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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040921
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】アキシャルギャップモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/14 20060101AFI20240318BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20240318BHJP
   H02K 1/20 20060101ALI20240318BHJP
   H02K 21/24 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H02K1/14 Z
H02K1/18 C
H02K1/20 Z
H02K21/24 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145582
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】太田 智
(72)【発明者】
【氏名】沖津 隆志
【テーマコード(参考)】
5H601
5H621
【Fターム(参考)】
5H601AA01
5H601AA16
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD10
5H601DD12
5H601DD22
5H601DD30
5H601EE12
5H601GA10
5H601GD02
5H601GD08
5H601GE02
5H601KK18
5H621BB02
5H621GA04
5H621GA13
5H621JK07
5H621JK11
(57)【要約】
【課題】ステータの機械的強度の確保及び発熱の低減の両立について改善することである。
【解決手段】ステータと、前記ステータと軸方向に対向するロータと、を有するアキシャルギャップモータであって、前記ステータは、周方向に配置された複数のステータコアと、前記ステータコアを収容するステータケースとを有し、前記ステータコアは、軸方向端に、前記ロータと対向する対向部を有し、前記ステータケースは、金属材料から成り、前記ステータケースは、前記対向部を前記ロータに向けて露出させる開口部を有し、前記ステータケースは前記開口部を囲む部位の少なくとも一部が切断された切断部を有し、前記切断部は、前記開口部の径方向外側又は径方向内側に位置する。
【選択図】図9

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、前記ステータと軸方向に対向するロータと、を有するアキシャルギャップモータであって、
前記ステータは、周方向に配置された複数のステータコアと、前記ステータコアを収容するステータケースとを有し、
前記ステータコアは、軸方向端に、前記ロータと対向する対向部を有し、
前記ステータケースは、金属材料から成り、
前記ステータケースは、前記対向部を前記ロータに向けて露出させる開口部を有し、
前記ステータケースは前記開口部を囲む部位の少なくとも一部が切断された切断部を有し、
前記切断部は、前記開口部の径方向外側又は径方向内側に位置する、
アキシャルギャップモータ。
【請求項2】
前記ステータケースは、前記開口部を囲み周方向に等間隔に配置された複数の枠部を有し、
前記複数の枠部のそれぞれは、前記開口部の径方向外側の外径部、又は前記開口部の径方向内側の内径部を有し、
前記切断部は、前記外径部又は前記内径部に位置する、
請求項1に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項3】
前記ステータケースは、前記開口部を囲み周方向に等間隔に配置された複数の枠部を有し、
前記複数の枠部のそれぞれは、径方向外側端に外径部を有し、
前記複数の枠部のそれぞれは、径方向内側端に内径部を有し、
前記複数の枠部のそれぞれは、前記外径部又は前記内径部のいずれかによってのみ隣接する枠部と接続され、
前記複数の枠部のうち前記外径部によって周方向他方側に隣接する枠部と接続される枠部は、前記内径部によって周方向一方側に隣接する枠部と接続され、
前記複数の枠部のうち前記内径部によって周方向他方側に隣接する枠部と接続される枠部は、前記外径部によって周方向一方側に隣接する枠部と接続され、
前記複数の枠部それぞれの前記外径部のうち周方向他方側に隣接する枠部の外径部と接続される外径部は、周方向一方側に隣接する枠部の外径部との間に前記切断部を有し、
前記複数の枠部それぞれの前記外径部のうち周方向一方側に隣接する枠部の外径部と接続される外径部は、周方向他方側に隣接する枠部の外径部との間に前記切断部を有し、
前記複数の枠部それぞれの前記内径部のうち周方向他方側に隣接する枠部の内径部と接続される内径部は、周方向一方側に隣接する枠部の内径部との間に前記切断部を有し、
前記複数の枠部それぞれの前記内径部のうち周方向一方側に隣接する枠部の内径部と接続される内径部は、周方向他方側に隣接する枠部の内径部との間に前記切断部を有する、
請求項1に記載のアキシャルギャップモータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルギャップモータに関する。
【背景技術】
【0002】
アキシャルギャップモータは、ステータとロータとが軸方向にギャップを介して対向するように配置される。このアキシャルギャップモータのステータは、周方向に複数配置されたスタータコアをケースに収容して構成される。
【0003】
ところで、ケースが金属材料の場合、ケースに渦電流が発生しこの渦電流によって発熱するという問題があった。そこで、特許文献1では、ケースを樹脂材料にすることで、渦電流の発生を防ぎ、ケースの発熱を抑えることが出来るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-99191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにケースを樹脂材料にした場合、ケースが金属材料の場合と比べて機械的強度が弱いため、小型化、高密度化において不利になる場合があるという問題があった。
【0006】
このため、従来は、アキシャルギャップモータのステータの機械的強度の確保及び発熱の低減の両立に改善の余地があった。
【0007】
本発明は、ステータの機械的強度の確保及び発熱の低減の両立について改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るアキシャルギャップモータは、ステータと、前記ステータと軸方向に対向するロータと、を有するアキシャルギャップモータであって、前記ステータは、周方向に配置された複数のステータコアと、前記ステータコアを収容するステータケースとを有し、前記ステータコアは、軸方向端に、前記ロータと対向する対向部を有し、前記ステータケースは、金属材料から成り、前記ステータケースは、前記対向部を前記ロータに向けて露出させる開口部を有し、前記ステータケースは前記開口部を囲む部位の少なくとも一部が切断された切断部を有し、前記切断部は、前記開口部の径方向外側又は径方向内側に位置する。
【0009】
上記の一態様のアキシャルギャップモータにおいて、前記ステータケースは、前記開口部を囲み周方向に等間隔に配置された複数の枠部を有し、前記複数の枠部のそれぞれは、前記開口部の径方向外側の外径部、又は前記開口部の径方向内側の内径部を有し、前記切断部は、前記外径部又は前記内径部に位置する。
【0010】
上記の一態様のアキシャルギャップモータにおいて、前記ステータケースは、前記開口部を囲み周方向に等間隔に配置された複数の枠部を有し、前記複数の枠部のそれぞれは、径方向外側端に外径部を有し、前記複数の枠部のそれぞれは、径方向内側端に内径部を有し、前記複数の枠部のそれぞれは、前記外径部又は前記内径部のいずれかによってのみ隣接する枠部と接続され、前記複数の枠部のうち前記外径部によって周方向他方側に隣接する枠部と接続される枠部は、前記内径部によって周方向一方側に隣接する枠部と接続され、前記複数の枠部のうち前記内径部によって周方向他方側に隣接する枠部と接続される枠部は、前記外径部によって周方向一方側に隣接する枠部と接続され、前記複数の枠部それぞれの前記外径部のうち周方向他方側に隣接する枠部の外径部と接続される外径部は、周方向一方側に隣接する枠部の外径部との間に前記切断部を有し、前記複数の枠部それぞれの前記外径部のうち周方向一方側に隣接する枠部の外径部と接続される外径部は、周方向他方側に隣接する枠部の外径部との間に前記切断部を有し、前記複数の枠部それぞれの前記内径部のうち周方向他方側に隣接する枠部の内径部と接続される内径部は、周方向一方側に隣接する枠部の内径部との間に前記切断部を有し、前記複数の枠部それぞれの前記内径部のうち周方向一方側に隣接する枠部の内径部と接続される内径部は、周方向他方側に隣接する枠部の内径部との間に前記切断部を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、ステータの機械的強度の確保及び発熱の低減の両立について改善することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るモータの斜視図である。
図2図1のモータ10を、中心軸Jを通り、X軸と直交する面で切断して示す側断面である。
図3図1のモータ10を-Z側から見た分解斜視図である。
図4図1のモータ10のステータ11を示す斜視図である。
図5図4のステータ11を、ステータケース112を外した状態で示す斜視図である。
図6図5に示す状態から、さらにステータコアユニット120を外した状態を示す斜視図である。
図7図4に示したステータケース112及び内径部材114に代えて用いることが出来るステータケース及び内径部材の変形例を示す図である。
図8】電磁界解析によって計算した渦電流損失密度を示す図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るステータケースについて示す図である。
図10】本発明の第3実施形態に係るステータケースについて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るアキシャルギャップモータについて説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0014】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。Y軸方向は、中心軸Jに対する径方向のうち図2の上下方向とする。X軸方向は、Z軸方向及びY軸方向の両方と直交する方向とする。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれにおいても、図中に示す矢印が指す側を+側、反対側を-側とする。
【0015】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「一方側」と呼び、Z軸方向の負の側(-Z側)を「他方側」と呼ぶ。なお、一方側及び他方側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。径方向において中心軸Jに近づく側を「径方向内側」と呼び、中心軸Jから遠ざかる側を「径方向外側」と呼ぶ。周方向において、+Z側から-Z側を見たときの時計回りの側を「周方向一方側」と呼び、反時計回りの側を「周方向他方側」と呼ぶ。
【0016】
なお、本明細書において、「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、「径方向に延びる」とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また「平行」とは、厳密に平行な場合に加えて、互いに成す角が45°未満の範囲で傾いた場合も含む。また「軸方向と直交する方向に拡がる」とは、厳密に軸方向(Z軸方向)と直交する方向に拡がる場合に加えて、軸方向(Z軸方向)と直交する方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に拡がる場合も含む。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るモータの斜視図である。図1のモータ10は、アキシャルギャップモータの一例である。図2は、図1のモータ10を、中心軸Jを通り、X軸と直交する面で切断して示す側断面図である。
【0018】
モータ10は、中心軸Jに沿って延びるシャフト14と、ステータ11と、ステータ11の軸方向一方側に配置されたフレーム12と、ステータ11の軸方向他方側に配置されたフレーム13と、を有する。ステータ11は、ステータケース111及びステータケース112を有する。ステータケース111は、軸方向他方側に底を有する有底円筒形状である。ステータケース112は、円板形状である。ステータ11は、ステータケース111とステータケース112とを組み合わせたときにステータケース111及びステータケース112内に形成される空間に、ステータコア121(図5参照)を収容して構成される。
【0019】
モータ10は、ステータ11内に冷却液を流入させる流入口16及びステータ11内の冷却液を流出させる流出口15を有する。流入口16はステータ11の-Y側に設けられており、流出口15はステータ11の+Y側に設けられている。流入口16は、ステータケース111の貫通孔111bに嵌め込まれ、流出口15は、ステータケース111の貫通孔111aに嵌め込まれる。
【0020】
モータ10は、ロータ20及びロータ21を有する。ロータ20は、ステータ11と軸方向に対向し、ステータ11よりも軸方向一方側に配置される。フレーム12は、ロータ20を軸方向一方側から覆う。フレーム12は、ステータケース111に固定される。ロータ21は、ステータ11と軸方向に対向し、ステータ11よりも軸方向他方側に配置される。フレーム13は、ロータ21を軸方向他方側から覆う。フレーム13は、ステータケース112に固定される。
【0021】
フレーム12は、軸方向に貫通する貫通孔12aを有する。詳しくは後述する内径部材113は、軸方向に貫通する貫通孔113cを有する。詳しくは後述する内径部材114は、軸方向に貫通する貫通孔114aを有する。フレーム13は軸方向に貫通する貫通孔13aを有する。シャフト14は、貫通孔12a、貫通孔113c、貫通孔114a及び貫通孔13aを貫通する。
【0022】
モータ10は、軸受22a及び軸受22bを有する。軸受22aは、貫通孔12aの径方向内側に配置される。軸受22bは、貫通孔13aの径方向内側に配置される。軸受22a及び軸受22bは、中心軸Jに沿って回転可能なようにシャフト14を軸支する。
【0023】
ロータ20は、ロータコア20a及び磁石20bを有する。ロータコア20aは、円板形状である。磁石20bは、ロータコア20aの面のうちステータ11と対向する面(軸方向他方側の面)に固定される。磁石20bは、ギャップを介してステータ11と対向する。本実施形態では、ロータ20は、周方向に配置された8個の磁石20bを有する。磁石20bの数はこれに限られるものではない。
【0024】
ロータ21は、ロータコア21a及び磁石21bを有する。ロータコア21aは、円板形状である。磁石21bは、ロータコア21aの面のうちステータ11と対向する面(軸方向一方側の面)に固定される。磁石21bは、ギャップを介してステータ11と対向する。本実施形態では、ロータ21は、周方向に配置された8個の磁石21bを有する。磁石21bの数はこれに限られるものではない。ロータコア20a及びロータコア21aは、シャフト14に固定される。
【0025】
図3は、図1のモータ10を-Z側から見た分解斜視図である。モータ10は、ボルト17a及びボルト17bを有する。フレーム12は、ボルト17aによって、ステータ11の軸方向一方側に固定される。フレーム13は、ボルト17bによって、ステータ11の軸方向他方側に固定される。
【0026】
図4は、図1のモータ10のステータ11を示す斜視図である。図5は、図4のステータ11を、ステータケース112を外した状態で示す斜視図である。ステータケース112は、ボルト17aが嵌まるボルト穴112aを有する。ステータ11は、ボルト115を有する。ステータケース112は、ボルト115が嵌まるボルト穴112bを有する。ステータケース112は、ボルト115によってステータケース111に固定される。ステータケース111は、軸方向他方側の面に、ボルト17bが嵌まるボルト穴(不図示)を有する。ステータケース111は、ボルト115が嵌まるボルト穴111fを有する。
【0027】
ステータ11は、ステータコア121を有する。ステータコア121の軸方向一方側端は、ロータ20と対向する対向部の一例である。ステータコア121の軸方向他方側端は、ロータ21と対向する対向部の一例である。なお、ステータコア121をボビン(不図示)で覆い、コイル(不図示)を巻き回した構成を、ステータコアユニット120と呼ぶ。本実施形態では、ステータ11は、周方向に配置された12個のステータコア121を有する。ステータコア121の数はこれに限られるものではない。
【0028】
ステータケース112は、金属材料から成る。ステータケース112は、ステータコア121の軸方向一方側端が露出する開口部112cを有する。開口部112cは、ステータコア121と同じ数だけ設けられている。
【0029】
ステータケース112は、枠部112dを有する。枠部112dは、ロータ20と軸方向に対向する面の外縁から内縁に向けて径方向に延びる。枠部112dは、周方向に複数配置される。開口部112cは、ロータ20と軸方向に対向する面の外縁と、複数の枠部112dのうちの一つと、この一つの枠部112dに隣接する枠部112dと、ロータ20と軸方向に対向する面の内縁とで囲まれて成る。枠部112dは、径方向内側端に端部112eを有する。端部112eは、開口部112cを囲む部位の少なくとも一部が切断された切断部の一例である。すなわち、この場合の切断部は、複数の枠部112dのうちの一つの径方向内側端と、この一つの枠部112dに隣接する枠部112dの径方向内側端との間が切断されて成る。
【0030】
ステータ11は、内径部材114を有する。内径部材114は、円環状の板部材である。内径部材114は、樹脂材料から成る。内径部材114の外周は、端部112eと繋がる。ステータケース112と内径部材114とは、例えばインサート成形によって一体成形される。内径部材114は、切断部と繋がる補填部の一例である。
【0031】
図6は、図5に示す状態から、さらにステータコアユニット120を外した状態を示す斜視図である。ステータケース111は、金属材料から成る。ステータケース111は、ステータコア121の軸方向他方側端が露出する開口部111cを有する。開口部111cは、ステータコア121と同じ数だけ設けられている。
【0032】
ステータケース111は、枠部111dを有する。枠部111dは、ロータ21と軸方向に対向する面の外縁である外縁部111aから内縁に向けて径方向に延びる。枠部111dは、周方向に複数配置される。開口部111cは、外縁部111aと、複数の枠部111dのうちの一つと、この一つの枠部111dに隣接する枠部111dと、ロータ21と軸方向に対向する面の内縁とで囲まれて成る。枠部111dは、径方向内側端に端部111eを有する。端部111eは、開口部111cを囲む部位の少なくとも一部が切断された切断部の一例である。すなわち、この場合の切断部は、複数の枠部111dのうちの一つの径方向内側端と、この一つの枠部111dに隣接する枠部112dの径方向内側端との間が切断されて成る。
【0033】
ステータ11は、内径部材113を有する。内径部材113は、円環状の板部材である円環部113aと、円環部113aの内周から軸方向一方側に延びる円筒状部材である円筒部113bと、を有する。円環部113aと円筒部113bとは一体の部材である。内径部材113は、樹脂材料から成る。円環部113aの外周は、端部111eと繋がる。ステータケース111と内径部材113とは、例えばインサート成形によって一体成形される。内径部材113は、切断部と繋がる補填部の一例である。
【0034】
図7は、図4に示したステータケース112及び内径部材114に代えて用いることが出来るステータケース及び内径部材の変形例を示す図である。図7は、変形例であるステータケース1112及び内径部材1114を軸方向一方側から見た平面図である。
【0035】
ステータケース1112は金属材料から成る。ステータケース1112は、枠部1112dを有する。枠部1112dは、径方向内側端に端部1112eを有する。内径部材1114は、円環状の板部材である。内径部材1114は、樹脂材料から成る。内径部材114の外周は、端部1112eと繋がる。端部1112eは、径方向外側に凹む凹部1112fを有する。内径部材114の外周は、径方向外側に突出する凸部1114bを有する。凹部1112fと凸部1114bとは互いに嵌め合う。凹部1112f及び凸部1114bは、複数の枠部1112dの径方向内側端と、補填部としての内径部材1114とを嵌め合う嵌め合い部の一例である。これにより、枠部1112dと内径部材1114との外れを、ステータケース112及び内径部材114の例よりも防ぐことが出来る。なお、ステータケース111側も同様の構造とすることが出来る。
【0036】
図8は、電磁界解析によって計算した渦電流損失密度を示す図である。図8(A)は、内径部材114を用いずに、内径側で枠部同士が金属で繋がっている場合の例についての渦電流損失密度を示す図である。図8(B)は、図4に示したように内径部材114を用いた場合の例についての渦電流損失密度を示す図である。
【0037】
図8(A)の例では、ステータケース2112は金属材料から成る。複数の枠部2112d同士は径方向内側部2113で繋がっており、すべて金属で、ステータコイルの端部を囲む渦電流の経路が出来ている。このため、図8(A)の例では、渦電流損失密度が高い。
【0038】
図8(B)の例では、ステータケース112は金属材料から成る。一方、内径部材114は樹脂材料から成る。このため、ステータコイルの端部を囲む渦電流の経路が出来ていない。このため、図8(B)の例では、図8(A)の例と比べて渦電流損失密度が低い。このため、本実施形態の構造により、損失が大きく低減されていることがわかる。
【0039】
<第2実施形態>
図9は、本発明の第2実施形態に係るステータケースについて示す図である。本実施形態のステータケース3112は、図4に示したステータケース112及び内径部材114に代えて用いることが出来る。図9は、ステータケース3112を軸方向一方側から見た平面図である。ステータケース3112は、ステータケース112と同様に円板形状である。以下では、第1実施形態と相違する点について説明し、第1実施形態と同様な点の詳しい説明は省略する。
【0040】
図4に示したように、第1実施形態のステータ11は、ステータケース111とステータケース112とを組み合わせたときにステータケース111及びステータケース112内に形成される空間に、ステータコア121を収容して構成される。第1実施形態のステータケース112は、周方向に等間隔で配置された12個のステータコア121を有する構成に対応したステータケースである。これに対して第2実施形態のステータケース3112は、周方向に等間隔で配置された36個のステータコアを有する構成に対応したステータケースである。
【0041】
本実施形態では、第1実施形態で内径部材114を用いていた箇所にまで径方向内側まで拡がる金属材料のステータケース3112を用いる。なお、ステータケース3112の径方向内側端の位置は、ステータケース112の径方向内側端の位置に比べて、より径方向外側に位置する。第1実施形態の内径部材114と軸方向に対向する内径部材113に対応する第2実施形態における内径部材は、ステータケース3112の内径部3114と軸方向に対向する。
【0042】
ステータケース3112は、ステータコアの軸方向一方側端が露出する開口部3116を囲む枠部3115を有する。ステータケース3112は、周方向に等間隔で配置された複数の枠部3115を有する。ステータケース3112は、径方向内側端に内径部3114を有する。内径部3114は、複数の枠部3115同士を内径側で接続する。内径部3114は、ボルト穴3119を有する。ステータケース3112は、ボルト穴3119を貫通したボルトによって、第1実施形態の内径部材113に対応する第2実施形態における内径部材に固定される。
【0043】
枠部3115は、径方向外側端に外径部3113を有する。複数の枠部3115のそれぞれは、自身の外径部3113において、隣接する枠部3115の外径部3113との間にスリット3117を有することで、隣接する枠部3115と離間する。複数の枠部3115のそれぞれの外径部3113は、ボルト穴3118を有する。ステータケース3112は、ボルト穴3118を貫通したボルトによって、第1実施形態のステータケース111の径方向外側の円筒部分に対応する第2実施形態における円筒部分に固定される。スリット3117は、ステータケース3112を軸方向に貫通する。スリット3117は、開口部3116を囲む部位の少なくとも一部が切断された切断部の一例である。すなわち、この場合の切断部は、複数の枠部3115のそれぞれが、径方向外側で、隣接する枠部3115と切断されて成る。複数の枠部3115のそれぞれは、径方向外側で、周方向一方側と周方向他方側とに、隣接する枠部3115と分離される。
【0044】
なお、本実施形態では、開口部3116の外径側にのみスリット3117を設けたが、本発明は、開口部3116の内径側にのみスリットを設けてもよい。
【0045】
上述のように、本実施形態によれば、スリット3117を設けたことで、開口部3116の周囲に生じる渦電流の経路を断つことが出来る。なお、ステータケース111側も同様の構造とすることが出来る。
【0046】
アキシャルギャップモータは、図2に示したように、ステータが、磁石を貼り付けたロータに挟まれた構造である。このため、ロータの磁石によりステータコアを軸方向に吸引する吸引力が働く。スリット3117は、開口部3116の径方向外側に位置し、ステータケース3112を周方向一方側と周方向他方側とに切断するスリットである。本実施形態では、枠部3115において、径方向内側と径方向外側とに切断するスリットを有しないため、軸方向の吸引力に対する強度を高めることができる。
【0047】
<第3実施形態>
図10は、本発明の第3実施形態に係るステータケースについて示す図である。本実施形態のステータケース4112は、図9に示したステータケース3112に代えて用いることが出来る。図10は、ステータケース4112を軸方向一方側から見た平面図である。ステータケース4112は、ステータケース3112と同様に円板形状である。以下では、第2実施形態と相違する点について説明し、第2実施形態と同様な点の詳しい説明は省略する。
【0048】
ステータケース4112は、ステータコアの軸方向一方側端が露出する開口部4116を囲む枠部4115を有する。ステータケース4112は、周方向に等間隔で配置された複数の枠部4115を有する。複数の枠部4115のそれぞれは、径方向外側端に外径部4113を有する。外径部4113は隣接する二つの枠部4115同士を接続する。複数の枠部4115のそれぞれは、径方向内側端に内径部4114を有する。内径部4114は隣接する二つの枠部4115同士を接続する。
【0049】
複数の枠部4115のそれぞれは、その外径部4113又は内径部4114のいずれかによってのみ隣接する枠部4115と接続される。複数の枠部4115のうち外径部4113によって周方向他方側に隣接する枠部4115と接続される枠部4115は、内径部4114によって周方向一方側に隣接する枠部4115と接続される。また、複数の枠部4115のうち内径部4114によって周方向他方側に隣接する枠部4115と接続される枠部4115は、外径部4113によって周方向一方側に隣接する枠部4115と接続される。
【0050】
複数の枠部4115それぞれの外径部4113のうち周方向他方側に隣接する枠部4115の外径部4113と接続される外径部4113は、周方向一方側に隣接する枠部4115の外径部4113との間にスリット4117を有する。複数の枠部4115それぞれの外径部4113のうち周方向一方側に隣接する枠部4115の外径部4113と接続される外径部4113は、周方向他方側に隣接する枠部4115の外径部4113との間にスリット4117を有する。
【0051】
複数の枠部4115それぞれの内径部4114のうち周方向他方側に隣接する枠部4115の内径部4114と接続される内径部4114は、周方向一方側に隣接する枠部4115の内径部4114との間にスリット4120を有する。複数の枠部4115それぞれの内径部4114のうち周方向一方側に隣接する枠部4115の内径部4114と接続される内径部4114は、周方向他方側に隣接する枠部4115の内径部4114との間にスリットを有する。
【0052】
外径部4113は、ボルト穴4118を有する。ステータケース4112は、ボルト穴4118を貫通したボルトによって、第1実施形態のステータケース111の径方向外側の円筒部分に対応する第3実施形態における円筒部分に固定される。
【0053】
内径部4114は、ボルト穴4119を有する。ステータケース4112は、ボルト穴4119を貫通したボルトによって、第1実施形態の内径部材113に対応する第3実施形態における内径部材に固定される。
【0054】
スリット4117及び4120は、ステータケース4112を軸方向に貫通する。スリット4117及び4120は、開口部4116を囲む部位の少なくとも一部が切断された切断部の一例である。スリット4117による切断部は、複数の枠部4115のそれぞれが、径方向外側で、隣接する枠部4115と切断されて成る。複数の枠部4115のそれぞれは、径方向外側で、周方向一方側と周方向他方側とに、隣接する枠部4115と分離される。スリット4120による切断部は、複数の枠部4115のそれぞれが、径方向内側で、隣接する枠部4115と切断されて成る。複数の枠部4115のそれぞれは、径方向内側で、周方向一方側と周方向他方側とに、隣接する枠部4115と分離される。
【0055】
上述のように、本実施形態によれば、スリット3117及び4120を設けたことで、開口部4116の周囲に生じる渦電流の経路を断つことが出来る。なお、ステータケース111側も同様の構造とすることが出来る。
【0056】
アキシャルギャップモータは、図2に示したように、ステータが、磁石を貼り付けたロータに挟まれた構造である。このため、ロータの磁石によりステータコアを軸方向に吸引する吸引力が働く。スリット4117及び4120は、開口部4116の径方向外側又は径方向内側に位置し、ステータケース4112を周方向一方側と周方向他方側とに切断するスリットである。本実施形態では、枠部4115において、径方向内側と径方向外側とに切断するスリットを有しないため、軸方向の吸引力に対する強度を高めることができる。
【0057】
第2実施形態では、外径部3113が枠部3115毎に分離されており、枠部3115と同数のボルト穴3118及びボルトが必要であった。これに対して、第3実施形態では、隣接する外径部4113同士が接続されているため、ボルト穴4118及びボルトの数は、枠部4115の数の半数で済み、コストを低減することができる。
【0058】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
10…モータ、11…ステータ、12…フレーム、13…フレーム、14…シャフト、111…ステータケース、111c…開口部、112…ステータケース、112c…開口部、121…ステータコア

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10