成によれば、ハンマー150でガイドアダプタ2の反対面12を叩いた際に、突出部206への加圧を回避することができる。
【0042】
<圧入方法>
圧入治具1を用いて、位置決めピン200を基盤100のピン孔110に圧入する圧入方法について説明する。
図7は、一実施形態に係る圧入方法のフローチャートである。
【0043】
図7に例示するように、圧入方法は、保持ステップS3と、貫通ステップS4と、挿入ステップS5と、叩き込みステップS6と、を含む。
図7に例示する形態では、圧入方法は、準備ステップS1と、位置合わせステップS2と、をさらに含んでいる。
【0044】
準備ステップS1では、圧入治具1と位置決めピン200を準備する。ガイドアダプタ2がハウジング4を貫通している場合には、このガイドアダプタ2をハウジング4から抜き出す。
【0045】
位置合わせステップS2では、ハウジング4の貫通孔3と基盤100のピン孔110とが互いに同軸となるように位置合わせを行う。具体的には、ハウジング4に取り付けられている突出部材44の位置合わせ部45を基盤100の挿入孔114に挿入させることで位置合わせが行われる。幾つかの実施形態では、圧入方法は、位置合わせが行われてからハウジング4を基盤100に固定するステップをさらに含む。尚、位置合わせステップS2や後述する挿入ステップS5などは、凹部50から視認しながら実施されてもよい。
【0046】
保持ステップS3では、ガイドアダプタ2の孔部8にピン本体部202の突出部206が挿入された状態で、ガイドアダプタ2に位置決めピン200を保持させる。位置決めピン200の保持方法は、特に限定されない。例えば、位置決めピン200の保持方法は、孔部8と突出部206の径の大きさを互いに同程度とし、孔部8と突出部206との間に作用する摩擦力を用いてもよい。位置決めピン200の保持方法は、挿入口17を閉じて、延在孔14内の気圧と外気圧の差圧を用いてもよい。位置決めピン200の保持方法は、ガイドアダプタ2の先端面6の内側部6aに塗布された油の粘性を用いてもよい。
【0047】
貫通ステップS4では、位置決めピン200を保持しているガイドアダプタ2を、貫通孔3を介してハウジング4に貫通させる。具体的には、ガイドアダプタ2を他方側開口32から挿入し、先端面6及び反対面12の両方をハウジング4外に露出させる。
【0048】
挿入ステップS5では、ハウジング4にガイドアダプタ2を貫通させた後に、凹部50から位置決めピン200を視認しながら、ピン孔110に位置決めピン200の挿入部208を挿入する。
【0049】
叩き込みステップS6では、ガイドアダプタ2の反対面12をハンマー150で叩く。叩き込みステップS6の実施によって、ガイドアダプタ2を介してフランジ部204に垂直方向D1の下方への荷重が付加され、位置決めピン200が基盤100のピン孔110に圧入される。
【0050】
図7に例示して説明した圧入方法によれば、位置決めピン200の突出部206をガイドアダプタ2の孔部8に挿入させつつ、ガイドアダプタ2の先端面6が位置決めピン200のフランジ部204に当接している状態で、位置決めピン200の挿入部208が基盤100のピン孔110に挿入される。そして、ガイドアダプタ2の反対面12をハンマー150で叩いて、位置決めピン200を基盤100のピン孔110に圧入することで、突出部206への直接的な加圧は回避される。よって、フランジ部204を有する位置決めピン200の突出部206の変形を抑制することができる。
【0051】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0052】
[1]本開示に係る圧入治具(1)は、
棒状のピン本体部(202)及び前記ピン本体部の両端(202a、202b)の間から前記ピン本体部の径方向外側に沿って延びるフランジ部(204)を含む位置決めピン(200)を、基盤(100)に形成されたピン孔(110)に圧入するための圧入治具であって、
棒状のガイドアダプタ(2)と、
前記ガイドアダプタを貫通させるための貫通孔(3)が形成されているハウジング(4)と、を備え、
前記フランジ部から前記ピン本体部の一方側を突出部(206)とすると、
前記ガイドアダプタには、前記ガイドアダプタの先端面(6)から前記ピン本体部の前記突出部よりも長く延び、前記ピン本体部の前記突出部の外径(L2)よりも大きい孔部(8)が形成され、
前記孔部の入口(10)は、前記フランジ部のフランジ径(L3)よりも小さい孔径を有する。
【0053】
上記[1]に記載の構成によれば、位置決めピンの突出部をガイドアダプタの孔部に挿入させつつ、ガイドアダプタの先端面が位置決めピンのフランジ部に当接している状態で、位置決めピンを基盤のピン孔に挿入することができる。そして、ガイドアダプタでフランジ部を押圧して位置決めピンを基盤のピン孔に圧入することで、突出部への直接的な加圧は回避される。よって、フランジ部を有する位置決めピンの突出部の変形を抑制することができる。
【0054】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の方法において、
前記ガイドアダプタの外径(L4)は、前記貫通孔の内径と略同一である。
【0055】
上記[2]に記載の構成によれば、ガイドアダプタがハウジングを貫通している際におけるガイドアダプタとハウジングとの間の隙間を小さくし、ガイドアダプタの傾きや揺れを抑制する。このため、ガイドアダプタでフランジ部を押圧して位置決めピンを基盤のピン孔に圧入する際には、位置決めピンには貫通孔が延びる方向に沿った荷重が付加され、位置決めピンまたは基盤の損傷を抑制することができる。
【0056】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]に記載の構成において、
前記ガイドアダプタには、前記先端面から前記先端面の反対側の反対面(12)まで延びる延在孔(14)が形成されており、
前記延在孔は、前記孔部を含んでいる。
【0057】
上記[3]に記載の構成によれば、ガイドアダプタの孔部に位置決めピンの突出部が挿入されているか否かを、ガイドアダプタの反対面に形成される延在孔の開口から視認することができる。また、ガイドアダプタの孔部に位置決めピンの突出部が挿入されている際に、延在孔の開口を閉じて、延在孔内の気圧を外気圧より低くし、ガイドアダプタに位置決めピンを保持させることができる。
【0058】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、
前記ガイドアダプタの前記先端面は、内側部(6a)と、前記内側部よりも前記ガイドアダプタの径方向外側に位置する外側部(6b)と、を含み、
前記内側部は、前記外側部よりも前記先端面の反対側の反対面から離れており、
前記孔部の前記入口は、前記内側部に形成されている。
【0059】
上記[4]に記載の構成によれば、ガイドアダプタでフランジ部を押圧する際に、位置決めピンに対して効果的に荷重を付与することができる。
【0060】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]から[4]の何れか1つに記載の構成において、
前記ハウジングは、前記貫通孔の開口の一方である一方側開口(30)が形成され前記基盤側に向く下面(24)と、前記貫通孔の開口の他方である他方側開口(32)が形成され前記基盤側とは反対側に向く上面(26)と、前記下面と前記上面とを接続する外周面(28)と、を含み、
前記下面は、前記外周面とともに切り欠かれることで形成される凹部(50)を含み、
前記一方側開口は、前記凹部の凹面(52)に位置している。
【0061】
ハウジングの下面が基盤に接触している、又は基盤に非常に接近している場合、ガイドアダプタの孔部に挿入されている位置決めピンを視認することは容易ではない。上記[5]に記載の構成によれば、上述したような場合であっても、位置決めピンを凹部から視認することができる
【0062】
[6]幾つかの実施形態では、上記[1]から[5]の何れか1つに記載の構成において、
前記基盤に形成されている挿入孔(114)に挿入可能な位置合わせ部(45)を含む2つの突出部材(44)をさらに含み、
前記ハウジングには、前記位置合わせ部を除く前記突出部材の少なくとも一部(46)が圧入される2つの圧入孔(42)が形成されている。
【0063】
上記[6]に記載の構成によれば、ハウジングに圧入されている2つの突出部材の位置合わせ部を2つの挿入孔のそれぞれに挿入することで、貫通孔とピン孔とを互いに同軸にさせる位置合わせを簡単に行うことができる。
【0064】
[7]幾つかの実施形態では、上記[6]に記載の構成において、
前記ハウジングは、前記貫通孔が形成されている本体部(20)と、前記本体部から前記貫通孔が延びる方向とは交差する方向に沿って突出し、前記圧入孔が形成されているアーム部(22)と、を含み、
前記貫通孔が延びる方向(D1)において、前記本体部は前記アーム部よりも厚い。
【0065】
貫通孔が延びる方向において、本体部が薄く設計されると、貫通孔に挿入されているガイドアダプタが容易に傾斜する虞がある。上記[7]に記載の構成によれば、貫通孔が延びる方向における本体部の厚みを確保し、ガイドアダプタの傾斜を抑制することができる。
【0066】
[8]幾つかの実施形態では、上記[1]から[7]の何れか1つに記載の構成において、
前記ガイドアダプタは、前記フランジ部よりも硬い。
【0067】
上記[8]に記載の構成によれば、ガイドアダプタでフランジ部を押圧する際に、フランジ部に対する荷重の付与効率を高めることができる。
【0068】
[9]幾つかの実施形態では、上記[1]から[8]の何れか1つに記載の構成において、
前記基盤は、前記ピン本体部よりも硬い。
【0069】
上記[9]に記載の構成によれば、基盤がピン本体部よりも硬い場合において、フランジ部を有する位置決めピンの突出部の変形を抑制することができる。
【0070】
[10]本開示に係る圧入方法は、
上記[1]から[9]の何れか1つに記載の圧入治具を用いて、棒状のピン本体部及び前記ピン本体部の両端の間から前記ピン本体部の径方向外側に沿って延びるフランジ部を含む位置決めピンを、基盤に形成されたピン孔に圧入する圧入方法であって、
前記ガイドアダプタの前記孔部に前記ピン本体部の前記突出部が挿入された状態で、前記ガイドアダプタに前記位置決めピンを保持させるステップ(S3)と、
前記位置決めピンを保持している前記ガイドアダプタを、前記貫通孔を介して前記ハウジングに貫通させるステップ(S4)と、
前記ピン本体部のうち前記フランジ部を挟んで前記突出部とは反対側を挿入部とすると、前記ハウジングに前記ガイドアダプタを貫通させた後に、前記ピン孔に前記ピン本体部の前記挿入部を挿入するステップ(S5)と、
前記ガイドアダプタの前記先端面とは反対側の反対面をハンマーで叩くステップ(S6)と、を備える。
【0071】
上記[10]に記載の方法によれば、位置決めピンの突出部をガイドアダプタの孔部に挿入させつつ、ガイドアダプタの先端面が位置決めピンのフランジ部に当接している状態で、位置決めピンが基盤のピン孔に挿入される。そして、ガイドアダプタの反対面をハンマーで叩いて、位置決めピンを基盤のピン孔に圧入することで、突出部への直接的な加圧は回避される。よって、フランジ部を有する位置決めピンの突出部の変形を抑制することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 圧入治具
2 ガイドアダプタ
3 貫通孔
4 ハウジング
6 ガイドアダプタの先端面
6a 内側部
6b 外側部
8 孔部
10 孔部の入口
12 ガイドアダプタの反対面
14 延在孔
20 本体部
22 アーム部
24 ハウジングの下面
26 ハウジングの上面
28 ハウジングの外周面
30 一方側開口
32 他方側開口
42 係合孔
44 突出部材
45 位置合わせ部
50 凹部
52 凹面
100 基盤
110 ピン孔
150 ハンマー
200 位置決めピン
202 ピン本体部
202a 両端
204 フランジ部
206 突出部
208 挿入部
D1 垂直方向
D2 水平方向
L2 突出部の外径
L3 フランジ径
L4 ガイドアダプタの外径
S3 保持ステップ
S4 貫通ステップ
S5 挿入ステップ
S6 叩き込みステップ