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特開2024-409半導体装置の製造方法、検査方法、およびウェハ保持部材
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000409
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、検査方法、およびウェハ保持部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20231225BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231225BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231225BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20231225BHJP
   H01L 29/739 20060101ALN20231225BHJP
【FI】
H01L21/66 B
H01L21/304 631
H01L21/68 P
G01R31/26 Z
H01L29/78 655Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099170
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金尾 剛史
(72)【発明者】
【氏名】大形 公士
【テーマコード(参考)】
2G003
4M106
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
2G003AA01
2G003AA02
2G003AA10
2G003AG03
2G003AG11
2G003AG12
2G003AH05
2G003AH07
4M106AA01
4M106AB01
4M106AB20
4M106BA01
4M106CA14
4M106CA38
4M106DD03
4M106DJ02
4M106DJ07
4M106DJ32
5F057AA19
5F057BA12
5F057CA15
5F057DA11
5F057FA13
5F057FA32
5F131AA02
5F131BA32
5F131CA41
5F131EB02
5F131EB53
(57)【要約】
【課題】薄膜化した半導体ウェハに取り付けても、従来の半導体ウェハとほぼ同形状にできるウェハ保持部材の技術を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、表面と、前記表面の反対に位置する第1裏面とを有する半導体ウェハの前記第1裏面を研削して、薄膜部と、平面視において前記薄膜部を囲う厚膜部とを形成する研削工程と、ウェハ載置面と、前記ウェハ載置面の反対に位置する第2裏面とを有し、かつ前記厚膜部の厚さと前記薄膜部の厚さとの差分よりも大きい厚さを有するウェハ保持部材を準備する準備工程と、前記半導体ウェハの前記第1裏面側で、前記半導体ウェハの前記薄膜部と、前記ウェハ保持部材の前記ウェハ載置面とが互いに接するように、前記ウェハ保持部材上に前記半導体ウェハを載置する載置工程と、前記半導体ウェハが前記ウェハ保持部材上に保持された状態で、前記半導体ウェハを移動させる移動工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と、前記表面の反対に位置する第1裏面とを有する半導体ウェハの前記第1裏面を研削して、薄膜部と、平面視において前記薄膜部を囲う厚膜部とを形成する研削工程と、
ウェハ載置面と、前記ウェハ載置面の反対に位置する第2裏面とを有し、かつ前記厚膜部の厚さと前記薄膜部の厚さとの差分よりも大きい厚さを有するウェハ保持部材を準備する準備工程と、
前記半導体ウェハの前記第1裏面の側で、前記半導体ウェハの前記薄膜部と、前記ウェハ保持部材の前記ウェハ載置面とが互いに接するように、前記ウェハ保持部材の上に前記半導体ウェハを載置する載置工程と、
前記半導体ウェハが前記ウェハ保持部材の上に保持された状態で、前記半導体ウェハを移動させる移動工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記載置工程において、前記半導体ウェハの前記厚膜部と前記ウェハ保持部材が互いに接しないように、前記半導体ウェハは、前記ウェハ保持部材の上に載置される、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ウェハ保持部材は、
前記ウェハ載置面を有するステージと、
平面視において、前記第2裏面の側の前記ステージを囲うように形成された外周部と、を有し、
前記載置工程において、前記半導体ウェハの前記厚膜部と前記ウェハ保持部材の前記外周部とが互いに対抗するように、前記半導体ウェハは、前記ステージの上に載置される、
請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記外周部の一部に、第1切り欠き部が形成されており、
前記半導体ウェハの外周の一部に、第2切り欠き部が形成されており、
前記載置工程において、前記ウェハ保持部材の前記第1切り欠き部と、前記半導体ウェハの前記第2切り欠き部とが互いに重なるように、前記半導体ウェハは、前記ステージの上に載置される、
請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記ウェハ保持部材は、
前記ウェハ載置面および前記第2裏面に開口している貫通部を有し、かつ
前記貫通部の内部を陰圧にすることにより、前記ウェハ載置面の上に載置された前記半導体ウェハを固定するように構成されている、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ウェハ保持部材の前記ウェハ載置面の最大高さは、20μm以下である、
請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体ウェハが前記ウェハ保持部材の上に載置された状態で、真空吸着用の吸着溝が形成された測定用ステージの上に、前記ウェハ保持部材および前記半導体ウェハを載置する第2載置工程をさらに含み、
前記第2載置工程では、前記貫通部および前記吸着溝が互いに連続するように、前記ウェハ保持部材は、前記測定用ステージの上に載置され、
前記第2裏面に開口している前記貫通部の第2開口幅は、前記ウェハ載置面に開口している前記貫通部の第1開口幅より大きい、
請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記貫通部は、複数の貫通溝を有し、
前記複数の貫通溝は、平面視において、同心円状に前記ウェハ載置面に開口している、
請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ウェハ保持部材を介して、前記半導体ウェハに電圧を印加して、前記半導体ウェハを検査する検査工程をさらに含み、
前記ウェハ保持部材は、導電性を有する、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記検査工程の結果に応じて、製造プロセス条件を変更する工程をさらに含む、
請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記検査工程の結果に応じて、良品チップと不良品チップとをスクリーニングするスクリーニング工程をさらに含む、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記半導体ウェハの前記表面に接触するプローバと、前記ウェハ保持部材とを介して、前記半導体ウェハに電圧を印加して、前記半導体ウェハを検査する検査工程をさらに含み、
前記ウェハ保持部材は、導電性を有し、
前記半導体ウェハは、互いに離間した複数のセル領域と、前記複数のセル領域の間に形成されたスクライブ領域とを有し、
前記貫通部は、平面視において、前記スクライブ領域と重なるように形成されており、
前記検査工程では、前記プローバは、前記貫通部と重ならないように、前記セル領域に接触される、
請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記半導体ウェハに形成されたヒューズ素子をレーザー光により切断する工程をさらに含む、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
表面と、前記表面の反対に位置する第1裏面とを有する薄膜部と、平面視において前記薄膜部を囲う厚膜部とを有し、前記表面の上に形成された第1電極と、前記第1裏面の上に形成された第2電極とを有する半導体ウェハを準備する工程と、
ウェハ載置面と、前記ウェハ載置面の反対に位置する第2裏面とを有し、かつ前記厚膜部の厚さと前記薄膜部の厚さとの差分よりも大きい厚さを有するウェハ保持部材を準備する準備工程と、
前記半導体ウェハの前記第1裏面の側で、前記半導体ウェハの前記薄膜部と、前記ウェハ保持部材の前記ウェハ載置面とが互いに接するように、前記ウェハ保持部材の上に前記半導体ウェハを載置する載置工程と、
前記半導体ウェハが前記ウェハ保持部材の上に保持された状態で、前記第1電極、前記第2電極および前記ウェハ保持部材を介して、前記半導体ウェハに電圧を印加して、前記半導体ウェハの検査を行う検査工程と、
を含む、検査方法。
【請求項15】
前記載置工程において、前記半導体ウェハの前記厚膜部と前記ウェハ保持部材が互いに接しないように、前記半導体ウェハは、前記ウェハ保持部材の上に載置される、請求項14に記載の検査方法。
【請求項16】
前記ウェハ保持部材は、
前記ウェハ載置面および前記第2裏面に開口している貫通部を有し、かつ
前記貫通部を陰圧にすることにより、前記ウェハ載置面の上に配置された前記半導体ウェハを固定するように構成されている、
請求項15に記載の検査方法。
【請求項17】
前記ウェハ保持部材は、導電性を有する、請求項14に記載の検査方法。
【請求項18】
前記検査工程では、前記半導体ウェハの外観検査を行う、請求項14に記載の検査方法。
【請求項19】
薄膜部と、平面視において前記薄膜部を囲う厚膜部とを有する半導体ウェハを保持するためのウェハ保持部材であって、
前記厚膜部の厚さと前記薄膜部の厚さとの差分よりも大きい厚さを有し、かつ導電性を有する、ウェハ保持部材。
【請求項20】
ウェハ載置面と、前記ウェハ載置面と反対に位置する裏面とを有し、かつ、前記ウェハ載置面および前記裏面に開口している貫通部を有し、
前記裏面に開口している前記貫通部の第1開口幅は、前記ウェハ載置面に開口している前記貫通部の第2開口幅より大きい、請求項19に記載のウェハ保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、検査方法、およびウェハ保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの裏面を研削する際、半導体ウェハの外周部を残し、その内側のみを研削して半導体ウェハを薄化する技術(以下、TAIKOプロセスと言う。)が知られている。特開2018-113307号公報には、TAIKOプロセスを用いた際にも、半導体装置の製造歩留りを向上させることのできる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-113307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
TAIKOプロセスを用いて薄膜化した半導体ウェハはフルオートプローバでは扱うことができないため、薄膜仕様に対応した専用プローバを有するテスタで測定できない状況となっている。つまり、薄膜化ウェハはカセットケースにセットできないため、フルオートプローバを有するテスタでは利用できない。また、TAIKOプロセスを用いて薄膜化した半導体ウェハは専用のロード機構や専用のステージを必要とする。
【0005】
本開示の課題は、薄膜化した半導体ウェハに取り付けても、従来の半導体ウェハとほぼ同形状にできるウェハ保持部材の技術を提供する。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0008】
一実施の形態によれば、半導体装置の製造方法は、
表面と、前記表面の反対に位置する第1裏面とを有する半導体ウェハの前記第1裏面を研削して、薄膜部と、平面視において前記薄膜部を囲う厚膜部とを形成する研削工程と、
ウェハ載置面と、前記ウェハ載置面の反対に位置する第2裏面とを有し、かつ前記厚膜部の厚さと前記薄膜部の厚さとの差分よりも大きい厚さを有するウェハ保持部材を準備する準備工程と、
前記半導体ウェハの前記第1裏面側で、前記半導体ウェハの前記薄膜部と、前記ウェハ保持部材の前記ウェハ載置面とが互いに接するように、前記ウェハ保持部材上に前記半導体ウェハを載置する載置工程と、
前記半導体ウェハが前記ウェハ保持部材上に保持された状態で、前記半導体ウェハを移動させる移動工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
上記一実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、ウェハ保持部材を薄膜化した半導体ウェハに取り付けても、従来の半導体ウェハとほぼ同形状にできるので、半導体ウェハの移動工程において、従来と同様の取り扱いが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1に係る半導体ウェハと第1の構成のウェハ保持部材とを説明する図である。
図2図2は、実施例1に係る半導体ウェハと第2の構成のウェハ保持部材とを説明する図である。
図3図3は、ウェハ保持部材を取り付けた半導体ウェハの電気特性の評価工程を説明する図である。
図4図4は、面取りされたステージを有するウェハ保持部材を説明する図である。
図5図5は、面取りされていないステージを有するウェハ保持部材を説明する図である。
図6図6は、ウェハステージ部DSTGとウェハ保持部材との第1のウェハ吸着機構を説明する図である。
図7図7は、ウェハステージ部DSTGとウェハ保持部材との第2のウェハ吸着機構を説明する図である。
図8図8は、ウェハ保持部材に設けられた貫通溝を説明する図である。
図9図9を用いて、ウェハ保持部材(WA1,WA2)の電気抵抗を低減させる構成を説明する。
図10図10は、実施例4に係る半導体ウェハと第1の構成のウェハ保持部材とを説明する図である。
図11図11は、実施例4に係る電気特性の評価工程における検査用プローブPROと半導体ウェハSWとウェハ保持部材WA1の断面図である。
図12図12は、比較例に係る電気特性の評価工程における検査用プローブPROと半導体ウェハSWとウェハ保持部材WA1の断面図である。
図13図13は、実施例5に係る半導体装置の製造方法のフロー図である。
図14図14は、図13のフロー図に続く、半導体装置の製造方法のフロー図である。
図15図15は、実施例6にかかる半導体装置の製造方法を説明するフロー図である。
図16図16は、実施例7に係る半導体装置の検査方法について説明するフロー図である。
図17図17は、複数の半導体装置が形成された半導体ウェハSWの斜視図である。
図18図18は、半導体ウェハの表面への保護テープの張り付けを説明する斜視図である。
図19図19は、半導体ウェハの裏面の研削工程を説明する斜視図である。
図20図20は、半導体ウェハの裏面へのイオン注入工程を説明する斜視図である。
図21図21は、アニール処理工程を説明する斜視図である。
図22図22は、裏面電極の形成工程を説明する斜視図である。
図23図23は、半導体ウェハSWのウェハ保持部材WA1への載置工程を説明する斜視図である。
図24図24は、リングカット工程を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態、および、実施例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。
【0012】
以下、図面を用いて実施例を説明する。
【実施例0013】
図1は、実施例1に係る半導体ウェハと第1の構成のウェハ保持部材とを説明する図である。図2は、実施例1に係る半導体ウェハと第2の構成のウェハ保持部材とを説明する図である。図3は、ウェハ保持部材を取り付けた半導体ウェハの電気特性の評価工程を説明する図である。図4は、面取りされたステージを有するウェハ保持部材を説明する図である。図5は、面取りされていないステージを有するウェハ保持部材を説明する図である。
【0014】
図1には、薄膜化した半導体ウェハSWの斜視図Aと、半導体ウェハSWの断面図Bと、第1の構成のウェハ保持部材WA1の斜視図Cと、ウェハ保持部材WA1の断面図Dと、半導体ウェハSWをウェハ保持部材WA1に取り付けた状態を示す断面図Eと、が示されている。
【0015】
図1の斜視図Aに示すように、半導体ウェハSWは、TAIKOプロセスを用いて薄膜化した半導体ウェハであり、半導体ウェハSWの表面(第1主面、上面)SWSには、格子状のスクライブ領域(スクライブライン、スペーシング)ARSによって区画された複数の半導体チップSCが形成されている。半導体ウェハSWの外周の一部には、ノッチ(第2切り欠き部)Wntcが形成されている。図1では、図面の複雑さを避けるため、格子状のスクライブ領域ARSが模式的に描かれている。半導体チップSCには、半導体装置が形成されている。半導体装置の一例として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、または、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を備えた半導体装置を挙げることができるが、これに限定されないことは勿論である。
【0016】
図1の断面図Bに示すように、半導体ウェハSWは、表面SWSと、表面SWSの反対に位置する裏面(第1裏面)SWBとを有する。TAIKOプロセス(裏面研削工程)を用いて半導体ウェハSWの第1裏面SWBを研削して、薄膜部SWB1と、平面視において薄膜部SWB1を囲う厚膜部SWB2とが形成される。厚膜部SWB2は、平面視において、薄膜部SWB1を囲うように半導体ウェハSWの外周に設けられている。厚膜部SWB2の厚さd1、薄膜部SWB1の厚さd2とすると、第1裏面SWBの研削の削り厚さd3は、d3=d1-d2である。
【0017】
図1の斜視図Cおよび断面図Dに示すように、第1の構成のウェハ保持部材(ウエハアダプタ)WA1は、ウェハ載置面WASを有する円柱状の形状のステージSTGと、ウェハ載置面WASの反対に位置する裏面(第2裏面)WABとを有する。また、ウェハ保持部材WA1は、平面視において、第2裏面WABの側において、ステージSTGの外周を囲うように形成された外周部AOPを有する。ウェハ保持部材WA1において、ステージSTGの厚さd4(ステージSTGのウェハ載置面WASと第2裏面WABと間の距離d6から外周部AOPの厚さd5を除いたステージSTGの厚さに対応する:d4=d6-d5)は、半導体ウェハSWの厚膜部SWB2の厚さd1と薄膜部SWB1の厚さd2との差分(d1-d2=d3)よりも大きい厚さ(d4>d3)を有する。外周部AOPの一部に、ノッチ(第1切り欠き部)Antcが形成されている。ウェハ保持部材WA1は、電気伝導および熱伝導の良い導電性の材料または金属材料、たとえば、ステンレスSUS、アルミニウムAL、シリコンSi、炭素C、マグネシュウムMg合金、アルミニウムAL合金、等)を利用することができる。つまり、ステージSTGと外周部AOPとは、同じ導電性の金属材料で一体として構成されている。
【0018】
図1の断面図Eは、半導体ウェハSWをウェハ保持部材WA1に取り付けた状態(はめ込んだ状態)を示す断面図である。ウェハ保持部材WA1の上に半導体ウェハSWを載置する載置工程では、半導体ウェハSWの第1裏面SWB側で、半導体ウェハSWの薄膜部SWB1と、ウェハ保持部材WA1のウェハ載置面WASとが互いに接するように、ウェハ保持部材WA1の上に半導体ウェハSWを載置する。また、半導体ウェハSWの厚膜部SWB2とウェハ保持部材WA1が互いに接しないように、半導体ウェハSWは、ウェハ保持部WA1のウェハ載置面WASの上に載置される。また、半導体ウェハSWの厚膜部SWB2の下面BSとウェハ保持部材WA1の外周部AOPの上面TSとが互いに対抗するように、半導体ウェハSWは、ステージSTG上に載置される。載置工程において、半導体ウェハSWは、ウェハ保持部材WA1の第1切り欠き部Antcと半導体ウェハSWの第2切り欠き部Wntcとが互いに重なるように、ステージSTGのウェハ載置面WASの上に載置される。ウェハ保持部材WA1の第1切り欠き部Antc、半導体ウェハSWの第2切り欠き部Wntcがあることで、半導体ウェハSWをウェハ保持部材WA1へ載置するときの位置合わせが容易である。そして、半導体ウェハSWを移動させる移動工程では、半導体ウェハSWがウェハ保持部材WA1上に保持された状態で、半導体ウェハSWを移動させる。
【0019】
図1の断面図Eに示すように、ウェハ保持部材WA1は薄膜化された半導体ウェハSWをはめ込める構造となっており、はめ込んだ時点での半導体ウェハSWとウェハ保持部材WA1の全体的な外形形状は、従来の半導体ウェハ(TAIKOプロセスを用いていない半導体ウェハ:薄膜部SWB1を有さない半導体ウェハ)とほぼ同形状となる。したがって、従来の検査装置(フルオートプローバ)等において、ウェハ保持部材WA1に半導体ウェハSWを、従来の半導体ウェハと同様に取り扱うことが可能となる。
【0020】
薄膜化された半導体ウェハSWをウェハ保持部材WA1にはめ込んだ際に、半導体ウェハSWの最外周底部(つまり、厚膜部SWB2の下面BS)はウェハ保持部材WA1の外周部AOPの上面TSに接触しない構造とされている(図1の断面図E参照)。また、円柱状の形状のステージSTGの外側の側面(側壁)WASSは、厚膜部SWB2の内側の側面B2SSと接触しない構造とされている。この構造により、半導体ウェハSWの外周部SWOPが浮き上がらず、半導体ウェハSWの割れを防止することができる。また、ウェハ保持部材WA1に外周部AOPがあることで、ロットケースに半導体ウェハを搭載するときに、半導体ウェハを設置しやすい。
【0021】
図2には、薄膜化した半導体ウェハSWの斜視図A、半導体ウェハSWの断面図Bと、第2の構成のウェハ保持部材WA2の斜視図Cと、ウェハ保持部材WA2の断面図Dと、半導体ウェハSWをウェハ保持部材WA2に取り付けた状態を示す断面図Eと、が示されている。図2のウェハ保持部材WA2が図1のウェハ保持部材WA1と異なる点は、図2のウェハ保持部材WA2には、ステージSTGの外周を囲うように形成された外周部AOPが設けられていない点である。ウェハ保持部材WA2のその他の構成及び特徴は、ウェハ保持部材WA1のそれらと同じであるので、重複する説明は省略するが、当業者であれば当然理解できる。
【0022】
ウェハ保持部材WA1と同様に、ウェハ保持部材WA2において、ステージSTGの厚さd4(ステージSTGのウェハ載置面WASと第2裏面WABと間の距離d6からウェハ保持部材WA1の外周部AOPに対応する厚さd5を除いたステージSTGの厚さに対応する:d4=d6-d5)は、半導体ウェハSWの厚膜部の厚さd1と薄膜部の厚さd2との差分(d1-d2=d3)よりも大きい厚さ(d4>d3)を有する。
【0023】
図2の断面図Eに示すように、ウェハ保持部材WA2の上に半導体ウェハSWを載置する載置工程では、半導体ウェハSWの第1裏面SWB側で、半導体ウェハSWの薄膜部SWB1と、ウェハ保持部材WA2のウェハ載置面WASとが互いに接するように、ウェハ保持部材WA2の上に半導体ウェハSWを載置する。また、半導体ウェハSWの厚膜部SWB2とウェハ保持部材WA2が互いに接しないように、半導体ウェハSWは、ウェハ保持部WA2のウェハ載置面WASの上に載置される。そして、半導体ウェハSWを移動させる移動工程では、半導体ウェハSWがウェハ保持部材WA2上に保持された状態で、半導体ウェハSWを移動させる。
【0024】
ウェハ保持部材WA2では、外周部AOPが設けられていないので、厚膜部SWB2の下面BSはウェハ保持部材WA2に接触しない。また、円柱状の形状のステージSTGの外側の側面(側壁)WASSは、厚膜部SWB2の内側の側面B2SSと接触しない構造とされている。これにより、半導体ウェハSWの外周部SWOPが浮き上がらず、半導体ウェハSWの割れを防止することができる。
【0025】
図3には、ウェハ保持部材(WA1)を取り付けた半導体ウェハSWの電気特性の評価工程の概念図が示されている。電気特性の評価工程では、半導体ウェハSWの表面SWSの半導体チップSCの表面領域に形成された第1電極である金属電極(IGBTの場合は、テスト用電極、エミッタ電極、または、ゲート電極)に接触する検査用プローブPROと、導電性の材料で形成されたウェハ保持部材WA1とを介して、半導体ウェハSWの薄膜部SWB1の裏面側に形成された第2電極である金属電極(IGBTの場合は、コレクタ電極)に電圧を印加して電流Iを電流計AAで計測して、半導体ウェハSWに形成された1または複数の半導体チップSCを検査することができる。ウェハ保持部材WA1の裏面WABは、例えば、検査用装置のウェハステージ部DSTGに電気的に接触している。
【0026】
図3には、代表的な検査回路の構成例として、半導体ウェハSWの表面SWSの側に、検査用プローブPROの電気抵抗RRと電流計AAおよび電源BBが描かれている。また、ウェハ保持部材WA1の裏面WABの側に、接地電位GNDに接続されたウェハステージ部DSTGの電気抵抗RSが描かれている。図3のウェハ保持部材WA1は、ウェハ保持部材WA2へ変更されても、もちろん良い。
【0027】
図4には、面取りされたステージSTGを有するウェハ保持部材WA1の断面図が示され、図5には面取りされていないステージSTGを有するウェハ保持部材WA1の断面図Gが示されている。図4図5では、代表的に、ウェハ保持部材WA1を用いて説明するが、ウェハ保持部材WA1はウェハ保持部材WA2へ変更されてももちろん良い。
【0028】
図4に示すように、ウェハ保持部材WA1のステージSTGのウェハ載置面WASとステージSTGの外側の側面WASSとの間の角部(コーナー部)WACは、面取り(bevelling)された状態BELとされている。ここで、面取りとは角部を角面(傾斜面)や丸面などの形状に加工することを意味している。半導体ウェハSWの裏面SWBや厚膜部SWB2の内側の側面B2SSへの傷つき防止の観点から、ウェハ保持部材WA1(WA2)のステージSTGの角部WACは面取りされていることが好ましい。これにより、載置工程や移動工程において、ウェハ保持部材WA1の上に半導体ウェハSWを載置し、ウェハ保持部材WA1上に保持した状態で半導体ウェハSWを移動させても、ステージSTGの角部WACと半導体ウェハSWの裏面SWBとの接触に起因する傷が半導体ウェハSWの裏面SWBにつきにくくできる。
【0029】
図5に示すように、ウェハ保持部材WA1のステージSTGのウェハ載置面WASとステージSTGの外側の側面WASSとの間の角部(コーナー部)WACは、面取り(bevelling)されていない状態NBELとされている。半導体ウェハSWの裏面SWBとウェハ載置面WASとの接触面積を大きくして、半導体ウェハSWの裏面SWBとウェハ載置面WASとの間の接触抵抗を低減する観点からは、ウェハ保持部材WA1(WA2)の角部WACは面取りされていないことが好ましい。これにより、電気特性の評価工程において、半導体ウェハSWの裏面SWBとウェハ載置面WASとの間の接触抵抗が小さくされているので、正確な電気的信号の測定を行うことができる。
【0030】
次に、ウェハ保持部材WA1、WA2について説明する。
【0031】
(ウェハ保持部材WA1、WA2の材料)
ウェハ保持部材WA1、WA2の材料は、重量、導電性、耐熱性、強度などを考慮して決定される。これらの要素を考慮すると、アルミニウム製とするが好ましい。
【0032】
ウェハ保持部材WA1、WA2の重量は、検査装置に重量制限内であれば問題ない。ただし、ウェハ保持部材WA1、WA2の重量が重すぎると、半導体ウェハSWの裏面SWB側から接触させるプローバ内の搬送用ピンセットが曲がってしまうため、できるだけ軽い材料であることが好ましい。
【0033】
(ウェハ保持部材WA1の外周部AOP)
ウェハ保持部材WA1の製造しやすさの観点からは、外周部AOPがない構造(ウェハ保持部材WA2)が好ましい。
【0034】
(ウェハ保持部材WA1、WA2の厚さ)
ウェハ保持部材WA1、WA2の厚さ(図1図2のd6)は、半導体ウェハSWの外周部SWOP(厚膜部SWB2)が浮くことによるウェハ割れを防止するため、薄膜化された半導体ウェハSWの厚膜部SWB2の厚さと薄膜部SWB1の厚さの差より厚い。一方で、ウェハ保持部材WA1、WA2の厚さが厚すぎると、半導体ウェハ2枚と検査装置が認識してしまうおそれがある。ウェハ保持部材WA1、WA2の厚さは、これに限定されないが、例えば、680μm~810μmであることが好ましい。ウェハ保持部材WA1、WA2の厚さは、薄膜部SWB1の厚さに応じて調整される。
【0035】
(ウェハ保持部材WA1、WA2のウェハ載置面WASの平面視におけるサイズ(面積や大きさ))
薄膜化された半導体ウェハSWの薄膜部SWB1の平面視におけるサイズと同じ程度か、または、薄膜部SWB1のサイズより少し小さい。
【0036】
(ウェハ保持部材WA1、WA2の平坦性)
ウェハ保持部材WA1、WA2の最大高さは20μm以下とするのが好ましいい。ウェハ保持部材WA1、WA2の最大高さRyは、1μm以下とするのがより好ましい。このようにすることにより、半導体ウェハSWをたとえは検査装置のウェハステージ上に真空吸着するときに、ウェハ保持部材WA1、WA2のウェハ載置面WASの表面の凹凸に起因する隙間が半導体ウェハSWとウェハ保持部材WA1、WA2の間に生じるのを抑制できる。半導体ウェハSWとウェハ保持部材WA1、WA2が互いに平坦に接することができるため、適切に半導体ウェハSWの反りを低減できる。なお、最大高さRyは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定し、この値をマイクロメートルで表したものという。
【実施例0037】
次に、例えば、検査用装置等の測定用ステージとしてのウェハステージ部DSTGとウェハ保持部材とのウェハ吸着機構について説明する。
【0038】
図6は、ウェハステージ部DSTGとウェハ保持部材との第1のウェハ吸着機構を説明する図である。図7は、ウェハステージ部DSTGとウェハ保持部材との第2のウェハ吸着機構を説明する図である。図8は、ウェハ保持部材に設けられた貫通溝を説明する図である。図6図7には、第1の構成のウェハ保持部材WA1の斜視図Cと、ウェハ保持部材WA1の断面図Dと、ウェハ保持部材WA1の裏面WABの斜視図Fと、ウェハステージ部DSTGの斜視図Gとが示されている。図6図7には、代表的に、ウェハ保持部材WA1を用いて説明するが、ウェハ保持部材WA1はウェハ保持部材WA2へ変更されてももちろん良い。
【0039】
図6の斜視図Cおよび断面図Dに示すように、ウェハ保持部材WA1は、ウェハ載置面WASおよび裏面(第2裏面)WABに開口している貫通部PEPを有し、かつ、貫通部PEPの内部を陰圧にすることにより、ウェハ載置面WAS上に載置された半導体ウェハSWを固定するように構成されている。貫通部PEPは、複数の貫通溝POGを有し、複数の貫通溝POGは、平面視において、同心円状にウェハ載置面WASに開口している。これにより、ウェハ載置面WASに半導体ウェハSWを真空吸着時に、半導体ウェハSWの反りを全体的に緩和することができる。
【0040】
図6の斜視図Gに示すように、ウェハステージ部DSTGの表面の上に設けられたウェハ吸着用の真空引き溝としての複数の吸着溝ADGが設けられている。複数の吸着溝ADGは、平面視において、同心円状にウェハステージ部DSTGの表面の上に開口している。ウェハ吸着機構は、ウェハステージ部DSTGの表面の吸着溝ADGに対し、ウェハ保持部材WA1は裏面部(裏面WAB)から表面側(ウェハ載置面WAS)へ真空引きを引き出す構造(貫通部PEP、複数の貫通溝POG)を有する構成とされている。
【0041】
図6の断面図Dにおいて、矩形の点線で囲まれた1つの貫通溝POGが拡大して示されている。貫通溝POGは、ウェハ載置面WASの側に設けられた第1開口部OP1と、裏面WABの側に設けられた第2開口部OP2と、を有する。第2開口部OP2は、平面視において、長方形溝REGにとされている。
【0042】
図6の斜視図Fに示すように、ウェハ保持部材WA1の裏面WABには、複数の長方形溝REGが設けられている。複数の長方形溝REGは、この例では、2本の交差する直線に沿うように、裏面WABに配置されている。
【0043】
図8にも示されるように、ウェハ保持部材WA1の裏面WABの溝(複数の長方形溝REG)は、ウェハステージ部DSTGの表面の上に設けられた複数の円周状の吸着溝ADGと交差する長方形形状とすることで、真空引き接続部の合わせずれを吸収する構造を有する。
【0044】
貫通溝POGの円形形状の口部OP1の第1開口幅W1と第2開口部OP2(長方形溝REG)の第2開口幅W2(第2開口幅W2:長方形溝REGの長手方向の長さ)とは、第2裏面に開口している前記貫通部の第2開口幅W2は、第1開口幅W1より大きい(第1開口幅W1<第2開口幅W2)ことが好ましい。この構成(第2開口幅W2が第1開口幅W1より大きい)とすることにより、半導体ウェハSWを搭載したウェハ保持部材WA1をウェハステージ部DSTGの上に配置するとき、ウェハ保持部材WA1の位置ずれの影響を吸収でき、ウェハステージ部DSTGの吸着溝ADGとウェハ保持部材WA1の裏面WABの長方形溝REGとを確実に連通させることができる。
【0045】
つまり、半導体装置の製造工程では、半導体ウェハSWがウェハ保持部材(WA1、WA2)上に載置された状態で、真空吸着用の吸着溝ADGが形成された測定用ステージSDTGの上に、ウェハ保持部材(WA1、WA2)および半導体ウェハSWを載置する載置工程(第2載置工程)が設けられる。第2載置工程では、貫通部(貫通部PEP、複数の貫通溝POG)および吸着溝ADGが互いに連続するように、ウェハ保持部材(WA1、WA2)は、測定用ステージSDTGの上に載置される。
【0046】
薄膜化された半導体ウェハSWは反りが大きいため、ウェハ保持部材WA1(WA2)に確実に真空吸着することで、半導体ウェハSWの反りを低減させて、安定した評価を行うことが可能となる。高温評価ではより顕著に半導体ウェハSWの反りが課題となることがあるが、半導体ウェハSWをウェハ保持部材WA1(WA2)に確実に真空吸着できるので、高温評価でも半導体ウェハSWの反りが問題はならない。
【0047】
図7の斜視図Fに示すように、ウェハ保持部材WA1の裏面WABに設ける複数の長方形溝REGの数が、図6の斜視図Fに示す複数の長方形溝REGの数と比較して、少なくすることができる。複数の長方形溝REGは、この例では、裏面WABの直径の半分程度の長さの直線に沿うように、裏面WABに配置されている。長方形溝REGは、ウェハ保持部材WA1のウェハ載置面WASの側に設けられた円周状の複数の貫通溝POGにおいて、貫通溝POGの1つ当たりに1つの長方形溝REGが形成されていればいい。そのため、図7の断面図Dに示すように、この例では、ウェハ保持部材WA1の右側の半分は、貫通溝POGではなく、貫通溝POGに連結された溝HGとされている。
【実施例0048】
次に、図9を用いて、ウェハ保持部材(WA1,WA2)の電気抵抗を低減させる構成を説明する。図9は、金メッキが施されたウェハ保持部材(WA1、WA2)の断面図である。この断面図では、1つの貫通溝POGを拡大して示している。
【0049】
図9に示すように、ウェハ保持部材(WA1,WA2)のウェハ載置面WAS、裏面WAB及びウェハ保持部材(WA1,WA2)の内部の貫通溝POGの側面部が、金によるメッキで金メッキ層GOMが設けられている。これにより、ウェハ保持部材(WA1,WA2)のウェハ載置面WASと裏面WABの電気抵抗を下げることができる。
【0050】
半導体ウェハSWの裏面SWBとウェハ載置面WASとの間の接触抵抗、ウェハ保持部材(WA1,WA2)のウェハ載置面WASと裏面WABの電気抵抗、および、ウェハ保持部材(WA1,WA2)の裏面WABとウェハステージ部DSTGの表面との間の接触抵抗が小さくされているので、電気特性の評価工程において正確な電気的信号の測定を行うことができる。
【実施例0051】
次に、図10を用いて、ウェハ保持部材(WA1,WA2)のウェハ載置面WASに設ける貫通部PEPが、半導体ウェハSWに設けた格子状のスクライブ領域の形状と一致するように、格子状に設ける構成を説明する。図10は、実施例4に係る半導体ウェハと第1の構成のウェハ保持部材とを説明する図である。図10には、半導体ウェハSWの斜視図Aと、ウェハ保持部材WA1の斜視図Cと、が示されている。
【0052】
図10の斜視図Aに示すように、半導体ウェハSWの表面(第1主面、上面)SWSには、格子状のスクライブ領域(スクライブライン、スペーシング)ARSによって区画された複数の半導体チップSCが形成されている。つまり、半導体ウェハSWは、互いに離間した複数のセル領域としての複数の半導体チップSCと、複数のセル領域(半導体チップSC)の間に形成されたスクライブ領域ARSとを有する。ここで、複数のセル領域とは、例えば、IGBTやパワーMOSFETにおいて、IGBTやパワーMOSFETのパワートランジスタのセルが設けられている領域である。
【0053】
図10の斜視図Cに示すように、ウェハ保持部材WA1のウェハ載置面WASには、半導体ウェハSWのスクライブ領域ARSの形状と一致するように、格子状の形状とされた貫通部PEPが設けられている。ウェハ保持部材WA1の貫通部PEPは、平面視において、半導体ウェハSWのスクライブ領域ARSスクライブ領域ARSと重なるように形成されている。したがって、ウェハ保持部材WA1の上に半導体ウェハSWを載置する載置工程において、ウェハ保持部材WA1の第1切り欠き部Antcと半導体ウェハSWの第2切り欠き部Wntcとが互いに重なるように、ステージSTGのウェハ載置面WASの上に載置されると、ウェハ保持部材WA1の貫通部PEPは、平面視において、半導体ウェハSWのスクライブ領域ARSと重なるように載置される。そして、半導体ウェハSWを移動させる移動工程では、半導体ウェハSWがウェハ保持部材WA1上に保持された状態で、半導体ウェハSWを移動させる。その後、たとえば、検査用装置のウェハステージ部DSTGに、半導体ウェハSWを搭載したウェハ保持部材WA1を載置する(第2載置工程)。
【0054】
そして、電気特性の評価工程では、半導体ウェハSWの表面SWSの半導体チップSCの表面領域に形成された第1電極である金属電極(IGBTの場合は、テスト用電極、エミッタ電極、または、ゲート電極)に接触する検査用プローブPROと、導電性の材料で形成されたウェハ保持部材WA1とを介して、半導体ウェハSWの薄膜部SWB1の裏面側に形成された第2電極である金属電極(IGBTの場合は、コレクタ電極)に電圧を印加して、半導体ウェハSWに形成された1つまたは複数の半導体チップSCを検査する。
【0055】
図11は、実施例4に係る電気特性の評価工程における検査用プローブPROと半導体ウェハSWとウェハ保持部材WA1の断面図である。図12は、比較例に係る電気特性の評価工程における検査用プローブPROと半導体ウェハSWとウェハ保持部材WA1の断面図である。
【0056】
図11に示すように、ウェハ保持部材WA1の貫通部PEPは、平面視において、半導体ウェハSWのスクライブ領域ARSと重なるように配置されているので、検査用プローブPROは確実にかつ簡単に半導体チップSCの表面領域に形成された第1電極に接触できる。したがって、検査用プローブPROが貫通部PEPを避けて簡単にプロービングできるようになるので、半導体ウェハSWのウェハ割れを防止できる。
【0057】
一方、図12に示すように、検査用プローブPROが、半導体チップSCの表面領域に形成された第1電極に接触した時に、検査用プローブPROの下側にウェハ保持部材WA1の貫通部PEPがあると、半導体ウェハSWがウェハ割れてしまう場合が考えられる。つまり、検査用プローブPROが貫通部PEPを避けてプロービングできない場合がある。実施例4により、図12で説明した課題が解決できる。
【0058】
以下、図面を用いて、いくつかの半導体装置の製造方法を説明する。
【実施例0059】
図13は、実施例5に係る半導体装置の製造方法のフロー図である。図14は、図13のフロー図に続く、半導体装置の製造方法のフロー図である。図17は、複数の半導体装置が形成された半導体ウェハSWの斜視図である。図18は、半導体ウェハの表面への保護テープの張り付けを説明する斜視図である。図19は、半導体ウェハの裏面の研削工程を説明する斜視図である。図20は、半導体ウェハの裏面へのイオン注入工程を説明する斜視図である。図21は、アニール処理工程を説明する斜視図である。図22は、裏面電極の形成工程を説明する斜視図である。図23は、半導体ウェハSWのウェハ保持部材WA1への載置工程を説明する斜視図である。図24は、リングカット工程を説明する斜視図である。
【0060】
まず、複数の半導体装置(半導体チップSC)が、その上面に形成された半導体ウェハSWを準備する(工程P01)。半導体ウェハSWは、図17に示すように、半導体ウェハSWの表面SWSには、格子状のスクライブ領域(スクライブライン、スペーシング)ARSによって区画された複数の半導体チップSCが形成されている。半導体チップSCは、この例では、IGBTである。
【0061】
つぎに、半導体ウェハSWの裏面(第2主面、下面)を研削する(TAIKO裏面研削:工程P02)。研削工程では、表面SWSと、表面SWSの反対に位置する第1裏面SWBとを有する半導体ウェハSWの第1裏面SWBを研削して、薄膜部SWB1と、平面視において薄膜部SWB1を囲う厚膜部SWB2とを形成する。ここで、ウェハ保持部材WA1(WA2)を準備する準備工程が行われてもよい。ウェハ保持部材WA1(WA2)を準備する準備工程では、ウェハ載置面WASと、ウェハ載置面WASの反対に位置する第2裏面WABとを有し、かつ厚膜部SWB2の厚さと薄膜部SWB1の厚さとの差分よりも大きい厚さを有するウェハ保持部材WA1(WA2)を準備する。
【0062】
まず、図18に示すように、半導体ウェハSWの表面側に表面保護テープSPTを貼り付ける。表面保護テープSPTは、例えば材質をPET(ポリエチレンテレフタレート)とする高剛性テープを用いることができる。
【0063】
TAIKO裏面研削では、図19に示すように、表面保護テープSPTにより保護された上面SWSを下側とし、半導体ウェハSWを裏面SWBから研削して、ウェハSWの厚さを薄くする(薄膜部SWB1を形成する)。半導体ウェハSWの表面SWS側に表面保護テープSPTが貼り付けてあるので、表面SWSに形成される半導体素子、例えば、IGBTおよび各電極などが破壊されることはない。なお、半導体ウェハSWの薄膜部SWB1の厚さは求められる耐圧に依存する。その後、表面保護テープSPTを半導体ウェハSWから剥離する。
【0064】
つぎに、裏面電極の形成(1)を形成する(工程P03)。ここでは、IGBTの裏面電極の構成例を説明する。まず、図20に示すように、半導体ウェハSWの裏面SWBに、n型の導電型を有する不純物(例えばリン)をイオン注入し、半導体ウェハSWの裏面SWBから第1深さのn型フィールドストップ領域Nsを形成する。続いて、半導体ウェハSWの裏面SWBに、p型の導電型を有する不純物(例えばボロン)をイオン注入し、半導体ウェハSWの裏面SWBから、第1深さよりも浅い第2深さのp+型コレクタ領域PCを形成する。これにより、半導体ウェハSWの裏面SWB側に、n型フィールドストップ領域Nsおよびp+型コレクタ領域PCが形成される。なお、NDは、n-型ドリフト領域を示している。次に、図21に示すように、半導体基板SWの裏面SWB側にレーザー光を照射して、半導体基板SWにイオン注入された不純物イオンを活性化させる。
【0065】
つぎに、裏面電極の形成(2)を形成する(工程P04)。フッ酸を含む洗浄液を用いて半導体基板SWを洗浄した後、図22に示すように、半導体ウェハSWの裏面SWB上に、導電膜として、例えばアルミニウム膜、チタン膜、ニッケル膜および金膜をスパッタリング法または真空蒸着法により順次成膜し、これらの積層膜を形成する(AL/Ti/Ni/Au)。この積層膜は、p+型コレクタ領域PCと電気的に接続するコレクタ電極CEとなる。コレクタ電極CEは、裏面電極である。
【0066】
つぎに、半導体ウェハSWをウェハ保持部材WA1のウェハ載置面WASに載置する(載置工程:工程P05)。載置工程では、図23に示すように、半導体ウェハSWの第1裏面SWB側で、半導体ウェハSWの薄膜部SWB1と、ウェハ保持部材WA1(WA2)のウェハ載置面WASとが互いに接するように、ウェハ保持部材WA1(WA2)の上に半導体ウェハSWを載置する(図1の断面図Eを参照)。載置工程において、半導体ウェハSWの厚膜部SWB2とウェハ保持部材WA1(WA2)が互いに接しないように、半導体ウェハSWは、ウェハ保持部WA1(WA2)の上に載置される。また、載置工程において、半導体ウェハSの厚膜部SWB2とウェハ保持部材WA1の外周部AOPとが互いに対抗するように、半導体ウェハSWは、ステージSTGのウェハ載置面WASの上に載置される。また、載置工程において、ウェハ保持部材WA1の第1切り欠き部Antcと、半導体ウェハSWの第2切り欠き部Wntcとが互いに重なるように、半導体ウェハSWは、ステージSTG上に載置される。
【0067】
つぎに、半導体ウェハSWを移動させる(移動工程:工程P06)。移動工程では、半導体ウェハSWがウェハ保持部材WA1(WA2)の上に保持された状態(図1の断面図Eを参照)で、半導体ウェハSWを移動させる。移動先の装置は、一例として、検査装置の検査ステージ(測定用ステージSDTG)や、OPMめっき装置である。
【0068】
つぎに、検査工程を実施する(ゲートスクリーニング(検査工程):工程P07)。検査工程では、検査装置の検査ステージ(測定用ステージ)SDTGの上に、ウェハ保持部材WA1(WA2)および半導体ウェハSWを載置する第2載置工程と、ウェハ保持部材WA1(WA2)を介して、半導体ウェハSWに電圧を印加して、半導体ウェハSWを検査する検査工程と、を含む。
【0069】
第2載置工程では、半導体ウェハSWがウェハ保持部材WA1(WA2)のウェハ載置面WASの上に載置された状態で、真空吸着用の吸着溝ADGが形成された測定用ステージSDTGの上に、ウェハ保持部材WA1(WA2)および半導体ウェハSWを載置する。ここで、ウェハ保持部材WA1(WA2)は、ウェハ載置面WASおよび第2面WABに開口している貫通部PEPを有し、かつ、貫通部PEPの内部を陰圧にすることにより、ウェハ載置面WAS上に載置された半導体ウェハSWを固定できるように構成されている。第2載置工程では、貫通部PEPおよび吸着溝ADGが互いに連続するように、ウェハ保持部材WA1(WA2)は、測定用ステージ上に載置される。ウェハ保持部材WA1(WA2)のウェハ載置面WASの平坦度が高いことにより、薄膜化された半導体ウェハSWを適切にウェハ載置面WASの上に真空吸着できる。
【0070】
検査工程では、図3に示すように、ゲート電極に電圧印可して、ゲート酸化膜の耐圧に問題がないか否かを判断する。例えば、ゲートに数十Vの電圧を印可する。コレクタ電極およびエミッタ電極は接地電位GNDである。問題の無いチップのみを選別する(良品チップと不良品チップとを選別する)。全チップ部分を検査する。ウェハ保持部材WA1(WA2)が導電性を有することで、半導体ウェハSWをウェハ保持部材WA1(WA2)上で検査することができるため、薄膜化ウェハ専用の検査装置を用いなくても済む。
【0071】
検査工程の結果に応じて、製造プロセス条件を変更する工程を追加してもよい。これにより、検査工程での検査結果を製造プロセス条件にフィードバックできる。また、検査工程の結果に応じて、良品チップと不良品チップとをスクリーニングするスクリーニング工程を追加してもよい。
【0072】
検査工程では、半導体ウェハSWの表面に接触する検査装置のプローバPROと、導電性のウェハ保持部材WA1(WA2)とを介して、半導体ウェハSWに電圧を印加して、半導体ウェハSWを検査する。半導体ウェハSWは、互いに離間した複数のセル領域(半導体チップSC)と、前記複数のセル領域(半導体チップSC)の間に形成されたスクライブ領域ARSとを有する。貫通部PEPは、平面視において、スクライブ領域ARSと重なるように形成されており、検査工程では、プローバPROは、貫通部PEPと重ならないように、セル領域(半導体チップSC)に接触される。
【0073】
つぎに、半導体ウェハSWがウェハ保持部材WA1(WA2)の上に保持された状態(図1の断面図Eを参照)で、半導体ウェハSWを移動させる(ウェハ移動工程:工程P08)。
つぎに、半導体ウェハSWの薄膜部SWB1と厚膜部SWB2とをカットする(リングカット工程:工程P09)。予めダイシングテープDT1を貼り付けた環状のダイシングフレームDF1を用意しておき、このダイシングテープDT1の上面に、半導体ウェハSWの上面SWSとダイシングテープDT1の上面とが対向するように、半導体ウェハSWを貼着する。次に、図24に示すように、例えばダイヤモンド微粒を貼り付けた極薄のダイシングブレード(円形刃)DB1(またはレーザー光)を用いて、半導体ウェハSWの薄膜部SWB1と厚膜部SWB2との境界に沿って、半導体基板ウェハSWの薄膜部SWB1の外周をリング状に切断し(リングカット)、厚膜部SWB2を取り除く。リングカット工程は、半導体ウェハSWがウェハ保持部材WA1(WA2)に載置された状態で行われてもいいし、ウェハ保持部材WA1(WA2)に載置されていなくてもいい。
【実施例0074】
次に、図15を用いて、実施例6にかかる半導体装置の製造方法を説明する。図15は、実施例6にかかる半導体装置の製造方法を説明するフロー図である。実施例6では、実施例5の(ゲートスクリーニング(検査工程):工程P07)が、ヒューズカット工程(工程P07a)に変更されている。実施例6において、工程P01-P05,P08-P09は実施例5のP01-P05,P08-P09と同じであるので、重複する説明は省略する。
【0075】
ヒューズカット工程(工程P07a)では、半導体ウェハSWの半導体チップSCの領域に形成されたヒューズ素子をレーザー光によって切断(カット)して、ヒューズ素子の抵抗調整するものである。ヒューズ素子は、電流でカットする電気ヒューズとされてももちろんいい。ヒューズ素子は、たとえば、多結晶シリコン製の素子または配線である。
【0076】
ヒューズ素子の抵抗調整以外の用途としては、半導体チップSCのトレーサビリティが挙げられる。つまり、ヒューズ素子を半導体チップSCのトレーサビリティIDまたはチップIDとするものである。真空吸着により、薄膜化した半導体ウェハSWの反りを解消できるため、適切にヒューズ素子のレーザー光によるカットを実施することが可能である。
【実施例0077】
次に、図16を用いて、実施例7にかかる半導体装置の検査方法を説明する。図16は、実施例7に係る半導体装置の検査方法について説明するフロー図である。
【0078】
まず、複数の半導体装置(半導体チップ)および裏面電極が形成された半導体ウェハを準備する(半導体ウェハの準備工程:工程S01)。この工程S01は、実施例5の工程P01-P04までの工程である。
【0079】
次に、検査用の半導体ウェハSWを生産ラインから抜き取り、図23で示すように、半導体ウェハSWをウェハ保持部材WA1(WA2)のウェハ載置面WASに載置する(アダプタへの搭載工程:工程S02)。
【0080】
次に、検査用の半導体ウェハSWを搭載したウェハ保持部材WA1(WA2)を移動させる(半導体ウェハの移動工程:S03)。ウェハ保持部材WA1(WA2)に搭載された半導体ウェハSW移動先は、例えば、ウェハテスト装置等の電気的検査装置や顕微鏡などの外観検査装置の検査ステージである。
【0081】
次に、検査用の半導体ウェハSWの検査を実施する(検査工程:工程S04)。ここでは、たとえが、電気的検査、いわゆるウェハテストが行われる。つまり、検査工程では、半導体ウェハSWがウェハ保持部材WA1(WA2)上に保持された状態で、半導体チップSCの表面SWSに形成された第1電極(ゲート電極)、半導体チップSCの表面SWSに形成された第2電極(裏面電極、コレクタ電極)およびウェハ保持部材WA1(WA2)を介して、半導体ウェハSWに電圧を印加して、半導体ウェハSWの検査を行う(図3参照)。
【0082】
あるいは、検査工程(工程S04)では、顕微鏡観察(外観検査)により傷、異物などの検査が行われる。半導体ウェハSWを搭載したウェハ保持部材WA1(WA2)の全体的な外形形状は、従来の半導体ウェハ(TAIKOプロセスを用いていない半導体ウェハ:薄膜部SWB1を有さない半導体ウェハ)とほぼ同形状となるので、薄膜化された半導体ウェハSWに専用(TAIKO専用)の検査装置でなくても検査工程に利用することが可能である。
【0083】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0084】
SW:半導体ウェハ
SWS:表面(第1主面、上面)
SWB:裏面(第1裏面)
ARS:スクライブ領域(スクライブライン)
SWB1:薄膜部
SWB2:厚膜部
Wntc:第2切り欠き部
WA1,WA2:ウェハ保持部材(ウエハアダプタ)
WAS:ウェハ載置面
STG:ステージ
WAB:裏面(第2裏面)
AOP:外周部
Antc:第1切り欠き部
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