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特開2024-40904ポリエステル系合成繊維用処理剤、ポリエステル系合成繊維用処理剤含有組成物、ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、ポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物、ポリエステル系合成繊維用第2処理剤、ポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物、ポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液、ポリエステル系合成繊維の処理方法、及びポリエステル系合成繊維
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040904
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ポリエステル系合成繊維用処理剤、ポリエステル系合成繊維用処理剤含有組成物、ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、ポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物、ポリエステル系合成繊維用第2処理剤、ポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物、ポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液、ポリエステル系合成繊維の処理方法、及びポリエステル系合成繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 15/53 20060101AFI20240318BHJP
D06M 13/292 20060101ALI20240318BHJP
D06M 13/17 20060101ALI20240318BHJP
D06M 13/184 20060101ALI20240318BHJP
D06M 101/32 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
D06M15/53
D06M13/292
D06M13/17
D06M13/184
D06M101:32
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145558
(22)【出願日】2022-09-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高山 義弘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智八
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA07
4L033AB01
4L033AC09
4L033BA14
4L033BA16
4L033BA39
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】合成繊維用処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上でき、また、合成繊維用処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できるとともに、繊維強度の低下を抑制できるポリエステル系合成繊維用処理剤等を提供する。
【解決手段】本発明のポリエステル系合成繊維用処理剤は、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、下記の有機酸化合物(B)、及び下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用処理剤であって、前記ポリエステル系合成繊維用処理剤の5質量%水希釈液の25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下であることを特徴とする。有機酸化合物(B):有機酸、有機酸塩、及び有機酸無水物から選ばれる少なくとも1つ。有機リン酸エステル化合物(C):分子中に炭素数16以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、下記の有機酸化合物(B)、及び下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用処理剤であって、
前記ポリエステル系合成繊維用処理剤の5質量%水希釈液の25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下であることを特徴とするポリエステル系合成繊維用処理剤。
有機酸化合物(B):有機酸、有機酸塩、及び有機酸無水物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):分子中に炭素数16以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項2】
前記有機酸化合物(B)が、カルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である1~5塩基性カルボン酸、カルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である1~5塩基性カルボン酸の塩、及びカルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である2~5塩基性カルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)が、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミンから選ばれる少なくとも1つを含む請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、前記有機酸化合物(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)と前記有機酸化合物(B)とを合計で20質量部以上80質量部以下、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を20質量部以上80質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項5】
前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤と、
前記有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤と、がセットで構成され、
前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に前記有機酸化合物(B)を含有する請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項6】
前記ポリエステル系合成繊維が、ポリエステル短繊維である請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項7】
前記ポリエステル系合成繊維が、紡績糸製造用である請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むことを特徴とするポリエステル系合成繊維用処理剤含有組成物。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項9】
下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤、又は下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤及び下記の溶媒(S)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物と、併用され、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤であって、
前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記の有機酸化合物(B)を含有し、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤の混合物を5質量%水希釈液とした場合、25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下であることを特徴とするポリエステル系合成繊維用第1処理剤。
有機酸化合物(B):有機酸、有機酸塩、及び有機酸無水物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):分子中に炭素数16以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項10】
請求項9に記載のポリエステル系合成繊維用第1処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有することを特徴とするポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項11】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤、又は(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び下記の溶媒(S)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物と、併用され、下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤であって、
前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記の有機酸化合物(B)を含有し、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤の混合物を5質量%水希釈液とした場合、25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下であることを特徴とするポリエステル系合成繊維用第2処理剤。
有機酸化合物(B):有機酸、有機酸塩、及び有機酸無水物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):分子中に炭素数16以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項12】
請求項11に記載のポリエステル系合成繊維用第2処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有することを特徴とするポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤を含有し、前記ポリエステル系合成繊維用処理剤の濃度が、0.1質量%以上10質量%以下であることを特徴とするポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液。
【請求項14】
水に、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤を添加して得られたポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを特徴とするポリエステル系合成繊維の処理方法。
【請求項15】
水に、請求項8に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤含有組成物を添加して得られたポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを特徴とするポリエステル系合成繊維の処理方法。
【請求項16】
水に、請求項9に記載のポリエステル系合成繊維用第1処理剤又は請求項10に記載のポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物と、請求項11に記載のポリエステル系合成繊維用第2処理剤又は請求項12に記載のポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物と、を添加して得られたポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを特徴とするポリエステル系合成繊維の処理方法。
【請求項17】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とするポリエステル系合成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系合成繊維用処理剤、ポリエステル系合成繊維用処理剤含有組成物、ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、ポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物、ポリエステル系合成繊維用第2処理剤、ポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物、ポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液、ポリエステル系合成繊維の処理方法、及びポリエステル系合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成繊維の紡糸延伸工程、仕上げ工程等において、例えば合成繊維の摩擦低減、帯電防止性、集束性等の観点から、繊維の表面に合成繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
【0003】
従来、特許文献1~5に開示の合成繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、所定のアルキル基を有するアルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩、所定の界面活性剤、及び所定のリン酸金属塩を所定の割合で含有して成り、アルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩の酸価が0.1~90KOHmg/gであるポリエステル系合成繊維用処理剤について開示する。特許文献2は、所定のアルキルリン酸エステル類、所定の界面活性剤、及び所定のアルキル基を有する1価脂肪族アルコールを所定の割合で含有するポリエステル系合成繊維用処理剤について開示する。特許文献3は、ポリビニルアルコール又はその誘導体からなるA成分と、所定のアルキル基を有するアルキル燐酸エステルカリウム塩又はポリオキシアルキレンアルキル燐酸エステルカリウム塩からなるB成分とを必須成分として含み、A成分とB成分を所定の割合で配合する紡績糸製造用繊維処理剤について開示する。特許文献4は、特定の有機酸、2種類のアルキルリン酸エステル塩、及びポリオキシアルキレン誘導体を所定の割合で含有し、水性液のpHが3以上7未満となるポリオレフィン系合成繊維用処理剤について開示する。特許文献5は、フマル酸、特定の非イオン界面活性剤、アルキル基の炭素数が8~16であるジアルキルスルホコハク酸塩、及びポリグリセリン脂肪酸エステルを所定の割合で含有するポリオレフィン系合成繊維用処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5796922号公報
【特許文献2】特許第5796923号公報
【特許文献3】特許第5651033号公報
【特許文献4】特許第6057489号公報
【特許文献5】特開2018-31090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の合成繊維用処理剤は、合成繊維用処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性が低下することにより、析出物等が生ずる場合があった。また、合成繊維用処理剤が付与された繊維表面の粘着が高くなり、紡績不良が生ずる場合があった。また、合成繊維用処理剤が付与された繊維の強度が低下することにより、工程通過不良が生ずる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、ポリエステル系合成繊維用処理剤において、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、所定の有機酸化合物(B)、及び所定の有機リン酸エステル化合物(C)を含有し、pHを規定した構成が好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1のポリエステル系合成繊維用処理剤は、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、下記の有機酸化合物(B)、及び下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用処理剤であって、前記ポリエステル系合成繊維用処理剤の5質量%水希釈液の25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下であることを要旨とする。
【0008】
有機酸化合物(B):有機酸、有機酸塩、及び有機酸無水物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):分子中に炭素数16以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0009】
態様2は、態様1のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記有機酸化合物(B)が、カルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である1~5塩基性カルボン酸、カルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である1~5塩基性カルボン酸の塩、及びカルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である2~5塩基性カルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1つである。
【0010】
態様3は、態様1又は2に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)が、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミンから選ばれる少なくとも1つを含む。
【0011】
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、前記有機酸化合物(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)と前記有機酸化合物(B)とを合計で20質量部以上80質量部以下、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を20質量部以上80質量部以下の割合で含有する。
【0012】
態様5は、態様1~4のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤と、前記有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤と、がセットで構成され、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に前記有機酸化合物(B)を含有する。
【0013】
態様6は、態様1~5のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記ポリエステル系合成繊維が、ポリエステル短繊維である。
態様7は、態様1~6のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記ポリエステル系合成繊維が、紡績糸製造用である。
【0014】
態様8のポリエステル系合成繊維用処理剤含有組成物は、態様1~7のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むことを要旨とする。
【0015】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様9のポリエステル系合成繊維用第1処理剤は、下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤、又は下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤及び下記の溶媒(S)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物と、併用され、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤であって、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記の有機酸化合物(B)を含有し、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤の混合物を5質量%水希釈液とした場合、25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下であることを要旨とする。
【0016】
有機酸化合物(B):有機酸、有機酸塩、及び有機酸無水物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):分子中に炭素数16以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0017】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様10のポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物は、態様9に記載のポリエステル系合成繊維用第1処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有することを要旨とする。
【0018】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様11のポリエステル系合成繊維用第2処理剤は、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤、又は(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び下記の溶媒(S)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物と、併用され、下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤であって、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記の有機酸化合物(B)を含有し、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤の混合物を5質量%水希釈液とした場合、25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下であることを要旨とする。
【0019】
有機酸化合物(B):有機酸、有機酸塩、及び有機酸無水物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):分子中に炭素数16以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0020】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様12のポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物は、態様11に記載のポリエステル系合成繊維用第2処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有することを要旨とする。
【0021】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様13のポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液は、態様1~7のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤を含有し、前記ポリエステル系合成繊維用処理剤の濃度が、0.1質量%以上10質量%以下であることを要旨とする。
【0022】
態様14のポリエステル系合成繊維の処理方法は、水に、態様1~7のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤を添加して得られたポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを要旨とする。
【0023】
態様15のポリエステル系合成繊維の処理方法は、水に、態様8に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤含有組成物を添加して得られたポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを要旨とする。
【0024】
態様16のポリエステル系合成繊維の処理方法は、水に、態様9に記載のポリエステル系合成繊維用第1処理剤又は態様10に記載のポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物と、態様11に記載のポリエステル系合成繊維用第2処理剤又は態様12に記載のポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物と、を添加して得られたポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを要旨とする。
【0025】
態様17のポリエステル系合成繊維は、態様1~7のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤が、付着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、合成繊維用処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。また、合成繊維用処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できるとともに、繊維強度の低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
以下、本発明のポリエステル系合成繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、下記の有機酸化合物(B)、及び下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有し、処理剤の5質量%水希釈液の25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下である。
【0028】
((ポリ)オキシアルキレン誘導体(A))
本実施形態に供される(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)は、界面活性剤として処理剤の安定性を向上させることにより処理剤としての各機能を向上させる。
【0029】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)としては、例えばアルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するもの、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、アミン化合物として脂肪族アミン類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するもの、脂肪酸アミド類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するもの、ポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖とを有するブロック共重合体等が挙げられる。
【0030】
これらの中で、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルケニルアミンが好ましい。また、処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性をより向上できる観点から、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルケニルアミンがより好ましい。
【0031】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0032】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸、(6)ヒマシ油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核脂肪酸、ヤシ油脂肪酸等の天然由来の脂肪酸等が挙げられる。
【0033】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上250モル以下、より好ましくは1モル以上200モル以下、さらに好ましくは2モル以上150モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0034】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0035】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の原料として用いられる脂肪族アミンの具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、ヤシアミン等が挙げられる。
【0036】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の原料として用いられる脂肪酸アミドの具体例としては、例えばオクチル酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド等が挙げられる。
【0037】
ポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖とを有するブロック共重合体は、親水性の低いポリオキシプロピレン鎖及び親水性の高いポリオキシエチレン鎖を有し、界面活性作用を有するものであれば特に限定されない。分子中におけるポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖の数は特に限定されず、例えば1つのポリオキシプロピレン鎖と1つのポリオキシエチレン鎖からなるブロック共重合体であってもよく、ポリオキシプロピレン鎖とそれを挟む2つのポリオキシエチレン鎖からなるポロキサマー系界面活性剤であってもよい。また、多価アルコールにポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖を付加させたエーテル化合物であってもよい。ポリオキシエチレン鎖を形成するエチレンオキサイドの付加モル数は特に限定されず、例えば5モル以上200モル以下が挙げられる。ポリオキシプロピレン鎖を形成するプロピレンオキサイドの付加モル数は特に限定されず、例えば5モル以上100モル以下が挙げられる。
【0038】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の具体例としては、例えばポリオキシエチレンデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ドデシルアミン、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)オクタデシルアミン、ポリオキシエチレンデシルエーテル、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)デシルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)C9-C11アルキルエーテル、ポリオキシエチレンC12-C13アルキルエーテル、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)C12-C13アルキルエーテル、ポリオキシエチレンC12-C14アルキルエーテル、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)トリデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)C11-C14アルキルエーテル、ポリオキシエチレンC11-C14アルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンテトラコシルエーテル、ポリオキシエチレンオクタコシルエーテル、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)硬化ひまし油、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)プロピレングリコール、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ブチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエステル、ヤシ脂肪酸-ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンオレイルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0039】
これらの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)は、一種類の(ポリ)オキシアルキレン誘導体を単独で使用してもよいし、又は二種以上の(ポリ)オキシアルキレン誘導体を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0040】
処理剤中において、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の含有割合の下限は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の含有割合が5質量%以上の場合、処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。また、かかる(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の含有割合の上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の含有割合が90質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0041】
(有機酸化合物(B))
本実施形態の処理剤に供される有機酸化合物(B)としては、有機酸、有機酸塩、有機酸無水物が挙げられる。有機酸化合物(B)により、特に処理剤が付与された繊維強度の低下を抑制できる。
【0042】
有機酸としては、例えば、カルボキシル基を有する化合物、後述する(C)成分以外のアルキルリン酸、アルキルスルホン酸、アルキル硫酸等が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物としては、1塩基酸であっても多塩基酸であってもよい、また、カルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数は、特に限定されない。カルボキシル基を有する化合物としては、例えば1価の脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸、多価カルボン酸(多塩基酸)、アミノ酸、アミノカルボン酸等が挙げられる。
【0043】
脂肪酸としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
【0044】
飽和脂肪酸の具体例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等が挙げられる。
【0045】
不飽和脂肪酸の具体例としては、例えばクロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。
【0046】
多価カルボン酸(多塩基酸)の具体例としては、例えば(1)シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸等の二塩基酸、(2)アコニット酸等の三塩基酸、(3)安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、(4)トリメリット酸等の芳香族トリカルボン酸、(5)ピロメリット酸等の芳香族テトラカルボン酸等が挙げられる。
【0047】
ヒドロキシ脂肪酸の具体例として、例えばクエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グリコール酸、リシノール酸等が挙げられる。
アミノ酸の具体例としては、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。
【0048】
アミノカルボン酸の具体例としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(エデト酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、1,3-プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、L-アスパラギン酸-N,N-二酢酸、エチレンジアミンジコハク酸等が挙げられる。
【0049】
アルキルスルホン酸の具体例としては、例えばラウリルスルホン酸(ドデシルスルホン酸)、ミリスチルスルホン酸、セチルスルホン酸、オレイルスルホン酸、ステアリルスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、二級アルキルスルホン酸(C13~15)等が挙げられる。
【0050】
アルキル硫酸の具体例としては、例えばラウリル硫酸エステル、オレイル硫酸エステル、ステアリル硫酸エステル等が挙げられる。
アルキルリン酸の具体例としては、例えばラウリルリン酸エステル、オクチルリン酸エステル等が挙げられる。
【0051】
有機酸の塩が適用される場合、塩としては、例えばアミン塩、金属塩等の形態が挙げられる。
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0052】
アミン塩を構成するアミンは、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
【0053】
有機酸無水物の具体例としては、例えば無水フマル酸、無水マレイン酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水シュウ酸、無水安息香酸等が挙げられる。
【0054】
これらの有機酸化合物(B)は、一種類の有機酸化合物を単独で使用してもよいし、又は二種以上の有機酸化合物を適宜組み合わせて使用してもよい。
これらの中で、処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる観点から、カルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である1~5塩基性カルボン酸、カルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である1~5塩基性カルボン酸の塩、及びカルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である2~5塩基性カルボン酸無水物が好ましい。
【0055】
処理剤中において、有機酸化合物(B)の含有割合の下限は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。有機酸化合物(B)の含有割合が1質量%以上の場合、処理剤のpHを適切な範囲に調整し、処理剤が付与された繊維強度の低下を抑制できる。また、かかる有機酸化合物(B)の含有割合の上限は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。有機酸化合物(B)の含有割合が25質量%以下の場合、処理剤のpHを適切な範囲に調整し、処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0056】
(有機リン酸エステル化合物(C))
本実施形態の処理剤に供される有機リン酸エステル化合物(C)としては、分子中に炭素数16以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩が挙げられる。有機リン酸エステル化合物(C)により、処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できる。
【0057】
炭化水素基としては、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。また、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐鎖を有する炭化水素基であってもよい。不飽和炭化水素基としては、不飽和炭素結合として二重結合を1つ有するアルケニル基であっても、二重結合を2つ以上有するアルカジエニル基、アルカトリエニル基等であってもよい。また、不飽和炭素結合として三重結合を1つ有するアルキニル基であっても、三重結合を2つ以上有するアルカジイニル基等であってもよい。
【0058】
飽和炭化水素基の具体例としては、例えばヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソノナデシル基、イソイコシル基等が挙げられる。
【0059】
炭化水素基中に二重結合を1つ有する不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソノナデセニル基、イソイコセニル基等が挙げられる。
【0060】
有機リン酸エステル化合物を構成するリン酸は、特に制限はなく、オルトリン酸であってもよいし、二リン酸等のポリリン酸であってもよい。有機リン酸エステルの塩が適用される場合、塩としては、例えばリン酸エステルアミン塩、リン酸エステル金属塩等が挙げられる。塩の具体例としては(B)有機酸化合物欄で例示したものが挙げられる。
【0061】
有機リン酸エステル化合物(C)の具体例としては、例えばセチルリン酸エステル、セチルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル、ステアリルリン酸エステル塩、アラキジルリン酸エステル、アラキジルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0062】
有機リン酸エステル化合物(C)の酸価は、特に限定されない。
これらの有機リン酸エステル化合物(C)は、一種類の有機リン酸エステル化合物を単独で使用してもよいし、又は二種以上の有機リン酸エステル化合物を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0063】
処理剤中において、有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の下限は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%である。有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合が5質量%以上の場合、処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できる。また、かかる有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合が90質量%以下の場合、処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0064】
処理剤中において、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、有機酸化合物(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量部としたとき、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)と有機酸化合物(B)とを合計で20質量部以上80質量部以下、及び有機リン酸エステル化合物(C)を20質量部以上80質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0065】
(処理剤のpH)
処理剤の5質量%水希釈液の25℃におけるpHの下限は、5.5以上である。かかるpHが5.5以上の場合、処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。処理剤の5質量%水希釈液の25℃におけるpHの上限は、8.5以下である。かかるpHが8.5以下の場合、処理剤が付与された繊維強度の低下を抑制できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0066】
(保存形態)
処理剤は、上述した成分(A)~(C)を含む1剤型として構成されてもよいし、製剤安定性を向上させる観点から、以下に示されるような2剤型の処理剤として構成されてもよい。
【0067】
2剤型の処理剤は、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤(以下、「第1処理剤」という)と、有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤(以下、「第2処理剤」という)と、を含むセットとして構成される。第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に有機酸化合物(B)を含有している。
【0068】
2剤型の処理剤は、保存時又は流通時等において第1処理剤と、該第1処理剤とは別剤として構成される第2処理剤とから構成されている。2剤型処理剤は、使用時に第1処理剤と第2処理剤とが混合された混合物が調製される。
【0069】
(溶媒)
本実施形態の処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル系合成繊維用処理剤含有組成物(以下、「処理剤含有組成物」という)が調製され、処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0070】
溶媒は、大気圧における沸点が105℃以下である溶媒である。溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、エタノール、プロパノール等の低級アルコール等、ヘキサン等の低極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中で、各成分の分散性又は溶解性に優れる観点から水、低級アルコール等の極性溶媒が好ましく、ハンドリング性に優れる観点から水がより好ましい。
【0071】
処理剤含有組成物中において、処理剤及び溶媒の含有割合の合計を100質量部とすると、処理剤を10質量部以上で含有することが好ましい。
第1実施形態の処理剤の効果について説明する。
【0072】
(1-1)上記第1実施形態の処理剤では、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、上述した有機酸化合物(B)、及び上述した有機リン酸エステル化合物(C)を含有し、処理剤の5質量%水希釈液の25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下に調整されている。
【0073】
したがって、処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。それにより、乳化液からの析出物及び/又は沈殿の発生を低減させ、処理剤の付着ムラによる繊維の品質ムラを低減できる。また、処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できるとともに、繊維強度の低下を抑制できる。それにより、工程通過不良による加工製品の品質ムラを低減できる。
【0074】
(1-2)上記第1実施形態の処理剤では、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有する第1処理剤と、有機リン酸エステル化合物(C)を含有する第2処理剤と、を含むセットとして構成されてもよい。第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に有機酸化合物(B)を含有する。かかる構成により、処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。
【0075】
<第2実施形態>
次に、本発明の第1処理剤を具体化した第2実施形態を説明する。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明する。
【0076】
本実施形態の第1処理剤では、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有する。第1処理剤は、使用時に有機リン酸エステル化合物(C)を含有する第2処理剤、又は有機リン酸エステル化合物(C)を含有する第2処理剤及び溶媒(S)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物(以下、「第2処理剤含有組成物」という)と併用される。第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に有機酸化合物(B)が含有される。また、第1処理剤及び第2処理剤の混合物について、処理剤として5質量%水希釈液とした場合、25℃におけるpHは、5.5以上8.5以下の範囲にある。
【0077】
なお、第1処理剤及び第2処理剤の混合物が、溶媒(S)として水を使用して得られた第2処理剤含有組成物を用いて得られた場合、以下の方法により、pHが測定される。
第1処理剤及び第2処理剤の混合物が、処理剤として5質量%以上の水希釈液の場合、混合物を処理剤として5質量%水希釈液とした後、25℃におけるpHを測定する。
【0078】
第1処理剤及び第2処理剤の混合物が、処理剤として5質量%未満の水希釈液の場合、得られた混合物を乾燥又は濃縮処理した後、混合物を処理剤として5質量%水希釈液とし、25℃におけるpHを測定する。
【0079】
第1処理剤及び第2処理剤の混合物が、溶媒(S)として水以外の溶媒を含む第2処理剤含有組成物を用いて得られた場合、以下の方法により、pHが測定される。
第1処理剤及び第2処理剤の混合物から溶媒を除去した後、混合物を処理剤として5質量%水希釈液とし、25℃におけるpHを測定する。混合物から溶媒の除去は、対象物を105℃で2時間熱処理することにより行うことができる。
【0080】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、有機酸化合物(B)、有機リン酸エステル化合物(C)、及び溶媒(S)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。
(溶媒)
本実施形態の第1処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物(以下、「第1処理剤含有組成物」という)が調製され、第1処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0081】
溶媒は、第1実施形態で例示したものを採用できる。第1処理剤含有組成物中において、第1処理剤及び溶媒の含有割合の合計を100質量部とすると、第1処理剤を10質量部以上で含有することが好ましい。
【0082】
第2実施形態の第1処理剤の効果について説明する。第2実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(2-1)第2実施形態の第1処理剤では、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有し、使用時に有機リン酸エステル化合物(C)を含有する第2処理剤と併用される。したがって、第1処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、第2処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、第1処理剤のみを第2処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0083】
<第3実施形態>
次に、本発明の第2処理剤を具体化した第3実施形態を説明する。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明する。
【0084】
本実施形態の第2処理剤では、有機リン酸エステル化合物(C)を含有する。第2処理剤は、使用時に(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有する第1処理剤、又は(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有する第1処理剤及び溶媒(S)を含有する第1処理剤含有組成物と併用される。第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に有機酸化合物(B)が含有される。また、第1処理剤及び第2処理剤の混合物を、処理剤として5質量%水希釈液とした場合、25℃におけるpHは、5.5以上8.5以下の範囲にある。なお、第1処理剤及び第2処理剤の混合物が、溶媒(S)を使用して得られた第1処理剤含有組成物を用いて得られた場合、第2実施形態に記載の方法と同様の方法により、pHが測定される。
【0085】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、有機酸化合物(B)、有機リン酸エステル化合物(C)、及び溶媒(S)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。
(溶媒)
本実施形態の第2処理剤は、必要により溶媒と混合することにより第2処理剤含有組成物が調製され、第2処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0086】
溶媒は、第1実施形態で例示したものを採用できる。第2処理剤含有組成物中において、第2処理剤及び溶媒の含有割合の合計を100質量部とすると、第1処理剤を10質量部以上で含有することが好ましい。
【0087】
第3実施形態の第2処理剤の効果について説明する。第3実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(3-1)第3実施形態の第2処理剤では、有機リン酸エステル化合物(C)を含有し、使用時に(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有する第1処理剤と併用される。したがって、第2処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、第1処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、第2処理剤のみを第1処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0088】
<第4実施形態>
次に、本発明のポリエステル系合成繊維の処理方法(以下、「繊維の処理方法」という)を具体化した第4実施形態を説明する。
【0089】
本実施形態の繊維の処理方法では、1剤型の処理剤の場合、溶媒と、第1実施形態の処理剤とを含む希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを特徴とする。希釈液の調製方法は、例えば溶媒に、第1実施形態の処理剤又は処理剤含有組成物を添加する方法が挙げられる。希釈液は、水に第1実施形態の処理剤又は処理剤含有組成物を添加して調製されることが好ましい。
【0090】
本実施形態の繊維の処理方法では、2剤型の処理剤の場合、溶媒と、第2実施形態の第1処理剤と、第3実施形態の第2処理剤とを含む処理剤の希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを特徴とする。希釈液の調製方法は、例えば溶媒に、第1処理剤又は第1処理剤含有組成物、及び第2処理剤又は第2処理剤含有組成物を添加する方法が挙げられる。希釈液は、水に第1処理剤又は第1処理剤含有組成物、及び第2処理剤又は第2処理剤含有組成物を添加して調製されることが好ましい。第1処理剤と第2処理剤との含有割合の比は、不揮発分の質量比として第1処理剤と第2処理剤=95/5~5/95であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。尚、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0091】
希釈液の製造に用いられる溶媒としては、第1実施形態で例示したものが挙げられる。希釈液は、操作性等の観点から処理剤の濃度として0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0092】
第1処理剤と第2処理剤とを併用する形態は、各剤の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な繊維特性又は繊維製造特性を付与するための処理剤又は希釈液を調製することが容易になる。
【0093】
処理剤を乳化するために、各処理剤又は処理剤含有組成物と溶媒とを混合し、公知の撹拌機、例えばホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、ラインミキサー等を用いて撹拌してもよい。
【0094】
繊維の処理方法は、上記のように得られた希釈液を、例えばポリエステル系合成繊維の紡糸工程、延伸工程、及び仕上工程の少なくとも1つの工程等において繊維に付与する方法である。
【0095】
希釈液が付与される繊維としては、ポリエステル系合成繊維が挙げられる。ポリエステル系合成繊維の具体例としては例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等が挙げられる。
【0096】
繊維の用途は、特に限定されず、例えば紡績用、紡績糸製造用、短繊維、長繊維、不織布、詰め綿用等が挙げられる。短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下である。これらの中で、本発明の希釈液は、ポリエステル短繊維、紡績糸製造用のポリエステル系合成繊維に適用されることが好ましい。
【0097】
希釈液を繊維に付着させる割合に特に制限はないが、希釈液を繊維に対し、最終的に固形分が好ましくは0.01質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下の割合となるよう付着させる。かかる構成により、各成分による効能を有効に発揮できる。また、希釈液を付着させる方法は、特に制限はなく、繊維の種類、形態、用途等により公知の方法、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等を採用できる。浸漬給油法が用いられる場合、浸漬時間は好ましくは1分以上5分以下である。
【0098】
希釈液が付与された繊維は、公知の方法を用いて乾燥又は加熱処理してもよい。乾燥又は加熱処理により水等の溶媒が揮発され、処理剤、又は第1処理剤、及び第2処理剤中に含有される成分が付着している繊維が得られる。
【0099】
第4実施形態の繊維の処理方法の効果について説明する。第4実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(4-1)第4実施形態の繊維の処理方法では、希釈液を、例えば紡糸工程、延伸工程、又は仕上工程等において繊維に付与する方法である。特に、水に第1実施形態の処理剤又は処理剤含有組成物を添加して調製されることにより、乳化安定性に優れる希釈液が得られる。または、水に第1処理剤又は第1処理剤含有組成物、及び第2処理剤又は第2処理剤含有組成物を添加して調製されることにより、乳化安定性に優れる希釈液が得られる。したがって、各成分による紡績用、紡績糸製造用、短繊維、長繊維、不織布、詰め綿用等に対する効能を有効に発揮できる。
【0100】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤の希釈液の調製方法は特に限定されず、第4実施形態の繊維の処理方法欄に記載の調製方法以外を採用してもよい。
【0101】
・上記実施形態の各処理剤、各組成物、又は希釈液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、各処理剤、各組成物、又は希釈液の品質保持のため、その他の成分として、その他の溶媒、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機酸、上記以外の界面活性剤等の通常処理剤等に用いられる成分をさらに配合してもよい。なお、溶媒以外の通常処理剤に用いられるその他の成分は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から各処理剤中において10質量%以下が好ましい。また、その他の成分を上述した各処理剤とは別剤として保存してもよい。
【実施例0102】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0103】
試験区分1(1剤型処理剤の調製)
(実施例1-1)
表1に示されるように、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)として表2に示されるポリオキシエチレン(10(アルキレンオキサイドを付加させたモル数を示す。以下同じ))デシルアミン(A-1)25部(%)、ポリオキシエチレン(5)デシルエーテル(A-10)10部(%)、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(r+s=10、rはエチレンオキサイドを付加させたモル数、sはプロピレンオキサイドを付加させたモル数(以下同じ))トリデシルエーテル(A-21)7部(%)、有機酸化合物(B)としてシュウ酸/シュウ酸カリウム塩=50/50(質量比)(B-1)8部(%)、有機リン酸エステル化合物(C)としてセチルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(C-3)50部(%)、その他成分(D)としてポリジメチルシロキサン(D-1)を成分(A)~(C)の合計100部に対して3部含む実施例1-1の処理剤を調製した。
【0104】
(実施例1-2~実施例1-28、比較例1-1~比較例1-10)
実施例1-2~実施例1-28、比較例1-1~比較例1-10の処理剤は、実施例1-1の処理剤と同様にして(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、有機酸化合物(B)、有機リン酸エステル化合物(C)、及びその他成分(D)を表1に示した割合で含むように調製した。
【0105】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の種類と含有量、有機酸化合物(B)の種類と含有量、有機リン酸エステル化合物(C)の種類と含有量、及びその他成分(D)の種類と含有量を、表1の「(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)」欄、「有機酸化合物(B)」欄、「有機リン酸エステル化合物(C)」欄、「その他成分(D)」欄にそれぞれ示す。なお、その他成分(D)の含有量は、処理剤中における(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、有機酸化合物(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)の含有量の合計を100部とした場合の配合量(部)を示す。
【0106】
(処理剤のpH)
各例の処理剤を約70℃の温水で希釈し、処理剤として5%の水希釈液を調製した。調製した5%水希釈液の25℃でのpHを測定した。測定値を表1の「5%水希釈液のpH」欄に示す。
【0107】
【表1】
表1に記載する(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、有機酸化合物(B)、有機リン酸エステル化合物(C)、その他成分(D)の詳細は以下のとおりである。
【0108】
((ポリ)オキシアルキレン誘導体(A))
下記表2に記載されるA-1~A-39を使用した。
【0109】
【表2】
(有機酸化合物(B))
下記表3に記載されるB-1~B-21を使用した。
【0110】
【表3】
(有機リン酸エステル化合物(C))
下記表4に記載されるC-1~C-14を使用した。下記表4に記載される有機リン酸エステル化合物(C)は、各種の有機リン酸エステルをKOHにより部分中和処理したものであり、有機リン酸エステルと有機リン酸エステルのカリウム塩との混合物である。なお、後述するD-5,D-6の有機リン酸エステル化合物も同様である。
【0111】
【表4】
有機リン酸エステル化合物(C)の酸価の測定方法は、以下に示す通りである。
【0112】
有機リン酸エステル化合物(C)をエタノール/キシレン=1/2(容量比)の混合溶媒に溶解させ、電位差測定法により、0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液で滴定し、下記の数1から算出する。結果を表4の「有機リン酸エステル化合物(C)から検出される酸価」欄に示す。
【0113】
【数1】
数1において、
f:0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液のファクター
S:有機リン酸エステル化合物(C)採取量(g)
R:変曲点までの0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液の使用料(mL)
(その他成分(D))
D-1:ポリジメチルシロキサン
D-2:アミノ変性ポリジメチルシロキサン
D-3:ステアリルアルコール
D-4:ポリビニルアルコール(重合度300、鹸化度80)
D-5:ヘキシルリン酸エステル、及びそのカリウム塩
D-6:ドデシルリン酸エステル、及びそのカリウム塩
D-7:ジテトラデシルスルホコハク酸エステルナトリウム塩
D-8:テトラグリセリンモノオクタデカネート
D-9:リン酸水素二カリウム塩
試験区分2(乳化安定性)
試験区分1において調製された各処理剤を約70℃の温水で希釈し、処理剤として1%の希釈液を調製した。調製した1%希釈液を50℃で24時間静置し、静置後の希釈液の外観を目視で確認し、以下の基準で評価した。結果を表1の「乳化安定性」欄に示す。
【0114】
・乳化安定性の評価基準
◎(良好):析出物の発生及び下層部に沈殿が見られない場合
○(可):析出物の発生又は下層部に沈殿が見られるが、撹拌棒を用いて手動で撹拌することにより解消される場合
×(不良):析出物の発生又は下層部に沈殿が見られ、撹拌棒を用いて手動で撹拌しても解消されない場合
試験区分3(粘着性)
試験区分1において調製された各処理剤をガラスシャーレ(内径9.5cm)に5g入れた。この際、処理剤がガラスシャーレ内に均一に広がるようにした。30℃、70%RHの条件下で24時間温調させ、温調後の処理剤の外観を目視で確認し、以下の基準で評価した。結果を表1の「粘着性」欄に示す。
【0115】
・粘着性の評価基準
◎(良好):温調後の外観が固状であり、手で触ってもべたつきがない場合
○(可):温調後の外観が固状であるが、手で触るとべたつく場合
×(不良):温調後の外観が液状もしくはゲル状であり、手で触るとべたつく場合
試験区分4(繊維強度)
試験区分1において調製された各処理剤を約70℃の温水で希釈し、処理剤として0.5%の希釈液を調製した。処理剤が付与されていないポリエステル綿(1.3de×38mm)に、ポリエステル綿に対して付着量が処理剤として0.15%となるように、調製した希釈液をスプレー法で付着させた。処理剤を付着させたポリエステル綿を80℃の乾燥機内で2時間乾燥させた。初期強度を強伸度測定機にて測定し、また同繊維を50℃、80%RHの雰囲気下に3カ月間置いた3カ月後の強度を強伸度測定機にて測定した。3カ月後の強度を初期強度と比較して、以下の基準で評価した。結果を表1の「繊維強度」欄に示す。
【0116】
・繊維強度の評価基準
◎(良好):初期強度に対して95%以上の強度
〇(可):初期強度に対して90%以上、95%未満の強度
×(不良):初期強度に対して90%未満の強度
試験区分5(2剤型処理剤の第1処理剤の調製)
(第1処理剤(I-A-1))
表5に示されるように、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)として表2に示されるポリオキシエチレン(10)デシルアミン(A-1)50部(%)、ポリオキシエチレン(5)デシルエーテル(A-10)20部(%)、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(r+s=10)トリデシルエーテル(A-21)14部(%)、有機酸化合物(B)としてシュウ酸/シュウ酸カリウム塩=50/50(質量比)(B-1)16部(%)、を含む第1処理剤(I-A-1)を調製した。
【0117】
(第1処理剤(I-A-2)~(I-A-27)、第1処理剤(I-B-1)~(I-B-27)、第1処理剤(I-C-1))
第1処理剤(I-A-1)と同様にして(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、及び有機酸化合物(B)を表5に示した割合で含むように調製した。
【0118】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の種類と含有量、有機酸化合物(B)の種類と含有量を、表5の「(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)」欄、「有機酸化合物(B)」欄にそれぞれ示す。
【0119】
【表5】
試験区分6(2剤型処理剤の第2処理剤の調製)
(第2処理剤(II-A-1))
表6に示されるように、有機リン酸エステル化合物(C)としてセチルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(C-1)100部(%)を含む第2処理剤(II-A-1)を調製した。
【0120】
(第2処理剤(II-A-2)~(II-A-16)、第2処理剤(II-B-1)~(II-B-27)、第2処理剤(II-C-1))
第2処理剤(II-A-1)と同様にして、有機リン酸エステル化合物(C)及び有機酸化合物(B)を表6に示した割合で含むように調製した。
【0121】
有機リン酸エステル化合物(C)の種類と含有量、有機酸化合物(B)の種類と含有量を、表6の「有機リン酸エステル化合物(C)」欄、「有機酸化合物(B)」欄にそれぞれ示す。
【0122】
【表6】
試験区分7(製剤安定性の評価)
・第1処理剤の製剤安定性評価
試験区分5に記載される各第1処理剤を25℃にて3日間保管した。以下の基準で製剤安定性を評価した。結果を表5の「製剤安定性」欄に示す。
【0123】
・第2処理剤の製剤安定性評価
試験区分6に記載される各第2処理剤と溶媒(S)として水を、第2処理剤:水=40:60の質量比で含有する第2処理剤含有組成物を25℃にて3日間保管した。以下の基準で製剤安定性を評価した。結果を表6の「製剤安定性」欄に示す。
【0124】
・製剤安定性の評価基準(第1処理剤及び第2処理剤含有組成物)
○(良好):ゲル化及び固化しなかった場合
×(不可):ゲル化又は固化した場合
試験区分8(第1処理剤と第2処理剤から処理剤の調製)
(実施例2-A-1)
表7に示される第1処理剤(I-A-1)50%(部)、及び第2処理剤(II-A-3)50%(部)の他、表8に示されるその他処理剤(D)として処理剤(III-1)を第1処理剤と第2処理剤との合計100部に対して3部を混合して実施例2-A-1の処理剤を調製した。
【0125】
(実施例(2-A-2)~(2-A-28)、実施例(2-B-1)~(2-B-28)、実施例(2-C-1)~(2-C-2))
実施例2-A-1と同様にして、表7に示される第1処理剤と第2処理剤の他、必要により表8に示されるその他処理剤(D)とを混合して各例の処理剤を調製した。
【0126】
第1処理剤の種類と質量比、第2処理剤の種類と質量比、その他処理剤(D)の種類と質量比を、表7の「第1処理剤(I)」欄、「第2処理剤(II)」欄、「その他処理剤(D)」欄にそれぞれ示す。なお、その他処理剤(D)の含有量は、第1処理剤と第2処理剤の配合量の合計を100部とした場合の配合量(部)を示す。
【0127】
(処理剤のpH)
表7に示される第1処理剤と第2処理剤とを混合し、約70℃の温水で希釈し、処理剤として5%の水希釈液を調製した。なお、その他処理剤(D)を使用する例は、第1処理剤と第2処理剤と、その他処理剤(D)とを混合した後、約70℃の温水で希釈し、処理剤として5%の水希釈液とした。各例の調製した5%水希釈液の25℃でのpHを測定した。測定値を表7の「5%水希釈液のpH」欄に示す。
【0128】
【表7】
表7に記載するその他処理剤(D)は、下記の表8に記載される処理剤(III-1)~(III-4)を使用した。処理剤(III-1)~(III-4)は、その他処理剤(D)を表8に示した割合で含むように調製した。
【0129】
【表8】
試験区分9(2剤型の処理剤の評価)
得られた各例の処理剤を用いて、実施例1と同様の方法にて乳化安定性、粘着性、繊維強度について評価した。なお、乳化安定性及び繊維強度の評価に用いた希釈液の調製方法は、試験区分8の(pH測定)欄に記載の方法と同様にて、第1処理剤と第2処理剤と、必要によりその他処理剤(D)を混合した後、水で希釈することにより、処理剤の希釈液を調製した。結果を表7の「乳化安定性」欄、「粘着性」欄、「繊維強度」欄、にそれぞれ示す。
【0130】
各表の比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤は、水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。また、処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できるとともに、繊維強度の低下を抑制できる。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を5質量%以上、下記の有機酸化合物(B)を1質量%以上、及び下記の有機リン酸エステル化合物(C)を5質量%以上含有するポリエステル系合成繊維用処理剤であって、
前記ポリエステル系合成繊維用処理剤(溶媒を含まない)の5質量%水希釈液の25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下であることを特徴とするポリエステル系合成繊維用処理剤。
有機酸化合物(B):有機酸、有機酸塩、及び有機酸無水物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):分子中に炭素数16以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項2】
前記有機酸化合物(B)が、カルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である1~5塩基性カルボン酸、カルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である1~5塩基性カルボン酸の塩、及びカルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である2~5塩基性カルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)が、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミンから選ばれる少なくとも1つを含む請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、前記有機酸化合物(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)と前記有機酸化合物(B)とを合計で20質量部以上80質量部以下、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を20質量部以上80質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項5】
前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤と、
前記有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤と、がセットで構成され、
前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に前記有機酸化合物(B)を含有する請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項6】
前記ポリエステル系合成繊維が、ポリエステル短繊維である請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項7】
前記ポリエステル系合成繊維が、紡績糸製造用である請求項1に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むことを特徴とするポリエステル系合成繊維用処理剤含有組成物。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項9】
下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤、又は下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤及び下記の溶媒(S)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物と、併用され、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤であって、
前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記の有機酸化合物(B)を含有し、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤の混合物(溶媒を含まない)を5質量%水希釈液とした場合、25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下であり、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤の混合物(溶媒を含まない)中において、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を5質量%以上、前記有機酸化合物(B)を1質量%以上、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を5質量%以上含有することを特徴とするポリエステル系合成繊維用第1処理剤。
有機酸化合物(B):有機酸、有機酸塩、及び有機酸無水物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):分子中に炭素数16以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項10】
請求項9に記載のポリエステル系合成繊維用第1処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有することを特徴とするポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項11】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤、又は(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び下記の溶媒(S)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物と、併用され、下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤であって、
前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記の有機酸化合物(B)を含有し、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤の混合物(溶媒を含まない)を5質量%水希釈液とした場合、25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下であり、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤の混合物(溶媒を含まない)中において、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を5質量%以上、前記有機酸化合物(B)を1質量%以上、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を5質量%以上含有することを特徴とするポリエステル系合成繊維用第2処理剤。
有機酸化合物(B):有機酸、有機酸塩、及び有機酸無水物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):分子中に炭素数16以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項12】
請求項11に記載のポリエステル系合成繊維用第2処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有することを特徴とするポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤を含有し、前記ポリエステル系合成繊維用処理剤の濃度が、0.1質量%以上10質量%以下であることを特徴とするポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液。
【請求項14】
水に、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤を添加して得られたポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを特徴とするポリエステル系合成繊維の処理方法。
【請求項15】
水に、請求項8に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤含有組成物を添加して得られたポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを特徴とするポリエステル系合成繊維の処理方法。
【請求項16】
水に、請求項9に記載のポリエステル系合成繊維用第1処理剤又は請求項10に記載のポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物と、請求項11に記載のポリエステル系合成繊維用第2処理剤又は請求項12に記載のポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物と、を添加して得られたポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを特徴とするポリエステル系合成繊維の処理方法。
【請求項17】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とするポリエステル系合成繊維。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系合成繊維用処理剤、ポリエステル系合成繊維用処理剤含有組成物、ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、ポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物、ポリエステル系合成繊維用第2処理剤、ポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物、ポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液、ポリエステル系合成繊維の処理方法、及びポリエステル系合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成繊維の紡糸延伸工程、仕上げ工程等において、例えば合成繊維の摩擦低減、帯電防止性、集束性等の観点から、繊維の表面に合成繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
【0003】
従来、特許文献1~5に開示の合成繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、所定のアルキル基を有するアルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩、所定の界面活性剤、及び所定のリン酸金属塩を所定の割合で含有して成り、アルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩の酸価が0.1~90KOHmg/gであるポリエステル系合成繊維用処理剤について開示する。特許文献2は、所定のアルキルリン酸エステル類、所定の界面活性剤、及び所定のアルキル基を有する1価脂肪族アルコールを所定の割合で含有するポリエステル系合成繊維用処理剤について開示する。特許文献3は、ポリビニルアルコール又はその誘導体からなるA成分と、所定のアルキル基を有するアルキル燐酸エステルカリウム塩又はポリオキシアルキレンアルキル燐酸エステルカリウム塩からなるB成分とを必須成分として含み、A成分とB成分を所定の割合で配合する紡績糸製造用繊維処理剤について開示する。特許文献4は、特定の有機酸、2種類のアルキルリン酸エステル塩、及びポリオキシアルキレン誘導体を所定の割合で含有し、水性液のpHが3以上7未満となるポリオレフィン系合成繊維用処理剤について開示する。特許文献5は、フマル酸、特定の非イオン界面活性剤、アルキル基の炭素数が8~16であるジアルキルスルホコハク酸塩、及びポリグリセリン脂肪酸エステルを所定の割合で含有するポリオレフィン系合成繊維用処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5796922号公報
【特許文献2】特許第5796923号公報
【特許文献3】特許第5651033号公報
【特許文献4】特許第6057489号公報
【特許文献5】特開2018-31090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の合成繊維用処理剤は、合成繊維用処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性が低下することにより、析出物等が生ずる場合があった。また、合成繊維用処理剤が付与された繊維表面の粘着が高くなり、紡績不良が生ずる場合があった。また、合成繊維用処理剤が付与された繊維の強度が低下することにより、工程通過不良が生ずる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、ポリエステル系合成繊維用処理剤において、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、所定の有機酸化合物(B)、及び所定の有機リン酸エステル化合物(C)を含有し、pHを規定した構成が好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1のポリエステル系合成繊維用処理剤は、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を5質量%以上、下記の有機酸化合物(B)を1質量%以上、及び下記の有機リン酸エステル化合物(C)を5質量%以上含有するポリエステル系合成繊維用処理剤であって、前記ポリエステル系合成繊維用処理剤(溶媒を含まない)の5質量%水希釈液の25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下であることを要旨とする。
【0008】
有機酸化合物(B):有機酸、有機酸塩、及び有機酸無水物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):分子中に炭素数16以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0009】
態様2は、態様1のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記有機酸化合物(B)が、カルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である1~5塩基性カルボン酸、カルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である1~5塩基性カルボン酸の塩、及びカルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である2~5塩基性カルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1つである。
【0010】
態様3は、態様1又は2に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)が、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミンから選ばれる少なくとも1つを含む。
【0011】
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、前記有機酸化合物(B)、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)と前記有機酸化合物(B)とを合計で20質量部以上80質量部以下、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を20質量部以上80質量部以下の割合で含有する。
【0012】
態様5は、態様1~4のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤と、前記有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤と、がセットで構成され、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に前記有機酸化合物(B)を含有する。
【0013】
態様6は、態様1~5のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記ポリエステル系合成繊維が、ポリエステル短繊維である。
態様7は、態様1~6のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤において、前記ポリエステル系合成繊維が、紡績糸製造用である。
【0014】
態様8のポリエステル系合成繊維用処理剤含有組成物は、態様1~7のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤と、下記の溶媒(S)とを含むことを要旨とする。
【0015】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様9のポリエステル系合成繊維用第1処理剤は、下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤、又は下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤及び下記の溶媒(S)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物と、併用され、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤であって、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記の有機酸化合物(B)を含有し、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤の混合物(溶媒を含まない)を5質量%水希釈液とした場合、25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下であり、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤の混合物(溶媒を含まない)中において、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を5質量%以上、前記有機酸化合物(B)を1質量%以上、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を5質量%以上含有することを要旨とする。
【0016】
有機酸化合物(B):有機酸、有機酸塩、及び有機酸無水物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):分子中に炭素数16以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0017】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様10のポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物は、態様9に記載のポリエステル系合成繊維用第1処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有することを要旨とする。
【0018】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様11のポリエステル系合成繊維用第2処理剤は、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤、又は(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び下記の溶媒(S)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物と、併用され、下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤であって、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤、及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤のいずれか一方又は両方に下記の有機酸化合物(B)を含有し、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤の混合物(溶媒を含まない)を5質量%水希釈液とした場合、25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下であり、前記ポリエステル系合成繊維用第1処理剤及び前記ポリエステル系合成繊維用第2処理剤の混合物(溶媒を含まない)中において、前記(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を5質量%以上、前記有機酸化合物(B)を1質量%以上、及び前記有機リン酸エステル化合物(C)を5質量%以上含有することを要旨とする。
【0019】
有機酸化合物(B):有機酸、有機酸塩、及び有機酸無水物から選ばれる少なくとも1つ。
有機リン酸エステル化合物(C):分子中に炭素数16以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0020】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様12のポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物は、態様11に記載のポリエステル系合成繊維用第2処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有することを要旨とする。
【0021】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様13のポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液は、態様1~7のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤を含有し、前記ポリエステル系合成繊維用処理剤の濃度が、0.1質量%以上10質量%以下であることを要旨とする。
【0022】
態様14のポリエステル系合成繊維の処理方法は、水に、態様1~7のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤を添加して得られたポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを要旨とする。
【0023】
態様15のポリエステル系合成繊維の処理方法は、水に、態様8に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤含有組成物を添加して得られたポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを要旨とする。
【0024】
態様16のポリエステル系合成繊維の処理方法は、水に、態様9に記載のポリエステル系合成繊維用第1処理剤又は態様10に記載のポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物と、態様11に記載のポリエステル系合成繊維用第2処理剤又は態様12に記載のポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物と、を添加して得られたポリエステル系合成繊維用処理剤の希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを要旨とする。
【0025】
態様17のポリエステル系合成繊維は、態様1~7のいずれか一態様に記載のポリエステル系合成繊維用処理剤が、付着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、合成繊維用処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。また、合成繊維用処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できるとともに、繊維強度の低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
以下、本発明のポリエステル系合成繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、下記の有機酸化合物(B)、及び下記の有機リン酸エステル化合物(C)を含有し、処理剤の5質量%水希釈液の25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下である。
【0028】
((ポリ)オキシアルキレン誘導体(A))
本実施形態に供される(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)は、界面活性剤として処理剤の安定性を向上させることにより処理剤としての各機能を向上させる。
【0029】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)としては、例えばアルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するもの、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、アミン化合物として脂肪族アミン類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するもの、脂肪酸アミド類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するもの、ポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖とを有するブロック共重合体等が挙げられる。
【0030】
これらの中で、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルケニルアミンが好ましい。また、処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性をより向上できる観点から、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルケニルアミンがより好ましい。
【0031】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0032】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸、(6)ヒマシ油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核脂肪酸、ヤシ油脂肪酸等の天然由来の脂肪酸等が挙げられる。
【0033】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上250モル以下、より好ましくは1モル以上200モル以下、さらに好ましくは2モル以上150モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0034】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0035】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の原料として用いられる脂肪族アミンの具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、ヤシアミン等が挙げられる。
【0036】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の原料として用いられる脂肪酸アミドの具体例としては、例えばオクチル酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド等が挙げられる。
【0037】
ポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖とを有するブロック共重合体は、親水性の低いポリオキシプロピレン鎖及び親水性の高いポリオキシエチレン鎖を有し、界面活性作用を有するものであれば特に限定されない。分子中におけるポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖の数は特に限定されず、例えば1つのポリオキシプロピレン鎖と1つのポリオキシエチレン鎖からなるブロック共重合体であってもよく、ポリオキシプロピレン鎖とそれを挟む2つのポリオキシエチレン鎖からなるポロキサマー系界面活性剤であってもよい。また、多価アルコールにポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖を付加させたエーテル化合物であってもよい。ポリオキシエチレン鎖を形成するエチレンオキサイドの付加モル数は特に限定されず、例えば5モル以上200モル以下が挙げられる。ポリオキシプロピレン鎖を形成するプロピレンオキサイドの付加モル数は特に限定されず、例えば5モル以上100モル以下が挙げられる。
【0038】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の具体例としては、例えばポリオキシエチレンデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ドデシルアミン、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)オクタデシルアミン、ポリオキシエチレンデシルエーテル、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)デシルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)C9-C11アルキルエーテル、ポリオキシエチレンC12-C13アルキルエーテル、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)C12-C13アルキルエーテル、ポリオキシエチレンC12-C14アルキルエーテル、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)トリデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)C11-C14アルキルエーテル、ポリオキシエチレンC11-C14アルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンテトラコシルエーテル、ポリオキシエチレンオクタコシルエーテル、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)硬化ひまし油、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)プロピレングリコール、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)ブチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエステル、ヤシ脂肪酸-ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンオレイルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0039】
これらの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)は、一種類の(ポリ)オキシアルキレン誘導体を単独で使用してもよいし、又は二種以上の(ポリ)オキシアルキレン誘導体を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0040】
処理剤中において、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の含有割合の下限は、5質量%以上、好ましくは10質量%以上である。(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の含有割合が5質量%以上の場合、処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。また、かかる(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の含有割合の上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の含有割合が90質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0041】
(有機酸化合物(B))
本実施形態の処理剤に供される有機酸化合物(B)としては、有機酸、有機酸塩、有機酸無水物が挙げられる。有機酸化合物(B)により、特に処理剤が付与された繊維強度の低下を抑制できる。
【0042】
有機酸としては、例えば、カルボキシル基を有する化合物、後述する(C)成分以外のアルキルリン酸、アルキルスルホン酸、アルキル硫酸等が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物としては、1塩基酸であっても多塩基酸であってもよい、また、カルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数は、特に限定されない。カルボキシル基を有する化合物としては、例えば1価の脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸、多価カルボン酸(多塩基酸)、アミノ酸、アミノカルボン酸等が挙げられる。
【0043】
脂肪酸としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
【0044】
飽和脂肪酸の具体例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等が挙げられる。
【0045】
不飽和脂肪酸の具体例としては、例えばクロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。
【0046】
多価カルボン酸(多塩基酸)の具体例としては、例えば(1)シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸等の二塩基酸、(2)アコニット酸等の三塩基酸、(3)安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、(4)トリメリット酸等の芳香族トリカルボン酸、(5)ピロメリット酸等の芳香族テトラカルボン酸等が挙げられる。
【0047】
ヒドロキシ脂肪酸の具体例として、例えばクエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グリコール酸、リシノール酸等が挙げられる。
アミノ酸の具体例としては、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。
【0048】
アミノカルボン酸の具体例としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(エデト酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、1,3-プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、L-アスパラギン酸-N,N-二酢酸、エチレンジアミンジコハク酸等が挙げられる。
【0049】
アルキルスルホン酸の具体例としては、例えばラウリルスルホン酸(ドデシルスルホン酸)、ミリスチルスルホン酸、セチルスルホン酸、オレイルスルホン酸、ステアリルスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、二級アルキルスルホン酸(C13~15)等が挙げられる。
【0050】
アルキル硫酸の具体例としては、例えばラウリル硫酸エステル、オレイル硫酸エステル、ステアリル硫酸エステル等が挙げられる。
アルキルリン酸の具体例としては、例えばラウリルリン酸エステル、オクチルリン酸エステル等が挙げられる。
【0051】
有機酸の塩が適用される場合、塩としては、例えばアミン塩、金属塩等の形態が挙げられる。
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0052】
アミン塩を構成するアミンは、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
【0053】
有機酸無水物の具体例としては、例えば無水フマル酸、無水マレイン酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水シュウ酸、無水安息香酸等が挙げられる。
【0054】
これらの有機酸化合物(B)は、一種類の有機酸化合物を単独で使用してもよいし、又は二種以上の有機酸化合物を適宜組み合わせて使用してもよい。
これらの中で、処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる観点から、カルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である1~5塩基性カルボン酸、カルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である1~5塩基性カルボン酸の塩、及びカルボキシ基由来の炭素を除く炭素の数が0以上9以下である2~5塩基性カルボン酸無水物が好ましい。
【0055】
処理剤中において、有機酸化合物(B)の含有割合の下限は、1質量%以上、好ましくは3質量%以上である。有機酸化合物(B)の含有割合が1質量%以上の場合、処理剤のpHを適切な範囲に調整し、処理剤が付与された繊維強度の低下を抑制できる。また、かかる有機酸化合物(B)の含有割合の上限は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。有機酸化合物(B)の含有割合が25質量%以下の場合、処理剤のpHを適切な範囲に調整し、処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0056】
(有機リン酸エステル化合物(C))
本実施形態の処理剤に供される有機リン酸エステル化合物(C)としては、分子中に炭素数16以上20以下の炭化水素基を有する有機リン酸エステル、及びその塩が挙げられる。有機リン酸エステル化合物(C)により、処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できる。
【0057】
炭化水素基としては、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。また、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐鎖を有する炭化水素基であってもよい。不飽和炭化水素基としては、不飽和炭素結合として二重結合を1つ有するアルケニル基であっても、二重結合を2つ以上有するアルカジエニル基、アルカトリエニル基等であってもよい。また、不飽和炭素結合として三重結合を1つ有するアルキニル基であっても、三重結合を2つ以上有するアルカジイニル基等であってもよい。
【0058】
飽和炭化水素基の具体例としては、例えばヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソノナデシル基、イソイコシル基等が挙げられる。
【0059】
炭化水素基中に二重結合を1つ有する不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソノナデセニル基、イソイコセニル基等が挙げられる。
【0060】
有機リン酸エステル化合物を構成するリン酸は、特に制限はなく、オルトリン酸であってもよいし、二リン酸等のポリリン酸であってもよい。有機リン酸エステルの塩が適用される場合、塩としては、例えばリン酸エステルアミン塩、リン酸エステル金属塩等が挙げられる。塩の具体例としては(B)有機酸化合物欄で例示したものが挙げられる。
【0061】
有機リン酸エステル化合物(C)の具体例としては、例えばセチルリン酸エステル、セチルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル、ステアリルリン酸エステル塩、アラキジルリン酸エステル、アラキジルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0062】
有機リン酸エステル化合物(C)の酸価は、特に限定されない。
これらの有機リン酸エステル化合物(C)は、一種類の有機リン酸エステル化合物を単独で使用してもよいし、又は二種以上の有機リン酸エステル化合物を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0063】
処理剤中において、有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の下限は、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%である。有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合が5質量%以上の場合、処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できる。また、かかる有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合が90質量%以下の場合、処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0064】
処理剤中において、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、有機酸化合物(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量部としたとき、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)と有機酸化合物(B)とを合計で20質量部以上80質量部以下、及び有機リン酸エステル化合物(C)を20質量部以上80質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0065】
(処理剤のpH)
処理剤の5質量%水希釈液の25℃におけるpHの下限は、5.5以上である。かかるpHが5.5以上の場合、処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。処理剤の5質量%水希釈液の25℃におけるpHの上限は、8.5以下である。かかるpHが8.5以下の場合、処理剤が付与された繊維強度の低下を抑制できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0066】
(保存形態)
処理剤は、上述した成分(A)~(C)を含む1剤型として構成されてもよいし、製剤安定性を向上させる観点から、以下に示されるような2剤型の処理剤として構成されてもよい。
【0067】
2剤型の処理剤は、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有するポリエステル系合成繊維用第1処理剤(以下、「第1処理剤」という)と、有機リン酸エステル化合物(C)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤(以下、「第2処理剤」という)と、を含むセットとして構成される。第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に有機酸化合物(B)を含有している。
【0068】
2剤型の処理剤は、保存時又は流通時等において第1処理剤と、該第1処理剤とは別剤として構成される第2処理剤とから構成されている。2剤型処理剤は、使用時に第1処理剤と第2処理剤とが混合された混合物が調製される。
【0069】
(溶媒)
本実施形態の処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル系合成繊維用処理剤含有組成物(以下、「処理剤含有組成物」という)が調製され、処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0070】
溶媒は、大気圧における沸点が105℃以下である溶媒である。溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、エタノール、プロパノール等の低級アルコール等、ヘキサン等の低極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中で、各成分の分散性又は溶解性に優れる観点から水、低級アルコール等の極性溶媒が好ましく、ハンドリング性に優れる観点から水がより好ましい。
【0071】
処理剤含有組成物中において、処理剤及び溶媒の含有割合の合計を100質量部とすると、処理剤を10質量部以上で含有することが好ましい。
第1実施形態の処理剤の効果について説明する。
【0072】
(1-1)上記第1実施形態の処理剤では、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、上述した有機酸化合物(B)、及び上述した有機リン酸エステル化合物(C)を含有し、処理剤の5質量%水希釈液の25℃におけるpHが、5.5以上8.5以下に調整されている。
【0073】
したがって、処理剤を水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。それにより、乳化液からの析出物及び/又は沈殿の発生を低減させ、処理剤の付着ムラによる繊維の品質ムラを低減できる。また、処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できるとともに、繊維強度の低下を抑制できる。それにより、工程通過不良による加工製品の品質ムラを低減できる。
【0074】
(1-2)上記第1実施形態の処理剤では、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有する第1処理剤と、有機リン酸エステル化合物(C)を含有する第2処理剤と、を含むセットとして構成されてもよい。第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に有機酸化合物(B)を含有する。かかる構成により、処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。
【0075】
<第2実施形態>
次に、本発明の第1処理剤を具体化した第2実施形態を説明する。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明する。
【0076】
本実施形態の第1処理剤では、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有する。第1処理剤は、使用時に有機リン酸エステル化合物(C)を含有する第2処理剤、又は有機リン酸エステル化合物(C)を含有する第2処理剤及び溶媒(S)を含有するポリエステル系合成繊維用第2処理剤含有組成物(以下、「第2処理剤含有組成物」という)と併用される。第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に有機酸化合物(B)が含有される。また、第1処理剤及び第2処理剤の混合物について、処理剤として5質量%水希釈液とした場合、25℃におけるpHは、5.5以上8.5以下の範囲にある。
【0077】
なお、第1処理剤及び第2処理剤の混合物が、溶媒(S)として水を使用して得られた第2処理剤含有組成物を用いて得られた場合、以下の方法により、pHが測定される。
第1処理剤及び第2処理剤の混合物が、処理剤として5質量%以上の水希釈液の場合、混合物を処理剤として5質量%水希釈液とした後、25℃におけるpHを測定する。
【0078】
第1処理剤及び第2処理剤の混合物が、処理剤として5質量%未満の水希釈液の場合、得られた混合物を乾燥又は濃縮処理した後、混合物を処理剤として5質量%水希釈液とし、25℃におけるpHを測定する。
【0079】
第1処理剤及び第2処理剤の混合物が、溶媒(S)として水以外の溶媒を含む第2処理剤含有組成物を用いて得られた場合、以下の方法により、pHが測定される。
第1処理剤及び第2処理剤の混合物から溶媒を除去した後、混合物を処理剤として5質量%水希釈液とし、25℃におけるpHを測定する。混合物から溶媒の除去は、対象物を105℃で2時間熱処理することにより行うことができる。
【0080】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、有機酸化合物(B)、有機リン酸エステル化合物(C)、及び溶媒(S)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。
(溶媒)
本実施形態の第1処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル系合成繊維用第1処理剤含有組成物(以下、「第1処理剤含有組成物」という)が調製され、第1処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0081】
溶媒は、第1実施形態で例示したものを採用できる。第1処理剤含有組成物中において、第1処理剤及び溶媒の含有割合の合計を100質量部とすると、第1処理剤を10質量部以上で含有することが好ましい。
【0082】
第2実施形態の第1処理剤の効果について説明する。第2実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(2-1)第2実施形態の第1処理剤では、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有し、使用時に有機リン酸エステル化合物(C)を含有する第2処理剤と併用される。したがって、第1処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、第2処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、第1処理剤のみを第2処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0083】
<第3実施形態>
次に、本発明の第2処理剤を具体化した第3実施形態を説明する。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明する。
【0084】
本実施形態の第2処理剤では、有機リン酸エステル化合物(C)を含有する。第2処理剤は、使用時に(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有する第1処理剤、又は(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有する第1処理剤及び溶媒(S)を含有する第1処理剤含有組成物と併用される。第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に有機酸化合物(B)が含有される。また、第1処理剤及び第2処理剤の混合物を、処理剤として5質量%水希釈液とした場合、25℃におけるpHは、5.5以上8.5以下の範囲にある。なお、第1処理剤及び第2処理剤の混合物が、溶媒(S)を使用して得られた第1処理剤含有組成物を用いて得られた場合、第2実施形態に記載の方法と同様の方法により、pHが測定される。
【0085】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、有機酸化合物(B)、有機リン酸エステル化合物(C)、及び溶媒(S)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。
(溶媒)
本実施形態の第2処理剤は、必要により溶媒と混合することにより第2処理剤含有組成物が調製され、第2処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0086】
溶媒は、第1実施形態で例示したものを採用できる。第2処理剤含有組成物中において、第2処理剤及び溶媒の含有割合の合計を100質量部とすると、第1処理剤を10質量部以上で含有することが好ましい。
【0087】
第3実施形態の第2処理剤の効果について説明する。第3実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(3-1)第3実施形態の第2処理剤では、有機リン酸エステル化合物(C)を含有し、使用時に(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)を含有する第1処理剤と併用される。したがって、第2処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、第1処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、第2処理剤のみを第1処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0088】
<第4実施形態>
次に、本発明のポリエステル系合成繊維の処理方法(以下、「繊維の処理方法」という)を具体化した第4実施形態を説明する。
【0089】
本実施形態の繊維の処理方法では、1剤型の処理剤の場合、溶媒と、第1実施形態の処理剤とを含む希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを特徴とする。希釈液の調製方法は、例えば溶媒に、第1実施形態の処理剤又は処理剤含有組成物を添加する方法が挙げられる。希釈液は、水に第1実施形態の処理剤又は処理剤含有組成物を添加して調製されることが好ましい。
【0090】
本実施形態の繊維の処理方法では、2剤型の処理剤の場合、溶媒と、第2実施形態の第1処理剤と、第3実施形態の第2処理剤とを含む処理剤の希釈液をポリエステル系合成繊維に付与することを特徴とする。希釈液の調製方法は、例えば溶媒に、第1処理剤又は第1処理剤含有組成物、及び第2処理剤又は第2処理剤含有組成物を添加する方法が挙げられる。希釈液は、水に第1処理剤又は第1処理剤含有組成物、及び第2処理剤又は第2処理剤含有組成物を添加して調製されることが好ましい。第1処理剤と第2処理剤との含有割合の比は、不揮発分の質量比として第1処理剤と第2処理剤=95/5~5/95であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。尚、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0091】
希釈液の製造に用いられる溶媒としては、第1実施形態で例示したものが挙げられる。希釈液は、操作性等の観点から処理剤の濃度として0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0092】
第1処理剤と第2処理剤とを併用する形態は、各剤の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な繊維特性又は繊維製造特性を付与するための処理剤又は希釈液を調製することが容易になる。
【0093】
処理剤を乳化するために、各処理剤又は処理剤含有組成物と溶媒とを混合し、公知の撹拌機、例えばホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、ラインミキサー等を用いて撹拌してもよい。
【0094】
繊維の処理方法は、上記のように得られた希釈液を、例えばポリエステル系合成繊維の紡糸工程、延伸工程、及び仕上工程の少なくとも1つの工程等において繊維に付与する方法である。
【0095】
希釈液が付与される繊維としては、ポリエステル系合成繊維が挙げられる。ポリエステル系合成繊維の具体例としては例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等が挙げられる。
【0096】
繊維の用途は、特に限定されず、例えば紡績用、紡績糸製造用、短繊維、長繊維、不織布、詰め綿用等が挙げられる。短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下である。これらの中で、本発明の希釈液は、ポリエステル短繊維、紡績糸製造用のポリエステル系合成繊維に適用されることが好ましい。
【0097】
希釈液を繊維に付着させる割合に特に制限はないが、希釈液を繊維に対し、最終的に固形分が好ましくは0.01質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下の割合となるよう付着させる。かかる構成により、各成分による効能を有効に発揮できる。また、希釈液を付着させる方法は、特に制限はなく、繊維の種類、形態、用途等により公知の方法、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等を採用できる。浸漬給油法が用いられる場合、浸漬時間は好ましくは1分以上5分以下である。
【0098】
希釈液が付与された繊維は、公知の方法を用いて乾燥又は加熱処理してもよい。乾燥又は加熱処理により水等の溶媒が揮発され、処理剤、又は第1処理剤、及び第2処理剤中に含有される成分が付着している繊維が得られる。
【0099】
第4実施形態の繊維の処理方法の効果について説明する。第4実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(4-1)第4実施形態の繊維の処理方法では、希釈液を、例えば紡糸工程、延伸工程、又は仕上工程等において繊維に付与する方法である。特に、水に第1実施形態の処理剤又は処理剤含有組成物を添加して調製されることにより、乳化安定性に優れる希釈液が得られる。または、水に第1処理剤又は第1処理剤含有組成物、及び第2処理剤又は第2処理剤含有組成物を添加して調製されることにより、乳化安定性に優れる希釈液が得られる。したがって、各成分による紡績用、紡績糸製造用、短繊維、長繊維、不織布、詰め綿用等に対する効能を有効に発揮できる。
【0100】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤の希釈液の調製方法は特に限定されず、第4実施形態の繊維の処理方法欄に記載の調製方法以外を採用してもよい。
【0101】
・上記実施形態の各処理剤、各組成物、又は希釈液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、各処理剤、各組成物、又は希釈液の品質保持のため、その他の成分として、その他の溶媒、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機酸、上記以外の界面活性剤等の通常処理剤等に用いられる成分をさらに配合してもよい。なお、溶媒以外の通常処理剤に用いられるその他の成分は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から各処理剤中において10質量%以下が好ましい。また、その他の成分を上述した各処理剤とは別剤として保存してもよい。
【実施例0102】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0103】
試験区分1(1剤型処理剤の調製)
(実施例1-1)
表1に示されるように、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)として表2に示されるポリオキシエチレン(10(アルキレンオキサイドを付加させたモル数を示す。以下同じ))デシルアミン(A-1)25部(%)、ポリオキシエチレン(5)デシルエーテル(A-10)10部(%)、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(r+s=10、rはエチレンオキサイドを付加させたモル数、sはプロピレンオキサイドを付加させたモル数(以下同じ))トリデシルエーテル(A-21)7部(%)、有機酸化合物(B)としてシュウ酸/シュウ酸カリウム塩=50/50(質量比)(B-1)8部(%)、有機リン酸エステル化合物(C)としてセチルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(C-3)50部(%)、その他成分(D)としてポリジメチルシロキサン(D-1)を成分(A)~(C)の合計100部に対して3部含む実施例1-1の処理剤を調製した。
【0104】
(実施例1-2~実施例1-28、比較例1-1~比較例1-10)
実施例1-2~実施例1-28、比較例1-1~比較例1-10の処理剤は、実施例1-1の処理剤と同様にして(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、有機酸化合物(B)、有機リン酸エステル化合物(C)、及びその他成分(D)を表1に示した割合で含むように調製した。
【0105】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の種類と含有量、有機酸化合物(B)の種類と含有量、有機リン酸エステル化合物(C)の種類と含有量、及びその他成分(D)の種類と含有量を、表1の「(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)」欄、「有機酸化合物(B)」欄、「有機リン酸エステル化合物(C)」欄、「その他成分(D)」欄にそれぞれ示す。なお、その他成分(D)の含有量は、処理剤中における(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、有機酸化合物(B)、及び有機リン酸エステル化合物(C)の含有量の合計を100部とした場合の配合量(部)を示す。
【0106】
(処理剤のpH)
各例の処理剤を約70℃の温水で希釈し、処理剤として5%の水希釈液を調製した。調製した5%水希釈液の25℃でのpHを測定した。測定値を表1の「5%水希釈液のpH」欄に示す。
【0107】
【表1】
表1に記載する(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、有機酸化合物(B)、有機リン酸エステル化合物(C)、その他成分(D)の詳細は以下のとおりである。
【0108】
((ポリ)オキシアルキレン誘導体(A))
下記表2に記載されるA-1~A-39を使用した。
【0109】
【表2】
(有機酸化合物(B))
下記表3に記載されるB-1~B-21を使用した。
【0110】
【表3】
(有機リン酸エステル化合物(C))
下記表4に記載されるC-1~C-14を使用した。下記表4に記載される有機リン酸エステル化合物(C)は、各種の有機リン酸エステルをKOHにより部分中和処理したものであり、有機リン酸エステルと有機リン酸エステルのカリウム塩との混合物である。なお、後述するD-5,D-6の有機リン酸エステル化合物も同様である。
【0111】
【表4】
有機リン酸エステル化合物(C)の酸価の測定方法は、以下に示す通りである。
【0112】
有機リン酸エステル化合物(C)をエタノール/キシレン=1/2(容量比)の混合溶媒に溶解させ、電位差測定法により、0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液で滴定し、下記の数1から算出する。結果を表4の「有機リン酸エステル化合物(C)から検出される酸価」欄に示す。
【0113】
【数1】
数1において、
f:0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液のファクター
S:有機リン酸エステル化合物(C)採取量(g)
R:変曲点までの0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液の使用料(mL)
(その他成分(D))
D-1:ポリジメチルシロキサン
D-2:アミノ変性ポリジメチルシロキサン
D-3:ステアリルアルコール
D-4:ポリビニルアルコール(重合度300、鹸化度80)
D-5:ヘキシルリン酸エステル、及びそのカリウム塩
D-6:ドデシルリン酸エステル、及びそのカリウム塩
D-7:ジテトラデシルスルホコハク酸エステルナトリウム塩
D-8:テトラグリセリンモノオクタデカネート
D-9:リン酸水素二カリウム塩
試験区分2(乳化安定性)
試験区分1において調製された各処理剤を約70℃の温水で希釈し、処理剤として1%の希釈液を調製した。調製した1%希釈液を50℃で24時間静置し、静置後の希釈液の外観を目視で確認し、以下の基準で評価した。結果を表1の「乳化安定性」欄に示す。
【0114】
・乳化安定性の評価基準
◎(良好):析出物の発生及び下層部に沈殿が見られない場合
○(可):析出物の発生又は下層部に沈殿が見られるが、撹拌棒を用いて手動で撹拌することにより解消される場合
×(不良):析出物の発生又は下層部に沈殿が見られ、撹拌棒を用いて手動で撹拌しても解消されない場合
試験区分3(粘着性)
試験区分1において調製された各処理剤をガラスシャーレ(内径9.5cm)に5g入れた。この際、処理剤がガラスシャーレ内に均一に広がるようにした。30℃、70%RHの条件下で24時間温調させ、温調後の処理剤の外観を目視で確認し、以下の基準で評価した。結果を表1の「粘着性」欄に示す。
【0115】
・粘着性の評価基準
◎(良好):温調後の外観が固状であり、手で触ってもべたつきがない場合
○(可):温調後の外観が固状であるが、手で触るとべたつく場合
×(不良):温調後の外観が液状もしくはゲル状であり、手で触るとべたつく場合
試験区分4(繊維強度)
試験区分1において調製された各処理剤を約70℃の温水で希釈し、処理剤として0.5%の希釈液を調製した。処理剤が付与されていないポリエステル綿(1.3de×38mm)に、ポリエステル綿に対して付着量が処理剤として0.15%となるように、調製した希釈液をスプレー法で付着させた。処理剤を付着させたポリエステル綿を80℃の乾燥機内で2時間乾燥させた。初期強度を強伸度測定機にて測定し、また同繊維を50℃、80%RHの雰囲気下に3カ月間置いた3カ月後の強度を強伸度測定機にて測定した。3カ月後の強度を初期強度と比較して、以下の基準で評価した。結果を表1の「繊維強度」欄に示す。
【0116】
・繊維強度の評価基準
◎(良好):初期強度に対して95%以上の強度
〇(可):初期強度に対して90%以上、95%未満の強度
×(不良):初期強度に対して90%未満の強度
試験区分5(2剤型処理剤の第1処理剤の調製)
(第1処理剤(I-A-1))
表5に示されるように、(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)として表2に示されるポリオキシエチレン(10)デシルアミン(A-1)50部(%)、ポリオキシエチレン(5)デシルエーテル(A-10)20部(%)、(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(r+s=10)トリデシルエーテル(A-21)14部(%)、有機酸化合物(B)としてシュウ酸/シュウ酸カリウム塩=50/50(質量比)(B-1)16部(%)、を含む第1処理剤(I-A-1)を調製した。
【0117】
(第1処理剤(I-A-2)~(I-A-27)、第1処理剤(I-B-1)~(I-B-27)、第1処理剤(I-C-1))
第1処理剤(I-A-1)と同様にして(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)、及び有機酸化合物(B)を表5に示した割合で含むように調製した。
【0118】
(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)の種類と含有量、有機酸化合物(B)の種類と含有量を、表5の「(ポリ)オキシアルキレン誘導体(A)」欄、「有機酸化合物(B)」欄にそれぞれ示す。
【0119】
【表5】
試験区分6(2剤型処理剤の第2処理剤の調製)
(第2処理剤(II-A-1))
表6に示されるように、有機リン酸エステル化合物(C)としてセチルリン酸エステル、及びそのカリウム塩(C-1)100部(%)を含む第2処理剤(II-A-1)を調製した。
【0120】
(第2処理剤(II-A-2)~(II-A-16)、第2処理剤(II-B-1)~(II-B-27)、第2処理剤(II-C-1))
第2処理剤(II-A-1)と同様にして、有機リン酸エステル化合物(C)及び有機酸化合物(B)を表6に示した割合で含むように調製した。
【0121】
有機リン酸エステル化合物(C)の種類と含有量、有機酸化合物(B)の種類と含有量を、表6の「有機リン酸エステル化合物(C)」欄、「有機酸化合物(B)」欄にそれぞれ示す。
【0122】
【表6】
試験区分7(製剤安定性の評価)
・第1処理剤の製剤安定性評価
試験区分5に記載される各第1処理剤を25℃にて3日間保管した。以下の基準で製剤安定性を評価した。結果を表5の「製剤安定性」欄に示す。
【0123】
・第2処理剤の製剤安定性評価
試験区分6に記載される各第2処理剤と溶媒(S)として水を、第2処理剤:水=40:60の質量比で含有する第2処理剤含有組成物を25℃にて3日間保管した。以下の基準で製剤安定性を評価した。結果を表6の「製剤安定性」欄に示す。
【0124】
・製剤安定性の評価基準(第1処理剤及び第2処理剤含有組成物)
○(良好):ゲル化及び固化しなかった場合
×(不可):ゲル化又は固化した場合
試験区分8(第1処理剤と第2処理剤から処理剤の調製)
(実施例2-A-1)
表7に示される第1処理剤(I-A-1)50%(部)、及び第2処理剤(II-A-3)50%(部)の他、表8に示されるその他処理剤(D)として処理剤(III-1)を第1処理剤と第2処理剤との合計100部に対して3部を混合して実施例2-A-1の処理剤を調製した。
【0125】
(実施例(2-A-2)~(2-A-28)、実施例(2-B-1)~(2-B-28)、実施例(2-C-1)~(2-C-2))
実施例2-A-1と同様にして、表7に示される第1処理剤と第2処理剤の他、必要により表8に示されるその他処理剤(D)とを混合して各例の処理剤を調製した。
【0126】
第1処理剤の種類と質量比、第2処理剤の種類と質量比、その他処理剤(D)の種類と質量比を、表7の「第1処理剤(I)」欄、「第2処理剤(II)」欄、「その他処理剤(D)」欄にそれぞれ示す。なお、その他処理剤(D)の含有量は、第1処理剤と第2処理剤の配合量の合計を100部とした場合の配合量(部)を示す。
【0127】
(処理剤のpH)
表7に示される第1処理剤と第2処理剤とを混合し、約70℃の温水で希釈し、処理剤として5%の水希釈液を調製した。なお、その他処理剤(D)を使用する例は、第1処理剤と第2処理剤と、その他処理剤(D)とを混合した後、約70℃の温水で希釈し、処理剤として5%の水希釈液とした。各例の調製した5%水希釈液の25℃でのpHを測定した。測定値を表7の「5%水希釈液のpH」欄に示す。
【0128】
【表7】
表7に記載するその他処理剤(D)は、下記の表8に記載される処理剤(III-1)~(III-4)を使用した。処理剤(III-1)~(III-4)は、その他処理剤(D)を表8に示した割合で含むように調製した。
【0129】
【表8】
試験区分9(2剤型の処理剤の評価)
得られた各例の処理剤を用いて、実施例1と同様の方法にて乳化安定性、粘着性、繊維強度について評価した。なお、乳化安定性及び繊維強度の評価に用いた希釈液の調製方法は、試験区分8の(pH測定)欄に記載の方法と同様にて、第1処理剤と第2処理剤と、必要によりその他処理剤(D)を混合した後、水で希釈することにより、処理剤の希釈液を調製した。結果を表7の「乳化安定性」欄、「粘着性」欄、「繊維強度」欄、にそれぞれ示す。
【0130】
各表の比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤は、水希釈液とした際の乳化安定性を向上できる。また、処理剤が付与された繊維表面の粘着を低減できるとともに、繊維強度の低下を抑制できる。