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特開2024-40924撹拌・脱泡処理システム及び撹拌・脱泡処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040924
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】撹拌・脱泡処理システム及び撹拌・脱泡処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 29/10 20220101AFI20240318BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20240318BHJP
   B01F 35/213 20220101ALI20240318BHJP
   B01F 35/214 20220101ALI20240318BHJP
   B01F 35/222 20220101ALI20240318BHJP
   B01F 35/50 20220101ALI20240318BHJP
【FI】
B01F29/10
B01D19/00 102
B01F35/213
B01F35/214
B01F35/222
B01F35/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145587
(22)【出願日】2022-09-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.掲載物名 化学工学会第53回秋季大会講演要旨 掲載日 令和4年8月31日 掲載アドレス http://www3.scej.org/meeting/53f/index.html http://www3.scej.org/meeting/53f/prog/session_SY-54.html http://www3.scej.org/meeting/53f/abst/AC319.pdf
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(71)【出願人】
【識別番号】000145286
【氏名又は名称】株式会社写真化学
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】菰田 悦之
(72)【発明者】
【氏名】高岡 文彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 友紀
【テーマコード(参考)】
4D011
4G036
4G037
【Fターム(参考)】
4D011AA06
4D011AB06
4D011AC08
4D011AD06
4G036AA26
4G037DA27
4G037EA05
(57)【要約】
【課題】特別な機器を設けることなく、被処理物の状態を検出可能な撹拌・脱泡処理システムを提供する。
【解決手段】被処理物5を収容する容器1を公転及び自転させて、被処理物5に対する撹拌・脱泡処理を行う撹拌・脱泡処理装置を備える撹拌・脱泡処理システムであって、容器1の開口部を塞ぐ蓋10と、容器1に収容される被処理物5の温度を測定する第1温度センサ2と、容器1の内部に含まれる内部気体11の温度を測定する第2温度センサ3と、演算部とを備え、演算部は、撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも被処理物5に蓄積される熱、被処理物5と内部気体11との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、第1温度センサ2及び第2温度センサ3で測定される温度とに基づいて、被処理物5に作用する代表せん断速度を導出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を収容する容器を公転及び自転させて、前記被処理物に対する撹拌・脱泡処理を行う撹拌・脱泡処理装置を備える撹拌・脱泡処理システムであって、
前記容器の開口部を塞ぐ蓋と、
前記容器に収容される前記被処理物の温度を測定する第1温度センサと、
前記容器の内部に含まれる内部気体の温度を測定する第2温度センサと、
演算部とを備え、
前記演算部は、前記撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも前記被処理物に蓄積される熱、前記被処理物と前記内部気体との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサで測定される温度とに基づいて、前記被処理物に作用する代表せん断速度を導出する撹拌・脱泡処理システム。
【請求項2】
前記第1温度センサは、前記被処理物から放射される赤外線を検出する第1検出部を有する請求項1に記載の撹拌・脱泡処理システム。
【請求項3】
前記第2温度センサは、前記内部気体と接触する第2検出部を有する請求項1に記載の撹拌・脱泡処理システム。
【請求項4】
前記容器は断熱層を有する断熱容器である請求項1~3の何れか一項に記載の撹拌・脱泡処理システム。
【請求項5】
前記容器は、前記被処理物を収容する内側容器と、前記内側容器の側面及び底面に非接触で前記内側容器を収容する外側容器と、を備え、
前記断熱層は、前記内側容器と前記外側容器との間の空気層である請求項4に記載の撹拌・脱泡処理システム。
【請求項6】
被処理物を収容する容器を公転及び自転させて、前記被処理物に対する撹拌・脱泡処理を行う撹拌・脱泡処理装置を備える撹拌・脱泡処理システムであって、
前記容器の開口部を塞ぐ蓋と、
前記容器を収容して公転及び自転する容器ホルダと、
前記容器に収容される前記被処理物の温度を測定する第1温度センサと、
前記容器の内部に含まれる内部気体の温度を測定する第2温度センサと、
前記容器又は前記容器ホルダの外面の温度を測定する第3温度センサと、
演算部とを備え、
前記演算部は、前記撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも前記被処理物に蓄積される熱、前記被処理物と前記内部気体との間の熱収支、前記容器又は前記容器ホルダの外面を通じた前記被処理物と容器外部との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、前記第1温度センサ、前記第2温度センサ及び前記第3温度センサで測定される温度とに基づいて、前記被処理物に作用する代表せん断速度を導出する撹拌・脱泡処理システム。
【請求項7】
前記第3温度センサは、第1温度検出部及び第2温度検出部を含み、前記第1温度検出部は前記容器の底部の外面を測定し、前記第2温度検出部は前記容器又は前記容器ホルダの側部の外面を測定する請求項6に記載の撹拌・脱泡処理システム。
【請求項8】
前記撹拌・脱泡処理装置は前記容器を公転させる公転体を備え、
前記第3温度センサは、前記公転体に固定されて自転することなく公転しつつ前記容器ホルダの外面から放射される赤外線を検出する温度検出部を有する請求項6に記載の撹拌・脱泡処理システム。
【請求項9】
前記第3温度センサは、前記容器ホルダに固定され公転及び自転しつつ前記容器の外面から放射される赤外線を検出する温度検出部を有する請求項6に記載の撹拌・脱泡処理システム。
【請求項10】
被処理物を収容する容器を公転及び自転させて、前記被処理物に対する撹拌・脱泡処理を行う撹拌・脱泡処理方法であって、
第1温度センサで、前記容器に収容される前記被処理物の温度を測定する第1測定工程と、
第2温度センサで、前記容器の内部に含まれる内部気体の温度を測定する第2測定工程と、
前記撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも前記被処理物に蓄積される熱、前記被処理物と前記内部気体との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、前記第1測定工程及び前記第2測定工程で測定される温度とに基づいて、前記被処理物に作用する代表せん断速度を導出する導出工程と、
を含む撹拌・脱泡処理方法。
【請求項11】
被処理物を収容する容器を公転及び自転させて、前記被処理物に対する撹拌・脱泡処理を行う撹拌・脱泡処理方法であって、
第1温度センサで、前記容器に収容される前記被処理物の温度を測定する第1測定工程と、
第2温度センサで、前記容器の内部に含まれる内部気体の温度を測定する第2測定工程と、
第3温度センサで、前記容器又は前記容器を収容して公転及び自転する容器ホルダの外面の温度を測定する第3測定工程と、
前記撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも前記被処理物に蓄積される熱、前記被処理物と前記内部気体との間の熱収支、前記容器又は前記容器ホルダの外面を通じた前記被処理物と容器外部との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、前記第1測定工程、前記第2測定工程及び前記第3測定工程で測定される温度とに基づいて、前記被処理物に作用する代表せん断速度を導出する導出工程と、
を含む撹拌・脱泡処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被処理物を収容する容器を公転及び自転させて、被処理物に対する撹拌・脱泡処理を行う撹拌・脱泡処理装置を備える撹拌・脱泡処理システム及び撹拌・脱泡処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理物を収容する容器を公転及び自転させて、その被処理物に対する撹拌・脱泡処理を行う場合、被処理物の流動状態を知ることができれば好ましい。但し、被処理物を収容する容器は公転及び自転しているため、その内部での被処理物の流動状態を観察することは困難である。
【0003】
特許文献1(特開2021-043001号公報)には、処理中の被処理物の状態を測定することを目的とする測定システム、例えば、被処理物に作用するせん断応力を測定する測定システムが記載されている。この測定システムは、被処理物に作用するせん断応力を検知する検知面が、容器に収納された被処理物に直接当接可能に配置される測定部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-043001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の測定システムでは、被処理物に作用するせん断応力を測定するための測定部のように、特別な機器が必要になる。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、特別な機器を設けることなく、被処理物の状態を検出可能な撹拌・脱泡処理システム及び撹拌・脱泡処理方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る撹拌・脱泡処理システムの構成は、被処理物を収容する容器を公転及び自転させて、前記被処理物に対する撹拌・脱泡処理を行う撹拌・脱泡処理装置を備える撹拌・脱泡処理システムであって、
前記容器の開口部を塞ぐ蓋と、
前記容器に収容される前記被処理物の温度を測定する第1温度センサと、
前記容器の内部に含まれる内部気体の温度を測定する第2温度センサと、
演算部とを備え、
前記演算部は、前記撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも前記被処理物に蓄積される熱、前記被処理物と前記内部気体との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサで測定される温度とに基づいて、前記被処理物に作用する代表せん断速度を導出する。
【0008】
上記構成によれば、撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも被処理物に蓄積される熱、被処理物と内部気体との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、被処理物の温度を測定する第1温度センサの測定結果と、内部気体の温度を測定する第2温度センサの測定結果とを用いて、被処理物に作用する代表せん断速度を導出できる。つまり、被処理物に作用するせん断応力を測定する測定部のような特別な機器を設けなくても、被処理物の状態を検出可能な撹拌・脱泡処理システムを提供できる。
【0009】
本開示に係る撹拌・脱泡処理システムの別の構成は、前記第1温度センサは、前記被処理物から放射される赤外線を検出する第1検出部を有する。
【0010】
上記構成によれば、第1検出部を用いることで、撹拌・脱泡処理によって容器の内部で流動する被処理物の温度を非接触で検出できる。
【0011】
本開示に係る撹拌・脱泡処理システムの別の構成は、前記第2温度センサは、前記内部気体と接触する第2検出部を有する。
【0012】
上記構成によれば、内部気体と接触する第2検出部を用いることで、内部気体の温度を正確に検出できる。
【0013】
本開示に係る撹拌・脱泡処理システムの別の構成は、前記容器は断熱層を有する断熱容器である。
【0014】
上記構成によれば、断熱容器を用いることで、その断熱容器の内部に収容される被処理物と断熱容器の外部との間の伝熱量を小さくすることができる。つまり、熱収支式では、伝熱に関し、容器の内部での伝熱、即ち、被処理物と内部気体との間の熱収支を考慮するだけでよくなる。その結果、被処理物の温度を測定する第1温度センサの測定結果と、内部気体の温度を測定する第2温度センサの測定結果とを用いることで、十分に正確な被処理物に作用する代表せん断速度を導出できる。
【0015】
本開示に係る撹拌・脱泡処理システムの別の構成は、前記容器は、前記被処理物を収容する内側容器と、前記内側容器の側面及び底面に非接触で前記内側容器を収容する外側容器と、を備え、
前記断熱層は、前記内側容器と前記外側容器との間の空気層である。
【0016】
上記構成によれば、容器を、内側容器及び外側容器を有する二重構造とし、それらの間に断熱層としての空気層を挟むことで、容器の内部に収容される被処理物と容器の外部との間の伝熱量を小さくすることができる。つまり、空気層により、容易かつ効果的に断熱することができる。
【0017】
本開示の一実施形態に係る撹拌・脱泡処理システムの構成は、被処理物を収容する容器を公転及び自転させて、前記被処理物に対する撹拌・脱泡処理を行う撹拌・脱泡処理装置を備える撹拌・脱泡処理システムであって、
前記容器の開口部を塞ぐ蓋と、
前記容器を収容して公転及び自転する容器ホルダと、
前記容器に収容される前記被処理物の温度を測定する第1温度センサと、
前記容器の内部に含まれる内部気体の温度を測定する第2温度センサと、
前記容器又は前記容器ホルダの外面の温度を測定する第3温度センサと、
演算部とを備え、
前記演算部は、前記撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも前記被処理物に蓄積される熱、前記被処理物と前記内部気体との間の熱収支、前記容器又は前記容器ホルダの外面を通じた前記被処理物と容器外部との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、前記第1温度センサ、前記第2温度センサ及び前記第3温度センサで測定される温度とに基づいて、前記被処理物に作用する代表せん断速度を導出する。
【0018】
上記構成によれば、被処理物に作用する代表せん断速度が規定された熱収支式と、被処理物の温度を測定する第1温度センサの測定結果と、内部気体の温度を測定する第2温度センサの測定結果と、容器又は容器ホルダの外面の温度を測定する第3温度センサの測定結果とを用いて、被処理物に作用する代表せん断速度を導出できる。つまり、被処理物に作用するせん断応力を測定する測定部のような特別な機器を設けなくても、被処理物の状態を検出可能な撹拌・脱泡処理システムを提供できる。
【0019】
本開示に係る撹拌・脱泡処理システムの別の構成は、前記第3温度センサは、第1温度検出部及び第2温度検出部を含み、第1温度検出部は前記容器の底部の外面を測定し、第2温度検出部は前記容器又は前記容器ホルダの側部の外面を測定する。
【0020】
上記構成によれば、第3温度センサの第1温度検出部を用いて、被処理物と容器の底部との間の伝熱量を検出でき、且つ、第3温度センサの第2温度検出部を用いて、被処理物と容器又は容器ホルダの側部の外面との間の伝熱量を検出できる。
【0021】
本開示に係る撹拌・脱泡処理システムの別の構成は、前記撹拌・脱泡処理装置は前記容器を公転させる公転体を備え、
前記第3温度センサは、前記公転体に固定されて自転することなく公転しつつ前記容器ホルダの外面から放射される赤外線を検出する温度検出部を有する。
【0022】
上記構成によれば、第3温度センサが有する温度検出部には、自転による遠心力が作用しない。その結果、温度検出部に故障や誤動作などが発生し難くなる。
【0023】
本開示に係る撹拌・脱泡処理システムの別の構成は、前記第3温度センサは、前記容器ホルダに固定され公転及び自転しつつ前記容器の外面から放射される赤外線を検出する温度検出部を有する。
【0024】
上記構成によれば、第3温度センサの温度検出部を用いることで、容器ホルダの外面の温度を非接触で検出できる。
【0025】
本開示の一実施形態に係る撹拌・脱泡処理方法の構成は、被処理物を収容する容器を公転及び自転させて、前記被処理物に対する撹拌・脱泡処理を行う撹拌・脱泡処理方法であって、第1温度センサで、前記容器に収容される前記被処理物の温度を測定する第1測定工程と、第2温度センサで、前記容器の内部に含まれる内部気体の温度を測定する第2測定工程と、前記撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも前記被処理物に蓄積される熱、前記被処理物と前記内部気体との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、前記第1測定工程及び前記第2測定工程で測定される温度とに基づいて、前記被処理物に作用する代表せん断速度を導出する導出工程と、を含む。
【0026】
上記構成によれば、撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも被処理物に蓄積される熱、被処理物と内部気体との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、被処理物の温度を測定する第1測定工程の測定結果と、内部気体の温度を測定する第2測定工程の測定結果とを用いて、被処理物に作用する代表せん断速度を導出できる。つまり、被処理物に作用するせん断応力を測定する測定部のような特別な機器を設けなくても、被処理物の状態を検出可能な撹拌・脱泡処理方法を提供できる。
【0027】
本開示の一実施形態に係る撹拌・脱泡処理方法の構成は、被処理物を収容する容器を公転及び自転させて、前記被処理物に対する撹拌・脱泡処理を行う撹拌・脱泡処理方法であって、第1温度センサで、前記容器に収容される前記被処理物の温度を測定する第1測定工程と、第2温度センサで、前記容器の内部に含まれる内部気体の温度を測定する第2測定工程と、第3温度センサで、前記容器又は前記容器を収容して公転及び自転する容器ホルダの外面の温度を測定する第3測定工程と、前記撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも前記被処理物に蓄積される熱、前記被処理物と前記内部気体との間の熱収支、前記容器又は前記容器ホルダの外面を通じた前記被処理物と容器外部との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、前記第1測定工程、前記第2測定工程及び前記第3測定工程で測定される温度とに基づいて、前記被処理物に作用する代表せん断速度を導出する導出工程と、を含む。
【0028】
上記構成によれば、被処理物に作用する代表せん断速度が規定された熱収支式と、被処理物の温度を測定する第1測定工程の測定結果と、内部気体の温度を測定する第2測定工程の測定結果と、容器又は容器ホルダの外面の温度を測定する第3測定工程の測定結果とを用いて、被処理物に作用する代表せん断速度を導出できる。つまり、被処理物に作用するせん断応力を測定する測定部のような特別な機器を設けなくても、被処理物の状態を検出可能な撹拌・脱泡処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】撹拌・脱泡処理装置を示す図である。
図2】第1実施形態の撹拌・脱泡処理システムを示す図である。
図3】第1実施形態の容器及びその周辺の構造の例を示す図である。
図4】第1実施形態の容器及びその周辺の構造の例を示す図である。
図5】容器の開口部を覆う蓋の構造の例を示す図である。
図6】被処理物の各接触界面における熱収支のモデルを示す図である。
図7】伝熱面積を示す図である。
図8】被処理物と内部気体との間の伝熱を説明するモデルである。
図9】被処理物と容器の側面及び容器ホルダとの間の伝熱を説明するモデルである。
図10】被処理物と容器の底面との間の伝熱を説明するモデルである。
図11】第2実施形態の撹拌・脱泡処理システムを示す図である。
図12】第2実施形態の容器の構造の例を示す図である。
図13】被処理物及び内部気体の温度の時間的な変化の測定結果を示すグラフである。
図14】被処理物での熱の蓄積項、被処理物と内部気体との間の伝熱項、被処理物の粘性消散項、及び代表せん断速度の時間的な変化を示すグラフである。
図15】公転速度と代表せん断速度との関係を示すグラフである。
図16】無次元せん断速度とUtの関係を示すグラフである。
図17】第3実施形態の容器及びその周辺の構造の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して第1実施形態に係る撹拌・脱泡処理システム及び撹拌・脱泡処理方法について説明する。図1は、撹拌・脱泡処理装置100の例を示す構成図である。図2は、第1実施形態の撹拌・脱泡処理システムを示す図である。図3及び図4は、第1実施形態の容器1A(1)及びその周辺の構造の例を示す図である。図5は、容器1Aの開口部を覆う蓋10の構造の例を示す図である。
【0031】
撹拌・脱泡処理システムは、被処理物5を収容する容器1Aを公転及び自転させて、被処理物5に対する撹拌・脱泡処理を行う撹拌・脱泡処理装置100を備える。図1に示すように、撹拌・脱泡処理装置100は、被処理物5を内部に収容する容器1Aと、容器1Aが搭載される容器ホルダ106と、容器ホルダ106を自転軸心X1周りに自転させ且つ自転軸心X1を公転させる駆動機構Dとを備える。図1には、撹拌・脱泡処理装置100に二つの容器ホルダ106が設けられる例を示しているが、容器ホルダ106の数は変更可能である。例えば、撹拌・脱泡処理装置100に一つの容器ホルダ106が設けられる場合、撹拌・脱泡処理装置100は、回転時のバランスを取るための錘を備えてもよい。
【0032】
図1に示す本実施形態の駆動機構Dは、公転歯車101、回転ドラム102、公転軸103、駆動モータ104、公転テーブル105、自転歯車108、中間歯車109、太陽歯車110、歯車111、歯車112、及び、歯車113を備える。
【0033】
駆動機構Dにおいて、公転歯車101を有する回転ドラム102は、軸受を介して固定軸である公転軸103に対して回転自在に支持されている。駆動モータ104による回転運動が、公転歯車101を介して回転ドラム102に伝達され、回転ドラム102は、公転軸103の公転軸心X2を中心に回転する。公転体としての公転テーブル105は、回転ドラム102に連結されて固定されており、回転ドラム102と共に回転することで、容器ホルダ106に装着された容器1Aを公転させる。容器ホルダ106は、公転テーブル105に対してその自転軸心X1を中心に回転自在に支持されている。そのため、容器ホルダ106は、公転テーブル105の回転により、公転軸103の公転軸心X2を中心に回転、即ち、公転する。
【0034】
容器ホルダ106は、自転歯車108と共に回転するように自転歯車108に接続されている。自転歯車108は、軸受を介して公転テーブル105に回転自在に支持されている中間歯車109と噛合する。中間歯車109は、太陽歯車110と噛合する。太陽歯車110は、回転ドラム102の外側に配置されており、回転ドラム102に対して、軸受を介して回転自在に支持されている。
【0035】
太陽歯車110は、歯車111に噛合する。歯車111には、互いに噛合する歯車112及び歯車113を介して、パウダーブレーキ等の制動装置114の制動力が伝達される。
【0036】
太陽歯車110は、制動装置114により加えられる制動力が無い場合、即ち、制動力が0の場合、回転ドラム102に従動して回転する。
【0037】
制動装置114の制動力が歯車111を介して太陽歯車110に伝達された場合、太陽歯車110の回転速度が回転ドラム102の回転速度に比べて減少し、太陽歯車110の回転速度と回転ドラム102に連結されている公転テーブル105の回転速度との間に差が生じる。その結果、太陽歯車110に対して、中間歯車109が相対的に回転する。中間歯車109は、自転歯車108と噛合するため、自転歯車108が回転し、容器ホルダ106は、自転軸心X1を中心に回転、即ち、自転する。
【0038】
上記撹拌・脱泡処理装置100は、1つの駆動モータ104により容器ホルダ106を公転及び自転させる構成例であるが、撹拌・脱泡処理装置100の構成は図1の例に限定するものではない。例えば、撹拌・脱泡処理装置100は、制動装置114を用いる構成に代えて、公転用駆動モータと自転用駆動モータを別々に備え、容器ホルダ106を公転及び自転させる構成であってもよく、他の構成であってもよい。公転用駆動モータと自転用駆動モータとを別々に備える場合、公転とは独立して自転単独での駆動を行うことができる。自転用駆動モータは公転体(例えば公転テーブル105)に固定して設けてもよいし、公転体と分離して設けてもよい。制動装置114を用いる場合であっても公転用駆動モータ及び自転用駆動モータを用いる場合であっても、撹拌・脱泡処理装置100の容器1Aの自転の回転速度及び公転の回転速度は、適宜設定できる。
【0039】
撹拌・脱泡処理システムは、撹拌・脱泡処理装置100と、容器1Aの開口部を塞ぐ蓋10と、容器1Aを収容して公転及び自転する容器ホルダ106と、第1温度センサ2と、第2温度センサ3と、第3温度センサ4と、制御部6とを備える。加えて、本実施形態の撹拌・脱泡処理システムは、入力受付部8と、情報出力部9と、記憶部7とを備える。
【0040】
制御部6は、撹拌・脱泡処理装置100の動作を制御する。加えて、制御部6は、演算処理機能、即ち、本開示の演算部6aの機能を有している。図中では、制御部6を撹拌・脱泡処理装置100の外に描いているが、制御部6は撹拌・脱泡処理装置100の内部に設けてもよい。
【0041】
記憶部7は、撹拌・脱泡処理システムで取り扱われる情報を記憶する。
【0042】
入力受付部8は、各種のスイッチやボタンなどを用いて実現される。入力受付部8は撹拌・脱泡処理装置100に搭載されている各種のスイッチやボタンなどであってもよい。
【0043】
情報出力部9は、文字情報や画像情報などを表示可能な表示部、光の点灯及び消灯により情報を表示可能なランプなどを用いて実現できる。情報出力部9は撹拌・脱泡処理装置100に搭載されている表示部やランプなどであってもよい。或いは、情報出力部9は、情報通信可能に接続される他の装置に情報を出力してもよい。
【0044】
制御部6が撹拌・脱泡処理装置100とは別の装置に設けられる場合、制御部6は例えばコンピュータ装置を用いて実現することができる。その場合、そのコンピュータ装置が、情報の演算処理機能(演算部6a)、情報の入出力機能(入力受付部8、情報出力部9)、情報の記憶機能(記憶部7)などを備えていてもよい。
【0045】
蓋10は、中蓋及び外蓋を含み、中蓋と外蓋とを組み合わせることにより、中蓋と外蓋との間に内部空間が形成されるものであってもよい。また、蓋10は、内部空間を有しない一体形成されたものであってもよい。蓋10が内部空間を有する場合、蓋10の中蓋は、容器1Aの内部空間から容器1Aの内部空間に通じる1つ又は複数の開口を有してもよい。
【0046】
第1温度センサ2は、容器1Aに収容される被処理物5の温度を測定する(第1温度測定工程)。図3に示すように、第1温度センサ2は、容器1A又は蓋10の内部空間の何れかに、或いは容器1Aの内部空間から蓋10の内部空間にわたって設けられた第1検出部12を有する。具体的には、第1検出部12は、容器1Aに収容される被処理物5から放射される赤外線を検出できる。第1検出部12は、蓋10の下面(容器1Aの内部空間側の面)に設けられてもよいし、赤外線の受光部12aが蓋10の中蓋の開口に向くように蓋10の内部空間に設けられてもよい。第1温度センサ2は、第1検出部12から出力される信号を変換して温度を算出し、その算出した温度を制御部6に送信できる。或いは、第1温度センサ2の第1検出部12から出力される信号、即ち、被処理物5の温度に対応する信号を演算部6aに送信し、演算部6aがその信号を変換して温度を決定してもよい。
【0047】
第2温度センサ3は、容器1Aの内部に含まれる内部気体11の温度を測定する(第2温度測定工程)。図3に示すように、第2温度センサ3は、内部気体11と接触する第2検出部13を有してもよい。例えば、第2検出部13は、容器1Aの内部空間に設けられた熱電対を有する。図5に示す例では、熱電対を構成する2本の金属線13a、13bの先端部及びそれら金属線13a、13bの接点13cが、ポリイミドなどの樹脂製のフィルム13dで覆われている。フィルム13dは、蓋10の内面に固定される一対のクランプ部14で固定されていてもよい。その結果、容器1A及び蓋10が自転及び公転した場合のフィルム13dへの遠心力の影響を低減することができる。第2温度センサ3は、例えば、熱電対に接続された本体部を有してもよい。本体部は、蓋10の内部空間に設けられ、蓋10の中蓋の開口を介して熱電対に接続されていてもよい。この本体部は、熱電対の検出結果から温度を算出し、その算出した温度を演算部6aに送信できる。或いは、本体部は、内部気体11の温度に対応する信号を演算部6aに送信し、演算部6aがその信号を変換して温度を決定してもよい。
【0048】
第1検出部12は自転軸上に配置される。第2検出部13は自転軸の近傍に配置される。つまり、第2検出部13は自転軸の近傍に配置されるため、第2検出部13に加わる自転の遠心力は小さくなる。そのため、第2検出部13に故障や誤動作などが発生し難くなる。
【0049】
第3温度センサ4は、容器1A又は容器ホルダ106の外面の温度を測定する(第3温度測定工程)。第3温度センサ4は、第1温度検出部16及び第2温度検出部15を含み、第1温度検出部16は容器1Aの底部の外面を測定し、第2温度検出部15は容器1A又は容器ホルダ106の側部の外面を測定する。
【0050】
第1温度検出部16は容器1Aの底面に接触して、容器1Aの温度を測定する。第1温度検出部16は、容器ホルダ106に固定されて容器1Aと共に公転及び自転する部位に設置されている。例えば、容器ホルダ106の底部には自転軸心X1を中心とする空間が設けられており、その空間の内部に第1温度検出部16が配置されている。第1温度検出部16は、例えば、図5に示した熱電対を用いて実現できる。その場合、上述したフィルム13dが容器1Aの底面に接するように第1温度検出部16が設置される。
【0051】
第2温度検出部15は容器1Aの側面から放射される赤外線を検出する。第2温度検出部15は、公転テーブル105に固定されて自転することなく公転しつつ容器ホルダ106の外面から放射される赤外線を検出する。
【0052】
図3は、第2温度検出部15が、容器1Aから見て公転軸心X2に近い側に配置された場合の図である。図4は、第2温度検出部15が、容器1Aから見て公転軸心X2から遠い側に配置された場合の図である。第2温度検出部15が公転軸心X2から近い側に配置されるほど、第2温度検出部15に加わる公転による遠心力は小さくなる。尚、図示は省略するが、容器1Aから見て公転軸心X2に近い側と、容器1Aから見て公転軸心X2から遠い側との両方に、第2温度検出部15を設けてもよい。図3、4には記載していないが、容器1Aの自転により、容器1A内の公転軸心X2に近い側に、被処理物5の薄膜が形成される。容器1Aから見て公転軸心X2に近い側の第2温度検出部15は、この薄膜部分から容器1Aの側面に伝わる熱を検出する。
【0053】
第3温度センサ4は、第1温度検出部16及び第2温度検出部15から出力される信号を変換して温度を算出し、その算出した温度を演算部6aに送信できる。或いは、第3温度センサ4の第1温度検出部16及び第2温度検出部15から出力される信号、即ち、容器ホルダ106の外面及び容器1Aの底面に対応する信号を演算部6aに送信し、演算部6aがその信号を変換して温度を決定してもよい。
【0054】
そして、演算部6aは、撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも被処理物5に蓄積される熱、被処理物5と内部気体11との間の熱収支、容器1A又は容器ホルダ106の外面を通じた被処理物5と容器1A外部との間の熱収支、及び粘性消散との関係を示す熱収支式と、第1温度センサ2、第2温度センサ3及び第3温度センサ4で測定される温度とに基づいて、被処理物5に作用する代表せん断速度を導出する(導出工程)。粘性消散は、粘性(即ち、分子レベルの摩擦)に起因する発熱に相当する。尚、本実施形態では、被処理物5は、撹拌・脱泡処理中に化学反応による発熱及び吸熱を生じない材料であるとする。
【0055】
このように、本実施形態の撹拌・脱泡処理方法は、第1温度センサ2で、容器1Aに収容される被処理物5の温度を測定する第1測定工程と、第2温度センサ3で、容器1Aの内部に含まれる内部気体11の温度を測定する第2測定工程と、第3温度センサ4で、容器1A又は容器1Aを収容して公転及び自転する容器ホルダ106の外面の温度を測定する第3測定工程と、撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも被処理物5に蓄積される熱、被処理物5と内部気体11との間の熱収支、容器1又は容器ホルダ106の外面を通じた被処理物5と容器外部との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、第1測定工程、第2測定工程及び第3測定工程で測定される温度とに基づいて、被処理物5に作用する代表せん断速度を導出する導出工程とを含む。例えば、上記撹拌・脱泡処理方法の各工程を実行させるためのプログラムを記憶部7に予め記憶させておき、そのプログラムが実行されることで上記撹拌・脱泡処理方法が実施される。
【0056】
以下に、熱収支式と、第1温度センサ2及び第2温度センサ3及び第3温度センサ4で測定される温度とに基づいて、被処理物5に作用する代表せん断速度を導出する手法について説明する。
【0057】
図6は、被処理物5の各接触界面における熱収支のモデルを示す図である。図示するように、容器1は容器ホルダ106に保持されている。そして、被処理物5と内部気体11との間の伝熱と、被処理物5と容器1の外面のうちの側面との間の伝熱と、被処理物5と容器1の外面のうちの底面との間の伝熱とを考慮する。尚、被処理物5と容器1の側面との間の伝熱は、金属製の容器ホルダ106の外面に設けられた第3検出部で検出する温度に基づいて推定している。
【0058】
熱収支式は、以下の式(1)で表される。式(1)の左辺は被処理物5での熱の蓄積を表し、右辺の第1項は被処理物5と内部気体11及び容器1(又は容器ホルダ106)の外面との間の伝熱を表し、右辺の第2項は被処理物5の粘性消散を表す。右辺の第1項で示される、被処理物5と内部気体11及び容器1の外面との間の伝熱については式(2)に示す。
【0059】
【数1】
【0060】
式(2)において、右辺の第1項の「U(T-T)」は、被処理物5と内部気体11との間の伝熱を表し、右辺の第2項の「U(T-T)」は、被処理物5と容器1の外面のうちの側面との間の伝熱を表し、右辺の第3項の「U(T-T)」は、被処理物5と容器1の外面のうちの底面との間の伝熱を表す。
【0061】
Tは第1温度センサ2で測定される被処理物5の温度(K)、Tは第2温度センサ3で測定される内部気体11の温度(K)、Tは第3温度センサ4で測定される容器ホルダ106の側面の温度(K)、Tは第3温度センサ4で測定される容器1の底面の温度(K)である。ρは被処理物5の密度(kg/m)、Cは被処理物5の比熱容量(J/(kg・K))、Vは被処理物5の体積(m)、ηは被処理物5の粘度(Pa・s)である。γドットは、容器1内の被処理物5の代表せん断速度(1/s)である。
【0062】
は被処理物5と内部気体11との間の伝熱面積(m)、Aは被処理物5と容器1の側面との間の伝熱面積(m)、Aは被処理物5と容器1の底面との間の伝熱面積(m)である。伝熱面積A、A、Aは、図7をモデルにして以下の式(3)~式(5)で表される。尚、aは容器1の内径(m)であり、Hは容器1の内部での被処理物5の撹拌・脱泡処理中の液面の最大高さ(m)であり、xは被処理物5と容器1の底面との最大接触長さ(m)である。尚、伝熱面積Aは、容器1Aに形成される被処理物5の薄膜の面積を除いたものであってもよい。
【0063】
【数2】
【0064】
【数3】
【0065】
【数4】
【0066】
式(2)のUは被処理物5と内部気体11との間の総括伝熱係数(W/(m・K))であり、Uは被処理物5と容器1の側面及び容器ホルダ106との間の総括伝熱係数(W/(m・K))であり、Uは被処理物5と容器1の底面との間の総括伝熱係数(W/(m・K))である。U、U、Uについては以下に説明する。
【0067】
〔総括伝熱係数U
図8は、被処理物5と内部気体11との間の伝熱を説明するモデルである。図示するように、第1温度センサ2で測定される被処理物5の温度(K)をTとし、第2温度センサ3で測定される内部気体11の温度(K)をTとし、被処理物5と内部気体11との界面の温度をT*とする。被処理物5と内部気体11との間には図示するような温度勾配が発生していると仮定する。被処理物5と内部気体11との間の界面の内部気体11側の伝熱係数を気相側境膜伝熱係数h(W/(m・K))とし、被処理物5と内部気体11との間の界面の被処理物5側の伝熱係数を液相側境膜伝熱係数h(W/(m・K))とする。
【0068】
被処理物5と内部気体11との間の界面の両側で対流伝熱によってやり取りされる熱流束qは互いに等しいので、以下の式(6)及び式(7)が成立する。
【0069】
【数5】
【0070】
式(6)及び式(7)から以下の式(8)が成立する。
【0071】
【数6】
【0072】
また、被処理物5と内部気体11との全体で見ると以下の式(9)が成立する。
【0073】
【数7】
【0074】
従って、式(8)及び式(9)に基づいて、総括伝熱係数Uは以下の式(10)で表される。
【0075】
【数8】
【0076】
〔総括伝熱係数U
図9は、被処理物5と容器1の側面及び容器ホルダ106との間の伝熱を説明するモデルである。図示するように、第1温度センサ2で測定される被処理物5の温度(K)をTとし、被処理物5と容器1との間の界面の温度(K)と容器1内での被処理物5の温度T(K)との温度差をΔTとし、第3温度センサ4で測定される容器1の外側(この例では、容器ホルダ106の外側)の温度(K)をTとする。また、容器1、容器1と容器ホルダ106との間の隙間、容器ホルダ106の各媒体の厚さをd(d、d、d)(m)で示し、各媒体の熱伝導度をk(k、k、k)(W/(m・K))で示し、各媒体の内面側と外面側との間の温度差(K)をΔTで示す。被処理物5と容器1との間の界面の被処理物5側の伝熱係数を液相側境膜伝熱係数h(W/(m・K))とする。この場合、以下の式(11)~式(13)が成立する。尚、後述する実施の形態3の様に容器1の側面の温度を直接測定する場合は、k、kは不要となる。
【0077】
【数9】
【0078】
従って、式(11)~式(13)に基づいて、総括伝熱係数Uは、以下の式(14)で表される。
【0079】
【数10】
【0080】
〔総括伝熱係数U
図10は、被処理物5と容器1の底面との間の伝熱を説明するモデルである。図示するように、第1温度センサ2で測定される被処理物5の温度(K)をTとし、被処理物5と容器1との間の界面の温度と容器1内での被処理物5の温度Tとの温度差(K)をΔTとし、第3温度センサ4で測定される容器1の外側の底面の温度(K)をTとする。また、容器1の厚さをd(d)(m)で示し、各媒体の熱伝導度をk(k)(W/(m・K))で示し、各媒体の内面側と外面側との間の温度差(K)をΔTで示す。被処理物5と容器1との間の界面の被処理物5側の伝熱係数を液相側境膜伝熱係数h(W/(m・K))とする。この場合、以下の式(15)~式(17)が成立する。
【0081】
【数11】
【0082】
従って、式(15)~式(17)に基づいて、総括伝熱係数Uは、以下の式(18)で表される。
【0083】
【数12】
【0084】
尚、境膜伝熱係数については、内部気体11側は物性値が変化しないのでhは31(W/(m・K))で一定とし、h(W/(m・K))は被処理物5の物性値の影響を考慮し、熱伝導度k(W/(m・K))を用いて以下の式(19)から推定した。
【0085】
【数13】
【0086】
そして、第1温度センサ2で測定される温度T、第2温度センサ3で測定される温度T、第3温度センサ4で測定される温度T、Tを時間的に連続して測定する。また、被処理物5の液量と液面最大高さとから、各伝熱面積A、A、Aを導出する。容器1の厚み及び熱伝導度と容器ホルダ106の厚み及び熱伝導度とを考慮して、総括伝熱係数U、U、Uを導出する。例えば、撹拌・脱泡処理システムの操作者が、入力受付部8を用いて予めA、A、A、U、U、Uの各数値を入力して、記憶部7に記憶させておくことができる。そして、演算部6aは、測定されたT、T、T、Tの各数値と、記憶部7に記憶されている上記情報と、式(1)及び式(2)とに基づいて、代表せん断速度γドットを決定する。演算部6aは、このようにして導出した代表せん断速度γドットを、例えば、記憶部7に記憶すること、情報出力部9から出力すること、他の演算処理に用いること等を行ってもよい。
【0087】
以上のように、本実施形態の撹拌・脱泡処理システムは、撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも被処理物5に蓄積される熱、被処理物5と内部気体11との間の熱収支、容器1A又は容器ホルダ106の外面を通じた被処理物5と容器外部との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、被処理物5の温度を測定する第1温度センサ2の測定結果と、内部気体11の温度を測定する第2温度センサ3の測定結果と、容器1A又は容器ホルダ106の外面の温度を測定する第3温度センサ4の測定結果とを用いて、被処理物5の代表せん断速度を導出できる。
【0088】
<第2実施形態>
第2実施形態の撹拌・脱泡処理システムは、容器1の構成が上記実施形態と異なる。以下に第2実施形態の撹拌・脱泡処理システムについて説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0089】
図11は、第2実施形態の撹拌・脱泡処理システムを示す図である。図12は、第2実施形態の容器1B(1)の構造の例を示す図である。撹拌・脱泡処理システムは、撹拌・脱泡処理装置100と、容器1Bの開口部を塞ぐ蓋10と、第1温度センサ2と、第2温度センサ3と、制御部6とを備える。制御部6は、演算処理機能、即ち、本開示の演算部6aの機能を有している。加えて、本実施形態の撹拌・脱泡処理システムは、入力受付部8と、情報出力部9と、記憶部7とを備える。そして、第1温度センサ2は容器1Bに収容される被処理物5の温度を測定し(第1温度測定工程)、第2温度センサ3は容器1Bの内部に含まれる内部気体11の温度を測定する(第2温度測定工程)。
【0090】
容器1Bは、断熱層1cを有する断熱容器である。例えば、容器1Bは、被処理物5を収容する内側容器1aと、内側容器1aの側面及び底面に非接触で内側容器1aを収容する外側容器1bと、内側容器1aと外側容器1bとの間に設けられる断熱層1cを有する。この断熱層1cは例えば空気層である。或いは、断熱層1cは、例えば減圧された層や、断熱材等が充填された層であってもよい。このような構成により、容器1Bの内側と外側との間では熱が伝達し難くなっている。つまり、被処理物5の熱は、容器1Bの内部気体11には伝達されるが、容器1Bの外側にはほとんど伝達しないと考えてよい。従って、本実施形態では、容器1B又は容器ホルダ106の外面の温度を測定する第3温度センサ4を設けていない。
【0091】
容器1Bの内側容器1aと外側容器1bは、一体形成されていてもよいし、別体で使用時に組み合わせられるようになっていてもよい。容器1Bは、内側容器1aと外側容器1bの間に設けられるスペーサ部材17を有するものであってもよい。この場合、内側容器1aと外側容器1bとの間の、スペーサ部材17が存在しない部分は空間、即ち、空気層になっている。蓋10は、例えば、内側容器1a及び外側容器1bの両方を上側から支持するような構造になっている。スペーサ部材17なしで内側容器1aの側面及び底面が外側容器1bに接触しない様に蓋10が内側容器1aを吊り下げて支持してもよい。内側容器1a及び外側容器1bの関係は適宜変更可能である。例えば、内側容器1aの開口外側に鍔を設け、その鍔が外側容器1bに係って内側容器1aが外側容器1bに支持される構造であってもよい。或いは、外側容器1bの開口内側に鍔があり、その鍔が内側容器1aに係って内側容器1aが支持される構造であってもよい。また或いは、内側容器1a及び外側容器1bの両方に鍔があり、これらの鍔が係って内側容器1aが支持される構造であってもよい。
【0092】
演算部6aは、撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも被処理物5に蓄積される熱、被処理物5と内部気体11との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、第1温度センサ2及び第2温度センサ3で測定される温度とに基づいて、被処理物5に作用する代表せん断速度を導出する(導出工程)。演算部6aは、このようにして導出した代表せん断速度γドットを、例えば、記憶部7に記憶すること、情報出力部9から出力すること、他の演算処理に用いること等を行ってもよい。
【0093】
このように、本実施形態の撹拌・脱泡処理方法は、第1温度センサ2で、容器1に収容される被処理物5の温度を測定する第1測定工程と、第2温度センサ3で、容器1の内部に含まれる内部気体11の温度を測定する第2測定工程と、撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも被処理物5に蓄積される熱、被処理物5と内部気体11との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、第1測定工程及び第2測定工程で測定される温度とに基づいて、被処理物5に作用する代表せん断速度を導出する導出工程とを含む。例えば、上記撹拌・脱泡処理方法の各工程を実行させるためのプログラムを記憶部7に予め記憶させておき、そのプログラムが実行されることで上記撹拌・脱泡処理方法が実施される。
【0094】
以下に、熱収支式と、第1温度センサ2及び第2温度センサ3で測定される温度とに基づいて、被処理物5に作用する代表せん断速度を導出する手法について説明する。
【0095】
先ず、被処理物5の熱は、容器1Bの外側にはほとんど伝達しないと考えてよいため、上記実施形態で説明した式(2)において、右辺の第2項に記載した被処理物5と容器1Bの外面のうちの側面との間の伝熱を表す「U(T-T)」と、右辺の第3項に記載した被処理物5と容器1Bの外面のうちの底面との間の伝熱を表す「U(T-T)」は本実施形態ではゼロと見なす。従って、以下の式(20)が成立する。
【0096】
【数14】
【0097】
図13は、撹拌・脱泡処理を行っている間に第1温度センサ2で測定される被処理物5の温度と第2温度センサ3で測定される内部気体11の温度との時間的な変化を測定した結果を示すグラフである。図14は、この測定結果に基づいて導出した、式(20)の「被処理物5での熱の蓄積項(即ち、液相の蓄積項)」、「被処理物5と内部気体11との間の伝熱項(即ち、気液伝熱項)」、「被処理物5の粘性消散項」、及び「代表せん断速度」の時間的な変化を示すグラフである。尚、図14の縦軸では、「被処理物5での熱の蓄積項(即ち、液相の蓄積項)」、「被処理物5と内部気体11との間の伝熱項(即ち、気液伝熱項)」、及び「被処理物5の粘性消散項」を、熱流束と記載している。
【0098】
図13に示すように、撹拌・脱泡処理中は時間経過と共に被処理物5及び内部気体11の温度が次第に上昇している。また、図14に示すように、代表せん断速度は時間経過に関わらず、ほぼ一定の値になっている。
【0099】
次に、公転速度と代表せん断速度との関係を図15に示す。撹拌・脱泡処理装置100には、株式会社写真化学からSK-300SIIの名称で販売されている装置、及び、株式会社写真化学からSK-400TRの名称で販売されている装置を使用した。SK-300SIIは公転半径Rが0.058(m)であり、SK-400TRは公転半径Rが0.087(m)である。被処理物5はシリコーンオイルであり、液量は50(mL)、粘度ηは3(Pa・s)及び30(Pa・s)の2通りである。公転速度は1000(rpm)~2000(rpm)である。自転速度/公転速度で計算される公転自転速度比は0.4である。
【0100】
図15に示すように、何れの粘度及び公転半径でも、代表せん断速度は公転速度に比例する関係が現れた。粘度が低い場合には、代表せん断速度と公転速度との関係には公転半径の影響が見られず、原点を通過した。即ち、公転速度に応じた流動が引き起こされたことがわかる。ところが、粘度が増大すると、公転半径が大きい方が代表せん断速度は大きくなり、公転速度が小さい場合はせん断速度が実質的にゼロとなることが予想された。実際に、このとき被処理物5が容器1B内で固体的に回転していることを観察により確認した。
【0101】
次に、同撹拌方法では遠心力と粘性力が流動状態を支配すると考え、自転及び公転に起因する遠心力の和と自転する容器1Bの内壁に作用する粘性力の比である無次元数Utを以下の式(21)で定義し、被処理物5の粘度、公転半径、公転速度、自転半径、公転自転速度比と流動状態の関係を系統的に理解することを試みた。即ち、Ut=遠心力/粘性力である。
【0102】
【数15】
【0103】
ここで、ωは公転角速度(rad/s)、αは公転自転速度比、r、Rは自転半径(m)及び公転半径(m)、mは被処理物5の質量(kg)、Aは撹拌・脱泡処理中の被処理物5と容器側面との間の伝熱面積(m)であり、ここにせん断応力が作用すると考える。また、代表せん断速度は自転速度に比例すると考え、無次元せん断速度γドットチルダを以下の式(22)で定義した。
【0104】
【数16】
【0105】
図16に、無次元せん断速度γドットチルダとUtとの関係を表す。具体的には、被処理物5が、粘度が1(Pa・s)、3(Pa・s)、10(Pa・s)、13(Pa・s)、30(Pa・s)、100(Pa・s)、300(Pa・s)であるシリコーンオイルである場合、被処理物5がエポキシ樹脂である場合、撹拌・脱泡処理に用いた撹拌・脱泡処理装置100が上述したSK-300SIIである場合、撹拌・脱泡処理に用いた撹拌・脱泡処理装置100が上述したSK-400TRである場合、公転自転速度比が1である場合、公転自転速度比が0.8である場合、公転自転速度比が0.6である場合など、様々な条件で測定した結果から得られた無次元せん断速度γドットチルダとUtとの関係を表す。
【0106】
図示するように、無次元せん断速度はUtの関数となり、Utの依存性から三領域に分類できることがわかった。すなわち、Ut<5の領域Iでは、遠心力より大きな粘性力が被処理物5には作用するので、遠心力を増加させることで著しく無次元せん断速度を増大させることができる。一方、Ut≧70の領域IIIでは、粘性力より大きな遠心力が被処理物5には作用しており、遠心力の増大によって無次元せん断速度の増加は期待できない。この間にある領域IIでは、無次元せん断速度に対するUtの依存性が領域Iに比べて小さく、中間領域であると考えられる。
【0107】
以上のように、本実施形態の撹拌・脱泡処理システムは、撹拌・脱泡処理を行った場合での少なくとも被処理物5に蓄積される熱、被処理物5と内部気体11との間の熱収支、及び粘性消散の関係を示す熱収支式と、被処理物5の温度を測定する第1温度センサ2の測定結果と、内部気体11の温度を測定する第2温度センサ3の測定結果とを用いて、被処理物5の代表せん断速度を導出できる。
【0108】
<第3実施形態>
第3実施形態の容器1の構造が上記実施形態と異なる。以下に第3実施形態の撹拌・脱泡処理システムについて説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0109】
図17は、第3実施形態の容器1C(1)及びその周辺の構造を示す図である。
【0110】
本実施形態では、第3温度センサ4の第2温度検出部15が容器ホルダ106の内面側(即ち、容器1Cと相対する側)に設けられる。この場合、第3温度センサ4の第2温度検出部15は、容器ホルダ106に固定され公転及び自転しつつ容器1Cの外面から放射される赤外線を検出する温度検出部である。また、第3温度センサ4の第1温度検出部16は、容器ホルダ106の底部に設けられる空間に配置されている。この場合、第3温度センサ4の第1温度検出部16は、容器ホルダ106に固定され公転及び自転しつつ容器1Cの外面から放射される赤外線を検出する温度検出部である。
【0111】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、撹拌・脱泡処理システムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。例えば、撹拌・脱泡処理装置100の構成や、容器1の構成などは適宜変更可能である。
【0112】
<2>
上記実施形態において、被処理物5は上述した材料に限定されず、様々な材料を用いることができる。
また、上記実施形態では、被処理物5が撹拌・脱泡処理中に化学反応による発熱及び吸熱を生じない材料である場合を説明したが、化学反応による発熱及び吸熱を生じる被処理物5を用いてもよい。その場合、上述した熱収支式において、撹拌・脱泡処理中の被処理物5の化学反応による発熱及び吸熱を考慮すればよい。
【0113】
<3>
上記実施形態では、第1温度センサ2及び第2温度センサ3及び第3温度センサ4が、測定対象物に接触してその温度を測定するタイプ(例えば熱電対など)である場合や、測定対象物とは非接触でその温度を測定するタイプ(例えば放射される赤外線を検出するタイプ等)である場合などを説明したが、どのタイプの温度検出部を用いるのかは適宜変更可能である。
【0114】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本開示の実施形態はこれに限定されず、本開示の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本開示は、特別な機器を設けることなく、被処理物の状態を検出可能な撹拌・脱泡処理システム及び撹拌・脱泡処理方法に利用できる。
【符号の説明】
【0116】
1(1A、1B、1C) 容器
1a 内側容器
1b 外側容器
1c 断熱層
2 第1温度センサ
3 第2温度センサ
4 第3温度センサ
5 被処理物
6a 演算部
10 蓋
11 内部気体
12 第1検出部
13 第2検出部
15 第2温度検出部
16 第1温度検出部
100 撹拌・脱泡処理装置
105 公転テーブル(公転体)
106 容器ホルダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図15
図16
図17