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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040917
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】半導体集積回路及び受信装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/08 20060101AFI20240318BHJP
   H03M 1/46 20060101ALI20240318BHJP
   H03M 1/12 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H03M1/08 A
H03M1/46
H03M1/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145575
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴー フィクー
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022AB04
5J022BA02
5J022CB01
5J022CG01
(57)【要約】
【課題】アナログ信号に基づき好適にデジタル信号を生成する半導体集積回路、及び受信装置を提供する。
【解決手段】一実施形態の半導体集積回路は、第1クロック信号に基づいてアナログ信号から第1ビット列を判定する第1コンバータと、第2クロック信号に基づいてアナログ信号から第2ビット列を判定する第2コンバータと、第1コンバータ及び第2コンバータに参照電圧を供給する回路と、を備える。回路は、第1、第2、及び第3キャパシタと、第1及び第2スイッチング素子、第1キャパシタ、第1及び第2スイッチング素子の各々の第1端に接続される出力端を有する第1バッファと、第2キャパシタ、第1スイッチング素子の第2端、及び第1コンバータに接続される出力端を有する第2バッファと、第3キャパシタ、第2スイッチング素子の第2端、及び第2コンバータに接続される出力端を有する第3バッファと、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クロック信号に基づいてアナログ信号から第1ビット列を判定する第1コンバータと、
前記第1クロック信号から第1位相だけシフトした第2クロック信号に基づいて前記アナログ信号から第2ビット列を判定する第2コンバータと、
前記第1コンバータ及び前記第2コンバータに参照電圧を供給する回路と、
を備え、
前記回路は、
第1キャパシタと、
第2キャパシタと、
第3キャパシタと、
第1スイッチング素子と、
第2スイッチング素子と、
前記参照電圧に対応する電圧が供給される入力端と、前記第1キャパシタ、前記第1スイッチング素子の第1端、及び前記第2スイッチング素子の第1端に接続される出力端と、を有する第1バッファと、
前記参照電圧に対応する電圧が供給される入力端と、前記第2キャパシタ、前記第1スイッチング素子の第2端、及び前記第1コンバータに接続される出力端と、を有する第2バッファと、
前記参照電圧に対応する電圧が供給される入力端と、前記第3キャパシタ、前記第2スイッチング素子の第2端、及び前記第2コンバータに接続される出力端と、を有する第3バッファと、
を含む、
半導体集積回路。
【請求項2】
前記第1コンバータ及び前記第2コンバータの各々は、逐次比較型のADコンバータである、
請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記第1スイッチング素子は、前記第1コンバータが前記第1ビット列の第1ビットを判定する第1期間でオン状態となるように構成され、
前記第2スイッチング素子は、前記第2コンバータが前記第2ビット列の第2ビットを判定する期間であって前記第1期間と重複しない第2期間でオン状態となるように構成される、
請求項2記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記第1スイッチング素子は、前記第2クロック信号に基づいてオン状態とオフ状態とが切り替わるように構成される、
請求項3記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記第1ビットは、前記第1ビット列の最上位ビットであり、
前記第2ビットは、前記第2ビット列の最上位ビットである、
請求項3記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記回路は、
前記第1バッファの出力端と前記第2バッファの出力端との間で前記第1スイッチング素子と並列に接続される第3スイッチング素子と、
前記第1バッファの出力端と前記第3バッファの出力端との間で前記第2スイッチング素子と並列に接続される第4スイッチング素子と、
を更に含む、
請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記第1スイッチング素子は、前記第1コンバータが前記第1ビット列の第1ビットを判定する第1期間でオン状態となるように構成され、
前記第2スイッチング素子は、前記第2コンバータが前記第2ビット列の第2ビットを判定する期間であって前記第1期間と重複しない第2期間でオン状態となるように構成され、
前記第3スイッチング素子は、前記第1コンバータが前記第1ビット列の第3ビットを判定する期間であって前記第1期間及び前記第2期間と重複しない第3期間でオン状態となるように構成され、
前記第4スイッチング素子は、前記第2コンバータが前記第2ビット列の第4ビットを判定する期間であって前記第1期間、前記第2期間、及び前記第3期間と重複しない第4期間でオン状態となるように構成される、
請求項6記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記第1クロック信号から前記第1位相と異なる第2位相だけシフトした第3クロック信号に基づいて前記アナログ信号から第3ビット列を判定する第3コンバータを更に備え、
前記第1スイッチング素子は、前記第2クロック信号に基づいてオン状態とオフ状態とが切り替わるように構成され、
前記第3スイッチング素子は、前記第3クロック信号に基づいてオン状態とオフ状態とが切り替わるように構成される、
請求項7記載の半導体集積回路。
【請求項9】
前記第1ビットは、前記第1ビット列の最上位ビットであり、
前記第2ビットは、前記第2ビット列の最上位ビットであり、
前記第3ビットは、前記第1ビット列の2番目に上位のビットであり、
前記第4ビットは、前記第2ビット列の2番目に上位のビットである、
請求項7記載の半導体集積回路。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の半導体集積回路と、
前記半導体集積回路から出力された信号を処理する処理回路と、
を備える、受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体集積回路及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送信装置と受信装置とは伝送路を介して接続される。送信装置は、アナログ信号にデータを重畳する。受信装置は、伝送路を通過したアナログ信号を受信する。受信装置は、アナログ信号を処理する半導体集積回路を備える。受信装置は、アナログ信号に基づき、デジタル信号を生成する。受信装置は、生成されたデジタル信号に基づき、データを再生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6696953号公報
【特許文献2】特許第6944047号公報
【特許文献3】特許第6970597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アナログ信号に基づき好適にデジタル信号を生成する半導体集積回路及び受信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体集積回路は、第1クロック信号に基づいてアナログ信号から第1ビット列を判定する第1コンバータと、上記第1クロック信号から第1位相シフトした第2クロック信号に基づいて上記アナログ信号から第2ビット列を判定する第2コンバータと、上記第1コンバータ及び上記第2コンバータに参照電圧を供給する回路と、を備える。上記回路は、第1キャパシタと、第2キャパシタと、第3キャパシタと、第1スイッチング素子と、第2スイッチング素子と、第1バッファと、第2バッファと、第3バッファと、を含む。上記第1バッファは、上記参照電圧に対応する電圧が供給される入力端と、上記第1キャパシタ、上記第1スイッチング素子の第1端、及び上記第2スイッチング素子の第1端に接続される出力端と、を有する。上記第2バッファは、上記参照電圧に対応する電圧が供給される入力端と、上記第2キャパシタ、上記第1スイッチング素子の第2端、及び上記第1コンバータに接続される出力端と、を有する。上記第3バッファは、上記参照電圧に対応する電圧が供給される入力端と、上記第3キャパシタ、上記第2スイッチング素子の第2端、及び上記第2コンバータに接続される出力端と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る受信装置を含む通信システムの構成の一例を示すブロック図。
図2】実施形態に係る受信装置の受信回路の構成の一例を示すブロック図。
図3】実施形態に係る受信回路のADコンバータの構成の一例を示すブロック図。
図4】実施形態に係るTI-ADC内の逐次比較型ADコンバータの構成の一例を示すブロック図。
図5】実施形態に係る受信回路の参照電圧生成回路の構成の一例を示すブロック図。
図6】実施形態に係る参照電圧生成回路のVREFドライバセットの構成の一例を示すブロック図。
図7】実施形態に係る受信装置におけるクロック信号の一例を示すタイミングチャート。
図8】実施形態に係る受信装置における判定処理の一例を示すフローチャート。
図9】実施形態に係る受信装置における判定処理で判定された最上位ビットに基づく電位差変更処理の一例を示す図。
図10】実施形態に係る受信装置における判定処理で判定された2番目のビットに基づく電位差変更処理の一例を示す図。
図11】実施形態に係る受信装置における判定処理で判定された3番目のビットに基づく電位差変更処理の一例を示す図。
図12】実施形態に係る受信装置による判定処理における判定対象となる電位差の遷移の一例を示すタイミングチャート。
図13】実施形態に係る受信装置における参照電圧の供給処理の一例を示す図。
図14】実施形態に係る受信装置における参照電圧の供給処理の他の一例を示す図。
図15】変形例に係る受信回路の参照電圧生成回路の構成の一例を示すブロック図。
図16】変形例に係る参照電圧生成回路のVREFドライバセットの構成の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。
【0008】
なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。同様の構成を有する要素同士を特に区別する場合、同一符号の末尾に、互いに異なる文字又は数字を付加する場合がある。
【0009】
1. 構成
実施形態に係る構成について説明する。
【0010】
1.1 通信システム
まず、実施形態に係る受信装置を含む通信システムの構成について説明する。図1は、実施形態に係る受信装置を含む通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0011】
通信システム1は、高速シリアル通信により、データを一方の装置又は回路から他方の装置又は回路へ伝送するように構成される。通信システム1は、送信装置2、伝送路3、及び受信装置4を備える。通信システム1は、同じプリント基板上に設けられた複数の装置又は回路により構成されても良いし、互いに異なるプリント基板上に設けられた複数の装置又は回路により構成されても良い。
【0012】
送信装置2は、伝送路3を介して受信装置4に信号TR及び/TRを送信するように構成される。信号TR及び/TRは、差動信号である。信号TR及び/TRは、例えば、複数のパルス信号を含む信号である。信号TR及び/TRの各パルスには、データが重畳される。信号TR及び/TRのパルス毎の電圧レベルは、1以上のビットのデータに対応する。当該パルス信号に重畳されたデータが、送信装置2から伝送路3を介して受信装置4に伝達される。
【0013】
伝送路3は、信号TR及び/TRを受信装置4へ伝送するための物理的又は空間的な伝送媒体である。伝送路3は、例えば、送信装置2と受信装置4との間を接続する配線である。伝送路3は、伝送媒体の物理構造や材質に応じて、様々な伝送特性を有し得る。伝送路3の伝送特性は、例えば、特定の周波数帯域における利得の損失を伴う周波数特性を有する。
【0014】
送信装置2によって送信された信号TR及び/TRは、伝送路3を通過することによって、伝送路3の伝送特性に応じた損失を受ける。これにより、伝送路3を通過した信号TR及び/TRには、シンボル間干渉(ISI:Inter-Symbol Interference)が発生する。このため、伝送路3を通過した信号TR及び/TRは、アナログ信号として処理される。以下では、伝送路3を通過して損失を受けた信号TR及び/TRを、信号RV及び/RVと呼ぶ。
【0015】
受信装置4は、伝送路3を介して送信装置2から信号RV及び/RVを受信するように構成される。受信装置4は、信号RV及び/RVに基づいて、送信装置2によって信号TR及び/TRに重畳されたデータを復号する。受信装置4は、信号TR及び/TRに重畳されたデータを正しく復号するための受信回路を有する。受信回路は、半導体集積回路と呼ばれても良い。
【0016】
1.2 受信回路
図2は、実施形態に係る受信装置の受信回路の構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
受信装置4は、受信回路として、例えば、パッドP1及びP2、AFE10、TI-ADC20、VREFGEN30、DSP40、並びにCDR50を含む。
【0018】
パッドP1及びP2の各々は、伝送路3と接続される端子である。図2の例では、送信装置2から伝送路3を介して、パッドP1及びP2がそれぞれ信号RV及び/RVを受信する場合が示される。
【0019】
AFE10は、アナログフロントエンド(Analog Front End)である。AFE10は、例えば、連続時間線形イコライザ(CTLE:Continuous Time Linear Equalizer)及び可変ゲインアンプ(VGA:Variable Gain Amplifier)を含む。CTLEは、伝送路3の周波数特性を補償するような周波数特性を備えた増幅回路である。VGAは、利得(ゲイン)を変更することが可能な増幅回路である。AFE10には、パッドP1及びP2からそれぞれ信号RV及び/RVが入力される。AFE10は、CTLE及びVGAを用いて、信号RV及び/RVに対してアナログ処理を実行する。AFE10は、信号RV及び/RVに基づき、信号Sin及び/Sinを生成する。すなわち、信号Sin及び/Sinは、信号RV及び/RVと同様、アナログ信号である。AFE10は、信号Sin及び/SinをTI-ADC20に出力する。
【0020】
TI-ADC20は、タイム・インタリーブ方式のADコンバータである。すなわち、TI-ADC20は、アナログ信号をデジタル信号に変換する処理を実行する。TI-ADC20には、AFE10から信号Sin及び/Sinが入力される。TI-ADC20には、VREFGEN30から参照電圧VRp及びVRnが入力される。TI-ADC20には、CDR50から信号CK1及びCK2が入力される。TI-ADC20は、参照電圧VRp及びVRn、並びに信号CK1及びCK2に基づいて、信号Sin及び/Sinを信号X0に変換する。TI-ADC20は、信号X0をDSP40に出力する。TI-ADC20の構成については後述する。
【0021】
参照電圧VRp及びVRnは、TI-ADC20において、アナログ信号をデジタル信号に変換する処理で使用される電圧である。TI-ADC20は、信号Sin及び/Sinの電位差と、参照電圧VRp及びVRnの電位差(VRp-VRn)との大小関係に基づいて、信号X0を生成する。以下では、参照電圧VRp及びVRnの電位差(VRp-VRn)は、参照電圧VREFとも呼ばれる。
【0022】
信号CK1は、nr1個のクロック信号を含む。nr1は、1以上の整数(例えば、8)である。信号CK1のnr1個のクロック信号は、例えば、少なくとも360°/nr1ずつ位相が異なる。以下では、信号CK1内のnr1個のクロック信号は、信号CK1_0、…、及びCK1_(nr1-1)のように区別して示される場合がある。信号CK1の周波数は、送信装置2によって信号TR及び/TRに埋め込まれたクロック信号の周波数よりも低い。
【0023】
信号CK2は、nr2個のクロック信号を含む。nr2は、nr1より大きい整数(例えば、32)である。信号CK2のnr2個のクロック信号は、例えば、少なくとも360°/nr2ずつ位相が異なる。以下では、信号CK2内のnr2個のクロック信号は、信号CK2_0、…、及びCK2_(nr2-1)のように区別して示される場合がある。信号CK2の周波数は、送信装置2によって信号TR及び/TRに埋め込まれたクロック信号の周波数と等しくてもよい。信号CK2の周波数は、送信装置2によって信号TR及び/TRに埋め込まれたクロック信号の周波数と異なっていてもよい。
【0024】
TI-ADC20が出力する信号X0は、デジタル信号である。信号X0は、連続する複数のデジタル値を含む。信号X0に含まれる1個のデジタル値は、信号CK2の1個のクロック信号に基づいて、信号Sin及び/Sinの1個のシンボルからサンプリングされる。1個のデジタル値は、例えば、8ビットデータである。信号X0に含まれる連続するnr2個のデジタル値の各ビットの値は、信号CK2のnr2個のクロック信号に基づいて、信号Sin及び/Sinの連続するnr2個のシンボルからサンプリングされる。以下では、信号X0に含まれる連続するnr2個のデジタル値のTI-ADC20による生成周期は、単に「周期」とも呼ぶ。信号X0に含まれる連続するnr2個のデジタル値は、「1周期分の信号X0」とも呼ぶ。
【0025】
また、信号X0に含まれる連続するnr2個のデジタル値は、デジタル値X0_0、…、及びX0_(nr2-1)のように区別して示される場合がある。デジタル値X0_jに含まれる8ビットデータの列は、ビット列X0_j<7:0>のように示される場合がある(0≦j≦nr2-1)。なお、ビット列X0_j<7:0>は、最上位ビット(MSB)X0_j<0>から最下位ビット(LSB)X0_j<7>までの8個のビットが順に並ぶデータ列を意味する。
【0026】
VREFGEN30は、電圧生成回路である。VREFGEN30は、参照電圧VRp及びVRnを生成するように構成される。VREFGEN30の構成の詳細については、後述する。
【0027】
DSP40は、デジタル処理回路(Digital Signal Processor)である。DSP40は、例えば、フィードフォワードイコライザ(FFE:Feed Forward Equalizer)、判定帰還型イコライザ(DFE:Decision Feedback Equalizer)、及びデータ判定回路を含む。DSP40には、信号X0が入力される。DSP40は、FFE、DFE、及びデータ判定回路を用いて、信号X0に対してデジタル処理を実行する。具体的には、DSP40は、信号X0に基づき、信号X及びデータAを生成する。DSP40は、信号X及びデータAを、CDR50に出力する。DSP40は、信号X及びデータAを、後続の処理回路(図示せず)に出力する。後続の処理回路では、信号X及びデータAが処理される。CDR50に出力される信号X及びデータAと、後続の処理回路(図示せず)に出力される信号X及びデータAとは、それぞれ同じ信号であってもよいし異なる信号であってもよい。
【0028】
信号Xは、信号X0と同様、デジタル信号である。1周期分の信号Xは、nr2個のデジタル値の集合である。データAは、信号Xに基づいて復号されたデータである。
【0029】
CDR50は、クロックデータリカバリ回路である。CDR50には、周期毎に信号X及びデータAが入力される。CDR50には、例えば、送信装置2から、参照クロック信号CKREFが入力される。参照クロック信号CKREFは、送信装置2とは独立に、CDR50内又は受信装置4内で生成されてもよい。CDR50は、参照クロック信号CKREF、並びに信号X及びデータAに基づき、信号CK1及びCK2の位相の補正量を算出する。CDR50は、算出された位相の補正量に基づき、信号CK1及びCK2を再生する。CDR50は、再生された信号CK1及びCK2を周期毎にTI-ADC20に出力する。このように、CDR50は、1周期分の信号X0から生成される信号X及びデータAに基づいて、後続する1周期分の信号X0のサンプリングタイミングの基準となる信号CK1及びCK2を再生する。このようなTI-ADC20、DSP40、及びCDR50による周期毎の循環処理は、「CDRループ」とも呼ばれる。
【0030】
以下では、(nr1,nr2)の具体的な組み合わせとして、(8,32)が適用される場合について説明する。
【0031】
1.3 ADコンバータ
次に、実施形態に係る受信回路のADコンバータ(TI-ADC)の内部構成について説明する。図3は、実施形態に係る受信回路のADコンバータの構成の一例を示すブロック図である。
【0032】
TI-ADC20は、SFE21p及び21n、並びに複数のSAR-ADC22を含む。複数のSAR-ADC22は、32個のSAR-ADC22_0、…、及び21_31を含む。図3の例では、4個のSAR-ADC22_0、22_8、22_16、及び22_24が、「SAR-ADC22_0+8k」と示される(0≦k≦3)。同様に、4個のSAR-ADC22_1、22_9、22_17、及び22_25が、「SAR-ADC22_1+8k」と示される。4個のSAR-ADC22_2、22_10、22_18、及び22_26が、「SAR-ADC22_2+8k」と示される。4個のSAR-ADC22_3、22_11、22_19、及び22_27が、「SAR-ADC22_3+8k」と示される。4個のSAR-ADC22_4、22_12、22_20、及び22_28が、「SAR-ADC22_4+8k」と示される。4個のSAR-ADC22_5、22_13、22_21、及び22_29が、「SAR-ADC22_5+8k」と示される。4個のSAR-ADC22_6、22_14、22_22、及び22_30が、「SAR-ADC22_6+8k」と示される。4個のSAR-ADC22_7、22_15、22_23、及び22_31が、「SAR-ADC22_7+8k」と示される。
【0033】
SFE21p及び21nの各々は、サンプリングフロントエンド(Sampling Front End)である。SFE21pには、AFE10から信号Sinが入力される。SFE21pは、信号Sinに基づいて複数の電圧Vinpを生成し、生成した複数の電圧Vinpをそれぞれに対応する複数のSAR-ADC22に出力する。複数の電圧Vinpは、8個の電圧Vinp_0、Vinp_1、Vinp_2、Vinp_3、Vinp_4、Vinp_5、Vinp_6、及びVinp_7を含む。8個の電圧Vinp_0~Vinp_7は、等しいことが好ましいが、互いに異なっていてもよい。SFE21nには、AFE10から信号/Sinが入力される。SFE21nは、信号/Sinに基づいて複数の電圧Vinnを生成し、生成した複数の電圧Vinnをそれぞれに対応する複数のSAR-ADC22に出力する。複数の電圧Vinnは、8個の電圧Vinn_0、Vinn_1、Vinn_2、Vinn_3、Vinn_4、Vinn_5、Vinn_6、及びVinn_7を含む。8個の電圧Vinn_0~Vinn_7は、等しいことが好ましいが、互いに異なっていてもよい。SFE21p及び21nはそれぞれ、同等の構成を有する。以下では、SFE21pの構成について主に説明する。
【0034】
SFE21pは、複数のバッファ211、複数のスイッチング素子212、複数のキャパシタ213、及び複数のバッファ214を含む。複数のバッファ211は、4個のバッファ211a、211b、211c、及び211dを含む。複数のスイッチング素子212は、8個のスイッチング素子212_0、212_1、212_2、212_3、212_4、212_5、212_6、及び212_7を含む。複数のキャパシタ213は、8個のキャパシタ213_0、213_1、213_2、213_3、213_4、213_5、213_6、及び213_7を含む。複数のバッファ214は、8個のバッファ214_0、214_1、214_2、214_3、214_4、214_5、214_6、及び214_7を含む。複数のスイッチング素子212の各々は、例えば、トランジスタを含んで構成される。
【0035】
SFE21pでは、バッファ211a、211b、211c、及び211dの各々の入力端には、信号Sinが入力される。SFE21nでは、バッファ211a、211b、211c、及び211dの各々の入力端には、信号/Sinが入力される。バッファ211aの出力端には、スイッチング素子212_0及び212_4の各々の第1端が接続される。バッファ211bの出力端には、スイッチング素子212_2及び212_6の各々の第1端が接続される。バッファ211cの出力端には、スイッチング素子212_1及び212_5の各々の第1端が接続される。バッファ211dの出力端には、スイッチング素子212_3及び212_7の各々の第1端が接続される。
【0036】
スイッチング素子212_0の第2端には、キャパシタ213_0の第1端及びバッファ214_0の入力端が接続される。キャパシタ213_0の第2端は、接地される。接地されるとは、SFE21pが動作する場合の基準電位が印加される配線に接続されることである。信号CK1_0が“H”レベルの場合、スイッチング素子212_0は、オン状態となる。信号CK1_0が“L”レベルの場合、スイッチング素子212_0は、オフ状態となる。
【0037】
スイッチング素子212_1の第2端には、キャパシタ213_1の第1端及びバッファ214_1の入力端が接続される。キャパシタ213_1の第2端は、接地される。信号CK1_1が“H”レベルの場合、スイッチング素子212_1は、オン状態となる。信号CK1_1が“L”レベルの場合、スイッチング素子212_1は、オフ状態となる。
【0038】
スイッチング素子212_2の第2端には、キャパシタ213_2の第1端及びバッファ214_2の入力端が接続される。キャパシタ213_2の第2端は、接地される。信号CK1_2が“H”レベルの場合、スイッチング素子212_2は、オン状態となる。信号CK1_2が“L”レベルの場合、スイッチング素子212_2は、オフ状態となる。
【0039】
スイッチング素子212_3の第2端には、キャパシタ213_3の第1端及びバッファ214_3の入力端が接続される。キャパシタ213_3の第2端は、接地される。信号CK1_3が“H”レベルの場合、スイッチング素子212_3は、オン状態となる。信号CK1_3が“L”レベルの場合、スイッチング素子212_3は、オフ状態となる。
【0040】
スイッチング素子212_4の第2端には、キャパシタ213_4の第1端及びバッファ214_4の入力端が接続される。キャパシタ213_4の第2端は、接地される。信号CK1_4が“H”レベルの場合、スイッチング素子212_4は、オン状態となる。信号CK1_4が“L”レベルの場合、スイッチング素子212_4は、オフ状態となる。
【0041】
スイッチング素子212_5の第2端には、キャパシタ213_5の第1端及びバッファ214_5の入力端が接続される。キャパシタ213_5の第2端は、接地される。信号CK1_5が“H”レベルの場合、スイッチング素子212_5は、オン状態となる。信号CK1_5が“L”レベルの場合、スイッチング素子212_5は、オフ状態となる。
【0042】
スイッチング素子212_6の第2端には、キャパシタ213_6の第1端及びバッファ214_6の入力端が接続される。キャパシタ213_6の第2端は、接地される。信号CK1_6が“H”レベルの場合、スイッチング素子212_6は、オン状態となる。信号CK1_6が“L”レベルの場合、スイッチング素子212_6は、オフ状態となる。
【0043】
スイッチング素子212_7の第2端には、キャパシタ213_7の第1端及びバッファ214_7の入力端が接続される。キャパシタ213_7の第2端は、接地される。信号CK1_7が“H”レベルの場合、スイッチング素子212_7は、オン状態となる。信号CK1_7が“L”レベルの場合、スイッチング素子212_7は、オフ状態となる。
【0044】
以上のような構成により、SFE21pでは、信号CK1_0~CK1_7が“H”レベルとなるタイミングにおける信号Sinに対応する電圧Vinp_0~Vinp_7がそれぞれ、バッファ214_0~214_7に順次保持される。同様に、SFE21nでは、信号CK1_0~CK1_7が“H”レベルとなるタイミングにおける信号/Sinに対応する電圧Vinn_0~Vinn_7がそれぞれ、バッファ214_0~214_7に順次保持される。
【0045】
SFE21p及び21nの各々のバッファ214_0の出力端は、SAR-ADC22_0、22_8、22_16、及び22_24に接続される。SFE21p及び21nの各々のバッファ214_1の出力端は、SAR-ADC22_1、22_9、22_17、及び22_25に接続される。SFE21p及び21nの各々のバッファ214_2の出力端は、SAR-ADC22_2、22_10、22_18、及び22_26に接続される。SFE21p及び21nの各々のバッファ214_3の出力端は、SAR-ADC22_3、22_11、22_19、及び22_27に接続される。SFE21p及び21nの各々のバッファ214_4の出力端は、SAR-ADC22_4、22_12、22_20、及び22_28に接続される。SFE21p及び21nの各々のバッファ214_5の出力端は、SAR-ADC22_5、22_13、22_21、及び22_29に接続される。SFE21p及び21nの各々のバッファ214_6の出力端は、SAR-ADC22_6、22_14、22_22、及び22_30に接続される。SFE21p及び21nの各々のバッファ214_7の出力端は、SAR-ADC22_7、22_15、22_23、及び22_31に接続される。
【0046】
SAR-ADC22_0~SAR-ADC22_31の各々は、逐次比較型(Successive Approximation Register)のADコンバータである。SAR-ADC22_0~SAR-ADC22_31にはそれぞれ、信号CK2_0~CK2_31が入力される。SAR-ADC22_0~SAR-ADC22_31の各々には、参照電圧VRp及びVRnが異なる配線を介して供給される。SAR-ADC22_0~SAR-ADC22_31は、それぞれに対応して入力される信号CK2_0~CK2_31、及び参照電圧VRp及びVRnに基づいて、信号X0_0~X0_31をそれぞれ出力する。SAR-ADC22_0~SAR-ADC22_31はそれぞれ、同等の構成を有する。
【0047】
なお、参照電圧VRp及びVRnのレベルは、供給先のSAR-ADC22_0~22_31の動作状況に応じて、過渡的に変動し(ripple)得る。上述の通り、SAR-ADC22_0~SAR-ADC22_31にはそれぞれ、参照電圧VRp及びVRnが異なる配線を介して供給されるため、当該過渡的な変動は、SAR-ADC22_0~22_31毎に独立に発生するとみなせる。以下では、互いに独立に発生する変動を考慮する場合、SAR-ADC22_0~22_31に供給される参照電圧VRp及びVRnはそれぞれ、参照電圧VRp_0~VRp_31、及びVRn_0~VR_31のように区別して記載する場合がある。
【0048】
1.4 SAR-ADC
次に、実施形態に係るTI-ADC内の逐次比較型ADコンバータ(SAR-ADC)の内部構成について説明する。図4は、実施形態に係るTI-ADC内の逐次比較型ADコンバータの構成の一例を示すブロック図である。図4の例では、32個のSAR-ADC22_0~22_31のうちの任意の1個のSAR-ADC22_jの構成の一例が示される(0≦j≦nr2-1=31)。
【0049】
SAR-ADC22_jは、例えば、8ビットまで判定可能に構成されたSAR-ADCである。以下では、一例として、トッププレートサンプリング型の非同期SAR-ADCについて説明する。なお、SAR-ADC22_jには、トッププレートサンプリング型の非同期SAR-ADCに限らず、ボトムプレートサンプリング型の非同期SAR-ADCや、同期SAR-ADCを適用してもよい。
【0050】
SAR-ADC22_jは、スイッチング素子221p_j及び221n_j、CAP-CDAC222_j、比較器223_j、NOR224_j、制御回路225_j、並びにCAPドライバ226p_j及び226n_jを含む。CAP-CDAC222_jは、複数のキャパシタCp及びCn、並びに複数のスイッチング素子Sp及びSnを含む。スイッチング素子221p_j及び221n_j、並びに複数のスイッチング素子Sp及びSnの各々は、例えば、トランジスタを含んで構成される。
【0051】
複数のキャパシタCpは、14個のキャパシタC0pp、C0pn、C1pp、C1pn、C2pp、C2pn、C3pp、C3pn、C4pp、C4pn、C5pp、C5pn、C6p、及びC7pを含む。複数のキャパシタCnは、14個のキャパシタC0np、C0nn、C1np、C1nn、C2np、C2nn、C3np、C3nn、C4np、C4nn、C5np、C5nn、C6n、及びC7nを含む。キャパシタC0pp、C0pn、C0np、及びC0nnの容量は、互いに等しい。キャパシタC1pp、C1pn、C1np、及びC1nnの容量は、互いに等しい。キャパシタC2pp、C2pn、C2np、及びC2nnの容量は、互いに等しい。キャパシタC3pp、C3pn、C3np、及びC3nnの容量は、互いに等しい。キャパシタC4pp、C4pn、C4np、及びC4nnの容量は、互いに等しい。キャパシタC5pp、C5pn、C6p、C7p、C5np、C5nn、C6n、及びC7nの容量は、互いに等しい。
【0052】
以下では、キャパシタC5pp、C5pn、C6p、C7p、C5np、C5nn、C6n、及びC7nの各々の容量をCとおく。この場合、キャパシタC4pp、C4pn、C4np、及びC4nnの各々の容量は、容量Cの2倍(2C)である。キャパシタC3pp、C3pn、C3np、及びC3nnの各々の容量は、容量Cの4倍(4C)である。キャパシタC2pp、C2pn、C2np、及びC2nnの各々の容量は、容量Cの8倍(8C)である。キャパシタC1pp、C1pn、C1np、及びC1nnの各々の容量は、容量Cの16倍(16C)である。キャパシタC0pp、C0pn、C0np、及びC0nnの各々の容量は、容量Cの32倍(32C)である。
【0053】
複数のスイッチング素子Spは、13個のスイッチング素子S0pp、S0pn、S1pp、S1pn、S2pp、S2pn、S3pp、S3pn、S4pp、S4pn、S5pp、S5pn、及びS6pを含む。複数のスイッチング素子Snは、13個のスイッチング素子S0np、S0nn、S1np、S1nn、S2np、S2nn、S3np、S3nn、S4np、S4nn、S5np、S5nn、及びS6nを含む。複数のスイッチング素子Spの各々、及び複数のスイッチング素子Snの各々は、第1端、第2端、及び第3端を有する。複数のスイッチング素子Spの各々、及び複数のスイッチング素子Snの各々は、第1端及び第2端が接続される状態と、第1端及び第3端が接続される状態と、のいずれかの状態となるように構成される。
【0054】
スイッチング素子221p_jの第1端には、電圧Vinpが供給される。スイッチング素子221p_jの第2端は、CAP-CDAC222_j内の複数のキャパシタCpの各々の第1端、及び比較器223_jの第1入力端に接続される。スイッチング素子221p_jの第2端、複数のキャパシタCpの各々の第1端、及び比較器223_jの第1入力端に接続される配線には、電圧Vcmppが現れる。
【0055】
スイッチング素子221n_jの第1端には、電圧Vinnが供給される。スイッチング素子221n_jの第2端は、CAP-CDAC222_j内の複数のキャパシタCnの各々の第1端、及び比較器223_jの第2入力端に接続される。スイッチング素子221n_jの第2端、複数のキャパシタCnの各々の第1端、及び比較器223_jの第2入力端に接続される配線には、電圧Vcmpnが現れる。
【0056】
信号CK2_jが“H”レベルの場合、スイッチング素子221p_j及び221n_jは、オン状態となる。信号CK2_jが“L”レベルの場合、スイッチング素子221p_j及び221n_jは、オフ状態となる。
【0057】
以上のような構成により、信号CK2_jが“H”レベルとなるタイミングにおける電圧Vinpに対応する電荷が、CAP-CDAC222_j内の複数のキャパシタCpの各々の第1端に充電される。これにより、電圧Vinpが、電圧Vcmppの初期値Vcmpp0として、CAP-CDAC222_j内に保持される。同様に、信号CK2_jが“H”レベルとなるタイミングにおける電圧Vinnに対応する電荷が、CAP-CDAC222_j内の複数のキャパシタCnの各々の第1端に充電される。これにより、電圧Vinnが、電圧Vcmpnの初期値Vcmpn0として、CAP-CDAC222_j内に保持される。
【0058】
キャパシタC0ppの第2端は、スイッチング素子S0ppの第1端に接続される。キャパシタC0pnの第2端は、スイッチング素子S0pnの第1端に接続される。キャパシタC1ppの第2端は、スイッチング素子S1ppの第1端に接続される。キャパシタC1pnの第2端は、スイッチング素子S1pnの第1端に接続される。キャパシタC2ppの第2端は、スイッチング素子S2ppの第1端に接続される。キャパシタC2pnの第2端は、スイッチング素子S2pnの第1端に接続される。キャパシタC3ppの第2端は、スイッチング素子S3ppの第1端に接続される。キャパシタC3pnの第2端は、スイッチング素子S3pnの第1端に接続される。キャパシタC4ppの第2端は、スイッチング素子S4ppの第1端に接続される。キャパシタC4pnの第2端は、スイッチング素子S4pnの第1端に接続される。キャパシタC5ppの第2端は、スイッチング素子S5ppの第1端に接続される。キャパシタC5pnの第2端は、スイッチング素子S5pnの第1端に接続される。キャパシタC6pの第2端は、スイッチング素子S6pの第1端に接続される。キャパシタC7pの第2端には、参照電圧VRn_jが供給される。複数のスイッチング素子Spの各々の第2端には、参照電圧VRp_jが供給される。複数のスイッチング素子Spの各々の第3端には、参照電圧VRn_jが供給される。
【0059】
キャパシタC0npの第2端は、スイッチング素子S0npの第1端に接続される。キャパシタC0nnの第2端は、スイッチング素子S0nnの第1端に接続される。キャパシタC1npの第2端は、スイッチング素子S1npの第1端に接続される。キャパシタC1nnの第2端は、スイッチング素子S1nnの第1端に接続される。キャパシタC2npの第2端は、スイッチング素子S2npの第1端に接続される。キャパシタC2nnの第2端は、スイッチング素子S2nnの第1端に接続される。キャパシタC3npの第2端は、スイッチング素子S3npの第1端に接続される。キャパシタC3nnの第2端は、スイッチング素子S3nnの第1端に接続される。キャパシタC4npの第2端は、スイッチング素子S4npの第1端に接続される。キャパシタC4nnの第2端は、スイッチング素子S4nnの第1端に接続される。キャパシタC5npの第2端は、スイッチング素子S5npの第1端に接続される。キャパシタC5nnの第2端は、スイッチング素子S5nnの第1端に接続される。キャパシタC6nの第2端は、スイッチング素子S6nの第1端に接続される。キャパシタC7nの第2端には、参照電圧VRp_jが供給される。複数のスイッチング素子Snの各々の第2端には、参照電圧VRn_jが供給される。複数のスイッチング素子Snの各々の第3端には、参照電圧VRp_jが供給される。
【0060】
比較器223_jは、電圧Vcmppが供給される第1入力端と、電圧Vcmpnが供給される第2入力端と、NOR224_jの第1入力端及び制御回路225_jに接続された第1出力端と、NOR224_jの第2入力端及び制御回路225_jに接続された第2出力端と、を含む。比較器223_jは、制御回路225_jから信号CCKを受信する。
【0061】
比較器223_jは、“L”レベルの信号CCKに基づいて、比較器223_jの第1出力端及び第2出力端をリセットし、“L”レベルの信号Qp及びQnを出力する。比較器223_jは、“H”レベルの信号CCKに基づいて、電圧Vcmpp及びVcmpnの大小関係を比較する比較処理を実行する。
【0062】
比較処理は、以下のように行われる。電圧Vcmppと電圧Vcmpnとの差(以下、電位差(Vcmpp-Vcmpn)と呼ぶ。)が正の場合、比較器223_jは、第1出力端から“H”レベルの信号Qpを出力し、第2出力端から“L”レベルの信号Qnを出力する。電位差(Vcmpp-Vcmpn)が負の場合、比較器223_jは、第1出力端から“L”レベルの信号Qpを出力し、第2出力端から“H”レベルの信号Qnを出力する。電位差(Vcmpp-Vcmpn)が0とみなされる場合、比較器223_jは、第1出力端から“L”レベルの信号Qpを出力し、第2出力端から“L”レベルの信号Qnを出力する。
【0063】
NOR224_jは、比較器223_jによる比較処理が終了することを制御回路225_jに通知する。具体的には、第1入力端から入力される信号Qp及び第2入力端から入力される信号Qnが共に“L”レベルとなる場合、NOR224_jは、“H”レベルの信号RYを制御回路225_jに出力する。第1入力端から入力される信号Qp又は第2入力端から入力される信号Qnが“H”レベルとなる場合、NOR224_jは、“L”レベルの信号RYを制御回路225_jに出力する。
【0064】
制御回路225_jは、“H”レベルの信号CK2_jに基づいて、“L”レベルの信号CCKを出力する。制御回路225_jは、“L”レベルの信号CK2_jに基づいて、ビット列X0_j<7:0>を最上位ビットから最下位ビットに向けて逐次判定する判定処理を実行する。
【0065】
判定処理は、以下のように行われる。信号RYが“H”レベルの場合、制御回路225_jは、“H”レベルの信号CCKを出力して、比較器223_jに或るビット(例えば、最上位ビット)の比較処理を実行させる。比較処理の結果、信号Qp又はQnが“H”レベルとなり、信号RYが“L”レベルとなる。信号RYが“L”レベルの場合、制御回路225_jは、信号Qp及びQnに基づいて当該或るビットを判定した後、“L”レベルの信号CCKを出力して、比較器223_jの第1出力端及び第2出力端をリセットさせる。リセットの結果、信号Qp及びQnが“L”レベルとなり、信号RYが“H”レベルとなる。信号RYが“H”レベルの場合、制御回路225_jは、“H”レベルの信号CCKを出力して、比較器223_jに次のビット(例えば、2番目のビット)の比較処理を実行させる。このように、信号CCK及びRYが互いに反転するようにトグルさせながら、ビット毎の比較及び判定が順次繰り返される。
【0066】
各ビットの具体的な判定処理は、以下のように行われる。信号Qp及びQnがそれぞれ“H”レベル及び“L”レベルの場合(電位差Vcmpp-Vcmpnが正の場合)、制御回路225_jは、対応するビットが“1”であると判定する。信号Qp及びQnがそれぞれ“L”レベル及び“H”レベルの場合(電位差Vcmpp-Vcmpnが負の場合)、制御回路225_jは、対応するビットが“0”であると判定する。信号Qp及びQnがいずれも“L”レベルの場合(電位差Vcmpp-Vcmpnが0の場合)、制御回路225_jは、対応するビット以降の全てのビットが“0”であると判定する。
【0067】
制御回路225_jは、ビットを判定する毎に、信号CNTを生成し、CAPドライバ226p_j及び226n_jに出力する。例えば、判定されたビットが“1”の場合、制御回路225_jは、“H”レベルの信号CNTを生成する。判定されたビットが“0”の場合、制御回路225_jは、“L”レベルの信号CNTを生成する。
【0068】
CAPドライバ226p_jは、信号CNTに基づいて、複数のスイッチング素子Spの状態を切り替える。具体的には、ビットX0_j<z>に対応する信号CNTが“H”レベルの場合、CAPドライバ226p_jは、複数のスイッチング素子Spのうち、スイッチング素子Szppを、第1端及び第2端が接続される状態から、第1端及び第3端が接続される状態に切り替える(0≦z≦5)。ビットX0_j<z>に対応する信号CNTが“L”レベルの場合、CAPドライバ226p_jは、複数のスイッチング素子Spのうち、スイッチング素子Szpnを、第1端及び第3端が接続される状態から、第1端及び第2端が接続される状態に切り替える。同様に、ビットX0_j<6>に対応する信号CNTが“H”レベルの場合、CAPドライバ226p_jは、複数のスイッチング素子Spのうち、スイッチング素子S6pを、第1端及び第2端が接続される状態から、第1端及び第3端が接続される状態に切り替える。ビットX0_j<6>に対応する信号CNTが“L”レベルの場合、CAPドライバ226p_jは、スイッチング素子S6pを、第1端及び第2端が接続される状態に維持する。
【0069】
CAPドライバ226n_jは、信号CNTに基づいて、複数のスイッチング素子Snの状態を切り替える。具体的には、ビットX0_j<z>に対応する信号CNTが“H”レベルの場合、CAPドライバ226n_jは、複数のスイッチング素子Snのうち、スイッチング素子Sznpを、第1端及び第2端が接続される状態から、第1端及び第3端が接続される状態に切り替える(0≦z≦5)。ビットX0_j<z>に対応する信号CNTが“L”レベルの場合、CAPドライバ226n_jは、複数のスイッチング素子Snのうち、スイッチング素子Sznnを、第1端及び第3端が接続される状態から、第1端及び第2端が接続される状態に切り替える。同様に、ビットX0_j<6>に対応する信号CNTが“H”レベルの場合、CAPドライバ226n_jは、複数のスイッチング素子Snのうち、スイッチング素子S6nを、第1端及び第2端が接続される状態に維持する。ビットX0_j<6>に対応する信号CNTが“L”レベルの場合、CAPドライバ226n_jは、スイッチング素子S6nを、第1端及び第2端が接続される状態から、第1端及び第3端が接続される状態に切り替える。
【0070】
1.5 参照電圧生成回路
次に、実施形態に係る受信回路内の参照電圧生成回路(VREFGEN)の内部構成について説明する。図5は、実施形態に係る受信回路の参照電圧生成回路の構成の一例を示すブロック図である。VREFGEN30は、Pサイド30p及びNサイド30nを含む。Pサイド30p及びNサイド30nはそれぞれ、参照電圧VRp及びVRnを生成する回路部分に対応する。
【0071】
Pサイド30pは、VREFドライバセット31p、32p、33p、及び34pを含む。VREFドライバセット31pは、SAR-ADC22_0、22_4、22_8、22_12、22_16、22_20、22_24、及び22_28にそれぞれ参照電圧VRp_0、VRp_4、VRp_8、VRp_12、VRp_16、VRp_20、VRp_24、及びVRp_28を供給するように構成される。VREFドライバセット32pは、SAR-ADC22_1、22_5、22_9、22_13、22_17、22_21、22_25、及び22_29にそれぞれ参照電圧VRp_1、VRp_5、VRp_9、VRp_13、VRp_17、VRp_21、VRp_25、及びVRp_29を供給するように構成される。VREFドライバセット33pは、SAR-ADC22_2、22_6、22_10、22_14、22_18、22_22、22_26、及び22_30にそれぞれ参照電圧VRp_2、VRp_6、VRp_10、VRp_14、VRp_18、VRp_22、VRp_26、及びVRp_30を供給するように構成される。VREFドライバセット34pは、SAR-ADC22_3、22_7、22_11、22_15、22_19、22_23、22_27、及び22_31にそれぞれ参照電圧VRp_3、VRp_7、VRp_11、VRp_15、VRp_19、VRp_23、VRp_27、及びVRp_31を供給するように構成される。
【0072】
Nサイド30nは、VREFドライバセット31n、32n、33n、及び34nを含む。VREFドライバセット31nは、SAR-ADC22_0、22_4、22_8、22_12、22_16、22_20、22_24、及び22_28にそれぞれ参照電圧VRn_0、VRn_4、VRn_8、VRn_12、VRn_16、VRn_20、VRn_24、及びVRn_28を供給するように構成される。VREFドライバセット32nは、SAR-ADC22_1、22_5、22_9、22_13、22_17、22_21、22_25、及び22_29にそれぞれ参照電圧VRn_1、VRn_5、VRn_9、VRn_13、VRn_17、VRn_21、VRn_25、及びVRn_29を供給するように構成される。VREFドライバセット33nは、SAR-ADC22_2、22_6、22_10、22_14、22_18、22_22、22_26、及び22_30にそれぞれ参照電圧VRn_2、VRn_6、VRn_10、VRn_14、VRn_18、VRn_22、VRn_26、及びVRn_30を供給するように構成される。VREFドライバセット34nは、SAR-ADC22_3、22_7、22_11、22_15、22_19、22_23、22_27、及び22_31にそれぞれ参照電圧VRn_3、VRn_7、VRn_11、VRn_15、VRn_19、VRn_23、VRn_27、及びVRn_31を供給するように構成される。
【0073】
VREFドライバセット31p、32p、33p、及び34pは、参照電圧VRpの出力先が異なる点を除いて、互いに同等な構成を有する。VREFドライバセット31n、32n、33n、及び34nは、参照電圧VRpに代えて参照電圧VRnを出力する点を除いて、それぞれVREFドライバセット31p、32p、33p、及び34pと同等の構成を有する。以下では、一例として、VREFドライバセット31pの構成について説明する。
【0074】
図6は、実施形態に係る参照電圧生成回路のVREFドライバセットの構成の一例を示すブロック図である。VREFドライバセット31pは、複数のバッファ311p、複数のキャパシタ312p、複数のスイッチング素子313p、バッファ314p、及びキャパシタ315pを含む。複数のバッファ311pは、8個のバッファ311p_0、311p_4、311p_8、311p_12、311p_16、311p_20、311p_24、及び311p_28を含む。複数のキャパシタ312pは、8個のキャパシタ312p_0、312p_4、312p_8、312p_12、312p_16、312p_20、312p_24、及び312p_28を含む。複数のスイッチング素子313pは、8個のスイッチング素子313p_0、313p_4、313p_8、313p_12、313p_16、313p_20、313p_24、及び313p_28を含む。
【0075】
複数のバッファ311pの各々の入力端及びバッファ314pの入力端には、参照電圧VRpREFが供給される。参照電圧VRpREFは、参照電圧VRp_0~VRp_31の供給元となる基準電圧である。参照電圧VRpREFは、参照電圧VRp_0~VRp_31に対応する。
【0076】
バッファ311p_0の出力端は、キャパシタ312p_0の第1端、スイッチング素子313p_0の第1端、及びSAR-ADC22_0に接続される。バッファ311p_4の出力端は、キャパシタ312p_4の第1端、スイッチング素子313p_4の第1端、及びSAR-ADC22_4に接続される。バッファ311p_8の出力端は、キャパシタ312p_8の第1端、スイッチング素子313p_8の第1端、及びSAR-ADC22_8に接続される。バッファ311p_12の出力端は、キャパシタ312p_12の第1端、スイッチング素子313p_12の第1端、及びSAR-ADC22_12に接続される。バッファ311p_16の出力端は、キャパシタ312p_16の第1端、スイッチング素子313p_16の第1端、及びSAR-ADC22_16に接続される。バッファ311p_20の出力端は、キャパシタ312p_20の第1端、スイッチング素子313p_20の第1端、及びSAR-ADC22_20に接続される。バッファ311p_24の出力端は、キャパシタ312p_24の第1端、スイッチング素子313p_24の第1端、及びSAR-ADC22_24に接続される。バッファ311p_28の出力端は、キャパシタ312p_28の第1端、スイッチング素子313p_28の第1端、及びSAR-ADC22_28に接続される。キャパシタ312p_0、312p_4、312p_8、312p_12、312p_16、312p_20、312p_24、及び312p_28の各々の第2端は、接地される。
【0077】
バッファ314pの出力端は、キャパシタ315pの第1端、並びにスイッチング素子313p_0、313p_4、313p_8、313p_12、313p_16、313p_20、313p_24、及び313p_28の各々の第2端に接続される。キャパシタ315pの第2端は、接地される。
【0078】
スイッチング素子313p_0、313p_4、313p_8、313p_12、313p_16、313p_20、313p_24、及び313p_28はそれぞれ、信号CK2_4、CK2_8、CK2_12、CK2_16、CK2_20、CK2_24、CK2_28、及びCK2_0が、“H”レベルの場合にオン状態となり、“L”レベルの場合にオフ状態となる。
【0079】
以上のような構成により、VREFドライバセット31pは、SAR-ADC22_0、22_4、22_8、22_12、22_16、22_20、22_24、及び22_28に対して独立に、それぞれ参照電圧VRp_0、VRp_4、VRp_8、VRp_12、VRp_16、VRp_20、VRp_24、及びVRp_28を出力することができる。
【0080】
2. 動作
次に、実施形態に係る受信装置の動作について説明する。
【0081】
2.1 クロックタイミング
まず、実施形態に係る受信装置におけるクロックタイミングについて説明する。図7は、実施形態に係る受信装置におけるクロック信号の一例を示すタイミングチャートである。
【0082】
信号CK1は、位相が等間隔にずれる8相のクロック信号である。信号CK1の各々の“H”レベルの期間は、T1で等しい。信号CK1の各々の“L”レベルの期間は、H1で等しい。
【0083】
信号CK2は、位相が等間隔にずれる32相のクロック信号である。信号CK2の各々の“H”レベルの期間は、T2で等しい。信号CK2の各々の“L”レベルの期間は、H2で等しい。
【0084】
信号CK1のnr2/nr1周期は、例えば、信号CK2の1周期と等しい。すなわち、nr1=8、nr2=32の場合、4(T1+H1)=T2+H2である。期間H1は、例えば、期間T2より長い。
【0085】
以下では、信号CK1_0と信号CK2との関係について説明する。
【0086】
1周期目の信号CK1が“H”レベルの間(図7の期間T1_0)に、SFE21p及び21nの各々のスイッチング素子212_0がオン状態となる。これにより、信号Sin及び/Sinに対応する電荷がそれぞれ、SFE21p及び21nのキャパシタ213_0に充電される。1周期目の信号CK1が“L”レベルの間(図7の期間H1_0)に、SFE21p及び21nの各々のスイッチング素子212_0がオフ状態となる。当該期間H1_0において、バッファ214_0は、キャパシタ213_0に充電された電荷を保持する。
【0087】
そして、期間H1_0には、信号CK2_0が“H”レベルとなる期間(図7の期間T2_0)が含まれる。期間T2_0に、SAR-ADC22_0のスイッチング素子221p_0及び221n_0がオン状態となる。これにより、SFE21p及び21nの各々のバッファ214_0に保持された電荷が、CAP-CDAC222_0内の複数のキャパシタCp及びCnにそれぞれ充電される。その後、信号CK2_0が“L”レベルとなる期間(図7の期間H2_0)に、SAR-ADC22_0のスイッチング素子221p_0及び221n_0がオフ状態となる。当該期間H2_0において、CAP-CDAC222_0は、複数のキャパシタCp及びCnに充電された電荷を保持する。保持された電荷は、期間H2_0にわたって保存される。そして、当該保持された電荷を用いて、データX0_0に含まれるビット列X0_0<7:0>を最上位ビットから最下位ビットに向けて逐次判定する。
【0088】
図7では、最上位ビットが判定される期間、2番目のビットが判定される期間、…、及び最下位ビットが判定される期間がそれぞれ期間DMSB、D2ND、…、及びDLSBと示される。図7の例では、信号CK2_0の期間DMSBは、信号CK2_4が“H”レベルとなる期間(図7の期間T2_4)に含まれる。信号CK2_0の期間D2NDは、信号CK2_8が“H”レベルとなる期間(図7の期間T2_8)に含まれる。信号CK2_4の期間DMSBは、信号CK2_8が“H”レベルとなる期間(図7の期間T2_8)に含まれる。なお、期間DMSB、D2ND、…、及びDLSBの各々は、信号CK2のうちの複数個のクロック信号が“H”レベルとなる期間にまたがっていてもよい。
【0089】
2周期目、3周期目、及び4周期目の動作についても、1周期目と同等である。すなわち、2周期目、3周期目、及び4周期目の信号CK1が“H”レベルの間(図7の期間T1_8、T1_16、及びT1_24)に、SFE21p及び21nの各々のスイッチング素子212_0はそれぞれ、オン状態となる。これにより、信号Sin及び/Sinに対応する電荷がそれぞれ、SFE21p及び21nのキャパシタ213_0に充電される。2周期目、3周期目、及び4周期目の信号CK1が“L”レベルの間(図7の期間H1_8、H1_16、及びH1_24)に、SFE21p及び21nの各々のスイッチング素子212_0がオフ状態となる。スイッチング素子212_0がオフ状態の間、バッファ214_0は、キャパシタ213_0に充電された電圧値を保持する。
【0090】
そして、期間H1_8、H1_16、及びH1_24にはそれぞれ、信号CK2_8、CK2_16、及びCK2_24が“H”レベルとなる期間(図7の期間T2_8、T2_16、及びT2_24)が含まれる。期間T2_8、T2_16、及びT2_24にそれぞれ、SAR-ADC22_8のスイッチング素子221p_8及び221n_8、SAR-ADC22_16のスイッチング素子221p_16及び221n_16、及びSAR-ADC22_24のスイッチング素子221p_24及び221n_24がオン状態となる。これにより、SFE21p及び21nの各々のバッファ214_0に保持された電荷が、期間T2_8にCAP-CDAC222_8の複数のキャパシタCp及びCnに、期間T2_16にCAP-CDAC222_16の複数のキャパシタCp及びCnに、期間T2_24にCAP-CDAC222_24の複数のキャパシタCp及びCnに、それぞれ充電される。その後、信号CK2_8、CK2_16、及びCK2_24がそれぞれ“L”レベルとなる期間(図7の期間H2_8、H2_16、及びH2_24)に、SAR-ADC22_8のスイッチング素子221p_8及び221n_8、SAR-ADC22_16のスイッチング素子221p_16及び221n_16、並びにSAR-ADC22_24のスイッチング素子221p_24及び221n_24がオフ状態となる。当該期間H2_8、H2_16、及びH2_24においてそれぞれ、CAP-CDAC222_8、222_16、及び222_24は、複数のキャパシタCp及びCnに充電された電荷を保持する。保持された電荷は、期間H2_8、H2_16、及びH2_24にわたってそれぞれ保存される。そして、当該期間H2_8、H2_16、及びH2_24においてそれぞれ、保持された電荷を用いて、ビット列X0_8<7:0>、X0_16<7:0>、及びX0_24<7:0>を最上位ビットから最下位ビットに向けて逐次判定する。
【0091】
2.2 判定処理
次に、実施形態に係る受信装置におけるビット列の判定処理について説明する。図8は、実施形態に係る受信装置におけるビット列の判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0092】
信号CK2_jが“H”レベルになると(開始)、SAR-ADC22_jのスイッチング素子221p_j及び221n_jは、オン状態となる。その後、信号CK2_jが“L”レベルとなり、SAR-ADC22_jのスイッチング素子221p_j及び221n_jは、オフ状態となる。これに伴い、電圧Vinp及びVinnがCAP-CDAC222_j内に保持される(ST1)。具体的には、電圧Vinpに対応する電荷が複数のキャパシタCpに充電されることにより、電圧Vinpが電圧Vcmppの初期値Vcmpp0として保持される。電圧Vinnに対応する電荷が複数のキャパシタCnに充電されることにより、電圧Vinnが電圧Vcmpnの初期値Vcmpn0として保持される。
【0093】
制御回路225_jは、変数iを1に初期化する(ST2)。変数iは、1以上N以下の整数である。Nは、信号X0に含まれるデータのビット数(例えば、8)である。
【0094】
比較器223_jは、電圧Vcmppが電圧Vcmpnより高いか否かを判定する(ST3)。
【0095】
電圧Vcmppが電圧Vcmpnより高い場合(ST3;yes)、比較器223_jは、“1”の信号Qp及び“0”の信号Qnを制御回路225_jに出力する。制御回路225_jは、“1”の信号Qp及び“0”の信号Qnに基づき、i番目のビットが“1”であると判定する(ST4)。制御回路225_jは、判定結果に基づいて信号CNTを生成し、CAPドライバ226p_j及び226n_jに出力する。
【0096】
CAPドライバ226p_j及び226n_jはそれぞれ、信号CNTに基づいて複数のスイッチング素子Sp及びSnを切り替えることにより、電位差(Vcmpp-Vcmpn)をVREF/2だけ減少させる(ST5)。
【0097】
電圧Vcmppが電圧Vcmpnより低い場合(ST3;no)、比較器223_jは、“0”の信号Qp及び“1”の信号Qnを制御回路225_jに出力する。制御回路225_jは、“0”の信号Qp及び“1”の信号Qnに基づき、i番目のビットが“0”であると判定する(ST6)。制御回路225_jは、判定結果に基づいて信号CNTを生成し、CAPドライバ226p_j及び226n_jに出力する。
【0098】
CAPドライバ226p_j及び226n_jはそれぞれ、信号CNTに基づいて複数のスイッチング素子Sp及びSnを切り替えることにより、電位差(Vcmpp-Vcmpn)をVREF/2だけ増加させる(ST7)。
【0099】
ST5の処理又はST7の処理の後、制御回路225_jは、変数iをインクリメントする(ST8)。
【0100】
そして、制御回路225_jは、変数i-1がビット数Nに達したか否かを判定する(ST9)。
【0101】
変数i-1がビット数N未満である場合(ST9;no)、比較器223_jは、電圧Vcmppが電圧Vcmpnより高いか否かを判定する(ST3)。そして、後続するST4~ST9の処理を実行する。このように、変数i-1がビット数Nに達するまで、ST3~ST9の処理が繰り返される。
【0102】
変数i-1がビット数Nに達した場合(ST9;yes)、判定処理は終了となる(終了)。
【0103】
2.3 電位差変更処理
次に、実施形態に係る受信装置における電位差変更処理について説明する。電位差変更処理は、判定処理によって判定されたビットに基づいて、電位差(Vcmpp-Vcmpn)を増加又は減少させる処理である。すなわち、電位差変更処理は、図8におけるST5の処理及びST7の処理に対応する。電位差変更処理は、直前の判定処理が実行される期間内に実行される。具体的には、例えば、最上位ビットの判定処理後の電位差変更処理は、期間DMSBで実行される。2番目のビットの判定処理後の電位差変更処理は、期間D2NDで実行される。
【0104】
2.3.1 初期化
なお、判定処理の開始に際して、CAP-CDAC222_jが初期化されているものとする。具体的には、制御回路225_jは、CAP-CDAC222_jのスイッチング素子S0pp、S0np、S1pp、S1np、S2pp、S2np、S3pp、S3np、S4pp、S4np、S5pp、S5np、S6p、及びS6nの各々を、第1端及び第2端が接続された状態にする。制御回路225_jは、CAP-CDAC222_jのスイッチング素子S0pn、S0nn、S1pn、S1nn、S2pn、S2nn、S3pn、S3nn、S4pn、S4nn、S5pn、及びS5nnの各々を、第1端及び第3端が接続された状態にする。
【0105】
これにより、判定処理の開始に際して複数のキャパシタCpに保持される電荷Xp0は、電圧Vcmppの初期値をVcmpp0とすると、以下の式(0-1)のように表される。
Xp0=64C(Vcmpp0-VRp)+64C(Vcmpp0-VRn)
=128CVcmpp0-64CVRp-64CVRn…(0-1)
同様に、判定処理の開始に際して複数のキャパシタCnに保持される電荷Xn0は、電圧Vcmpnの初期値をVcmpn0とすると、以下の式(0-2)のように表される。
Xn0=64C(Vcmpn0-VRp)+64C(Vcmpn0-VRn)
=128CVcmpn0-64CVRp-64CVRn…(0-2)
式(0-1)及び(0-2)より、電荷Xp0及びXn0の差(Xp0-Xn0)は、以下の式(0-3)のように表される。当該電荷Xp0及びXn0の差(Xp0-Xn0)は、判定処理にわたって保存される。
Xp0-Xn0=128C(Vcmpp0-Vcmpn0)…(0-3)
2.3.2 最上位ビットの判定後の電位差変更処理
図9は、実施形態に係る受信装置における判定処理で判定された最上位ビットに基づく電位差変更処理の一例を示す図である。図9の例では、最上位ビットが“1”と判定された場合の複数のスイッチング素子Sp及びSnの切替えが示される。
【0106】
図9に示すように、最上位ビットが“1”と判定された場合、CAPドライバ226p_j及び226n_jはそれぞれ、スイッチング素子S0pp及びS0npを、第1端及び第2端が接続される状態から、第1端及び第3端が接続される状態に切り替える。これにより、スイッチング素子S0ppの切替えが実行された後に複数のキャパシタCpに保持される電荷Xp1は、スイッチング素子S0ppの切替えが実行された後の電圧VcmppをVcmpp1とすると、以下の式(1-1)のように表される。
Xp1=32C(Vcmpp1-VRp)+96C(Vcmpp1-VRn)
=128CVcmpp1-32CVRp-96CVRn…(1-1)
同様に、スイッチング素子S0npの切替えが実行された後に複数のキャパシタCnに保持される電荷Xn1は、スイッチング素子S0npの切替えが実行された後の電圧VcmpnをVcmpn1とすると、以下の式(1-2)のように表される。
Xn1=96C(Vcmpn1-VRp)+32C(Vcmpn1-VRn)
=128CVcmpn1-96CVRp-32CVRn…(1-2)
式(1-1)及び(1-2)より、電荷Xp1及びXn1の差(Xp1-Xn1)は、以下の式(1-3)のように表される。
Xp1-Xn1=128C(Vcmpp1-Vcmpn1)+64C(VRp-VRn)…(1-3)
上述の通り、当該電荷Xp1及びXn1の差(Xp1-Xn1)は、判定処理にわたって保存されるため、差(Xp0-Xn0)と等しい。したがって、式(0-3)及び(1-3)より、以下の式(1-4)のように、電位差(Vcmpp1-Vcmpn1)は、電位差(Vcmpp0-Vcmpn0)よりVREF/2だけ減少する。
Vcmpp1-Vcmpn1=Vcmpp0-Vcmpn0-(VRp-VRn)/2
=Vcmpp0-Vcmpn0-VREF/2…(1-4)
2.3.3 2番目のビットの判定後の電位差変更処理
図10は、実施形態に係る受信装置における判定処理で判定された2番目のビットに基づく電位差変更処理の一例を示す図である。図10の例では、最上位ビットが“1”と判定された後、2番目のビットが“1”と判定された場合の複数のスイッチング素子Sp及びSnの切替えが示される。
【0107】
図10に示すように、2番目のビットが“1”と判定された場合、CAPドライバ226p_j及び226n_jはそれぞれ、スイッチング素子S1pp及びS1npを、第1端及び第2端が接続される状態から、第1端及び第3端が接続される状態に切り替える。これにより、スイッチング素子S1ppの切替えが実行された後に複数のキャパシタCpに保持される電荷Xp2は、スイッチング素子S1ppの切替えが実行された後の電圧VcmppをVcmpp2とすると、以下の式(2-1)のように表される。
Xp2=16C(Vcmpp2-VRp)+112C(Vcmpp2-VRn)
=128CVcmpp2-16CVRp-112CVRn…(2-1)
同様に、スイッチング素子S1npの切替えが実行された後に複数のキャパシタCnに保持される電荷Xn2は、スイッチング素子S1npの切替えが実行された後の電圧VcmpnをVcmpn2とすると、以下の式(2-2)のように表される。
Xn2=112C(Vcmpn2-VRp)+16C(Vcmpn2-VRn)
=128CVcmpn2-112CVRp-16CVRn…(2-2)
式(2-1)及び(2-2)より、電荷Xp2及びXn2の差(Xp2-Xn2)は、以下の式(2-3)のように表される。
Xp2-Xn2=128C(Vcmpp2-Vcmpn2)+96C(VRp-VRn)…(2-3)
上述の通り、当該電荷Xp2及びXn2の差(Xp2-Xn2)は、判定処理にわたって保存されるため、差(Xp1-Xn1)と等しい。したがって、式(1-3)及び(2-3)より、以下の式(2-4)のように、電位差(Vcmpp2-Vcmpn2)は、電位差(Vcmpp1-Vcmpn1)よりVREF/4だけ減少する。
Vcmpp2-Vcmpn2=Vcmpp1-Vcmpn1-(VRp-VRn)/4
=Vcmpp1-Vcmpn1-VREF/4…(2-4)
2.3.4 3番目のビットの判定後の電位差変更処理
図11は、実施形態に係る受信装置における判定処理で判定された3番目のビットに基づく電位差変更処理の一例を示す図である。図11の例では、最上位ビット及び2番目のビットが“1”と判定された後、3番目のビットが“0”と判定された場合の複数のスイッチング素子Sp及びSnの切替えが示される。
【0108】
図11に示すように、3番目のビットが“0”と判定された場合、CAPドライバ226p_j及び226n_jはそれぞれ、スイッチング素子S2pn及びS2nnを、第1端及び第3端が接続される状態から、第1端及び第2端が接続される状態に切り替える。これにより、スイッチング素子S2pnの切替えが実行された後に複数のキャパシタCpに保持される電荷Xp3は、スイッチング素子S2pnの切替えが実行された後の電圧VcmppをVcmpp3とすると、以下の式(3-1)のように表される。
Xp3=24C(Vcmpp3-VRp)+104C(Vcmpp3-VRn)
=128CVcmpp3-24CVRp-104CVRn…(3-1)
同様に、スイッチング素子S2nnの切替えが実行された後に複数のキャパシタCnに保持される電荷Xn3は、スイッチング素子S2nnの切替えが実行された後の電圧VcmpnをVcmpn3とすると、以下の式(3-2)のように表される。
Xn3=104C(Vcmpn3-VRp)+24C(Vcmpn3-VRn)
=128CVcmpn3-104CVRp-24CVRn…(3-2)
式(3-1)及び(3-2)より、電荷Xp3及びXn3の差(Xp3-Xn3)は、以下の式(3-3)のように表される。
Xp3-Xn3=128C(Vcmpp3-Vcmpn3)+80C(VRp-VRn)…(3-3)
上述の通り、当該電荷Xp3及びXn3の差(Xp3-Xn3)は、判定処理にわたって保存されるため、差(Xp2-Xn2)と等しい。したがって、式(2-3)及び(3-3)より、以下の式(3-4)のように、電位差(Vcmpp3-Vcmpn3)は、電位差(Vcmpp2-Vcmpn2)よりVREF/8だけ増加する。
Vcmpp3-Vcmpn3=Vcmpp2-Vcmpn2+(VRp-VRn)/8
=Vcmpp2-Vcmpn2+VREF/8…(3-4)
2.3.5 電位差(Vcmpp-Vcmpn)の変化
図12は、実施形態に係る受信装置による判定処理における判定対象となる電位差の遷移の一例を示すタイミングチャートである。図12では、横軸に時間をとり、縦軸に電位差(Vcmpp-Vcmpn)をとることにより、判定処理における電位差(Vcmpp-Vcmpn)の遷移の一例が示される。図12において、電位差(Vcmpp-Vcmpn)がVREF/2減少している期間、VREF/4減少している期間、及びVREF/8増加している期間がそれぞれ、図9図10、及び図11に対応する。
【0109】
上述のように、CAPドライバ226p_j及び226n_jは、i番目のビットが“1”と判定される毎に、電位差(Vcmpp(i+1)-Vcmpn(i+1))を、電位差(Vcmpp(i)-Vcmpn(i))に対してVREF/2だけ減少させるように、複数のスイッチング素子Sp及びSnを切り替える。また、CAPドライバ226p_j及び226n_jは、i番目のビットが“0”と判定される毎に、電位差(Vcmpp(i+1)-Vcmpn(i+1))を、電位差(Vcmpp(i)-Vcmpn(i))に対してVREF/2だけ増加させるように、複数のスイッチング素子Sp及びSnを切り替える。これにより、図12に示すように、電位差(Vcmpp-Vcmpn)は、(Vinp-Vinn)から0に近づいていく。そして、電位差(Vcmpp-Vcmpn)が0とみなせる程度に小さくなると、判定処理は終了となる。
【0110】
2.4 参照電圧の供給処理
次に、実施形態に係る受信装置における参照電圧の供給処理について説明する。図13及び図14は、実施形態に係る受信装置における参照電圧の供給処理の一例を示す図である。図13の例では、信号CK2_0の期間DMSBにおけるVREFドライバセット31pが示される。図14の例では、信号CK2_4の期間DMSB(つまり、信号CK2_0の期間D2ND)におけるVREFドライバセット31pが示される。
【0111】
図13に示すように、信号CK2_0の期間DMSBでは、信号CK2_4は、“H”レベルとなる。これにより、スイッチング素子313p_0がオン状態となる。このため、最上位ビットの判定処理に際して、SAR-ADC22_0は、バッファ311p_0及び314pの合成バッファ、並びにキャパシタ312p_0及び315pの合成キャパシタによって供給される参照電圧VRp_0で駆動される。
【0112】
一方、信号CK2_0の期間DMSBでは、信号CK2_8、CK2_12、CK2_16、CK2_20、CK2_24、CK2_28、及びCK2_0は、“L”レベルとなる。これにより、スイッチング素子313p_8、313p_12、313p_16、313p_20、313p_24、313p_28、及び313p_0がオフ状態となる。このため、最上位ビット以外のビットの判定処理に際して、SAR-ADC22_4、22_8、22_12、22_16、22_20、22_24、及び22_28はそれぞれ、バッファ314p及びキャパシタ315pを介さずに供給される参照電圧VRp_4、VRp_8、VRp_12、VRp_16、VRp_20、VRp_24、及びVRp_28で駆動される。
【0113】
図14に示すように、信号CK2_4の期間DMSBでは、信号CK2_8は、“H”レベルとなる。これにより、スイッチング素子313p_4がオン状態となる。このため、最上位ビットの判定処理に際して、SAR-ADC22_4は、バッファ311p_4及び314pの合成バッファ、並びにキャパシタ312p_4及び315pの合成キャパシタによって供給される参照電圧VRp_4で駆動される。
【0114】
一方、信号CK2_4の期間DMSBでは、信号CK2_12、CK2_16、CK2_20、CK2_24、CK2_28、CK2_0、及びCK2_4は、“L”レベルとなる。これにより、スイッチング素子313p_12、313p_16、313p_20、313p_24、313p_28、313p_0、及び313p_4がオフ状態となる。このため、最上位ビット以外のビットの判定処理に際して、SAR-ADC22_8、22_12、22_16、22_20、22_24、22_28、及び22_0はそれぞれ、バッファ314p及びキャパシタ315pを介さずに供給される参照電圧VRp_8、VRp_12、VRp_16、VRp_20、VRp_24、VRp_28、及びVRp_0で駆動される。
【0115】
3. 実施形態に係る効果
高速通信においてタイム・インタリーブ方式の逐次比較型のADコンバータを使用する場合、ビット列X0<7:0>内の各ビットを判定する期間は非常に短くなる。このため、電位差変更処理から次の判定処理までの間に、電位差(Vcmpp-Vcmpn)を速やかに所望の値に収束させることが求められる。しかしながら、特に最上位ビットの判定処理後の電位差変更処理では、電位差(Vcmpp0-Vcmpn0)から電位差(Vcmpp1-Vcmpn1)への変化量はVREF/2と大きい。このため、電位差変更処理後に意図しないリップルが生じ、電位差(Vcmpp1-Vcmpn1)を限られた期間内に速やかに収束させることが困難となる場合がある。判定処理の際に電位差(Vcmpp-Vcmpn)が所望の値に収束していない場合、誤判定の可能性が高まるため、好ましくない。リップルを抑制するためには、参照電圧VRp及びVRnを供給する際に用いられるバッファの抵抗値を低くし、キャパシタの容量を高くすることが有効である。しかしながら、VREFGEN30内の全てのバッファ及びキャパシタについて上述のような対策を施すと、回路面積が増大するため、好ましくない。
【0116】
実施形態によれば、SAR-ADC22_0、22_4、22_8、22_12、22_16、22_20、22_24、及び22_28にはそれぞれ、信号CK2_0、CK2_4、CK2_8、CK2_12、CK2_16、CK2_20、CK2_24、及びCK2_28の期間DMSB以外の期間において、バッファ314p及びキャパシタ315pから切り離されたバッファ及びキャパシタによって参照電圧VRpが供給される。また、SAR-ADC22_0、22_4、22_8、22_12、22_16、22_20、22_24、及び22_28にはそれぞれ、信号CK2_0、CK2_4、CK2_8、CK2_12、CK2_16、CK2_20、CK2_24、及びCK2_28の期間DMSBにおいて、バッファ314p及びキャパシタ315pと接続された状態で参照電圧VRpが供給される。参照電圧VRnについても参照電圧VRpと同様である。これにより、最上位ビットの判定処理後の電位差変更処理が実行される場合、最上位ビット以外のビットの判定処理後の電位差変更処理が実行される場合よりも、バッファの駆動能力及びキャパシタの容量を高めることができる。このため、最上位ビットの判定処理後の電位差変更処理で生じるリップルを抑制する効果を向上させることができる。したがって、誤判定の可能性を低減することができる。また、バッファ314p及びキャパシタ315pを8個のSAR-ADCで共用することにより、VREFGEN30の回路面積の増大を抑制できる。
【0117】
4. 変形例等
なお、実施形態は、上述の例に限らず、種々の変形を適用可能である。
【0118】
上述した実施形態では、最上位ビットの判定処理の際に、追加のバッファ及びキャパシタを用いてSAR-ADCが駆動される場合について説明したが、これに限られない。例えば、SAR-ADCは、最上位ビット以外のビットの判定処理の際に、追加のバッファ及びキャパシタを用いて駆動されてもよい。
【0119】
図15は、変形例に係る受信回路の参照電圧生成回路の構成の一例を示すブロック図である。図15は、実施形態における図5に対応する。
【0120】
VREFGEN30’は、Pサイド30p’及びNサイド30n’を含む。Pサイド30p’及びNサイド30n’はそれぞれ、参照電圧VRp及びVRnを生成する回路部分に対応する。
【0121】
Pサイド30p’は、VREFドライバセット31p’、32p’、33p’、34p’、35p’、36p’、37p’、及び38p’を含む。VREFドライバセット31p’は、SAR-ADC22_0、22_8、22_16、及び22_24にそれぞれ参照電圧VRp_0、VRp_8、VRp_16、及びVRp_24を供給するように構成される。VREFドライバセット32p’は、SAR-ADC22_1、22_9、22_17、及び22_25にそれぞれ参照電圧VRp_1、VRp_9、VRp_17、及びVRp_25を供給するように構成される。VREFドライバセット33p’は、SAR-ADC22_2、22_10、22_18、及び22_26にそれぞれ参照電圧VRp_2、VRp_10、VRp_18、及びVRp_26を供給するように構成される。VREFドライバセット34p’は、SAR-ADC22_3、22_11、22_19、及び22_27にそれぞれ参照電圧VRp_3、VRp_11、VRp_19、及びVRp_27を供給するように構成される。VREFドライバセット35p’は、SAR-ADC22_4、22_12、22_20、及び22_28にそれぞれ参照電圧VRp_4、VRp_12、VRp_20、及びVRp_28を供給するように構成される。VREFドライバセット36p’は、SAR-ADC22_5、22_13、22_21、及び22_29にそれぞれ参照電圧VRp_5、VRp_13、VRp_21、及びVRp_29を供給するように構成される。VREFドライバセット37p’は、SAR-ADC22_6、22_14、22_22、及び22_30にそれぞれ参照電圧VRp_6、VRp_14、VRp_22、及びVRp_30を供給するように構成される。VREFドライバセット38p’は、SAR-ADC22_7、22_15、22_23、及び22_31にそれぞれ参照電圧VRp_7、VRp_15、VRp_23、及びVRp_31を供給するように構成される。
【0122】
Nサイド30n’は、VREFドライバセット31n’、32n’、33n’、34n’、35n’、36n’、37n’、及び38n’を含む。VREFドライバセット31n’は、SAR-ADC22_0、22_8、22_16、及び22_24にそれぞれ参照電圧VRn_0、VRn_8、VRn_16、及びVRn_24を供給するように構成される。VREFドライバセット32n’は、SAR-ADC22_1、22_9、22_17、及び22_25にそれぞれ参照電圧VRn_1、VRn_9、VRn_17、及びVRn_25を供給するように構成される。VREFドライバセット33n’は、SAR-ADC22_2、22_10、22_18、及び22_26にそれぞれ参照電圧VRn_2、VRn_10、VRn_18、及びVRn_26を供給するように構成される。VREFドライバセット34n’は、SAR-ADC22_3、22_11、22_19、及び22_27にそれぞれ参照電圧VRn_3、VRn_11、VRn_19、及びVRn_27を供給するように構成される。VREFドライバセット35n’は、SAR-ADC22_4、22_12、22_20、及び22_28にそれぞれ参照電圧VRn_4、VRn_12、VRn_20、及びVRn_28を供給するように構成される。VREFドライバセット36n’は、SAR-ADC22_5、22_13、22_21、及び22_29にそれぞれ参照電圧VRn_5、VRn_13、VRn_21、及びVRn_29を供給するように構成される。VREFドライバセット37n’は、SAR-ADC22_6、22_14、22_22、及び22_30にそれぞれ参照電圧VRn_6、VRn_14、VRn_22、及びVRn_30を供給するように構成される。VREFドライバセット38n’は、SAR-ADC22_7、22_15、22_23、及び22_31にそれぞれ参照電圧VRn_7、VRn_15、VRn_23、及びVRn_31を供給するように構成される。
【0123】
VREFドライバセット31p’、32p’、33p’、34p’、35p’、36p’、37p’、及び38p’は、参照電圧VRpの出力先が異なる点を除いて、互いに同等な構成を有する。VREFドライバセット31n’、32n’、33n’、34n’、35n’、36n’、37n’、及び38n’は、参照電圧VRpに代えて参照電圧VRnを出力する点を除いて、それぞれVREFドライバセット31p’、32p’、33p’、34p’、35p’、36p’、37p’、及び38p’と同等の構成を有する。以下では、一例として、VREFドライバセット31p’の構成について説明する。
【0124】
図16は、変形例に係る参照電圧生成回路のVREFドライバセットの構成の一例を示すブロック図である。図16は、実施形態における図6に対応する。
【0125】
VREFドライバセット31p’は、複数のバッファ311p’、複数のキャパシタ312p’、複数のスイッチング素子313p’及び314p’、バッファ315p’、及びキャパシタ316p’を含む。複数のバッファ311p’は、4個のバッファ311p’_0、311p’_8、311p’_16、及び311p’_24を含む。複数のキャパシタ312p’は、4個のキャパシタ312p’_0、312p’_8、312p’_16、及び312p’_24を含む。複数のスイッチング素子313p’は、4個のスイッチング素子313p’_0、313p’_8、313p’_16、及び313p’_24を含む。複数のスイッチング素子314p’は、4個のスイッチング素子314p’_0、314p’_8、314p’_16、及び314p’_24を含む。
【0126】
複数のバッファ311p’の各々の入力端及びバッファ315p’の入力端には、参照電圧VRpREFが供給される。
【0127】
バッファ311p’_0の出力端は、キャパシタ312p’_0の第1端、スイッチング素子313p’_0の第1端、スイッチング素子314p’_0の第1端、及びSAR-ADC22_0に接続される。バッファ311p’_8の出力端は、キャパシタ312p’_8の第1端、スイッチング素子313p’_8の第1端、スイッチング素子314p’_8の第1端、及びSAR-ADC22_8に接続される。バッファ311p’_16の出力端は、キャパシタ312p’_16の第1端、スイッチング素子313p’_16の第1端、スイッチング素子314p’_16の第1端、及びSAR-ADC22_16に接続される。バッファ311p’_24の出力端は、キャパシタ312p’_24の第1端、スイッチング素子313p’_24の第1端、スイッチング素子314p’_24の第1端、及びSAR-ADC22_24に接続される。キャパシタ312p’_0、312p’_8、312p’_16、及び312p’_24の各々の第2端は、接地される。
【0128】
バッファ315p’の出力端は、キャパシタ316p’の第1端、並びにスイッチング素子313p’_0、313p’_8、313p’_16、313p’_24、314p’_0、314p’_8、314p’_16、及び314p’_24の各々の第2端に接続される。キャパシタ316p’の第2端は、接地される。
【0129】
スイッチング素子313p’_0、313p’_8、313p’_16、及び313p’_24はそれぞれ、信号CK2_4、CK2_12、CK2_20、及びCK2_28が、“H”レベルの場合にオン状態となり、“L”レベルの場合にオフ状態となる。
【0130】
スイッチング素子314p’_0、314p’_8、314p’_16、及び314p’_24はそれぞれ、信号CK2_8、CK2_16、CK2_24、及びCK2_0が、“H”レベルの場合にオン状態となり、“L”レベルの場合にオフ状態となる。
【0131】
以上のような構成により、信号CK2_0の期間DMSBでは、スイッチング素子313p’_0がオン状態となる。また、信号CK2_0の期間D2NDでは、スイッチング素子314p’_0がオン状態となる。このため、最上位ビット及び2番目のビットの判定処理に際して、SAR-ADC22_0は、バッファ311p’_0及び315p’の合成バッファ、並びにキャパシタ312p’_0及び316p’の合成キャパシタによって供給される参照電圧VRp_0で駆動される。
【0132】
一方、信号CK2_0の期間DMSB及びD2NDでは、スイッチング素子313p’_8、313p’_16、及び313p’_24、314p’_8、314p’_16、及び314p’_24がいずれもオフ状態となる。このため、最上位ビット及び2番目のビット以外のビットの判定処理に際して、SAR-ADC22_8、22_16、及び22_24はそれぞれ、バッファ315p’及びキャパシタ316p’を介さずに供給される参照電圧VRp_8、VRp_16、及びVRp_24で駆動される。
【0133】
以上のような構成により、バッファ315p’及びキャパシタ316p’を複数のSAR-ADCで共用しつつ、リップルを抑制する期間を複数ビット分の判定処理期間に拡張することができる。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0135】
1…通信システム
2…送信装置
3…伝送路
4…受信装置
10…AFE
20…TI-ADC
21…SFE
22…SAR-ADC
30…VREFGEN
31,32,33,34,31’,32’,33’,34’,35’,36’,37’,38’…VREFドライバセット
40…DSP
50…CDR
211,214,311,314,311’,315’…バッファ
212,221,313,313’,314’…スイッチング素子
213,312,315,312’,316’…キャパシタ
222…CAP-CDAC
223…比較器
224…NOR
225…制御回路
226…CAPドライバ
図1
図2
図3
図4
図5
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図11
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図16