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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040873
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】電動競技車両およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20240318BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240318BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240318BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240318BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240318BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20240318BHJP
   B62J 50/21 20200101ALI20240318BHJP
   B62M 7/00 20100101ALI20240318BHJP
   B62M 6/45 20100101ALN20240318BHJP
【FI】
B60L3/00 S
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L58/12
H02J7/00 P
B62J45/00
B62J50/21
B62M7/00
B62M6/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145509
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】松岡 良典
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503EA05
5G503FA06
5G503GC04
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA01
5H125AB03
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC06
5H125CA01
5H125CD02
5H125EE27
5H125EE42
5H125EE52
5H125EE53
(57)【要約】
【課題】レース途中で意図せずにバッテリ残量が零になることを抑制することができ、ライダーがレースを楽しみやすい電動競技車両を提供すること。
【解決手段】モトクロッサー1の制御装置10は、アクセルグリップ8の操作量に基づいて電動モータ5の出力を制御するモータ制御部31と、バッテリ9の残量を検出するバッテリ残量検出部32と、レース開始後の電動モータ5の電力消費率を算出する電力消費率算出部33と、バッテリ9の残量と電動モータ5の電力消費率とに基づいて、走行可能時間を推定する走行可能時間推定部34と、を有している。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪と、
前記駆動輪に連結された電動モータと、
前記電動モータに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量検出装置と、
前記電動モータを制御する制御装置と、
前記制御装置に接続され、ライダーが前記電動モータの出力を調整するときに前記ライダーによって操作されるアクセル操作子と、を備え、
前記制御装置は、
前記アクセル操作子の操作量に基づいて前記電動モータの出力を制御するモータ制御部と、
レース開始後の前記電動モータの電力消費率を算出する電力消費率算出部と、
前記バッテリの残量と前記電動モータの電力消費率とに基づいて、走行可能時間を推定する走行可能時間推定部と、を有している、電動競技車両。
【請求項2】
前記制御装置は、
予定走行時間が入力される走行時間入力部と、
レース開始時からの経過時間を測定する経過時間測定部と、
前記予定走行時間から前記経過時間を減算することにより、残り時間を算出する残り時間算出部と、
前記走行可能時間推定部により推定された走行可能時間が前記残り時間未満か否かを判定し、前記走行可能時間が前記残り時間未満の場合に、前記電動モータの出力に制限を加える出力制限部と、を有している、請求項1に記載の電動競技車両。
【請求項3】
前記出力制限部は、前記走行可能時間が前記残り時間未満の場合に、前記電動競技車両の速度または加速度が予め定められた閾値を超えないように前記電動モータの出力に制限を加える、請求項2に記載の電動競技車両。
【請求項4】
前記出力制限部は、前記走行可能時間が前記残り時間未満、かつ、前記アクセル操作子の操作量が増加する場合に、前記電動モータの出力が予め定められた所定割合だけ低減するように前記電動モータの出力に制限を加える、請求項2に記載の電動競技車両。
【請求項5】
前記出力制限部は、前記走行可能時間が前記残り時間以上となるように前記電動モータの出力に制限を加える、請求項2に記載の電動競技車両。
【請求項6】
前記電動モータの出力制限を解除する操作が入力される入力装置を備え、
前記制御装置は、前記入力装置に前記操作が入力されると、前記出力制限部による前記電動モータの出力制限を解除する制限解除部を有している、請求項2に記載の電動競技車両。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ライダーに前記走行可能時間を通知する通知部を有している、請求項1に記載の電動競技車両。
【請求項8】
モトクロッサーである、請求項1~7のいずれか一つに記載の電動競技車両。
【請求項9】
駆動輪と、
前記駆動輪に連結された電動モータと、
前記電動モータに電力を供給するバッテリと、
ライダーが前記電動モータの出力を調整するときに前記ライダーによって操作されるアクセル操作子と、を備えた電動競技車両の制御方法であって、
前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量検出工程と、
レース開始後の前記電動モータの電力消費率を算出する電力消費率算出工程と、
前記バッテリの残量と前記電動モータの電力消費率とに基づいて、走行可能時間を推定する走行可能時間推定工程と、
前記アクセル操作子の操作量に基づいて前記電動モータの出力を制御するモータ制御工程と、を含み、
前記モータ制御工程において、前記走行可能時間推定工程によって推定された走行可能時間に基づいて前記電動モータの出力に制限を加える、電動競技車両の制御方法。
【請求項10】
予定走行時間が入力される走行時間入力工程と、
レース開始時からの経過時間を測定する経過時間測定工程と、
前記予定走行時間から前記経過時間を減算することにより、残り時間を算出する残り時間算出工程と、を含み、
前記モータ制御工程において、前記走行可能時間が前記残り時間未満か否かを判定し、前記走行可能時間が前記残り時間未満の場合に、前記電動モータの出力に制限を加える、請求項9に記載の電動競技車両の制御方法。
【請求項11】
前記モータ制御工程において、前記走行可能時間が前記残り時間未満の場合に、前記電動競技車両の速度または加速度が予め定められた閾値を超えないように前記電動モータの出力に制限を加える、請求項10に記載の電動競技車両の制御方法。
【請求項12】
前記モータ制御工程において、前記走行可能時間が前記残り時間未満、かつ、前記アクセル操作子の操作量が増加する場合に、前記電動モータの出力が予め定められた所定割合だけ低減するように前記電動モータの出力に制限を加える、請求項10に記載の電動競技車両の制御方法。
【請求項13】
前記モータ制御工程において、前記走行可能時間が前記残り時間以上となるように前記電動モータの出力に制限を加える、請求項10に記載の電動競技車両の制御方法。
【請求項14】
前記電動競技車両は、前記電動モータの出力制限を解除する操作が入力される入力装置を備え、
前記入力装置に前記操作が入力されると、前記モータ制御工程における前記電動モータの出力の制限を解除する、請求項10に記載の電動競技車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動競技車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、走行用駆動源として電動モータを備え、目的地に到達する前にバッテリ残量が零にならないように電動モータを制御する電動車両が知られている。例えば特許文献1に、そのような電動車両が開示されている。特許文献1には、バッテリ残量と目的地までの電力消費量とを算出し、バッテリ残量が零となる前に目的地に到達できるように電動モータを制御する制御方法が記載されている。
【0003】
また、電動モータを走行用駆動源とする電動競技車両が知られている。例えば、電動モータを備えたモトクロッサーなどが知られている。レースとして、予め設定された規定走行時間の走行距離によって、または、規定走行時間の走行距離を考慮して順位を決定するレースが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-274687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなレースにおいて、規定走行時間が経過する前にバッテリ残量が零になると、規定走行時間まで走行を続けることができなくなり、失格となってしまう場合がある。そのような事態を避けるため、ライダーが加速を抑制しなければならない状況が起こり得る。また、ライダーは、レースの後半においてバッテリ残量が気になってしまい、純粋にレースを楽しめなくなる場合がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、レース途中で意図せずにバッテリ残量が零になることを抑制することができ、ライダーがレースを楽しみやすい電動競技車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される電動競技車両は、駆動輪と、前記駆動輪に連結された電動モータと、前記電動モータに電力を供給するバッテリと、前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量検出装置と、前記電動モータを制御する制御装置と、前記制御装置に接続され、ライダーが前記電動モータの出力を調整するときに前記ライダーによって操作されるアクセル操作子と、を備える。前記制御装置は、前記アクセル操作子の操作量に基づいて前記電動モータの出力を制御するモータ制御部と、レース開始後の前記電動モータの電力消費率を算出する電力消費率算出部と、前記バッテリの残量と前記電動モータの電力消費率とに基づいて、走行可能時間を推定する走行可能時間推定部と、を有している。
【0008】
上記電動競技車両によれば、バッテリの残量とレース開始後の電動モータの電力消費率とに基づいて、その後の走行可能時間が推定される。例えば、ライダーは、推定された走行可能時間に基づいて、その後のレースにおける電動モータの電力消費量を調整することが可能となる。よって、レース途中で意図せずにバッテリ残量が零になることを抑制することができる。ライダーはバッテリ残量を気にせずにレースを楽しむことができる。
【0009】
前記制御装置は、予定走行時間が入力される走行時間入力部と、レース開始時からの経過時間を測定する経過時間測定部と、前記予定走行時間から前記経過時間を減算することにより、残り時間を算出する残り時間算出部と、前記走行可能時間推定部により推定された走行可能時間が前記残り時間未満か否かを判定し、前記走行可能時間が前記残り時間未満の場合に、前記電動モータの出力に制限を加える出力制限部と、を有していてもよい。
【0010】
このことにより、推定された走行可能時間がレースの残り時間未満となった場合には、電動モータの出力が自動的に制限される。よって、レース途中で意図せずにバッテリ残量が零になることが抑制される。ライダーはバッテリ残量を気にせずにレースを楽しむことができる。
【0011】
前記出力制限部は、前記走行可能時間が前記残り時間未満の場合に、前記電動競技車両の速度または加速度が予め定められた閾値を超えないように前記電動モータの出力に制限を加えてもよい。
【0012】
このことにより、速度または加速度のピーク値が抑えられることにより、バッテリ残量が確保される。よって、レース途中で意図せずにバッテリ残量が零になることが抑制される。
【0013】
前記出力制限部は、前記走行可能時間が前記残り時間未満、かつ、前記アクセル操作子の操作量が増加する場合に、前記電動モータの出力が予め定められた所定割合だけ低減するように前記電動モータの出力に制限を加えてもよい。
【0014】
このことにより、加速するようにアクセル操作子が操作されたときに、加速の程度が所定割合だけ抑えられることにより、バッテリ残量が確保される。よって、レース途中で意図せずにバッテリ残量が零になることが抑制される。
【0015】
前記出力制限部は、前記走行可能時間が前記残り時間以上となるように前記電動モータの出力に制限を加えてもよい。
【0016】
このことにより、レース途中で意図せずにバッテリ残量が零になることが防止される。電動競技車両は、予め定めた予定走行時間の間、走行を続けることができる。
【0017】
前記電動競技車両は、前記電動モータの出力制限を解除する操作が入力される入力装置を備えていてもよい。前記制御装置は、前記入力装置に前記操作が入力されると、前記出力制限部による前記電動モータの出力制限を解除する制限解除部を有していてもよい。
【0018】
このことにより、バッテリ残量が零とならないように電動モータの出力が制限されるが、ライダーの意思によって出力制限を解除することができるので、ライダーは一時的に意図通りの加速や高速走行を行うことができる。よって、ライダーはレースをより楽しむことができる。
【0019】
前記制御装置は、前記ライダーに前記走行可能時間を通知する通知部を有していてもよい。
【0020】
このことにより、ライダーは走行可能時間を把握しながらレースを行うことができる。
【0021】
前記電動競技車両はモトクロッサーであってもよい。
【0022】
ここに開示される電動競技車両の制御方法は、駆動輪と、前記駆動輪に連結された電動モータと、前記電動モータに電力を供給するバッテリと、ライダーが前記電動モータの出力を調整するときに前記ライダーによって操作されるアクセル操作子と、を備えた電動競技車両の制御方法である。前記制御方法は、前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量検出工程と、レース開始後の前記電動モータの電力消費率を算出する電力消費率算出工程と、前記バッテリの残量と前記電動モータの電力消費率とに基づいて、走行可能時間を推定する走行可能時間推定工程と、前記アクセル操作子の操作量に基づいて前記電動モータの出力を制御するモータ制御工程と、を含む。前記モータ制御工程において、前記走行可能時間推定工程によって推定された走行可能時間に基づいて前記電動モータの出力に制限を加える。
【0023】
前記電動競技車両の制御方法は、予定走行時間が入力される走行時間入力工程と、レース開始時からの経過時間を測定する経過時間測定工程と、前記予定走行時間から前記経過時間を減算することにより、残り時間を算出する残り時間算出工程と、を含んでいてもよい。前記モータ制御工程において、前記走行可能時間が前記残り時間未満か否かを判定し、前記走行可能時間が前記残り時間未満の場合に、前記電動モータの出力に制限を加えるようにしてもよい。
【0024】
前記モータ制御工程において、前記走行可能時間が前記残り時間未満の場合に、前記電動競技車両の速度または加速度が予め定められた閾値を超えないように前記電動モータの出力に制限を加えるようにしてもよい。
【0025】
前記モータ制御工程において、前記走行可能時間が前記残り時間未満、かつ、前記アクセル操作子の操作量が増加する場合に、前記電動モータの出力が予め定められた所定割合だけ低減するように前記電動モータの出力に制限を加えるようにしてもよい。
【0026】
前記モータ制御工程において、前記走行可能時間が前記残り時間以上となるように前記電動モータの出力に制限を加えるようにしてもよい。
【0027】
前記電動競技車両は、前記電動モータの出力制限を解除する操作が入力される入力装置を備えていてもよい。前記電動競技車両の制御方法は、前記入力装置に前記操作が入力されると、前記モータ制御工程における前記電動モータの出力の制限を解除するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、レース途中で意図せずにバッテリ残量が零になることを抑制することができ、ライダーがレースを楽しみやすい電動競技車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態に係るモトクロッサーの側面図である。
図2】制御装置の構成図である。
図3】制御装置の機能ブロック図である。
図4】モトクロッサーが備えるメーター装置の説明図である。
図5】モトクロッサーの制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、電動競技車両の実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る電動競技車両はモトクロッサー(Motocrosser)1である。
【0031】
モトクロッサー1は、シート2と、ハンドル3と、アクセルグリップ8と、電動モータ5を有するパワーユニット5Aと、バッテリ9と、前輪4と、後輪6と、チェーン7と、制御装置10とを備えている。アクセルグリップ8は、ライダーが電動モータ5の出力を調整するときにライダーによって操作される操作子の一例である。アクセルグリップ8はハンドル3に設けられている。後輪6は、電動モータ5の動力によって駆動される駆動輪である。チェーン7は、電動モータ5の動力を後輪6に伝達する動力伝達部材の一例である。パワーユニット5Aは、動力を出力する出力軸13を有している。図示は省略するが、電動モータ5のモータ軸11と出力軸13とは、複数のギヤによって連結されている。出力軸13にはスプロケット19が固定されており、スプロケット19にはチェーン7が巻き掛けられている。
【0032】
図2に示すように、制御装置10はコンピュータによって構成されており、CPU21、ROM22、およびRAM23を有している。図3は、制御装置10の機能ブロック図である。CPU21がコンピュータプログラムを実行することにより、制御装置10は、モータ制御部31、バッテリ残量検出部32、電力消費率算出部33、走行可能時間推定部34、走行時間入力部35、経過時間測定部36、残り時間算出部37、出力制限部38、制限解除部39、および通知部40として機能する。
【0033】
制御装置10はアクセルグリップ8に接続されている。モータ制御部31は、ライダーによるアクセルグリップ8の操作量に基づいて、電動モータ5の出力を制御する。モータ制御部31は、アクセルグリップ8の操作量が大きくなると、電動モータ5の出力を大きくする。これにより、モトクロッサー1は加速する。モータ制御部31は、アクセルグリップ8の操作量が小さくなると、電動モータ5の出力を小さくする。これにより、モトクロッサー1は、加速度が小さくなるか、または、減速する。
【0034】
電動モータ5は、バッテリ9に蓄えられた電力によって駆動される。モトクロッサー1のレースの進行に伴って、バッテリ9の残量は徐々に減っていく。バッテリ残量検出部32は、バッテリ9の残量を検出する。本実施形態では、制御装置10がバッテリ9の残量を検出するように構成されており、バッテリ残量検出部32はバッテリ残量検出装置として機能する。バッテリ残量検出装置は制御装置10と一体化されている。
【0035】
電力消費率算出部33は、レース開始後の電動モータ5の電力消費率を算出する。ここでは、電力消費率算出部33は、レース開始後の電動モータ5の平均の電力消費率を算出する。例えば、電力消費率算出部33は、レース開始から現時点までの電動モータ5の電力消費量Qを、レース開始から現時点までの時間Tで割ることにより、平均の電力消費率Q/Tを算出する。なお、電力消費率算出部33によって算出される電力消費率は、平均の電力消費率に限られる訳ではない。
【0036】
電動モータ5の電力消費率は、モトクロッサー1のレースが行われるレース場や天候、およびライダーの運転の仕方に左右される。しかし、レース開始後の電動モータ5の電力消費率に基づくことにより、当該レース場、天候、およびライダーの運転の仕方による走行可能時間を比較的正確に推定することができる。走行可能時間推定部34は、バッテリ9の残量とレース開始後の電動モータ5の電力消費率とに基づいて、走行可能時間を推定する。例えば、走行可能時間推定部34は、バッテリ9の残量を上記電力消費率で割ることにより、走行可能時間を算出する。
【0037】
本実施形態に係るモトクロッサー1では、ライダーは予定走行時間を入力することができる。例えば、図4に示すように、モトクロッサー1は、押しボタン式のスイッチ51と表示パネル52とを有するメーター装置50を備えていてもよい。ライダーは、レース開始前にスイッチ51を操作することにより、予定走行時間を入力することができる。例えば、予定走行時間は表示パネル52に表示される。なお、表示パネル52はタッチ式パネルであってもよい。この場合、ライダーは表示パネル52を押すことにより、予定走行時間を入力することができる。ライダーが入力した予定走行時間の情報は、走行時間入力部35に入力される。
【0038】
経過時間測定部36は、レース開始時からの経過時間を測定する。例えば、ライダーがレースの開始と同時にスタートボタン52(図4参照)を押すことにより、経過時間測定部36は経過時間の測定を開始する。
【0039】
残り時間算出部37は、予定走行時間から経過時間を減算することにより、残り時間を算出する。算出された残り時間は、例えば、表示パネル52に表示される。ただし、残り時間は必ずしも表示しなくてもよい。表示パネル52は無くてもよい。
【0040】
走行可能時間が残り時間未満の場合、レースの途中でバッテリ9の残量が零になることが懸念される。その場合、モトクロッサー1がレース終了まで走り続けることができるように、電動モータ5の出力に制限を加えることが好ましい。出力制限部38は、走行可能時間が残り時間未満か否かを判定し、走行可能時間が残り時間未満の場合に、電動モータ5の出力に制限を加える。電動モータ5の出力に制限が加えられた場合、例えばライダーがアクセルグリップ8を大きく開いても、モトクロッサー1の加速は抑えられる。
【0041】
電動モータ5の出力の制限方法は特に限定されないが、出力制限部38は、走行可能時間が残り時間以上となるように電動モータ5の出力に制限を加えることが好ましい。これにより、モトクロッサー1は、予定走行時間の間、走り続けることができる。出力制限部38は、例えば、モトクロッサー1の速度または加速度が予め定められた閾値を超えないように電動モータ5の出力に制限を加えるようにしてもよい。出力制限部38は、アクセルグリップ8の操作量が増加する場合に、電動モータ5の出力が予め定められた所定割合だけ低減するように電動モータ5の出力に制限を加えてもよい。例えば、出力制限部38は、ライダーが加速しようとしてアクセルグリップ8の操作量を大きくしたときに、電動モータ5の出力を10%低減させるようにしてもよい。
【0042】
モトクロッサー1がレース終了まで走り続けることができることが望ましいが、ライダーの意思とは無関係に電動モータ5の出力を一律に制限した場合、ライダーはレースを楽しめなくなる。そのため、ライダーの意思により出力制限を解除できることが好ましい。本実施形態では、モトクロッサー1は、ライダーによる電動モータ5の出力制限を解除する操作が入力される入力装置を備えている。例えば、そのような入力装置として、解除ボタン53(図4参照)を備えていてもよい。ただし、入力装置の構成は何ら限定されない。制限解除部39は、入力装置に前記操作が入力されると、出力制限部38による電動モータ5の出力制限を解除する。
【0043】
通知部40は、ライダーに走行可能時間を通知する。例えば、通知部40は、表示パネル52に走行可能時間を表示することにより、ライダーに走行可能時間を通知する。ただし、通知の方法は表示に限られない。通知部40は、例えば、音声により走行可能時間を通知してもよい。
【0044】
次に、図5のフローチャートを参照しながら、モトクロッサー1の制御方法の一例について説明する。以下の制御は制御装置10によって行われる。
【0045】
まず、レースの開始に先立って、ステップS1にてライダーは予定走行時間を入力する。ライダーは、例えば予定走行時間として、予め定められたレースの規定走行時間(以下、競技時間という)を入力する。レースの開始と同時にライダーがスタートボタン52を押すと、ステップS2において、経過時間測定部36により経過時間の測定が開始される。ステップS3において、バッテリ残量検出部32はバッテリ9の残量を検出する。ステップS4において、電力消費率算出部33は、レース開始後の電動モータ5の電力消費率を算出する。なお、ステップS3とステップS4との順番は特に限定されない。ステップS4は、ステップS3の前または後に実行されてもよく、ステップS3と同時に実行されてもよい。
【0046】
次に、ステップS5に進み、走行可能時間推定部34により走行可能時間が推定される。ステップS6において、残り時間算出部37により、競技の残り時間が算出される。なお、ステップS5とステップS6との順番は特に限定されない。そして、ステップS7において、走行可能時間が残り時間未満か否かが判定される。ステップS7の判定結果がNOの場合、電動モータ5の出力制限は行われない(ステップS8)。一方、ステップS7の判定結果がYESの場合、ステップS9に進む。
【0047】
ステップS9では、ライダーによる出力制限の解除操作が行われているか否かが判定される。解除操作が行われている場合はステップS10に進み、解除操作が行われていない場合はステップS11に進む。
【0048】
本実施形態では、ライダーによる解除操作が行われた場合、予め定められた所定時間だけ出力制限が解除される。ステップS10に進むと、所定時間の間、電動モータ5の出力制限が解除される。すなわち、所定時間の間、電動モータ5はライダーのアクセルグリップ8の操作量に応じた駆動力を出力する。
【0049】
ステップS11では、出力制限部38により電動モータ5の出力に制限が加えられる。電動モータ5は、ライダーのアクセルグリップ8の操作量に応じた駆動力よりも小さい駆動力を出力する。これにより、出力制限が行われている間は、バッテリ9の電力消費量が抑えらられる。
【0050】
ステップS12では、予定走行時間が経過したか否かが判定される。予定走行時間が経過したと判定された場合は、本制御を終了する。予定走行時間が経過していないと判定された場合はステップS3に戻り、ステップS3以降の処理を繰り返す。
【0051】
次に、本実施形態によってもたらされる様々な効果について説明する。
【0052】
本実施形態に係るモトクロッサー1によれば、バッテリ9の残量とレース開始後の電動モータ5の電力消費率とに基づいて、その後の走行可能時間が推定される。走行可能時間がレースの残り時間未満の場合には、電動モータ5の出力が制限される。よって、レース途中で意図せずにバッテリ9の残量が零になることが抑制される。したがって、ライダーはバッテリ9の残量を気にせずにレースを楽しむことができる。
【0053】
本実施形態によれば、制御装置10の出力制限部38は、走行可能時間が残り時間以上となるように電動モータ5の出力に制限を加える。よって、レース途中で意図せずにバッテリ9の残量が零になることが防止される。モトクロッサー1は、予め定められた競技時間の間、走行を続けることができる。
【0054】
制御装置10の出力制限部38は、走行可能時間が残り時間未満の場合に、例えば、モトクロッサー1の速度または加速度が予め定められた閾値を超えないように、電動モータ5の出力に制限を加える。速度または加速度のピーク値を抑えることにより、バッテリ9の残量を確保することができる。
【0055】
制御装置10の出力制限部38は、走行可能時間が残り時間未満、かつ、アクセルグリップ8の操作量が増加する場合に、電動モータ5の出力が予め定められた所定割合だけ低減するように電動モータ5の出力に制限を加えてもよい。このように加速の程度を所定割合だけ抑えることにより、バッテリ9の残量を確保することができる。
【0056】
ライダーは、レースの展開によっては、レース途中でバッテリ9の残量が零になる可能性があったとしても、急加速を行ったり、高速走行を継続したい場合などがある。そのような場合に、ライダーの意向を無視して電動モータ5の出力を制限したのでは、ライダーがレースを十分に楽しめなくなるおそれがある。しかし、本実施形態によれば、ライダーが解除ボタン53を押すと、出力制限部38による電動モータ5の出力制限は所定時間解除される。ライダーの意思によって出力制限を解除することができるので、ライダーは一時的に意図通りの加速や高速走行を行うことができる。よって、ライダーはレースを十分に楽しむことができる。
【0057】
本実施形態に係るモトクロッサー1は、ライダーに走行可能時間を通知する通知部40を有している。そのため、ライダーは走行可能時間を把握しながら競技を行うことができる。ライダーは、レース途中でバッテリ9の残量が零にならないよう、自ら操縦を調整することができる。
【0058】
以上、一実施形態について説明したが、前記実施形態は一例に過ぎない。他にも様々な実施形態が可能である。
【0059】
前記実施形態では、制御装置10がバッテリ残量検出装置を兼ねているが、バッテリ残量検出装置は制御装置10と別体であってもよい。例えば、バッテリ残量検出装置は、バッテリ9に内蔵されていてもよい。
【0060】
制御装置10が電動モータ5の出力を制限しなくても、ライダーが走行可能時間を知ることができれば、レース途中でバッテリ9の残量が零にならないようにライダー自身が操縦を調整することが可能である。ライダー自身がバッテリ9の残量が零にならないよう操縦を調整する場合、制御装置10は電動モータ5の出力制限を行わなくてもよい。走行時間入力部35、経過時間測定部36、残り時間算出部37、および出力制限部38は無くてもよい。
【0061】
制御装置10による電動モータ5の出力制限は、ライダーによって解除できなくてもよい。出力制限を解除する操作が入力される入力装置(前記実施形態では解除ボタン53)および制限解除部39は無くてもよい。
【0062】
ライダーに対する走行可能時間の通知は必ずしも必要ではない。制御装置10は通知部40を有していなくてもよい。
【0063】
前記実施形態では、電動競技車両の一例としてモトクロッサー1について説明した。モトクロッサー1のようなオフロードの競技車両が参加するレースは、オンロードの競技車両が参加するレースに比べて、コースレイアウトや路面状況による負荷の違いが大きい。そのため、ライダー自身がレース途中でバッテリ9の残量が零になるか否かを判断することが非常に難しい。よって、バッテリ9の残量が零にならないよう電動モータ5の出力を制限する効果は、特に大きく発揮される。ただし、電動競技車両はモトクロッサー1に限定される訳ではない。電動競技車両はモトクロッサー1以外の自動二輪車であってもよい。また、電動競技車両は、自動二輪車以外の鞍乗型車両であってもよい。なお、鞍乗型車両とは、乗員が跨がって乗車する車両のことである。鞍乗型車両は自動二輪車に限定されない。鞍乗型車両は、例えば、自動三輪車、ATV(All Terrain vehicle)、スノーモービルであってもよい。
【0064】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、実施形態がここに記載されている。ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0065】
1…モトクロッサー(電動競技車両)、5…電動モータ、6…後輪(駆動輪)、8…アクセルグリップ(アクセル操作子)、9…バッテリ、10…制御装置、31…モータ制御部、32…バッテリ残量検出部、33…電力消費率算出部、34…走行可能時間推定部、35…走行時間入力部、36…経過時間測定部、37…残り時間算出部、38…出力制限部、39…制限解除部、40…通知部、53…解除ボタン(入力装置)
図1
図2
図3
図4
図5