(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040927
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240318BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240318BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240318BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240318BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20240318BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20240318BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20240318BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20240318BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20240318BHJP
C08F 230/02 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/06
A61K8/81
A61Q19/00
A61K8/67
A61K8/92
C08K5/053
C08L91/00
C08L33/14
C08F230/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145590
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直弘
(72)【発明者】
【氏名】下瀬川 紘
(72)【発明者】
【氏名】三田地 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】板子 典史
【テーマコード(参考)】
4C083
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA122
4C083AB362
4C083AB432
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4C083CC05
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4J002AE001
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4J100CA04
4J100DA01
4J100JA61
(57)【要約】
【課題】油溶性有効成分の安定性を向上させ、べたつきがなく、さらっとした感触であり、効果実感が得られる乳化化粧料の提供。
【解決手段】成分(A):2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を有する共重合体を0.01~10質量、成分(B):油溶性有効成分を0.0001~10質量%、成分(C):炭素数3~6の多価アルコールを1~30質量%、成分(D):固形脂を1~20質量%、成分(E):水を40~90質量%を含有する乳化化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):下記の式(1)および式(2)で表される各構成単位を有する共重合体を0.001~1質量%、
成分(B):油溶性有効成分を0.0001~10質量%、
成分(C):炭素数3~6の多価アルコールを1~30質量%、
成分(D):固形脂を1~20質量%、
成分(E):水を40~90質量%を含有する乳化化粧料。
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【化2】
(式中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、mは3~21の整数を示す。)
【請求項2】
成分(F):液状油0.1~30質量%を更に含有する請求項1に記載の乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレチノールなどの油溶性有効成分を含有する乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品に用いられる油剤は、感触の調整に加え水分の蒸散抑制、皮膚の柔軟化などを目的として配合される。また、特定の油剤は油溶性有効成分として様々な機能を有することが知られている。例えば、多価不飽和脂肪酸であるリノール酸は美白効果があり、レチノールやパルミチン酸レチノールなどのビタミンA類は美白効果やシワ改善の効果があり、種々の化粧品に利用されている。
しかし、これらの油溶性有効成分は機能性が高い反面、熱や光によって酸化分解や構造の変化を生じやすく、それに伴い変臭や変退色、機能性の低下など品質の劣化を起こしやすいことも知られている。そのため、これらの酸化劣化しやすい油溶性有効成分を化粧品中で安定に配合するための検討がなされている。
【0003】
特許文献1では、リノール酸を特定のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテルにて可溶化することで、高温保管時における経時での変臭を抑制させる方法が提案されている。特許文献2では、レチノ―ル等の油溶性薬剤を固形~半固形のワックスに内包させることで、安全性、高温安定性を向上させる方法が提案されている。
【0004】
油溶性有効成分の機能を活かすための化粧料としては、オイル化粧料や乳化化粧料が挙げられる。なかでも、みずみずしさや伸びの良さなどの使用感の高さから、乳化化粧料が広く普及している。ここで油溶性有効成分の安定化のために非イオン性界面活性剤や固形脂などを用いると、べたつきや独特の感触を呈してしまい、使用感の低下を招くおそれがある。
【0005】
乳化化粧料のべたつきを抑え、さらっとした感触を付与する方法の一つとして、感触改良粉体の活用がある。特許文献3では、粉体を効果的に活用し、べたつきを抑え、さらさら感を付与する方法が提案されている。しかしながら、感触改良粉体である(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマやポリメタクリル酸メチルは架橋構造や多孔質構造を有しており、油溶性有効成分を吸油してしまい、油剤による機能が低下するおそれがあった。
【0006】
油溶性有効成分の効果を得るためには、それが含まれる化粧料を継続して使用することが重要である。そのためには消費者が継続して使用し易くするために、べたつきがなく、さらっとした使用感や、塗布後の肌上で持続的な存在感を示すような効果実感に優れていることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-168123号公報
【特許文献2】特開2009-155326号公報
【特許文献3】特開2016-6029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決すべき課題は、油溶性有効成分の安定性を向上させ、べたつきがなく、さらっとした感触であり、効果実感が得られる乳化化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねたところ、特定の共重合体、油溶性有効成分、特定の多価アルコール、固形脂、および水を組み合わせて乳化化粧料に含有させることによって、油溶性有効成分の安定性を向上させ、べたつきがなく、さらっとした感触であり、効果実感が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、成分(A):下記の式(1)および式(2)で表される各構成単位を有する共重合体を0.001~1質量%、成分(B):油溶性有効成分を0.0001~10質量%、成分(C):炭素数3~6の多価アルコールを1~30質量%、成分(D):固形脂を1~20質量%、成分(E):水を40~90質量%を含有する乳化化粧料である。
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【化2】
(式中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、mは3~21の整数を示す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の乳化化粧料によれば、油溶性有効成分の安定性を向上させ、べたつきがなく、さらっとした感触であり、効果実感が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
また、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~4」は2以上かつ4以下を表す。
【0013】
本発明の乳化化粧料は、下記の成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)を少なくとも含有する。以下、各成分について説明する。
なお、本明細書において各成分の含有量は、本発明の乳化化粧料の全量を100質量%としたときの含有量である。また、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計含有量を意味する。
【0014】
〔成分(A)〕
本発明で用いられる成分(A)は、下記の式(1)および式(2)で表される各構成単位を有する共重合体である。なお、本明細書において成分(A)を共重合体(A)とも表記する。
【0015】
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0016】
上記式(1)で示される構成単位は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位である。ここで、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイルまたはメタクリロイル」を意味する。
【0017】
【化2】
(式中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、mは3~21の整数を示す。)
【0018】
上記式(2)で示される構成単位は、(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位である。ここで、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸またはメタクリル酸」を意味する。
(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基は、炭素数4~22の直鎖または分岐のアルキル基であり、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル等が例示される。なかでも、ブチル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル等の直鎖アルキル基が好ましく、オクタデシル基がより好ましい。
mは3~21の整数であり、好ましくは5~21、より好ましくは10~21、更に好ましくは15~20の整数である。
【0019】
共重合体(A)において、上記式(1)で示される構成単位と、上記式(2)で示される構成単位のそれぞれの含有量の比(式(1)で示される構成単位]:[式(2)で示される構成単位])(n1:n2)は、モル比にて、好ましくは9:1~1:9であり、より好ましくは8:2~2:8である。
【0020】
式(1)で示される構成単位の含有量に対する式(2)で示される構成単位の含有量の比(n2/n1)(モル比)が小さすぎると、成分(B)の油溶性有効成分の安定性が低下したり、べたつきが生じたりすることがある。一方、前記比(n2/n1)が大きすぎると、成分(B)の油溶性有効成分の安定性が低下したり、効果実感が低下したりすることがある。
【0021】
共重合体(A)の重量平均分子量は、通常10,000~1,000,000であり、好ましくは30,000~900,000であり、より好ましくは50,000~800,000、更に好ましくは100,000~700,000、特に好ましくは200,000~600,000である。共重合体(A)の重量平均分子量が低すぎると、べたつきが生じることがあり、一方、共重合体(A)の重量平均分子量が高すぎると、取り扱いが困難になることがある。
なお、共重合体(A)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって測定され、ポリエチレングリコール換算の分子量で示される。
【0022】
共重合体(A)の重合形態は特に限定されず、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体が好ましい。
また、共重合体(A)は、通常、上記式(1)で示される構成単位と、上記式(2)で示される構成単位とからなる二元共重合体であるが、式(1)および式(2)で示される構成単位以外に、他の構成単位を含む共重合体であってもよい。
共重合体(A)に含まれていてもよい他の構成単位は、通常、本発明の効果に影響を与えない範囲で、共重合体(A)の構成単位となり得るものから適宜選択することができる。他の構成単位を形成する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の炭素数が1~3の低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の環状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の芳香族基を含有する(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系単量体等を挙げることができる。
これら他の構成単位は1種または2種以上を含むことができ、共重合体(A)中におけるその含有量は、式(1)および式(2)で表される構成単位の合計量に対して、好ましくは40モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下である。
【0023】
共重合体(A)は、自体公知の製造方法により製造することができる。例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、(メタ)アクリル酸アルキル、および必要に応じて上記他の構成単位に相当する単量体を含む単量体混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下、窒素等の不活性ガス雰囲気下において、溶液重合等の公知の方法により重合させて共重合体(A)を製造することができる。その際の各単量体の含有量比は、共重合体(A)中における各構成単位の所望の含有量比に相当する比とすればよい。
【0024】
本発明の乳化化粧料には、上記共重合体(A)から選ばれる1種を単独で、または2種以上を組み合わせて含有させることができる。共重合体(A)は、上記した重合方法により製造したものを用いることもできるが、「リピジュア(登録商標)-PMB(Ph10)」(ポリクオタニウム-51)、「リピジュア(登録商標)-S」、「リピジュア(登録商標)-NR」(ポリクオタニウム-61)(いずれも日油株式会社製)等の市販の製品を用いることもできる。
【0025】
本発明の乳化化粧料における共重合体(A)の含有量は、乳化化粧料全量に対して、0.001~1質量%であり、好ましくは0.01~0.7質量%、より好ましくは0.05~0.5質量%である。共重合体(A)の含有量が少なすぎると、油溶性有効成分(B)の安定化が不十分となり、また乳化化粧料のべたつきが生じたり、効果実感が低下したりすることがある。また共重合体(A)の含有量が多すぎると、使用感が低下することがある。
【0026】
〔成分(B)〕
本発明に用いられる成分(B)は油溶性有効成分である。「油溶性」とは、水への溶解性が著しく低く、例えば、室温(25℃)にて水100gに対する溶解度が1g未満であること、またはオクタノール/水分配係数(LogPow)が1より大きいことを意味する。「有効成分」とは、目的の作用効果を奏する主たる成分を意味する。なお、本明細書において成分(B)を油溶性有効成分(B)とも表記する。
【0027】
油溶性有効成分(B)としては特に制限はなく、例えば、モノステアリン酸アスコルビル、モノパルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、トリイソパルミチン酸アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル等のビタミンCの油溶性誘導体;トコフェロール、酢酸トコフェノール等のビタミンEとその誘導体;レチノール、レチナール、レチノイン酸、パルミチン酸レチノール等のビタミンAおよびその誘導体;リノール酸、オレイン酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;セラミド或いはその類似物質;グリチルレチン酸ステアリル;イソプロピルメチルフェノール;ヘパリン類似物質等が挙げられる。中でも、有効成分としての効果が高く、品質が劣化しやすい、ビタミンA,ビタミンC,ビタミンEおよびこれらの誘導体である油溶性ビタミン類が好ましく、ビタミンAおよびその誘導体がより好ましく、レチノールが特に好ましい。油溶性有効成分(B)は、一種または二種以上用いることができる。
【0028】
本発明の乳化化粧料における油溶性有効成分(B)の含有量は、乳化化粧料全量に対して、0.0001~10質量%であり、好ましくは0.001~5質量%、より好ましくは0.01~1質量%である。油溶性有効成分(B)の含有量が少なすぎると、油溶性有効成分(B)の効果が得られ難くなることがある。また油溶性有効成分(B)の含有量が多すぎると、油溶性有効成分(B)によるべたつきにより使用感が低下したり、刺激を感じやすくなったりすることがある。
【0029】
〔成分(C)〕
本発明で用いられる成分(C)は炭素数3~6の多価アルコールである。成分(C)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書において成分(C)を多価アルコール(C)とも表記する。
【0030】
具体的な炭素数3~6の多価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。なかでも、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンが好ましく、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンがより好ましい。
【0031】
本発明の乳化化粧料における多価アルコール(C)の含有量は、乳化化粧料全量に対して、1~30質量%であり、好ましくは3~25質量%、より好ましくは5~20質量%である。多価アルコール(C)の含有量が少なすぎると、効果実感が得られ難くなったり、油溶性有効成分(B)の安定性が低下したりすることがある。また多価アルコール(C)の含有量が多すぎると、べたつきにより使用感が低下することがある。
【0032】
〔成分(D)〕
本発明で用いられる成分(D)は固形脂である。ここで、固形脂には半固形脂も含まれる。なお、固形とは25℃で流動性がないものをいい、半固形とは1気圧、20℃で応力の存在しない環境では殆ど変形しないが、若干の応力(10~100g/cm2程度)がかかると変形するものをいう。固形脂としては、一般的な化粧料に用いられるものであれば制限されず、天然由来のものでも合成のものでも構わない。かかる固形脂としては、ロウ類および脂肪酸エステル類から選択されるものが好ましく、具体的には、シア脂、ミツロウがより好ましい。なお、本明細書において成分(D)を固形脂(D)とも表記する。
成分(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0033】
成分(D)の含有量は、乳化化粧料全量に対して、1~20質量%であり、2~17質量%が好ましく、4~15質量%がより好ましい。成分(D)の含有量が少なすぎると、効果実感が不十分となることがある。成分(D)の含有量が多すぎると、べたつきが生じて使用感が低下することがある。
【0034】
〔成分(E)〕
本発明で用いられる成分(E)は水である。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、RO水、水道水、工業用水が挙げられ、イオン交換水であることが好ましい。なお、本明細書において成分(E)を水(E)とも表記する。
本発明における水(E)の含有量は、乳化化粧料全量に対して、40~90質量%であり、45~80質量%が好ましく、45~70質量%がより好ましい。
【0035】
〔成分(F)〕
本発明の乳化化粧料は、使用感の更なる改善を目的として、成分(F)として液状油を更に含有することが好ましい。なお、本明細書において成分(F)を液状油(F)とも表記する。
液状油(F)としては一般的な化粧料に用いられるもので、25℃で液状のものであれば特に制限されずに使用することができる。かかる液状油としては、例えば、オリーブ油、コメヌカ油、トウモロコシ油、ホホバ油等の植物油;スクワラン、水添ポリイソブテン等の炭化水素油;ミリスチン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸エチルヘキシル等の脂肪酸と一価のアルコールとのエステル油;トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、テトラエチルヘキサン酸エリスリチル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル等の脂肪酸と多価アルコールとのエステル油;ジメチコン、シクロペンタシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等のシリコーン油;等が挙げられる。成分(F)は一種または二種以上用いることができる。
【0036】
これらの液状油(F)の中でも、スクワラン、水添ポリイソブテン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、テトラエチルヘキサン酸エリスリチル、ジメチコン、シクロペンタシロキサンから選択される一種または二種以上用いることが好ましい。
【0037】
本発明の乳化化粧料が成分(F)を含有する場合、成分(F)の含有量は、乳化化粧料全量に対して、0.1~30質量%であり、0.5~25質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましい。成分(F)の含有量が上記範囲内であれば、液状油の効果を十分に発揮することができ、使用感を更に改善することができる。
【0038】
〔その他の任意成分〕
本発明の乳化化粧料は、更に必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記の成分(A)~成分(F)以外の他の成分を含有させることができる。他の成分は、化粧料に常用されるものが好ましく、例えば、エタノールなどの低級アルコール、糖アルコールおよびその誘導体、カルボキシビニルポリマーなどの増粘剤、糖類、界面活性剤、有機塩、無機塩、pH調整剤、キレート剤、抗酸化剤、殺菌剤、血流促進剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類(但し、油溶性有効成分(B)に該当するものを除く。)、アルギニンなどのアミノ酸、色素、香料などが挙げられ、本発明の性能を損なわない範囲の量を配合することができる。例えば、上記の成分(A)~成分(F)を除く他の成分の含有量は、乳化化粧料全量に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0039】
(乳化化粧料)
本発明の乳化化粧料においては、共重合体(A)と油溶性有効成分(B)とが会合体として油滴を形成する。
本発明において、乳化化粧料の油溶性有効成分(B)の安定化やべたつきの改善を目的として、共重合体(A)と油溶性有効成分(B)と、多価アルコール(C)または水(E)とをあらかじめ撹拌、混合しておくことが好ましく、共重合体(A)と油溶性有効成分(B)と多価アルコール(C)とをあらかじめ撹拌、混合しておくことがより好ましい。
【0040】
成分(A)、(B)、(C)または(E)の撹拌、混合方法は特に限定されず、公知の撹拌、混合方法で行うことができ、スターラ、インペラー攪拌、ホモミキサなどの通常の乳化装置のほかに、マントン-ゴーリン型高圧ホモジナイザ、ジェット水流反転型高圧乳化機、マイクロフルイダイザ、ナノマイザ、スターバースト、湿式微粒化装置などの高圧乳化機も使用でき、これらのうち1つを単独で、または2つ以上を組み合わせることができる。油溶性有効成分(B)の安定化の観点から、強いせん断力を与えて油滴を小粒径化することが好ましく、せん断力は10MPa以上が好ましく、30MPa以上がより好ましく、50MPa以上が更に好ましい。
【0041】
(乳化化粧料の調製方法)
本発明の乳化化粧料の調製方法は特に限定されず、順相乳化、転相乳化、液晶乳化、D相乳化など通常の乳化法により油中水型乳化化粧料もしくは水中油型乳化化粧料を調製することができる。
【実施例0042】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0043】
(ポリマの重量平均分子量の測定)
メタノール/クロロホルム(重量比4/6)を溶離液とし、単分散ポリメチルメタクリレートを標準物質として、屈折率を用いて検出したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により重量平均分子量を評価した。
【0044】
(共重合体の合成)
合成例1
MPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)3. 57g、オクタデシルメタクリレート(C18MA)16. 43g(単量体組成モル比、MPC/C18MA=30/70)をn-ブタノール180gに溶解し4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹込んだ後、60℃でアゾビスイソブチロニトリル0.82gを加えて8時間重合反応させた。
重合液を3リットルのアセトン中にかき混ぜながら滴下し、析出した沈殿を濾過し、48時間室温で真空乾燥を行って、粉末15. 8gを得た。得られた共重合体は、重量平均分子量で326,000であった。これをポリマー1とした。
【0045】
合成例2~4
合成例1のポリマー1の合成に準じて、表1に示すように単量体の種類、組成比を変更し、合成例1と同様の操作により、ポリマー2~ポリマー4を得た。得られた共重合体の組成比、重量平均分子量を表1に示した。なお、ポリマー3の合成で用いたC2MAはエチルメタクリレートである。
【0046】
【0047】
(乳化化粧料の調製)
下記の表2(実施例)および表3(比較例)に示す成分(A)~成分(E)およびその他の任意成分(ポリアクリル酸アミド)、また一部の実施例では更に成分(F)を乳化させて合計100質量%とし、水中油型の乳化化粧料を調製した。表中の各成分の含有量は、質量%にて示す。
実施例13では、成分(A)、(B)および(C)を容器にとり、室温で卓上ホモミキサ(みづほ工業社製)を用いて予備混合した。これを室温でシステマイザ(ミューチュアル社製、C17)を用いて180MPaの圧力で2回処理することにより原料プレミックスを得た。この原料プレミックスを実施例13の成分(D)、(F)とポリアクリル酸アミドからなる乳化物に添加し、室温で攪拌棒を用いて攪拌し、乳化化粧料を得た。
上記実施例および比較例で得られた乳化化粧料について、下記のとおりの評価を行った。その結果を各表に示す。なお、以下では油溶性有効成分を油剤と表記することもある。
【0048】
(高温保管によるレチノール保存安定性の評価)
得られた乳化化粧料10gをスクリュー管に保管し、50℃の条件で保管した。保管開始から1か月後に取り出し、レチノールの量をHPLCで測定した。
保管開始前に対する油剤量を油剤の残存率とし、残存率を以下のように評価した。なお、残存率は少数第一位の数字を四捨五入して整数値とした。
◎:80%以上残存していた。
○:70~79%残存していた。
△:60~69%残存していた。
×:59%以下残存していた。
【0049】
(べたつきのなさの評価)
パネリスト20名(25才~45才、男女10名ずつ)が、得られた乳化化粧料を目尻周辺に塗布し、使用後のべたつきを下記の基準で評価した。詳細には、20名の合計点が35点以上の場合を「◎」(優良)とし、25点~34点の場合を「○」(良)、15点~24点の場合を「△」(可)、14点以下の場合を「×」(不良)とした。
2点:使用後、べたつきがなく、みずみずしさを感じた場合。
1点:使用後、べたつきが少なく、みずみずしさを少し感じた場合。
0点:使用後、べたつきがあり、みずみずしさを感じなかった場合。
【0050】
(効果実感の評価)
パネリスト20名(25才~45才、男女10名ずつ)が、得られた乳化化粧料を目尻周辺に塗布し、60分後の存在感を効果実感として、下記の基準で評価した。詳細には、20名の合計点が35点以上の場合を「◎」(優良)とし、25点~34点の場合を「○」(良)、15点~24点の場合を「△」(可)、14点以下の場合を「×」(不良)とした。
2点:指で触れると被膜感やしっとり感があり、存在感を感じた場合。
1点:指で触れると被膜感やしっとり感が少しあり、存在感を少し感じた場合。
0点:指で触れると被膜感やしっとり感がなく、存在感を感じなかった場合。
【0051】
【0052】
【0053】
表2に示されるように、実施例1~12の乳化化粧料は使用後のべたつきがなく、みずみずしさを感じることができるとともに、化粧料の存在感を感じることができ、高温での保管によっても油溶性有効成分であるレチノールの品質を保持することができた。実施例13の乳化化粧料は使用感の良好さはそのままに、高温での保管によるレチノールの保存安定性を更に向上させることができた。
【0054】
一方、表3から明らかなように、本発明の必須要件のいずれかを満たさない比較例では、レチノールの保存安定性、べたつきのなさ、効果実感のいずれかの面で劣っており、本発明の目的を達成できなかった。
すなわち、比較例1では、成分(A)を含まないため、レチノールの保存安定性が著しく低く、べたつきのなさ、効果実感も低かった。
比較例2および3では、成分(A)が本発明に規定のものと異なるため、レチノールの保存安定性が低く、べたつきのなさも低い例もあった。
比較例4では、成分(A)が異なるため、レチノールの保存安定性が低く、べたつきのなさ、効果実感も低かった。
比較例5では、成分(C)が含有されていないので、レチノールの保存安定性が低く、効果実感も低かった。
比較例6では、成分(D)が含有されていないので、乳化物を得ることができなかった。
【0055】
以下、本発明の乳化化粧料のその他の処方例を実施例として挙げる。なお、これらの実施例の乳化化粧料についても、上記のレチノールの保存安定性、べたつきのなさ、効果実感について各項目を評価したところ、いずれの実施例においても優れた特性を有しており良好な結果を得た。
【0056】
実施例14(O/Wクリームの調製)
表4に記載された成分を同表に記載された量で80℃まで加熱分散した後、室温まで冷却することで調製した。なお、表4中の数字は質量%を表す。
【0057】
【表4】
※2:日油社製、Lipiedure―S
※3:日油社製、Lipiedure―PMB(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体の含有量5%品)
【0058】
実施例15(美容液の調製)
表5に記載された成分を同表に記載された量で80℃まで加熱分散した後、室温まで冷却することで調製した。なお、表5中の数字は質量%を表す。
【0059】
【表5】
※2:日油社製、Lipiedure―S
※3:日油社製、Lipiedure―PMB(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体の含有量5%品)
【0060】
実施例16(W/Oクリームの調製)
表6に記載された成分を同表に記載された量で80℃まで加熱分散した後、室温まで冷却することで調製した。なお、表6中の数字は質量%を表す。
【0061】
【表6】
※2:日油社製、Lipiedure―S
※3:日油社製、Lipiedure―PMB(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体の含有量5%品)