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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040901
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ダクトレス室圧制御システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240318BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20240318BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20240318BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F13/02 C
F24F7/003
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145552
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】591045965
【氏名又は名称】株式会社精研
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高平 沙生
(72)【発明者】
【氏名】沖 一輝
【テーマコード(参考)】
3L058
3L080
【Fターム(参考)】
3L058BE08
3L058BF06
3L080AC01
(57)【要約】
【課題】本発明は、クリーンルームを室圧調整機構により調整できるダクトレス室圧制御システムを提供する。
【解決手段】本発明に係るダクトレス室圧制御システム10は、クリーンルーム40と、前記クリーンルームの天井及び壁を二重天井及び二重壁とし、一体に連通させたチャンバー30と、前記チャンバーから前記クリーンルームへ給気を行なうファンとフィルターを有する給気ユニット50と、前記クリーンルームと前記チャンバーを区画する壁に配置される室圧調整機構53aと、前記クリーンルームと前記チャンバーの室圧の差を検出する差圧センサーと、を具える還気ユニット53であって、前記室圧調整機構は、前記差圧センサーの検出値により前記クリーンルームの室圧を調整する、還気ユニットと、を具える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルームと、
前記クリーンルームの天井及び壁を二重天井及び二重壁とし、一体に連通させたチャンバーと、
前記チャンバーから前記クリーンルームへ給気を行なうファンとフィルターを有する給気ユニットと、
前記クリーンルームと前記チャンバーを区画する壁に配置される室圧調整機構と、前記クリーンルームと前記チャンバーの室圧の差を検出する差圧センサーと、を具える還気ユニットであって、前記室圧調整機構は、前記差圧センサーの検出値により前記クリーンルームの室圧を調整する、還気ユニットと、
を具える、ダクトレス室圧制御システム。
【請求項2】
第1扉を介して外部と接続され、前記クリーンルームと第2扉を介して接続される第1附室と、
前記クリーンルームと第3扉を介して接続され、第4扉を介して外部と接続される第2附室と、
前記チャンバーから前記第1附室へ給気を行なうファンとフィルターを有する第1給気ユニットと、
前記第1附室と前記チャンバーを区画する壁に配置される第1室圧調整機構と、前記第1附室と前記チャンバーの室圧の差を検出する第1差圧センサーと、を具える第1還気ユニットであって、前記第1室圧調整機構は、前記第1差圧センサーの検出値により前記第1附室の室圧を調整する、第1還気ユニットと、
前記チャンバーから前記第2附室へ給気を行なうファンとフィルターを有する第2給気ユニットと、
前記第2附室と前記チャンバーを区画する壁に配置される第2室圧調整機構と、前記第2附室と前記チャンバーの室圧の差を検出する第2差圧センサーと、を具える第2還気ユニットであって、前記第2室圧調整機構は、前記第2差圧センサーの検出値により前記第2附室の室圧を調整する、第2還気ユニットと、
を具える、請求項1に記載のダクトレス室圧制御システム。
【請求項3】
前記チャンバーの圧力を外部よりも陽圧に調整し、
前記クリーンルームを陽圧管理する、
請求項1に記載のダクトレス室圧制御システム。
【請求項4】
前記チャンバーの圧力を外部よりも陽圧に調整し、
前記クリーンルーム、前記第1附室及び前記第2附室を陽圧管理する、
請求項2に記載のダクトレス室圧制御システム。
【請求項5】
前記チャンバーの圧力を外部よりも陰圧に調整し、
前記クリーンルームを陰圧管理する、
請求項1に記載のダクトレス室圧制御システム。
【請求項6】
前記チャンバーの圧力を外部よりも陰圧に調整し、
前記クリーンルーム、前記第1附室及び前記第2附室を陰圧管理する、
請求項2に記載のダクトレス室圧制御システム。
【請求項7】
前記二重天井の上外面に、前記チャンバーに連通し、冷却機構、加熱機構、加湿機構及び送風機構を具えた空調ユニットが設置されている、
請求項1に記載のダクトレス室圧制御システム。
【請求項8】
前記二重天井の上外面に、前記チャンバーに連通し、冷却機構、加熱機構、加湿機構及び送風機構を具えた空調ユニットが設置されている、
請求項2に記載のダクトレス室圧制御システム。
【請求項9】
室圧は、前記第1附室が最も高く調整される、
請求項2に記載のダクトレス室圧制御システム。
【請求項10】
サブクリーンルームと、
前記サブクリーンルームの天井及び壁を二重天井及び二重壁とし、一体に連通させたサブチャンバーと、前記サブチャンバーから前記サブクリーンルームへ給気を行なうファンとフィルターを有するサブ給気ユニットと、
前記サブクリーンルームと前記サブチャンバーを区画する壁に配置されるサブ室圧調整機構と、前記サブクリーンルームと前記サブチャンバーの室圧の差を検出するサブ差圧センサーと、を具えるサブ還気ユニットであって、前記サブ室圧調整機構は、前記サブ差圧センサーの検出値により前記サブクリーンルームの室圧を調整する、サブ還気ユニットと、
を有するサブダクトレス室圧制御システムと、
請求項1乃至請求項9の何れかに記載のダクトレス室圧制御システムと、
を含み、
前記ダクトレス室圧制御システムと、前記サブダクトレス室圧制御システムを、前記クリーンルームと前記サブクリーンルームが連通するよう連結してなる、
拡張型ダクトレス室圧制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームを室圧調整機構により室圧調整可能としたダクトレス室圧制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞培養加工施設や、医療施設、再生医療施設、半導体や精密機械、医薬品、食品などの製造施設でクリーンルームが使用されている。
【0003】
たとえば、特許文献1のクリーンルームは、天井、壁面を二重構造に構成して気密なチャンバーとして連通している。そして、壁面下部に排気孔、天井面に給気ユニットを設け、天井側のチャンバーには熱交換や加湿用の空調ユニットを配置している。そして、空調ユニットによって温度、湿度が調整された空気は、給気ユニットからクリーンルームに供給され、また、排気孔からチャンバーに空気を排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-223280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クリーンルームには、外部から異物混入を防ぐために陽圧(附室より高い室圧)とし、また、クリーンルームから外部へ有害物質の拡散を防止するために陰圧(附室より低い室圧)とする必要がある。以下、クリーンルームに隣接する附室のうち、クリーンルームより陽圧の附室を第1附室、クリーンルームより陰圧の附室を第2附室と称する。
【0006】
しかしながら、特許文献1のように排気を壁面下部に開設した排気孔で行なう場合、クリーンルーム、第1附室、第2附室は排気孔を介して二重壁のチャンバーに直接連通することになり、同じ室圧となってしまう。
【0007】
そこで、図7に示すように、クリーンルーム90、第1附室91、第2附室92に夫々独立した給気ダクト93と還気ダクト94を配設し、空調ユニット95と連繋することで、各部屋90-92の室圧を独立できる室圧制御システム10が考えられる。しかしながら、ダクト93,94の配設が複雑になり、設置コスト増やメンテナンス増に繋がる。
【0008】
本発明の目的は、クリーンルームを室圧調整機構により調整できるダクトレス室圧制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るダクトレス室圧制御システムは、
クリーンルームと、
前記クリーンルームの天井及び壁を二重天井及び二重壁とし、一体に連通させたチャンバーと、
前記チャンバーから前記クリーンルームへ給気を行なうファンとフィルターを有する給気ユニットと、
前記クリーンルームと前記チャンバーを区画する壁に配置される室圧調整機構と、前記クリーンルームと前記チャンバーの室圧の差を検出する差圧センサーと、を具える還気ユニットであって、前記室圧調整機構は、前記差圧センサーの検出値により前記クリーンルームの室圧を調整する、還気ユニットと、
を具える。
【0010】
第1扉を介して外部と接続され、前記クリーンルームと第2扉を介して接続される第1附室と、
前記クリーンルームと第3扉を介して接続され、第4扉を介して外部と接続される第2附室と、
前記チャンバーから前記第1附室へ給気を行なうファンとフィルターを有する第1給気ユニットと、
前記第1附室と前記チャンバーを区画する壁に配置される第1室圧調整機構と、前記第1附室と前記チャンバーの室圧の差を検出する第1差圧センサーと、を具える第1還気ユニットであって、前記第1室圧調整機構は、前記第1差圧センサーの検出値により前記第1附室の室圧を調整する、第1還気ユニットと、
前記チャンバーから前記第2附室へ給気を行なうファンとフィルターを有する第2給気ユニットと、
前記第2附室と前記チャンバーを区画する壁に配置される第2室圧調整機構と、前記第2附室と前記チャンバーの室圧の差を検出する第2差圧センサーと、を具える第2還気ユニットであって、前記第2室圧調整機構は、前記第2差圧センサーの検出値により前記第2附室の室圧を調整する、第2還気ユニットと、
を具える構成とすることができる。
【0011】
前記チャンバーの圧力を外部よりも陽圧に調整し、
前記クリーンルームを陽圧管理することができる。
【0012】
前記チャンバーの圧力を外部よりも陽圧に調整し、
前記クリーンルーム、前記第1附室及び前記第2附室を陽圧管理することができる。
【0013】
前記チャンバーの圧力を外部よりも陰圧に調整し、
前記クリーンルームを陰圧管理することができる。
【0014】
前記チャンバーの圧力を外部よりも陰圧に調整し、
前記クリーンルーム、前記第1附室及び前記第2附室を陰圧管理することができる。
【0015】
前記二重天井の上外面に、前記チャンバーに連通し、冷却機構、加熱機構、加湿機構及び送風機構を具えた空調ユニットが設置されている構成とすることができる。
【0016】
室圧は、前記第1附室が最も高く調整されることができる。
【0017】
また、本発明の拡張型ダクトレス室圧制御システムは、
サブクリーンルームと、
前記サブクリーンルームの天井及び壁を二重天井及び二重壁とし、一体に連通させたサブチャンバーと、前記サブチャンバーから前記サブクリーンルームへ給気を行なうファンとフィルターを有するサブ給気ユニットと、
前記サブクリーンルームと前記サブチャンバーを区画する壁に配置されるサブ室圧調整機構と、前記サブクリーンルームと前記サブチャンバーの室圧の差を検出するサブ差圧センサーと、を具えるサブ還気ユニットであって、前記サブ室圧調整機構は、前記サブ差圧センサーの検出値により前記サブクリーンルームの室圧を調整する、サブ還気ユニットと、
を有するサブダクトレス室圧制御システムと、
上記記載のダクトレス室圧制御システムと、
を含み、
前記ダクトレス室圧制御システムと、前記サブダクトレス室圧制御システムを、前記クリーンルームと前記サブクリーンルームが連通するよう連結してなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のダクトレス室圧制御システムは、クリーンルームに二重天井と二重壁からなるチャンバーを設け、クリーンルームとチャンバーは、室圧調整チャンバーを具える還気ユニットにより接続している。これにより、クリーンルーム内を所定の設定範囲内で陽圧又は陰圧に調整できる。
【0019】
また、本発明の拡張型ダクトレス室圧制御システムは、上記ダクトレス室圧制御システムに、第2ダクトレス室圧制御システムを連結して構成される。拡張型ダクトレス室圧制御システムは、ダクトレス室圧制御システムと第2ダクトレス室圧制御システムの数を変えて連結することで、ニーズに合わせた自由度の高いクリーンルームを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態を示すダクトレス室圧制御システムの斜視図であって、壁面や扉を透過して示している。
図2図2は、ダクトレス室圧制御システムの各部屋を含む平面図である。
図3図3は、ダクトレス室圧制御システムの二重天井空間の平面図である。
図4図4は、ダクトレス室圧制御システムの空気の流れを示すフロー図である。
図5図5は、拡張型ダクトレス室圧制御システムの斜視図であって、一部の壁を省略、透過して示している。
図6図6は、第2ダクトレス室圧制御システムの概略構成を示す分解図である。
図7図7は、先行技術で説明するダクトにより空調ユニットと各部屋を接続した室圧制御システムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明のダクトレス室圧制御システム10について説明を行なう。本発明のダクトレス室圧制御システム10は、細胞培養加工施設や、医療施設、再生医療施設、半導体や精密機械、医薬品、食品などの製造施設の用途が挙げられるが、これは例示であって、用途を限定するものではない。
【0022】
ダクトレス室圧制御システム10は、図1に示すように、床面20と外天井面21との間を外壁24で囲んで構成することができる。なお、説明のため、ダクトレス室圧制御システム10への入退場を行なう第1扉42a、第4扉43b側を「前」としたとき、外壁24は、前壁25に扉42a,43bが設けられ、後壁26にはクリーンルーム40の内部を視認可能とする窓27を設けることができる。
【0023】
ダクトレス室圧制御システム10の内部には、清浄度の管理区域となるクリーンルーム40と、クリーンルーム40に接続された2つの附室42,43を具える。クリーンルーム40は、細胞培養や各種作業等が行なわれる空間である。一方の附室42は、クリーンルーム40に入る作業者がクリーンルームウェアに着替える着衣室であって、第1附室の一例である。もう一方の附室43は、クリーンルーム40から出た作業者がクリーンルームウェアを脱ぐ脱衣室であって、第2附室の一例である。クリーンルーム40への入場は着衣室42、退場は脱衣室43を経由して行なわれる。すなわち、クリーンルーム40は、清浄度の管理区域外となる外部とは直接連通しない空間としている。なお、第1附室42、第2附室43のその使用用途や名称はこれに限定されない。
【0024】
なお、第1附室42、第2附室43は、必須ではなく、本発明は、クリーンルーム40のみ、或いは、クリーンルーム40と1つの附室、或いは、3を超える附室からなる構成としてもよい。また、第1附室、第2附室は、着衣室42、脱衣室43に限るものではない。
【0025】
以下では、第1附室42はクリーンルーム40よりも陽圧の空間、第2附室43はクリーンルーム40よりも陰圧の空間として説明するが、これは、室圧の組み合わせの一例である。たとえば、クリーンルーム40のみの場合、クリーンルーム40が外部よりも陽圧、または、陰圧に調整することができる。さらには、何れかの2室が同圧である構成であってもよい。
【0026】
ダクトレス室圧制御システム10は、外天井面21の下側に内天井面22を設けた二重天井に形成されている。外天井面21と内天井面22との間の空間を二重天井空間31と称する。
【0027】
また、内天井面22と床面20との間には、仕切り壁28が配置されている。仕切り壁28は外壁24と共に、図2に示すように、クリーンルーム40、着衣室42、脱衣室43を区画し、さらに、後で説明する二重壁空間32を区画する。
【0028】
クリーンルーム40は、外壁24と仕切り壁28によって区画された空間である。本実施形態では、クリーンルーム40は前側に出っ張った張り部41を有する略凸形状としているが、形状はこれに限定されるものではない。
【0029】
着衣室42と脱衣室43は、クリーンルーム40と隣り合うよう設けられる。本実施形態では、着衣室42と脱衣室43は、クリーンルーム40の張り部41及び前二重壁空間32aを挟んだ左右に設けられている。
【0030】
着衣室42は、外壁24に外部から着衣室42に入るための第1扉42a、仕切り壁28にクリーンルーム40に通じる第2扉42bが設けられている。また、脱衣室43は、仕切り壁28にクリーンルーム40に通じる第3扉43aと、外壁24に脱衣室43から外部に出るための第4扉43bが設けられている。本実施形態では、第1扉42a及び第4扉43bは、ダクトレス室圧制御システム10の前側、また、第2扉42b、第3扉43aは、各部屋42,43と張り部41を仕切る仕切り壁28に設けている。
【0031】
ダクトレス室圧制御システム10には、各部屋40,42,43を連通する二重壁空間32が形成されている。二重壁空間32は、外壁24と仕切り壁28によって区画して形成することができる。図示の実施形態では、二重壁空間32を2つ形成しており、符号32aは、張り部41の前側に設けられた前二重壁空間、符号32bは、クリーンルーム40の後ろ側に設けられた後二重壁空間である。後二重壁空間32bの仕切り壁28には窓29を設け、後壁26の窓27を通じて、外部から視認可能とすることができる。なお、二重壁空間32の大きさや配置などは、これに限るものではない。たとえば、二重壁空間は、前二重壁空間32aのみとしてもよいし、各部屋に対して1つずつ設けてもよい。
【0032】
二重天井空間31と二重壁空間32(32aと32b)は、内天井面22に開設された連通開口33a,33bによって接続されて、気密なチャンバー30を構成する。
【0033】
チャンバー30は、各部屋40,42,43と空調ユニット60を接続する空気の流通経路として機能する。従って、本発明のダクトレス室圧制御システム10では、各部屋40,42,43間の接続や、各部屋と空調ユニット60の接続に配管(ダクト)は不要であり、構成を極めて簡便にすることができる。また、チャンバー30は、比較的大きい容積に形成できるから、バッファー空間としても機能し、各部屋の室圧の急激な変化を避け、安定化を図ることができる。
【0034】
ダクトレス室圧制御システム10には、チャンバー30から各部屋40,42,43に空気を導入する給気ユニット(給気ユニット50、第1給気ユニット51、第2給気ユニット52)、各部屋40,42,43からチャンバー30に空気を還気する還気ユニット53-55、チャンバー30内で空気の温度と湿度を調整する空調ユニット60を具える。
【0035】
具体的には、本実施形態では、ダクトレス室圧制御システム10内は、外部よりも陽圧となるように調整される。すなわち、扉42a,42b,43a,43bを開けても、ダクトレス室圧制御システム10内には外気が侵入しないように構成される。ダクトレス室圧制御システム10内では、着衣室42の室圧が最も高く、次いでクリーンルーム40、脱衣室43の順となるように制御される。図4に室圧の高さを丸囲みのプラス記号で示しており、着衣室42はプラスが3つ、クリーンルーム40はプラスが2つ、脱衣室43はプラスが1つである。
【0036】
一方、清浄度については、クリーンルーム40が最もグレードが高く制御され、次いで、着衣室42、脱衣室43の順とすることができる。
【0037】
一実施形態として、給気ユニット50-52は、送風機能とフィルター機能を具備した所謂ファンフィルターシステムを採用できる。フィルターはHEPAフィルターを例示でき、ファンは送風能力が可変なものが用いられる。給気ユニット50-52は、予め設定された室圧となるようにファンの出力を調整しつつ作動し、各部屋40,42,43にチャンバー30から空気を導入する。搭載されるHEPAフィルターのグレード及び風量を変えることで、各部屋40,42,43に求められる清浄度に合わせた空気清浄を行なうことができる。
【0038】
たとえば、給気ユニット50-52は、図3に示すように、クリーンルーム40、着衣室42及び脱衣室43の各内天井面22に設けることができる。
【0039】
一方、還気ユニット53-55は、風量を調整可能な室圧調整機構を具える。室圧調整機構は、たとえば、室圧調整ダンパーを採用できる。室圧調整ダンパー53a-55aは、各部屋40,42,43と二重壁空間32を区画する仕切り壁28に設置することができる。室圧調整ダンパー53a(第1室圧調整ダンパー54、第2室圧調整ダンパー55a)は、各部屋40,42,43とチャンバー30との室圧の差を検出する差圧センサー(図示せず:室圧調整ダンパー53aは差圧センサー、第1室圧調整ダンパー54は第1差圧センサー、第2室圧調整ダンパーは第2差圧センサーに対応する)を具え、差圧センサーに設定された差圧に基づいて開閉可能な可動羽根の開度を調整して、各部屋40,42,43からチャンバー30に空気を排出することで、室圧をコントロールする。なお、室圧調整機構は、室圧調整ダンパーに限定されるものではない。
【0040】
クリーンルーム40の室圧調整ダンパー53aは、図1図2に示すように、張り部41と前二重壁空間32aを区画する仕切り壁28に1基、クリーンルーム40と後二重壁空間32bを区画する仕切り壁28に3基配備している。また、着衣室42と脱衣室43の室圧調整ダンパー54a,55aは、二重壁空間32との間の仕切り壁28に1基配備している。もちろん、室圧調整ダンパー53a-55aの数や配置はこれに限定されるものではない。
【0041】
空調ユニット60は、チャンバー30内の空気の温度・湿度・圧力を調整する機構である。チャンバー30内の空気は、還気ダクト65を通じて空調ユニット60に流入し、給気ダクト66からチャンバー30に戻される。たとえば、図1に示すように、空調ユニット60は、二重天井空間31の上側、すなわち、外天井面21の上面に配置することができる。空調ユニット60をダクトレス室圧制御システム10の外側に配置することで、各機構の熱影響を排除できる。
【0042】
具体的実施形態として、空調ユニット60は、図4に示すように、冷却機構61、加熱機構62、加湿機構63及び送風機構64を具える。空調ユニット60には、適所に温度センサー、湿度センサーが配備され、流通する空気の温度、湿度を適宜測定し、各機構は最適な温度、湿度となるように制御する。
【0043】
冷却機構61は、還気ダクト65から流入する空気を冷却して、除湿を行なう機構である。たとえば、冷却機構61は、送風機構64を兼ねた所謂パッケージ空調機(PAC)を採用できる。なお、送風機構64は、シロッコファンなどを独立して設けることもできる。
【0044】
加熱機構62は、冷却機構61の下流側に配置され、冷却機構61で冷却、除湿された空気を必要に応じて適温まで昇温させる。たとえば、加熱機構62は、電気式の再熱ヒーターを採用できる。
【0045】
加湿機構63は、加熱機構62の下流側に配置され、加熱機構62を通過した空気を所望の湿度まで加湿する。加湿機構63は、電熱式の蒸気加湿システムを採用できる。
【0046】
加湿機構63で加湿された空気は、送風機構64(本実施形態では冷却機構61に配備)により、給気ダクト66を通じてチャンバー30に流出させる。
【0047】
なお、空調ユニット60は、図4に示すように、チャンバー30内の圧力が所定の設定範囲を下回ったときに、チャンバー30に外気を導入する外気取入機構67を具えることが望ましい。外気取入機構67は、外気と連通する外気取入ダクト67aに外気取入ファン67bとチャッキダンパー67cを具えた構成とすることができ、外気取入ダクト67aは還気ダクト65に合流している。然して、チャンバー30内の圧力が所定の設定範囲を下回ったときに、外気取入ファン67bを起動し、チャッキダンパー67cを開放し、外気取入ダクト67aを介して空調ユニット60に外気を送り込み、チャンバー30の圧力を高めることができる。
【0048】
また、空調ユニット60は、図4に示すように、チャンバー30内の圧力が所定の設定範囲を上回ったときに、チャンバー30内の空気を外部に放出する空気放出機構68を具えることが望ましい。図示の実施形態では、空気放出機構68は、外気と連通する空気放出ダクト68aに逃し弁68bを具えた構成とすることができ、空気放出ダクト68aは給気ダクト66から分岐している。然して、チャンバー30内の圧力が所定の設定範囲を上回ったときに、逃し弁68bを開放して空気を放出することで、チャンバー30の圧力を下げることができる。
【0049】
然して、上記構成のダクトレス室圧制御システム10は、利用者の操作により各機構が作動する。
【0050】
具体的には、給気ユニット50-52及び室圧調整ダンパー53a-55aは、各部屋40,42,43の室圧、或いは、差圧センサーによって測定される各室とチャンバー30との差圧に応じて作動する。室圧が各部屋に対して予め設定された範囲を下回った場合には、該当する部屋の給気ユニットはファンの出力を大きくし、室圧調整ダンパー53a-55aの可動羽根の開度を小さくする。これにより、チャンバー30から該当する部屋に流入する空気量が増大し、流出する空気量が減少するから、室圧を高めることができる。他方、室圧が所定の設定範囲を上回った場合には、該当する部屋の給気ユニットはファンの出力を小さくし、室圧調整ダンパーは、差圧センサーによって検出されるチャンバー30との差圧に基づき可動羽根の開度が大きくなるように調整する。これにより、該当する部屋からチャンバー30に流入する空気量が減少し、流出する空気量が増大するから、室圧を下げることができる。
【0051】
室圧調整ダンパー53a-55aを還気ユニット53-55として採用したことで、各部屋40,42,43とチャンバー30の差圧に基づき、可動羽根の開度を調整するだけで、室圧を調整できる。
【0052】
空調ユニット60は、送風機構64を兼ねる冷却機構61が、チャンバー30内の空気を還気ダクト65から吸い込み、冷却・除湿を行なう。そして、加熱機構62で適温まで昇温、さらに、加湿機構63にて加湿を行なう。空調ユニット60は、チャンバー30の外に配置されているから、ダクトレス室圧制御システム10内への熱影響を減じることができる。
【0053】
空調ユニット60で温度・湿度が調整された空気は、給気ダクト66からチャンバー30に戻され、給気ユニット50-52から再び各部屋40,42,43に供給される。
【0054】
空調ユニット60に外気取入機構67を設けた場合は、チャンバー30内の圧力が所定の設定範囲を下回ると、外気取入ファン67bを起動し、チャッキダンパー67cを開放し、外気取入ダクト67aを介して空調ユニット60に外気を送り込んで、チャンバー30の圧力を高めることができる。
【0055】
また、空調ユニット60に空気放出機構68を設けた場合は、チャンバー30内の圧力が所定の設定範囲を上回ると、逃し弁68bを開放して空気を放出し、チャンバー30の圧力を下げることができ、チャンバー30内の圧力を一定に保つことにより室圧調整ダンパー53a-55aのハンチング防止ができる。
【0056】
上記のように、本発明のダクトレス室圧制御システム10によれば、各部屋40,42,43の室圧を独立して制御することができる。従って、クリーンルーム40に脱衣室43からの空気の流入を防止でき、清浄度を保つことができる。
【0057】
また、本発明のダクトレス室圧制御システム10では、二重壁空間32及び二重天井空間31によりチャンバー30を構成している。従って、ダクトは空調ユニット60とチャンバー30を接続する還気ダクト65と給気ダクト66、空調ユニット60の各機構どうしを接続するダクトだけで済む。このため、図7に示すような複雑なダクトは不要であるから、ダクト材等の資源の削減や、メンテナンスの削減による省人化が図れる。
【0058】
図5は、本発明のダクトレス室圧制御システム10を主体とする拡張型ダクトレス室圧制御システム70の斜視図である。図示では、ダクトレス室圧制御システム10に、3つのサブダクトレス室圧制御システム80を接続している。
【0059】
上記したダクトレス室圧制御システム10は、クリーンルーム40の側壁を一部が着脱可能なパネルとし、側壁の一部を取り外すことで開口して、サブダクトレス室圧制御システム80と接続可能となっている。
【0060】
サブダクトレス室圧制御システム80は、図6に示すように、ダクトレス室圧制御システム10から着衣室42、脱衣室43を省いた構成、より具体的には、着衣室42と脱衣室43に接続された張り部41と前二重壁空間32aも省いた構成とすることができる。
【0061】
サブダクトレス室圧制御システム80は、サブクリーンルーム81の上側に二重天井に構成されたサブ二重天井空間82を有し、後面側に二重壁に構成されたサブ二重壁空間83を有し、これらが接続されてサブチャンバー84を構成している。
【0062】
サブダクトレス室圧制御システム80も、左右の側壁85の一部は、着脱式のパネル86としている。
【0063】
サブダクトレス室圧制御システム80は、サブ二重天井空間82とサブクリーンルーム81を接続するサブ給気ユニット87と、サブクリーンルーム81とサブ二重壁空間83を接続するサブ還気ユニット88を具える。サブ還気ユニット88は、サブ室圧調整ダンパー88a(サブ室圧調整機構)と、サブクリーンルーム81と前記サブチャンバー84の室圧の差を検出するサブ差圧センサー(図示せず)と、を具え、ダクトレス室圧制御システム10と同様、サブ室圧調整ダンパー88aは、サブ差圧センサーの検出値によりサブクリーンルーム81の室圧を調整する。
【0064】
また、サブダクトレス室圧制御システム80の上外面には、サブ空調ユニット(図示せず)を配置することができる。サブ給気ユニット87、サブ還気ユニット88及びサブ空調ユニットは、クリーンルーム40の給気ユニット50、還気ユニット53、空調ユニット60と同様の構成とすることができる。
【0065】
然して、ダクトレス室圧制御システム10は、側壁のパネルを取り外し、隣に同様にパネル86を取り外したサブダクトレス室圧制御システム80を気密に連結することで、拡張型ダクトレス室圧制御システム70を提供できる。サブダクトレス室圧制御システム80を複数連結することで、さらに規模の大きい拡張型ダクトレス室圧制御システム70を提供できる。
【0066】
本発明の拡張型ダクトレス室圧制御システム70によれば、ニーズに応じてダクトレス室圧制御システム10、サブダクトレス室圧制御システム80の数を変えてモジュール型に連結し、クリーンルームを自在に3次元拡張等することができ、自由度の高いレイアウトを提供できる。
【0067】
拡張型ダクトレス室圧制御システム70内は、パネル86が取り外された開口を通じて、クリーンルーム40とサブクリーンルーム81を利用者が行き来することができ、また、物を移動させることができる。クリーンルーム40又はサブクリーンルーム81に大型機器を搬入出する場合には、端のサブクリーンルーム81のパネル86を取り外せばよい。
【0068】
変形例として、ダクトレス室圧制御システム10をサブダクトレス室圧制御システム80,80の間に挿入する構成としてもよい。また、複数のサブダクトレス室圧制御システム80に対して、複数のダクトレス室圧制御システム10を配置する構成としてもよい。
【0069】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
10 ダクトレス室圧制御システム
21 外天井面
22 内天井面
24 外壁
28 仕切り壁
30 チャンバー
31 二重天井空間
32 二重壁空間
40 クリーンルーム
42 着衣室(第1附室)
43 脱衣室(第2附室)
50-52 給気ユニット
53-55 還気ユニット
53a-55a 室圧調整機構(室圧調整ダンパー)
60 空調ユニット
70 拡張型ダイレクト室圧制御システム
80 サブダイレクト室圧制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7