(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040918
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】高精度穴位置加工用工作機械及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B23B 49/00 20060101AFI20240318BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20240318BHJP
G05B 19/19 20060101ALI20240318BHJP
B23Q 15/18 20060101ALI20240318BHJP
G05B 19/404 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B23B49/00 A
B23Q17/22 Z
G05B19/19 F
B23Q15/18
G05B19/404 K
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145576
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】303058867
【氏名又は名称】ユアサネオテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】石田 正樹
【テーマコード(参考)】
3C001
3C029
3C036
3C269
【Fターム(参考)】
3C001KA01
3C001KB02
3C001TA02
3C001TB03
3C001TC05
3C029AA31
3C036FF02
3C269AB03
3C269BB03
3C269BB05
3C269EF10
3C269GG02
3C269MN09
3C269MN14
3C269MN16
3C269MN28
(57)【要約】
【課題】要求されるワーク精度に応じてワークを加工することができる高精度穴位置加工用工作機械を提供する。
【解決手段】高精度の穴開け加工が予め定められた位置に穴あけ加工する高精度穴位置加工用工作機械10であって、穴あけ加工対象のワークが載置されるテーブル11を支持する支持手段12と、支持手段12を所定の軸方向に移動させる移動手段13と、テーブル11に設けられたマスターターゲット11bの位置情報を検出する検出手段14と、ワークに加工作業を実施する加工手段15と、を有し、マスターターゲット11bは、高精度の穴開け加工が予め定められた位置に設けられており、加工手段15は、ワークの被加工箇所の加工穴位置決め精度が所定レベル以上の場合、検出手段14が検出したマスターターゲット11bの位置情報に基づいてワークを穴あけ加工する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高精度の穴開け加工が予め定められた位置に穴あけ加工する高精度穴位置加工用工作機械であって、
穴あけ加工対象のワークが載置されるテーブルを支持する支持手段と、
前記支持手段を所定の軸方向に移動させる移動手段と、
前記テーブルに設けられたマスターターゲットの位置情報を検出する検出手段と、
前記ワークに加工作業を実施する加工手段と、を有し、
前記マスターターゲットは、高精度の穴開け加工が予め定められた位置に設けられており、
前記加工手段は、前記ワークの被加工箇所の加工穴位置決め精度が所定レベル以上の場合、前記検出手段が検出した前記マスターターゲットの位置情報に基づいて前記ワークを穴あけ加工することを特徴とする高精度穴位置加工用工作機械。
【請求項2】
前記検出手段は、前記マスターターゲットの温度情報に基づき補正値を算出し、前記補正値により前記マスターターゲットの位置情報を補正することを特徴とする請求項1に記載の高精度穴位置加工用工作機械。
【請求項3】
穴あけ等の加工対象であるワークがその表面上に載置されるテーブルを支持する支持手段と、前記支持手段を所定の軸方向に移動させる移動手段と、前記テーブルの表面に設けられたマスターターゲットの位置情報を検出する検出手段と、前記ワークに加工作業を実施する加工手段とを備えた高精度穴位置加工用工作機械の制御方法であって、
前記検出手段が、前記マスターターゲットの位置情報を検出するステップと、
前記検出手段が、前記マスターターゲットの温度情報を検出するステップと、
前記検出手段が、前記マスターターゲットの位置情報と前記マスターターゲットの温度情報とに基づき、前記ワークの加工情報を算出するステップと、
前記加工手段は、前記ワークの被加工箇所の加工穴位置決め精度が所定レベル以上の場合、前記ワークの加工情報に基づいて前記ワークを加工するステップと、
を有することを特徴とする高精度穴位置加工用工作機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要求されるワーク精度に応じてワークを加工する工作機械及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボール盤、中ぐり盤、マシニングセンタ等の工作機械の送り駆動系制御方法は、フィードバック制御系であるクローズドループ制御が用いられている。ここで、クローズドループ制御は、フルクローズドループ制御とセミクローズドループ制御とに大きく分けられる。特許文献1に開示されたフルクローズドループ制御は、工作機械のテーブルなどに直接スケールを取り付け、加工対象のワークの位置を検出して、その位置情報をフィードバックする制御方法である。一方、セミクローズドループ制御は、サーボモータの軸の回転角度によって、加工対象のワークの位置を検出して、その位置情報をフィードバックする制御方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたようなフルクローズドループ制御はワークの位置情報を高精度に把握することができるが、例えば1つのワークに対して、多数の穴あけ加工が必要なケースでは、一つ一つの穴あけ加工毎に多くの作業工数が必要となる。またセミクローズドループ制御は、フルクローズドループ制御と比して、データ処理時間を短縮することができるが、穴あけ加工の位置精度が要求されるワーク精度に満足できるレベルに達していなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて、要求されるワーク精度に応じてワークを加工することができる高精度穴位置加工用工作機械及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の高精度穴位置加工用工作機械は、高精度の穴開け加工が予め定められた位置に穴あけ加工する高精度穴位置加工用工作機械であって、穴あけ加工対象のワークが載置されるテーブルを支持する支持手段と、前記支持手段を所定の軸方向に移動させる移動手段と、前記テーブルに設けられたマスターターゲットの位置情報を検出する検出手段と、前記ワークに加工作業を実施する加工手段と、を有し、前記マスターターゲットは、高精度の穴開け加工が予め定められた位置に設けられており、前記加工手段は、前記ワークの被加工箇所の加工穴位置決め精度が所定レベル以上の場合、前記検出手段が検出した前記マスターターゲットの位置情報に基づいて前記ワークを穴あけ加工することを特徴とする。
この構成により、要求されるワーク精度に応じてワークを加工することができる。
【0007】
また、本発明の高精度穴位置加工用工作機械は、前記検出手段は、前記マスターターゲットの温度情報に基づき補正値を算出し、前記補正値により前記マスターターゲットの位置情報を補正することを特徴とする。
この構成により、加工状況の温度変化による位置決めへの影響を低減することができる。
【0008】
また、本発明の高精度穴位置加工用工作機械の制御方法は、穴あけ等の加工対象であるワークがその表面上に載置されるテーブルを支持する支持手段と、前記支持手段を所定の軸方向に移動させる移動手段と、前記テーブルの表面に設けられたマスターターゲットの位置情報を検出する検出手段と、前記ワークに加工作業を実施する加工手段とを備えた高精度穴位置加工用工作機械の制御方法であって、前記検出手段が、前記マスターターゲットの位置情報を検出するステップと、前記検出手段が、前記マスターターゲットの温度情報を検出するステップと、前記検出手段が、前記マスターターゲットの位置情報と前記マスターターゲットの温度情報とに基づき、前記ワークの加工情報を算出するステップと、前記加工手段は、前記ワークの被加工箇所の加工穴位置決め精度が所定レベル以上の場合、前記ワークの加工情報に基づいて前記ワークを加工するステップと、を有することを特徴とする。
この構成により、加工状況の温度変化による位置決めへの影響を低減することができるとともに、要求されるワーク精度に応じてワークを加工することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高精度穴位置加工用工作機械は、高精度の加工が要求される箇所については、マスターターゲットの位置情報に基づいて、要求される高精度の加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る実施形態の高精度穴位置加工用工作機械の全体図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の高精度穴位置加工用工作機械に係るテーブルに、加工対象であるワークを載置した状態を示す全体図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の高精度穴位置加工用工作機械に係る検出手段が、マスターターゲットの位置情報を検出する状態を示す全体図である。
【
図4】本発明に係る実施形態の高精度穴位置加工用工作機械に係る加工手段が、ワークを加工する状態を示す全体図である。
【
図5】本発明に係る実施形態の高精度穴位置加工用工作機械のブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態の高精度穴位置加工用工作機械を、
図1~4に基づいて、以下説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の高精度穴位置加工用工作機械の全体図である。また、
図2は、本発明に係る実施形態の高精度穴位置加工用工作機械に係るテーブルに、加工対象であるワークを載置した状態を示す全体図である。さらに、
図3は、本発明に係る実施形態の高精度穴位置加工用工作機械に係る検出手段が、マスターターゲットの位置情報を検出する状態を示す全体図である。また、
図4は、本発明に係る実施形態の高精度穴位置加工用工作機械に係る加工手段が、ワークを加工する状態を示す全体図である。
【0012】
本発明に係る実施形態の高精度穴位置加工用工作機械10の基本的な構成は、いわゆるセミクローズドループ制御された工作機械である。本実施形態の高精度穴位置加工用工作機械10は、穴あけ加工対象のワークWが載置されるテーブル11を支持する支持手段12と、支持手段12を所定の軸方向に移動させる移動手段13と、テーブル11に設けられたマスターターゲット11bの位置情報を検出する検出手段14と、ワークWに加工作業を実施する加工手段15と、を有する。
【0013】
ワークWは、高精度穴位置加工用工作機械10による穴あけ等の加工対象であり、その形状や材質等は特に限定されない。例えば、ワークWは、自動車のエンジン部品等であり、その材質は炭素鋼等である。さらに、ワークW毎に穴あけが必要な箇所が1以上存在しており、それぞれ要求される加工穴位置精度が予め定められている。
【0014】
テーブル11は、穴あけ等の加工対象であるワークWを表面11a上に載置できるような平板状に形成されている。また、テーブル11は、
図1に示す通り、その表面11aに、ワークW毎に対応したマスターターゲット11bが設けられている。本実施形態では、マスターターゲット11bは、ワークWに設定された加工穴位置決め精度が所定レベル以上の穴あけ位置に対応した位置に形成された穴部や、突起形状である。また、マスターターゲット11bは、ワークW毎によって異なる位置に形成されているため、穴あけ加工を行うワークに合わせてテーブル11を交換できる構成であると好ましい。
【0015】
また、テーブル11の表面11aに、ワークWを載置する際の基準を示す基準マークが設けられると好ましい。さらに、テーブル11は、載置したワークWを保持するための保持具が設けられてもよい。
【0016】
支持手段12は、穴あけ等の加工対象であるワークWが表面11a上に載置されるテーブル11を支持する。支持手段12は、穴あけ加工を行うワークWに合わせてマスターターゲット11bが形成されたテーブル11を取り外し可能な構成であると好ましい。
【0017】
移動手段13、例えば、サーボモータであって、当該サーボモータの軸の回転を軸方向への移動に変換させる変換部16を介することにより、ワークWが載置されたテーブル11を移動させることができる。
【0018】
検出手段14は、例えば、無線信号伝達式タッチプローブであって、ワークWの穴あけ加工等の加工位置を検出する。本実施形態では、検出手段14は、テーブル11に形成されたマスターターゲット11bが穴部であれば、その内径に沿って摺動することにより、マスターターゲット11bの中心位置や、直径等の位置情報を検出する。また、検出手段14は、テーブル11に形成されたマスターターゲット11bが突起形状であれば、その外径に沿って摺動することにより、マスターターゲット11bの中心位置や、直径等の位置情報を検出する。そして、検出手段14は、検出したマスターターゲット11bの位置情報を後述する記憶部22に送信する。
【0019】
また、検出手段14は、ワークWの被加工箇所の形状に沿って摺動することにより、ワークWの被加工箇所の位置情報を検出する。そして、検出手段14は、検出したワークWの被加工箇所の位置情報を後述する記憶部22に送信する。
【0020】
さらに、検出手段14は、マスターターゲット11bの温度情報を検出し、検出したマスターターゲット11bの温度情報に基づき温度補正値を算出し、温度補正値に基づきマスターターゲット11bの位置情報を補正し、熱補正位置情報として後述する記憶部22に送信する。
【0021】
加工手段15は、ワークWに対して、穴あけ等の加工を実施する。本実施形態では、加工手段15は、複数の関節を備えるアームと、当該アームの先端にドリル等の加工具を取り付けられる取付部と、当該加工具をワークWの被加工箇所に移動させる駆動部とを有する。そして、加工手段15は、当該加工具をワークWの被加工箇所に移動させ、ワークWに対する加工、例えば穴あけを実施する。
【0022】
ここで、加工手段15は、ワークWの被加工箇所の加工穴位置決め精度が所定レベル以上の場合、検出手段14が検出したマスターターゲット11bの位置情報に基づいてワークWを加工する。
【0023】
本実施形態では、ワークWの被加工箇所の加工穴位置決め精度は、予め定められており、加工手段15は、ワークWの被加工箇所の加工穴位置決め精度が所定レベル以上であるか否かを判別し、ワークWの被加工箇所の加工穴位置決め精度が所定レベル以上である場合、検出手段14が検出したマスターターゲット11bの位置情報と、マスターターゲット11bの位置情報に対応するワークWの被加工箇所の位置情報との誤差を算出する。次に、加工手段15は、算出した誤差に基づき、記憶部23に記憶されているワークWの加工情報を補正し、ワークWの補正加工情報とする。そして、加工手段15は、ワークWの補正加工情報に基づき、ワークWに対して、穴あけ加工を実施する。ここで、ワークWの加工情報は、補正されたワークWの被加工箇所の位置情報、直径、及び被加工箇所の加工穴位置決め精度等である。
【0024】
このように、検出手段14が検出したマスターターゲット11bの位置情報に基づき、ワークWの加工情報を補正し、ワークWに対して、穴あけ加工を実施することにより、その加工精度は、±0.03mm(Cp1.33)の誤差に抑えることができる。ここで、「Cp」、すなわち工程能力指数は、品質管理の分野において、ある工程の持つ工程能力を定量的に評価する指標の一つであるが、本明細書では、公差幅の中央の±1σ(約70%)として、算出した。なお、一般的なセミクローズドループ制御で保証される加工精度は、±0.04mm~±0.05mmである。
【0025】
さらに、加工手段15は、検出したマスターターゲット11bの温度情報に基づき温度補正値を算出し、温度補正値によりマスターターゲット11bの位置情報を補正したマスターターゲット11bの補正位置情報に基づいて、ワークWの加工情報を補正し、ワークWの熱変位補正加工情報を得てもよい。そして、加工手段15は、ワークWの熱変位補正加工情報に基づいて、ワークWに対して、穴あけ加工を実施してもよい。
【0026】
穴あけ加工の対象であるワークWが炭素鋼の場合、炭素鋼の線膨張係数が12.18×10-6/℃であるから、例えば温度差が20℃の場合、ワークWの加工穴の位置とマスターターゲット11bの位置情報との間で許容される最大ズレ量は4mm以内とされている。
【0027】
一方、加工手段15は、ワークWの被加工箇所における加工穴位置決め精度が所定レベル未満である場合、記憶部22に記憶されているワークWの加工情報に基づいて、ワークWに対して、穴あけ加工を実施する。
【0028】
また、本実施形態に係る高精度穴位置加工用工作機械10は、加工手段15の温度を一定の温度範囲(例えば±2℃以内)に保つ冷却手段を有すると好ましい。冷却手段を有することにより、温度変化による加工手段15に生じる誤差を抑えることができる。
【0029】
さらに、高精度穴位置加工用工作機械10は、
図2に示すように、支持手段12、移動手段13、検出手段14、及び加工手段15の各手段を制御する制御部21と、各手段を制御するための制御プログラムや、各種データを記憶する記憶部22と、操作者からの入力を受け付ける入力受付部23と、警告部24とを有する。
【0030】
制御部21は、CPU等であり、記憶部22に格納された各種プログラムを実行することにより支持手段12、移動手段13、検出手段14、及び加工手段15の各手段を制御する。
【0031】
記憶部22は、RAM、ROM、及びその他の記憶装置であり、支持手段12、移動手段13、検出手段14、及び加工手段15の各手段を制御するための動作プログラムを記憶している。また、記憶部22は、ワークWの被加工箇所毎の位置情報、直径、加工穴位置決め精度、材質毎の線膨張係数等からなるワークWの加工情報を記憶している。さらに、記憶部22は、ワークWの複数の被加工箇所の加工順序情報も記憶している。
【0032】
入力受付部23は、図示しないキーボード及びディスプレイや、タッチパネル式ディスプレイであって、操作者が入力した情報、例えばワークWの被加工箇所の位置情報や、被加工箇所の加工穴位置決め精度等を受け付ける。
【0033】
警告部24は、ワークWに対する穴あけ加工に不具合が生じた場合、操作者等に知らせるための音や光により警告する。
【0034】
上述した構成を有する本実施形態に係る高精度穴位置加工用工作機械10によるワークWに対する穴あけ加工手順について、以下説明する。
【0035】
まず、テーブル11の表面11aに、穴あけ加工の対象であるワークWを基準マークに合わせて載置する。ワークWを基準マークに合わせて載置することにより、高精度の加工穴位置決め精度が要求される穴あけ箇所が、マスターターゲット11bが概ね一致するように載置することができると好ましい。
【0036】
次に、ワークWがテーブル11に載置された状態で、検出手段14、例えば無線信号伝達式タッチプローブの先端をマスターターゲット11bの内径に沿って摺動させることにより、マスターターゲット11bの中心位置や、直径等の位置情報を検出する。そして、検出手段14は、検出したマスターターゲット11bの位置情報を図示しない記憶部23に送信する。
【0037】
また、検出手段14は、マスターターゲット11bの温度情報を検出し、検出したマスターターゲット11bの温度情報に基づき温度補正値を算出し、温度補正値に基づきマスターターゲット11bの位置情報を補正し、マスターターゲット11bの熱補正位置情報を得てもよい。
【0038】
そして、加工手段15は、ワークWの被加工箇所の加工穴位置決め精度が所定レベル以上の場合、検出手段14が検出したマスターターゲット11bの位置情報に基づいてワークWを加工する。
【0039】
具体的には、ワークWの被加工箇所の加工穴位置決め精度は、予め定められているから、加工手段15は、ワークWの被加工箇所の加工穴位置決め精度が所定レベル以上であるか否かを判別し、ワークWの被加工箇所の加工穴位置決め精度が所定レベル以上である場合、検出手段14が検出したマスターターゲット11bの位置情報と、マスターターゲット11bの位置情報に対応するワークWの被加工箇所の位置情報との誤差を算出する。次に、加工手段15は、算出した当該誤差に基づき記憶部23に記憶されているワークWの加工情報を補正し、ワークWの補正加工情報を得る。そして、加工手段15は、ワークWの補正加工情報に基づいて、ワークWに対して、穴あけ加工を実施する。
【0040】
本実施形態では、検出手段14が検出したマスターターゲット11bの位置情報に基づき、ワークWの加工情報を補正し、ワークWに対して、穴あけ加工を実施することにより、その加工精度は、±0.03mm(Cp1.33)の誤差に抑えることができる。
【0041】
なお、加工手段15は、マスターターゲット11bの熱補正位置情報に基づいて、ワークWの加工情報を補正し、ワークWの熱変位補正加工情報を得てもよい。そして、加工手段15は、ワークWの熱変位補正加工情報に基づいて、ワークWに対して、穴あけ加工を実施してもよい。
【0042】
また、加工手段15は、ワークWの被加工箇所における加工穴位置決め精度が所定レベル未満である場合、記憶部22に記憶されているワークWの加工情報に基づいて、ワークWに対して、穴あけ加工を実施する。
【0043】
本実施形態の高精度穴位置加工用工作機械10は、ワークWの被加工箇所ごとに予め設定された加工穴位置決め精度に応じた穴あけ加工を実施することが可能であるため、加工ワーク精度を担保する。また、本実施形態の高精度穴位置加工用工作機械10は、ワークWの温度変化による影響を抑制した穴あけ加工を実施することができる。
【0044】
本実施形態の高精度穴位置加工用工作機械10は、ワークWの被加工箇所ごとに予め設定された加工穴位置決め精度が所定レベル以上のみ、ワークWの加工情報を補正していることから、ワークWの被加工箇所全てにおいて、ワークWの加工情報を補正するフルクローズド制御の工作機器と比べて、加工処理スピードの向上を図ることができ、製造コストを低減することができる。
【0045】
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含む。
【符号の説明】
【0046】
10…高精度穴位置加工用工作機械
11…テーブル
11a…表面
11b…マスターターゲット
12…支持手段
13…移動手段
14…検出手段
15…加工手段
21…制御部
22…記憶部
23…入力受付部
24…警告部
W…ワーク
【手続補正書】
【提出日】2023-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
±0.03mm(Cp1.33)の誤差以内に抑える高精度の穴開け加工が予め定められた位置に穴あけ加工する高精度穴位置加工用工作機械であって、
穴あけ加工対象のワークが載置されるテーブルを支持する支持手段と、
前記支持手段をサーボモータの軸方向に移動させる移動手段と、
前記テーブルに設けられたマスターターゲットの中心位置や、直径の位置情報を検出する検出手段と、
前記ワークに加工作業を実施する加工手段と、を有し、
前記マスターターゲットは、前記ワークに設定された加工穴位置決め精度が前記±0.03mm(Cp1.33)の誤差以内と予め定められている穴あけ位置に対応した位置に形成された穴部や、突起形状であり、
前記加工手段は、前記ワークの被加工箇所の加工穴位置決め精度が前記±0.03mm(Cp1.33)の誤差以内と予め定められている場合、前記検出手段が検出した前記マスターターゲットの前記位置情報に基づいて前記ワークを穴あけ加工することを特徴とする高精度穴位置加工用工作機械。
【請求項2】
前記検出手段は、前記マスターターゲットの温度情報に基づき補正値を算出し、前記補正値により前記マスターターゲットの前記位置情報を補正することを特徴とする請求項1に記載の高精度穴位置加工用工作機械。
【請求項3】
穴あけ等の加工対象であるワークがその表面上に載置されるテーブルを支持する支持手段と、前記支持手段をサーボモータの軸方向に移動させる移動手段と、前記テーブルの表面に設けられたマスターターゲットの中心位置や、直径の位置情報を検出する検出手段と、前記ワークに加工作業を実施する加工手段とを備え、±0.03mm(Cp1.33)の誤差以内に抑える高精度穴位置加工用工作機械の制御方法であって、
前記マスターターゲットは、前記ワークに設定された加工穴位置決め精度が前記±0.03mm(Cp1.33)の誤差以内と予め定められている穴あけ位置に対応した位置に形成された穴部や、突起形状であって、
前記検出手段が、前記マスターターゲットの前記位置情報を検出するステップと、
前記検出手段が、前記マスターターゲットの温度情報を検出するステップと、
前記検出手段が、前記マスターターゲットの前記位置情報と前記マスターターゲットの温度情報とに基づき、前記ワークの加工情報を算出するステップと、
前記加工手段は、前記ワークの被加工箇所の加工穴位置決め精度が±0.03mm(Cp1.33)の誤差以内と予め定められている場合、前記ワークの加工情報に基づいて前記ワークを加工するステップと、
を有することを特徴とする高精度穴位置加工用工作機械の制御方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
±0.03mm(Cp1.33)の誤差以内に抑える高精度の穴開け加工が予め定められた位置に穴あけ加工する高精度穴位置加工用工作機械であって、
穴あけ加工対象のワークが載置されるテーブルを支持する支持手段と、
サーボモータの軸の回転を直線方向への移動に変換させる変換部を介して、前記支持手段を、移動させる移動手段と、
前記テーブルに設けられたマスターターゲットの中心位置の位置情報を検出する検出手段と、
前記ワークに加工作業を実施する加工手段と、を有し、
前記マスターターゲットは、前記ワークに設定された加工穴位置決め精度が前記±0.03mm(Cp1.33)の誤差以内と予め定められている穴あけ位置に対応した位置に形成された穴部や、突起形状であり、
前記加工手段は、前記ワークの被加工箇所の加工穴位置決め精度が前記±0.03mm(Cp1.33)の誤差以内と予め定められている場合、前記検出手段が検出した前記マスターターゲットの前記位置情報と、前記マスターターゲットの位置情報に対応する前記ワークの被加工箇所の位置情報との誤差を算出し、算出した前記誤差を用いて前記ワークの加工情報を補正し、補正した前記加工情報を用いて、前記ワークを穴あけ加工することを特徴とする高精度穴位置加工用工作機械。
【請求項2】
前記検出手段は、前記マスターターゲットの温度情報に基づき補正値を算出し、前記補正値により前記マスターターゲットの前記位置情報を補正することを特徴とする請求項1に記載の高精度穴位置加工用工作機械。
【請求項3】
穴あけ等の加工対象であるワークがその表面上に載置されるテーブルを支持する支持手段と、サーボモータの軸の回転を直線方向への移動に変換させる変換部を介して、前記支持手段を、移動させる移動手段と、前記テーブルの表面に設けられたマスターターゲットの中心位置の位置情報を検出する検出手段と、前記ワークに加工作業を実施する加工手段とを備え、±0.03mm(Cp1.33)の誤差以内に抑える高精度穴位置加工用工作機械の制御方法であって、
前記マスターターゲットは、前記ワークに設定された加工穴位置決め精度が前記±0.03mm(Cp1.33)の誤差以内と予め定められている穴あけ位置に対応した位置に形成された穴部や、突起形状であって、
前記検出手段が、前記マスターターゲットの前記位置情報を検出するステップと、
前記検出手段が、前記マスターターゲットの温度情報を検出するステップと、
前記検出手段が、前記マスターターゲットの温度情報を用いて温度補正値を算出し、前記温度補正値を用いて前記マスターターゲットの前記位置情報を補正し、得られた前記マスターターゲットの熱補正位置情報を用いて、前記ワークの加工情報を補正し、得られた前記ワークの補正加工情報を算出するステップと、
前記加工手段は、前記ワークの被加工箇所の加工穴位置決め精度が±0.03mm(Cp1.33)の誤差以内と予め定められている場合、前記ワークの補正加工情報を用いて前記ワークを加工するステップと、
を有することを特徴とする高精度穴位置加工用工作機械の制御方法。