(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040932
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】水性化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20240318BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20240318BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240318BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240318BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/67
A61K8/34
A61K8/86
A61Q19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145595
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 拓幸
(72)【発明者】
【氏名】板子 典史
(72)【発明者】
【氏名】三田地 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】村田 朱里
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC892
4C083AD042
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD131
4C083AD132
4C083AD202
4C083AD352
4C083AD532
4C083AD621
4C083AD622
4C083CC04
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】油溶性有効成分の保存安定性に優れ、使用時のべたつきが少なく、良好な浸透感および保湿感を有し、外観の透明性が高い水性化粧料の提供。
【解決手段】成分(A):2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を有する共重合体を0.0005~5質量%、成分(B):油溶性有効成分を0.0001~1質量%、成分(C):炭素数3~6の多価アルコールを1~20質量%、成分(D):グリセリンのアルキレンオキシド付加誘導体およびメチルグルコシドのアルキレンオキシド付加誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を0.1~15質量%、成分(E):水を70~98質量%を含有する水性化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):下記の式(1)および式(2)で表される各構成単位を有する共重合体を0.0005~5質量%、
成分(B):油溶性有効成分を0.0001~1質量%、
成分(C):炭素数3~6の多価アルコールを1~20質量%、
成分(D):下記の式(3)で表されるアルキレンオキシド付加誘導体、および式(4)で表されるアルキレンオキシド付加誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を0.1~15質量%、
成分(E):水を70~98質量%
を含有する水性化粧料。
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【化2】
(式中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、mは3~21の整数を示す。)
Gly-[O{(PO)
a(EO)
b}-(BO)
c-H]
3 (3)
[式(3)中、Glyはグリセリンから水酸基を除いた残基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基、BOはオキシブチレン基を示し、a、bおよびcはそれぞれPO、EOおよびBOの平均付加モル数を示し、a+bが1~30、cが1~5であり、POとEOの含有量比(PO/EO)が質量比で1/5~5/1である。]
G-{O(EO)
x(PO)
y(BO)
z-H}
4 (4)
〔式(4)中、Gはメチルグルコシドから水酸基を除いた残基である。EO、POおよびBOは、それぞれ、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基であり、ブロック付加でもランダム付加でもよい。x、yおよびzは、それぞれ、メチルグルコシドの水酸基1個あたりのEO、POおよびBOの平均付加数であり、xが0~10であり、yが0~10であり、zが0~2であり、x、yおよびzの合計が2~12である。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレチノールなどの油溶性有効成分を含有する水性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油溶性有効成分、例えばレチノールは美白やシワ改善、肌荒れ改善等の効果を有することが知られており、これを配合した化粧水やクリーム等の種々の化粧品が開発されている。
一方で、レチノールなどの油溶性有効成分は光や熱、酸素により分解し、その有効性が失われてしまうことがある。そこで、油溶性有効成分をより安定に配合するために油分を多く含有する油性化粧料が用いられることがある。しかし、このような製剤ではべたつきや伸びの悪さが生じることがあるため、部分用クリーム等には適するが、全顔に用いるには使用感上の問題から適さない場合があった。よって、べたつきがなくさっぱりとした感触であり、全顔など広範囲に使用しやすい油溶性有効成分含有水性化粧料が求められている。
【0003】
ここで、化粧水等の水性化粧料は一般的に水と多価アルコール類のような保湿剤とから構成されており、使用した際の効果として保湿感が求められる。一方で、保湿感向上のために保湿剤を高濃度に配合すると、乾燥した際にべたつきが生じる場合がある。
【0004】
また、保湿効果や特有の機能の発揮を目的として水性化粧料に油剤を配合する際、十分な量を配合するとべたつきが生じることがある。加えて、製剤外観の透明性が損なわれてしまうこともある。しかし、可溶化剤である非イオン性界面活性剤の配合量を増やすと、透明性は改善される一方で、肌に塗布する際の馴染みが悪くなったり、べたつきが生じてしまったりするおそれがある。
【0005】
これらのような課題に対し、現在まで種々の検討がなされている。例えば特許文献1では、油剤を(カプリル酸/カプリン酸/コハク酸)トリグリセリルに相溶させることにより空気との接触を低減させ、酸化劣化を防止する方法が提案されている。また特許文献2では、化粧水組成物において、リポソームにレチノールを包含させ、グリセリンおよびポリエチレングリコールと併用することにより、べたつき感を軽減しつつ十分な保湿効果を与える方法を提案している。しかしながら、水性化粧料において優れた油溶性有効成分の保存安定性、べたつきのなさ、良好な浸透感、保湿感および外観の透明性を同時に満足することは依然として困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-222637号公報
【特許文献2】特開2019-99465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決すべき課題は、油溶性有効成分の保存安定性に優れ、使用時のべたつきが少なく、良好な浸透感および保湿感を有し、外観の透明性が高い水性化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねたところ、特定の共重合体、油溶性有効成分、特定の多価アルコール、特定のアルキレンオキシド付加誘導体、および水を組み合わせて水性化粧料に含有させることによって、油溶性有効成分の保存安定性に優れ、使用時のべたつきが少なく、良好な浸透感および保湿感を有し、外観の透明性が高くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、成分(A):下記の式(1)および式(2)で表される各構成単位を有する共重合体を0.0005~5質量%、成分(B):油溶性有効成分を0.0001~1質量%、成分(C):炭素数3~6の多価アルコールを1~20質量%、成分(D):下記の式(3)で表されるアルキレンオキシド付加誘導体、および式(4)で表されるアルキレンオキシド付加誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を0.1~15質量%、成分(E):水を70~98質量%を含有する水性化粧料である。
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【化2】
(式中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、mは3~21の整数を示す。)
Gly-[O{(PO)
a(EO)
b}-(BO)
c-H]
3 (3)
[式(3)中、Glyはグリセリンから水酸基を除いた残基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基、BOはオキシブチレン基を示し、a、bおよびcはそれぞれPO、EOおよびBOの平均付加モル数を示し、a+bが1~30、cが1~5であり、POとEOの含有量比(PO/EO)が質量比で1/5~5/1である。]
G-{O(EO)
x(PO)
y(BO)
z-H}
4 (4)
〔式(4)中、Gはメチルグルコシドから水酸基を除いた残基である。EO、POおよびBOは、それぞれ、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基であり、ブロック付加でもランダム付加でもよい。x、yおよびzは、それぞれ、メチルグルコシドの水酸基1個あたりのEO、POおよびBOの平均付加数であり、xが0~10であり、yが0~10であり、zが0~2であり、x、yおよびzの合計が2~12である。〕
【発明の効果】
【0010】
本発明の水性化粧料は、油溶性有効成分の保存安定性に優れ、使用時のべたつきが少なく、良好な浸透感および保湿感を有し、外観の透明性が高くなるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
また、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~4」は2以上かつ4以下を表す。
【0012】
本発明の水性化粧料は、下記の成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)を少なくとも含有する。以下、各成分について説明する。
なお、本明細書において各成分の含有量は、本発明の水性化粧料の全量を100質量%としたときの含有量である。また、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計含有量を意味する。
【0013】
〔成分(A)〕
本発明で用いられる成分(A)は、下記の式(1)および式(2)で表される各構成単位を有する共重合体である。なお、本明細書において成分(A)を共重合体(A)とも表記する。
【0014】
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0015】
上記式(1)で示される構成単位は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位である。ここで、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイルまたはメタクリロイル」を意味する。
【0016】
【化2】
(式中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、mは3~21の整数を示す。)
【0017】
上記式(2)で示される構成単位は、(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位である。ここで、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸またはメタクリル酸」を意味する。
(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基は、炭素数4~22の直鎖または分岐のアルキル基であり、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル等が例示される。なかでも、ブチル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル等の直鎖アルキル基が好ましく、オクタデシル基がより好ましい。
mは3~21の整数であり、好ましくは5~21、より好ましくは10~21、更に好ましくは15~20の整数である。
【0018】
共重合体(A)において、上記式(1)で示される構成単位と、上記式(2)で示される構成単位のそれぞれの含有量の比(式(1)で示される構成単位]:[式(2)で示される構成単位])(n1:n2)は、モル比にて、好ましくは9:1~1:9であり、より好ましくは8:2~2:8である。
【0019】
式(1)で示される構成単位の含有量に対する式(2)で示される構成単位の含有量の比(n2/n1)(モル比)が小さすぎると、成分(B)の安定性が低下したり、水性化粧料の透明性が低下したりすることがある。一方、前記比(n2/n1)が大きすぎても、成分(B)の安定性が低下したり、水性化粧料の透明性が低下したりすることがある。
【0020】
共重合体(A)の重量平均分子量は、通常10,000~1,000,000であり、好ましくは30,000~900,000であり、より好ましくは50,000~800,000、更に好ましくは100,000~700,000、特に好ましくは200,000~600,000である。共重合体(A)の重量平均分子量が低すぎると、べたつきが生じることがあり、一方、共重合体(A)の重量平均分子量が高すぎると、取り扱いが困難になることがある。
なお、共重合体(A)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって測定され、ポリエチレングリコール換算の分子量で示される。
【0021】
共重合体(A)の重合形態は特に限定されず、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体が好ましい。
また、共重合体(A)は、通常、上記式(1)で示される構成単位と、上記式(2)で示される構成単位とからなる二元共重合体であるが、式(1)および式(2)で示される構成単位以外に、他の構成単位を含む共重合体であってもよい。
共重合体(A)に含まれていてもよい他の構成単位は、通常、本発明の効果に影響を与えない範囲で、共重合体(A)の構成単位となり得るものから適宜選択することができる。他の構成単位を形成する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の炭素数が1~3の低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の環状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の芳香族基を含有する(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系単量体等を挙げることができる。
これら他の構成単位は1種または2種以上を含むことができ、共重合体(A)中におけるその含有量は、式(1)および式(2)で表される構成単位の合計量に対して、好ましくは40モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下である。
【0022】
共重合体(A)は、自体公知の製造方法により製造することができる。例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、(メタ)アクリル酸アルキル、および必要に応じて上記他の構成単位に相当する単量体を含む単量体混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下、窒素等の不活性ガス雰囲気下において、溶液重合等の公知の方法により重合させて共重合体(A)を製造することができる。その際の各単量体の含有量比は、共重合体(A)中における各構成単位の所望の含有量比に相当する比とすればよい。
【0023】
本発明の水性化粧料には、上記共重合体(A)から選ばれる1種を単独で、または2種以上を組み合わせて含有させることができる。共重合体(A)は、上記した重合方法により製造したものを用いることもできるが、「リピジュア(登録商標)-PMB(Ph10)」(ポリクオタニウム-51)、「リピジュア(登録商標)-S」、「リピジュア(登録商標)-NR」(ポリクオタニウム-61)(いずれも日油株式会社製)等の市販の製品を用いることもできる。
【0024】
本発明の水性化粧料における共重合体(A)の含有量は、水性化粧料全量に対して、0.0005~5質量%であり、好ましくは0.001~1質量%、より好ましくは0.005~0.5質量%である。共重合体(A)の含有量が少なすぎると、成分(B)の安定性が低下したり、水性化粧料の透明性が低下したりすることがある。共重合体(A)の含有量が多すぎると、べたつきが生じたり、浸透感や透明性が低下したりすることがある。
【0025】
〔成分(B)〕
本発明で用いられる成分(B)は油溶性有効成分である。「油溶性」とは、水への溶解性が著しく低く、例えば、室温(25℃)にて水100gに対する溶解度が1g未満であること、またはオクタノール/水分配係数(Log Pow)が1より大きいことを意味する。「有効成分」とは、目的の作用効果を奏する主たる成分を意味する。以下、成分(B)を油溶性有効成分(B)とも表記する。
【0026】
油溶性有効成分(B)としては特に制限はなく、例えば、モノステアリン酸アスコルビル、モノパルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、トリイソパルミチン酸アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル等のビタミンCの油溶性誘導体;トコフェロール、酢酸トコフェノール等のビタミンEとその誘導体;レチノール、レチナール、レチノイン酸、パルミチン酸レチノール等のビタミンAおよびその誘導体;リノール酸、オレイン酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;セラミド或いはその類似物質;グリチルレチン酸ステアリル;イソプロピルメチルフェノール;ヘパリン類似物質等が挙げられる。中でも、有効成分としての効果が高く、品質が劣化しやすい、ビタミンA,ビタミンC,ビタミンEおよびこれらの誘導体である油溶性ビタミン類が好ましく、ビタミンAおよびその誘導体がより好ましく、レチノールが特に好ましい。油溶性有効成分(B)は、一種または二種以上用いることができる。
【0027】
本発明の水性化粧料における油溶性有効成分(B)の含有量は、水性化粧料全量に対して、0.0001~1質量%であり、好ましくは0.001~0.5質量%、より好ましくは0.005~0.05質量%である。油溶性有効成分(B)の含有量が少なすぎると、油溶性有効成分(B)の効果が得られ難くなることがある。また油溶性有効成分(B)の含有量が多すぎると、べたつきが生じたり、刺激を感じやすくなったりすることがある。
【0028】
〔成分(C)〕
本発明で用いられる成分(C)は炭素数3~6の多価アルコールである。成分(C)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書において成分(C)を多価アルコール(C)とも表記する。
【0029】
具体的な炭素数3~6の多価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。なかでも、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンが好ましく、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンがより好ましい。
【0030】
本発明の水性化粧料における多価アルコール(C)の含有量は、水性化粧料全量に対して、1~20質量%であり、好ましくは3~15質量%、より好ましくは5~10質量%である。多価アルコール(C)の含有量が少なすぎると、保湿感や水性化粧料の透明性が低下したりすることがある。また多価アルコール(C)の含有量が多すぎると、べたつきが生じることがある。
【0031】
〔成分(D)〕
成分(D)は下記の式(3)で表されるグリセリンのアルキレンオキシド付加誘導体(d1)、および式(4)で表されるメチルグルコシドのアルキレンオキシド付加誘導体(d2)からなる群より選択される1種または2種以上のアルキレンオキシド付加誘導体である。
【0032】
Gly-[O{(PO)a(EO)b}-(BO)c-H]3 (3)
【0033】
式(3)中、POで示されるオキシプロピレン基およびBOで示されるオキシブチレン基としては、直鎖または分岐鎖状のいずれでもよいが、1,2-プロピレンオキシドおよび1,2-ブチレンオキシドによりそれぞれ得られるオキシプロピレン基およびオキシブチレン基が好ましい。
【0034】
式(3)中、POで示されるオキシプロピレン基およびEOで示されるオキシエチレン基について、グリセリンの一水酸基あたりの各平均付加モル数の合計(a+b)は1~30であり、好ましくは2~20であり、より好ましくは3~10である。BOで示されるオキシブチレン基について、グリセリンの一水酸基あたりの平均付加モル数cは1~5であり、好ましくは1~3であり、より好ましくは1~2である。
式(3)で表されるグリセリンのアルキレンオキシド付加誘導体(d1)において、POで示されるオキシプロピレン基とEOで示されるオキシエチレン基の含有量比(PO/EO)は質量比で1/5~5/1であり、好ましくは1/2~4/1であり、より好ましくは1/2~3/1である。
また、オキシプロピレン基およびオキシエチレン基は、ランダム状、ブロック状のいずれの形態でグリセリンの水酸基に付加されていても良いが、高い浸透感を得るには、ランダム状に付加されていることが好ましい。オキシブチレン基は、アルキレンオキシド鎖の末端に、ブロック状に付加される。
【0035】
式(3)で表されるグリセリンのアルキレンオキシド付加誘導体(d1)は、自体公知のアルキレンオキシド付加反応により適宜合成したものを用いることができるが、日油株式会社より提供されている「ウィルブライド S-753」(日油株式会社製、式(3)中、a+b=4.3、c=1であり、POとEOとの含有質量比(PO/EO)=4/5である)等の市販の製品を用いることもできる。
【0036】
G-{O(EO)x(PO)y(BO)z-H}4 (4)
【0037】
上記式(4)は、メチルグルコシドの四つの水酸基のそれぞれに、EO、POおよびBOからなる群から選ばれる少なくとも一つが付加していることを示す。なお、xが0であるとは、EOが付加していないことを意味する。yおよびzも同様の意味である。
式(4)では「-(EO)x(PO)y(BO)z-」と記載するが、本発明は、このようなEO、POおよびBOの結合順序に限定されず、他の結合順序を有するアルキレンオキシド付加誘導体を使用する態様も包含する。例えば「-(PO)y(EO)x(BO)z-」のような順序の構造を有するアルキレンオキシド付加誘導体を使用する態様も、本発明は包含する。
式(4)では「-(EO)x(PO)y(BO)z-」と記載するが、2種以上のオキシアルキレン基が存在する場合は、それらは、ブロック付加でもランダム付加でもよい。すなわち、本発明は、(i)EO、POおよびBOが、それぞれ、ブロック付加している構造だけでなく、(ii)EO、POおよびBOが、それぞれランダム付加している構造、(iii)EO、POおよびBOが、それぞれ部分的にブロック付加し、部分的にランダム付加している構造、並びに(iv)EO、POおよびBOの少なくとも1種がブロック付加し、残りがランダム付加している構造を有するアルキレンオキシド付加誘導体を使用する態様も包含する。
【0038】
また、式(4)中、xで示されるオキシエチレン基(EO)の平均付加モル数は0~10であり、好ましくは1~7であり、より好ましくは2~5である。yで示されるオキシプロピレン基(PO)の平均付加モル数は0~10であり、好ましくは2~8であり、より好ましくは2~5である。zで示されるオキシブチレン基の平均付加モル数は0~2であり、好ましくは0である。x、yおよびzの合計(即ち、x+y+z)は、2~12であり、好ましくは2~7であり、より好ましくは2~4である。
【0039】
式(4)で表されるメチルグルコシドのアルキレンオキシド付加誘導体(d2)は、自体公知のグルコースへのアルキレンオキシド付加反応により適宜合成したものを用いることができるが、「マクビオブライド(登録商標) MG-10E 」(日油株式会社製、式(4)中、x=2.5、y=0 、z=0)、「マクビオブライド(登録商標) MG-20P」(日油株式会社製、式(4)中、x=0、y=5、z=0)等の市販の製品を用いることもできる。
【0040】
本発明においては、成分(D)として、上記したグリセリンのアルキレンオキシド付加誘導体(d1)、およびメチルグルコシドのアルキレンオキシド付加誘導体(d2)からなる群より選択される1種または2種以上のアルキレンオキシド付加誘導体を用いることができる。本発明において、水性化粧料の浸透感や保湿感の改善を目的として、グリセリンのアルキレンオキシド付加誘導体(d1)、およびメチルグルコシドのアルキレンオキシド付加誘導体(d2)を併用することが好ましい。併用する場合、グリセリンのアルキレンオキシド付加誘導体(d1)、およびメチルグルコシドのアルキレンオキシド付加誘導体(d2)の含有量の比(d1:d2)は、質量比にて、好ましくは9:1~1:9であり、より好ましくは8:2~2:8である。
【0041】
本発明の水性化粧料における成分(D)の含有量は、水性化粧料全量に対して、0.1~15質量%であり、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは1~5質量%である。成分(D)の含有量が少なすぎると、浸透感や保湿感が低下することがある。また成分(D)の含有量が多すぎると、油溶性有効成分(B)の安定性や浸透感が低下したり、べたつきが生じたりすることがある。
【0042】
〔成分(E)〕
本発明の水性化粧料は成分(E)として水を必須成分として含有する。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、RO水、水道水、工業用水が挙げられ、イオン交換水であることが好ましい。なお、本明細書において成分(E)を水(E)とも表記する。
水(E)は、成分(A)~成分(D)および任意に含有し得る成分を所定量に調整する量にて用いられる。具体的には、本発明の水性化粧料における水(E)の含有量は、水性化粧料全量に対して、70~98質量%であり、好ましくは75~95質量%であり、より好ましくは80~90質量%である。
【0043】
〔その他の任意成分〕
本発明の水性化粧料は、さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記の成分(A)~成分(E)以外の他の成分を含有させることができる。他の成分は、化粧料に常用されるものが好ましく、例えば、エタノールなどの低級アルコール、糖アルコールおよびその誘導体、カルボキシビニルポリマなどの増粘剤、糖類、界面活性剤、有機塩、無機塩、pH調整剤、キレート剤、抗酸化剤、殺菌剤、血流促進剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類(但し、油溶性有効成分(B)に該当するものを除く。)、アルギニンなどのアミノ酸、色素、香料などが挙げられ、本発明の性能を損なわない範囲の量を配合することができる。例えば、上記の成分(A)~成分(E)を除く他の成分の含有量は、水性化粧料全量に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0044】
(水性化粧料)
本発明の水性化粧料においては、共重合体(A)と油溶性有効成分(B)とが会合体として油滴を形成し、多価アルコール(C)もしくは水(E)の単独溶媒中、または多価アルコール(C)と水(E)との混合溶媒中に分散する形態をとる。
本発明において、水性化粧料中の油溶性有効成分(B)の安定化や透明性の改善を目的として、共重合体(A)と油溶性有効成分(B)とを、多価アルコール(C)もしくは水(E)の単独溶媒中、または多価アルコール(C)と水(E)との混合溶媒中であらかじめ撹拌、混合しておくことが好ましく、共重合体(A)と油溶性有効成分(B)と多価アルコール(C)とをあらかじめ撹拌、混合しておくことがより好ましい。
【0045】
撹拌、混合方法は特に限定されず、公知の撹拌、混合方法で行うことができ、スターラ、インペラー攪拌、ホモミキサなどの通常の乳化装置のほかに、マントン-ゴーリン型高圧ホモジナイザ、ジェット水流反転型高圧乳化機、マイクロフルイダイザ、ナノマイザ、スターバースト、湿式微粒化装置などの高圧乳化機も使用でき、これらのうち1つを単独で、または2つ以上を組み合わせることができる。
油溶性有効成分(B)の安定化の観点から、強いせん断力を与えて油滴を小粒径化することが好ましく、せん断力は10MPa以上が好ましく、30MPa以上がより好ましく、50MPa以上がさらに好ましい。
【0046】
本発明の水性化粧料は、溶液状、懸濁液状、乳状、ゲル状、ミスト状等の形態で、化粧水、乳液、美容液等の皮膚化粧料として好適に提供することができ、当分野で周知の一般的な製造方法、たとえば、第十七改正日本薬局方製剤総則[3]製剤各条の「外用液剤」、「ゲル剤」および「スプレー剤」等に記載された方法に準じて製造することができる。
【実施例0047】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0048】
(ポリマの重量平均分子量の測定)
メタノール/クロロホルム(重量比4/6)を溶離液とし、単分散ポリメチルメタクリレートを標準物質として、屈折率を用いて検出したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により重量平均分子量を評価した。
【0049】
(共重合体の合成)
合成例1
MPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)3. 57g、オクタデシルメタクリレート(C18MA)16. 43g(単量体組成モル比、MPC/C18MA=30/70)をn-ブタノール180gに溶解し4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹込んだ後、60℃でアゾビスイソブチロニトリル0.82gを加えて8時間重合反応させた。
重合液を3リットルのアセトン中にかき混ぜながら滴下し、析出した沈殿を濾過し、48時間室温で真空乾燥を行って、粉末15. 8gを得た。得られた共重合体は、重量平均分子量で326,000であった。これをポリマー1とした。
【0050】
合成例2~4
合成例1のポリマー1の合成に準じて、表1に示すように単量体の種類、組成比を変更し、合成例1と同様の操作により、ポリマー2~ポリマー4を得た。得られた共重合体の組成比、重量平均分子量を表1に示した。なお、ポリマー3の合成で用いたC2MAはエチルメタクリレートである。
【0051】
【0052】
(水性化粧料の調製)
実施例1
表2の実施例1の組成になるように原料を配合し、水性化粧料100gを調製した。すなわち、実施例1の成分(A)~成分(E)を容器にとり、室温でマグネティックスターラを用いて攪拌し、水性化粧料を得た。
【0053】
実施例2~11、比較例1~7
表2(実施例2~11)および表3(比較例1~7)の組成になるように原料を配合し、実施例1と同様の方法で水性化粧料を得た。表中の各成分の含有量は、質量%にて示す。
【0054】
実施例12
表2の実施例12に記載の成分(A)、(B)および(C)を容器にとり、室温で卓上ホモミキサ(みづほ工業社製)を用いて予備混合した。この予備混合物を、室温でシステマイザ(ミューチュアル社製、C17)を用いて、180MPaの圧力で2回処理することにより原料プレミックスを得た。この原料プレミックスを実施例11に記載の成分(D)および(E)とともに容器にとり、室温でマグネティックスターラを用いて攪拌し、水性化粧料を得た。
【0055】
上記実施例および比較例で得られた水性化粧料について、下記のとおりの評価を行った。その結果を各表に示す。
【0056】
(1)レチノール保存安定性の評価
実施例および比較例の各水性化粧料をガラス製無色透明のスクリュー管に20g取り、照明付きインキュベータ(EYELA FLZ-2000)で25℃の条件で保管した。保管開始から1時間後に取り出し、レチノールの量をHPLC(日立製作所社製、Lachrom(登録商標)ELITE)で測定した。
保管開始前に対する1時間後のレチノールの量をレチノールの残存率とし、下記の基準により残存率を評価した。なお、残存率は少数第一位の数字を四捨五入して整数値とした。
(評価基準)
◎:50%以上残存していた。
○:40~49%残存していた。
△:30~39%残存していた。
×:29%以下残存していた。
【0057】
(2)浸透感の評価
20名の男女(25才~45才)をパネリストとして実施例および比較例の各水性化粧料を顔面に塗布し、下記の基準により使用時の浸透感を評価した。
(評価基準)
2点:皮膚への浸透が非常に速やかだと感じた。
1点:皮膚への浸透が速やかだと感じた。
0点:皮膚への浸透が遅いと感じた。
(判定基準)
◎:合計点が35点以上
○:合計点が25点以上34点以下
△:合計点が15点以上24点以下
×:合計点が14点以下
【0058】
(3)べたつきのなさの評価
上記(2)の試験後の各パネリストが下記の基準により使用後のべたつきを評価した。
(評価基準)
2点:べたつきを感じなかった。
1点:べたつきをほとんど感じなかった。
0点:べたつきを感じた。
(判定基準)
◎:合計点が35点以上
○:合計点が25点以上34点以下
△:合計点が15点以上24点以下
×:合計点が14点以下
【0059】
(4)保湿感の評価
上記(2)の試験後の各パネリストが下記の基準により使用後の保湿感を評価した。
(評価基準)
2点:保湿感を十分に感じた。
1点:保湿感をある程度感じた。
0点:保湿感を感じなかった。
(判定基準)
◎:合計点が35点以上
○:合計点が25点以上34点以下
△:合計点が15点以上24点以下
×:合計点が14点以下
【0060】
(5)外観の透明性の評価
上記(2)~(4)の試験を行ったパネリストが、ガラス製無色透明のスクリュー管に20g取った各水性化粧料の外観の透明性について、目視で下記の基準により評価した。
(評価基準)
2点:外観の透明性が高いと感じた。
1点:外観の透明性がやや高いと感じた。
0点:外観の透明性が低いと感じた。
(判定基準)
◎:合計点が35点以上
○:合計点が25点以上34点以下
△:合計点が15点以上24点以下
×:合計点が14点以下
【0061】
【0062】
【0063】
表2に示されるように、実施例1~12の水性化粧料は、レチノールの保存安定性に優れ、使用時のべたつきが少なく、良好な浸透感および保湿感を有し、外観の透明性が高いことが分かる。
【0064】
一方、表3から明らかなように、本発明の必須要件のいずれかを満たさない比較例では、レチノールの保存安定性、使用時のべたつき、浸透感、保湿感および外観の透明性のいずれかの面で劣っており、本発明の目的を達成できなかった。
すなわち、比較例1では、成分(A)を含まないため、レチノールの保存安定性および外観の透明性が低かった。
比較例2~4でも、成分(A)が本発明に規定のものと異なるため、レチノールの保存安定性および外観の透明性が低かった。
比較例5では、成分(D)が本発明に規定のものと異なるため、浸透感および保湿感が低かった。
比較例6では、成分(C)の含有量が少なすぎるため、レチノールの保存安定性、保湿感および外観の透明性が低く、比較例7では、成分(C)の含有量が多すぎるため、使用時のべたつきおよび保湿感が低かった。
【0065】
実施例13(処方例)
本発明の水性化粧料のその他の処方例を実施例として挙げる。表4の組成になるように原料を配合し、実施例1と同様の方法で水性化粧料を得た。
本実施例の水性化粧料についても、上記のレチノールの保存安定性、使用時のべたつき、浸透感、保湿感および外観の透明性について各項目を評価したところ、優れた特性を有しており良好な結果を得た。
【0066】
【0067】
表2~4中の一部の成分名の後に付された記号は下記の商品名を表す。
※1:日油社製、ノニオンST-60
※2:日油社製、ウィルブライドS-753
※3:日油社製、マクビオブライド(登録商標)MG-10E
※4:日油社製、ユニセーフ(登録商標)10P-8
※5:日油社製、Lipiedure―S
※6:日油社製、Lipiedure―PMB(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体の含有量5質量%品)
※7:日油社製、マクビオブライド(登録商標)MG-20P